光スペクトラムアナライザとは
光スペクトラムアナライザ (英語: Optical spectrum analyzer) とは、この光スペクトルを測定するための分光装置です。
光スペクトルとは、横軸に波長・縦軸に光強度をプロットした、波長ごとの強度分布を指します。同様の装置に光波長計がありますが、光スペクラムアナライザには、測定値を補正する機能や、波長をスキャンするためのミラーが搭載されています。
光波長計よりも光学系は複雑になりがちですが、多機能で汎用性が高いのが特徴です。そのため、装置の価格は比較的高額になります。
光スペクトラムアナライザは、光ネット通信やフォトカプラなどの光半導体の開発で利用されています。その他、光を使った分析や水分量測定、膜厚測定、医薬や生物等のバイオや化学を始めとした全ての光関連部品分野に応用されています。
光スペクトラムアナライザの使用用途
光スペクトラムアナライザは、主に光学系の性能評価に利用されています。特にレーザー光源やLED光源は産業・医療応用・情報通信・学術研究に至るまで、非常に幅広く応用されており、その波長特性を調べることは非常に重要です。
光スペクトラムアナライザの使用用途の一例は下記の通りです。
- レーザーやLEDをはじめとする単色光源や水銀・キセノンランプなどの白色光源の波長特性の評価
- 光学部品の波長依存的な反射率・透過率の評価
- 光波長多重通信のなど、光ファイバー通信におけるクオリティチェック
光スペクトラムアナライザの原理
光スペクトラムアナライザの原理は、分光方式によって以下の分散型と干渉型の二種に大別されます。
1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ
分散分光方式は、分光素子を用いて波長成分を空間的に分解し,波長ごとの強度を測定する方法です。
分光素子には、プリズムや回折格子が用いられます。分光器は、その他にコリメートと呼ばれる鏡とレンズ、集光用のカメラやレンズで構成されています。
プリズムの場合は、波長による屈折率の違いを利用して分光します。プリズムに入射した光は波長に依存して異なる屈折角で射出されます。これによって測定したい光の波長成分を空間的に分解することが可能です。
回折格子の場合は、波長による回折角の違いを利用して分光します。回折格子に光が入射すると、回折条件を満たした角度で波長ごとに異なる角度で出射します。
2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ
干渉分光法は、測定したい光を干渉させ、その干渉パターンからスペクトルを測定する方法です。
測定したい光を干渉させるために、ビームスプリッタを用いた二光束干渉方式と、対向させた高反射ミラーを用いる多光束干渉方式があります。二光束干渉方式では、二光束の光路長を変化させ、干渉光強度の変化 (インターフェログラム) を測定し、これを逆フーリエ変換することでスペクトルを算出できます。
多光束干渉方式では、測定したい光を多重反射させると共振した波長成分だけを取り出すことが可能です。ミラーの間隔を変えれば共振する光の波長も変わるため、これを繰り返すことでスペクトルの測定が可能となります。
波長毎に分離した光の強度を検出する分散分光方式に比べると、ダイナミックレンジの性能が劣りますが、高波長確度が得られます。
光スペクトラムアナライザのその他情報
光スペクトラムアナライザの性能
光スペクトラムアナライザの性能を表す最も重要なものとして、波長分解能が挙げられます。波長分解能は、光スペクトルの分解できる波長幅の限界を指す言葉です。
1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ
分散分光方式の場合、波長分解能は使用している回折格子の種類や光路の距離、スリット幅などに依存します。そのため、波長分解能が高い装置の場合、大型の装置になります。
また、検出する際に光が通るスリットの幅を狭くすると分解能が高くなりますが、検出する強度も下がるため、必要な分解能幅を考慮して光学系を調整することが大切です。カメラに冷却装置がついているものを使用している場合は、暗電流等のバックグラウンドを下げて測定することが可能になります。
2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ
干渉分光方式の場合、光路長を変化させる際のステップ幅によって波長分解能が決まります。そのため、高い波長分解能を求める場合、より多くのステップで測定する必要があるため、測定時間がより長くなります。
参考文献
https://www.rp-photonics.com/optical_spectrum_analyzers.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/products/ms9740b
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf