レゾルバ

レゾルバとは

レゾルバとは、エンコーダの一種で回転角度を測定するためのセンサーです。

回転角度を検出する装置のうち、特に電磁誘導によって磁場の変化を読み取り、回転角検出するものをレゾルバといいます。レゾルバが読み取った回転に関する情報は電気信号として出力され、レゾルバを取り付けた回転機器にフィードバックをかけることができます。

レゾルバの使用用途

レゾルバは、主に産業機器に使用されます。白物家電や商業施設では目にすることはありません。回転角を測定する対象はサーボモーターが主流です。

サーボモーターが正確な動作を行うには、モータの回転数などを検出してフィードバックを行う必要があります。レゾルバは、このようなサーボモーターを利用した高精度な位置決めを行う際に組み合わせて利用されます。

近年では、電気自動車に使用される場合があります。電気自動車の走行制御や電動パワーステアリングなどに応用し、高度なモーター制御が可能です。レゾルバによって省電力かつ精密に制御可能なため、自動車へも普及が進んでいます。

レゾルバの原理

レゾルバの基本原理は、トランスとほぼ同じです。コイルの巻き付いた2本のコアから構成されています。

回転によって一次側コアと二次側コアの相対位置が変化し、一次側と二次側にずれが生じます。交流電流値を測定することで、回転角度を検出するのがレゾルバの原理です。例えば、回転角度が0度の場合、コア同士の相対位置は変わらないために入出力電圧にずれは生じません。180度のとき入出力電圧の位相が逆転します。

レゾルバにおいて、対象と連動して回転する部位をロータ、コイルを内蔵した部分をステータと呼びます。ロータがステータと同心円の形状だと、ロータ一回転分につき等倍の出力が得られます。それに対して、楕円状にすると二倍、三角形の場合は三倍の出力を得ることが可能です。

したがって、ロータ形状によって出力信号の倍率を制御することができます。このようにレゾルバは、コアとコイルによって構成されるシンプルな構造をしているため、悪環境でも使用に耐えられるというメリットがあります。

レゾルバのその他情報

1. レゾルバの使い方

レゾルバから出力された信号は、RDCによって回転角度や回転角速度に変換されます。RDCはレゾルバ・デジタル・コンバーターの略で、CPUが演算処理出来るようにデジタル信号へ変換します。

RDCは回転角度信号をデジタル化する際に、レゾルバの製造ばらつきを補正することも可能です。サーボモーターや自動車走行用モーターへ行われる演算処理は、一般的にPID制御です。目標となる回転数とレゾルバで検出した回転角度や回転角速度を比較し、モーターに与えるエネルギー量を決定します。

位置決めや制御の精度を上げるには、回転角度検出とエネルギー量決定タイミングの時間差を最小限にする必要がありますが、これはCPUの動作周波数の上限に左右されます。

2. レゾルバの今後

レゾルバは基本構成がシンプルですが高価です。部品費用だけでなく、高精度を担保したレゾルバを安定製造し続けることはコストがかかります。レゾルバには複数のステータ巻線がありますが、全ての線を均一に巻きつけることが重要です。巻きつけがばらつくと出力信号に影響し、位置検出の精度低下に繋がります。

近年では、レゾルバの代替として磁気式センサーの採用が進められています。磁気式センサーにはさまざまな種類がありますが、多くは磁気抵抗効果を利用したMRセンサです。磁気抵抗効果とは外部磁場の強さや方向によって電気抵抗が変化する現象のことを言います。磁気センサーは用途に応じて以下から選択します。

  • AMR (異方性磁気抵抗効果:Anisotropic magnetoresistance effect) 素子
  • GMR (巨大磁気抵抗効果:Giant magnetoresistance effect) 素子
  • TMR (トンネル磁気抵抗効果:Tunnel magnetoresistance effect) 素子

磁気式センサはメリットは、軸受回転輪と一体化可能なことやRDCのような信号処理回路が不要なことです。小型化・軽量化・低コスト化が期待されています。

参考文献
http://select.marutsu.co.jp/list/detail.php?id=996
https://www.minebeamitsumi.com/strengths/column/resolver/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1703/30/news037.html
https://www.ntn.co.jp/japan/news/new_products/news201000022.html
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/front_line/004

LCRメーター

LCRメーターとは

LCRメーター

LCRメーターは、インピーダンスを測定するための装置です。LCRはL(インダクタンス)、C(キャパシタンス)、R(レジスタンス)を示す記号です。これら3つを合わせてインピーダンスと呼びます。LCRメーターは、インピーダンスを測定する測定機器を指します。

LCRの意味

L・C・Rの各成分には、電気的な特徴があります。それぞれを代表する電気部品はコイル、コンデンサ、電気抵抗です。

L成分

L成分はインダクタンス(Inductance)と呼ばれます。電磁誘導に関する法則であるレンツ(Lenz)の法則の頭文字からLと名付けられたと言われていますが、諸説あります。単位はヘンリー(H)です。

コイルに流れる電流が変化すると、その変化を妨げる方向に電力を生み出す性質があります。この性質の強さがインダクタンスと呼ばれる成分です。L成分が高い回路は電流変化に疎くなります。急峻なノイズ電流などに強い反面、交流回路で使用すると力率が遅れて効率が低下します。

C成分

C成分はキャパシタンス(Capacitance)と呼ばれます。コンデンサを英訳したキャパシタ(capacitor)が由来です。日本語では静電容量とも呼ばれます。C成分は電気の源である電荷を貯められる容量を示します。単位はファラッド(F)です。

