金属探知器

金属探知器とは

金属探知器

金属探知器とは、電磁誘導を利用して金属の有無を検知する機器です。

地中に埋まった金属や食料品の異物、セキュリティチェックでの不正な金属の持ち込みなど、様々な場面で使用されています。金属を検出する装置には、他に検針機があります。

しかし、検針機の場合は鉄やニッケルなどの磁性体だけしか検出できません。対して金属探知器を用いると、ステンレス、アルミニウムなどの非磁性体も含むあらゆる金属の検出が可能です。

金属探知器の使用用途

1. セキュリティチェック

空港やイベント会場などでの荷物検査や身体検査で、不正な金属の持ち込みを防止するために金属探知器が利用されます。

2. 工業用途における品質管理

製造工場では、製品の品質管理や異物混入の防止のために金属探知器が導入されています。金属片や針金などの異物が製品に混入すると、製品の品質や安全性に影響を及ぼす可能性があります。金属探知器を利用して、異物の早期検出と品質管理の向上が図られます。

3. その他

宝探しや考古学探査、地雷の探知などでも金属探知器が使用されます。これらの分野では、地中に埋まった金属を探し出すために金属探知器が重要な役割を果たします。

金属探知器の原理

金属探知器はさまざまな分野で使用されており、分野や用途によりその形状も異なります。しかし、基本的な原理はどれも同じです。

金属探知器の基本的な原理は、電磁誘導によるものです。金属探知器の内部にはコイルが設置されており、探知器の電源をONにしてこのコイルに電流を流すとコイル内に磁場が発生します。この磁場が別の金属の内部を通ると、電磁誘導によりその金属に起電力が発生します。

その結果、金属内部に電流が流れて別の磁場が発生するために、全体として磁場が変化する仕組みです。この磁場の変化により、金属の有無の判定ができます。

金属から発生する磁場の状態は、金属表面のキズの有無などによっても変化します。非破壊検査では、キズの有無による微小な磁場変化を検出して製品の品質を担保しています。このため、非破壊検査では他分野と比較してきわめて高度な信号検出技術が必要です。

金属探知器の選び方

金属探知器を選ぶ際の注意するポイントは、以下の通りです。金属探知器を選ぶ際は、探知器ごとに得手不得手があるため、メーカーの仕様書などを参考に目的を達成できるものを選ぶことが大切です。

1. 金属の種類

検出したい金属の種類を考慮する必要があります。金属探知器によって、検出できる金属の種類や感度は異なります。金属探知器は鉄に良い反応を示しますが、ステンレスなどの合金には感度が低下しやすいです。

その他にも、細長い形状のものや水を多量に含むものにも感度が低下します。このような探知され辛い状況での使用を想定している場合は、より慎重に選択することが大切です。

2. 操作性や持ち運びのしやすさ

使いやすい金属探知器を選ぶことで、効率的な作業が可能となります。形状も大型商品用、小物に使用するもの、製造ラインに設置できるものなど様々です。用途によっては複数個必要になることもあります。

3. 環境や使用条件

例えば、屋外使用や水中使用を想定する場合は、防水性能が必要な金属探知器を選ぶことが重要です。また、金属以外の石やガラスも検知したい場合や、より精度の高い探知を行いたい場合は、X線を用いた異物発見器を併用します。

金属探知器のその他情報

1. 工場で使用される金属探知器

金属探知器は製造工場での非破壊検査や、食品工場での異物発見などに活用されています。非破壊検査では金属探知器や類似した装置を使って磁気深傷検査などが行われています。ここでは、金属探知器の使用例として異物混入防止のために食品工場で使われているものに関して紹介します。

食品工場では金属の混入が大きな問題となるため、金属探知器が導入されている場合が多いです。一般的に、生産ラインのベルトコンベアで流しながら検査を行いますが、検査の精度は製品の位置や向き、形状によって差が生まれます。

導入の際に、装置の性能や設備の形状、混入する可能性がある金属などを基準に最も良い方法を選択します。正しく運用できていない場合、金属が含まれていたとしても検知できないことがあるため注意が必要です。

2. 金属探知器の使用上の注意点

金属探知器は電磁誘導を用いた検査方法であるため、装置の周辺環境によっては正常に動作しない場合があります。特に、電源やケーブルなどの管理は装置の仕様書に従い、適切に行うことが大切です。

また、金属探知器の安定した性能を保証するため、定期的にテストピースによる検査が必要になります。食品工場の場合は、重要管理点であるCCP (Critical Control Point) の基準に沿った頻度で装置の検査を行います。

