POMジュラコン

POMジュラコンとは

POMジュラコン

POMジュラコンとは、POM (ポリアセタール) 樹脂とグラファイトをブレンドした合成材料です。

POM樹脂は、高い機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性を持つプラスチック材料であり、一方でグラファイトはその特有の物性により、摩擦特性や耐熱性を向上させる役割を果たします。

POMジュラコンの使用用途

POMは工業用機械部品や歯車、ビス、摺動部材料など耐摩耗性や自己潤滑性が必要とされる用途で利用されています。また、耐熱性にも優れているため、100℃以上の高温環境下でも機械的強度は低下しません。

従来、金属が使われてきた部品の代替として使用されることも多く、軽量性や加工性、生産性の向上に効果的です。しかし、難燃性や耐候性、接着性は低いため使用環境を考慮した上で材料選定しなければなりません

POMの場合は燃えやすい樹脂であること、メッキ加工が困難であることを考慮する必要があります。

POMジュラコンの原理

まずはPOMの代表格であるジュラコンの製造方法を説明します。ジュラコンはコポリマーであり、メタノールを出発点に合成されます。メタノールの酸化反応から合成したホルムアルデヒドを三量化し、トリオキサンの重合を行います。

トリオキサンを主モノマーとして少量のコモノマーと重合し、粗POMコポリマーを生成され、そして粗ポリマーに安定剤やガラスファイバー、強化剤などを添加して出荷する流れです。一方で、ホモポリマーはホルムアルデヒドの結合で生成されたポリオキシエチレン鎖から構成されます。ホモポリマーとコポリマーでは特性が異なるため注意が必要です。

1. ホモポリマーPOM

ホモポリマーはすべて同じモノマーユニットから構成されるポリマーのことで、主鎖は炭素と酸素原子の結合のみで構成されています。

2. コポリマーPOM

2種類のモノマーユニットで構成されるポリマーのことで、ジュラコンがこれに該当します。コポリマーPOMはホモポリマーと比べ、熱安定性が高いためより過酷な環境下で使用が可能です。その他、耐油性や耐アルカリ性などは優れていますが、剛性や機械的強度はやや劣ります。

POMジュラコンの種類

1. 標準POMジュラコン

標準POMジュラコンは、最も一般的なタイプのPOMジュラコンであり、純粋なポリアセタール樹脂から成り立っています。高い耐熱性と耐摩耗性を持ち、機械的特性が安定しています。また、優れた次元安定性を持つため、精密な機械部品の製造に適しています。

このタイプのPOMジュラコンは、自動車産業での歯車、ベアリング、プラグ、バルブなどの部品として幅広く使用される製品です。

2. 耐熱性向上POMジュラコン

耐熱性向上POMジュラコンは、標準POMジュラコンよりも高い耐熱性を持つタイプです。熱による変形や劣化を防ぐため、自動車部品や電子機器、家電製品などの高温環境での使用に適しています。また、耐薬品性も優れており、薬品に対しても安定した性能を維持します。

耐燃性も高いため、電子機器や自動車のエンジンルームなど、火災のリスクがある場所での安全性が要求される用途に適した製品です。

3. 低摩擦POMジュラコン

低摩擦POMジュラコンは、標準POMジュラコンに摩擦削減剤を添加して摩擦特性を向上させたタイプです。摩擦係数が低く、滑りやすい表面を持つため、摺動部品に最適です。

特にスライド部品や軸受け、ギアなどの動作時の摩擦損失を減らす必要がある部品に広く利用されています。これにより、機械のエネルギー効率を向上させ、摩耗のリスクを軽減します。

参考文献
https://www.polyplastics-global.com/jp/product/duracon.html
https://www.yumoto.jp/material-onepoint/plastic-pom
https://www.cutpla.com/pom-use.html

PPS

PPSとは

PPS

PPS (ポリフェニレンサルファイド) とは、ベンゼンと硫黄が交互に結合した構造を有する熱可塑性樹脂です。

優れた特性からスーパーエンジニアリングプラスチックとして利用されています。また、充填するフィラーの種類によって機械的強度などの特性を変化させることが可能で、ガラスファイバーを3割程度複合した強化樹脂として普及しています。

様々な産業で用途が拡大している要因の1つが、バランス性の良さです。耐熱性や機械的強度、寸法安定性、難燃性、耐薬品性だけでなく、成形性や加工性にも優れています。

PPSの使用用途

PPSは優れた特性を有するスーパーエンジニアリングプラスチックのため、高い性能が求められる自動車部品や電子部品、医療機器部品などに使われています。特に自動車部品用途は、PPS市場の半分近くを占めています。

