ACサーボモータ

ACサーボモータとは

ACサーボモータ

ACサーボモータ (英: AC servo motor) は上位コントーラなどからの電気指令信号を物理的な動作に変換するアクチュエータの一つです。

例えば、ロボットのアームを指定の位置に移動する動作などが挙げられます。サーボモーターのサーボは、忠実に、命令通りに動くという意味合いがあり、ACサーボモータは電気制御により、正確な回転位置、回転速度、回転力を実現することが可能です。

モータには直流モータ、交流モータ、パルスモータなどがありますが、ACサーボモータは交流モータに分類され、現在特にFA (ファクトリーオートメーション) 分野で用いられている位置・速度制御用のモータは、ほぼACサーボモータです。

ACサーボモータの使用用途

ACサーボモータはオートメーションのシステム内で、物理的な作業を要する際に使用され、特に高い精度が要求される工業製品の生産現場における用途が多いです。

例えば、自動車製造工場で稼働する産業用ロボットはACサーボモータを用いて、ロボットのアームを動かし、溶接や塗装などの作業を行っています。他にも半導体・液晶製造装置、電子部品実装、LED製造などで、高い生産性と高精度な位置決めに貢献しており、身近な場面では、鉄道駅のホームドアや医療機器の可動部分にも用いられています。

ACサーボモータの原理

ACサーボモータの原理

図1. ACサーボモータの構造

モータの回転部分であるロータ (回転子) は永久磁石が貼り付けてあり、そのロータの中心軸であるシャフトには、回転角、回転速度を検出するための検出器 (エンコーダ) がつながっています。

ロータの周りは、ステータ (固定子) と呼ばれる電磁鋼板を積層した鉄心にエナメル電線が巻き付けられたコイルで構成され、この電線に適切な電流を流すことによって、モータを駆動します。ACサーボモータの制御は、上位のサーボコントローラが制御部であるサーボアンプへ位置指令や速度指令などの指令信号を送り、この信号に基づいてサーボアンプは電力をモータへ供給、動作させます。

ACサーボモータの正確性は、自身に備え付けられた検出器が回転数、回転角を検出して、サーボアンプへとフィードバック信号を送ることで達成されます。

コントローラからの信号と、フィードバック信号の比較により、サーボアンプがモータの正確な動作を支えているわけです。図2はACサーボモータの制御構成例を示しています。

ACサーボモータの制御

図2. ACサーボモータの制御

その他のACサーボモーターの情報

1.  ACサーボモーターとステッピングモーターの使い分け

モーターは、種類も様々で用途や条件によって使い分けも必要ですが、産業用によく使われているモータとして、ACサーボモーターとステッピングモーターが挙げられます。どちらのモーターも高精度な位置決め制御が可能なモーターですが、構造や動作原理からそれぞれの特徴があります。

ステッピングモーター
ステッピングモーターは、別名パルスモーターとも呼ばれ、パルス信号に応じたステップ角度ずつ動くモーターで、パルスの数によって回転角度が決まってくる為、正確な位置決めが可能です。回転速度は、パルス信号の速度に比例します。

小型で高トルクを発生するので、加速、応答性に優れており、起動と停止を頻繁に繰り返す動作が必要な用途に適しますが、デメリットとして以下が挙げられます。

  • ステップ角は最小でも回転角で0.72°程度 (1/5,000@1回転)
  • 制御がオープンループで、脱調が起きると元の位置に戻らない

ACサーボモーター
ACサーボモーターは、エンコーダと呼ばれる回転速度と回転位置を検出するエンコーダを搭載し、モータの回転制御にフィードバックすることで、正確な位置決めを行うことが可能です。エンコーダの性能にもよりますが、1/5,000回転@1回転以上の回転分解能を持つ機種も多くあります。

サーボモーターは、低速域から高速域まで、安定したトルク特性を持っているため、比較的長い距離を高速に動かす動作が必要な用途に適しています。

2.  ACサーボモーターのブレーキ

ACサーボモータのブレーキ機構

図3. ACサーボモータのブレーキ機構

ACモーターを使用した駆動装置などの産業機器の安全性確保の為、電源遮断時や故障発生時にモーターを緊急停止させるブレーキを持つ例があります。ブレーキには、大きく分けて2種類あります。

制動用ブレーキ
1つは制動用ブレーキと呼ばれており、大きな負荷慣性エネルギーを抵抗器で熱消費させたり、回生エネルギーとしてサーボアンプを通して電気エネルギーとして電源に戻すとこによりブレーキ力を発生させます。熱消費される方式をダイナミックブレーキ、電気エネルギーとして再利用する方式を回生ブレーキと呼びますが、どちらもあくまでも減速用で保持機能はありません。

機械式ブレーキ
もう1つは機械式ブレーキで、垂直方向に上下駆動している装置で、停電などが発生した場合の落下防止に使用されます。落下防止には、停止状態で長時間その状態を保持している必要があり、そのために保持用ブレーキまたは電磁ブレーキが使用され、上記の画像では横型マシンニングセンタのような工作機械のY軸 (停電時に自然落下する軸) に電磁ブレーキ付きACサーボモータを使用する例を示しています。

無励磁作動型電磁ブレーキを使うと、通電が切れた時にブレーキがかかり、停止状態を保持してくれます。

参考文献
https://www.on-side.co.jp/pdf/yokuwakaru_ac_servo_motor.pdf
https://www.yaskawa.co.jp/product/mc/about-servo
https://www.softech.co.jp/mm_060201_plc.htm
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/teruyo/vol10/

 

