レーザーカット加工

レーザーカット加工とは

レーザーカット加工

レーザーカット加工とはレーザーを使って金属を切断する加工方法です。レーザー光の出力により、切断できる金属の厚さは変わります。

レーザーカット加工の大きな特徴は、切断形状を自由自在に設定できる点です。異なる形状の穴の抜き加工も可能であり、非常に自由度の高い加工法です。また、加工部材に触れることなく切断することが可能であり、接触型の加工に比べ部材の切断面の品質を一定に保つことができるという特徴があります。

レーザーカット加工の使用用途

レーザーカット加工は精密で複雑な加工形状も柔軟に行うことが可能であるため、多くの工業製品や生活用品などに使用されます。一例として、自動車の部品や、歯車ベアリングなどの小さく精度が必要な部品、模型のパーツ、時計の部品などの製造にレーザーカット加工は使用されます。

加工対象とする材質も様々であり、金属だけでなく、紙やプラスチック、革製品、布製品など幅広い材質の加工に用いられます。小さな文字や刻印をマーキングする用途でも使用されます。

レーザーカット加工の原理

レーザーカット加工は、部材の切断したい箇所に照射ユニットからレーザーを集中照射します。集中照射された部位は熱によって溶け出し切断されるという仕組みです。対象部位の切断時、レーザー照射口と同軸に取り付けられたノズルからアシストガスを噴き付けることで溶けた部材を吹き飛ばします。なお、燃焼作用のあるアシストガスを用いた場合は、レーザー切断の速度向上という効果も得られます。

レーザーカット加工は、強い力を加えることができない薄い材料に対する切断も精度良く行うことが可能であり、レーザー光を集中的にあてて切断するため、狭い幅で鋭い切断面を実現することが可能です。高出力レーザーを用いれば厚板の加工を行うことも可能であり、10ミリ程度の厚板も切断することができます。しかし、レーザーカット加工はその原理上、光を反射しやすい材料に対しては不向きです。また、加工材料の形状によっても、熱の集中する効率が異なるためレーザー切断の効率に影響が出ます。

ガンドリル加工

ガンドリル加工とは

ガンドリル加工

ガンドリル加工とは、加工部材に対して細く深い穴を設ける加工法です。加工法の名前が示す通り元々はピストルに穴を空けるために開発された加工方法で、長さのあるドリルにより穴を空けます。

ガンドリル加工は、小さな径の穴を空けることができ、また、その穴の直進性が高いことが特徴です。また、高硬度材料に対しても深穴を加工することが可能であり、例えばクロムモリブデン鋼や機械構造用炭素鋼、クロム鋼材の加工にも対応します。

ガンドリル加工の使用用途

ガンドリル加工は、深い穴を持つ部品を作ることが可能な加工方法であり、様々な工業分野で使用されています。

一例をあげると、電気、電機・電子機器部品、鉄道車両部品、航空機部品、船舶部品、自動車部品、スピンドル、シャフト、シリンダといった機械部品、噴射機のノズル、油圧機器部品、半導体関連熱版、液晶製造装置部品、建築現場、重機部品など非常に幅広い部品や製品を製造するためにガンドリル加工は使われています。

ガンドリル加工の原理

ガンドリル加工におけるガンドリル部は大まかに以下の部位から構成されます。

  • 超硬刃部(ドリルの刃)
  • シャンク(ドリルの柄となる部分)
  • ドライバ(シャンクを保持して加工機と接続する部分)

ガンドリル中には潤滑油を流すための通り道があり、また、先端には潤滑油を噴射する穴があります。超硬刃部とシャンクの側面には加工屑を排出するための溝が刻まれています。先端の穴から潤滑油を噴射しながら高速回転することで、加工屑を溝を通して外部へ排出しながら部材を削る仕組みになっています。

上記の仕組みにより、部材の加工屑を排出しながら作業できるため、他の深穴加工と比較して加工作業の効率が高い点が特徴です。また、潤滑油により、部材接触部の温度上昇抑制、工具摩耗の抑制が働くという効果もあります。

ガンドリル加工は小さな穴に特化した加工法です。1ミリからおよそ30ミリ径の穴の加工までが一般的であり、大口径の深穴を加工することは困難です。

押し出し加工

押し出し加工とは

押し出し加工

押し出し加工 (英: extrusion process) とは、圧力をかけながら材料をダイスと呼ばれる金型に押し出して成形する加工方法です。

塑性加工の1種で、押し出し成形とも呼ばれます。金属、樹脂、セラミックスなど、塑性を示す材料に対して行います。成形品はどこで切断してもダイスと同じ断面形状を持ち、中空材など複雑な断面形状のものでも長さのある製品を製造可能です。

