光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザとは

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザ (英語: Optical spectrum analyzer) とは、この光スペクトルを測定するための分光装置です。

光スペクトルとは、横軸に波長・縦軸に光強度をプロットした、波長ごとの強度分布を指します。同様の装置に光波長計がありますが、光スペクラムアナライザには、測定値を補正する機能や、波長をスキャンするためのミラーが搭載されています。

光波長計よりも光学系は複雑になりがちですが、多機能で汎用性が高いのが特徴です。そのため、装置の価格は比較的高額になります。

光スペクトラムアナライザは、光ネット通信やフォトカプラなどの光半導体の開発で利用されています。その他、光を使った分析や水分量測定、膜厚測定、医薬や生物等のバイオや化学を始めとした全ての光関連部品分野に応用されています。

光スペクトラムアナライザの使用用途

光スペクトラムアナライザは、主に光学系の性能評価に利用されています。特にレーザー光源やLED光源は産業・医療応用・情報通信・学術研究に至るまで、非常に幅広く応用されており、その波長特性を調べることは非常に重要です。

光スペクトラムアナライザの使用用途の一例は下記の通りです。

  • レーザーやLEDをはじめとする単色光源や水銀・キセノンランプなどの白色光源の波長特性の評価
  • 光学部品の波長依存的な反射率・透過率の評価
  • 光波長多重通信のなど、光ファイバー通信におけるクオリティチェック

光スペクトラムアナライザの原理

光スペクトラムアナライザの原理は、分光方式によって以下の分散型と干渉型の二種に大別されます。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ

分散分光方式は、分光素子を用いて波長成分を空間的に分解し,波長ごとの強度を測定する方法です。

分光素子には、プリズムや回折格子が用いられます。分光器は、その他にコリメートと呼ばれる鏡とレンズ、集光用のカメラやレンズで構成されています。

プリズムの場合は、波長による屈折率の違いを利用して分光します。プリズムに入射した光は波長に依存して異なる屈折角で射出されます。これによって測定したい光の波長成分を空間的に分解することが可能です。

回折格子の場合は、波長による回折角の違いを利用して分光します。回折格子に光が入射すると、回折条件を満たした角度で波長ごとに異なる角度で出射します。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ

干渉分光法は、測定したい光を干渉させ、その干渉パターンからスペクトルを測定する方法です。

測定したい光を干渉させるために、ビームスプリッタを用いた二光束干渉方式と、対向させた高反射ミラーを用いる多光束干渉方式があります。二光束干渉方式では、二光束の光路長を変化させ、干渉光強度の変化 (インターフェログラム) を測定し、これを逆フーリエ変換することでスペクトルを算出できます。

多光束干渉方式では、測定したい光を多重反射させると共振した波長成分だけを取り出すことが可能です。ミラーの間隔を変えれば共振する光の波長も変わるため、これを繰り返すことでスペクトルの測定が可能となります。

波長毎に分離した光の強度を検出する分散分光方式に比べると、ダイナミックレンジの性能が劣りますが、高波長確度が得られます。

光スペクトラムアナライザのその他情報

光スペクトラムアナライザの性能

光スペクトラムアナライザの性能を表す最も重要なものとして、波長分解能が挙げられます。波長分解能は、光スペクトルの分解できる波長幅の限界を指す言葉です。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ
分散分光方式の場合、波長分解能は使用している回折格子の種類や光路の距離、スリット幅などに依存します。そのため、波長分解能が高い装置の場合、大型の装置になります。

また、検出する際に光が通るスリットの幅を狭くすると分解能が高くなりますが、検出する強度も下がるため、必要な分解能幅を考慮して光学系を調整することが大切です。カメラに冷却装置がついているものを使用している場合は、暗電流等のバックグラウンドを下げて測定することが可能になります。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ
干渉分光方式の場合、光路長を変化させる際のステップ幅によって波長分解能が決まります。そのため、高い波長分解能を求める場合、より多くのステップで測定する必要があるため、測定時間がより長くなります。

参考文献
https://www.rp-photonics.com/optical_spectrum_analyzers.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/products/ms9740b
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf

シャントレギュレータ

シャントレギュレータとは

シャントレギュレータ (Shunt regulator) とは、回路の入力電圧をモニターし、出力電圧を一定に保つようにフィードバックをかける集積回路 (IC) です。

一般に集積回路内の電圧は、温度変化や部品の個体差など、様々な要因により偏差やばらつきを生じます。一方で、シャントレギュレータは、高い精度で電圧をコントロールできるため、基準電圧源としての利用が多いことから、基準電圧集積回路とも呼ばれています。

リニアレギュレータスイッチングレギュレータのような電圧を安定化する回路に比べて、高い精度で電圧をコントロールできることが特徴です。

シャントレギュレータの使用用途

シャントレギュレータは、電子機器の高精度制御に伴い、AD/DAコンバータ、DSPのRef用基準電圧源などの高精度基準電源が必要な用途で広く用いられています。

シャントレギュレータは高精度な電圧制御が可能ですが、負荷と並列の定電圧化機能に伴い、特に高電流下動作時には効率が非常に低いです。そのため、その効率の低さが無視できるような低電流な負荷条件での基準電圧源として用いられ、その後段に高電流の別のレギュレータを直列につないで駆動する目的でも使われます。

例えば、コンパレータのように2つの電圧を比較するような論理回路の場合、比較対象に基準電圧を使用します。仮に基準電圧のドリフトが生じると、意図した回路動作そのものが破綻する恐れがあるため、基準電圧値には可能な限りの安定性が必要です。

