ファンクションテスタ

ファンクションテスタとは

ファンクションテスタとは、電子基板が実際に正しく動作するかの機能 (ファンクション) 検査を行うテスト装置です。

あらゆる装置の電子制御は、電子基板を組み込むことで達成されています。安全かつ正しく装置が動作するかは、まず電子基板に欠陥がないかを検査することによって確認されます。

電子基板の検査には基板外観検査 (AOI) とインサーキット検査 (ICT) 、および機能検査 (FCT) があり、基板外観検査は板検査・実装検査とも呼ばれます。

基板外観検査には、基板の配線に欠陥がないかどうかや基板上の部品が適切に組み込まれているかをカメラなどの外観で検査する基板外観検査装置が使われます。機能検査は、一般に基板外観検査後に行われ、実際に電子基板が正しく動作するかを検査します。ファンクションテスタはこれらの機能検査を行う際に使用されます。

ファンクションテスタの使用用途

ファンクションテスタの使用用途ですが、電子基板が所望の機能通りに動作するかどうかの機能チェックする用途のために用いられます。

内容は機能検査したい電子基板に入力 (英: input) 信号を送ったときに期待される出力 (英: output) 信号や電子部品の動作が実施されるかを確認するために使われます。

電子基板ごとに期待されるファンクションは当然異なるので、意図する検査が可能なファンクションテスタを選定することが非常に重要です。

例えば、電源基板であればスイッチを入れたときに、期待されている電圧や電流が流れるかということや、LED点灯検査であれば入力電流に応じて対応したLEDがどの程度の出力で点灯するかといったことがテストされます。近年では、様々な種類の基板に対応した非常に汎用性の高いファンクションテスタも出てきています。

ファンクションテスタの原理

ファンクションテスタの原理は、所望の機能 (ファンクション) 通りに電子基板が動作するかどうかを検査するために、電子基板に電源を供給し必要な電気的な入力信号を印加することで、出力端子信号や、搭載されている電子部品の挙動が意図したものかどうか確認することにあります。

機能検査では、検査したい基板をファンクションテスタに取り付けて実際に動作するかを確認します。入力信号はFPGAなどで生成されたテストパターンを用い、マイコンなどのIC動作を行うことも多いです。

電子基板を動作させるために、実際の動作電流を流して、出力波形を確認します。もし基板にはんだ付け不良などがあると基板内がショートして基板そのものが破損する恐れがあります。そのため、ファンクションテスタによる機能検査の前に基板外観検査を入念に行い、基板配線不具合や部品実装不良がないかを確認することが重要です。

ファンクションテスタは、あくまで基板が実際に動作を出力できるかどうかをテストするものであり、各部品の電気的な特性 (抵抗値やダイオード特性など) を細かく検査することとは区別されます。この場合はインサーキット検査 (ICT) と言い動作電流よりも遥かに微弱な電流を通電させることによって行われます。

ファンクションテスタのその他情報

1.インサーキット検査との違い

インサーキット検査は意図する部品が正しく実装されているかどうかをチェックするのが主な目的です。

例えばチップ部品の実装時に半田断線が発生していないかどうかや、ダイオードの極性 (向き) やICの1ピンに相当する箇所が正しく搭載されているかどうか、チップ抵抗の抵抗値は正しいかなどです。

ベースは部品の端子にプローブピンを接触させて電気的に評価する検査につき、例えばBGAのような内部に端子が存在するICパッケージや基板の内層のブラインドVIAの接続といった箇所は評価できません。

これに対して、ファンクションテストは、機能不全品は基本的に除去可能ですので、こちらがより重視され、汎用性の高いファンクションテスタにはインサーキット検査を行う機能が組み込まれているものが多くあります。

2. 実際のファンクションテスト項目事例

実際のファンクションテスト項目事例には、出力回路の電流値や電圧波形、LED点灯やスイッチ動作、マイコン動作をFPGAからのパターンにて確認、コネクタの断線などのチェックといったような項目があげられます。

昨今の電子基板の機能は、スマートフォンなどの電子通信機器や自動車での高度な電子制御用途に代表されるように非常に複雑な構成になっており、市販のままのテスタがそのまま使える事例はむしろ少なく、カスタム要求対応のものが増加しています。基板に合わせた周辺回路やフィクスチャー、場合によっては電磁シールドBOX (電波暗箱) などもセットで取り扱うメーカーもあります。

 参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/3-07-01.html
http://protec5461.co.jp/protec/?p=3143

信号発生器

信号発生器とは

信号発生器

信号発生器 (英: Signal generator) とは、様々な電気的な信号波形を生成する装置のことです。

発生させた信号は、あらゆる装置においてテスト用の信号として利用されます。生成できる信号は、無線通信のデジタル変調含めた高周波 (RF) の標準信号やオーディオ信号をはじめ、パルス波を生成するものまで多岐にわたります。

信号発生器の使用用途

信号発生器は、試験対象装置や通信用高周波部品などのDUTの実施試験の前に疑似的な信号を用いてシミュレーションや実測評価を進め、デバッグ調整を行う目的で使用されます。