押し出し加工は材料さえ投入すれば、連続的に同じ形状の成形品が得られ、成形品の表面が滑らかになります。

押し出し加工の使用用途

押し出し加工は使用できる材料が多岐にわたり、連続的に生産する成形品の断面が同じです。したがって、建材や工業製品、身近な家電製品のような、さまざまな分野で幅広く活用されています。

アルミニウムの成形品は、押し出し加工の材料としてよく使われます。具体的には、形が複雑なサッシやヒートシンクなどです。

樹脂を材料にした押し出し加工では、光ファイバーなどの線材が製造されています。パスタやかまぼこなど、食品の加工にも押し出し加工の技術が使われています。

押し出し加工の原理

押し出し加工は、加工温度や押し出し方法ごとに複数の種類があります。加工温度の違いでは「熱間押し出し」「冷間押し出し」「温間押し出し」の3種類に分類可能です。

同じ材料でも温度によって押し出し可能な形や成形品の強度が異なり、製品として必要な性能を考慮しながら加工温度を調整します。

1. 熱間押し出し

一般的な押出し加工であり、ビレット (英: billet) を再結晶する温度以上に上げて押し出します。素材で温度は異なり、例えば鋼の場合は1,000°C以上です。素材の変形抵抗が小さく、一度の押し出しで圧縮されます。

2. 冷間押し出し

ビレットを再結晶する温度以下で押し出します。熱収縮がなくて寸法精度が良いため、ピストンやギヤ部品のような自動車部品によく用いられます。表面は酸化せず、肌が滑らかです。高温に弱い素材を成形でき、加工硬化により強度が高くなります。ただし、素材の変形抵抗が大きく、大幅に圧縮できません。

3. 温間押し出し

冷間と熱間の中間温度で成形します。素材で温度は違いますが、600~1,000°C程度です。冷間と熱間の両方のメリットが得られる方法です。

押し出し加工の種類

一般的によく知られている方法は、「直接押し出し加工」と「間接押し出し加工」の2種類です。

1. 直接押し出し加工

一般的な押出し加工であり、アルミニウム棒材などの成形に利用可能です。加熱されたビレットをコンテナ (英: container) へ入れて、ラム (英: ram) で押し出します。出てきたビレットはダイの穴に応じて形成されるため、前方押出し加工とも呼ばれています。

コンテナの中に摩擦が生じて成形が安定しない可能性があり、強固なコンテナが必要です。

2. 間接押し出し加工

後方押出し加工とも呼ばれ、ビレットをコンテナへ入れてラムの先のダイで押し出します。ビレットはダイの穴に応じて成形され、アルミニウム合金などの成形で利用可能です。

コンテナ内の摩擦が小さく、安定した小さい圧力で押し出せます。ビレットが発熱せず、ワレやヒビも生じません。

3. コンフォーム押し出し加工

回転したホイールに線材を入れて、シューを押して引き込みます。線材の進んだ先にダイを固定し、行き先のない線材がダイ穴から出てきて成形されます。連続的な押し出しが可能で、細いバー材や長い材料などの成形に使用されます。

4. 中空押し出し加工

ビレットにダイの先のマンドレル (英: mandrel) で穴を開けて、管やパイプを押し出します。潤滑剤にガラスを用い、高い圧力での温度上昇を防ぎます。

ガラスによる潤滑によって、材料の焼き付きを防止可能です。材料が流動しやすくなって、長めの管材でも成形できます。

5. 静水圧押し出し加工

液体で加圧されたビレットをコンテナへ入れて、ラムで押します。ダイの穴に応じて成形され、長い材料や複合材の成形に使用可能です。

高圧液体によってビレットが覆われており、コンテナの内側に摩擦が生じず、加工温度が低くても小さな圧力で押し出せます。水圧によるビレットのワレやヒビも防げます。

加工硬化

加工硬化とは

加工硬化とは、金属に力を加えると硬くなる現象を指します。

針金を折り曲げると硬く、もろくなって破断する現象は加工硬化の一例です。硬さの増加に伴って、伸びや絞りのような粘り強さは低下します。

加工度が増すにつれて顕微鏡組織が乱され、電気抵抗は増加し、比重は低下します。加工硬化した材料は加熱されると、加工硬化によって増えた転移が消滅し柔らかくなります。熱間加工では、熱の作用で材料は柔らかくなりますが、冷間加工では加工硬化のみ起こるので、硬くもろい性質があります。