シャントレギュレータの原理

シャントレギュレータの原理

図1. シャントレギュレータの原理

シャントレギュレータの動作原理は、その構成要素である負荷と並列に接続された誤差増幅器 (エラーアンプ) とトランジスタにより、入力電圧の変動を補正し負荷電流を一定に保つ働きをすることで、高精度な電圧値が得られる点にあります。

一般のシャントレギュレータは内部基準電圧端子、誤差増幅器、トランジスタによって構成されており、回路中の負荷に対して並列に接続されます。入力電圧が上昇したとき、これに伴って出力電圧も上昇しようとします。しかし、誤差増幅器がそれを感知しトランジスタに流す電流を増加させることで、負荷を流れる電流は減少し、出力電圧の上昇が抑えられる仕組みです。

最も単純なシャントレギュレータの例は、ツェナーダイオードレギュレータです。ツェナーダイオードは、通常のダイオードと異なり逆方向に電圧をかけ、それが一定の閾値を超えると大きな電流が流れ始めるという特性を持っています。このときの電圧の閾値をツェナー電圧と言います。流れる電流の大小に関わらず一定の値になり、ツェナー電圧はPN接合部への不純物の添加によって正確に設計することが可能です。

このダイオードの特性をうまく利用したシャントレギュレータは、ダイオードだけで定電圧を得られるので回路の簡素化やコストダウンに繋がります。しかし、温度変動が大きいため、温度特性を重視する場合には誤差増幅器やトランジスタによって構成されるシャントレギュレータを利用する必要があります。

シャントレギュレータのその他情報

1. シリーズレギュレータとシャントレギュレータの違い

リニアレギュレータは、入力電圧より低い出力電圧を作るDCDCコンバータですが、その種類はシリーズレギュレータとシャントレギュレータの2つの方式に分類できます。

シャントレギュレータは電圧降下発生用の抵抗器を用いたDCDCコンバータであり負荷に対して制御を行う制御素子が並列に入る方式で、並列制御型ともよばれます。それに対して、シリーズレギュレータは負荷に対して制御素子が直列に入る方式であり、直列制御型ともよばれます。

シャントレギュレータは、シリーズレギュレータとは異なり、設定された電流を流し続けるのが特徴です。無効電力が大きくなりやすく、大電流のアプリケーションには不向きと言えます。

2. 三端子レギュレータとLDO

シャントレギュレータと異なり大電流用にも用いられるシリーズレギュレータは、三端子レギュレータとLDO (Low Dropout Regulator) に分類できます。三端子レギュレータは、入力、出力、GNDの三端子でデバイスが構成されています。一般的に、直流電源回路には効率の良さからスイッチングレギュレータが使用されますが、三端子レギュレータはノイズが少なく外付け部品も少なく、低価格なため、アプリケーション用途によっては用いられるケースもあります。

LDOは、入出力の電位差が少なくても動作可能なシリーズレギュレータであり、汎用のシリーズレギュレータと比較して電力損失が少なくて済むのがメリットです。ただし、その動作上入力電圧値の制限や負荷条件など使用上の注意点もあるため、仕様の確認が重要です。

参考文献
https://www.electronics-notes.com/
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap2/chap2-5.html
https://emb.macnica.co.jp/articles/7645/
https://ja-support.renesas.com/knowledgeBase/17793549

光波長計

光波長計とは

光波長計 (英: Optical wavelength meter) とは、光の波長を測定することを目的にした専用の装置です。

光の波長を測定するための装置という点では、光スペクトラムアナライザとほぼ同義ですが、一般に光波長計では測定のダイナミックレンジを絞っているため感度が高いという特徴があります。

光スペクトラムアナライザは汎用性を持たせるために様々な機能が組み込まれていますが、光波長計は波長計測という最小限の機能に留められているため、価格が手頃な機種も多いです。

なお光波長計で得られた結果は真空中の光の波長であり、実際に空気中で観測される波長とは空気の屈折率の分だけ (0.03%程度) のズレがあります。

光波長計の使用用途

光波長計の使用用途ですが、光学部品などの特性評価において、より高い波長の精度が求められる場合によく利用されます。

例えば、レーザーやLEDなどバンド幅の狭い光源の波長特性を正確に測定するためや、光ファイバー通信で用いられる光の波長特性の評価などにも用いられます。

光波長計は、もともと光ファイバー通信に使われる光の波長を測定するためによく使われていた背景もあり、1,000~1,800 nmの光を測定できるようにレンジが設定されているものが数多くあります。

光波長計の原理

光波長計の原理は、フィゾー干渉計やマイケルソン干渉計などの光の物理的な干渉を利用することで、光の波長特性の測定を行う点にあります。

フィゾー干渉計を用いたものは、コリメーターレンズと参照面と呼ばれるガラス板と測定用ミラーからなる非常にシンプルな光学系です。

フィゾー干渉計に入射した光はコリメーターレンズによって平行光となった後、参照面を通過する際にその一部が反射されます。参照面を通過した光は測定用ミラーで反射され、参照面で反射した光と干渉し、縞のようなパターンを形成します。この干渉縞は光の波長と干渉する光の光路差によって固有のものが形成されます。