参考文献

https://www.jp.tdk.com/tech-mag/ninja/073
https://jmdm-atter.co.jp/product/ATTER-V8AMi2w.pdf
https://foods-plus.jp/%E9%A3%9F%E5%93%81%E6%A9%9F%E6%A2%B0/metal_detection/ 
https://www.sanko-shoji.jp/lecture/cn10/pg128398.html

粘弾性測定器

粘弾性測定器とは

粘弾性測定器とは、試料の粘弾性を評価する測定機です。

粘弾性測定には大きく2つの種類があります。金属材料などの個体の動的粘弾性 (DMA: Dynamic Mechanical Ayalysis) を評価する装置と、流体に近いペースト状の材料の粘弾性を評価するレオメーターと呼ばれる装置です。

粘弾性測定器の使用用途

1. DMA

DMAと呼ばれる粘弾性測定器は、主にプラスチック製品が用いられます。プラスチック製品以外では、食品用途で歯ごたえや食感を決める時にも使われています。

2. レオメータ

レオメータは塗料やコーティング剤の特性評価、食品ではチョコレート、ケチャップ、ヨーグルトなどの製品評価、ポリマーや石油化学製品、粘着剤、医療品、化粧品の製品評価に用いられています。これらの製品を製造する装置を選定する際にも、粘弾性測定器による評価が必要です。

粘弾性測定器の原理

粘弾性測定の原理は、評価対象に何らかの外力を加えて、現象を記録することです。粘弾性は単独で存在する物性ではなく、粘性と弾性が混じり合って存在しています。

1. 粘性

物体に外力を与えた時にひずみが発生し、外力を取り除いてもひずみがなくならない性質です。加えられたエネルギーは物体内に残らず、熱エネルギーに変換されて放出されます。そのため、ひずみが残り、形状が外力を加える前に戻らなくなります。

2. 弾性

物体に外力を与えた時に発生するひずみが、外力を取り除くことでなくなる性質です。加えられたエネルギーは物体内で貯蔵されるため、外力がなくなると元の状態に戻ります。

外力が付加された状態から取り除かれば場合、すぐに元に戻るのが弾性体、元の状態に戻らないのが粘性体、完全には戻らないものの、徐々に元の状態に戻ろうとする特性を示すものが粘弾性体です。

外力を与えた際のエネルギーから見ると、エネルギーが全て物体内に蓄えられるものが弾性体、エネルギーは熱などとして発散・放出されるのが粘性体、貯蔵と発散・放出の両方に振り分けられるものを粘弾性体といいます。

粘弾性測定器の種類

粘弾性を測定する機械には、大きく2種類あります。

1. DMA

DMAは動的な機械特性を測定する装置です。例えば高分子材料の物性を把握する上において、粘性や弾性は重要な指標になります。高分子の成形加工では、成型品の収縮や射出時の膨張が課題にあります。

この現象も粘弾性によるものであり、成型時には粘弾性を考慮した設計が必要です。主にDMAを測定できる装置が用いられます。与える外力は引張、圧縮、両持ち梁曲げ、自由支持3点曲げ、せん断のモードがあります。

2. レオメーター

レオメーターは食品、医薬、化粧品製品分野で、粘度の性質を測定するために用いられています。食品には舌触り、歯応え、歯切れ、口溶け、喉越しといった、人間の感覚に関わる特性を定量的に評価することが重要です。このような官能評価は個人差があるため、数値によって評価することは安定した品質確保に欠かせません。

レオメーターに類似したものに、粘度計があります。粘度計は主に回転といった1方向だけの外力を与えて物性を評価します。レオメーターはDMAと同様に、振動 (正弦波) による評価をするのが違いです。

粘弾性測定器のその他情報

動的粘弾性測定での評価

レオメータやDMAと呼ばれる動的粘弾性測定においては、周期的な振動荷重を加え、試料に生じる応力と位相差から、貯蔵弾性率、損失弾性率、損失正弦といった特性を評価します。貯蔵弾性率は試料の弾性特性の強さ、損失弾性率は試料の粘性成分の強さを表します。

損失正弦とは損失弾性率と貯蔵弾性率の比であり、tanδとして評価される重要なパラメータです。tanδは粘性の寄与率を表し、tanδが大きいほど液体に近い性質をもちます。