画像センサ

画像センサーとは

画像センサー

画像センサーとは、光の情報を電気信号に変える部品です。

イメージセンサー (英: Image sensor) とも呼ばれています。デジタルカメラや撮影機材などに搭載されている、CCD (Charge Coupled Device、電子結合素子) やCMOS (Complementary Metal Oxide Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体) が該当します。

画像センサーは、機械にとっての「目」です。カメラで使われる画像センサーの画素数は、画像センサーの総数を指します。それぞれのセンサーは光の強さを検知し、光の強さは数値化されて、電気信号として処理されます。

画像センサーの使用用途

画像センサーは主に、大量生産される製品の生産ラインで使用されています。例えば自動車部品、食品や医療品、電子デバイス、液晶や半導体、樹脂製品の生産ラインにて有用です。

画像センサーの役割は、人の目による目視検査に代わるシステムになることです。例えば、数量のカウントや欠品をチェックする有無検査や、傷や欠陥をチェックする外観検査に応用されています。

また、高度な画像解析技術との組み合わせにより、文字判別 (OCR: Optical Character Recognition) や3次元測定が実現しています。画像センサーは車の自動運転システムにも使われており、今後も必須のデバイスです。

画像センサーの原理

画像センサーの中心となるのが、受光素子 (フォトダイオード) です。この半導体は光の強弱を感じ、電荷として蓄えることが可能です。受光素子に光が当たると、光の強さに比例した量の電子が生じます。

半導体としての性質を利用して電子を蓄積させ、その量を数値化するのが画像センサーの基本原理です。画像センサーでは、受光素子に蓄えられた電子をどのように信号化するかによって、異なる原理の装置が存在します。主な装置はCCDとCMOSです。

CCDでは、電荷をCCD転送路によって電気信号へと変換します。この転送路では、素子から素子へとバケツリレーのように電荷が移動します。CMOSでは受光素子1つ1つに増幅回路 (アンプ) が組まれているため、複数の受光素子を経由することなく電荷を転送することが可能です。

CMOSは装置1つで駆動するので、電力消費が低く、処理速度が速いことがメリットです。また、CCDより製造コストが低いことも注目されています。

画像センサーのその他情報

1. 画像センサーのサイズ

画像センサーには、複数のサイズがあります。通常、センサーサイズが大きくなるにつれて画質は良くなります。理由としては、センサーのサイズが大きいほど、より多く集光することができるためです。

写せる光の範囲、すなわちダイナミックレンジが広がることによって白とびや黒つぶれが少なくなる画像を撮像することができます。また、同じ画素数の画像センサーでもサイズが大きいほど画質が良くなるのは、1画素 (1ピクセル) あたりの受光面積が大きいので、ノイズ低減効果もあるからです。

2. 画像センサーにおける照明の役割

FA用の画像センサーを補間する機器として、照明があります。画像センサーが外乱光の影響を受けずに安定的にワークを検出するために、照明を必要とします。照明の方式として代表的なものは、以下の3つです。

正反射方式
ワークの斜め上から照射し、ワークの表面で反射した像を撮像する方式です。金属板に凹凸があるワークなどで、平面部分と凹凸部分のコントラストをとりやすくなります。

透過方式
ワークの裏から照射し、表面からの像を浮き上がらせて撮像する方式です。複雑な形状のワークの輪郭をより正確に撮像できます。

同軸落射方式
ワークに照射する照明光軸と、カメラの光軸を同軸にする方式です。ワーク全体を均等に照射でき、影の発生を少なく抑えることができます。

3. 画像センサーの価格

画像センサーの価格は、「視野」と「精度」で決まります。

視野
通常画像センサーは画素数が大きいほど、より細かいものを検出することができます。画素数が大きくなると、センサーのサイズも大きくなり価格が上がります。

また、データの転送に時間がかかるため処理時間も大きくなりがちです。運用するシステムのタクトに合わせたセンサーを選定することが重要です。

精度
より高画素な画像センサーのほうが高くなります。また、検出する物体によってモノクロセンサー、カラーセンサーが必要になりますが、カラーカメラのほうが価格が高くなります。

 参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visionbasics/
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/04.html
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/05.html
https://www.photografan.com/basic-knowledge/compare-camera-sensor-sizes/

抵抗計

抵抗計とは

抵抗計

抵抗計とは、電気回路の抵抗値を測定するための計測器具です。

電子工学や電気作業において欠かせない測定器具の1つで、さまざまな精度やレンジの製品が存在します。オームメーター (英: ohmmeter) とも呼ばれます。オームの法則を利用して抵抗値を測定するためです。

一般的な抵抗計の他にも複数の種類があり、mΩ以下の抵抗値に特化したものを低抵抗計 (ミリオームメータ) 、絶縁体の抵抗値を調べるものを絶縁抵抗計、接地された導体と大地間の抵抗値を測定する接地抵抗計と呼びます。回路などの抵抗値を調べる際に簡便なテスターを用いることもありますが、精度の高い抵抗計が開発や製造の現場で求められます。

抵抗計の使用用途

抵抗計は、電気回路の抵抗値測定に使用される計測器具です。以下は抵抗計の使用用途一例です。

1. 故障箇所の特定

電気回路の故障箇所特定に役立ちます。電気回路の各部位の抵抗値を測定し、正常な範囲から外れている箇所を特定することが可能です。このような、電気回路の保守・保安に欠かせない測定機器です。

2. 回路設計・電気機器の開発

回路の設計においても使用されます。回路を設計する際には素子の正確な抵抗値測定が必要です。抵抗計の中には基本精度0.02%、分解能1 µΩといった高精度製品も存在し、このような抵抗計を用いて電子機器設計や製造・品質管理などが行います。

また、電気機器の開発においても重要な役割を果たします。製品としての電気機器も正確な抵抗値が必要であり、抵抗計で電気機器内の抵抗値を測定して開発します。

3. 研究開発・教育

基礎素材の研究開発の分野でも使用されます。抵抗計を使用することで、材料や回路の特性を調べます。教育用途にも使用され、電気工学や電子工学の学習で抵抗計を使用して回路の測定を行います。これにより、学生は回路の特性や抵抗値の測定方法を理解します。

抵抗計の原理

抵抗計は、オームの法則を使用して抵抗を測定します。オームの法則とは、電流と電圧の比である抵抗値が一定であることを表す法則です。この法則により、回路内の抵抗値を求めることができます。

抵抗計の内部には、電源と測定回路が組み込まれています。測定用電源は一般的に電池やACアダプタから供給されます。また、測定回路には測定対象の回路電流を検出するアンペアメーターと、回路の電圧を測定するボルトメーターが組み込まれています。

精密な抵抗計の多くは接触式の4探針法で測定します。4本のうちの2本は対象に一定電流を流し、他方の2本がボルトメーターとして電圧を測定します。一定電流が流れるときに生じる電圧を測定することで、オームの法則から抵抗値が求められます。

簡便なテスターでは安価で構造が簡単な2端子法が用いられます。4端子法は測定リードの抵抗や接触抵抗の影響を受けないため、2端子法に比べて正確に抵抗値を測定可能です。

抵抗計の種類

抵抗計は用途などに応じて、さまざまな種類が販売されています。以下は抵抗計の種類一例です。

1. アナログ式抵抗計

アナログ式抵抗計は、アナログ指針で抵抗値を示す抵抗計です。回路に流れる電流によって針が振動し、抵抗値を示します。比較的安価な点が特徴ですが、測定対象回路の抵抗範囲に応じて適切なレンジを選択して使用する必要があります。

2. デジタル式抵抗計

デジタル式抵抗計は、7セグメント表示で抵抗値を示す抵抗計です。高精度な測定が可能であり、レンジも自動的に切り替える機能が備わっていることが多いです。電圧測定機能や電流測定機能を持つテスターなどもデジタル抵抗計の一部です。

3. クランプ式抵抗計

クランプを挟んで回路周囲に磁場を発生させて抵抗値を測定する抵抗計です。測定対象の回路に接触せずに測定できる点がメリットです。接地抵抗計として多く使用されます。

4. 絶縁抵抗計

絶縁状態を診断するための抵抗計です。一端子を接地させ、高電圧を印可して漏れる電流を測定することで絶縁抵抗を測定します。系統の電圧に合わせてDC1,000V程度の高電圧を印可できる絶縁抵抗計も販売されています。生産現場の保守に広く使用される抵抗計です。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=33
https://www.akaneohm.com/column/lowmeasure/
https://www.hioki.co.jp/jp/support/faq/detail/?dbid=1682

磁気センサー

磁気センサとは

磁気センサー

磁気センサーとは、磁気を検知するセンサーのことです。

永久磁石・電磁石から生じる磁気や地磁気を検出する際に用いられます。磁気センサーでは磁気のベクトル(大きさや向き)を検知できます。

磁気センサの使用用途

磁気センサーは近年では、民生品から産業機器まで幅広く使用されます。
代表例はスマートフォンです。地図アプリや方角アプリの方向検知などに使用されます。

また、産業・研究分野では磁気を発生させる物質の検査・検知に使用されることが多いです。以下に検出対象例を列挙します。

  • 地球から発生される地磁気検知
  • 岩盤内における鉱物の磁気検知
  • 筋肉や脳から発生される生体の磁気検知
  • 紙幣の偽造を防ぐための磁性インク検知
  • 構造物の非破壊検査に使用される磁気検知
  • 電流が生み出す磁束検知

上記を検出することで、以下の製品に応用することが可能です。

磁気センサーの原理

磁気センサーは磁束によるローレンツ力を電気的信号に変換して磁気のベクトル (大きさ・方向) を検知します。
磁気センサーにも種類がありますが、ホールエレメントを用いたホールセンサーと磁気抵抗エレメント (MR) を用いた磁気抵抗エレメントセンサーに大別可能です。

ホールセンサー

ホールセンサーはホールエレメントと垂直磁束の間に生じるホール効果を利用して磁気ベクトルを検知します。ホール効果とは磁束に対して直角の電流が生じたとき、磁束と電流に対して90度の方向に起電力が生まれる現象です。

MRセンサー

MRセンサーは磁気を感じ取ると抵抗が変化する磁気抵抗エレメントを利用して磁気ベクトルを検知します。
磁気抵抗エレメントには半導体磁気抵抗エレメント・異性磁気抵抗エレメント・巨大磁気抵抗エレメント・トンネル磁気抵抗エレメントの4種類があります。

磁気センサーのその他情報

1. 磁気センサーとコンパス

コンパスは方位を知るための道具です。古くから永久磁石が使用されてきましたが、近年では永久磁石の代わりに磁気センサーを用いて方位を算出する電子コンパスが普及しています。

電子コンパスはスマートフォンにも搭載されています。スマートフォン内での役割は、方角アプリによる方角検知や地図アプリでのナビゲーションなどです。

地図アプリの多くはGPSを用いますが、GPSの位置検出精度は数メートル単位です。そのため、ナビゲーションとして使うには十分ではありません。また、電波状態の悪いエリアではGPS信号が受け取れない場合もあります。

これらの問題を解決するために電子コンパスと組み合わせて方位や進行方向を検出し、GPSの誤差を補正しています。また、常に進行方向が上を向くように地図表示を調整することも可能です。