参照面と測定用ミラーとの距離 (光路差) は既知なので、干渉縞パターンから波長を算出できます。また、マイケルソン干渉計を用いたものは、入射した光をビームスプリッタによって2本に分け、さまざまに光路差を変えることで干渉光強度の変化を測定します。これを逆フーリエ変換することで、光のスペクトル(波長)が算出可能です。

光波長計のその他情報

1. 光波長計と光ファイバー通信

光ファイバー通信用の光計測用に広く用いられている光波長計ですが、光ファイバーは1,500nm帯が、光ファイバー内伝送時の光の損失量が最も低いために、一番よく使われている波長帯です。

しかし近年はこの波長帯だけでは、光ファイバー通信網がすでに飽和状態であるために周辺の光の波長帯の利用も盛んに開発が実施されている状況です。

光ファイバー通信の大容量化のためには、複数の波長を取り扱う波長多重通信が欠かせない技術の一つであり、光波長計にもこの場合の多重波長の同時測定機能やその実用的な分解能が求められています。このような背景のもと、昨今では最大1,024波長まで複数の波長を同時測定が可能な機種を扱うメーカーがあります。

2. 光ファイバー通信以外の用途

光ファイバー通信の光源には、一般に化合物半導体基板をベースにした半導体レーザーが広く用いられており、半導体のウエハやレーザーチップの量産ラインのウエハ製造前工程検査向けには、限られた単一波長のみを非常に高速に評価可能な機種のニーズが存在します。

また光ファイバー用アンプの光源が900nm帯であることから、1,000nmよりも低い光波長までの測定を対応可能にした機種が扱われています。

さらに、最近眼科診断によく用いられる光干渉断層計 (英: Optical Coherence Tomography) では800nm帯や1,050nm帯が使用されており、バイオテクノロジー向けの蛍光観察のアプリケーションでは可視光が主体ですので、300nm帯から1,200nm帯までを対応可能なモデルもあります。

3. CWとパルス光源対応機種

レーザーを用いたアプリケーションには、レーザー発振にCW動作を扱う場合と、例えば1KHzといった高速のパルス光源を扱う場合が存在します。

上位機種には、両方を扱うことが可能なモデルがありますが、CW動作時の用途のみを取り扱う光波長計もありますので、仕様をよく確認することが重要です。

 参考文献
https://telecomteststation.com/wavemeter-or-optical-spectrum-analyzer/
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/optical-devices/interferometer/knowledge#
https://www.rp-photonics.com/wavemeters.html

画像処理装置

画像処理装置とは

画像処理装置とは、カメラなどの画像に含まれる情報を抽出し、何が写っているかの特定・測定・解析をする装置です。

画像処理装置には、外部機器と連携するためのインターフェースが用意されています。画像処理装置で得られた物の形、距離、個数などを外部機器に送信することで、生産ラインの制御などが可能になります。

画像処理装置を使用する用途・目的 (対象物の種類、対象物の移動速度、処理の精度、処理速度など) に合わせて、装置の仕様、適用する画像処理手法及び、システム制御方法を選定することが大切です。近年では、人工知能や機械学習と組み合わせた装置の開発も行われています。

画像処理装置の使用用途

画像処理装置は、日常生活から工場、医療、交通・輸送など、様々な分野で利用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 工場における部品等の品質検査や個数の計測
  • 画像モデル、文字、バーコードによる対象物の識別と認証
  • ステレオ画像などの3次元情報を基にしたロボット制御
  • 監視カメラの画像鮮明化と異常検知
  • 車の運転アシストや自動運転
  • レントゲンや CT など医療画像からの診断補助
  • 個人識別のための顔認証システム
  • 駅や商業施設での人数計測システム

画像処理装置の原理

画像処理装置の原理は、カメラやセンサーからの信号を画像化した後、コンピュータ上で画像変換や変形、特徴量などの情報を抽出し、対象物の特定・測定・解析することによる画像から対象物情報への変換です。

画像処理装置は、画像入力部、画像処理部、外部インターフェース部、システム制御部で構成されます。各部の機能は、以下の通りです。

1. 画像入力部

カメラなどのセンサーからの信号をデジタルデータに変換し、画像化します。赤外線カメララインセンサカメラなど、特殊カメラからの信号を画像化できるタイプもあり、使用目的に合わせて選択します。

2. 画像処理部

画像入力部で得られた画像をデータとして処理して画像の変換や変形、特徴量などの情報を抽出する演算を実行し、何が写っているかの特定及び測定・解析をします。画像処理部は、目的に沿って画像処理演算を組み合わせた画像処理手順を実行します。一連の画像処理手順は、プログラムを作成して実行されます。

画像処理演算は、取り扱うデータ量が多いです。そのため、検査など短時間で判定が必要な場合は、画像処理専用LSIや信号処理専用LSIを使って高速化しています。

3. 外部インターフェース部

画像処理開始信号の受信や画像処理部で測定・解析した結果をON/OFF信号やイーサネットやシリアル通信データにして出力します。製造ラインの制御装置やロボットなど使用目的に合わせて連携する機器が変わるため、TCP/IPやRS-232Cの様な一般的な通信方式からOPCの様な工業用の通信方式まで、様々な通信方式から適したものを選定します。

4. システム制御部

画像を取り込み、対象物の特定、計測・解析し、外部機器へ結果を出力する様な一連の処理のために画像入力部、画像処理部、外部インターフェース部の動作と連携を制御します。各部の動作及び連携のタイミングと内容は、画像処理装置の目的に合わせて変わるため、プログラムを作成します。