参考文献
https://www.ites.co.jp/chemistry/index/others/dma-2.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/42/9/42_9_734/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnbr1987/21/1/21_16/_pdf
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/viscoelasticity-basic1/#i-3
http://www.unius-pa.com/wp/wp-content/uploads/
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/80/10/80_10_404/_pdf

核酸抽出装置

核酸抽出装置とは

核酸抽出装置のイメージ

核酸抽出装置とは、試料から核酸を分離精製するための装置です。

核酸とは、リボ核酸 (RNA) とデオキシリボ核酸 (DNA) の総称であり、ヌクレオチドがホスホジエステル結合で連なった生体高分子です。生体内では遺伝情報をコードする役割を担っています。

核酸を同定・分析することにより、生体機能の解明を行ったり、疾患のメカニズムを明らかにしたり、臨床において診断を行ったりすることに役立てられますが、そのためには試料や検体から核酸の抽出をすることが必要です。核酸抽出装置は、従来手作業で行われていた核酸抽出の自動化・効率化を実現します。

核酸抽出装置にはいろいろな種類の機種があります。処理できる核酸の種類、試料数、抽出時間等が異なるため、目的に合ったものを選ぶことが重要です。

核酸抽出装置の使用用途

核酸抽出は、抽出した核酸を分析する目的で行われます。研究開発分野においては、生体機能や疾患のメカニズムの解明に役立てられる他、臨床分野では遺伝子診断・解析に用いられる技術です。

1. 研究開発分野

研究開発分野においては、培養細胞、大腸菌、原核生物、植物などから、核酸抽出が行われます。抽出された核酸は、リアルタイムPCRや次世代シーケンサーなどで増幅し、塩基配列の同定・解析に用います。

2. 臨床分野

臨床分野では、末梢血液検体、大腸組織におけるホルマリン固定パラフィン包埋 (FFPE) 検体などから核酸抽出が行われます。抽出した核酸を分析することにより、遺伝子変異などを検出することができます。

また、感染症診断にあたっては、検体からの細菌 ・ウイルスの核酸抽出にも用いられます。例えば、COVID-19の診断では患者の咽頭拭い液や鼻腔拭い液などの検体より、ウイルスのRNAを抽出し、PCR反応によって増幅して検査が行われています。

3. 法医学

法医学の分野では、事件や事故の個人識別において、毛髪、唾液、血液、骨、歯からのDNA抽出が必要となる場合があります。

核酸抽出装置の原理

核酸抽出装置は、キットを用いて手作業で行われていた核酸抽出作業を、より正確に自動で行う装置です。遠心、加熱、振とう、ピペッティングなどの機能が備わっています。サンプル破砕から抽出・精製までを全自動で行うことが可能で、装置の中には濃度 (純度) の測定や、検査までが全自動となっているものもあります。

多くの核酸抽出装置で採用されている原理は、磁性ビーズ法やシリカメンブレン法です。

1. 磁性ビーズ法

磁性ビーズ法のイメージ

図2. 磁性ビーズ法のイメージ

磁性ビーズ法は、カオトロピック塩などの存在下で磁性ビーズを核酸に結合させることで分離する方法です。カオトロピックとは、水分子間の相互作用を減少させ、それによる構造を不安定化させる物質です。

すなわち、十分多くのカオトロピック物質によってもたらされるカオトロピック効果により、水溶液中を浮遊する核酸が、ビーズに結合します。磁力でビーズの分離を行うことができるため、自動化しやすい方法です。ビーズに結合した核酸は、洗浄、溶出を経て抽出されます。

2. シリカメンブレン法

シリカメンブレン法で用いられるスピンカラムのイメージ

図3. シリカメンブレン法で用いられるスピンカラムのイメージ

シリカメンブレン法は、DNAやRNAを吸着させ、塩濃度やpHを調整することにより溶出を行う方法です。シリカメンブレン法の核酸抽出装置では、まず溶解させた試料をシリカメンブレンを使ったスピンカラムに吸着させます。

次に、キット付属の試薬でシリカメンブレンフィルターを洗浄し、最後に目的の核酸を溶出させます。キャリーオーバーがなく、更にロードチェック機能があるため、試料、試薬、チューブ等が正しくセットされているかの確認も行われます。

対応するキットやプロトコルを変更することで、プラスミドDNA、ゲノムDNA、ウイルス核酸の精製、RNA、更にたんぱく質の精製が自動で行えます。

核酸抽出装置の種類

核酸抽出装置は、複数サンプルを同時に処理できる点で優れています。処理可能なサンプル数は数検体、16検体から、48検体や96検体のものまで様々な種類があります。処理できる試料量も装置によって異なりますが、100µL程度から5mL、10mL程度までです。機種にもよりますが、25分前後から60分前後と短時間で核酸抽出が完了します。