なお、電子コンパスは微弱な地磁気から方位を算出するため、スピーカーなどの磁性パーツから受ける影響を補正する技術も使用されています。

2. 磁気センサーと自動車

自動車の安全性や快適性を高める制御システムを実現するために様々なセンサーが搭載されていますが、磁気センサーは信頼性やコスト面で有利です。主に以下の用途で使用されます。

  • 車速検知
  • エンジン回転速度の制御
  • ABS (Anti-lock Breaking System)
  • パワーステアリング
  • カーナビゲーション

近年は自動運転技術が注目されており、AI技術を活用した実現に向けて技術開発が進んでいます。まだまだ多くの課題がありますが、これらを解決する方法として磁気マーカーシステムが注目されています。

磁気マーカーシステムとは、完全自律型の自動運転とは異なり誘導型のシステムです。道路に設置した磁気マーカーを車両の磁気センサーで検出して、現在地を特定し進路を制御する運転支援システムを指します。路線バスでの自動運転実現に向けて実証試験が開始されています。

参考文献
https://www.akm.com/jp/ja/technology/technical-tutorial/basic-knowledge-magnetic-sensor/magnetic-sensor/
https://go.alps.jp/l/506151/2018-09-03/sx9dz
https://www.akm.com/jp/ja/products/electronic-compass/technical-resource/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1805/30/news038.html
https://jidounten-lab.com/u_autonomous-udo
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/9/84_769/_pdf/-char/ja

TOFカメラ

TOFカメラとは

TOF (Time-of-flight) カメラとは、光の飛行時間を測定することで対象物との距離を可視化するカメラです。

対象物との距離の計測に使用するのは主に赤外光です。照射した赤外光が物体から戻ってくるまでの時間を測定し、この時間から距離を算出しています。

通常のカメラでは対象物の二次元的な情報しか得られないのに対し、TOFカメラで撮影した画像には奥行きの情報が含まれているため、三次元的な情報を得ることが可能です。カメラのように画像で情報を取得する方法を「3D-TOF」、単純に距離だけを知る方法を「1D-TOF」と呼びます。

TOFカメラの使用用途

TOFカメラは以下のように産業・医療など幅広い分野で応用されています。

1. 人物・形状認識

TOFカメラは、人物や形状認識として利用されています。病院内にいる患者の動きをTOFカメラで認識し、見守る時に役立てられます。また、店舗に設置することで、人の動きを追跡し、人数をカウントする際にも活用可能です。

その他、TOFカメラは車の自動運転にも使われます。自動車が歩行者に追突しないように、TOFカメラで歩行者を検出することができます。

2. 物体検出・安全監視

工場等の生産現場では、物体検出や安全監視の目的でTOFカメラが利用されています。産業用ロボットや運搬機器に取り付けることで、物体の侵入を検知が可能です。

また、プレス機やロボット等の危険源にTOFカメラを設置すれば、接近しているのが搬送されている物体なのか、人物なのかの識別ができるようになります。農作物の観測として活用する場合は、サイズや形状を測定することで収穫時期の判断に役立てられます。

3. スマートフォンへの活用

TOF方式距離画像センサーのスマートフォンへの活用が進んでいます。TOF方式距離画像センサーをスマートフォンに搭載することで、プレイヤーの身体的動作を高精度に捉え、ゲーム内に反映させることが可能です。VRやARでの活用も期待されています。

また、ECサイト上で何か物を売買するときに、瞬時に物の寸法を測って表示することが可能になります。その他、TOFカメラはスマートフォンログイン時の顔認証機能にも使用されています。

顔の形状をTOFカメラで識別することにより、顔認証機能を実現します。一般的なカメラとは異なり、持ち主の顔写真を使っても単なる平面と認識するため、TOFカメラを搭載すればなりすましも防止可能です。

TOFカメラの原理

TOFカメラの原理

図1. TOFカメラの原理

TOFカメラカメラは主にレンズ、光を検出する検出器とこれに同期する光源によって構成されています。搭載された光源から照射された参照光を対象物で反射させ、検出器に到達するまでの時間 (飛行時間、英: Time of Flight) を測定しています。

光の速度は約30万km/sで不変の定数です。したがって、対象粒の距離は両者の積の半分であること分かります。

TOFカメラの種類

飛行時間の計測手法は大別して、直接TOF法と間接TOF法の2種類があります。

1. 直接TOF法

直接TOF法は、参照光としてパルス光を照射し、反射光のパルスを検出します。照射から検出までの時間を直接計測することで、飛行時間を計測する方法です。

参照光の照射と同時に、測定用回路の内部で既知の幅と周期を持った測定用パルス電流を発生させます。測定用のパルス電流と反射光により、検出器でパルス電流が発生する時間との差から飛行時間の測定が可能です。

2. 間接TOF法

間接TOF法は、参照光との位相のずれから距離を求める方法です。光源から出る連続波の振幅を変調して周波数が既知の正弦波を生成します。

これを参照光として対象物に照射し、対象物からの反射光の位相のずれを検出します。位相のずれは正弦波の周波数を用いて時間差に変換することが可能です。これにより、飛行時間を算出することができます。

具体的には、参照光の1周期に対して反射光の強度を4回測定します。これを離散フーリエ変換することによって、参照光との位相のずれを求めることができます。

TOFカメラのその他情報

TOFカメラのメリット

TOF方式のメリットとしては、小型で、CPU負荷が少なく、暗い所で利用することが可能ということが挙げられます。それぞれのメリットを以下で説明します。

1. 暗所でも利用できる
TOFカメラは、可視光ではなく赤外光を利用しているため、暗下で使用することができるのがメリットです。 周囲に光源が全く無い状況下でも物体の立体的情報を得ることができます。