ガソリン車よりハイブリッド車の方がPPSを使用する部品は多くなるため、今後も需要拡大が見込まれています。自動車以外の用途では、寸法安定性や絶縁性に優れることから、ICチップなどの電子部品にも有用です。また、耐熱性や難燃性に優れたPPS繊維を使用してフィルターも作られています。

PPSの原理

一般的にPPSは、パラジクロルベンゼンと硫化ソーダを極性溶媒中で重縮合反応させることで得られます。高温高圧下で反応を進行させ、脱水反応や脱食塩反応を経て重合されます。重縮合反応で得られたポリマーに架橋処理をすると特性が大きく変化するため、架橋型と直鎖型PPSを用途に応じて使い分けることが大切です。

1. 架橋型PPS

架橋型PPSはポリマーの合成過程で、酸素雰囲気下で熱処理することで得られます。熱処理中にポリマー鎖に酸素を取り込むことにより分子量をコントロールできます。この熱処理によって架橋構造が形成され、高温環境下でも高い剛性を維持し、クリープ変形に高い耐性を示します。

2. 直鎖型PPS

直鎖型PPSは特殊な熱処理を行わないため、直鎖状の構造を維持しています。架橋型に比べ剛性は低下しますが、靭性や伸び性は向上します。また、高純度合成が可能であり、高い耐吸湿性や電気絶縁性、寸法安定性を実現できます。

PPSの種類

1. 無強化PPS

無強化PPSは、ガラス繊維や炭素繊維などの強化材料を含まない純粋なPPS樹脂から成るタイプのポリマーです。この無強化タイプのPPSは、その優れた特性により、多くの産業分野で広く利用されています。

耐熱性においては、無強化PPSは非常に高い耐熱特性を持ちます。高温環境下でも安定して性能を維持し、変形や劣化がほとんど生じないため、高温での使用が可能です。

この耐熱性から、エンジン部品や排気系部品、ボイラー部品など、高温環境での要求される産業製品や部品に頻繁に用いられています。

2. 強化PPS

強化PPSは無強化PPSに対して、ガラス繊維や炭素繊維などの強化材料を添加して製造されたタイプのポリマーです。これにより、強化PPSは高い強度と剛性を獲得し、特に耐衝撃性が要求される部品や構造物に適しています。

自動車産業では、エンジン部品や外装部品、サスペンション部品など、高い耐久性と剛性が要求される部品に強化PPSが使用されています。エンジン部品に使用される場合、高温や振動、摩擦などの厳しい環境下での耐久性が必要ですが、強化PPSはその要件に応える優れた性能を持った製品です。

3. 電気・電子用途向けPPS

電気・電子用途向けPPSは、高い電気絶縁性を特長とするPPSの1種です。電気絶縁性が優れているため、電気や電子の分野で広く利用されています。主な用途としては、プリント基板、コネクター、端子台、モーター部品、トランジスタ、ICパッケージなどが挙げられます。

電気・電子用途向けPPSは、高温での動作が要求される機器に適しており、高い耐熱性と安定した電気特性により、高温環境下での安定した動作が可能です。さらに、優れた耐薬品性も持っているため、腐食や化学薬品に対しても耐性を示します。

4. 合金強化PPS

合金強化PPSは、PPSに他の材料とのブレンドを行い、特性を向上させたタイプのポリマー材料です。このタイプのPPSは、潤滑性や耐摩耗性が求められる用途に適しています。合金化により、グラファイト、鉱石充填材などを添加することで、特定の特性を強化できます。

添加した合金強化PPSは、摩擦特性や耐摩耗性が向上し、この特性から、自動車部品や機械部品のような潤滑性や耐摩耗性が重要な部品に利用される製品です。特にエンジン部品やブレーキ部品など、高温・高負荷での摩擦が多い部分で優れた性能を発揮します。

参考文献
https://www.dic-global.com/ja/products/pps/about.html
https://plabase.com/news/836
https://www.yumoto.jp/material/pps

PTFE

PTFEとは

PTFEPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、ポリエチレンの水素原子がフッ素原子に置き換わった構造を有する樹脂です。炭素とフッ素間の結合が非常に強いため、耐熱性、耐薬品性に優れます。その特徴を活かして高温であったり薬品と接触するような過酷な環境下で用いるチューブ、パッキンなどに使われています。

