フェライトとは
フェライトとは、酸化鉄を主成分とするセラミックで、磁性材料として利用されています。セラミックなので金属磁性体に比べると電気抵抗が高く、耐腐食性や耐薬品性に優れていることが特徴です。
フェライトの使用用途
フェライトは主に磁石として利用されており、フェライト磁石と呼ばれています。安価で大量生産できることから、その利用分野は家電製品やゲーム機、パソコン等、多岐に渡ります。
他にもトランスのコアとして利用されたり、電波暗箱や電波暗室などにおいて、電磁波を遮断する材料としても利用されています。さらに、レーザープリンタなどでトナーを運ぶキャリアとしてもフェライト粒子が利用されており、日常生活に浸透している磁性材料です。
フェライトの種類
フェライトには下記の3種類があります。
1. スピネル型フェライト
スピネル型フェライトは、Fe2O4を主成分とするフェライトです。以前は、主成分が酸化鉄であることから、生成のためには800℃以上の高温で熱処理を行わなければなりませんでした。
近年ではアルカリ溶液中で反応を行うことで100℃程度の低温でも生成できるようになっています。スピネル型フェライトは、マンガンやコバルト、ニッケル、銅、亜鉛などの添加物と混ぜ合わせることで、軟磁性を示すソフトフェライトです。
2. 六方晶型フェライト
六方晶型フェライトは、M・Fe12O19(MはBa、Sr、Pbなど)の化学式で表されるフェライトです。バリウムやストロンチウムを添加することで硬磁性を示すハードフェライトです。
3. ガーネット型フェライト
ガーネット型フェライトは、天然のザクロ石と同型の結晶構造を持つフェライトで、Mg3Al2Si3O12の化学式で示される構造を持ちます。ガーネット型フェライトは、スピネル型フェライトと同じ軟磁性を示すソフトフェライトです。
フェライトのその他情報
1. フェライトの特性
ハードフェライト
ハードフェライトとは、一度強力な磁場をかけると磁性を持ち、その磁性が維持される強磁性を持つフェライトです。
ソフトフェライト
ソフトフェライトとは、磁界が加わると磁化を発現し、磁界がなくなると磁気がなくなる軟磁性を持つフェライトです。透磁率が高いことが特徴で、コイルやトランスのコアに用いられています。
2. フェライトによるノイズ低減の仕組み
フェライトは、ノイズ低減部材としても使用されています。例えば、USBなどの高速通信信号において、EMI(Electromagnetic Interface)は大きな問題です。EMI(電磁障害)は通信線に限らず、電気機器などが不要な電磁ノイズを放出することを指します。
EMIの認証・品質保証の点から電気機器には、ClassAやClassBといった分類が用意されており、製品ごとに適切なEMI対策が必要です。通常は、回路設計やパターン設計の時点でEMI対策を講じますが、設計後期になり開発期間も限られている場合には、フェライトを使用することがあります。
フェライトをノイズの発生源ハーネスに巻きつけることによって、フェライトの磁化に応じてケーブルのインピーダンスが変化し、その結果ノイズ電流を軽減することが可能です。ただし、ノイズ電流を軽減するということは高周波成分を落としていることになります。つまり、フェライトは簡易のローパスフィルタとして機能していることになります。
このように、高周波成分を落とすことは、信号をなまらせることに繋がるので、波形の訛り、ひいては信号品質の劣化を招く可能性がある点には留意が必要です。フェライトのノイズ低減の特性は、インピーダンスによって決まり、インピーダンスはフェライトの材質、サイズ、ターン数に依存して変化します。
フェライトの材質が同じで、同サイズのものを用いた場合、ハーネスのターン数Nに応じてインピーダンスが増加するのが一般的です。インピーダンスの増加に伴ってより強力なノイズ対策となりますが、対策したい周波数帯域に合わせて、ターン数を選択する必要があります。
また、インピーダンスには、断面積も影響しており、原則としてフェライトの内径が小さく、外径が大きいものの方がインピーダンスを高くすることが可能です。高周波対策部品として、幅広いラインナップのフェライトがあります。それぞれの特性を把握し、対策したい周波数帯域に適した特性のフェライトを使用することが重要です。
参考文献
https://ednjapan.com/edn/articles/1610/31/news019_4.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nikkashi1898/65/11/65_11_1748/_pdf/-char/ja
https://www.techno-kitagawa.com/techinfo/tech/ferrite.html
https://cend.jp/emc_primer/basic/emi.html
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-noise-countermeasures-lesson-8