信号発生器はあくまで基準となるテスト用の信号波形を生成する機能を有しているため、測定用途に用いる装置ではありません。この点はオシロスコープデジタルマルチメータースペクトラムアナライザなどの、対象となる物理量を評価するための測定装置とは異なります。

信号発生器の原理

信号発生器のおける波形信号の生成は、現在ではデジタル信号を入力することでアナログ信号に変換しています。実際にはデジタル直接合成発振器(DDS)というデジタル回路がこの操作を行っています。

DDSは位相アキュムレータと波形ROM、D/Aコンバータで構成されており、さらに位相アキュムレータはラッチと加算器により成り立っています。クロックに同期して周波数設定値Nを積算していくと、Nに比例した速度でデジタル化された三角波が生成されます。このデータから波形ROMのアドレスを指定して出力された波形をD/Aコンバータでアナログ変換し、低周波数フィルタに通すとスムースなアナログ波形を得ることが可能です。

一般に、波形ROMに格納されている波形は正弦波なため、出力される波形は正弦波になります。ここで逆フーリエ変換の基本的な考え方に立ち返って、任意の波形は正弦波の合成で生成することができるということを念頭に置くと、こうして生成した擬似的な正弦波を組み合わせることで、信号発生器は基本的にはあらゆる波形を生成することができます。

信号発生器の種類

信号発生器の種類は様々ですが、代表的なものとして下記の2つが挙げられます。

1. ファンクションジェネレータ

高い汎用性を持った信号発生器の一つが、ファンクションジェネレータです。信号発生器の中でも、デジタル技術の発展により一つの信号発生器で任意の波形を生成できるものが開発されています。

ファンクションジェネレータを用いると、あらゆる信号を擬似的に生成できるので、試験対象装置の実地試験の前に疑似信号を用いてシミュレーションを行いデバッグや調整を行うことが可能です。また、高周波 (RF) のデジタル変調波形生成用の信号発生器は、スペクトラムアナライザやパワーメーター等とともに、RFの電子部品の特性評価用に広く使用されています。

2. RFデジタル変調波形生成用信号発生器

信号発生器には5GやWifi信号等の複雑な変調波形を生成する高周波 (RF) のデジタル変調波形生成用の信号発生器もあります。ベクトル標準信号発生器 (デジタル標準信号発生器) と呼ばれるこの計測器は、I/Q変調器を内蔵しています。

そのため、1024QAMやQPSK等のI/Q変調方式へのアップコンバートが可能です。この信号発生器はIQベースバンドジェネレーターと組み合わせることで、通信システムがサポートする情報帯域幅内の大半の信号をエミュレートして出力できます。

信号発生器のその他情報

1. 信号発生器の使い方

信号発生器は、電圧電流計やシグナルアナライザ、パワーメーター等と共に電子回路の測定器の中心的存在です。昨今は複雑な変調なデジタルシステムに対してもPC内の専用のソフトウエア上のアプリケーションと併用することで、簡易に任意の信号を発生可能な測定環境を計測器メーカーが用意サポートしてくれています。

また複雑な最新のデジタルシステム対応のみならず、電子、電気回路の入門者向けに手軽に信号生成可能な測定器のキットが市販されています。こちらは、最新の複雑な信号を扱うわけでもないので、ネット通販などで非常にお手頃な価格で購入可能です。

この信号生成用キットは、電子、電気回路の入門者においても基本的な正弦波、三角波、パルス波形等の信号をその動作周波数と共に任意に調整出力可能であり、ちょっとした電子回路の実験検証には、非常に役立つ機器になっています。

2. 信号波形の回路シミュレータへの取り込み

昨今、一部の測定器ベンダーにおいては、この実際の信号波形を回路シミュレーションにそのまま取り込めるEDA環境も構築されており、RFやアナログ・デジタル回路設計者にとっては、非常に頼もしい存在になっています。

例えば一例として、RFの非線形動作がデジタル変調信号波形の歪に与える影響については、かつては実測で変調波形を入力しての出力波形評価、ないしはIMD(相互変調歪)などの挙動で代替検証し、回路設計へフィードバックするのが通例でした。

しかし現在では、実際の変調信号波形そのものをRFアナログ回路やフロントエンドモジュールに回路シミュレーター上で取り入れることができ、EVM(変調精度)といった通信システム上の特性を、回路設計的に、シミュレーター上にて検討可能になっています。

参考文献
https://www.electronics-notes.com/articles/test-methods/signal-generators/what-is-a-signal-generator.php
https://ekuippmagazine.com/measuring/function-generator/
https://www.electronicdesign.com/technologies/test-measurement/article/21801200/the-fundamentals-of-signal-generation
https://download.tek.com/document/76Z-16672-4.pdf

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザとは

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザ (英語: Optical spectrum analyzer) とは、この光スペクトルを測定するための分光装置です。

光スペクトルとは、横軸に波長・縦軸に光強度をプロットした、波長ごとの強度分布を指します。同様の装置に光波長計がありますが、光スペクラムアナライザには、測定値を補正する機能や、波長をスキャンするためのミラーが搭載されています。