抽出装置の分離法の種類には、磁性ビーズ法もしくはスピンカラムを使用するシリカメンブレン法などがあります。使用する抽出キットも装置によって種類が異なるため、注意が必要です。機械によって、精製のみで作業完了するものや純度測定まで行うもの、続くPCR反応などの分析装置にそのままサンプルを移行できるものなどの種類があります。

参考文献
https://doi.org/10.11239/jsmbe1987.12.2_15
https://doi.org/10.14932/jamt.15-49

大型超音波洗浄機

大型超音波洗浄機とは大型超音波洗浄機

超音波洗浄機は、洗剤・溶剤などを用いる化学力と、振動や機械的エネルギーを用いる物理力の相乗効果を利用して洗浄する装置です。

小型の装置は、眼鏡やアクセサリー等の洗浄などに用いられる安価な家庭用や、実験室に設置されている器具の洗浄や薬品調整用に用いるような超音波発振機が内蔵されたもの、また、超音波発振装置を任意の容器に入れるもの等があります。

大型の装置は主に工業用で、工場での製造工程に組み込まれているようなものなどがあります。発生する超音波によって洗浄力が変わるため、用途に合わせて周波数や洗剤を選ぶ必要があります。

大型の超音波洗浄機の場合、電波法による法規制がかかることがあるため、設置する際には出力等に応じて適切な手続きを行う必要があります。基本的に出力が50W以上の超音波洗浄機は高周波利用設備の許可申請が必要です。

大型超音波洗浄機の使用用途

大型超音波洗浄機は、ほとんどが工業用途として使用されています。

主な用途としては、金属部品や樹脂などの脱脂洗浄、研磨紛やほこりの除去、精密金属部品、光ディスク、ハードディスクのヘッドの洗浄、ガラス基板の最終洗浄、シリコンウエハーの洗浄などが挙げられます。

金属部品などの洗浄であれば低い周波数、シリコンウエハーなどでは高い周波数で洗浄されます。また、超音波洗浄機は、脱泡・脱気、分散、撹拌や破砕などにも使用されています。

大型超音波洗浄機の原理

圧電セラミックスという特殊なセラミックスに電気エネルギーを加えると、セラミックスが伸縮します。この時に発生する振動を音に変換しますが、この音の周波数を20kHz以上にすると、超音波が発生します。

試料に超音波振動を与えて泡を発生させ、泡が弾ける際の衝撃 (キャビテーション) で発生するマイクロジェット水流を用いて洗浄します。

金属部品や樹脂などの脱脂洗浄、精密金属の部品洗浄には低周波の超音波を利用します。キャビテーションによる衝撃波で頑固な汚れも洗浄できます。半導体やシリコンウエハーなどは、高周波の超音波で洗浄します。キャビテーションは液深や液の種類によって発生の仕方が変わります。

超音波洗浄を行うための管理が十分でないと、振動板が劣化する恐れがあります。

参考文献
https://doi.org/10.4139/sfj.44.92
https://doi.org/10.4139/sfj.42.384

反射率計

反射率計とは

反射率計とは、物体に光を当てた時に、当てた光に対してどのくらい光が戻ってくるかを確認するための装置です。

反射率の測定は、JIS ( D 5705-1993) 「自動車用ミラー」に記載されている反射率の測定法に基づいています。

反射率は車のミラーで非常に重要になります。太陽が反射したり、後続車のヘッドライトが当たったりすることで眩しくなるため、反射率を自動的に変える技術が搭載されています。

他にもめっき表面の粗さを測定する目的でも使用されています。

反射率計の使用用途

反射率計には、直接測定法と間接測定法が存在します。

  • 直接反射法
    測定する物体に、直接光源を当てた時の反射率を測定する方法です。絶対反射のため、真の反射率が得られます。車のミラーやプラスチック製品など、表面がつるつるで、鏡面反射が起きやすい部品に対して用いられます。
  • 間接反射法
    測定する物体に、間接的に光源を当てて反射率を測定する方法です。光源を積分球に当てます。積分球に光が当たることで、積分球内で拡散反射が繰り返され、位置によらない均一な強度の光を材料に当てることができます。凹凸があったり、拡散反射が起きやすかったりする材料に対して有効です。