加工硬化の使用用途

加工硬化は、アルミニウムやステンレスなど焼き入れのできない材料の強度向上に利用されます。鋼材の場合は、冷間加工後、焼きなましと併用して行う場合があり、歯車や自動車のばねに適用されます。

焼きなましによって加工硬化で増えた内部のひずみや残留応力を取り除き、割れにくく靭性に富んだ製品にします。冷間加工をすると結晶は、歪んで不規則な配列をしていますが、再結晶温度まで加熱すると結晶粒の再配列によって、硬くてねばりのある材料に変えることができます。

加工硬化の原理

はじめ金属に荷重を加えると金属は変形しますが、荷重を抜いたあと、変形が元に戻る場合と戻らない場合があります。元に戻ることを弾性変形、戻らないことを塑性変形と呼びます。塑性変形は、ある結晶面を境に原子がすべる現象です。線状の格子欠陥である転移が動くことによって塑性変形が生じます。

転移が動きやすい材料は塑性変形が容易で、転移が蓄積され動きにくくなると硬い材料になります。加工硬化のしやすさは材料によって異なり、加工硬化指数 (n値) を目安にします。縦軸応力と横軸ひずみの関係を示した曲線において、降伏点より高い塑性域の応力とひずみの関係は以下の関係になります。

   σ=Cεn

このときのnがn値を示し、n値が大きくなるについて加工硬化しやすくなります。加工硬化は、硬くなる反面、もろくなるため塑性加工によって加工硬化が進んだ場合は、焼きなましを行い、軟化させます。これは原子の動きが活発になる再結晶温度まで加熱することで、転位がなくなる原理を使用したものです。

金メッキ加工

金メッキ加工とは

金メッキ加工

金メッキ加工とは、素材の表面を金の被膜で覆う加工方式です。

金被膜を形成することで、耐食性や導電性、はんだ濡れ性などの性質を素材に付与できます。外観は金の特徴をそのまま有しており、優れた光沢を誇ります。

異種金属 (コバルト・ニッケル・銀など) と合金皮膜の形成も可能で、素材表面の下地にはニッケルや銅皮膜が選択されるケースが多いです。装飾品や半導体関係の工業用途で、広く採用されています。

金メッキ加工の使用用途

1. 装飾用途

装飾用途では、ネックレスやイヤリングなどの宝飾品、自動車のエンブレムや内装部品、仏具や時計部品などが例として挙げられます。外観を豪華に美しくするだけではなく、金の持つ耐食性によってサビなどから保護する目的も兼ねています。

メッキ液の組成を調整することで、光沢加減や色調のコントロールが可能です。

2. 工業用途

工業用途では、半導体部品や基板の接合部に採用されています。基板においてはその後の加工のため、導電性やはんだ濡れ性が重視される仕様です。

特に銅配線回路の酸化を防ぐために、ニッケルと金のメッキ加工を行っています。近年、基板性能の高度化が急速に進んでおり、微細な配線への加工用途が広まっています。機械加工では性能を損なう可能性があり、化学物質による加工技術は更なる需要が見込まれます。

皮膜硬度を向上させた硬質金メッキであれば、電子機器の端子部やコネクタ部といった、外部との接触回数の多い箇所に最適です。

金メッキ加工の原理

1. 電解メッキ

電解メッキは、通電による電解作用で還元反応が発生します。その中でメッキ液中の金属イオンが電子を引き受け、陰極に接続した素材に金属皮膜が析出する技術です。

導電性の高い箇所の皮膜が厚くなる傾向があり、全体の膜厚コントロールの難易度が高いです。

2. 無電解メッキ (置換反応タイプ)

無電解メッキは、化学物質の反応を利用したメッキ加工法です。置換反応とは、イオン化傾向差により液中で下地の金属皮膜が溶解し、代替で金が皮膜として析出する現象です。

液中の溶解許容量に達すると、溶解反応が止まり析出も無くなります。素材自体に導電性が無くとも加工可能であり、膜厚の均一性に優れています。

3. 無電解メッキ (自己触媒タイプ)

