ナンバープレート認識カメラ

監修: 株式会社グラスフィアジャパン

ナンバープレート認識カメラとは

ナンバープレート認識カメラ

ナンバープレート認識カメラとは、車両のナンバープレートから車両番号や地名を取得する機能があるカメラです。システムの構成の仕方やアプリケーションの合わせ方によって、取得した車両番号や地名、交通量等をデータ化し、防犯目的の他にもマーケティング等に生かすことが可能です。

ナンバープレート認識カメラの使用用途

1. セキュリティ向上や車両入出庫管

ナンバープレート認識カメラの使用例

図1. ナンバープレート認識カメラの使用用途 (1)

物流倉庫等車両の出入りが多い場所の出入り口に設置し、出入りする車両をナンバープレートのデータで管理することで、コストの削減や事故のリスクマネジメント、セキュリティ向上などに効果があります。

2. マーケティングへの活用

ナンバープレート認識カメラの使用用途

図2. ナンバープレート認識カメラの使用用途 (2)

観光地や商業施設の駐車場に設置し、ナンバープレートから地域に関する情報や、通過した車両台数の情報等を収集しデータ化・グラフ化するなど、リスクマネジメントに加えマーケティングへの活用も期待されます。

ナンバープレート認識カメラの原理

撮影されたナンバープレートの画像を解析することで、車両番号や地名等を読み取ります。ナンバープレート認識カメラシステムには、生体認証にも使用されているAIディープラーニング(人工知能による機械学習)が使われていることが多いです。繰り返し認識させAIに学習させることで、更に精度の高い認識が見込まれます。

ナンバープレート認識カメラを利用する上で気をつけたいこと

〇プライバシーについて
ナンバープレートに記載されている車両番号や地名等は個人情報にはあたりません。しかし、ナンバープレートを認識する際に撮影された画像に、個人を特定する情報が含まれる場合は個人情報にあたります。また顧客情報等の個人情報と紐づけするような運用をしている場合も、これらの情報は個人情報となります。

ナンバープレートの情報を収集し社内でデータ分析を行う場合には、本人の許可を取る必要はありませんが、運用方法によっては個人の許可を取る必要があります。

また昨今のインターネット上では、思わぬところから個人情報が特定されてしまう可能性があります(ナンバープレートの画像が記録された時間や撮影場所等より)。そのため、個人情報にあたらないとしても、漏洩することがないように厳重にデータを管理する必要があると言えます。

参考文献

(個人情報保護委員会)「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関するQ&A(https://www.ppc.go.jp/personalinfo/contact/
(総務省HP)「利用者支店を踏まえたICTサービスに係る諸問題に関する研究会第一次提言(案)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000028227.pdf

本記事はナンバープレート認識カメラを製造・販売する株式会社グラスフィアジャパン様に監修を頂きました。

ソーラーカメラ

監修: 株式会社グラスフィアジャパン

ソーラーカメラとは

ソーラーカメラ

ソーラーパネルにより給電し稼働するカメラ全般です。

給電・通信経路を確保する必要がない製品が多く、電気供給やネットワーク環境に乏しい場面など、配線が必要な従来カメラでは活躍が難しい場面でも使用することができます。

ソーラーカメラの使用用途

    1. 広い田畑、牧場、山中など、電源・通信経路確保がしづらい場所でのご使用 
      広い田畑、牧場、山中など、電源・通信経路確保がしづらい場所でのご使用広い田畑や牧場の鳥獣被害の監視、または山中の不法投棄監視を目的とした設置など、電源やLANケーブルの経路確保がしづらい場所であっても稼働することができます。機器によっては録画だけではなくライブビューが可能のため、人が常駐・訪問することが難しい場所であっても、通常カメラと同じように使用することができます。
    2.  

 

  1. 建設現場等での一時的な映像記録
    建設現場等での一時的な映像記録建設現場において一定工事期間のみ録画をしたいといった場合であっても、電源や通信回線を引く必要がないため、カメラの設置のみで映像記録が可能です。
    例として進捗状況の確認、建設資材の盗難防止等に適しています。

ソーラーカメラの原理

ソーラーパネル一体型のカメラは太陽光発電により給電を行うため、給電経路の確保を行う必要がありません。発電した電力は搭載されているバッテリーに蓄電されている場合が多く、天候不順の際にはバッテリーからの給電によって稼働します。

また完全ワイヤレスを目指すために、LTEルーターを含むLTE通信に必要な機器を一体化し、これによりライブビューを行う機器が多くあります。

※機器によってはLTEルーター通常搭載で、カメラに有線LAN接続ポートがあり、アンテナ経由でネットワーク接続が可能なカメラもあります。

ソーラーカメラを利用する上で気をつけたいこと

  1. LTE通信によるライブビュー閲覧の際の通信費
    完全ワイヤレスのソーラーカメラでライブビューを閲覧する際には、多くの場合LTE通信を利用することになります。常に動画をリアルタイムで閲覧することになると、通常のカメラで閲覧するより多くの通信費がかかるため、運用の際には注意が必要です。
  2. バッテリー稼働の継続時間
    天候不順の際には、晴天時に蓄電されたバッテリーによりカメラが稼働することになります。機器によりバッテリーのみによる稼働時間は変わってきますが、消費電力を抑えるなど稼働時間を延ばす工夫を施している機器もあります。