反射率計の原理

反射率計の原理は、フレネルの式が元になっています。フレネルの式は入射光、反射光、透過光、屈折率を考慮した式になります。

物体に対して光を当てることで入射光と反射光が発生し、物体の中心となす角度を、それぞれ入射角と反射角と呼びます。入射光が全て反射光になるわけではなく、一部は物体の方へ透過します。この時光を通す媒体 (空気) と物体の屈折率が異なると、物体の中心と透過光がなす透過角は、入射角と異なります。入射角 (反射角) と透過角の違いと、屈折率の違いを式に当てはめることで、反射率を計算することができます。

フレネルの式が利用されている代表例として、光ファイバが挙げられます。光ファイバは2層構造になっており、内層と外層で屈折率が異なる材料になっています。層の接続面に問題が無い場合には反射が起きませんが、切断等により隙間ができると、反射が繰り返されます。反射の度合により、どのぐらいの隙間が出来ているかなどを判断します。

参考文献
https://kikakurui.com/d5/D5705-1993-01.html
https://kuruma-news.jp/post/252448
https://www.an.shimadzu.co.jp/uv/support/lib/uvtalk/uvtalk12/basic.htm
https://www.systems-eng.co.jp/column/column02.html

ペルチェクーラー

ペルチェクーラーとは

ペルチェクーラー (英: Peltier Cooler) とは、熱電素子の1つであるペルチェ素子を用いた冷却装置です。

冷媒を使用せずに電力のみで冷却を行うため、環境負荷が少ない点が特徴です。国外ではPeltier ModulesまたはThermoelectric Cooler  (TEC) と呼称されます。

ペルチェ素子は半導体素子の1つで、通電するとペルチェ効果が発生して2面に温度差が発生します。一般的にペルチェ素子は軽量かつ小型の板状で、2mm~5mmの厚みです。ペルチェ素子の構造は、セラミック基盤で「n型熱電素子」「p型熱電素子」「電極」を挟んだ構成です。

ペルチェクーラーの使用用途

ペルチェクーラーは一般的な冷却設備よりも小型なため、冷却が必要な設備に組み込みやすい点がメリットです。このメリットから、さまざまな機器の冷却に使用されます。

代表的な使用用途は、コンピュータやサーバーなどの電子機器の冷却です。特に、小型の冷却要求がある場合や熱源が制限されている状況で有効です。産業機器に対しては、分電盤制御盤にも使用されます。

そのほか、冷蔵庫やエアコン、除湿器などにも使用されています。近年では暑熱対策のために、首掛けモバイルクーラーとしても製品化されています。また、ペルチェクーラーの機能を取り入れたスマートフォン用のスマホクーラーなども多いです。

また、レーザーデバイスの冷却にも有用です。レーザーダイオードや光ファイバーレーザーなどの高出力レーザーデバイスは、冷却が欠かせません。そこで、冷却用に小型かつ電動のペルチェクーラーが使用されます。

ペルチェクーラーの原理

ペルチェクーラーは2種類の異なる金属同士を貼り合わせることで製作されます。双方の金属に電位差を生じさせて、一方の金属から他方の金属へ熱の移動が生じるペルチェ効果を利用しています。用いる金属はビスマス系、シリコンゲルマニウム系、コバルトスズ系、鉄系などの組み合わせです。

ペルチェ素子に電圧を印加することで、冷却プレートから発熱プレートへ熱を移動する原理です。印加する電流によって温度制御が可能です。電流の極性を反転させることで冷却側と放熱側を反転させられるため、対象を温めることも可能です。

放熱側では大量の熱が発生するので、水冷装置やヒートシンクなどが付けられることが多いです。また、接触する面に熱伝導素材を挟むことで、放熱性能を高めた製品も存在します。

吸熱側は、冷却板を取り付けることで吸熱効率を最大化しています。冷却板との接触面にも熱伝導素材を挟むことで吸熱効率が上がります。ただし、冷却温度は最低5℃程度が限界です。

ペルチェクーラーの選び方

ペルチェクーラーは要求する能力に合わせて製品サイズを調整することが可能です。また、冷却のみに焦点を置いた製品は低価格で安定して供給可能です。高性能な製品も存在しているため、精密な操作が必要な場合には制御機器も付属することができます。

このように、性能や価格、サイズを用途に合わせて選択できることがペルチェクーラの利点です。民生用ではデザイン性の向上にも力を入れることが可能であり、産業用では求める能力に合わせて性能を最大限に引き出すことができます。