光波長計よりも光学系は複雑になりがちですが、多機能で汎用性が高いのが特徴です。そのため、装置の価格は比較的高額になります。

光スペクトラムアナライザは、光ネット通信やフォトカプラなどの光半導体の開発で利用されています。その他、光を使った分析や水分量測定、膜厚測定、医薬や生物等のバイオや化学を始めとした全ての光関連部品分野に応用されています。

光スペクトラムアナライザの使用用途

光スペクトラムアナライザは、主に光学系の性能評価に利用されています。特にレーザー光源やLED光源は産業・医療応用・情報通信・学術研究に至るまで、非常に幅広く応用されており、その波長特性を調べることは非常に重要です。

光スペクトラムアナライザの使用用途の一例は下記の通りです。

  • レーザーやLEDをはじめとする単色光源や水銀・キセノンランプなどの白色光源の波長特性の評価
  • 光学部品の波長依存的な反射率・透過率の評価
  • 光波長多重通信のなど、光ファイバー通信におけるクオリティチェック

光スペクトラムアナライザの原理

光スペクトラムアナライザの原理は、分光方式によって以下の分散型と干渉型の二種に大別されます。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ

分散分光方式は、分光素子を用いて波長成分を空間的に分解し,波長ごとの強度を測定する方法です。

分光素子には、プリズムや回折格子が用いられます。分光器は、その他にコリメートと呼ばれる鏡とレンズ、集光用のカメラやレンズで構成されています。

プリズムの場合は、波長による屈折率の違いを利用して分光します。プリズムに入射した光は波長に依存して異なる屈折角で射出されます。これによって測定したい光の波長成分を空間的に分解することが可能です。

回折格子の場合は、波長による回折角の違いを利用して分光します。回折格子に光が入射すると、回折条件を満たした角度で波長ごとに異なる角度で出射します。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ

干渉分光法は、測定したい光を干渉させ、その干渉パターンからスペクトルを測定する方法です。

測定したい光を干渉させるために、ビームスプリッタを用いた二光束干渉方式と、対向させた高反射ミラーを用いる多光束干渉方式があります。二光束干渉方式では、二光束の光路長を変化させ、干渉光強度の変化 (インターフェログラム) を測定し、これを逆フーリエ変換することでスペクトルを算出できます。

多光束干渉方式では、測定したい光を多重反射させると共振した波長成分だけを取り出すことが可能です。ミラーの間隔を変えれば共振する光の波長も変わるため、これを繰り返すことでスペクトルの測定が可能となります。

波長毎に分離した光の強度を検出する分散分光方式に比べると、ダイナミックレンジの性能が劣りますが、高波長確度が得られます。

光スペクトラムアナライザのその他情報

光スペクトラムアナライザの性能

光スペクトラムアナライザの性能を表す最も重要なものとして、波長分解能が挙げられます。波長分解能は、光スペクトルの分解できる波長幅の限界を指す言葉です。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ
分散分光方式の場合、波長分解能は使用している回折格子の種類や光路の距離、スリット幅などに依存します。そのため、波長分解能が高い装置の場合、大型の装置になります。

また、検出する際に光が通るスリットの幅を狭くすると分解能が高くなりますが、検出する強度も下がるため、必要な分解能幅を考慮して光学系を調整することが大切です。カメラに冷却装置がついているものを使用している場合は、暗電流等のバックグラウンドを下げて測定することが可能になります。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ
干渉分光方式の場合、光路長を変化させる際のステップ幅によって波長分解能が決まります。そのため、高い波長分解能を求める場合、より多くのステップで測定する必要があるため、測定時間がより長くなります。

参考文献
https://www.rp-photonics.com/optical_spectrum_analyzers.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/products/ms9740b
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf

シャントレギュレータ

シャントレギュレータとは

シャントレギュレータ (Shunt regulator) とは、回路の入力電圧をモニターし、出力電圧を一定に保つようにフィードバックをかける集積回路 (IC) です。

一般に集積回路内の電圧は、温度変化や部品の個体差など、様々な要因により偏差やばらつきを生じます。一方で、シャントレギュレータは、高い精度で電圧をコントロールできるため、基準電圧源としての利用が多いことから、基準電圧集積回路とも呼ばれています。

リニアレギュレータスイッチングレギュレータのような電圧を安定化する回路に比べて、高い精度で電圧をコントロールできることが特徴です。

シャントレギュレータの使用用途

シャントレギュレータは、電子機器の高精度制御に伴い、AD/DAコンバータ、DSPのRef用基準電圧源などの高精度基準電源が必要な用途で広く用いられています。

シャントレギュレータは高精度な電圧制御が可能ですが、負荷と並列の定電圧化機能に伴い、特に高電流下動作時には効率が非常に低いです。そのため、その効率の低さが無視できるような低電流な負荷条件での基準電圧源として用いられ、その後段に高電流の別のレギュレータを直列につないで駆動する目的でも使われます。

例えば、コンパレータのように2つの電圧を比較するような論理回路の場合、比較対象に基準電圧を使用します。仮に基準電圧のドリフトが生じると、意図した回路動作そのものが破綻する恐れがあるため、基準電圧値には可能な限りの安定性が必要です。