コンデンサは回路上ではコイルと逆の役割を果たします。したがって、C成分が高い回路は電流を急峻に変化させます。交流回路では力率を進ませますが、ノイズ電流などを増幅する危険性があります。直流制御回路では電圧を増幅させたり、平滑化する役割を果たします。

R成分

R成分はレジスタンス(resistance)と呼ばれます。日本語訳すると抵抗で、文字通り電気抵抗を指します。単位はオーム(Ω)です。

電気抵抗が高いと、交流回路も直流回路も電流が流れにくくなります。交流直流共に送電効率が悪くなる半面、故障時の最大電流も小さくなります。

LCRメーターの使用用途

LCRメータは、産業分野では電子機器の開発や試験などにおいて用いられることが多いです。具体的にはコンデンサやコイルなど、電力・電子部品の性能試験に用いられます。日常生活では、主に医療分野においてLCRメータが使用されています。具体例としては、体脂肪率測定器などです。人体のインピーダンスを測定することで体脂肪率や水分量を測定できます。

上記の理由から医学研究でも重宝されます。LCRメータはCTやNMRのような高価な装置ではなく、低コストで導入しやすいというメリットがあります。

LCRメーターの原理

LCRメーターを用いたインピーダンスの測定は、対象物に交流電流を印加して測定します。基本原理としては、交流電圧を印可し、電流や位相差を測定してインピーダンスを計算します。

LCRメータは発振器・ベクトル電圧計・電流電圧変換器の3つの回路からなる自動平衡ブリッジと呼ばれる構成をしています。これはオペアンプを用いた反転増幅回路と同じ構成です。インピーダンスの計算はADコンバータを用いたデジタル変換で行われます。

LCRメーターを構成する要素として最も重要なのはベクトル電圧計で、ロックインアンプの原理を応用して入力信号に同期した参照信号を発生させることで、振幅や位相差を検出します。

自動平衡ブリッジをもとにしたLCRメーターでは100kHzを超えない低周波の測定に向いています。100kHz以上の高周波領域では、特性インピーダンスと呼ばれる部品自体のインピーダンスの影響が大きくなることが原因です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jceeek/2018/0/2018_371/_pdf
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-LCRMeter-01/?page=2

adコンバータ

ADコンバータとは

ADコンバータ

ADコンバータは、アナログデータをデジタルデータに変換する装置を指します。AnalogとDigitalの頭文字を取ってADコンバータであり、A/Dコンバータとも表記します。

実世界での情報はほとんどが連続的なアナログデータですが、これをコンピュータで処理するには0と1のみで表現されたデジタルデータに変換する必要があります。ADコンバータはアナログ信号をデジタル信号に変換するための電子部品ですが、反対にデジタルデータをアナログデータに変換するものをDAコンバータと言います。

ADコンバータは、さまざまなアーキテクチャ(変換方式)があり、サンプリングレートや分解能が異なります。そのため、目的に応じて適切なものを選択する必要があります。

ADコンバータの使用用途

ADコンバータは我々の日常生活でも多数使用されています。具体的にはデジタルカメラやオーディオ機器です。映像や音などのアナログデータをデジタルデータに変換して出力します。

さまざまな電子機器では、アナログ信号を入力情報として利用する必要がありますが、内部の処理はデジタル信号で行われます。そのため、ADコンバータが必要になります。光や温度などを扱う機器にはADコンバータが搭載されています。

デジタルカメラやオーディオ機器などでは高速伝送が必要となるため、高サンプリングレートの高速ADコンバータが開発されています。

ADコンバータの原理

ADコンバータがアナログデータをデジタルデータに変換するには、大きく分けて3つの段階に分かれます。

  1. 連続的なアナログ信号を周期的に切り出してサンプリングを行います
  2. サンプリングされた信号の振幅を離散的な値に近似させます
  3. 近似された信号を0と1のバイナリで表現する符号化が行われます
    符号化を行う回路をエンコーダと呼びます。

ADコンバータの性能を表す指標として、サンプリングレートと分解能があります。サンプリングレートは、変換スピードを表しており、値が大きいほど高速な変換ができます。

分解能はどこまで細かく表現するかという指標で、ビット数(符号化の際の2進数の桁数)で表現されます。この値が大きいほど、高精度でなめらかな表現ができます。

サンプリングレートと分解能はトレードオフの関係にあり、高速にサンプリングできるものは分解能を犠牲に、逆に高分解能を達成するにはサンプリングレートを遅くする必要があります。

ADコンバータのその他情報

1. ADコンバータの分解能

ADコンバータの指標に分解能があります。ADコンバータの分解能とは、入力されたアナログ信号をどこまで細かく数値化するかという概念です。単位はbitで表されます。8bitデータという場合は2の8乗の数値に分解し、0〜255の数値で表します。一般にbit数は8の倍数となることが多いです。

アナログ入力が0〜2の数値で、ADコンバーターが8bitの分解能だとすると、2/(2^8-1) =2/255=0.007843となります。上記より、0~2まで入力できる8bit-ADコンバータの最小分解能力は0.007843です。高精度ADコンバータとして32bitや64bitの製品が実用化されています。

2. ADコンバータのサンプリングレート

ADコンバータにおいて、分解能と同様に重要な指標にサンプリングレートがあります。ADコンバータでのサンプリングレートとは、アナログ量をどれだけ頻繁にサンプルするかといいうことです。これがADコンバータの作動スピードになります。