ペルチェクーラーのその他情報

ペルチェクーラーの未来

ペルチェクーラーは性能の向上や低価格生産が可能となりました。また、2019年には東京大学の生産技術研究所にてペルチェ素子よりも冷却性能が10倍も高い値が期待できる素子が開発されました。

半導体ヘテロ構造と呼ばれるガリウムヒ素やアルミニウムガリウムヒ素の接合で、冷却素子として活用できるように開発されました。冷却したい箇所を高効率で冷却可能なため、電気の省エネ化や設備性能の大幅改善が期待されます。今後、新技術が実用可能となれば、更なる性能の向上も可能です。

小型CNC旋盤

小型CNC旋盤とは

小型CNC旋盤

CNC旋盤とは、汎用(普通)旋盤にコンピューター制御装置を取り付け、自動制御で切削加工を可能にする加工装置です。

CNC旋盤の詳細な説明についてはこちら

小型NC旋盤

小型NC旋盤とは小型NC旋盤

小型NC旋盤とは、入力された数値データに従って動く小型の旋盤装置です。

卓上旋盤やミニ旋盤とも呼ばれています。旋盤とは、円筒形状をした被加工材料 (ワーク) の加工作業で使われる代表的な工作機械です。その中でも数値制御 (Numerical Control) で正確に加工ができるNC旋盤は、職人技に頼らずに高度な加工ができることから工場での導入が進んでいます。小型のNC旋盤は、主に少数の加工を行う工場や試作・研究開発用、作業者の教育用などで使用されています。

小型NC旋盤の使用用途

小型NC旋盤は、金属や樹脂、木材などの円筒形をしたワークを削って所定の寸法にしたり、テーパーを付ける、ネジを切るなどの加工作業で使用します。旋盤は、船舶用のシャフトなど大型機械用の部品の製造から精密部品の製造まで幅広く使用されています。小型NC旋盤はその名の通り小型であるため大きなワークの加工にはあまり適さず、精密部品のような小型で高精度を要求される部品の加工に広く使用されています。

また、小型NC旋盤は大量生産をする現場よりも試作や研究開発用に適した機械と言えます。そのため小型NC旋盤が導入される場所は、企業などの研究開発部署や少数品を生産する中小企業、工房などが代表的です。

NC旋盤に所定の動作をさせるためには、数値制御プログラムを理解する必要があります。数値制御プログラムを学びその成果としてNC旋盤を実際に動作させてみるには、小型NC旋盤が教材として適しています。従って、企業等の工作機械の教育現場や職業訓練所などにも小型NC旋盤が導入されています。

小型NC旋盤の原理

旋盤は、チャックで円筒形のワークを挟み、ワークをチャックと同一軸上に回転運動させながら様々な方向から刃を当てることによって、ワークの寸法を変える、テーパーを付ける、溝やネジ山を付けるなどの加工を施します。

1. 旋盤

基本的な旋盤は、ハンドルやレバーを操作して手作業で刃を動かしながらワークを加工します。しかし、旋盤を正確に操作してワークを複雑な形状や精密な部品に仕上げるには、作業者の熟練した技術が必要とされます。

2. NC旋盤と小型NC旋盤

NC旋盤は、数値制御プログラムに書き込んだ加工の手順や寸法がNC旋盤に渡されることで、正確に所定の作業を行いワークを加工します。NC旋盤の小型の機械が小型NC旋盤です。

3. CNC旋盤と小型NC旋盤

NC旋盤に投入する数値制御プログラムは、人間が理解できる図面を基に、加工したい形状の座標や刃物の動き方、加工速度など、機械が必要とする情報を数値情報として記述したものです。従って、数値制御プログラムの作成においても相応の知識とスキルが必要となります。

そのため、マン/マシーンインターフェースに優れたコンピュータを機械に組み込んで、より人が使いやすく高度な作業ができるように進化した旋盤がCNC (Computer Numerical Control) 旋盤です。文書ではNC旋盤とCNC旋盤が区別して表記されている場合が多いのに対して、小型NC旋盤には小型のCNC旋盤が含まれていることも多いため注意が必要です。

小型NC旋盤の選び方

小型NC旋盤は旋盤の中では安価であり、設置スペースやユーティリティなどにおいて大型の旋盤機械よりも有利な点が数多くあります。その一方で、大型の旋盤よりも厳しい制約もあります。小型NC旋盤を選択する際には以下の点に注意が必要です。