参考文献

https://www.grasphere.com/1701/

本記事はソーラーカメラを製造・販売する株式会社グラスフィアジャパン様に監修を頂きました。

組み込みソフトウェア

組み込みソフトウェアとは

組み込みソフトウェアとは、我々の身の回りに存在するパソコンや携帯電話、電子レンジ、冷蔵庫、カメラなどの電子機器に組み込まれたソフトウェアのことを指します。

組み込みソフトウェアの定義は諸説ありますが、一般的にはコンピューターに命令を行い、電子機器の制御などを行うためのプログラムのことです。

例えば、冷蔵庫に組み込まれているソフトウェアは、扉の開閉に伴う内部温度の制御や外部温度の変化に伴う温度制御などを行なっています。これらの指示を装置に対して行うことで、必要な動作を実現しているのが組み込みソフトウェアです。

近年はIoT(Internet of Things)の普及により、ますます組み込みソフトウェアの重要性が高まっています。

組み込みソフトウェアの使用用途

組み込みソフトウェアは前述した通り、我々の身の回りに存在する電子機器に組み込まれているソフトウェアです。しかし、組み込みソフトウェアは、ユーザーが使用する機器だけではなく、工業用設備の機器やロボットの一部などにおいても利用されています。

1. 家電製品

電子レンジ、冷蔵庫、洗濯機など、家電製品のほとんどに組み込みソフトウェアが搭載されています。

2. 自動車

エンジン制御、ABS、カーナビなど、自動車の様々な機能を制御しています。

3. スマートフォン

電話機能、カメラ機能、アプリの動作など、スマートフォンの基本的な機能を実現しています。

4. 産業機器

工場などで使われるロボットや生産ラインの制御システムなど。

組み込みソフトウェアの原理

組み込みソフトウェアは、私たちの身の回りのあらゆる電子機器に組み込まれ、その機器の機能を制御する重要な役割を果たしています。その役割は多岐にわたりますが、大きく以下の4つに分類できます。

1. 機器の制御

温度センサー、湿度センサー、加速度センサーなど、様々なセンサーから得られるデータを収集し、そのデータに基づいて機器を制御ししたり、モーター、ディスプレイ、LEDなど、機器の動作に必要な部品を制御します。例えば、エアコンでは温度センサーで室温を検知し、その情報に基づいてエアコンの運転を制御します。また、ボタン、タッチパネル、音声認識など、ユーザーとのインタフェースを構築し、ユーザーの操作に応じて機器を動作させます。

2. データ処理

アナログ信号をデジタル信号に変換したり、ノイズを除去したりするなど、信号処理や、デジタルカメラや監視カメラなどの画像データのほか、音声認識や音声合成など、音声に関するデータの処理を行います。

3. 通信

他の機器やネットワークと通信を行い、データをやり取りします。IoTデバイスでは、インターネットを経由して遠隔地から機器を制御したり、データを収集したりします。また、通信するためのルール (プロトコル) に従って、データの送受信を行います。

4. システム管理

機器のメモリを効率的に利用するための管理を行い、複数のタスクを並行して処理するための管理を行います。同時に異常が発生した場合に、適切な処理を行うための管理を行います。

組み込みソフトウェアの特徴

組み込みソフトウェアは、特定の機器の機能を実現するために、ハードウェアと密接に連携して動作するソフトウェアです。一方、一般的なソフトウェアは、汎用的なコンピュータ上で動作し、多様なタスクをこなすためのソフトウェアです。 それぞれのソフトウェアには、目的、動作環境、求められる性能など、異なる特徴があります。

  • リアルタイム性: 外部の入力に対して、即座に反応し処理を行う必要があります。例えば、自動車のブレーキ制御では、わずかな遅延が事故につながる可能性があります。
  • 信頼性: 長期間安定して動作することが求められます。一度故障すると、機器全体が動かなくなる可能性があります。
  • 省電力性: バッテリーで動作する機器も多いので、消費電力を抑えることが重要です。

コイルドウェーブスプリング

コイルドウェーブスプリングとは

コイルドウェーブスプリング (英: Coiled Wave Spring) とは、特殊な波形を持ったコイル状のバネです。

一般的なコイルスプリングよりもコンパクトであり、同じ長さのスプリングと比較してより多くの弾性エネルギーを蓄えることができます。物体を支えたり、振動を吸収したりする目的で使用されます。

コイルドウェーブスプリングはコンパクトな設計が可能なため、スペースの制約のある環境や製品に最適です。また、軽量な材料で作られることが多く、重量を軽減することができます。

振動を吸収する能力が高い点も特徴です。振動や衝撃が物体に伝わることを軽減し、製品や機械の耐久性を向上させることができます。組み立てや取り外しが比較的簡単であるため、設計上の柔軟性も高いです。

ただし、コイルドウェーブスプリングの波形において、応力が集中する箇所が存在します。これにより、スプリングの寿命や強度に影響を与える可能性があります。適切な材料と設計によって、応力集中を最小限に抑えることが必要です。

コイルドウェーブスプリングの使用用途

コイルドウェーブスプリングはさまざまな分野で使用されます。以下はコイルドウェーブスプリングの使用用途一例です。

1. 自動車

シートやシートベルトのテンションを調整するために使用されることも多いです。乗員の快適性や安全性を向上させる役割があります。また、ドアヒンジに使用され、ドアの開閉機構をサポートする場合も多いです。