シャントレギュレータの原理

シャントレギュレータの原理

図1. シャントレギュレータの原理

シャントレギュレータの動作原理は、その構成要素である負荷と並列に接続された誤差増幅器 (エラーアンプ) とトランジスタにより、入力電圧の変動を補正し負荷電流を一定に保つ働きをすることで、高精度な電圧値が得られる点にあります。

一般のシャントレギュレータは内部基準電圧端子、誤差増幅器、トランジスタによって構成されており、回路中の負荷に対して並列に接続されます。入力電圧が上昇したとき、これに伴って出力電圧も上昇しようとします。しかし、誤差増幅器がそれを感知しトランジスタに流す電流を増加させることで、負荷を流れる電流は減少し、出力電圧の上昇が抑えられる仕組みです。

最も単純なシャントレギュレータの例は、ツェナーダイオードレギュレータです。ツェナーダイオードは、通常のダイオードと異なり逆方向に電圧をかけ、それが一定の閾値を超えると大きな電流が流れ始めるという特性を持っています。このときの電圧の閾値をツェナー電圧と言います。流れる電流の大小に関わらず一定の値になり、ツェナー電圧はPN接合部への不純物の添加によって正確に設計することが可能です。

このダイオードの特性をうまく利用したシャントレギュレータは、ダイオードだけで定電圧を得られるので回路の簡素化やコストダウンに繋がります。しかし、温度変動が大きいため、温度特性を重視する場合には誤差増幅器やトランジスタによって構成されるシャントレギュレータを利用する必要があります。

シャントレギュレータのその他情報

1. シリーズレギュレータとシャントレギュレータの違い

リニアレギュレータは、入力電圧より低い出力電圧を作るDCDCコンバータですが、その種類はシリーズレギュレータとシャントレギュレータの2つの方式に分類できます。

シャントレギュレータは電圧降下発生用の抵抗器を用いたDCDCコンバータであり負荷に対して制御を行う制御素子が並列に入る方式で、並列制御型ともよばれます。それに対して、シリーズレギュレータは負荷に対して制御素子が直列に入る方式であり、直列制御型ともよばれます。

シャントレギュレータは、シリーズレギュレータとは異なり、設定された電流を流し続けるのが特徴です。無効電力が大きくなりやすく、大電流のアプリケーションには不向きと言えます。

2. 三端子レギュレータとLDO

シャントレギュレータと異なり大電流用にも用いられるシリーズレギュレータは、三端子レギュレータとLDO (Low Dropout Regulator) に分類できます。三端子レギュレータは、入力、出力、GNDの三端子でデバイスが構成されています。一般的に、直流電源回路には効率の良さからスイッチングレギュレータが使用されますが、三端子レギュレータはノイズが少なく外付け部品も少なく、低価格なため、アプリケーション用途によっては用いられるケースもあります。

LDOは、入出力の電位差が少なくても動作可能なシリーズレギュレータであり、汎用のシリーズレギュレータと比較して電力損失が少なくて済むのがメリットです。ただし、その動作上入力電圧値の制限や負荷条件など使用上の注意点もあるため、仕様の確認が重要です。

参考文献
https://www.electronics-notes.com/
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap2/chap2-5.html
https://emb.macnica.co.jp/articles/7645/
https://ja-support.renesas.com/knowledgeBase/17793549

光波長計

光波長計とは

光波長計 (英: Optical wavelength meter) とは、光の波長を測定することを目的にした専用の装置です。

光の波長を測定するための装置という点では、光スペクトラムアナライザとほぼ同義ですが、一般に光波長計では測定のダイナミックレンジを絞っているため感度が高いという特徴があります。

光スペクトラムアナライザは汎用性を持たせるために様々な機能が組み込まれていますが、光波長計は波長計測という最小限の機能に留められているため、価格が手頃な機種も多いです。

なお光波長計で得られた結果は真空中の光の波長であり、実際に空気中で観測される波長とは空気の屈折率の分だけ (0.03%程度) のズレがあります。

光波長計の使用用途

光波長計の使用用途ですが、光学部品などの特性評価において、より高い波長の精度が求められる場合によく利用されます。

例えば、レーザーやLEDなどバンド幅の狭い光源の波長特性を正確に測定するためや、光ファイバー通信で用いられる光の波長特性の評価などにも用いられます。

光波長計は、もともと光ファイバー通信に使われる光の波長を測定するためによく使われていた背景もあり、1,000~1,800 nmの光を測定できるようにレンジが設定されているものが数多くあります。

光波長計の原理

光波長計の原理は、フィゾー干渉計やマイケルソン干渉計などの光の物理的な干渉を利用することで、光の波長特性の測定を行う点にあります。

フィゾー干渉計を用いたものは、コリメーターレンズと参照面と呼ばれるガラス板と測定用ミラーからなる非常にシンプルな光学系です。

フィゾー干渉計に入射した光はコリメーターレンズによって平行光となった後、参照面を通過する際にその一部が反射されます。参照面を通過した光は測定用ミラーで反射され、参照面で反射した光と干渉し、縞のようなパターンを形成します。この干渉縞は光の波長と干渉する光の光路差によって固有のものが形成されます。