ナイキスト定理によって、ADコンバータには入力アナログ信号の2倍以上の周波数が必要とされることが分かっています。そのため、ADコンバータのサンプリングレートは入力アナログ信号周波数の2.2倍以上に設定されます。

3. ADコンバータの精度

ADコンバータには誤差が発生します。例えば、設計上ではアナログ入力が0~2で、16bitのADコンバータの誤差は、 2/(2^16-1)=0.0000030518となります。どの程度の精度でサンプリングする必要があるかは、上記のような計算によって求めます。

注意が必要なのは、ADコンバータの性能がそのまま機器の性能になるとは限らないことです。ADコンバータの入力端子より前には入力保護回路、アンプ、アッテネータなどが設けられるおり、ここで微小信号を扱います。

この部分によって、アナログ信号が影響を受けることがあります。ADコンバータの周辺回路も注意して選定しなければ、高精度ADコンバータの性能は十分に発揮できないことがあります。

参考文献
https://www.marubun.co.jp/service/technicalsquare/a7ijkd000000bogr.html
https://www.cqpub.co.jp/dwm/Contents/0093/dwm009301230.pdf

ユニバーサル基板

ユニバーサル基板とは

ユニバーサル基板

ユニバーサル基板は、プリント基板とは対照的に決まった配線パターンを持たない基板のことで、万能基板・蛇の目基板・ディスクリート基板などとも呼ばれています。

ユニバーサル基板は基板上の穴に部品を差し込むことで実装できます。その際に、はんだ付けが必要なものと、はんだ付けが不要で繰り返し使えるブレッドボードと呼ばれるものがあります。基板上の穴に電子部品を取り付け、はんだ付けをすることで簡単に配線ができます。

ユニバーサル基板の使用用途

ユニバーサル基板は、自由に部品の設置や配線を行うことができるので使い方次第でいろいろなものに利用できます。電子部品を取り付ける部位や配線が予め決まっているプリント基板と違って、自分の好きな位置に部品を取り付けられるという自由度の高さから、個人の電子工作などによく使われています。市販の電子工作キットなどにも同梱されています。

また、利用できるプリント基板など、既製のものがない場合、使用者が自ら設計する必要がありますが、そのような場合、ユニバーサル基板を用いて自由に設計できます。

ユニバーサル基板の原理

はんだ付けが必要なものと不要なもの(ブレッドボード)とで、ユニバーサル基板は2つに大別されます。前者は、基板上の部品を取り付ける穴に銅箔が貼られており、これをランドと呼びます。このランドにはんだ付けで部品を取り付け、別の部品のランドとの間をリード線などで接続します。

ランドには片面だけ銅箔が貼られたものと両面に貼られたものがあります。両面のものはスルーホール加工がなされているものもあり、これを用いれば両面が導通しているため、さらに自由度の高い設計が可能です。

後者のブレッドボードは二層構造になっており、部品を差し込むための穴が空いた層と、配線を挟み込むための金属レールが配置された層に分かれています。配線は金属レールの配置に依存するため、はんだ付けが必要なものに比べると自由度は劣りますが、部品の抜き差しだけで簡単に実装できます。その上、はんだ付けが必要ないので、基板を何度でも再利用できます。

ユニバーサル基板のその他情報

1. 配線の方法

ユニバーサル基板の配線の方法は基本的に自由ですが、間違いを防ぐために、大まかには回路図の部品の配置通りに部品をユニバーサル基板に配置していきます(ユニバーサル基板は用途に合ったものを選定してください)。

2. 部品の設置方法

例えば、OPアンプを用いた単電源回路をユニバーサル基板で実現するときは左側から順に、入力ポイント→入力カップリングコンデンサー→入力バイアス回路→OPアンプを用いた反転増幅回路→出力カップリングコンデンサー→出力レベル調整回路→出力ポイントと配置します。

また、基板上部横1列を電源ライン、下部横1列をGNDラインとします。このように見た目で分かりやすい配置にすることで、回路のデバッグや修正時に確認したい箇所を容易に見つけられるようになります。

3. 部品の接続方法

回路を接続する配線は部品のリード線(部品の脚)、錫メッキ線、耐熱被覆線などを使用します。はんだ付けは、はんだが十分に溶着するように部品のリードとランドをしっかり予熱します。隣り合うランドにはんだが乗らないように注意し、はんだの拡がりが悪い場合はフラックスを使用します。

部品のリード線や錫メッキ線を利用して部品同士を配線します。部品のリード線と錫メッキ線は導通があるため、不必要な箇所で接触しないよう部品の配置や配線の取り回しを十分に考えて配線します。配線同士が交差する取り回しにする場合は耐熱被覆線を使用し、電気的接触を防ぎます。

4. 部品の扱い方

リード部品をユニバーサル基板に取り付けるときは、部品のリードが必要以上に曲がらないよう、1穴以上の余裕を持たせて取り付けます。ICなど、端子の数が多い部品は端子が折れ曲がることがないよう注意して取り扱います。トランジスタなどパッケージに型番などが記載されている部品は、部品名が確認できる向きに配置します。配線を間違えた場合ははんだ吸い取り機ではんだを吸い取り、部品を取り外して修正します。