2. 家電製品

冷蔵庫や洗濯機、オーブンなどの家電製品において、ドアや蓋の開閉機構に使用されます。スムーズで確実な開閉動作を実現することが可能です。

また、家電製品にはモーターなどの動作による振動や騒音が発生する場合があります。コイルドウェーブスプリングによってこれらの振動や騒音を吸収し、製品の静粛性を向上させます。

3. 釣具

一部の釣りリールでは、スプールの回転や糸の巻き取りを制御するためにスプリングが使用されます。コイルドウェーブスプリングはスプールに適切な圧力をかけ、糸の巻き取りやスムーズなキャストを支援する際に使用される場合も多いです。

コイルドウェーブスプリングの原理

コイルドウェーブスプリングは、特殊な波形を持つコイル状のスプリングです。一般的には、内部の波形がねじれたり、波のピークと谷が交互に配置されたりしたスプリングです。その原理は弾性エネルギーの蓄積と放出に基づいています。

外力が加わると波形が圧縮または伸張し、その際に弾性エネルギーが蓄積されます。波形が圧縮されるとスプリングは力を蓄え、波形が伸張するとスプリングは力を放出する仕組みです。

波形が互いに相互作用し合うことで特定の特性を発揮します。波のピークと谷が交互に配置されているため、周囲の波形が変形すると、その影響が波形全体に広がります。

コイルドウェーブスプリングの選び方

コイルドウェーブスプリングを選ぶ際は、以下のような要素を考慮します。

1. 直径

直径は、スプリングのワイヤの太さを表します。直径が大きいスプリングほど、強度が高くなるのが一般的です。適切な直径を選ぶためには、スプリングが必要とする最大の荷重や応力を確認します。

2. 自由長

自由長は、スプリングが圧縮または伸長される前の未圧縮時の全長を指します。適切な自由長を選ぶことで、スプリングの動作範囲や装置内での適切な配置を確保することが可能です。

3. 材質

コイルドウェーブスプリングの材質は性能や耐久性に直接影響を与える重要な要素です。一般的な材質としては、ステンレス鋼、合金鋼、炭素鋼などが使用されます。適切な材質を選ぶためには、使用環境や要求される耐久性・耐腐食性などの要素を考慮することが必要です。

4. 最大荷重

最大荷重は、スプリングが安全かつ正常に動作するために設計された最大の荷重です。この荷重を超えると、スプリングの変形や破損が発生する可能性があります。適切な最大荷重を選ぶためには、予想される負荷を評価します。

ディスプレイ光学測定器

ディスプレイ光学測定器とは

ディスプレイ光学測定器は、ディスプレイ測定機器に光の強度や分光特性、透過および反射特性といった光学的な要素を測定する仕組みを組み込んだ測定機器です。ディスプレイ測定機器においても光学的な要素を測定しますが、ディスプレイ光学測定器は、その測定により特化しています。

一般的な光学測定法は、さまざまなJIS規格に基づいて評価が行われています。例えば屈折率の測定に関する規格を挙げると、光学ガラスの屈折率測定方法としてJIS B 7071や光学ガラスにおける屈折率の温度係数の測定方法としてJIS B 7072などがあります。

これらの光学測定法をディスプレイ光学測定器に取り込むことにより、ディスプレイ測定機器よりもさらに詳細なディスプレイ特性について把握することが可能になります。

ディスプレイ光学測定器の使用用途

従来のディスプレイは、厚さや重さが大きく、ディスプレイの画質も波打ってしまうなど、さまざまな問題を抱えていました。しかし、近年においては、ディスプレイが小型化されており、厚みも薄く設計されています。また、ディスプレイの映像反映技術も進化しています。

例えば昨今において、よく利用されているディスプレイには、有機ELディスプレイや液晶ディスプレイが挙げられます。

有機ELディスプレイは、発光方法として、ダイオードなどの素子そのものが発光することにより、色合いを表現しています。

一方で、液晶ディスプレイは、液晶の下にバックライトが備え付けられており、液晶の上に配置されたカラーフィルターを通過することにより、色合いを表現しています。

このようにディスプレイの発光方法は、多種多様な組み合わせが開発されており、デジタルカメラのディスプレイや電車の運行画面、航空機および軍艦など、その利用価値には制限がなく、映像反映技術もガラスや液晶などで異なります。

したがって、ディスプレイ光学測定器は、ディスプレイの技術が発達したことも相まって、さまざまな産業で活用されているといえるでしょう。

ディスプレイ光学測定器の原理

通常、カラーディスプレイなどの測光や色合いの測定では、色彩輝度計を利用します。色彩輝度計は、光学部や受光部、演算および制御部の3つから構成されており、光学部では、測定物からの入射光を主光路と接眼レンズ部から副光路へ導き、受光センサーにて検出します。接眼レンズ部では、主に焦点の調節を行い、測定角センサーを用いて視角を選択します。受光部では、光検出器(シリコンフォトダイオード)を用いて、XYZ表色系(CIE1931表色系)を直接測定します。

JIS規格では、ディスプレイの測定方法として「JIS C1006:2019 ディスプレイのぎらつき度合の求め方」が制定されました。しかし、この規格以外でディスプレイ装置に関する標準的な測定条件や方法、使用する機器については規定されていません。

カラーディスプレイの測定においては、機械的な特性や物理的な特性だけではなく、心理物理的な人間工学の観点から評価することも必要になります。つまり、輝度やRGB色度、色度範囲などに注目して定量的な測定を行うことが大切です。