参照面と測定用ミラーとの距離 (光路差) は既知なので、干渉縞パターンから波長を算出できます。また、マイケルソン干渉計を用いたものは、入射した光をビームスプリッタによって2本に分け、さまざまに光路差を変えることで干渉光強度の変化を測定します。これを逆フーリエ変換することで、光のスペクトル(波長)が算出可能です。

光波長計のその他情報

1. 光波長計と光ファイバー通信

光ファイバー通信用の光計測用に広く用いられている光波長計ですが、光ファイバーは1,500nm帯が、光ファイバー内伝送時の光の損失量が最も低いために、一番よく使われている波長帯です。

しかし近年はこの波長帯だけでは、光ファイバー通信網がすでに飽和状態であるために周辺の光の波長帯の利用も盛んに開発が実施されている状況です。

光ファイバー通信の大容量化のためには、複数の波長を取り扱う波長多重通信が欠かせない技術の一つであり、光波長計にもこの場合の多重波長の同時測定機能やその実用的な分解能が求められています。このような背景のもと、昨今では最大1,024波長まで複数の波長を同時測定が可能な機種を扱うメーカーがあります。

2. 光ファイバー通信以外の用途

光ファイバー通信の光源には、一般に化合物半導体基板をベースにした半導体レーザーが広く用いられており、半導体のウエハやレーザーチップの量産ラインのウエハ製造前工程検査向けには、限られた単一波長のみを非常に高速に評価可能な機種のニーズが存在します。

また光ファイバー用アンプの光源が900nm帯であることから、1,000nmよりも低い光波長までの測定を対応可能にした機種が扱われています。

さらに、最近眼科診断によく用いられる光干渉断層計 (英: Optical Coherence Tomography) では800nm帯や1,050nm帯が使用されており、バイオテクノロジー向けの蛍光観察のアプリケーションでは可視光が主体ですので、300nm帯から1,200nm帯までを対応可能なモデルもあります。

3. CWとパルス光源対応機種

レーザーを用いたアプリケーションには、レーザー発振にCW動作を扱う場合と、例えば1KHzといった高速のパルス光源を扱う場合が存在します。

上位機種には、両方を扱うことが可能なモデルがありますが、CW動作時の用途のみを取り扱う光波長計もありますので、仕様をよく確認することが重要です。

 参考文献
https://telecomteststation.com/wavemeter-or-optical-spectrum-analyzer/
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/optical-devices/interferometer/knowledge#
https://www.rp-photonics.com/wavemeters.html

画像処理装置

画像処理装置とは

画像処理装置とは、カメラなどの画像に含まれる情報を抽出し、何が写っているかの特定・測定・解析をする装置です。

画像処理装置には、外部機器と連携するためのインターフェースが用意されています。画像処理装置で得られた物の形、距離、個数などを外部機器に送信することで、生産ラインの制御などが可能になります。

画像処理装置を使用する用途・目的 (対象物の種類、対象物の移動速度、処理の精度、処理速度など) に合わせて、装置の仕様、適用する画像処理手法及び、システム制御方法を選定することが大切です。近年では、人工知能や機械学習と組み合わせた装置の開発も行われています。

画像処理装置の使用用途

画像処理装置は、日常生活から工場、医療、交通・輸送など、様々な分野で利用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 工場における部品等の品質検査や個数の計測
  • 画像モデル、文字、バーコードによる対象物の識別と認証
  • ステレオ画像などの3次元情報を基にしたロボット制御
  • 監視カメラの画像鮮明化と異常検知
  • 車の運転アシストや自動運転
  • レントゲンや CT など医療画像からの診断補助
  • 個人識別のための顔認証システム
  • 駅や商業施設での人数計測システム

画像処理装置の原理

画像処理装置の原理は、カメラやセンサーからの信号を画像化した後、コンピュータ上で画像変換や変形、特徴量などの情報を抽出し、対象物の特定・測定・解析することによる画像から対象物情報への変換です。

画像処理装置は、画像入力部、画像処理部、外部インターフェース部、システム制御部で構成されます。各部の機能は、以下の通りです。

1. 画像入力部

カメラなどのセンサーからの信号をデジタルデータに変換し、画像化します。赤外線カメララインセンサカメラなど、特殊カメラからの信号を画像化できるタイプもあり、使用目的に合わせて選択します。

2. 画像処理部

画像入力部で得られた画像をデータとして処理して画像の変換や変形、特徴量などの情報を抽出する演算を実行し、何が写っているかの特定及び測定・解析をします。画像処理部は、目的に沿って画像処理演算を組み合わせた画像処理手順を実行します。一連の画像処理手順は、プログラムを作成して実行されます。

画像処理演算は、取り扱うデータ量が多いです。そのため、検査など短時間で判定が必要な場合は、画像処理専用LSIや信号処理専用LSIを使って高速化しています。

3. 外部インターフェース部

画像処理開始信号の受信や画像処理部で測定・解析した結果をON/OFF信号やイーサネットやシリアル通信データにして出力します。製造ラインの制御装置やロボットなど使用目的に合わせて連携する機器が変わるため、TCP/IPやRS-232Cの様な一般的な通信方式からOPCの様な工業用の通信方式まで、様々な通信方式から適したものを選定します。