自己触媒タイプは、還元作用のある成分を元に金が析出し、そのまま触媒の役割を果たす作用のことです。連続的に析出反応が起こるため、厚膜仕様に適しています。

金メッキ加工のその他情報

1. 金メッキ加工皮膜の種類

軟質金メッキ
皮膜中の金純度が99.9%以上と非常に高く、とても柔らかい性質を持っています。はんだ濡れ性や熱伝導性にも優れ、半導体の接合部に適しています。硬度は50~80HVです。

硬質金メッキ
ニッケルやコバルト、銀、銅といった他金属と共析し合金皮膜を形成することで、より工業用途に特化させたメッキ加工法です。皮膜中の金純度は99.6%程度となりますが、耐摩耗性や皮膜硬度が向上しています。電解メッキでの加工が主流となり、硬度は200~300HVです。

2. 金メッキ加工の開発動向

有害物質への対応
金メッキ液中に安定化を目的として、シアン化合物を添加しているケースがあります。シアンは毒性があり、人体に有害な物質としてさまざまな法令で規制されています。

作業者や排水への負担も考慮し、代替となる成分が求められ、近年では亜硫酸や白金をベースとしたメッキ液の開発がなされています。しかしながら、性能面からシアン含有を許容している業者はまだまだ多いです。

無電解メッキによる硬質金メッキの実現
硬質金メッキは、電解メッキ法による析出が主流です。皮膜の硬質化には他金属成分を硬化剤として必要で、無電解メッキ法では金以外の成分をコントロールできない課題があります。

新たに促進剤成分を添加することにより、自己触媒タイプの形で硬質性の皮膜析出が確認できています。

ザグリ加工

ザグリ加工とはザグリ加工

ザグリ加工とは、めねじ加工や穴加工の入口に、最初に加工した穴やめねじよりも大きい径の穴を空ける加工です。

断面から見ると段付きの構造になっています。金属または木材に加工に使用し、主にボルト頭が取付面から外にはみ出さないようにするのが目的です。

ザグリ加工の使用用途

ザグリ加工は、ボルトやねじの緩み防止、美観性の向上、怪我の防止などを目的として行われます。具体的には、以下のような加工が行われます。

  • 鋳物の加工面など凹凸がある平面にザグリ加工を行い平坦にすることで、容易に穴あけができるようにする。
  • ボルト座金の接触面を平坦にする。
  • ねじまたはボルトを取り付けるときに、ボルトのヘッド部分がボルトを取り付けた部品から、はみ出さないようにすることで、相手部品の平面同士がきちんと接触できるようにする。

ボルトが面から頭が出ないように取付ける場合は、六角穴付きボルトなど、スパナを使用しないボルトを使います。ボルトの頭が円錐形の場合は、皿ザグリという穴の縁を円錐形状に加工します。

ザグリ加工の原理

ザグリ加工はドリルで穴開け加工をした後に、エンドミルによって目的の大きさと深さに加工されます。また、ドリル加工とエンドミル加工を一度に行える、ザグリドリルもあります。

ザグリドリルとは、段付き形状になったドリルです。先端の細い軸の部分でドリルの穴加工を行い、根本側の太い軸の部分でザグリ加工を行います。

目的のザグリ深さまでザグリドリルを通すことによって、目的のドリル穴とザグリ加工ができる形状のザグリドリルを使う必要があります。

ザグリ加工の種類

ザグリ加工には、大きく分けて以下の4種類があります。

1. ザグリ

穴に対して表面をさらう程度のザグリです。ボルトの締め付け力を確保するために加工します。

2. 深ザグリ

ボルトの頭が隠れる程度に、ザグリの深さを指定します。通常のザグリ加工は深さ1mm程度ですが、より深いザグリに対しては深ザグリと呼ばれます。

3. 皿ザグリ

皿ねじを使うときに行われます。ねじ頭の形状に合わせて、傾斜した円錐状の穴を開ける加工です。「皿モミ」と呼んでいる現場もあります。

4. 裏ザグリ

加工方向とは反対側に、ザグリ加工します。

ザグリ加工のその他情報

1. ザグリ加工の図面表記

ザグリ加工の図面表記はJISで規定されていますが、現状の製造現場においては、旧JIS規格と現在のJIS規格とが、混在しているのが実情です。旧JIS規格の図面では、「12キリ、20ザグリ深さ6.5」のように言葉と数字を使って指定します。