また非粘着性、耐摩耗性にも優れるためフライパンなどの調理器具のコーティングにも使用されています。一方で溶融したときの粘度が非常に高く、熱流動性が低いため他のフッ素樹脂に比べて加工性が低いという欠点があります。

PTFEの使用用途

PTFEは耐摩耗性、非粘着性、耐薬品性、耐熱性など様々な特徴を有する樹脂です。身近な用途としてはフライパンなどの調理器具のコーティングが挙げられます。一般的に「フッ素コート」と呼ばれるものは表面にPTFEがコーティングされています。

その他、工業的な用途としては高温環境下、腐食性の高い薬品を使用する環境下などの過酷な環境で用いられるホース、パッキン、チューブ、絶縁材などが挙げられます。一方でPTFEは溶融粘度が非常に高いため、延伸、射出成形が難しく成形方法が限られており、他のフッ素系樹脂に比べて加工性は劣ります。

PTFEの構造と樹脂の製造方法

PTFEの化学構造はポリエチレンの水素がすべてフッ素に置き換わったものです。炭素とフッ素の結合は非常に強く、容易に分解することはありません。この性質がPTFEの耐熱性、耐薬品性の源となっています。

一方でPTFEは他のフッ素樹脂に比べて成形、加工性に劣ります。PFAなどの一般的なフッ素樹脂は加熱することで溶融し、流動性を示します。そのため、射出成形などの方法で整形することができます。一方でPTFEは融点を超えても非常に高粘度なままで、流動性を示しません。そのため、PTFEは粉末を圧縮成形し、融点以上の温度で焼成処理を行うことで成形します。

PTFEとテフロンの違い

PTFEと混同されやすいフッ素樹脂として「テフロン」が挙げられます。テフロンとはアメリカの化学メーカーであるデュポン社の登録商標です。デュポン社がPTFEをテフロンという名前で商品化したため、PTFEとテフロンが同一と見なされがちになったという背景があります。

しかし、現在ではテフロンというのは様々なフッ素樹脂を総称する商品名であり、PTFE単独を指しているわけではありません。例えばFEP、PFAなどのフッ素樹脂や変性フッ素樹脂もテフロンとして販売されています。これらのフッ素樹脂は構造によって接着力や絶縁性、耐薬品性などが異なるため、用途に応じたフッ素樹脂を選定する必要があります。

PTFEの耐熱温度と分解物の安全性

PTFE自体は経口摂取に関する健康影響の報告は無く、調理器具から剥がれたコーティングの薄片を飲み込んだとしても影響が無いと考えられています。しかし、350℃以上の過加熱の状態になるとPTFEが熱分解して有害な化合物を生成する可能性があります。例えば鍋に火を掛けたまま寝てしまい、4時間から7時間後に呼吸器系の障害を発症したという例が報告されています。また、研究者が実験器具のPTFEチューブを誤って過加熱してチューブが燃焼、発生した煙を吸い込んで喉の痛みを発症したという事例もあります。

通常の使用の範囲では人体に影響がないものの、長時間直接火に当たり続けたり、過加熱の状態が続くことで有害な分解物が発生する可能性はあるため、使用環境には十分な注意が必要です。

参考文献
https://www.meikou.jp/ptfe.html
https://nihon-polymer.co.jp/2019/10/20/790/
https://www.fsc.go.jp/sonota/factsheets/f02_fluorocarbon_polymers.pdf
https://www.packing.co.jp/PTFE/ptfe-pfa-fep-pctfe.htm
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsre/38/3/38_190/_pdf/-char/ja
https://www.research.johas.go.jp/sanchu/teflon-2.pdf
https://www.flon.co.jp/pdf/performance04.pdf

PVDF

PVDFとは

PVDF(ポリフッ化ビニリデン)は、様々な特性を有するフッ素樹脂の一種です。熱可塑性樹脂であるため加工性に優れるのはもちろん、機械的強度や耐薬品性に優れるため、様々な用途で利用されています。耐熱温度は150℃とも言われ、熱安定性の高い素材として知られています。フッ素樹脂の中で生産量と使用量ともにトップであるPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、耐摩耗性や非粘着性に優れることから、テフロン加工に使用されています。