5. ユニバーサル基板のカット

ユニバーサル基板の大きさはメーカごとに決まっているため、ユーザーが望む大きさにはなっていません。しかし、簡単にカットすることができます。

  1. 大きさを決めて、裏面(はんだ面)にマークする
  2. ゴムマットなどの上に、裏面を上にして動かないように置く
  3. マークに定規を当て、カッターで基板の1/3程度まで切り込む
  4. 切り込んだところをペンチなどで挟んで、折るように切断する。
  5. 切断面のバリ、穴の列がなくなるまでやすりまたはサンドペーパーで仕上げる

※裏面を切り込むのは、ランドパターンを確実に切り込むことで誤って導通させないためです。なお、はんだ付けし終わった基板の切断は回路の損傷、ケガなどが考えられるため、おすすめできません。

参考文献
http://www.proxi.co.jp/technolo/tips_on_use.htm
https://sankode.com/pcb/%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%AB%E5%9F%BA%E6%9D%BF/
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/177.html

フェライト

フェライトとは

フェライト

フェライトとは、酸化鉄を主成分とするセラミックで、磁性材料として利用されています。セラミックなので金属磁性体に比べると電気抵抗が高く、耐腐食性や耐薬品性に優れていることが特徴です。

フェライトの使用用途

フェライトは主に磁石として利用されており、フェライト磁石と呼ばれています。安価で大量生産できることから、その利用分野は家電製品やゲーム機、パソコン等、多岐に渡ります。

他にもトランスのコアとして利用されたり、電波暗箱電波暗室などにおいて、電磁波を遮断する材料としても利用されています。さらに、レーザープリンタなどでトナーを運ぶキャリアとしてもフェライト粒子が利用されており、日常生活に浸透している磁性材料です。

フェライトの種類

フェライトには下記の3種類があります。

1. スピネル型フェライト

スピネル型フェライトは、Fe2O4を主成分とするフェライトです。以前は、主成分が酸化鉄であることから、生成のためには800℃以上の高温で熱処理を行わなければなりませんでした。

近年ではアルカリ溶液中で反応を行うことで100℃程度の低温でも生成できるようになっています。スピネル型フェライトは、マンガンやコバルト、ニッケル亜鉛などの添加物と混ぜ合わせることで、軟磁性を示すソフトフェライトです。

2. 六方晶型フェライト

六方晶型フェライトは、M・Fe12O19(MはBa、Sr、Pbなど)の化学式で表されるフェライトです。バリウムやストロンチウムを添加することで硬磁性を示すハードフェライトです。

3. ガーネット型フェライト

ガーネット型フェライトは、天然のザクロ石と同型の結晶構造を持つフェライトで、Mg3Al2Si3O12の化学式で示される構造を持ちます。ガーネット型フェライトは、スピネル型フェライトと同じ軟磁性を示すソフトフェライトです。

フェライトのその他情報

1. フェライトの特性

ハードフェライト
ハードフェライトとは、一度強力な磁場をかけると磁性を持ち、その磁性が維持される強磁性を持つフェライトです。

ソフトフェライト
ソフトフェライトとは、磁界が加わると磁化を発現し、磁界がなくなると磁気がなくなる軟磁性を持つフェライトです。透磁率が高いことが特徴で、コイルやトランスのコアに用いられています。

2. フェライトによるノイズ低減の仕組み

フェライトは、ノイズ低減部材としても使用されています。例えば、USBなどの高速通信信号において、EMI(Electromagnetic Interface)は大きな問題です。EMI(電磁障害)は通信線に限らず、電気機器などが不要な電磁ノイズを放出することを指します。

EMIの認証・品質保証の点から電気機器には、ClassAやClassBといった分類が用意されており、製品ごとに適切なEMI対策が必要です。通常は、回路設計やパターン設計の時点でEMI対策を講じますが、設計後期になり開発期間も限られている場合には、フェライトを使用することがあります。

フェライトをノイズの発生源ハーネスに巻きつけることによって、フェライトの磁化に応じてケーブルのインピーダンスが変化し、その結果ノイズ電流を軽減することが可能です。ただし、ノイズ電流を軽減するということは高周波成分を落としていることになります。つまり、フェライトは簡易のローパスフィルタとして機能していることになります。

このように、高周波成分を落とすことは、信号をなまらせることに繋がるので、波形の訛り、ひいては信号品質の劣化を招く可能性がある点には留意が必要です。フェライトのノイズ低減の特性は、インピーダンスによって決まり、インピーダンスはフェライトの材質、サイズ、ターン数に依存して変化します。

フェライトの材質が同じで、同サイズのものを用いた場合、ハーネスのターン数Nに応じてインピーダンスが増加するのが一般的です。インピーダンスの増加に伴ってより強力なノイズ対策となりますが、対策したい周波数帯域に合わせて、ターン数を選択する必要があります。

また、インピーダンスには、断面積も影響しており、原則としてフェライトの内径が小さく、外径が大きいものの方がインピーダンスを高くすることが可能です。高周波対策部品として、幅広いラインナップのフェライトがあります。それぞれの特性を把握し、対策したい周波数帯域に適した特性のフェライトを使用することが重要です。

参考文献
https://ednjapan.com/edn/articles/1610/31/news019_4.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1898/65/11/65_11_1748/_pdf/-char/ja
https://www.techno-kitagawa.com/techinfo/tech/ferrite.html
https://cend.jp/emc_primer/basic/emi.html
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-noise-countermeasures-lesson-8