2. 小型でCPU負荷が少ない
TOFカメラは、シンプルな装置構成をしているので、ストラクチャードライトの方式と比べて、小型化が可能になっています。また、CPU負荷が少ないということも魅力的です。

製造現場で使用される生産装置にTOF方式のセンサーを組み込むことを考えた場合、CPU負荷が少なければ遅延が生じるリスクを減らすことができ、安定的な生産システムの構築を行うことが可能になります

3. 低価格な製品もある
TOF方式のカメラは高価な製品だけではなく、スペックの違いによっては低価格な製品もあります。スペックによりTOFカメラの価格は大きく異なるため、購入前には必要なスペックと照らし合わせて検討することをお勧めします。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/70/11/70_880/_pdf
https://news.mynavi.jp/article/20200320-smartphone_word/
https://www.inrevium.com/pickup/tofcamera/#02
https://emb.macnica.co.jp/articles/5744/

制御盤

制御盤とは

制御盤

制御盤とは、産業用の生産ラインや機械設備を制御するための電気機器が集約された箱です。

一般的に金属製の堅牢な箱形状で製作され、錆、腐食、塩害などを防止する目的から、焼付塗装や紛体塗装が施されます。

制御盤の使用用途

制御盤は産業においてはあらゆる場面で使用されます。以下は制御盤の使用用途です。

  • 工場排水用ポンプの運転制御用
  • 上水道ポンプの運転制御用
  • 製品搬送設備の制御・操作用
  • エレベータの運転制御用
  • 製品加工設備の運転操作用

制御盤は生産ラインや機械設備の制御を担います。機械の制御機器を外環境から保護する目的で制御盤キャビネットに収納された一式が制御盤です。

日常生活では、上水・下水用ポンプなどのインフラ装置制御用の制御盤を街中で目にすることがあります。

制御盤の原理

制御盤は制御盤キャビネット、保護・駆動装置、制御装置などで構成されます。

1. 制御盤キャビネット

制御盤キャビネットは制御盤の外箱です。主に鉄製で、前面はハンドル付きの扉が取り付けられます。下部に接地用端子が付属しており、接地極と電線で接続されて接地されます。また、盤面扉には表示灯や表示計器などが取り付けられ、制御する機械設備の状態を表示している場合があります。

2. 保護・駆動装置

保護・駆動装置は電動機械を動作させる動力部品です。遮断器漏電リレーなどは保護装置で、電気回路で短絡・地絡事故などが発生した際に警報を発報したり安全に遮断したりします。電磁開閉器インバーターサーボアンプなどは駆動装置で、電動機械に電力を供給して駆動させます。

3. 制御装置

制御装置は電動機械などを制御する計装部品です。シーケンサリレーが該当します。計器からの情報を基に駆動装置へ指令を与え、機械設備をコントロールします。

制御盤のその他情報

1. 制御盤、配電盤、分電盤の違い

制御盤と配電盤分電盤は使われる筐体が同じでも、使用用途が異なります。ただし、それぞれに遮断器などの保護装置が使用され、短絡事故などの上位への波及を防止しています。

  • 配電盤
    電力会社などから送電される電源を降圧させて配り分ける装置です。キュービクルなどが該当します。
  • 分電盤
    配電盤から受電した電力をさらに分岐させて各機器へ分配させる装置です。一般家庭に配置されるブレーカが並ぶボックスは分電盤に当たります。また、制御盤は分電盤から電力を受電します。
  • 制御盤
    分電盤から受電した電力をモーターなどの産業機器へ分配する役割を持つ装置です。PLCなどの制御機器で運転状態を監視しつつ機械設備の運転を制御します。

2. 制御盤の設計

制御盤の設計は、電気設備を取り扱った経験が必要となります。低圧機器制御盤は多くの場合、主幹となるメイン遮断器を左上に配置し、右下に向かうに従って計装関係の部品を配置していきます。ただし、インバータやステッピングモーター用アンプなどのノイズを発生する装置はできる限り制御信号配線と遠ざけます。ノイズによる装置の誤作動を防ぐためです。

制御盤の負荷となる機器をあらかじめ洗い出し、それに応じて部品点数を決定します。その部品点数を基に人が組み立てる際に無理が出ないように配置していきます。メンテナンススペースとして、人の指が入る幅を確実に開けて部品配置の設計をします。

盤内の配線はカッチングダクトによって整理されて収納されます。ダクト内配線の占有率をあらかじめ決めておき、その占有率を超えないようにダクト幅を増減させます。制御盤下部には外部端子台が並びます。外部から敷設され、導入される配線を盤内配線と接続するための端子です。端子台では外部配線と内部配線を、ボルトやねじで接続します。大型のボルトで外部配線と接続される場合は、緩みを非接触で確認できるように合いマークを打っておきます。

制御盤の筐体はキャビネットボックスメーカーにより規格品が販売されており、規格品を使用できれば安価に済ませることが可能です。特殊な寸法の制御盤を設計した場合は板金加工で製作する必要があり、想定以上に高価となってしまう恐れがあります。

参考文献
http://www.jsia.or.jp/mamechishiki/seigyoban/
http://www.jsia.or.jp/
https://t-denso.com/archives/429

ラインセンサカメラ

ラインセンサカメラとは

ラインセンサカメラ

ラインセンサカメラ (英語:line sensor camera) は、ライン状に対象物を撮像し、1枚の画像に合成するカメラです。

よく比較されるエリアセンサカメラでは、視野全体を1度に撮像します。それに対して、ラインセンサカメラは、1列のラインセンサに対して対象物を直角方向に移動させながら、あるいはカメラを移動させながら連続的に撮影することで、平面的な画像を取得できます。