PVDFの使用用途

PVDFは半導体用の製造装置部品や医療機器部品だけでなく、中空糸膜やボルト、釣り糸などの製品にも使用されています。このように様々な用途で使用される理由は、工学的に優れた特性をいくつも有しているからです。フッ素樹脂の特徴は、機械的強度に優れている点ですが、PVDFはその中でもトップクラスの強度を持っています。そのため、大きな負荷がかかる機械の部品や中空糸膜に使用されているのです。ただ、アミンやエステル系の耐薬品性は低いとされているため、これらの薬品を使用する場面では注意が必要です。

PVDFの原理

フッ素樹脂は電気陰性度が最大のフッ素を有し、強固なC-F結合を形成しているため、物理的・化学的安定性に優れています。モノマー単位のフッ素の個数により、特性が大きく変化するため、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を4F樹脂、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)を3F樹脂、PVDFを2F樹脂と呼び、区別される傾向にあります。具体的には、2Fや1F樹脂の場合、耐薬品性や耐熱性などが低下しますが、機械的強度が向上します。

次にPVDFの製造方法について説明します。PVDFのモノマーは、アセチレンもしくは有機塩素化合物を原料に製造されています。いずれもフッ化水素の付加置換と脱塩化水素反応を主経路にモノマーを生成します。次に、生成したモノマーを懸濁重合や乳化重合を行うことでPVDFを製造しています。懸濁重合法は乳化重合法と比べ、高結晶化度のポリマーを生成できる特徴があり、融点が高くなります。またこれらの重合方法を組み合わせる場合も多く、様々なグレードのPVDFが存在します。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/fiber1968/4/10/4_10_509/_pdf
https://www.yumoto.jp/material-onepoint/plastic-ptfe-pfa-pvdf

シリンダーゲージ

シリンダーゲージとは

シリンダーゲージ

シリンダーゲージとは、穴の内径を高精度に測定するための器具です。リングゲージとの比較によって内径を測る比較測定具であり、ミクロン単位の差でも判別することが可能です。

穴に測定部を差し込むと、案内板が測定子を穴の直径部分まで導き、測定子が穴の内径に合わせて伸縮します。この時の測定子の変位を内部のカム機構が1対1で直角変換し、それを指示器であるダイヤルゲージに伝えることで、変位量を数値として読み取ることができます。

シリンダーゲージの使用用途

シリンダーゲージは主に、穴の内径を測定する際に使用します。測定部に装着するロッドやワッシャーには様々なサイズがあるため、測定する穴の内径に合わせて調整することが可能です。ただし、測定には基準となるリングゲージが必ず必要となります。

また、測定部から柄の部分までの長さが比較的長いというのも特徴の一つです。そのため、長物ワークや大きな鋳造品の深穴など、三点マイクロではなかなか届かないような深い穴の径でも簡単に測定することができます。

シリンダーゲージの原理

シリンダーゲージによる測定を行う際は、まず0点合わせを行う必要があります。

例えば、対象の穴径が20mmのものを測定する場合には、同じく20mmのリングゲージを用意し、測定部のサイズも20mmに合わせて調整します。測定部をリングに差し込んだ時に、ダイヤルの指針が時計方向いっぱいにきた位置を0点として合わせます。これで0点合わせは完了です。

その後は、対象となる穴の部分に測定部を入れ、0点合わせの時と同様にダイヤルの指針が時計方向いっぱいにきた時の値を読み取ります。仮に、この時の数値が0点より右に0.03mmだったとすると、この穴の内径は20.00-0.03=19.97(mm)ということになります。逆に、0点よりも左に0.03mmだったとすると、20.00+0.03=20.03(mm)という値になります。

シリンダーゲージは測定までのセッティング作業も多く、初めて扱う人にとっては難易度の高い測定器具です。とはいえ、慣れてくると素早くかつ正確に測定する技術が身に付くため、早めに使い方を覚えておくと良いでしょう。

参考文献
https://teclock.co.jp/ja/product/bore-gauge/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/091/
https://www.goo-net.com/pit/magazine/110340.html

スクロールチャック

スクロールチャックとは

スクロールチャック

スクロールチャックとは、主に旋盤の主軸に取り付けて工作物を保持するための器具です。チャックハンドルを手で回すことによって、120°等配の三つ爪が同時に動き、工作物を把握することができます。

対応できる工作物は丸物が基本ですが、三つ爪スクロールチャックなら六角材を掴むこともでき、四つ爪なら四角材も把握可能です。

また、爪の形状は工作物に合わせて成形することもできます。その際は、ジョーロックやチャックメイトと呼ばれる固定具で爪を所定の位置に固定し、機上にて爪を共ぐりするのが一般的です。