画像処理装置を用いて検査や品質管理を実施するためには、システムに求められる性能をもとに、画像の取り込みから結果出力までの処理手順を画像処理ソフトウェアの組み合わせと外部機器との連携をプログラム化する必要があります。

画像処理装置のその他情報

画像処理ソフトウェア

画像処理部の役割である画像をデータとして処理を行い、画像の変換や変形、特徴量などの情報を抽出する演算処理は、コンピュータのプログラムとして実行され、画像処理ソフトウェアと呼ばれています。画像処理装置の画像処理ソフトウェアは、画像入力から画像処理、そして外部機器との連携という一連の処理制御ができることが重要です。

最近では、カメラや外部出力の標準化が進み、画像処理だけでなく、カメラの制御、画像の表示や処理結果の外部出力インターフェース制御などを備えたパッケージも出てきています。また、検査や計測に目的を絞り込んだ画像処理ソフトウェアのパッケージなどもあります。

また、近年では、既存の画像処理ソフトウェアと機械学習やAI技術などを組み合わせることで解析や特徴抽出の精度を上げる試みも行われている状況です。

参考文献
https://www.automation-news.jp/2020/03/47975/
http://optronics-media.com/news/20190319/56189/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/09/news052.html

高圧トランス

高圧トランスとは高圧トランス

高圧トランスとは、高圧を一次電圧として入力し、降圧または昇圧した二次電圧を出力するトランスです。

トランスは変圧器とも呼ばれ、入力した電流の電圧を別の電圧に変換して出力する装置を指します。入力した電圧よりも低い電圧に変換することを降圧、逆に高い電圧に変換することを昇圧と呼びます。電源電圧には低圧・高圧・特別高圧という規格があり、交流電圧600Vから7kVまでが高圧です。

高圧トランスの使用用途

一般に高圧トランスは、工場・病院・商業施設などの電力消費の多い大規模施設への電力供給に使用されます。

発電所で発電された電力は数万Vと非常に高圧です。これをユーザーにそのまま送電しても利用できません。しかし、送電効率の観点から供給元近辺では、高圧・低電流で送電し、トランスで利用可能な電圧まで降圧しています。

高圧トランスは、キュービクルという高圧受電施設に組み込まれ、屋上などに配置されるのが一般的です。

高圧トランスの原理

トランスは二本のコイルによって構成されます。この二本のコイルは電気的には分離されていますが、鉄心コアによって磁気的には繋がっています。

入力側のコイルが一次コイル、出力側が二次コイルです。一次コイルに電流を流すとアンペールの法則に基づいて磁束が発生します。この磁束は鉄心を通して二次コイルへ伝わり、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいてコイルの巻数に応じた電圧が発生します。このように、コイルと鉄心を利用することで、入力電源と出力電源の電圧の変換が可能です。

高圧トランスのその他情報

1. 高圧トランスの冷却方式

トランス内部では電力損失に伴って発熱するため、冷却する仕組みが導入されます。冷却方式には巻き線を絶縁油で冷却する「油入方式」と、油を使用しない「モールド方式」があります。

高圧トランスは厳密な防災対策が求められる施設で使用されるため、火災リスクが低い「モールド方式」が採用されることが多いです。油入変圧器の場合は、絶縁油に第3石油類が使用されます。高圧トランスの容量が大きくなり、油量が400Lを超えると油単体では危険物として消防法の規制が掛かるので注意が必要です。

また、容量が大きくなるにつれて自冷式トランスを使用することが難しくなるため、強制循環式が採用されます。

2. 高圧トランスの価格

高圧トランスは仕組みが簡便なため、産業用機器の中では比較的安価です。一般的な一時電圧が6,600V/3,300Vで、二次電圧が400V/200V/105Vの変圧器であれば、重電各社でカタログ品が存在します。

カタログ品は2,000kVA付近を上限とされ、それ以上は受注生産品となります。油入自冷式のトランスは、数十kVAのものは数十万円、2,000kVAであれば数百万円~二千万円が平均価格です (2021年現在) 。モールド方式の場合はそれより高価となります。

一般的な降圧用トランスであれば上記金額ですが、特殊仕様のものは受注生産のため、価格に関しては重電各社への相談が必要です。

3. 高圧トランスの容量

高圧トランスの容量は巻線の許容電流値と磁気鉄心の容量で決定されます。巻線に許容値以上の電流が流れた場合、トランスの焼損を招くため過電流継電器で変圧器を保護します。

また、三相電動機などの容量はkW (キロワット) を単位とするのに対し、高圧トランスの容量はkVA (ケーブイエー) を単位とします。単相三線式の高圧トランスのカタログ品は300kVA付近が上限で、三相400V/200Vのトランスは2,000kVAが上限です。

キュービクル式とした場合は、筐体の大きさや冷却能力の関係で市販品は750kVA付近が上限となります。

4. 高圧トランスの力率

負荷の力率によって、高圧トランスに掛けられる仕事量に違いがあるため注意が必要です。力率が1から遠いほど掛けられる仕事量は少なくなります。高圧トランス二次側の力率を1に保ち続けることで、高圧トランスを容量分無駄なく使用することできます。

産業用機械はモーターが多いため、力率は遅れ方向に振れることが多いです。一般的な対策としては、電力用コンデンサを負荷と並列に接続することで補償します。

高圧トランスは60%付近の負荷が最高効率となるように設計されます。従って、通常使用容量が60%付近となるように、容量には余裕をもって選定することが大切です。

参考文献
https://www.thomasnet.com/insights/high-voltage-transformer-considerations/
https://www.electricityforum.com/td/utility-transformers/high-voltage-transformers
http://fa-faq.mitsubishielectric.co.jp/faq/show/16249?category_id=1908&site_domain=default