ディスプレイ光学測定器には、前述した色彩輝度計などの機器特性以外にもディスプレイに必要な特性を付与した製品が販売されています。

ディスプレイ測定機器

ディスプレイ測定機器とは

我々の生活には、産業や技術の発展により、多くの電子機器が普及しました。例えば液晶テレビや携帯電話、パソコン、リモコン、冷蔵庫、電子レンジなどがあり、デバイスの形態はさまざまです。そして、これらの家電には、ディスプレイが取り付けられており、文字やグラフィック、アニメーションなどを人間の目を通して鮮やかに感じられるようになりました。

これらのディスプレイは、ヒトが覗き込んだ際に歪みやちらつき、ディスプレイの色合いなどといった不具合を生じると、不快感や作業効率の低下につながります。また、グラフィック関連の業務をおこなっている場合には、こういった問題は、致命的な欠陥となり得ます。

そのため、ディスプレイ測定機器を使用して、画面の歪みやちらつきといった画面上の問題を測定します。

ディスプレイ測定機器の使用用途

グラフィックや色彩を取り扱う分野では、WYSI-WYGといった合成語がしばしば使われており、これは「What you see is what you get.」の略称です。意味合い的には、ディスプレイ上の色が、グラフィックデータあるいは印刷した時点で、最終的に求める色合いと視覚的に一致しているかどうかを判断するといったことに使われます。

つまり、この合成語は、ディスプレイの諸問題により、グラフィックデータ上では、視覚的に求めている色合いであっても印刷を行うと、色合いがズレてしまうといった問題などに対する確認行為を指しています。

この問題は、印刷条件などの設定面でのトラブルであることもあり、一概にディスプレイだけの問題であると断定することはできません。しかし、ディスプレイ測定機器により、画面の精度を測定しなければ、問題が生じるリスクが増加すると考えられます。

このような理由により、ディスプレイ測定機器は、液晶やプラズマ、有機EL、LEDなどのあらゆる産業や業界で使用されています。

ディスプレイ測定機器の原理

これまではディスプレイ装置に関する標準的な測定方法などが、JIS規格において、取り決められていませんでした。しかし、2019年の12月にディスプレイのぎらつきに関する制定と改正が行われ、元来、各種メーカーが開発を進めていた技術について、公平に評価するための指標が取り決められました。

制定と改正が行われたのは、日本産業規格(JIS規格)であり、該当する規格は「JIS C1006:2019 ディスプレイのぎらつき度合の求め方」です。この規格は、ディスプレイのぎらつき度合を表しており、ぎらつきに関する値やコントラストの求め方について規定しています。

また、規格が適用されるディスプレイについては、直視形のフラットパネルディスプレイやテレビジョン、モニタなどの表示デバイス、スマートフォン、タブレットPCの表示デバイスなどがあります。

ディプレイ測定機器においてもディスプレイのぎらつきを測定対象としている製品が販売されており、これは光源から出射された光が偏光フィルタなどを通過することによって、散乱や屈折が生じ、ちらついて見えるといった事象などを測定します。

工具鋼

工具鋼とは

工具鋼

工具鋼とは、高い硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性などの特性を持ち、切削や成形などの工具として使用される鋼材です。

JIS (日本産業規格) では、工具鋼を炭素工具鋼と合金工具鋼と高速度工具鋼の3種類に分類しています。炭素工具鋼は工具鋼の中でも最もよく使用されている工具鋼です。合金工具鋼は高い硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性などの特性を持ち、切削や成形などの工具として使用される特殊な鋼材です。合金工具鋼には冷間金型用や熱間金型用などがあり、高速度工具鋼にはタングステン系やモリブデン系などがあります。

工具鋼の使用用途

以下は、工具鋼の主な使用用途の例です。

1. 切削工具

旋盤用の刃物、フライス盤用の刃物、ドリルビットなどが挙げられます。

2. 圧延工具

金属板や棒を加工する圧延ロール、金属棒材を形成するためのプレス金型などが挙げられます。

3. 金型

プラスチックや金属を成形するための金型などが挙げられます。

4. 制御装置部品

自動車や航空機などの機械の部品などが挙げられます。

5. 電子部品

高周波加熱器のチューブ、真空管などが挙げられます。

6. 刃物

包丁やはさみ、裁断器の刃などの刃物などが挙げられます。

7. ベアリング

高負荷の回転部品に使用される高硬度・高耐摩耗性のベアリング部品などが挙げられます。

工具鋼の種類

JISでは、工具鋼を炭素工具鋼と合金工具鋼と高速度工具鋼の3種類に分類しています。

1. 炭素工具鋼 

炭素工具鋼は主に切削工具や金型などの工具に使用される高炭素鋼です。一般的に硬度が高く、耐摩耗性、耐熱性、耐食性に優れています。また、加工性もよく熱処理によって高い硬度と耐久性を持ちます。JIS G 4401では11種類に分類されています。

2. 合金工具鋼 

合金工具鋼は一般的に高い硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性などの特性を持ち、工具や金型などの製造に使用されます。合金工具鋼は、JIS G 4404では「切削用工具鋼用 (8種類)」、「耐衝撃工具鋼用 (4種類)」、「冷間金型用 (10種類)」、「熱間金型用 (10種類)」の4つのグループに大きく分類され、合計32種類あります。