スクロールチャックの使用用途

スクロールチャックは汎用旋盤で広く使用されてきました。しかし、自動化が進みCNC旋盤が主流になった今では、油圧のパワーチャックやエアーチャックの需要が増え、スクロールチャックが使用される機会は減ってきています。

とはいえ、今でもスクロールチャックを使用しているという製造現場もあります。手作業でチャッキングが行える分、熟練作業者の感覚を活かした微調整ができるというメリットもあり、あえてスクロールチャックを使用しているという製造現場も珍しくありません。

スクロールチャックの原理

スクロールチャックの特徴は、スクロールと呼ばれる渦巻き状の溝を持つカムが内蔵されている点にあります。

三つ爪スクロールチャックには、スクロールの溝とぴったりかみ合う形で、3つの爪が同間隔で組み付けられています。爪の溝は位置がそれぞれ異なっており、これによって、三つ爪がちょうど同心円上に配置されるようになっています。

チャックハンドルを回すと、ベベルギヤを介してスクロールも回転します。すると、スクロールの回転によって三つ爪も同時に径方向に移動します。この動作によって、工作物を中心位置で把握することが可能となるのです。

しかし、スクロールチャックはその構造上、正確な中心位置で把握するということは不可能です。個体差はあれども、平均して0.07mm程度の偏心は許容しなくてはなりません。

できる限り偏心のないように加工を行うには、掴みかえをなるべく行わないように加工方法を工夫することが必要です。背面加工など、どうしても掴みかえを行う必要がある場合には、四つ爪単動チャック(インディペンデントチャック)を使用するという方法もあります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0034.html
http://kousyoudesignco.dip.jp/meel3.html

ナトリウムランプ

ナトリウムランプとは

ナトリウムランプ

ナトリウムランプとは、蒸気圧の高いナトリウム蒸気中でアーク放電を行い、発光させるランプのことです。

アーク放電はプラズマを発生させ、導電性のない気体中に電気が流れる現象を指します。ナトリウムランプは暖かみのあるオレンジ色の光が特徴的で、水銀灯と比較して高い発光効率を誇ります。

また、寿命が長いことや透過性能に優れる点から、道路用の照明に使われることもあります。ただし、消費電力が小さく、長寿妙なLED照明の登場によって、ナトリウムランプの需要は減少しています。

ナトリウムランプの使用用途

ナトリウムランプが視認性がいい理由

図1. ナトリウムランプと視認性

ナトリウムランプは、省エネを目的とした道路や工場、商業施設の照明用途にしばしば使われます。最も有名な例がトンネルです。トンネル内は排気ガスや塵などで視認性が悪くなるため、これらの影響を受けにくいオレンジ色のナトリウムランプが1960年代頃から使われていました。

自動車の排気ガスの規制が強化されてトンネル内の視認性が低下することがなくなり、LED照明が普及したことで、ナトリウムランプの需要は減少傾向にあります。しかし、ナトリウムランプの光はその性質上虫を引き寄せにくいため、食品業界や製造業など虫の混入が深刻な問題となりうる業界では照明としての需要が高いです。

ナトリウムランプの原理

ここでは蒸気圧の大きさに応じて低圧、高圧、高演色高圧ナトリウムランプの3種類に分類し説明します。

1. 低圧ナトリウムランプ

低圧ナトリウムランプの構造

図2. 低圧ナトリウムランプの構造

封入するナトリウム蒸気の圧力は0.5 Pa前後と非常に低く、発光の補助剤としてネオンやアルゴンが微量含まれています。ナトリウムランプの中で最も長い歴史を持ちますが、発光効率は最大180 lm/WとLEDより高いです。

しかし、オレンジの単色光のため、赤色の物体が黒色に見えてしまうことや寿命が短いなどの欠点も併せ持ちます。

2. 高圧ナトリウムランプ

低圧ナトリウムランプの演色性を改善したランプで、0.1気圧のナトリウム蒸気圧を封入しています。発光の補助剤としてキセノンが微量に含まれており、高温高圧の環境下でも破損しないように発光管には特殊なアルミナセラミックが使用されています。演色性の改善だけでなく、発光寿命も3倍程度長くなります。