また、旧JIS規格では、浅いザグリの深さは表記していませんでした。それに対して、現在のJIS規格では、記号を用いてザグリ径の大きさとザグリ深さを表します。ザグリ径はカタカナのコの字を90°回転させた形状で表し、ザグリ深さは横棒と下向きの矢印で表します。

イメージとしても捉えやすい記号なので、間違いが起きる可能性は少ないですが、ザグリの図面表記には現状では旧JISと現行JISの2つの表記方法が混在していることを覚えておくと良いです。また、現行のJISでは、ザグリ深さの表記は必須になっています。

2. ザグリ加工を行う際の注意点

ザグリ加工を行う上で、以下点に注意する必要があります。

加工に必要な面積
ザグリを行う位置は、縁との距離を考慮する必要があります。縁の距離とザグリの半径がほぼ一致する場所では薄い段付きの形状が残ってしまい、使用上好ましくありません。

ザグリ深さおよび径
日本産業規格 (JISB1176:六角穴付きボルト) には、ボルトに対するザグリ深さおよび径の寸法が規定されています。取付けるボルト径に応じて、本規格を参照しましょう。

工具
ザグリドリルというザグリの専用工具があります。先端が細い段付きの形状で、一度の回転で穴とザグリの加工を同時に行うことが可能です。ザグリドリルはボール盤に取付けて使用します。

反対側からザグリを行う裏ザグリを行う場合は、先端が偏心し片側に出っ張った工具を使用します。挿入時に1回目に開けた穴と工具が干渉しない構造です。

加工機
加工機として、ボール盤またはフライス盤旋盤を使用します。

引き抜き加工

引き抜き加工とは

引き抜き加工とは、長さのある金属材をダイ (金型) に通した状態で、金属材を引っ張ることにより目的の形状・肉厚に成形する加工方法です。

塑性加工に分類される加工方法で、複数回にわたって径の異なるダイを用いることにより所望の肉厚を得ることができます。引き抜き加工は、金属材を引っ張ってダイを通します。

径の異なるダイをあらかじめ複数設置しておけば、連続工程で被加工材を目標とする肉厚に加工できる点がメリットです。引き抜き加工は、押し出し加工と似た加工方法であるため、混同されることが多々あります。

しかし、引き抜き加工は高温を加えなくても加工できるのに対して、押し出し加工は高温を加えなければ加工できない点が大きな違いです。

引き抜き加工の使用用途

引き抜き加工は、長さのある部品あるいは細い部品を大量製造する際に使用される加工方法です。引き抜き加工によって製造される部品の例を挙げると、注射器の針、電線、自動車用のシャフト、レール部材などがあります。

精度が問われる製品にも使用されるため、特に医療製品や工業製品に使用される場合が多いです。引き抜き加工は、加工を繰り返すことで、被加工材をマイクロ単位の極小サイズの部品へ加工することもできます。

極小サイズの部品へ加工できる利点を活かして、LSI用のボンディングワイヤなども加工することが可能です。その他、半導体材料の加工にも使用されます。

引き抜き加工の原理

引き抜き加工の原理は、金属材を金属材よりも径の小さなダイに通し引っ張ることで、小さい径の金属材へと加工するというシンプルなものです。金属材が徐々に細く長く伸ばされていくことで、所望の肉厚の部品に加工されます。

金属材は引っ張られることで引っ張り強度が高まり、加工部品の強度が高まる効果があります。切削や研磨とは異なり、削らずに所望の肉厚に加工できるため、高価な金属素材であっても加工ロスが少ない点が特徴です。

加えて、切削や研磨よりも同一形状の部品を製造する場合に、加工速度が速く効率的に精度良く大量製造できる点も引き抜き加工のメリットと言えます。引き抜き加工においては、金属材の加工物の表面は摩擦によって磨かれ光沢を帯びた仕上がりになります。

しかし、引っ張り加工では金属材とダイの間に潤滑油を流しながら引っ張りますが、潤滑油の塗布が不十分だった場合、加工品に焼き付きと呼ばれるシマ模様ができてしまうことがある点がデメリットです。また、ダイが徐々に摩耗するため、定期的にダイの交換も必要になります。

引き抜き加工の種類

引き抜き加工には主に、単純引き抜き加工、菅の引き抜き加工、ローラーダイス引き抜き加工、タークスヘッド引き抜き加工の4種類があります。それぞれ引き抜き加工の原理は同じですが、加工するための機械が違ったり、用途が違ったりします。