フラクサー

フラクサーとは

フラクサーとは、自動はんだ付け装置はんだ付けを過程でフラックスを塗布する装置です。

フラックスとは、はんだの広がりを良くする促進剤を指します。電子部品や基板の製造において、はんだ付けは品質を左右する重要な工程です。

近年では、人件費削減と効率化のために自動はんだ付け装置が導入されるようになりました。フラクサーを使用することでフラックスを高精度かつ効率的な塗布が可能となります。

フラクサーの使用用途

フラクサーは、自動はんだ付け装置と組み合わせて使用されます。自動はんだ付け装置のはんだ付け品質を向上させることが目的です。

フラックス含有のはんだも販売されていますが、フラックスははんだの融点付近で蒸発します。自動はんだ付け装置のはんだ槽は常に高温に保たれるため、フラックス入りのはんだを使用できません。

自動装置では、フラクサーによってフラックスを塗布します。

フラクサーの原理

フラクサーでフラックスを塗布し、基板表面の異物や酸化皮膜を除去して表面張力を低下させ、融解したはんだを薄く広げます。はんだは融解すると、表面張力により球状になろうとする点が特徴です。

フラックスは松脂 (ロジン) を主成分とする液剤で、塩化亜鉛塩化アンモニウムなどが添加されます。松脂はアビエチン酸などの有機酸を多く含み、はんだの融点に近い170℃付近で活性化し、銅酸化物を除去する作用を持ちます。

フラクサーの種類

フラクサーの塗布方式には、発泡方式とスプレー方式の2種類があります。

1. 発泡式フラクサー

発泡素子を用いて泡立てたフラックスに基板を浸すことで塗布します。十分量のフラックスを塗布することができる反面、大量のフラックスと溶剤を使用するため高コストである点がデメリットです。

2. スプレー式フラクサー

霧状に噴霧することで薄く均一にフラックスを塗布することが可能です。発泡方式に対して、必要なときに必要な量だけフラックスを使用できます。低コストで簡便性が高いことから、多くのフレクサーで採用されます。

フラクサーのその他情報

1. スプレーフラクサーの塗布量

スプレーフラクサーの塗布量は、各メーカーのノウハウを基に設計されます。制御基板の部品実装面はリフロー面と呼ばれ、メタルマスクとクリームはんだによってはんだ量の管理が比較的容易です。

裏面のはんだフロー面には、はんだ槽を通す際に付着性向上を目的に必ずプリフラックスを塗布します。その際、塗布方法は無駄が少ないスプレー方式が多く採用されます。プリフラックスの塗布量によって、基板のはんだ品質に大きな影響を与えます。

2. スプレーフラクサーの技術革新課題

フラクサーにはスプレー方式と発泡方式がありますが、塗布量管理が容易で品質も良いスプレー方式が主流です。フラックス塗布の品質向上のために必要な条件は以下3点です。

  • ムラをなくす
  • 塗布量のリニアリティ (管理のしやすさ)
  • 繰り返し精度の安定性

これらの条件を満足させるために、製造現場では条件出しをします。基板をゾーン分けして、全ての条件をクリアできるように試行錯誤します。この作業は負担が大きく、電子基板実装分野における技術革新課題の一つです。

3. スプレーフラクサーの構造

スプレー方式フラクサーは、ノズルやスプレーによって構成されます。缶からフラックスをノズルで吸い上げて、霧状のフラックスをスプレーで直接噴出します。フラックス吸引用ノズルが基板の横方向に稼動し、搬送コンベアの動作と同調して全フロー面にフラックス塗布を行います。

なお、スプレーフラクサーの工程時間は30秒程度です。この方式の特徴はツールの清掃が定期的に必要な点です。ただし、基板全面に均一塗布が可能であり、基板面への膜厚コントロールが容易であるというメリットがあります。

そのため、品質面ではスプレー方式のフラクサーが最も優れています。

参考文献
https://www.adogawa.co.jp/cat_mounting/5669.htm
https://global.pioneer/en/manufacturing/crdl/rd/pdf/18-2-4.pdf
https://www.tamura-ss.co.jp/jp/products/electronic_chemicals/category/fa_systems/spray_fluxer/index.html

ピエゾドライバ

ピエゾドライバとは

ピエゾドライバ (英: Piezo driver) とは、ピエゾ素子を安定に動作させ制御するための電源および制御装置のことです。

ピエゾ素子とは圧電効果・逆圧電効果を利用して、力学的な変位を電圧値に変換する機能や印加電圧を力学的な動作に変換するデバイスであり、圧電素子とも呼ばれます。特に力学的な動作に変換する場合、サブミクロンの非常に微小な制御を高速に行うことが可能です。

ピエゾドライバはこのようなピエゾ素子による精緻な動作を制御する際に、電源及び制御装置としての役割を担っています。

ピエゾドライバの使用用途

ピエゾドライバは、微小な位置合わせが必須な顕微鏡や精密加工用の工作機械といった微細な動作制御が必要とされる場面で広く用いられています。光学顕微鏡の用途では、X-Yステージや対物レンズの駆動において、ピエゾドライバの活用により正確な位置決めを高速に実施することが可能です。