4. システム制御部

画像を取り込み、対象物の特定、計測・解析し、外部機器へ結果を出力する様な一連の処理のために画像入力部、画像処理部、外部インターフェース部の動作と連携を制御します。各部の動作及び連携のタイミングと内容は、画像処理装置の目的に合わせて変わるため、プログラムを作成します。

画像処理装置を用いて検査や品質管理を実施するためには、システムに求められる性能をもとに、画像の取り込みから結果出力までの処理手順を画像処理ソフトウェアの組み合わせと外部機器との連携をプログラム化する必要があります。

画像処理装置のその他情報

画像処理ソフトウェア

画像処理部の役割である画像をデータとして処理を行い、画像の変換や変形、特徴量などの情報を抽出する演算処理は、コンピュータのプログラムとして実行され、画像処理ソフトウェアと呼ばれています。画像処理装置の画像処理ソフトウェアは、画像入力から画像処理、そして外部機器との連携という一連の処理制御ができることが重要です。

最近では、カメラや外部出力の標準化が進み、画像処理だけでなく、カメラの制御、画像の表示や処理結果の外部出力インターフェース制御などを備えたパッケージも出てきています。また、検査や計測に目的を絞り込んだ画像処理ソフトウェアのパッケージなどもあります。

また、近年では、既存の画像処理ソフトウェアと機械学習やAI技術などを組み合わせることで解析や特徴抽出の精度を上げる試みも行われている状況です。

参考文献
https://www.automation-news.jp/2020/03/47975/
http://optronics-media.com/news/20190319/56189/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/09/news052.html

高圧トランス

高圧トランスとは高圧トランス

高圧トランスとは、高圧を一次電圧として入力し、降圧または昇圧した二次電圧を出力するトランスです。

トランスは変圧器とも呼ばれ、入力した電流の電圧を別の電圧に変換して出力する装置を指します。入力した電圧よりも低い電圧に変換することを降圧、逆に高い電圧に変換することを昇圧と呼びます。電源電圧には低圧・高圧・特別高圧という規格があり、交流電圧600Vから7kVまでが高圧です。

高圧トランスの使用用途

一般に高圧トランスは、工場・病院・商業施設などの電力消費の多い大規模施設への電力供給に使用されます。

発電所で発電された電力は数万Vと非常に高圧です。これをユーザーにそのまま送電しても利用できません。しかし、送電効率の観点から供給元近辺では、高圧・低電流で送電し、トランスで利用可能な電圧まで降圧しています。

高圧トランスは、キュービクルという高圧受電施設に組み込まれ、屋上などに配置されるのが一般的です。

高圧トランスの原理

トランスは二本のコイルによって構成されます。この二本のコイルは電気的には分離されていますが、鉄心コアによって磁気的には繋がっています。

入力側のコイルが一次コイル、出力側が二次コイルです。一次コイルに電流を流すとアンペールの法則に基づいて磁束が発生します。この磁束は鉄心を通して二次コイルへ伝わり、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいてコイルの巻数に応じた電圧が発生します。このように、コイルと鉄心を利用することで、入力電源と出力電源の電圧の変換が可能です。

高圧トランスのその他情報

1. 高圧トランスの冷却方式

トランス内部では電力損失に伴って発熱するため、冷却する仕組みが導入されます。冷却方式には巻き線を絶縁油で冷却する「油入方式」と、油を使用しない「モールド方式」があります。

高圧トランスは厳密な防災対策が求められる施設で使用されるため、火災リスクが低い「モールド方式」が採用されることが多いです。油入変圧器の場合は、絶縁油に第3石油類が使用されます。高圧トランスの容量が大きくなり、油量が400Lを超えると油単体では危険物として消防法の規制が掛かるので注意が必要です。

また、容量が大きくなるにつれて自冷式トランスを使用することが難しくなるため、強制循環式が採用されます。

2. 高圧トランスの価格

高圧トランスは仕組みが簡便なため、産業用機器の中では比較的安価です。一般的な一時電圧が6,600V/3,300Vで、二次電圧が400V/200V/105Vの変圧器であれば、重電各社でカタログ品が存在します。

カタログ品は2,000kVA付近を上限とされ、それ以上は受注生産品となります。油入自冷式のトランスは、数十kVAのものは数十万円、2,000kVAであれば数百万円~二千万円が平均価格です (2021年現在) 。モールド方式の場合はそれより高価となります。

一般的な降圧用トランスであれば上記金額ですが、特殊仕様のものは受注生産のため、価格に関しては重電各社への相談が必要です。

3. 高圧トランスの容量

高圧トランスの容量は巻線の許容電流値と磁気鉄心の容量で決定されます。巻線に許容値以上の電流が流れた場合、トランスの焼損を招くため過電流継電器で変圧器を保護します。

また、三相電動機などの容量はkW (キロワット) を単位とするのに対し、高圧トランスの容量はkVA (ケーブイエー) を単位とします。単相三線式の高圧トランスのカタログ品は300kVA付近が上限で、三相400V/200Vのトランスは2,000kVAが上限です。