それぞれの特徴は、以下のとおりです。

1. 単純引き抜き加工

単純引き抜き加工とは、引き抜く部材を単純に引き抜く加工方法です。一般に引き抜き加工というと、単純引き抜き加工のことを指します。

2. 管の引き抜き加工

管の引き抜き加工とは、ストローなど空洞を作るために利用される加工方法です。管の引き抜き加工には、外径を小さくするための空引き、管を広げるために利用される心金を用いて滑らかに仕上げる心金引き、細い管を作るために利用される浮きプラグ引きなどの加工方法があります。

3. ローラーダイス引き抜き加工

ローラーダイス引き抜き加工とは、引き抜く際にローラーが摩擦によって回転する引き抜き加工です。小さい力で引き抜くことができるため、不要な変形を防げるというメリットがあります。

4. タックスヘッド引き抜き加工

タックスヘッド引き抜き加工とは、上下左右の全方向に設置されたローラーに材料を通して引き抜く加工方法です。丸棒から角棒へ加工できる点が特徴で、変形の自由度が高いです。

板金曲げ加工

板金曲げ加工とは

板金曲げ加工

板金曲げ加工とは、金型を用いて板金を曲げる加工のことです。

目的の形状に合わせた型に板金を置いて、別の金型を押し付けることにより、板金に曲げを形成させます。板金曲げ加工は曲げ加工の一種です。

デスクトップパソコンなどのOA機器や冷蔵庫などの家電製品などの板金を使用した製品は、ほとんどが板金に曲げ加工を施したもの、すなわち板金曲げ加工により成型させたものになります。また、自動車のフレームは板金曲げ加工で成型した代表例です。

板金曲げ加工では、プレスブレーキプレス加工を使用します。プレスブレーキやプレス加工では、上型のパンチと、下型のダイの間に板金を差し込んでパンチを下降させながら数トン単位の外力を加えて板金を塑性変形させます。

板金曲げ加工の使用用途

板金曲げ加工は、生活に欠かせない製品の成型に使用します。例えば、デスクトップパソコンなどのOA機器や冷蔵庫や洗濯機などの家電製品、自動車のフレームなどが板金曲げ加工を施した製品です。

溶接やボルト、リベットなどの継ぎ目がなく平面ではない箇所は、ほとんどが板金曲げ加工により製作されています。エレベータは、はじめから塗装処理が施されているカラー鋼板が使用される特殊な例です。

単純な角形状であればベンダーの型で製作できますが、自動車など専用の形状を持ったものは金型も専用のものとなります。試作品を発注する場合は、形状に応じて、金型製作費用が発生するケースもあり、量産品の板金曲げ加工よりもコストがかかります。

板金曲げ加工の原理

板金曲げ加工は端的に述べると、板金を塑性変形させることが基本の原理です。元に戻らない金属の性質 (塑性) を利用して、塑性変形する材料に外力を加えて成型しています。

板金曲げ加工を行う場合、板金が押される部分 (板金の内側) と板金が引っ張られる部分 (板金の外側) が存在します。板金の内側では圧縮応力、板金の外側では引っ張り応力が生じるため、板金が薄いと割れが発生することがあります。