  1. 加工できるワークサイズが大型NC旋盤と比較して小さくなる。
  2. 大型のNC旋盤と比較すると、加工できるワークの材質や硬さに制約を受けやすい。
  3. 高スループットや大量生産にはあまり向いていない。

また、小型NC旋盤には小型CNC旋盤も含めてさまざまなユーザーインタフェースがあるため、用途に合った使いやすい機械を選択するのが良いでしょう。

多軸ボール盤

多軸ボール盤とは

多軸ボール盤

多軸ボール盤とは、複数のドリルビットを同時に使用できる工作機械の1種です。

一般的な卓上ボール盤は、1本のドリルビットのみで加工しますが、多軸ボール盤は2本以上のドリルビットを使って同時に加工できることが利点です。多軸ボール盤は複数のドリルビットで同時に加工できるため生産性が向上し、また複数のドリルビットを使用することで、複雑な形状の穴や面を効率的に加工できます。

ただし、多軸ボール盤での加工は単純な加工に比べて操作が複雑で、加工物の寸法精度や位置精度にも注意が必要です。

多軸ボール盤の使用用途

以下は多軸ボール盤の代表的な使用用途の一部です。

  • 穴加工
    時計の歯車やピン、人工関節、エンジン部品など
  • 切削加工
    金属部品の切削、プラスチック部品の切削など
  • 彫刻加工
    家具製造、宝石や貴金属の彫刻やデザインの加工など
  • フライス加工
    電子基板の溝の切削や精密な穴加工など
  • 研削加工
    時計やベアリングなどの製造など

多軸ボール盤の原理

多軸ボール盤による穴の切削過程は以下のようになります。

1. 材料の固定

クランプやバイスなどを使用して、切削する材料を多軸ボール盤のテーブルに固定します。固定が不十分な場合、切削中に材料がずれたり振動したりする可能性があるので注意が必要です。

2. 切削工具の選択

使用する切削工具は、切削する材料と加工する穴のサイズと形状に応じて選択されます。ドリルビット、エンドミル、リーマなどが一般的な切削工具です。

3. 切削条件の設定

材料の種類や硬さ、切削工具の特性などに基づいて、切削速度や送り速度、切削深さなどの切削条件を設定します。適切な切削条件を設定することにより、切削効率や加工品質を最適化できます。

4. 穴の位置決め

多軸ボール盤は、複数の軸を制御できるため、穴の位置が正確に配置できます。事前に設定された座標系や工具補正などを使用して位置決めします。

5. 切削操作

切削工具が材料に接触した後、多軸ボール盤は切削工具を回転させながら下降させます。切削工具は回転しながら材料を削り取ります。加工時には、冷却液や潤滑剤を適宜使用して過熱や摩擦を軽減することが必要です。

6. 終了と仕上げ

必要な深さや穴の形状が完成したら、切削操作を終了します。穴が正確な寸法と位置になっているかを確認し、必要に応じて面取りやバリ取りをして仕上げます。

多軸ボール盤の構造

多軸ボール盤の構造は、主に以下のような要素で構成されています。

1. モーター

モーターは、多軸ボール盤の複数の回転軸を駆動するための動力源として使用されます。一般的には、電動モーターが使用されます。

2. 回転軸

モーターによって駆動される回転軸が複数配置されています。回転軸は精密な加工が施された軸で、異なる径や形状のものがあります。

3. ベルト

モーターと回転軸をつなぐためのベルトが使用されます。ベルトは様々なサイズがあり、回転数やトルクの変化に対応可能です。

4. テーブル

テーブルには、異なる形状や大きさの材料の取り付けが可能です。クランプやバイス、固定ネジなどが使用して材料を固定します。

5. 切削工具

切削工具は多軸ボール盤の回転軸に取り付けられます。切削工具により多様な切削ができます。

6. 制御装置

多軸ボール盤には、モーターや切削工具の回転数を調整する制御装置があります。制御装置は、操作パネルやコンピューターなどで操作できます。

多軸ボール盤のその他情報

1. 多軸ボール盤の長所

多軸ボール盤は、複数のスピンドルを備えた工作機械です。これにより同時に複数の穴をあけられます。多軸ボール盤の最大の長所は、高い作業効率です。一度に複数の穴をあけられるため、作業時間を短縮可能で、特に大量生産や連続加工の場合には生産性が向上します。

また、多軸ボール盤は、複数の穴を正確に位置決めすることができます。複数のスピンドルを均等に配置することで穴の位置や間隔を一貫して保てるため、精度の高い加工が可能です。