3. 高演色高圧ナトリウムランプ

高圧ナトリウムランプと比較して蒸気圧を5倍程度まで引き上げた照明です。演色性が大幅に向上し、白熱電球のような暖かみのある照明になります。

他のナトリウムランプと比較すると発光効率は低下しますが、それでも白熱電球の3倍以上の効率を誇ります。

ナトリウムランプのその他情報

1. ナトリウムランプが虫を引き寄せにくい理由

ナトリウムランプの発光波長

図3. ナトリウムランプの発光波長

虫は光の中でも、紫外線に引き寄せられて集まってきます。ナトリウムランプが発する光の波長は590nm付近のみであり、黄色の単色発光です。すなわち、虫からすると感知できない光であるため、虫が集まりにくいです。

単色発光のため、色情報が必要な視覚検査を行う場所などでは不適ですが、農道など虫を寄せ付けたくない場所のランプには適しています。

2. ナトリウムランプを代替する際の注意点

ナトリウムランプと同等の原理で発光する水銀灯の生産終了に伴い、ナトリウムランプもLEDへの代替が進んでいます。しかし、ナトリウムランプはその発光色に起因する特長が複数あります。

省エネだけに注目し安易に白色LEDに代替するのではなく、使用する現場に応じた照明を選択することが重要です。近年、ナトリウムランプの色温度を再現したLEDが開発されているため、このようなLEDも検討すると良いです。

参考文献
https://electric-facilities.jp/denki7/ko/003.html
http://www.ceramic.or.jp/museum/contents/pdf/2008_05_06.pdf
https://gazoo.com/column/daily/18/04/13/

ロータリージョイント

ロータリージョイントとは

ロータリージョイント

ロータリージョイント (英:Rotary Joint) とは、回転する部分と固定された部分との間で信号や流体を伝達するため継手です。

対応する流体の種類は幅広く、水やエアー、油、クーラントなども供給が可能です。電気信号を伝達するロータリージョイントも販売されています。

本体は、ベアリングや回転用のシールなどが内蔵された回転部分と、配管を繋ぐハウジングなどを含む固定部分に分かれています。接続された配管は回転と連動することがないため、ねじれたり損傷したりする危険を防ぐことが可能です。

また、ロータリージョイントは回転部分と固定部分の間で機械的な制約を最小限に抑えることが可能です。これにより、回転範囲や回転速度に制約がなくなります。機械の自由な回転運動を可能にするため、設計や操作上の柔軟性が向上します。

ロータリージョイントの使用用途

ロータリージョイントは、さまざまな使用用途で広く活用されています。以下に使用用途の一例を示します。

1. 通信業界

ロータリージョイントがアンテナなどの回転機器と固定された基地局間で信号を伝送するために使用されます。これにより、回転する機器が自由に動きながら、信号の連続的な伝送が可能です。

衛星通信では、衛星アンテナが地上局に向けて常に信号を送る必要があります。ロータリージョイントを使用することで、アンテナが回転しながらも信号を確実に伝送することが可能です。

2. 自動車産業

自動車のステアリングシステムでは、ドライバーがハンドルを回転させることでタイヤの方向転換を制御します。このとき、エンジンルームとステアリングホイールとの間で信号やエネルギーを伝送するためにロータリージョイントが必要です。ロータリージョイントはハンドルの回転とタイヤの方向転換を連動させる役割を果たし、スムーズなハンドリングと車両制御を可能にします。

3. 風力発電

風力タービンは風の方向に合わせて回転する必要があります。これにより、風力を回転運動に変換して発電します。

風力タービンの上部には、回転する部分と固定された部分の間で電力や制御信号を伝送するためのロータリージョイントが装備されることが多いです。これにより、タービンが風向きに合わせて正確に回転することができます。

ロータリージョイントの原理

一般的なロータリージョイントは、ローター (回転部分) 、ベアリング、ハウジング (固定部分) 、回転用シールなどで構成されています。

1. ローター (回転部分)

ローターは回転する部分であり、回転軸やシャフトです。回転する信号や流体の伝送を担当します。ローターは、回転の安定性や耐久性が求められるため、高品質な素材や適切な表面仕上げが施されることがあります。

2. ベアリング

ベアリングは、ローターを支持し、回転運動を円滑に行う役割を果たします。ボールベアリングやローラーベアリングなどが使用されることが多いです。摩擦を最小限に抑え、負荷を受ける部品の寿命や動作精度を向上させる役割を果たします。

3. ハウジング (固定部分)