例えば、生きた細胞内のダイナミックな現象を高速三次元イメージングする場合などの用途に非常に適しています。旋盤などの工作機械においても、サブミクロン単位の高精度な精度が求められるような精密な作業を行う場合に、ピエゾドライバはよく利用されています。

ピエゾ素子を使用したアクチュエーターデバイスの性能を十分に引き出すためには、その動作制御を担うピエゾドライバの性能が重要です。

ピエゾドライバの原理

ピエゾドライバの原理は、ピエゾ素子の駆動用電源と (圧電効果・逆圧電効果を活用するための) 微小な電位を正確に扱う制御回路機能を有する点にあります。ピエゾ素子自体はコンデンサとしての性質を有しており、コンデンサの充電・放電に伴い、これを駆動する電源側 (ピエゾドライバ側) には出力電流の吸い込みと吐き出しができるアンプ型電源としての特性が必要です。

ピエゾ素子は極微小な電圧変化にも応答します。仮に入力の無い定常状態で回路内の電圧変化を感知してしまうと、何もしていないのにピエゾ素子が駆動してしまう不具合が発生するため、ノイズ成分に注意します。

ピエゾドライバの電圧供給は十分に安定していなければなりません。電源としての安定性を担保するためにシャントレギュレータなどを組み込み、ピエゾ素子にかかる電圧をモニターし、常にフィードバックをかけています。

このように誤動作やドリフト・ノイズを最小限に押さえることにより、ピエゾ素子の静電容量を充填するのに十分な電流を安定的に供給し、入力としての制御電圧の急激な上昇に対して、わずか数マイクロ秒でその駆動を完了させることが可能です。

ピエゾドライバのその他情報

1. PWM制御型ピエゾドライバ

昨今のSDGsに代表される省エネルギー化のトレンドのもと、オーディオアンプがPWM (Pulse Width Modulation:パルス幅変調) 制御を活用して高効率化を図っている状況下で、ピエゾドライバにもPWM制御型アンプを適用するメーカーが現れています。

専用のオーディオアンプと異なり、ピエゾ素子に適した独自の低電流高電圧タイプのPWM制御型アンプ開発により、小型高効率なピエゾドライバが製品化されている状況です。

2. イヤホンやスピーカーへの応用

圧電素子自体は以前から音響分野で使用されていましたが、圧電スピーカー等の使用にとどまっていました。しかし、近年ハイレゾ再生用などの高級イヤホンには、ピエゾドライバが採用されています。ピエゾドライバに電圧をかけると、ピエゾ素子は圧力を発生します。この特性を用いて音楽信号を電圧としてピエゾドライバに加えると、それに応じて振動板が振動します。すなわち電圧が音声に変換されるわけです。

ピエゾドライバをイヤホンに使用する利点は、ダイナミック型の様にコイルで音楽信号を磁力に変換して振動板を振動させるという信号の変換プロセスが無いことです。また、ピエゾドライバが直接振動板を振動させるため、非常に高速に動作することから、超高域の再生能力が非常に優れています。このため、ハイレゾ音源の豊かな超高域の情報を再現するのに適しています。

ただし、ピエゾドライバを採用したイヤホンはその性能を活かすために、他の低中音向けドライバ等も高級なものを採用しており、製品は高価です。ピエゾドライバースピーカーの仕組みもピエゾドライバーイヤホンとほぼ同様です。しかし、あるメーカーの発売しているピエゾスピーカーは非常に薄型でフレキシブルな構造なために、色々なものを振動させて音を出すことができます。

また、以前の圧電スピーカーよりも幅広い音域、特に苦手としていた低音域の出力が強化されています。最近の液晶テレビは非常に筐体が薄くなっており、既存のスピーカーは搭載できなくなってきています。このような薄型テレビに、上記の様なフィルム型の薄型ピエゾドライバースピーカーは適しており、今後もより高音質化が期待されている状況です。

参考文献
https://www.physikinstrumente.com/en/technology/controllers-software/piezo-controllers-piezo-drivers/
https://www.matsusada.co.jp/column/words-piezo.html
https://www.phileweb.com/review/article/201605/27/2077_2.html#a3

ハンディターミナル

ハンディターミナルとは

ハンディターミナル

ハンディターミナルとは、バーコードや2次元コードで記録されているデータの収集を手軽に行える携帯性に優れた端末です。

大型のものから小型のものまで選択可能で、バーコードや2次元コード以外に文字を読み取る文字認識機能が使える機種もあります。データ収集以外の機能として、データの送受信、データの蓄積、キー入力、画面表示などが提供されています。

また、利用される現場の環境に合わせて薬剤消毒が可能なメディカルタイプや防爆エリアに特化した防爆タイプ、冷凍倉庫向けの冷凍タイプなど、様々な種類があります。

ハンディターミナルの使用用途

ハンディターミナルは、データの収集を手軽に行える携帯端末として、以下の様な多様な業務用途で利用されます。

  • 運送業の集荷や荷物管理
    配達情報の送受信、顧客とのやり取り、ナビ、動態管理などをAndroid搭載したハンディターミナル1台で実行できます。
  • 物流業の入出荷管理
    大画面を利用した商品棚情報の表示や倉庫管理システムとの連携で業務効率化が可能です。
  • 製造業や医薬分野などの原材料や工程管理
    効率的で正確な入力によりリアルタイムの工程管理が実現できます。
  • 小売業や飲食業の注文管理や材料管理
    注文を厨房やバックオフィスとリアルタイムで共有し効率化と時短が可能です。
  • 水道、電気、ガスの検針作業
    作業の効率化と個人情報の管理を確実に行うことができます。