3. 高速度工具鋼

高速度工具鋼は、JIS G 4403では「タングステン系 (4種類)」、「粉末冶金で製造したモリブデン系 (1種類)」、「モリブデン系 (10種類)」の三つのグループに大きく分類され、合計15種類あります。

タングステン系高速度工具鋼はタングステンを主な合金元素として含む工具鋼の一種であり、高い硬度、耐摩耗性、耐熱性、切削性などの特性を持ちます。主に金属を切削する工具や金型の製造に使用され、高速度での切削作業に適しています。

モリブデン系高速度工具鋼は、モリブデンを主要な合金化元素として含む工具鋼の一種で、高速度で切削する際に高い耐摩耗性、耐熱性、靭性を発揮することが特徴です。

粉末冶金によって製造されたモリブデン系高速度工具鋼は均一な構造と密度を持ち、高い耐摩耗性、耐熱性、靭性を発揮できます。また、均一な配合と焼結により、一般的に、通常の鋼よりも硬度が高く、寿命がより長くなります。

工具鋼の性質

工具鋼の主な性質は以下の通りです。

1. 硬度

工具鋼は高い硬度を持ち、切削や加工などの高負荷な作業に耐えられることが特徴です。工具や金型など、耐久性が求められる部品の製造に使用されます。

2. 耐摩耗性

工具鋼は耐摩耗性に優れており、長期間の使用にも耐えられることが特徴です。切削や加工作業中に生じる摩擦や熱による変形や摩耗が起きにくいため、高速切削工具や金型などに広く用いられています。

3. 耐熱性

工具鋼は高熱状態下でも変形しにくく、熱による軟化を抑制できることが特徴です。そのため高温下での切削作業や鋳造工程など、高温環境下での作業に適しています。

4. 可鍛性

工具鋼は鍛造加工に適しており、様々な形状に加工できることが特徴です。そのため複雑な形状の金型や刃物など、高い精度を要求される部品の製造に適しています。

5. 鋼種

工具鋼には高速度鋼、高炭素鋼、特殊工具鋼など、様々な種類があります。各鋼種によって異なる特性を持ち、用途に合わせて適切な鋼材を選択することが必要です。

工具鋼のその他情報

1. 寸法の安定性

工具鋼は高い硬度や耐摩耗性、耐熱性、耐腐食性が求められるため、長期間使用されても変形や摩耗が少ないことが重要です。また、工具鋼を使用した製品や部品は、形状精度が高いことが求められることがあります。工具鋼は高い寸法安定性を持ち、熱処理後に形状変化が少ないように作られています。

寸法安定性を高めるためには、鋼材に含まれる不純物を取り除くことや、適切な熱処理を施すことが重要です。例えば、鋼材に含まれる酸化物や炭素などの不純物は高温下で反応して酸化や変質を引き起こすことがあるため、工具鋼の製造には高温下での精製工程が含まれています。また、熱処理は鋼材の特性を変化させることで、硬度や強度などの機械的性質の調整のために行われる重要な工程です。

2. 耐食性

工具鋼は湿気や腐食性のある環境下で使用されることが多いため、耐食性も重要な特性の1つです。金型や切削工具などは、湿気や腐食性のある材料に接触することがあるために、部品や製品の寿命が短くなることがあります。特にプラスチックや食品加工など、腐食性のある材料に接触する工具や金型には、耐食性が必要です。

一般的に、工具鋼の耐食性は合金元素の添加や特殊な処理によって向上できます。例えばクロムやモリブデンなどの耐食性を向上させる合金元素を添加することがあります。また、適切な熱処理や表面処理を施すことで、工具鋼の耐食性を向上できることも特徴の1つです。

3. 機械的性質の制御

工具鋼は構成材料や熱処理によって様々な機械的性質を持ちます。工具鋼の主な機械的性質は、硬度、強度、靭性、疲労強度、耐熱性、耐摩耗性、耐腐食性などです。これらの機械的性質は、合金元素の添加量、冷却方法、熱処理の種類や条件などによって制御されます。

一般的に、工具鋼の熱処理には焼き入れ、焼き戻し、焼きなまし、表面硬化などの方法があります。焼き入れは、工具鋼を高温で加熱してから急冷することで、硬度を高める方法です。焼き戻しは、焼き入れ後に再度加熱して冷却し、硬さをやわらげる方法です。焼きなましは、工具鋼を低温で長時間加熱することで、靭性を向上させます。表面硬化は、表面を高周波で加熱して硬度を向上させる方法です。

工具鋼の合金元素の添加量も、硬度や強度、靭性などの機械的性質を制御するために重要です。一般的な合金元素としては、クロム、バナジウム、モリブデン、コバルト、タングステン、マンガン、シリコン、ニッケル、銅などがあります。これらの合金元素を加えることで、工具鋼の特性を調整できます。

合金工具鋼

合金工具鋼とは

合金工具鋼

合金工具鋼とは、一般的に高い硬度、耐摩耗性、耐熱性、耐食性、強度などの特性を持つ鋼材料です。

工具や機械部品などの製造に使用され、一般的に炭素工具鋼に様々な金属元素 (クロム、バナジウム、モリブデン、ワルフラムなど) を添加することによって特性を向上させています。合金工具鋼は熱処理によって硬度や強度を調整できます。通常、焼入れと呼ばれる過程で高温で加熱し、急速に冷却することで硬度を増し、同時に脆くなるため、適度な鍛造、加工、熱処理などの制御が必要です。