板金曲げ加工によって割れを発生させないためには、延性の高い材料に変えたりする工夫が必要です。

板金曲げ加工の種類

板金曲げ加工には主に8種類の加工方法が存在します。板金曲げ加工の原理は同じですが、製作する製品によって使用される用途が異なります。

それぞれの加工方法は、以下の通りです。

1. ボトミング

上型をV字の下型に押し込む曲げ加工の方法です。底突き曲げとも呼ばれます。一般的に曲げ加工というと、ボトミングを指します。

2. コイニング

ボトミングに比べ、高い圧力で押し、上型の先端を材料に食い込ませる方法です。精度はボトミングよりも良くなりますが、金型の消耗が激しくなります。

そのため、曲げ幅の長い板金に関してはコイニングによる加工は困難です。

3. R曲げ

角部が丸くなっており、必要な径の金型を使用する方法です。意匠面を気にする箇所に使われ、カーブを帯びたR形状にする加工方法です。

4. 送り曲げ

R曲げの加工をV字型の金型で行う方法です。角部に丸みをもたせます。加工機はプレス機械が使用されるのが一般的です。

5. ロール曲げ

ロールベンダーを使って加工する方法です。3つのロールが回転する間に板材を挿入して円筒形状を作ります。ロールの位置によって、円弧のサイズが決まります。

6. 段曲げ

Z曲げとも呼ばれ、板金を階段状に曲げる方法です。加工に使用される金具は、特別に段曲げ金具と呼ばれるものになります。

7. ヘミング曲げ

板金の端部を折り返す加工方法です。同じ板厚で端部のバリが作業者の手に触れないようにする他、強度を増やせるメリットがあります。

8. 自由曲げ

曲げ角度を任意のものに調整する加工方法です。板金がV字型の下型に面で接触せず、曲げ角度を自由に決めることが可能です。

曲げの精度は低くなるため、求める精度によっては高い技術力が必要となります。

バーリング加工

バーリング加工とは

バーリング加工とは、金属板をプレス機によって加工する成形加工方法の1種で、素材となる金属板に穴をあけ、その穴の縁を円筒状に伸ばして周囲に立ち上がり (フランジ) をつける加工のことです。

バーリング加工の特徴として、平面に立体的な部分を作り出せることと、穴の縁にRが付いているため通常の穴では金属のエッジ当たりになってしまう部分を面当たりに緩和できることが挙げられます。その他、円筒状にフランジを伸ばしたあと、フランジに対してボルト締結用のタップを立てることでナットを溶接せず、締結用のめねじ部として使用することも可能です。

バーリング加工の使用用途

バーリング加工は、比較的負荷のかからない箇所の部品締結用に使用されています。板金にねじ穴を空ける場合、一般的にねじ山を3山分開ける必要がありますが、板金の板厚が薄く3山に満たない場合はバーリングで円筒部を形成することで、板金自体の板厚を増やさずに必要なネジ山数を局所的に増やすことが可能です。

従来はナットを溶接していた箇所に対して、ボルト締結時にそれほど荷重がかからない場所であれば、バーリング加工に変更することでナットを廃止できるため、コスト削減につながります。バーリング加工にはその他にも、ねじ穴加工せずパイプとの溶接を容易に行えるようパイプの迎え形状とするような用途でも使用されています。

バーリング加工の原理

バーリング加工は、プレス機によってバーリング用のピアスパンチを用いて加工を行いますが、加工時のパンチ形状と成型後のフランジ高さに違いがあります。

バーリング用のピアスパンチは、大きく分けて先端形状が以下のような種類があります。

  • 砲弾型
  • テーパ型
  • 平底型
  • 半球形

先端形状によって、加工時に必要なプレス機の加工力やフランジの高さも異なります。ピアスパンチの先端形状が丸みを帯びて緩やかなほど、加工時に穴の角Rが大きくなり、フランジの高さが低い代わりにプレス機の必要な加工力が少なくなります。

逆に穴の角Rが小さいほど、加工力は上がる代わりにフランジの高さも高くなります。そのため、必要に応じて適切なバーリング用のピアスパンチを選定することが大切です。

バーリング加工の種類

バーリング加工には、大きく2つに分類されます。

1. 普通バーリング

フランジにタップを立てる前提で、ねじとして使用するためのバーリングです。バーリング前の下穴径とバーリング後の中心直径の差 (クリアランス) が板厚と同じになります。フランジの先端の肉厚が板厚よりも薄くなることが特徴です。

2. しごきバーリング

クリアランスが板厚よりも小さくなる加工です。位置決め用もしくはカシメ用のピンとして使用されます。普通バーリングに対してフランジの肉厚を均一に確保可能で、フランジが高いのが特徴です。

板厚に比べてフランジ自体の肉厚は薄くなりますが、フランジの寸法精度は良くなります。バーリングを加工において、2つの注意点があります。

バーリング加工のその他情報

1. ねじ径と最小板厚の関係

ボルト締結用としてバーリング加工のフランジ部分にタップを立てる場合は、ボルト締結時の強度を考慮して一般的にねじ山を3ピッチ分は確保しておかないと、最悪の場合ボルトが緩んでしまう等の問題が発生する懸念があります。ボルトのサイズによってもねじ山のピッチが異なるため、ねじ径と最小板厚の関係は下記のとおりです。

  • M3: 0.8t
  • M4: 1.0t
  • M5: 1.6t
  • M6: 2.0t

ハーリング加工によってできたフランジに対してボルト締結用のタップを立てる場合は、ボルトのサイズと板厚の関係に注意が必要です。溶接と比較して、穴の角部にRがついているので、汚れがたまりにくく、溶接に伴う母材のひずみや腐食を防止できるのがメリットです。