ハウジングは、ロータリージョイントの固定された部分です。一般的に装置のフレームや構造体に取り付けられ、回転部分の安定性と固定を提供します。ハウジングは、信号や流体の伝送経路を形成し、適切なシールや接続手段を提供することがあります。

4. 回転用シール

回転用シールはローターとハウジングの接合部に配置され、漏れや損失を防止することが可能です。回転用シールは回転部分の軸とハウジングの間に密封を提供し、信号や流体の漏れを防ぎます。適切なシール材料と構造が選択され、耐久性や耐摩耗性を確保します。

ロータリージョイントの種類

ロータリージョイントはいくつかの種類に分けられます。

1. 単式

ローターとハウジングの間に、信号や流体の伝送に使用される1つの通路しか存在しないロータリージョイントです。最も単純な構造で、広く使用されています。

接続された配管から、水・エアー・油などが供給され、回転体を介して反対側に排出されます。流路は1つであるため、1種の流体のみを供給することが可能です。

2. 複式内管固定式

複数の回転通路を持ち、内管が固定された構造です。回転体に水・エアー・油などを供給し、同じ側から排出させることができます。2つ以上の流体を供給する場合に使用されます。

3. 複式内管回転式

複数の回転通路を持ち、内管が回転可能な構造です。回転体に水・エアー・油などを供給し、同じ側から排出が可能です。内管も一緒に回転する必要がある場合には、複式内管回転式を用います。

参考文献
http://www.sgk-p.co.jp/products/rotaryjoint/use/
http://www.takeda-trade.co.jp/HTMLfiles/pdf.folder/pdfstock/maier/Machine%20Tools.pdf

回転センタ

回転センタとは

回転センタとは、旋盤の心押台に取り付けられる、工作物を保持するための特殊な器具です。

最大の特徴は、本体にベアリングが内蔵されていることで、工作物と連動しながら安定した保持が可能となっています。従来の固定センタとの違いは、回転によって工作物との間に生じる摩擦を大幅に軽減できる点です。

固定センタでは、摩擦により工作物に許容できないほどの傷を与える可能性が高く、使用できるワークや回転数に制限がありました。しかし、回転センタの登場により、これらの問題が解消されました。

工作物との摩擦を低減し、高速回転の加工にも対応も可能です。より精密で効率的な加工ができるため、用途は幅広いです。

回転センタの使用用途

回転センサは、長い工作物やチャッキング部が少ない工作物を安定して加工するために、チャックと反対方向から支える際に使用されます。主軸の回転や加工の負荷による工作物の変形を防ぎ、より正確な加工が可能です。

回転センタの特徴であるベアリングの内蔵により、主軸と連動した保持が実現されています。工作物の安定性が向上し、加工精度も向上します。しかし、ベアリングの存在によってヘッド部の径が大きくなってしまう欠点があるため、工具が接近する際には、回転センタとの干渉に注意が必要です。

回転センタは、さまざまな工作物の加工を円滑に進めるために欠かせない器具です。その利用範囲は広く、自動車部品や航空機部品、一般機械部品などの製造現場や研究所などが挙げられます。また、精密な加工が求められる医療機器の製造など、産業分野でも重要な役割を果たしています。

回転センタの原理

回転センサは主に、光学式、磁気式、静電容量式などの種類があり、それぞれ異なる原理で回転運動を検出しています。回転センサは、それぞれの原理に基づいて回転運動を正確に検出し、電気信号に変換可能です。

1. 光学式回転センサ

光学式回転センサは、光の透過や反射を利用して回転を検出します。ディスク上に複数のスリットが設けられ、ディスクが回転することで光の透過量が変化し、その変化を光検出器で検出することで回転を計測します。

2. 磁気式回転センサ

磁気式回転センサは、磁場の変化を利用して回転を検出します。回転体に磁石が取り付けられ、回転に伴い磁場が変化することで、磁気センサがその変化を検出し、回転を計測します。

3. 静電容量式回転センサ

静電容量式回転センサは、回転体の静電容量の変化を利用して回転を検出します。回転体と固定部に電極が設けられ、回転に伴い静電容量が変化することでその変化を検出し、回転を計測します。

回転センタの種類

回転センタは、旋盤の心押台に取り付けて使用します。シャンク部はモールステーパシャンクになっており、心押台側の軸サイズに合ったものをはめ込む構造が一般的です。

また、回転センタの原理で述べた種類とは別に、回転センタは大きく2つの種類に分けられます。

1.  傘型回転センタ

先端が傘のような形状をしているものです。中が空洞になっている管材 (パイプ材) を加工する際に、センタ用具として使用します。

2. レースセンタ

旋盤でバー材やブランク材を加工する際に振れ止めとして使用する、一般的な回転センタです。本体がすべて同一の鋼で作られた全鋼タイプが主流ですが、先端に超硬チップが付いたタイプもあります。

