ピエゾドライバ

ピエゾドライバとは

ピエゾドライバ (英: Piezo driver) とは、ピエゾ素子を安定に動作させ制御するための電源および制御装置のことです。

ピエゾ素子とは圧電効果・逆圧電効果を利用して、力学的な変位を電圧値に変換する機能や印加電圧を力学的な動作に変換するデバイスであり、圧電素子とも呼ばれます。特に力学的な動作に変換する場合、サブミクロンの非常に微小な制御を高速に行うことが可能です。

ピエゾドライバはこのようなピエゾ素子による精緻な動作を制御する際に、電源及び制御装置としての役割を担っています。

ピエゾドライバの使用用途

ピエゾドライバは、微小な位置合わせが必須な顕微鏡や精密加工用の工作機械といった微細な動作制御が必要とされる場面で広く用いられています。光学顕微鏡の用途では、X-Yステージや対物レンズの駆動において、ピエゾドライバの活用により正確な位置決めを高速に実施することが可能です。

例えば、生きた細胞内のダイナミックな現象を高速三次元イメージングする場合などの用途に非常に適しています。旋盤などの工作機械においても、サブミクロン単位の高精度な精度が求められるような精密な作業を行う場合に、ピエゾドライバはよく利用されています。

ピエゾ素子を使用したアクチュエーターデバイスの性能を十分に引き出すためには、その動作制御を担うピエゾドライバの性能が重要です。

ピエゾドライバの原理

ピエゾドライバの原理は、ピエゾ素子の駆動用電源と (圧電効果・逆圧電効果を活用するための) 微小な電位を正確に扱う制御回路機能を有する点にあります。ピエゾ素子自体はコンデンサとしての性質を有しており、コンデンサの充電・放電に伴い、これを駆動する電源側 (ピエゾドライバ側) には出力電流の吸い込みと吐き出しができるアンプ型電源としての特性が必要です。

ピエゾ素子は極微小な電圧変化にも応答します。仮に入力の無い定常状態で回路内の電圧変化を感知してしまうと、何もしていないのにピエゾ素子が駆動してしまう不具合が発生するため、ノイズ成分に注意します。

ピエゾドライバの電圧供給は十分に安定していなければなりません。電源としての安定性を担保するためにシャントレギュレータなどを組み込み、ピエゾ素子にかかる電圧をモニターし、常にフィードバックをかけています。

このように誤動作やドリフト・ノイズを最小限に押さえることにより、ピエゾ素子の静電容量を充填するのに十分な電流を安定的に供給し、入力としての制御電圧の急激な上昇に対して、わずか数マイクロ秒でその駆動を完了させることが可能です。

ピエゾドライバのその他情報

1. PWM制御型ピエゾドライバ

昨今のSDGsに代表される省エネルギー化のトレンドのもと、オーディオアンプがPWM (Pulse Width Modulation:パルス幅変調) 制御を活用して高効率化を図っている状況下で、ピエゾドライバにもPWM制御型アンプを適用するメーカーが現れています。

専用のオーディオアンプと異なり、ピエゾ素子に適した独自の低電流高電圧タイプのPWM制御型アンプ開発により、小型高効率なピエゾドライバが製品化されている状況です。

2. イヤホンやスピーカーへの応用

圧電素子自体は以前から音響分野で使用されていましたが、圧電スピーカー等の使用にとどまっていました。しかし、近年ハイレゾ再生用などの高級イヤホンには、ピエゾドライバが採用されています。ピエゾドライバに電圧をかけると、ピエゾ素子は圧力を発生します。この特性を用いて音楽信号を電圧としてピエゾドライバに加えると、それに応じて振動板が振動します。すなわち電圧が音声に変換されるわけです。

ピエゾドライバをイヤホンに使用する利点は、ダイナミック型の様にコイルで音楽信号を磁力に変換して振動板を振動させるという信号の変換プロセスが無いことです。また、ピエゾドライバが直接振動板を振動させるため、非常に高速に動作することから、超高域の再生能力が非常に優れています。このため、ハイレゾ音源の豊かな超高域の情報を再現するのに適しています。

ただし、ピエゾドライバを採用したイヤホンはその性能を活かすために、他の低中音向けドライバ等も高級なものを採用しており、製品は高価です。ピエゾドライバースピーカーの仕組みもピエゾドライバーイヤホンとほぼ同様です。しかし、あるメーカーの発売しているピエゾスピーカーは非常に薄型でフレキシブルな構造なために、色々なものを振動させて音を出すことができます。

また、以前の圧電スピーカーよりも幅広い音域、特に苦手としていた低音域の出力が強化されています。最近の液晶テレビは非常に筐体が薄くなっており、既存のスピーカーは搭載できなくなってきています。このような薄型テレビに、上記の様なフィルム型の薄型ピエゾドライバースピーカーは適しており、今後もより高音質化が期待されている状況です。

参考文献
https://www.physikinstrumente.com/en/technology/controllers-software/piezo-controllers-piezo-drivers/
https://www.matsusada.co.jp/column/words-piezo.html
https://www.phileweb.com/review/article/201605/27/2077_2.html#a3

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