横長の画像を取得する場合、ラインセンサカメラであればピクセル単位で生じるわずかな変化もとらえることが可能です。

ラインセンサカメラの使用用途

ラインセンサカメラは、道路や外壁をはじめとした社会インフラの検査から、不織布・歯車・半導体部品などの工業的な検査、美術品の解析、今まで目視検査を行っていた果実の選別など、幅広い目的で使用されます。

ラインセンサカメラが適している対象物は、サイズが大きいもの・高精度な分解能が必要なもの・連続した長いもの・立体の外観などです。

例えば、サイズが大きい対象物を撮影する場合、エリアセンサであれば分割して撮影する方法もありますが、複数の画像をつなぎ合わせなければなりません。一方、ラインセンサを用いると、1枚の画像として撮影できるため、画像をつなぐ作業は不要です。

ラインセンサカメラの原理

ラインセンサカメラは、通常のカメラと同様に、レンズから入った光をCCD・CMOSなどの撮造素子上で結像させることで電子的な信号に変換し、画像として出力します。

1列のラインセンサで構成される撮像素子に対して、垂直方向に被写体を移動させて連続的に撮影します。そして、多くの画像を合成して、連続した画像を取得します。ラインセンサカメラはモノクロの画像を取得できるモデルと、カラーまたは不可視光線の画像を取得できるモデルに大別されます。

カラー画像が取得できるモデルでは、ラインセンサの配列が1~3列程度であり、多層構造になっています。 これは1つのセンサから入手できる色情報が1つであるためです。3列のカラーセンサーでは、特定の1ピクセルを青・緑・赤の色情報が取得できる3つの撮像素子で撮影します。

一方、1列のカラーセンサーでは、特定の1ピクセルを1つの撮像素子で撮影するので、単一の色情報のみを取得します。そして、周囲の色情報から特定の1ピクセルの色情報を推定するので、色の正確度が3列のカラーセンサーより劣ります。

ラインセンサカメラの選び方

ラインセンサカメラの選定で重要なことは、扱う対象システムの分解能・露光制御・高速対応・感度などトータルで判断することです。

1. 露光制御

旧来のラインセンサカメラは露光制御がなく、速度変動に対して手動で光源の明るさを変化させています。電子シャッターを使うことにより、速度の変化があっても、露光時間を自動で変えて同じ明るさで撮像できます。

2. 高速対応

データ処理能力を表わすスループットで判断します。現在では最高速度レベルのカメラが市販されています。

3. 感度

従来のラインセンサカメラは、1ラインスキャン分の露光タイムしか取れないため、強めの光源を要します。したがって、センサ自体は開口率100%の効率の良いものを使用しています。また、タイムディレイインテグレーション技術を使った数十倍以上も感度を向上させたカメラもあり、光量が上げられない場所や高速スキャンに適しています。

4. シェーディング補正

最新カメラでは、ピクセル内のわずかな感度の差異をカメラでリアルタイムに補正する機能があります。このツールを使って、照明ムラによる幅方向の光量変化補正であるシェーディング補正が可能です。

ラインセンサカメラのその他情報

ラインスキャンカメラのメーカー

ラインセンサカメラは、長尺物の検査や立体物の外観検査など特定の分野で使われます。したがって、エリアセンサカメラと比較すると、市場が限定的と言えます。ラインセンサカメラの市場規模は、エリアセンサカメラの40%ぐらいですが、急速に拡大しています。

ラインセンサカメラのメーカーは発展途上の製品であるため、非常に多くあります。従業員が多い会社では、株式会社キーエンス・浜松ホトニクス株式会社などです。さらに、コアテック株式会社・株式会社アバールデータ・株式会社ジェイエイアイコーポレーションなど多くあります。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/landing/req/vision/cv-x_1097_03.jsp
https://www.jfe-steel.co.jp/research/giho/015/pdf/015-16.pdf

コンタクトプローブ

コンタクトプローブとはコンタクトプローブ

コンタクトプローブとは、電気的な接合部がバネで収縮する構造をしており、電気的な導通を得るための通電プローブのことです。

探針やオルガンコンタクト等と呼称される場合もあります。例えば、測定などの場合に電気的な導通をさせるために金属部同士を当てた場合、その金属同士はある程度の力で接触していないと電気的な接続が不安定になり、正確な接続を得ることができません。

コンタクトプローブは、接合部をバネで摺動させる構造とすることで電気的な接続をバネの押し圧力で接触させ、電気的な接続を安定させるようにしたプローブです。

コンタクトプローブの使用用途

コンタクトプローブは、電子部品やプリント基板などの導通検査や通電検査などに使用されます。電子部品やプリント基板などを生産するにあたり、品質の向上のために生産工程の中に導通検査や通電検査が組み込まれることがあります。

そのような場合は、検査対象となる電子部品やプリント基板の任意の場所に電圧を掛けたり電流を流したりすることが必要です。また、半田付けやコネクタによる接続を不要とし、簡単に脱着したい場合にコンタクトプローブが使用されます。

コンタクトプローブは、接触部の形状や太さ、バネの圧力や摺動ストロークなどが選べることが多く、接触させる相手の材質や形状、流す電流の大きさなどに応じて適切な物を選ぶことが大切です。

コンタクトプローブの原理

コンタクトプローブは、ハサミ機と呼ばれる検査機やICT (In-circuit Tester) と呼ばれる検査機で使用され、それらの検査機にはピンボードと呼ばれる物が使われています。ピンボードは、コンタクトプローブ専用のソケットが用意されているので、これを厚さ10mm程度の樹脂の板に検査対象の接続位置に合わせた位置に穴を開けて取り付けて電気配線を施し、ソケットにコンタクトプローブを差し込んだ構造をしています。