さらに、異なるサイズや形状のドリルビットを使用できるので、多様な穴の加工に対応しています。それぞれのスピンドルに適切なドリルビットを選択することで、材料や加工要件に応じた穴をあけられます。

2. 多軸ボール盤の短所

多軸ボール盤は機械自体のサイズが大きくなり、複数のスピンドルを搭載しているため、単軸ボール盤よりも大きいスペースが必要です。小規模な作業場や限られたスペースでは、利用が制約される場合があります。

また、多軸ボール盤の操作や調整は複雑です。複数のスピンドルを同時に制御し、均等に加工するためには緻密な調整が必要です。スピンドルの位置や加工条件を均等に調整することが重要であり、操作の難易度が高くなります。

さらに、スピンドル同士が固定されており、独立して操作できません。そのため、複雑な形状や角度での穴加工には限定されます。また、スピンドル同士の位置関係や干渉によって、一部の穴が加工できない場合もあり、加工対象によっては、他の種類の工作機械の方がより適している場合もあります。

多軸ボール盤は、複数のスピンドルや関連部品、制御システムなどが必要です。それに伴う費用も増え、複数のスピンドルや部品のメンテナンスや修理も必要となり、コストや手間がかかることも考慮しなければなりません。

3. 多軸ボール盤による生産性の向上

多軸ボール盤は、自動化された生産ラインに組み込まれることで、生産性を向上できます。自動化された生産ラインは、複数の機械を連携させ、製品の加工や組み立てや検査などを自動化するので、従来の手作業に比べて生産性と品質を高められることがメリットです。

多軸ボール盤が自動化された生産ラインに組み込まれる場合、機械に自動化機能を搭載する必要があります。例えば、切削工具の交換やテーブルの移動を自動化することで、作業者が手作業で行う必要がなくなり、生産ラインの生産性向上につながります。

自動化された生産ラインに組み込まれた多軸ボール盤は、コンピュータによって制御されることが一般的です。コンピュータは、加工条件や切削工具の交換タイミングなどを管理し、自動的に加工できます。また、コンピューターによって加工結果の検査や不良品の自動分別なども可能です。

窒素発生装置

窒素発生装置とは

窒素発生装置はガス発生装置の一つです。空気の構成成分は窒素約78%、酸素約21%、その他アルゴンや二酸化炭素が1%となります。その空気から窒素のみを取り出します。窒素は不活性ガスとも呼ばれ、酸素雰囲気を排除したいときに使われます。

工場などではボンベや液化窒素、ローリーなどいろいろな搬入方法がありますが、使用量が多い場合は自社にて窒素発生装置で窒素を生成します。従来の窒素ガスと比較しても20~70%のコストダウンが見込めると言われています。

窒素発生装置の使用用途

窒素は主に酸素が少ない空間を作り出すために使用されます。例えば化学反応などで酸素が存在すると酸化して試薬が不活性になってしまい反応がうまくいかないケースも多々あります。そんな時、窒素により酸素を追い出します。これを窒素パージと呼びます。

窒素は生成方法によりPSA式、膜式、深冷式の3種類に分類されます。PSA式は短時間低コストで窒素を手に入れることができますので、一般的に用いられています。より純度が高い窒素が必要であれば深冷式となります。

窒素発生装置の原理

SPA式は吸着式とも呼ばれます。吸着材を用いて加圧下にて窒素を選択的に吸着します。吸着材を減圧下にさらすことで吸着した窒素を脱着させることで窒素を得ることができます。吸着初期には吸着速度が大きいので、その初期の短時間(1~2分)で窒素・酸素を分離します。この方法は酸素でも同様の操作で得ることができます。こうして加圧や減圧を繰り返していることから、PSA(圧力スイング吸着:Pressure Swing Adsorption)と呼ばれます。

膜式は中空糸膜による濾過作用を利用します。空気を高圧にして膜のモジュールに流し込むことで窒素の膜通過特性により高純度の窒素を得ることができます。比較的低純度の窒素が必要な場合に用いられます。

深冷式は空気を冷却して生成します。窒素の沸点は-195.8℃、酸素の沸点は-183℃、アルゴンの沸点は-185.7℃です。これら沸点の違いから高純度の窒素を得ます。つまり非常に低温ではありますが、これは蒸留操作に当たります。高純度且つ大容量の窒素が必要な際に利用します。

参考文献
https://shinko-airtech.com/equip_n2_psa.html
https://shinko-airtech.com/equip.html
https://www.fukuhara-net.co.jp/product_n2_psa.html