合金工具鋼の使用用途

1. 切削工具

高速度鋼 (HSS) やバミュード鋼、モリブデン鋼などの合金工具鋼が使用されます。ドリルビット、フライス盤、タップ、ダイス、ハンドタップなどの工具が挙げられます。HSSは、High-Speed Steelの略語です。

2. 金型

金型には工具鋼やタングステン鋼が使用されます。プラスチック成形用の金型や、鋳造用の金型などが挙げられます。

3. 工作機械

工作機械には高速度鋼やモリブデン鋼などの合金工具鋼が使用されます。工作機械の刃物、工作機械の駆動部分、ベアリングなどが挙げられます。

4. 自動車部品

自動車部品には高速度鋼やクロムバナジウム鋼などの合金工具鋼が使用されます。エンジンバルブ、シャシー、ギアなどが挙げられます。

5. 航空機部品

航空機部品には高速度鋼やタングステン鋼、モリブデン鋼などの合金工具鋼が使用されます。ジェットエンジン部品、燃料系パイプ、操縦系部品などが挙げられます。

6. その他

その他としては高速度鋼やクロムバナジウム鋼などの合金工具鋼は、様々な産業で使用されています。例えば、建築資材、精密機械、電子機器、スポーツ用品などが挙げられます。

合金工具鋼の種類

JIS G 4404では、合金工具鋼 (32種類) は以下の4つに分類されます。

1. 切削工具鋼用

切削工具用の合金工具鋼は、高い硬度と熱硬化性を持ち、高速での切削に対応できるのが特徴です。切削工具用の合金工具鋼は、耐久性が高く、長時間の使用に耐えられます。JIS G 4404では、切削工具鋼用の合金工具鋼が8種類定められています。

2. 耐衝撃工具鋼用

耐衝撃工具鋼用の合金工具鋼は、炭素鋼に比べて高い耐衝撃性を持ち、打撃や振動が加わるような環境下でも変形や破損が起きにくいのが特徴です。JIS G 4404では、耐衝撃工具鋼用の合金工具鋼が4種類定められています。

3. 冷間金型用

冷間金型用の合金工具鋼は、常温下で使用される金型に適した特性を持ちます。JIS G 4404では、冷間金型用の合金工具鋼が10種類定められています。

4. 熱間金型用

熱間金型用の合金工具鋼は、高温下で使用される金型に適した特性を持ちます。JIS G 4404では、熱間金型用の合金工具鋼が10種類定められています。

合金工具鋼の選び方

合金工具鋼を選ぶ際に考慮する主な項目は以下の通りです。

1. 切削加工条件

切削速度、送り速度、加工深さ、冷却方法など、加工条件によって必要な硬度や耐摩耗性が異なるため、切削加工条件を確認し、適切な合金工具鋼を選ぶ必要があります。

2. 必要な性能

合金工具鋼は、硬度、耐摩耗性、耐腐食性、耐疲労性、加工性、熱処理性能など、様々な性能を持っています。必要な性能に応じて、適切な合金工具鋼を選ぶ必要があります。

3. 材料の形状と大きさ

合金工具鋼の材料の形状や大きさによって、加工性能や熱処理性能が異なります。例えば、小さな刃物や工具には、粒度の細かい合金工具鋼が適しています。

4. コスト

適切な合金工具鋼を選ぶ際には、調達コストも考慮する必要があります。高品質な合金工具鋼は、高価である場合があります。

合金工具鋼の性質

具体的には、合金工具鋼は以下のような性質を持ちます。

  • 高い硬度
    炭素鋼よりも硬いため、切削加工や模造加工などの用途に適しています。
  • 耐摩耗性
    磨耗や摩擦に対して耐性があり、長期間使用しても性能が維持されます。
  • 耐熱性
    高温で使用しても変形や軟化しないため、高温加工に適しています。
  • 耐腐食性
    腐食や腐食による損傷に対して、高い耐性があります。
  • 耐疲労性
    反復荷重下での強度が高いため、長期間使用しても疲労破壊しないため、耐久性に優れています。

合金工具鋼のその他情報

一般的な合金元素について

一般的な合金元素とその影響については下記の通りです。下記の合金元素は鋼に添加される割合やその他の添加条件によって、鋼の特性に影響を与えます。合金元素の添加量は、鋼の特性に対する影響を大きく左右するため、最適な添加量を設定する必要があります。

1. クロム (Cr) 
クロムは、耐腐食性を向上させるために添加されます。酸化物を形成し表面を保護することで、腐食に対する耐性や鋼の硬度や強度も向上します。

2. バナジウム (V) 
バナジウムは、強度を向上させるために添加されます。微細な粒子を形成し、鋼の結晶構造を強化することで、強度を増加させるのが特徴です。また、耐摩耗性を向上させるためにも使用されます。

3. モリブデン (Mo) 
モリブデンは、高温での使用に適した鋼を作るために添加されます。高温下での酸化や腐食に対する耐性を向上させ、鋼の強度や硬度も向上させます。

4. マンガン (Mn) 
マンガンは、硬度や強度を向上させるために添加される合金元素です。また、熱処理中に鋼の表面を酸化させ、鋼の表面硬化を促進する役割もあります。

5. ニッケル (Ni) 
ニッケルは、耐腐食性を向上させるために添加されます。クロムと同様に酸化物を形成し、表面を保護することで、腐食に対する耐性を向上させます。熱処理による鋼の強度向上にも寄与します。