ハサミ機と呼ばれる検査機やICT (In-circuit Tester) と呼ばれる検査機は、ピンボードを垂直に上下させる機構を備えているため、検査対象をピンボードで挟み込むことで検査対象箇所にコンタクトプローブを当てて、電気的な通電検査を行うことが可能です。

コンタクトプローブの構造

コンタクトプローブは、先端にある電気的な接合部であるプランジャ、固定する本体となるパイプ (ないしバレル) 、パイプの中にあるバネで構成されます。また、コンタクトプローブには専用のソケットが用意されているのでソケットを固定して配線することで、コンタクトプローブが消耗した際にプローブのみを交換することが可能になります。

コンタクトプローブの選び方

コンタクトプローブの選定は主に、大きさ、ストローク、針圧力、先端形状の4つの要素で選定します。

1. 大きさ

大きさは、プローブを当てる場所の密度や流す電流の大きさなどの条件で選定します。

2. ストローク

ストロークは、機器のピンボードなどを上下させる機構の移動量や検査対象の位置や高さなどの条件で選定しますが、概ね摺動量が全ストロークの2/3程度になるような物を選定するのが好ましいです。

3. 針圧力

針圧力はバネの力のことで、コンタクトプローブの本数や機器のピンボードなどを上下させる機構に加えられる力などを考慮して選定します。例えば、機構が出せる力が5kgfだとして100本のプローブが備わったピンボードを扱うには、1本当たりの針圧力 (バネ力) を50g以下の物を選定しないと、機器が正常に動作しません。

4. 先端形状

先端形状は、コンタクトプローブを当てる相手の材質や大きさや形や流す電流などに適したものを選定します。

コンタクトプローブのその他情報

テストパッドの準備

検査対象となる機器で予め生産工程上で通電検査をする見込みがある物を設計する場合、回路設計時に測定ポイントを想定しておくことをおすすめします。プリント基板を設計する際に、コンタクトプローブを当てるためのテスタパッドを織り込むことで、コンタクトプローブを当てやすくなったり狹ピッチの部品からの信号でも取り出しやすくなったりするためです。

光学顕微鏡

光学顕微鏡とは

光学顕微鏡

光学顕微鏡 (英: Optical microscope) とは、接眼レンズ及び対物レンズで肉眼では見えない微小な物体を拡大して観察するための機器です。

光源として蛍光やレーザーを利用するものもありますが、一般的には可視光を利用しているものを指します。

拡大倍率は数倍から1500倍程度のものがあります。観察対象物の違いにより生物顕微鏡や金属顕微鏡の種類があり、対象試料の光の透過性により使い分けます。

光を透過する生物試料などは透過光を用い、光を透過しない金属試料などは反射光を用いて観察します。その為、生物顕微鏡と金属顕微鏡は光源とレンズ、試料の配置が異なります。

光学顕微鏡の使用用途

光源として可視光を利用するため、光を変換することなくヒトの眼で直接観察することができることから構造が単純であり、価格も比較的安価であることから、生物学、医学、食品分野、半導体分野、教育分野など様々な分野で広く使用されています。

具体的には、血液検査、微生物検査、粉塵検査、集積回路検査などの各種検査での使用や、それらの分野の研究開発用途などです。

光学顕微鏡の原理

光学顕微鏡の原理

図1. 光学顕微鏡の原理

光学顕微鏡の原理は、観察対象物に光をあて、対象物を透過した透過光あるいは反射光を対物レンズで拡大するというシンプルなものです。

観察者は、対象物の光(像)が対物レンズで拡大され、その光(像)がさらに接眼レンズで拡大された虚像を見ていることになり、光学顕微鏡の倍率は対物レンズ及び接眼レンズの拡大倍率を掛け算した積で表されます。倍率が高いほどより小さな対象物を大きく拡大して観察することが可能です。

顕微鏡は照明の当て方により大きく「透過型」と「反射型」2種類に分けられる。透過型の場合では細胞や細菌などの生物試料のような光を透過する物体に使用され、反射型では金属や半導体などの光を透過しない物体に使用されます。また試料をのぞき込む方向によっても分類され、試料に対して対物レンズを上に配置した正立型と下に配置した倒立型があります。特に、シャーレで培養したサンプルは下からのぞき込む必要があるため倒立型が使用されます。図では最もポピュラーな正立透過型の顕微鏡の概要図を記しております。

光学顕微鏡の光学倍率は対物レンズと接眼レンズの倍率によって決まります。また、光学顕微鏡での観察においては、拡大倍率だけではなく分解能やコントラストも重要な要素となります。

分解能は、ある異なる2点を2つの点として識別できる最小距離(δ)のことを指し、どれだけ細部まで識別できるかを示す指標です。顕微鏡の場合は対物レンズの開口数(NA)と光の波長(λ)で分解能が決まり、以下の式で表されます。

δ = kλ/NA (kは定数)

また開口数NAはn×sinθで計算され、nは対物レンズと媒質の間の屈折率、θは対物レンズに入射する光線の光軸に対する最大角度です。

次に、コントラストについて説明します。

生体試料などは透明な場合が多く、試料をそのまま観察しても透き通ってしまい、構造を認識できないことがあります。このような場合は、試料を色素で染色したり光を絞ったりして観察条件を調整必要があります。染色や光の調整で像にコントラストをつけて対象物を観察しやすくします。