コンパレータ

コンパレータとは

コンパレータのイメージ図

図1. コンパレータのイメージ図

コンパレータとは、2つの入力信号を比較し、その結果によって異なる出力を行う素子です。

一般的には測定したい信号の入力と、基準となる信号の2つを入力します。これによって、基準値を上回る信号(電流や電圧)が入力された時に、特定の動作をさせるなどの条件分岐を回路上で行うことが可能となります。

コンパレータの使用用途

コンパレータは、入力信号(電流及び電圧)と基準信号を入力して比較を行う論理回路を組むことが可能です。例えば、電圧の過剰な上昇や低下をモニターして範囲外になるとアラートを出したり、装置の運転を制御することができます。

他にも、冷蔵庫やエアコンの温度を自動的に調節したり、携帯電話やPCでバッテリー残量が少なくなったらパフォーマンスを制限するなど、if/thenの条件分岐を行うことも可能です。

コンパレータの原理

コンパレ-タは5つの端子を持っており、正・負それぞれの電源端子と2つの入力、それと1つの出力端子からなります。これはオペアンプとほぼ同じ構成をしており、反転増幅を行うかどうかの違いでしかありません。もともとオペアンプは入力電圧に差がある場合、供給電源の電圧を出力するという性質を持っており、コンパレータはこの性質を利用しています。

逆に言えば、コンパレータの出力端子から負の入力端子にフィードバックをかけるような回路を組めば、オペアンプとして利用することも可能です。コンパレータは反転増幅を行う機構を持っていないので、オペアンプのように発振防止のための位相保償を行っていません。

そのため、コンパレータは、オペアンプに比べてコンパレータは応答性に優れているというのが最大の特徴です。また、複数のコンパレータを使用して、基準値を段階的に設定すれば、ADコンバータとして利用することができます。このような構造のADコンバータは高速な変換が可能です。

コンパレータのその他情報

1. コンパレータの入力はアナログ、出力される信号はデジタル

コンパレータの入力と出力

図2. コンパレータの入力と出力

コンパレータの入力はアナログですが、出力される信号はデジタルです。したがって、コンパレータはアナログ回路とデジタル回路のインターフェースとして利用されることもあります。

2. ヒステリシス・コンパレータ

コンパレータの比較のしきい値が一点の場合、アナログ信号に重畳された予期せぬ外来ノイズがあると、コンパレータはノイズに反応してHigh/Lowを繰り返すことになります。これは本来の入力値での切り替えではなく誤動作を引き起こすため、ヒステリシス・コンパレータという比較器が考案されました。

ヒステリシス・コンパレータは、出力状態に応じて二つのしきい値を有する特徴があります。出力の切り替わりと同時に、それまでのしきい値とは別のもう一つのしきい値に切り替わるため、予期せぬノイズ起因の誤動作を防ぐことが可能です。

ヒステリシス・コンパレータの回路構成は、従来のコンパレータの出力端子から入力端子に抵抗などを介して正帰還をかけます。ちなみに、この回路は考案者の名前(オットー・シュミット)をとってシュミットトリガーと呼ばれています。

シュミットトリガーは、ツェナーダイオードなどのアクティブ素子を併用して電源電圧変動対策を施し、より汎用性を高めた回路が一般的です。ヒステリシス・コンパレータのしきい値は0Vを基準にプラスマイナス対称に設定できる回路と、非対称に設定可能な回路がありますが、ここで重要な点としてヒステリシス幅を大きくとりすぎないことが挙げられます。

なぜなら、ヒステリシス幅を大きくすることで、外来ノイズへの耐性は改善しますが、本来判定したい入力値への感度が劣化してしまうためです。よって、実際のノイズの値以上に必要以上にヒステリシス幅は大きくしないよう注意が必要です。さらにバランスのとれた設計には、しきい値電圧とコンパレータの電源電圧の比率も考慮しましょう。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/opamps/op_what1

dcdcコンバータ

DC/DCコンバータとは

DCDCコンバータ

DC/DCコンバータは、一定電圧を出力する直流電源から異なる電圧の直流電圧を作り出す電源装置です。

入力する直流電圧よりも高い電圧を出力する場合を昇圧コンバータ、低い電圧を出力する場合を降圧コンバータと呼びます。

DC/DCコンバータの使用用途

DC/DCコンバータは、電子機器の内部で一部の回路に適した電源電圧を供給するために使用されます。

一般に電子機器は商用電源 (交流) を用いて動作しますが、電子回路には直流電源が必要なので、商用電源を一旦直流に変換します。この電源回路をAC/DCコンバータと呼びます。

一方、回路を構成するICなどの電子部品は、それぞれ最適な動作電圧範囲が異なるため、個々の回路に適した電圧を供給しなければなりません。そこで必要とする電圧に応じた電源を複数用意しますが、このような場合にDC/DCコンバータが使用されます。

DC/DCコンバータの原理

DC/DCコンバータは2種類あり、それぞれ原理が異なります。

1. リニア・レギュレータ

リニア・レギュレータでは、NPNトランジスタを入力端子と出力端子間に挿入し、このトランジスタのコレクタ-エミッタ―間の電圧を制御することで出力電圧を一定に維持します。トランジスタは入力側をコレクタ、出力側をエミッタとして、その出力電圧と所望の電圧の差を制御回路が検出します。

トランジスタのベース電流を制御し、出力電圧が一定になるようにコレクタ-エミッタ間の電圧を変化させるという流れが基本的動作です。NPNトランジスタの代わりにNチャンネルMOSFETを使うものもあり、この場合は入力側にドレイン、出力側にソースを接続し、制御回路はゲート電圧を制御します。

