サイリスタ

サイリスタとは

サイリスタ

サイリスタは、整流作用のある半導体素子です。SCR(Silicon Controlled Rectifier)やシリコン制御整流子とも呼ばれます。整流作用とは、交流電流を直流電流へ変換することを言います。整流作用を持つ代表的な電子部品はダイオードです。

ダイオードとサイリスタが異なる点はゲート端子です。サイリスタはゲートと呼ばれる端子を持っており、ゲート端子に電流を流したときだけ整流作用を示します。

サイリスタの使用用途

サイリスタは、産業用途としてはソーダ工業や電解めっきなどに使用されます。ソーダ工業とは、塩水を電気分解して苛性ソーダや水素を生成する工業です。苛性ソーダは石鹸や洗剤の原料に使用されます。塩水を電気分解するための直流大電流をサイリスタで生成します。

日常生活では、LED照明の調光用などに使用されます。LEDへ流す電流をサイリスタによって制御することで、照明の調光を行います。LED照明を制御する装置はLEDドライバと呼ばれ、必ずと言って良いほどサイリスタが搭載されています。

サイリスタの原理

サイリスタは、p型半導体とn型半導体からなるPNPNの4重構造をしています。中間のnまたはp型半導体からゲート端子を引き出した構造になっており、それぞれNゲート、Pゲートと呼びます。

4重構造を持っているため、3つの接合部を持つことになります。陽極(アノード)側から陰極(カソード)側にかけて接合部を見ると、1番目と3番目の接合部が順バイアスになっています。対して、2番目の接合部では逆バイアスになっています。この状態でアノード側からカソード側に電流を流そうとしても、ほとんど流れません。

しかし、サイリスタに順方向の電圧をかけてゲート端子に電流を流すと、アバランシェ・ブレークダウンと呼ばれる現象が起こり、アノード―カソード間が導通します。これをサイリスタの点弧またはターンオンと呼びます。

サイリスタがターンオンした後、アノードに流れる電流が0になると導通が途切れます。これをターンオフまたは消弧と呼びます。交流電流には周期的に電圧が0になる瞬間があるため、サイリスタのターンオフは自然に起こります。

サイリスタのその他情報

サイリスタの応用例

サイリスタを用いると、大電力を制御することができます。サイリスタは大電力をコントロールする機器の電力部に使用されます。具体例を以下に挙げます。

1. 整流器
整流とは、交流を直流に変換することです。整流回路のキーパーツである整流器には、ダイオードやサイリスタが用いられます。サイリスタによる整流器はダイオード整流器よりも小型軽量ですが、高周波によって電源系統にノイズが発生します。近年では、高調波が抑えられるトランジスタによる整流器が開発されています。

2. 交流モーター制御
交流モーターの回転速度を制御する機器をVVVF装置と呼びます。VVVF装置内部には、コンバータ部とインバータ部があります。コンバータ部は交流電源直流電源へ変換する部分です。コンバータ部分では主にダイオードが使われます。

インバータ部は整流の逆動作で、直流電源を交流電源へ変換する装置です。インバータ内部では、一度交流電源を直流電源へ変換します。直流電源をサイリスタなどで高速切替することで交流電流を発生させます。

参考文献
https://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-1-349-81538-8_11
https://electric-facilities.jp/denki7/se/004.html

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