工作物の材質によっては先端が摩耗で損傷してしまうこともあるため、より硬度の高いものが求められる場合には超硬チップ付きが適しています。

3. その他

最近では、先端取替式というタイプも出てきています。回転センタ本体と先端部のセンターヘッドが別々になったものです。センターヘッドを取り換えることで、簡単に新品への交換ができたり、さまざまなワークに対応できたりと、メリットは多いです。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/052/
http://kabuto-mfg.co.jp/replacement/

半導体パッケージ

半導体パッケージとは

半導体パッケージ

半導体 (IC) パッケージとは、半導体チップに装着するケース部品です。

半導体チップをカバーした状態で、他の電子部品とともに電子基板に実装されます。半導体チップへの電源供給や外部の環境 (温度や湿度の変化やごみ) からの半導体チップの保護、更に半導体チップの内部から発生する信号を周辺のデバイスに伝え、周辺のデバイスからの信号を内部に取り込む重要部品です。

半導体パッケージは、半導体チップの性能を最大限に発揮するため、様々な角度からサポートを行う役割を持ちます。

半導体パッケージの使用用途

半導体パッケージは、スマートフォンやタブレットなどに使用されています。最近では、これらのほか宅内の各種電子機器などにおいても小型化、軽量化、高機能化がどんどん進んでいます。

その結果、これらの機器の制御基板に実装される半導体および半導体パッケージも同様に小型化、軽量化、高機能化が求められ、機器の進化とともにパッケージも進化しました。さらには、用途によるパッケージの開発が進められており、新たな構造の技術も生まれています。

特にセンサー機器用のパッケージは複数の波長を参照するため、複数の機構を1つのパッケージでカバーできる構造にするケースが増加傾向です。半導体チップの微細加工による集積度向上の結果、このように従来では実現しなかった技術が実現可能となっています。

半導体パッケージの原理

半導体パッケージは半導体との電気接続を担う構造と、半導体自体を保護する構造で成り立っています。電気接続の為、端子部品が備え付けられており、用途やスペックにより端子は材質が異なります。

高スペックな用途に対しては、金メッキ品が使用されるケースが多いです。保護する部分は封止材と呼ばれ、素材として主に金属が使用されていました。

軽量化やコスト低減のため、樹脂系の素材も採用が増えてきた中、近年はセラミックの需要が大きく伸びています。 封止材には内部にダイが実装されており、各種シーリング材にて接着される構造です。

封止材の素材により、気密封止や真空封止が可能であり、センサー機器の感度上昇につながります。

半導体パッケージの種類

半導体パッケージの種類は、挿入実装用か表面実装用、その他端子の伸び方で分別されます。通常1つの半導体パッケージの中には1種類の半導体チップを封入する構成です。

これに対して、最近では機器の小型化や高機能化に対応するために製造プロセスの異なる複数の半導体チップを組み合わせ、物理的に1つのパッケージに封入した手法がとられています。パッケージ本体に使用されている材質から半導体パッケージの種類を分類すると、プラスチックパッケージとセラミックパッケージに分かれます。

1. SIP (System in Package)

複数のチップをパッケージで封止した構造です。設計上の制約も少なく、コスト対応に向いています。

パッケージの1方向から端子が伸びており、挿入実装用の種類です。放熱性能に優れており、小型の半導体チップに使用されます。

2. SOP (Small Outline Package)

パッケージの2方向から端子が伸びており、L字でガルウィング計と呼ばれています。

3. QFP (Quad Flat Package)

パッケージの4方向から端子が伸びており、こちらも端子はL字のガルウィング計です。

4. LGA (Land Grid Array)

パッケージの下部に端子が配置されており、格子状でソケット実装が可能です。

半導体パッケージのその他情報

セラミックの利点

セラミックは熱耐性が高く、加熱処理でも形状が変わりません。さらには熱伝導率や加工性にも優れており、半導体パッケージの高品質化に大きく寄与しています。

そういった背景から、セラミック自体の需要が急増し、材料としての入手が簡単ではありません。対応策としてセラミックの再生品を活用する動きも出てきており、その再生技術の進化にも注目が集まっています。