ハンディターミナルの原理

ハンディターミナルは、用途や活用シーンで求められる機能やスペックは大きく異なりますが、主にデータ読み取り、画面表示と操作、通信の機能で構成され、以下の原理が利用されます。

1. データ読み取り機能

データ読み取り機能は、商品に付いているバーコードやQRコードなどの二次元コード、文字などを、レーザーやLEDで照射することでバーコードを読み取り、一定の規則に従って数字や文字、記号に変換します。

2. 画面表示

画面表示には主に液晶ディスプレイが使われており、CPUの制御により文字やグラフ、画像などを表示します。

3. 操作機能

操作機能は、数量などを入力するキーボードやテンキーもしくは画面と一体化したタッチパネルを介して行います。入力された情報はCPUにより解読され文字や数字、記号として認識されます。

4. 通信機能

通信機能は、主に無線LANやBluetoothを介して行われます。インターネットや社内ネットワークを介してホストコンピューターや他の端末と接続され、読み取った日時や商品データなどが端末に保存されたのち、ホストコンピューターなどへリアルタイムに送受信されます。

ハンディターミナルの選び方

ハンディターミナルは様々なモデルがリリースされています。多くのモデルの中から適切な製品を選ぶにためは、業務内容、使用環境、費用の観点で選びます。

1. 業務内容

業務内容により必要なアプリが違ってきます。多くのハンディターミナルにはAndroid OSを搭載していますがOSのバージョンにより使えるアプリが違ってきます。必要とするアプリが提供されているかを確認します。

また、RFIDリーダやインカムに特化したPTTボタンが必要など特殊な要件も検討します。

2. 使用環境

使用する現場の環境によって、メディカルタイプや防爆タイプ、冷凍タイプなど特殊な環境条件を満足させるモデルが必要な場合があります。

3. 費用

予算や費用対効果から算出された費用も大切な検討項目です。ハンディターミナルの購入費用だけではなく、保守費用も考慮に入れて算出する必要があります。

ハンディターミナルのその他情報

ハンディターミナルとハンディスキャナの違い

ハンディターミナルはハンディスキャナに比べて高機能です。ハンディターミナルは汎用性が高く様々な応用範囲があることに対して、ハンディスキャナは単機能ですが価格が安いため、商品POSデータの読み取り、図書館貸し出しデータ読み取りなどで使用されています。

参考文献
https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2012/1207109.pdf
https://home.jeita.or.jp/cgi-bin/page/detail.cgi?n=66&ca=1
https://home.jeita.or.jp/upload_file/20130502153219_EqHr3LwJVP.pdf

プログラマブル表示器

プログラマブル表示器とはプログラマブル表示器

プログラマブル表示器 (英: programmable display) とは、コンピュータを内蔵してプログラムを導入できる表示・操作機器です。

その多くはタッチパネル状の製品です。表示や操作のみではなく、通信機能やロギング機能を有する製品も幅広く販売されています。

内部のプログラムは多くの場合、プログラマブル表示器メーカーが販売する専用ソフトを利用して開発します。

プログラマブル表示器の使用用途

プログラマブル表示器は、日常生活から産業分野まで幅広い用途で使用されます。以下はプログラマブル表示器の使用用途一例です。

  • 自動販売機
  • ガソリンスタンドの給油機
  • ATMなどの商用機器
  • 排ガス計測器
  • 工場自動化設備
  • 自動車やバスのカーナビゲーション
  • 船舶のナビゲーション装置

以前から使用される身近な用途として、ATMが挙げられます。タッチパネル上に押ボタンと案内を表示して操作を容易にしています。

産業用途では、プログラマブルコントローラ (PLC) などの制御機器と接続して機械装置の情報を表示して用いられます。必要に応じて操作を行えるのが一般的です。

プログラマブル表示器の原理

プログラマブル表示器は、主に表示機能、操作機能、内部制御機能で構成されます。

1. 表示機能

表示機能はディスプレイ上に画面を表示する機能です。機械装置の状態や操作方法の案内を表示します。機械装置の場合は、簡単な系統図と共にランプやメーターを表示して運転管理を補助します。

2. 操作機能

操作機能はタッチパネル上を指で押すことで操作できる機能です。ディスプレイに操作ボタンを表示するようにプログラムすると、必要に応じてボタン操作が可能となります。ボタンを押すとコンピュータが検知し、制御機器にフィードバックします。

3. 内部制御機能

内部制御機能は状態監視やロギングを実施する機能です。近年では、通信・ネットワーク機能を有する背品も販売されています。

プログラマブル表示器のその他情報

1. プログラマブル表示器の使い方

プログラマブル表示器のプログラミングには、メーカーが販売する表示器用編集ソフトウェアが必要です。編集する際にはソフトウェアの購入を検討します。

また、プログラマブル表示器は演算処理を行うCPUが別途存在する場合も多いです。CPUとプログラマブル表示器を繋ぐ信号ケーブルは国際規格である場合がほとんどです。国際規格のため、CPUとプログラマブル表示器をそれぞれ別メーカーの製品を使用可能な場合があります。

以下は使用される通信方式一例です。

RS232C
RS232C信号が最も古くから使用されるシリアル通信です。伝送可能距離は15m以内であり、比較的短距離の通信であると言えます。接続可能台数もCPUと表示器が1対1でのみ使用可能です。