2. バーリング加工の注意点

  • 板厚が2mm以上ある場合は、バーリング加工を避けた方が無難です。板厚が増えることで、プレス時の負荷が大きくなり、バーリング加工が困難になります。
  • 下穴を打ち抜いた後、下穴と同じ方向からバーリング加工を行なうと、下穴の時にできたバリによって材料が割れやすくなります。対策として、下穴を打ち抜く方向に対して逆の方向からバーリング加工を行なう、もしくは下穴のバリを面打ちする等してバリを無くしてからバーリング加工を行なう方法があります。

タップ加工

タップ加工とは

タップ加工

タップ加工とは、ねじがねじ込まれる相手部品に、めねじを形成するための加工方法のことです。

タップと呼ばれる凹凸形状のある工具を用いて、あらかじめ開けた穴にタップを差し込みながらめねじを形成します。

タップ加工の使用用途

タップ加工はねじ締結が行われる金属製の部品に対して、広く行われています。ねじ締結はさまざまな産業用機械、建築物、家庭用電化製品に用いられています。ねじ締結する相手のめねじを成形するために、タップ加工が必要です。

めねじを成形する方法には、タップ加工以外にもいくつかの方法があります。その中でもタップ加工は、広く用いられているめねじの成形方法です。特に比較的小さなねじ径のめねじは、タップ加工が用いられる場合が多いです。

タップ加工の原理

タップ加工には大きく2つの方法があります。あらかじめ開けておいた下穴に対して、めねじ形状になるように切削加工する方法と、塑性加工によってねじ形状を成形する転造加工があります。いずれにしても、タップ加工ではあらかじめ下穴を開ける必要であり、下穴の直径も正しく仕上げなければなりません。

1. 切削式タップ加工

切削式タップ加工は、旋盤を使っての旋盤加工や、フライス盤を使ってのフライス加工などによって行われます。切削式タップ加工では金属を削るため、切子が発生します。

加工時のトルクが比較的少なくて済むメリットはありますが、切子を除去に気をつけなければなりません。特に止まり穴という、貫通していない穴に切削式タップ加工を行う場合には、切子が手前側に排出されるスパイラルタップを選択する必要があります。

2. 転造式タップ加工

転造盤を使って素材を変形させながらネジ加工を行います。切削ではなく塑性変形のため、切子が発生しません。ただし、下穴径は切削式よりも高い精度が求められます。

切削式タップ加工よりも大きいトルクを必要としますが、切子が発生せず、切削式タップ加工よりも加工時間が短くなるため、大量生産に向いています。

また、ファイバーフロー (金属組織の流れ) を切断しないので、高い強度のめねじが製作できます。デメリットとしては、目的のめねじの形状に合わせたタップを準備する必要があるため、切削式タップ加工よりも初期費用が高くなることです。

タップ加工の種類

タップ加工には、以下の種類があります。目的のめねじの種類に応じて選定することが大切です。

1. ハンドタップ

ストレートの溝形状のタップです。ハンドタップを使用することで手動でタップ加工をすることができます。加工に時間がかかるので、試作品やめねじの補修などの目的で使用します。ハンドタップには1番から3番までの種類があり、順番に使用して加工します。

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2. スパイラルタップ

タップの外周部がらせん状に加工されていて、加工時、切子は逆に排出されます。止まり穴など、切子を進行方向に排出したくない場合には、スパイラルタップを選びましょう。

切子を正しく排出させるためには、右ねじの場合は右にねじれた溝、左ねじの場合は左にねじれた溝のスパイラルタップを使います。切子はタップの根元の方向に排出されるので、切子がタップに絡まりやすく、絡まったまま加工するとねじ穴が広がってしまうため注意が必要です。 

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3. ポイントタップ

ポイントタップはポイント溝という溝を持っており、切削トルクが低いのが特徴で、切りくずによるストレスを減らすことができます。切子はスパイラルタップなどとは違い進行方向に排出されるため、主に突き抜けた穴に使用されますが、下穴が深く、切子がねじ山に傷をつけない程度の排出量であれば、止まり穴の加工でも用いることができます。

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4. ロールタップ

転造式タップ加工で使われます。特にアルミニウム圧延材などの、柔らかい素材のねじ穴加工に適用されます。

転造加工なので切子が発生しないことなどから、切削式タップ加工に比べて加工時間が短く済みます。また、工具の耐久性も高いです。切子が発生しない分、素材の無駄も発生しないので、環境にやさしい加工方法ともいえます。

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