キュービクル式とした場合は、筐体の大きさや冷却能力の関係で市販品は750kVA付近が上限となります。

4. 高圧トランスの力率

負荷の力率によって、高圧トランスに掛けられる仕事量に違いがあるため注意が必要です。力率が1から遠いほど掛けられる仕事量は少なくなります。高圧トランス二次側の力率を1に保ち続けることで、高圧トランスを容量分無駄なく使用することできます。

産業用機械はモーターが多いため、力率は遅れ方向に振れることが多いです。一般的な対策としては、電力用コンデンサを負荷と並列に接続することで補償します。

高圧トランスは60%付近の負荷が最高効率となるように設計されます。従って、通常使用容量が60%付近となるように、容量には余裕をもって選定することが大切です。

参考文献
https://www.thomasnet.com/insights/high-voltage-transformer-considerations/
https://www.electricityforum.com/td/utility-transformers/high-voltage-transformers
http://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/16249?category_id=1908&site_domain=default

フラクサー

フラクサーとは

フラクサーとは、自動はんだ付け装置はんだ付けを過程でフラックスを塗布する装置です。

フラックスとは、はんだの広がりを良くする促進剤を指します。電子部品や基板の製造において、はんだ付けは品質を左右する重要な工程です。

近年では、人件費削減と効率化のために自動はんだ付け装置が導入されるようになりました。フラクサーを使用することでフラックスを高精度かつ効率的な塗布が可能となります。

フラクサーの使用用途

フラクサーは、自動はんだ付け装置と組み合わせて使用されます。自動はんだ付け装置のはんだ付け品質を向上させることが目的です。

フラックス含有のはんだも販売されていますが、フラックスははんだの融点付近で蒸発します。自動はんだ付け装置のはんだ槽は常に高温に保たれるため、フラックス入りのはんだを使用できません。

自動装置では、フラクサーによってフラックスを塗布します。

フラクサーの原理

フラクサーでフラックスを塗布し、基板表面の異物や酸化皮膜を除去して表面張力を低下させ、融解したはんだを薄く広げます。はんだは融解すると、表面張力により球状になろうとする点が特徴です。

フラックスは松脂 (ロジン) を主成分とする液剤で、塩化亜鉛塩化アンモニウムなどが添加されます。松脂はアビエチン酸などの有機酸を多く含み、はんだの融点に近い170℃付近で活性化し、銅酸化物を除去する作用を持ちます。

フラクサーの種類

フラクサーの塗布方式には、発泡方式とスプレー方式の2種類があります。

1. 発泡式フラクサー

発泡素子を用いて泡立てたフラックスに基板を浸すことで塗布します。十分量のフラックスを塗布することができる反面、大量のフラックスと溶剤を使用するため高コストである点がデメリットです。

2. スプレー式フラクサー

霧状に噴霧することで薄く均一にフラックスを塗布することが可能です。発泡方式に対して、必要なときに必要な量だけフラックスを使用できます。低コストで簡便性が高いことから、多くのフレクサーで採用されます。

フラクサーのその他情報

1. スプレーフラクサーの塗布量

スプレーフラクサーの塗布量は、各メーカーのノウハウを基に設計されます。制御基板の部品実装面はリフロー面と呼ばれ、メタルマスクとクリームはんだによってはんだ量の管理が比較的容易です。

裏面のはんだフロー面には、はんだ槽を通す際に付着性向上を目的に必ずプリフラックスを塗布します。その際、塗布方法は無駄が少ないスプレー方式が多く採用されます。プリフラックスの塗布量によって、基板のはんだ品質に大きな影響を与えます。

2. スプレーフラクサーの技術革新課題

フラクサーにはスプレー方式と発泡方式がありますが、塗布量管理が容易で品質も良いスプレー方式が主流です。フラックス塗布の品質向上のために必要な条件は以下3点です。

  • ムラをなくす
  • 塗布量のリニアリティ (管理のしやすさ)
  • 繰り返し精度の安定性

これらの条件を満足させるために、製造現場では条件出しをします。基板をゾーン分けして、全ての条件をクリアできるように試行錯誤します。この作業は負担が大きく、電子基板実装分野における技術革新課題の一つです。

3. スプレーフラクサーの構造

スプレー方式フラクサーは、ノズルやスプレーによって構成されます。缶からフラックスをノズルで吸い上げて、霧状のフラックスをスプレーで直接噴出します。フラックス吸引用ノズルが基板の横方向に稼動し、搬送コンベアの動作と同調して全フロー面にフラックス塗布を行います。

なお、スプレーフラクサーの工程時間は30秒程度です。この方式の特徴はツールの清掃が定期的に必要な点です。ただし、基板全面に均一塗布が可能であり、基板面への膜厚コントロールが容易であるというメリットがあります。

そのため、品質面ではスプレー方式のフラクサーが最も優れています。

参考文献
https://www.adogawa.co.jp/cat_mounting/5669.htm
https://global.pioneer/en/manufacturing/crdl/rd/pdf/18-2-4.pdf
https://www.tamura-ss.co.jp/jp/products/electronic_chemicals/category/fa_systems/spray_fluxer/index.html

