高圧トランス

高圧トランスとは高圧トランス

高圧トランスとは、高圧を一次電圧として入力し、降圧または昇圧した二次電圧を出力するトランスです。

トランスは変圧器とも呼ばれ、入力した電流の電圧を別の電圧に変換して出力する装置を指します。入力した電圧よりも低い電圧に変換することを降圧、逆に高い電圧に変換することを昇圧と呼びます。電源電圧には低圧・高圧・特別高圧という規格があり、交流電圧600Vから7kVまでが高圧です。

高圧トランスの使用用途

一般に高圧トランスは、工場・病院・商業施設などの電力消費の多い大規模施設への電力供給に使用されます。

発電所で発電された電力は数万Vと非常に高圧です。これをユーザーにそのまま送電しても利用できません。しかし、送電効率の観点から供給元近辺では、高圧・低電流で送電し、トランスで利用可能な電圧まで降圧しています。

高圧トランスは、キュービクルという高圧受電施設に組み込まれ、屋上などに配置されるのが一般的です。

高圧トランスの原理

トランスは二本のコイルによって構成されます。この二本のコイルは電気的には分離されていますが、鉄心コアによって磁気的には繋がっています。

入力側のコイルが一次コイル、出力側が二次コイルです。一次コイルに電流を流すとアンペールの法則に基づいて磁束が発生します。この磁束は鉄心を通して二次コイルへ伝わり、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいてコイルの巻数に応じた電圧が発生します。このように、コイルと鉄心を利用することで、入力電源と出力電源の電圧の変換が可能です。

高圧トランスのその他情報

1. 高圧トランスの冷却方式

トランス内部では電力損失に伴って発熱するため、冷却する仕組みが導入されます。冷却方式には巻き線を絶縁油で冷却する「油入方式」と、油を使用しない「モールド方式」があります。

高圧トランスは厳密な防災対策が求められる施設で使用されるため、火災リスクが低い「モールド方式」が採用されることが多いです。油入変圧器の場合は、絶縁油に第3石油類が使用されます。高圧トランスの容量が大きくなり、油量が400Lを超えると油単体では危険物として消防法の規制が掛かるので注意が必要です。

また、容量が大きくなるにつれて自冷式トランスを使用することが難しくなるため、強制循環式が採用されます。

2. 高圧トランスの価格

高圧トランスは仕組みが簡便なため、産業用機器の中では比較的安価です。一般的な一時電圧が6,600V/3,300Vで、二次電圧が400V/200V/105Vの変圧器であれば、重電各社でカタログ品が存在します。

カタログ品は2,000kVA付近を上限とされ、それ以上は受注生産品となります。油入自冷式のトランスは、数十kVAのものは数十万円、2,000kVAであれば数百万円~二千万円が平均価格です (2021年現在) 。モールド方式の場合はそれより高価となります。

一般的な降圧用トランスであれば上記金額ですが、特殊仕様のものは受注生産のため、価格に関しては重電各社への相談が必要です。

3. 高圧トランスの容量

高圧トランスの容量は巻線の許容電流値と磁気鉄心の容量で決定されます。巻線に許容値以上の電流が流れた場合、トランスの焼損を招くため過電流継電器で変圧器を保護します。

また、三相電動機などの容量はkW (キロワット) を単位とするのに対し、高圧トランスの容量はkVA (ケーブイエー) を単位とします。単相三線式の高圧トランスのカタログ品は300kVA付近が上限で、三相400V/200Vのトランスは2,000kVAが上限です。

キュービクル式とした場合は、筐体の大きさや冷却能力の関係で市販品は750kVA付近が上限となります。

4. 高圧トランスの力率

負荷の力率によって、高圧トランスに掛けられる仕事量に違いがあるため注意が必要です。力率が1から遠いほど掛けられる仕事量は少なくなります。高圧トランス二次側の力率を1に保ち続けることで、高圧トランスを容量分無駄なく使用することできます。

産業用機械はモーターが多いため、力率は遅れ方向に振れることが多いです。一般的な対策としては、電力用コンデンサを負荷と並列に接続することで補償します。

高圧トランスは60%付近の負荷が最高効率となるように設計されます。従って、通常使用容量が60%付近となるように、容量には余裕をもって選定することが大切です。

参考文献
https://www.thomasnet.com/insights/high-voltage-transformer-considerations/
https://www.electricityforum.com/td/utility-transformers/high-voltage-transformers
http://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/16249?category_id=1908&site_domain=default

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