耐電圧試験器とは
耐電圧試験器 (英: withstanding voltage tester) とは、電気製品やそれを構成する部品に電圧を印加した際に、十分に絶縁されているかを確認する試験に使用する装置です。
絶縁耐力がなく、高電圧を印可した際に絶縁破壊を起こすと、利用者が感電したり、利用者に障害を与えたり、火災が発生したりすることがあります。この様な事態を回避するために、国内では電気用品安全法にて守らなければならない耐圧が機器によって規定されています。
絶縁性能を評価するための装置として絶縁抵抗計がありますが、耐電圧試験器では、実際に絶縁破壊に至るほどの高い電圧を印加する点が差異です。また、絶縁抵抗計は絶縁能力を定量的に評価するのに対し、耐電圧試験器は、絶縁破壊の有無を定性的に評価します。耐圧試験器や絶縁耐力試験器とも呼ばれます。
耐電圧試験器の使用用途
耐電圧試験器は、絶縁破壊が起こらないかどうかを確認するために使われます。耐電圧試験器を用いた耐圧試験は、日本だけでなく世界中の安全規格に含まれています。
絶縁抵抗計を用いた絶縁性能試験、さらに保護導通試験とあわせて、電気製品の製造者は最終工程においてこれらの試験を行い、感電・漏電の危険がないかどうかを確認することが義務付けられています。
耐電圧試験器の原理
耐電圧試験器による関連試験項目は4種類あります。
1. AC/DC耐電圧試験
規定の高電圧を規定時間だけ被試験物に印加する試験です。高電圧の印加によって、わずかな電流の漏れも検出可能です。耐電圧試験は、様々な電気製品の安全と品質の確認のため、全数実施が義務付けられています。
耐電圧試験器は被測定物に対し、通常の使用でかかる電圧の10~20倍といった非常に高い電圧を印加し、絶縁破壊による急激な電流の増加が起こるかどうかを試験します。
2. 絶縁抵抗試験
1,000Vまでの直流電圧を被試験物体に印加して、直流の電気抵抗を測定する試験です。絶縁抵抗試験は、製造過程に関わらず、保守点検等により現地での試験が行われます。
3. 保護導通試験
被試験物のグラウンドポストと製品のシャーシとの間に大電流を流し、確実に接地されていることを試験します。
4. 漏洩電流試験
人間が感電したことを想定した試験です。人間のかわりに人体のインピーダンスに相当した回路を接続し、回路に発生した電圧から計算して漏洩電流を求めます。
耐電圧試験器のその他情報
1. 耐電圧試験器の点検
耐電圧試験器を使用する前には、始業点検が必要です。また、試験中は高電圧が発生するため、点検を怠ると試験者が負傷する恐れがあります。
具体的な点検方法は説明書を参照しますが、一般的に記述されているのは、「試験器が大地と接地されていること」「試験器の外観に割れ、ひびなどの損傷がないか?」「測定リード線および被覆にひび割れなどの損傷がないか?」などです。
さらに、定期的に耐電圧試験器の校正を行う必要があります。校正とは、その測定機器が正しく測定できているかどうかを点検し、耐電圧試験器が正常に機能していることを確認します。
購入後から一度も校正をしていない場合、耐電圧試験器の校正は自分で行うことも可能ですが、高電圧が流れることもあるため、十分な知識および技術を持った人が行わなければなりません。耐電圧試験器の校正は、半年~数年に1度、専門メーカーに行ってもらうのが一般的です。
2. 耐電圧試験器のレンタル
耐電圧試験器はレンタルで使用することも可能です。ただし機器選定を行う際は、「印可電圧はいくら必要か?」「直流と交流のどちらで試験を行うのか?」という点は、最低限検討しておく必要があります。
レンタル可能な耐電圧試験器は機能として様々なタイプがあります。電圧計および電流計をデジタル表示できるタイプであれば、測定値の読み間違いが生じるリスクの低減が可能です。
また、絶縁抵抗試験も可能なモデルもあるため、絶縁抵抗試験を行うのであれば1台で完結します。必要のない高機能モデルをレンタルしてしまうと無駄な費用がかかってしまうため、実際の使用用途とよく照らし合わせて選択することが大切です。
参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=35
https://www.kikusui.co.jp/knowledgeplaza/?d=safetytest
https://www.measuring.jp/kei/kei05