6. コバルト (Co) 
コバルトは、高温下での使用に適した鋼を作るために添加されます。高温下での酸化や腐食に対する耐性を向上させ、鋼の硬度や強度も向上させます。

上記の他にも様々な合金元素が使用されていて、例えばタングステン (W) は硬度や強度を向上させ、切削加工性を向上させます。シリコン (Si) は強度を向上させ、熱処理時の変形を制御するために使用されます。合金元素の組み合わせによって、様々な特性を持つ合金工具鋼が製造されます。例えば、クロムとバナジウムを組み合わせた合金工具鋼は、耐腐食性と強度の両方を向上させることが可能です。また、クロムとニッケルを組み合わせた合金工具鋼は、高温下での使用に適しています。

亜鉛めっき鉄線

亜鉛めっき鉄線とは

亜鉛めっき鉄線

亜鉛めっき鉄線とは、伸線加工した軟鋼線材等に亜鉛めっきでコーティングを行った鉄線です。

亜鉛皮膜の防食効果により、高い耐食性が期待できます。 日本の国家規格であるJIS G 3547上にて、「亜鉛めっき鉄線 (S) 」と「亜鉛めっき鉄線 (H) 」の2種類が規定されており、それぞれSWMGSとSWMGHという記号がつけられています。

2種の違いは加工方法にあり、その特性も細分化され、用途によって選択が可能です。 SWMGSは1種~7種、SWMGHは1種~4種の計11種類が規定されてます。

亜鉛めっき鉄線の使用用途

より高耐食な金属では他にステンレスが挙げられますが、コストと耐食性のバランスを考慮し、亜鉛めっき鉄線が選択されるケースが多いです。

亜鉛めっき鉄線は、身近なところではフェンスの金網 (メッシュやひし形) や自動車の点火プラグのパッキン材・ホースクリップ、ワイヤーブラシなどの道具にも使われています。土木建築関連では、崖での落石防止用の網や鉄筋コンクリート内に張り巡らされている鉄筋の結束線のほか、有刺鉄線などにも使用されています。

その他、電線ケーブルを支える補助ワイヤーや海底電力ケーブルなどの電気分野、農業、漁業の分野で使われる資材も使用用途の1つです。亜鉛めっき鉄線は「引張強さ」といった機械的性質や線径の許容差、亜鉛付着量、巻付性など、細かくJISで規定されています。さまざまな産業や一般生活において、用途に応じた仕様選択が可能で汎用性に富みます。 

亜鉛めっき鉄線の特徴

1. 亜鉛めっき鉄線 (S) (JIS記号: SWMGS)

亜鉛めっき鉄線 (S) は、まず軟鋼線素材に冷間加工を行います。その後に焼きなまし (熱処理) をかけ、亜鉛めっき処理へと進みます。焼きなまし工程により、線にやわらかさが生まれ加工性が向上しますが、強度面は下がります。

1種~7種は亜鉛めっきの膜厚差によって分類され、厚膜ほど耐食性に優れるという意味合いです。例えば、亜鉛めっき鉄線 (S) の7種と呼ばれる「SWMGS-7」では、線径2.60〜6.00mmで、めっき付着量が400g/m2以上です。

2. 亜鉛めっき鉄線 (H) (JIS記号: SWMGH)

亜鉛めっき鉄線 (H) は、冷間加工後に焼きなまし処理を行わず、そのまま亜鉛めっき処理を行う工程です。やわらかさは劣りますが、優れた強度を発揮します。亜鉛めっき鉄線 (S) と同じく、亜鉛めっきの膜厚で1種~4種に分類されています。

例えば、亜鉛めっき鉄線 (H) の4種となる「SWMGH-4」は、線径が4.00~8.00mmで、めっき付着量が245g/m2以上です。

亜鉛めっき鉄線のその他情報

1. 亜鉛めっき工法の種類

溶融亜鉛めっき工法
溶融亜鉛めっきとは、素材を溶解した450℃程度の亜鉛浴に浸漬し、表面に亜鉛皮膜を析出させる工法です。その後工程にて、温水で冷却を行い皮膜を安定させます。

亜鉛皮膜と鉄素地との間にできた「合金層」により、亜鉛と鉄素地が強く結合しているため、長い年月を経てもめっき皮膜は剥がれずに高い密着性を実現できる点が特徴です。

電気亜鉛めっき工法
電気亜鉛めっきとは、通電による還元反応で鉄素材に亜鉛皮膜を析出させる工法です。溶融亜鉛めっき工法より薄膜化が可能であり均一に析出するため、精度を求められる製品処理に適しています。

薄膜ゆえにクロムの防錆皮膜を生成するクロメート処理が必要ですが、その後の加工において優位性があります。

2. 耐食のメカニズム

保護皮膜作用
保護皮膜作用とは、亜鉛めっきの皮膜表面が酸素や二酸化炭素と反応し、酸化皮膜が生成する現象です。この皮膜は緻密な結晶構造を持っており、酸素や水分を通しにくい安定した性質にて腐食速度を遅らせる事が可能です。

水中や土中といった環境でも維持されますが、強酸性や強アルカリ等の物質が付着すると、酸化皮膜”が破壊され保護皮膜作用が失われます。

犠牲防食作用
犠牲防食作用とは、亜鉛めっき皮膜に傷が付き、素地である鉄が露出しても、周囲の亜鉛成分が陽極となり優先的に溶解する現象です。これにより鉄の腐食を防いでおり、電気化学的に素地を保護することが可能です。