2. スイッチング・レギュレータ

スイッチングレギュレータは、入力端子と出力端子間にスイッチング素子を設け、出力電圧が所望の電圧になるまでスイッチング素子をON状態にして入力から出力へ電力を供給し、出力電圧が所望の電圧に達した時点で、スイッチング素子をOFF状態とする流れが基本的な動作です。

この動作を高速で繰り返し、出力電圧を所望の範囲に収めるよう制御します。スイッチング・レギュレータ方式のDC/DCコンバータでは、コイルと組み合わせて電流遮断時にコイルから発生する逆電圧を利用して、入力した電圧よりも高い電圧を得る昇圧動作が可能になります。

また、入力側の電圧にかかわらず一定の電圧を出力できる昇降圧レギュレータ、さらに正電圧から負電圧を作る反転レギュレータも実現可能です。

DC/DCコンバータの種類

DC/DCコンバータには、大きく分けて「リニア・レギュレータ」と「スイッチング・レギュレータ」の2種類があります。

1. リニア・レギュレータ

入力端子と出力端子の間にNPN型トランジスタを挿入し、出力端子の電圧が常に一定となる様制御するもので、この方式は、ノイズが少ない安定した出力電圧が得られますが、次の欠点があります。

  • 出力電圧は入力電圧より低い電圧しか得られません。
  • トランジスタによる損失が大きいので、エネルギー効率は悪く、発熱が大きくなります。

2. スイッチング・レギュレータ

入力端子と出力端子の間にスイッチング素子を設置し、入力端子から流れる電流をスイッチング素子でON/OFFして、出力端子の電圧を一定に保持するもので、次の利点があります。

  • 回路構成により昇圧コンバータ、降圧コンバータどちらにも対応できます。
  • エネルギー効率が高く、回路全体の発熱量が少なくなります。

一方、欠点としては次のようなものがあります。

  • スイッチングノイズが発生し、出力にスパイク上のノイズやリップルが現れます。
  • 部品点数が多く、回路規模が大きくなります。

DC/DCコンバータの使い方

リニア・レギュレータでは、ローノイズで安定した電圧出力が得られるので、各種センサーの微弱な信号を扱う場合などアナログ回路に適します。しかし、発熱量が大きいので、適切な放熱設計が求められます。ヒートシンクやファンを併用して発生した熱を機器外部に逃がすよう配慮が必要です。

一方、スイッチング・レギュレータは、出力電圧を広い範囲に設定できるとともに大電流の供給も可能ですが、ノイズの発生が避けられないので、その対策が必要になる場合があります。シールドケースに収めるなどが対策の例です。

しかし、アナログ回路へのノイズの廻り込みを防ぐためには、電源そのものを分離して、一点アースでDC/DCコンバータとアナログ回路のグランドレベルを共通にするなどの対策が必要になる場合もあります。

また、比較的発熱は少ないとは言え、大きな電力を出力する際は、リニア・レギュレータと同様に機器内部の放熱に十分注意して設計することが必要です。

参考文献
https://www.alu4all.com/what-is-a-heat-sink-and-its-working-principle/
https://www.furukawa.co.jp/jiho/fj115/fj115_16.pdf
http://www.picfun.com/heatsink.html
https://www.koaglobal.com/-/media/Files/KOA_Global/technology/seminar_doc/CEATEC2019session1forWEB.pdf?la=ja-JP&hash=E38C0CD04A078CEC167CE17E0D449029
https://www.micforg.co.jp/jp/c_ref2.html
https://www.denshi.club/parts/2016/01/2.html
http://www.hardwarepartss.com/Company-news/775.html

サイリスタ

サイリスタとは

サイリスタ

サイリスタは、整流作用のある半導体素子です。SCR(Silicon Controlled Rectifier)やシリコン制御整流子とも呼ばれます。整流作用とは、交流電流を直流電流へ変換することを言います。整流作用を持つ代表的な電子部品はダイオードです。

ダイオードとサイリスタが異なる点はゲート端子です。サイリスタはゲートと呼ばれる端子を持っており、ゲート端子に電流を流したときだけ整流作用を示します。

サイリスタの使用用途

サイリスタは、産業用途としてはソーダ工業や電解めっきなどに使用されます。ソーダ工業とは、塩水を電気分解して苛性ソーダや水素を生成する工業です。苛性ソーダは石鹸や洗剤の原料に使用されます。塩水を電気分解するための直流大電流をサイリスタで生成します。

日常生活では、LED照明の調光用などに使用されます。LEDへ流す電流をサイリスタによって制御することで、照明の調光を行います。LED照明を制御する装置はLEDドライバと呼ばれ、必ずと言って良いほどサイリスタが搭載されています。

サイリスタの原理

サイリスタは、p型半導体とn型半導体からなるPNPNの4重構造をしています。中間のnまたはp型半導体からゲート端子を引き出した構造になっており、それぞれNゲート、Pゲートと呼びます。

4重構造を持っているため、3つの接合部を持つことになります。陽極(アノード)側から陰極(カソード)側にかけて接合部を見ると、1番目と3番目の接合部が順バイアスになっています。対して、2番目の接合部では逆バイアスになっています。この状態でアノード側からカソード側に電流を流そうとしても、ほとんど流れません。