ピエゾドライバ

ピエゾドライバとは

ピエゾドライバ (英: Piezo driver) とは、ピエゾ素子を安定に動作させ制御するための電源および制御装置のことです。

ピエゾ素子とは圧電効果・逆圧電効果を利用して、力学的な変位を電圧値に変換する機能や印加電圧を力学的な動作に変換するデバイスであり、圧電素子とも呼ばれます。特に力学的な動作に変換する場合、サブミクロンの非常に微小な制御を高速に行うことが可能です。

ピエゾドライバはこのようなピエゾ素子による精緻な動作を制御する際に、電源及び制御装置としての役割を担っています。

ピエゾドライバの使用用途

ピエゾドライバは、微小な位置合わせが必須な顕微鏡や精密加工用の工作機械といった微細な動作制御が必要とされる場面で広く用いられています。光学顕微鏡の用途では、X-Yステージや対物レンズの駆動において、ピエゾドライバの活用により正確な位置決めを高速に実施することが可能です。

例えば、生きた細胞内のダイナミックな現象を高速三次元イメージングする場合などの用途に非常に適しています。旋盤などの工作機械においても、サブミクロン単位の高精度な精度が求められるような精密な作業を行う場合に、ピエゾドライバはよく利用されています。

ピエゾ素子を使用したアクチュエーターデバイスの性能を十分に引き出すためには、その動作制御を担うピエゾドライバの性能が重要です。

ピエゾドライバの原理

ピエゾドライバの原理は、ピエゾ素子の駆動用電源と (圧電効果・逆圧電効果を活用するための) 微小な電位を正確に扱う制御回路機能を有する点にあります。ピエゾ素子自体はコンデンサとしての性質を有しており、コンデンサの充電・放電に伴い、これを駆動する電源側 (ピエゾドライバ側) には出力電流の吸い込みと吐き出しができるアンプ型電源としての特性が必要です。

ピエゾ素子は極微小な電圧変化にも応答します。仮に入力の無い定常状態で回路内の電圧変化を感知してしまうと、何もしていないのにピエゾ素子が駆動してしまう不具合が発生するため、ノイズ成分に注意します。

ピエゾドライバの電圧供給は十分に安定していなければなりません。電源としての安定性を担保するためにシャントレギュレータなどを組み込み、ピエゾ素子にかかる電圧をモニターし、常にフィードバックをかけています。

このように誤動作やドリフト・ノイズを最小限に押さえることにより、ピエゾ素子の静電容量を充填するのに十分な電流を安定的に供給し、入力としての制御電圧の急激な上昇に対して、わずか数マイクロ秒でその駆動を完了させることが可能です。

ピエゾドライバのその他情報

1. PWM制御型ピエゾドライバ

昨今のSDGsに代表される省エネルギー化のトレンドのもと、オーディオアンプがPWM (Pulse Width Modulation:パルス幅変調) 制御を活用して高効率化を図っている状況下で、ピエゾドライバにもPWM制御型アンプを適用するメーカーが現れています。

専用のオーディオアンプと異なり、ピエゾ素子に適した独自の低電流高電圧タイプのPWM制御型アンプ開発により、小型高効率なピエゾドライバが製品化されている状況です。

2. イヤホンやスピーカーへの応用

圧電素子自体は以前から音響分野で使用されていましたが、圧電スピーカー等の使用にとどまっていました。しかし、近年ハイレゾ再生用などの高級イヤホンには、ピエゾドライバが採用されています。ピエゾドライバに電圧をかけると、ピエゾ素子は圧力を発生します。この特性を用いて音楽信号を電圧としてピエゾドライバに加えると、それに応じて振動板が振動します。すなわち電圧が音声に変換されるわけです。

ピエゾドライバをイヤホンに使用する利点は、ダイナミック型の様にコイルで音楽信号を磁力に変換して振動板を振動させるという信号の変換プロセスが無いことです。また、ピエゾドライバが直接振動板を振動させるため、非常に高速に動作することから、超高域の再生能力が非常に優れています。このため、ハイレゾ音源の豊かな超高域の情報を再現するのに適しています。

ただし、ピエゾドライバを採用したイヤホンはその性能を活かすために、他の低中音向けドライバ等も高級なものを採用しており、製品は高価です。ピエゾドライバースピーカーの仕組みもピエゾドライバーイヤホンとほぼ同様です。しかし、あるメーカーの発売しているピエゾスピーカーは非常に薄型でフレキシブルな構造なために、色々なものを振動させて音を出すことができます。

また、以前の圧電スピーカーよりも幅広い音域、特に苦手としていた低音域の出力が強化されています。最近の液晶テレビは非常に筐体が薄くなっており、既存のスピーカーは搭載できなくなってきています。このような薄型テレビに、上記の様なフィルム型の薄型ピエゾドライバースピーカーは適しており、今後もより高音質化が期待されている状況です。

参考文献
https://www.physikinstrumente.com/en/technology/controllers-software/piezo-controllers-piezo-drivers/
https://www.matsusada.co.jp/column/words-piezo.html
https://www.phileweb.com/review/article/201605/27/2077_2.html#a3