ピアノ線

ピアノ線とは

ピアノ線

ピアノ線とは、高張力鋼線の一種です。

ピアノ線は自動車やエレクトロニクス分野でのワイヤーや各種ばね材、吊り橋に使用するケーブル、ベッドスプリング、プレストレストコンクリートなど、幅広い用途に使われています。このような様々な用途に対応するため、ピアノ線はJISによって、引張強度によりピアノ線A種(SWP-A)、ピアノ線B種(SWP-B)、ピアノ線V種(SWP-V)の3種類が規定されています。ままた、JISには、製造方法や機械的性質なども規定されています。

ピアノ線の使用用途

1. 自動車やエレクトロニクス分野でのワイヤー

自動車のリヤハッチの開閉用ワイヤーや、スピーカーのボイスコイルなどが挙げられます。

2. 各種ばね材

自動車のサスペンションやシートのばね、工業用機械のばねなどが挙げられます。ピアノ線は、工業用機械のばねとして、以下のような場所で使用されることがあります。

油圧ショベルのアームバネ
油圧ショベルのアームバネは、油圧ショベルのアームを支えるために使用されます。ピアノ線を使用することで、高い強度と耐久性を持ち、長い時間使用しても変形しにくいアームバネが製造できます。

圧延機の緊張調整バネ
圧延機では、金属板を薄く加工する際に、緊張調整バネが必要です。ピアノ線を使用することで、高い強度を持ち、正確な緊張調整が可能なバネが製造できます。

織機のヘドルバネ
織機では、ヘドルバネが織機の動作に欠かせない部品です。ピアノ線を使用することで高い強度と耐久性を持ち、長時間使用しても変形しないバネが製造できます。織機のヘドルバネは、糸の通し目を開閉するための部品です。織機では縦糸と横糸を交差させて織物を作りますが、その際に縦糸を一定の間隔で上下に動かす必要があります。ヘドルバネはその動きを制御するための部品であり、織機の正確な動作に欠かせない部品です。

プリンターのピックアップローラーバネ
プリンターのピックアップローラーバネは、用紙を取り込むための部品です。ピアノ線を使用することで高い強度を持ち、高速で回転するローラーの負荷に耐えられるバネが製造できます。

3. 構造物

吊り橋に使用するケーブル、高速道路の安全フェンス、プレストレストコンクリートなどが挙げられます。プレストレストコンクリートとは鉄筋コンクリートの一種で、構造物に事前に張り付けた高張力鋼線やケーブルに張力をかけ、予め圧縮力を与えておくことで、その後の荷重や応力による変形を最小限に抑えられるコンクリートのことです。予め圧縮力をかけることによって、コンクリートがより高い強度を発揮し、大きなスパンの橋や高層ビルなどの建造物をより安全に軽量化できます。

4. 日用品

ベッドのスプリング、自転車のブレーキワイヤーなどが挙げられます。

5. その他

電力線用ワイヤーの補強材などが挙げられます。

ピアノ線の種類

ピアノ線は、引張強さ (N/mm2) により、ピアノ線A種 (SWP-A) ・ピアノ線B種 (SWP-B) ・ピアノ線V種 (SWP-V) の3種類がJIS (G3522:2014) で規定されています。

ピアノ線A種とピアノ線B 種が「主として動的荷重を受けるばね用」として、ピアノ線V種が「弁ばね又はこれに準じるばね用」と規定されているほか、製造方法や機械的性質などが規定されています。

ピアノ線の引張強さは、機械的性質として各品種ごとに線径で区分けされ、規定されています。機械的性質の項目には「巻付け性」をはじめ「ねじり特性」「曲げ性」「線径及び許容差」「表面状態」といった記載があり、また各規定項目に対しての試験方法なども規定されています。

ピアノ線の性質

1. 引張強度が高い

ピアノ線が高い引張強度と強度を持つ理由は、製造工程にあります。ピアノ線は、高品質な鉄鋼材料から作られ、ドローイングと焼き入れという工程を経て製造されます。

ドローイングとは、金属線を引き延ばし細く均一な線材を作る加工方法のことです。金属線を金型に通して引き延ばすことにより、線材を均一に細くできます。鉄線を金型から引き延ばす工程であり、均一で細い直径の線を作り出せます。ドローイングによって作られた線は、均一な構造を持ち、強度が高くなるのが特徴です。

焼き入れは、高温の環境で鉄線を加熱し、急冷することで、線に弾力性と強度を与えます。鉄線が熱によって拡張し、急冷することで収縮し、より強い線になります。

2. 耐久性が高い

ピアノ線が耐久性が高く、高温で焼き入れることでさらに耐久性が向上する理由は、以下の通りです。

ピアノ線は、高品質の鉄鋼材料を用い、製造過程でドローイングと焼き入れが行われることで、ピアノ線は非常に強い張力に耐えられるようになります。また、耐腐食性にも優れており、錆びにくいため長期間使用しても劣化しにくいです。

焼き入れは、高温の環境でピアノ線を加熱し、急冷することで、線に弾力性と強度を与える工程です。高温で焼き入れることにより、ピアノ線の結晶構造が改善され、より強固な構造が形成されます。そのためピアノ線の耐久性が向上し、より長期間の使用に耐えられます。また、焼き入れによってピアノ線の表面が硬化し磨耗にも強くなるため、使用中に摩耗しても劣化しにくくなります。