しかし、サイリスタに順方向の電圧をかけてゲート端子に電流を流すと、アバランシェ・ブレークダウンと呼ばれる現象が起こり、アノード―カソード間が導通します。これをサイリスタの点弧またはターンオンと呼びます。

サイリスタがターンオンした後、アノードに流れる電流が0になると導通が途切れます。これをターンオフまたは消弧と呼びます。交流電流には周期的に電圧が0になる瞬間があるため、サイリスタのターンオフは自然に起こります。

サイリスタのその他情報

サイリスタの応用例

サイリスタを用いると、大電力を制御することができます。サイリスタは大電力をコントロールする機器の電力部に使用されます。具体例を以下に挙げます。

1. 整流器
整流とは、交流を直流に変換することです。整流回路のキーパーツである整流器には、ダイオードやサイリスタが用いられます。サイリスタによる整流器はダイオード整流器よりも小型軽量ですが、高周波によって電源系統にノイズが発生します。近年では、高調波が抑えられるトランジスタによる整流器が開発されています。

2. 交流モーター制御
交流モーターの回転速度を制御する機器をVVVF装置と呼びます。VVVF装置内部には、コンバータ部とインバータ部があります。コンバータ部は交流電源直流電源へ変換する部分です。コンバータ部分では主にダイオードが使われます。

インバータ部は整流の逆動作で、直流電源を交流電源へ変換する装置です。インバータ内部では、一度交流電源を直流電源へ変換します。直流電源をサイリスタなどで高速切替することで交流電流を発生させます。

参考文献
https://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-1-349-81538-8_11
https://electric-facilities.jp/denki7/se/004.html

GaNパワーデバイス

GaNパワーデバイスとは

GaNパワーデバイスとは、窒化ガリウム結晶上に形成した次世代半導体パワーデバイスです。

従来のシリコン上に半導体プロセスで作成したパワーデバイスよりも大きい電力を少ない損失で扱えることから、近年非常に注目されています。GaNパワーデバイスはその構造上、信頼性や安全性がシリコン系パワーデバイスに比較すると実用化に向けての課題でした。しかし、近年の化合物半導体関連の技術革新により、このような問題は解決されつつあります。

GaNパワーデバイスでの高効率化によって、排熱機構の簡素化なども可能であり、製品の大幅な小型化や低消費電力化に貢献できます。

GaNパワーデバイスの使用用途

GaNパワーデバイスは、スマートフォンやパソコンの急速充電を可能にする充電器や、携帯電話の基地局用アンプに広く用いられています。シリコン系パワーデバイスよりも大きな電力を扱えるため、その置き換え用途としてパソコンの充電器や基地局向けアンプなどに使用される場合も多いです。

また、太陽光発電システムなどのパワーコンディショナーでは極めて高い変換効率を要求されるため、高効率なGaNパワーデバイスが採用され始めています。さらに、高速スイッチング動作も可能なことから、電源の安定性が要求されるサーバー機器などのスイッチング電源としても使用されています。

GaNパワーデバイスの原理

GaNパワーデバイスの原理は、バンドギャップと呼ばれる半導体物性値がGaNはSiに比較して約3倍と高電界に耐えるデバイスであるため、デバイスの単位面積当たりの動作可能なパワー (電力) 密度を非常に大きく確保できる点にあります。

一般にGaNパワーデバイスは、HEMT構造と呼ばれる高電子移動度トランジスタ回路で構成されます。このHEMT構造は常に電流が流れるノーマリーONの状態であり、ゲートに負電圧を印加することでOFFにします。そのため、なんらかの不具合でゲート電極への負電圧印加ができなくなると、OFFにできず非常に不安定な状態になります。

GaNパワーデバイスは、このような信頼性の問題があり、安定したノーマリーOFFの実現が使いこなしの観点で課題でした。そこで、ゲート電極にノーマリーOFFのSi-MOSFETを組み込むことで、ノーマリーOFFを実現しています。

また、もう一つの課題として、電流コラプスと呼ばれる物理現象が挙げられます。これは高電圧のスイッチングにおいて、ON抵抗が増大し電流集中が発生する現象で、GaN結晶の作製過程の欠陥によるものです。GaNパワーデバイスは、SiやSiCウェハ上にGaN膜を形成させる必要がありますが、結晶薄膜の成膜技術の革新によって、現在は高品質の成膜が可能になっています。

GaNパワーデバイスのその他情報

1. GaNとSiCとの棲み分け

GaNやSiCは、バンドギャップが大きいことに起因してその絶縁破壊強度は大きく、デバイス耐圧を上げることが容易です。そのために大電流、高電圧なアプリケーションに向いています。特にSiCは、デバイスの耐圧面からEV自動車や発電システム等、モーター駆動用途などの大電流用アプリケーションに使用されることが多く、近将来のIGBTの置き換えデバイスとして、非常に期待されています。

一方で、GaNパワーデバイスはSiC程の耐圧は確保困難であるものの、特に高周波特性を示すCut off周波数 (fT) が高く、電子の移動度も大きくとれるために、高速のスイッチング速度や高周波数動作が要求されるアプリケーションに広く用いられています。

すなわち、GaNとSiCの棲み分けは高速スイッチング充電や高周波数用途向けの5G基地局向けにはGaNデバイスを、さらに高耐圧、大電流用途には、SiCデバイスを使い分けていると言えます。