RS422
RS422信号は最大1200mの伝送距離があり、RS232Cの上位互換となるシリアル通信です。ただし、接続可能台数はCPUや表示器が合計10台までです。

RS485
RS485信号はさらにRS422信号の上位互換となるシリアル通信です。伝送よりがそのままで接続可能台数がより多いというメリットがあります。

Ethernet
近年では、プログラマブル表示器の通信方式としてはEthernet (LAN) 通信が主流です。Ethernet通信はPCなどを有線でインターネットに接続する際にも使用される通信方法で、接続可能台数が実質無制限です。パソコンやインターネットとの直接常時接続も可能という利点があります。

ただし、LANケーブルの最大伝送可能距離が100mです。高層ビルなどでネットワークを構成する際は、HUBなどで中継する方法が用いられます。中継地点が設けにくい広い工場などではメディアコンバータを使用してLAN信号を光信号へと変換して伝送します。

2. プログラマブル表示器の英語表記

プログラマブル表示器を翻訳機に掛けると「Programmable display」ですが、英語の表現ではHMI (human machine interface) という呼び方が一般的です。

HMIの意味としては、「人間と機械の情報交換を行うための装置」であり、パソコンで言うマウスやキーボード、ディスプレイもHMIに含まれます。

参考文献
https://jp.idec.com/idec-jp/ja/JPY/c/Operator_Interfaces
https://www.contec.com/jp/support/basic-knowledge/daq-control/serial-communicatin/

アクチュエータ

アクチュエータとは

アクチュエータ

アクチュエータとは、入力される様々なエネルギーを物理的な動きへと変換する駆動装置のことをいいます。

アクチュエータに入力されるエネルギーには、電気のほか、空気圧や油圧、電磁石による磁力、蒸気や熱など、さまざまなものがあり、アクチュエータで変換したエネルギーを使うことで、物の移動に伴う動きを制御可能です。

アクチュエータの使用用途

アクチュエータは、伸縮・屈伸・旋回といった単純な運動の為の装置として、またモーターやエンジンのような動力を持続的に発生させるために、多様な用途で利用されます。

アクチュエータは入力されるエネルギーに応じて、一般に大きくは次の三つに区分されます。

アクチュエータの原理

アクチュエータは、主に以下の原理に大別可能です。

1. 電動アクチュエータ

電動アクチュエータはボールネジリニアガイドサーボモーター等で構成された駆動装置で、生産装置の搬送などを行います。

電動アクチュエータは、電気をエネルギーとして動作するサーボモーター、電磁石による磁力をエネルギーとして動作する電磁アクチュエータ、電圧をかけると変形するピエゾ素子を使ったピエゾアクチュエータなどが用いられます。

2. 油圧アクチュエータ

油圧アクチュエータは、パスカルの原理を利用した流体動力を利用するアクチュエータのため、小型であっても大きな動力を得られ、工場や建設機械など、大きな動力が必要な機器に用いられます。

3. 空気圧アクチュエータ

空気圧アクチュエータは、油圧が高負荷・高圧・重装備であるのに対し、動力源に空圧を利用するため、低負荷で火災の心配が少ない安全な方式として用いられます。

アクチュエータのその他情報

1. 油圧と電動のアクチュクエータの使い分け

アクチュエータの推進エネルギーとしてはパワー密度1k(W/kg)程度を境に、それ以上の高いパワー用途に油圧エネルギー制御を、低いパワー用途に電動エネルギー制御をといった使い分けが主にされてきています。

電動制御アクチュエータも、近年技術革新に伴いパワー向上が積極的に図られてはいますが、実際に大きくパワー向上しているのは小型から中型アクチュエータ用途のブラシレスDCモーターの分野であり、大型用途のACサーボモーターでは2000年代初頭からは、大きくパワー向上はしていません。

よって特に、10k(W/kg)といった大パワー密度の大きな動力を必要とする工場の工作機械や建設機械の分野においては、油圧アクチュエータの独壇場であり、ここの分野に電動制御のアクチュエータは使われていないのが実情です。しかしながら、油圧エネルギー制御は油交換やメンテナンスなどのランニングコストや環境問題配慮などの観点から、この分野においても可能であれば電動制御化が望まれているのも事実と言えます。

2. 油圧と電動制御のハイブリッド型アクチュクエータ

最近の技術動向の一つに、油圧と電動制御のハイブリッド型アクチュエータの開発が取り組まれています。油圧制御はパスカルの原理を利用した機構がこれまでは一般的でしたが、この場合の問題点は、作業油のサーボバルブの流量制御に伴う油の循環に配管設備が必要であり、装置が大掛かりになってしまうことと、機械の排熱温度上昇による作業油の劣化があり、定期的な油交換のためのメンテナンスコストがかかる点でした。

最新の油圧と電動制御のハイブリッド型アクチュエータにおいては、サーボバルブの流量制御ではなく、電動サーボモーターの駆動回転数により最終のアクチュエータ出力制御を可能とするため、大掛かりな配管が不要で、高効率な出力制御により作業油の温度上昇の抑制が可能です。よって油交換のメンテナンスコストも低減でき、環境問題への配慮にも適しているといえます。

 参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrsj1983/15/3/15_3_355/_pdf
https://www.nachi-fujikoshi.co.jp/tec/pdf/27D1.pdf
http://www.comp.tmu.ac.jp/prost/insider/mechatro/mechatronics7.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikaic/77/778/77_778_2412/_pdf