2. GaNを用いたパワー半導体のトレンド

GaNパワー半導体は大きく分けて、現在では比較的高い650V以上の電気自動車のオンボード充電を対象としているものと、ハイブリッド電気自動車の48Vから12VへのDC-DCコンバータでの電圧変換を対象としているアプリケーションの2つがあります。いずれもGaNパワー半導体として、SiCデバイスと並んで、今後のワイドバンドギャップ (WBG) デバイス市場を牽引していくものと思われます。

これらの新規アプリケーション用途に向けた実用化への課題は、信頼度や製造歩留まり、コストですが、世界中のセミコンダクター関連企業の努力もあり、実用化への可能性は大きく前進を遂げています。

3. GaNデバイスの応用について

そのほかのGaNデバイスの応用分野としては、光源用アプリケーションが挙げられます。GaNは化合物半導体の中でも直接遷移型半導体であるため、発光効率の大きなLED光源やレーザーダイオード用材料としての期待が大きいです。

電子デバイスとしても高出力かつ、ミリ波やサブTHz向け高周波数用のアンプトランジスタとしての応用が期待されます。

参考文献
https://eetimes.jp/ee/articles/1604/04/news004.html
https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2016-pp-08.pdf
https://eetimes.jp/ee/articles/2006/17/news029.html
https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2018-pp-14.pdf

任意波形発生器(AWG)

任意波形発生器(AWG)とは任意波形発生器(AWG)

任意波形発生器(AWG) (英: arbitery waveform generator) とは、任意の周波数と波形を持つ信号を生成できる信号発生器です。

AWGとも呼ばれます。1時代前のファンクションジェネレータFGと呼ばれる信号発生器は、一定のパターンの信号のみが出力可能なものでした。これに対し、任意波形発生器(AWG)は、

FGの機能が上がり、複雑な波形を要する場合でも、ユーザーが設定できる任意の信号の生成ができることが特徴です。任意波形の発生方法は、半導体メモリーにデジタルの波形を記憶して、DA変換出力する方式が主流です。

任意波形発生器(AWG)の使用用途

任意波形発生器(AWG)は、電子機器の開発や試験などに多く使用されます。システムや個々のコンポーネントの設計、テスト、製造のために、任意波形発生器(AWG)を使用した試験を繰り返します。

例えば、中間周波数IFや無線周波数RF信号を扱う無線通信アプリケーションや、量子コンピュータ・スピントロニクスなどの物理分野における試験などに使用されます。

任意波形発生器(AWG)によっては、波形を高速生成することが可能であったり、シーケンス波形、変調波、パルス波などをユーザーが自在に定義・出力できたりするなど、任意波形発生器(AWG)の特徴は多岐にわたってきています。

任意波形発生器(AWG)の原理

従来、主流であった波形発生器は、ファンクションジェネレータFGと呼ばれます。これは正弦波やパルス波以外にも、三角波やランプ波、ノイズ波を発生することができる波形発生器です。また、ファンクションジェネレータでも簡易的な任意波形を生成できるものの、複雑な波形を十分に発生させることができません。

これに対し、任意波形発生器(AWG)は、一般に大容量の波形メモリ、クロック信号源、D&A変換機で構成されています。これにより、クロック信号源におけるサンプル周波数を任意に設定することができるため、波形目盛に記録された波形データを途切れることなくすべて出力することが可能です。

具体的には、デジタル直接合成発振器DDS方式の発振器に、波形ROMの部分を書き換え可能なRAMに置き換えることで、ユーザーが自由に波形を書き込むことが可能になります。DDS方式は、加算器とラッチでアキュムレータを構成し、クロックに同期して周波数設定値Nを累積していくことで、ノコギリ波状のデジタルデータを得ることができる仕組みです。

任意波形発生器(AWG)のその他情報

1. 任意波形発生器(AWG)の機能

任意波形とは、サイン波、矩形波、三角波、ノコギリ波などの波形、および、連続波、単発波、間欠波などの時間的な要素をもたせた波形を意味します。

周波数も一定だけでなく、連続的に周波数を変化していく掃引という機能があります。さらに、振幅は10mVp-pから30Vp-p程度まで任意に発生させることが可能です。

2. 任意波形発生器(AWG)の使い方

任意波形発生器(AWG)には複数の出力端子があります。BNC端子になっているためノイズに強く、信号伝達ロスも少なくなっています。

出力インピーダンスは50Ωなので、接続する回路の入力インピーダンスが低い場合は、信号の減衰に気を付ける必要があります。それぞれの出力端子ごとに波形を任意に出力させることが可能です。

例えば、Ch1からは一定の周波数、Ch2からは周波数を掃引させ、両方の信号をミキサーという回路を通すことで中間周波数を生成させるなど、通信機の受信感度計測などの試験が可能です。

また、モータの回転速度を変えたり、振動試験機の振動周波数を任意に変えるなど、各種試験装置の駆動信号用としても使用されます。

3. USB接続できる任意波形発生器(AWG)

最近の任意波形発生器(AWG)にはUSBポートが付いたものが増えています。任意の波形をパソコンのアプリケーションで設定し、USB経由で任意波形発生器(AWG)を制御することが可能です。

また、自動制御プログラムによって、ON/OFFや周波数掃引をするための通信ポートとしてUSBを使用します。サイン波、矩形波、ノコギリ波、バースト波などの波形を切り替えたり、振幅やデューティを変えたり、周波数掃引したりなど、多彩な制御が可能です。

参考文献
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-FunctionGenerator-01/