近年では、染色や絞りの調整以外にも光の散乱や回折、蛍光を利用する観察方法が位相差や微分干渉などいう名称で確立されています。それらの観察方法に特化した光学顕微鏡も存在し、光学顕微鏡の中でも位相差顕微鏡微分干渉顕微鏡と呼ばれています。細胞などを染色する場合は、細胞が死んでしまいますが、位相差顕微鏡や微分干渉顕微鏡を用いると生きたままの細胞を観察することが可能になります。

光学顕微鏡のその他情報

1. 光学顕微鏡の明視野観察と暗視野観察の違い

光学顕微鏡での観察を行う際には、対象に対してどのように光を当てるかによりその見え方が変わります。基本的な観察方法としては、「明視野観察法」「暗視野観察法」「偏斜照明での観察」の3種類があります。

明視野観察法は最も基本的な観察方法で、対象を光で照らして透過した光を観察するものです。主に、染色したサンプルの観察に用います。

一方で暗視野観察法では真下から光を当て、散乱光や反射光によって観察を行います。主に、着色されていない透明な対象や小さな対象の観察に利用される方法です。

明視野観察法を行うためには対象を染色することが基本となりますが、対象が生体である場合は染色による死滅や機能を損なう懸念があるため、この場合は染色せずに暗視野観察法を利用することになります。

これら2つの観察方法の中間であるのが偏斜照明での観察です。対象に対して斜めから光を当てることで、明視野観察法と暗視野観察法の中間的な見え方を実現することができます。

2. 光学顕微鏡における液浸対物レンズ

光学顕微鏡の分解能は開口数に反比例するため、開口数を大きくすることでより小さな分解能が得られます。開口数は対物レンズと媒質の間の屈折率に比例しますが、液浸対物レンズはこの特性を利用し、試料と対物レンズの間に屈折率の高い液体を満たすことでより優れた分解能を得る手法です。観察する対象によって使用する液体も異なります。

液体としてオイルを利用する対物レンズを「油浸対物レンズ」と呼びます。オイルは水よりも屈折率が高いためより分解能を高める効果があり、油浸対物レンズを用いることで明るくシャープな像を得ることができます。ただし、厚みや試料とカバーガラスに間がある対象を観察する場合には、対象とカバーガラスの屈折率差により対物レンズによる球面収差が発生し、顕微鏡が結ぶ像はぼけてしまいます。

一方で、液体として水を利用する対物レンズを、「水浸対物レンズ」と呼びます。水浸対物レンズは、対象の厚みにかかわらず同等の像が得られるように設計されています。薄い対象について観察する場合は油浸対物レンズのほうがより明るくはっきりと視認できますが、厚みがある対象を観察する場合は、水浸対物レンズを用いたほうが良い性能を得ることができます。

振動試験機

振動試験機とは

振動試験機 (英:vibration testing machine) とは、部品や製品に振動を与える試験機です。

振動試験機は、振動による破損や故障を確認したり、部品の振動応答特性を調べるたりするために使用されます。どんな製品でも長期間の振動による疲労から、破損の可能性があります。そのため、品質保証の観点から振動試験機を使う試験が多く行われます。

振動試験機の使用は、主に正弦波振動やランダム波振動による耐振性能を確認するのが目的です。また、機械系の振動応答特性である機械インピーダンスの測定を行い、共振周波数の把握や振動対策にも活用されます。

振動試験機の使用用途

振動試験機は、部品や製品の耐振動性の確認及び部材・構造体の振動応答特性の把握などに使用されます。

  • 自動車部品や電子部品などの製品が振動環境に耐えて、性能を発揮できるかの確認
  • 家電製品・OA機器・食品など出荷される製品が輸送時に受ける振動による製品、およびパッケージへの影響の確認
  • 建築資材や建物自体の地震に対する耐力の試験、及び免震構造・制震構造の効果確認
  • タービン発電機のタービンブレードの振動特性・軸のねじり振動特性
  • 工作機械のフレームの機械インピーダンス測定
  • 振動計地震計の校正など

振動試験機の原理

振動試験機は駆動方式によって、機械式・油圧式・動電式・サーボモーター式などに分類され、それぞれ原理が異なります。

1. 機械式振動試験機

駆動力としてモーターを用いて、回転運動を機械式に往復運動に変える方式です。油圧式や動電式に比べて、比較的低価格です。近年機械式は、制御性が短所で、他の方式に置き換わっています。

2. 油圧式振動試験機

駆動力として油圧ポンプからの油圧を使う方式です。サーボバルブにより油圧回路を高速で切換えて振動させます。低い振動数・ロングストローク・大パワーが必要な場合に適しています。周波数範囲は1~300Hz程度です。建物などの大型構造物を地震波で振動させる場合などに多く使われます。

3. 動電式振動試験機

磁界中の導線に電流を流したときに発生するローレンツ力を利用する方式です。励磁コイルによる磁界中に設置した駆動コイルに交流電流を流すことで、電流に応じて往復運動させます。

加振機の振動をピックアップで検出して、制御器にフィードバックし、振動を設定値に保ちます。この方式の特徴は、加振振動数の範囲が広いことで、特に高い振動数まで対応可能です。振動数範囲は、5~3,000Hz程度が一般的ですが、小型の加振機では、さらに高く、40,000Hzまで可能なタイプもあります。

4. サーボモーター式振動試験機

ACサーボモーターと、ボールスクリューを組合せたサーボモーターリニアアクチュエータを使用して振動させる方式です。油圧式に比べ搭載荷重は低く、動電式に比べると振動数範囲は低くなります。油圧式と動電式の中間的な動作範囲です。振動数範囲は、0.01~300Hz程度です。

振動試験機のその他情報

1. 振動試験の種類

振動試験の種類は、正弦波振動試験・ランダム波振動試験・衝撃試験などに分類されます。

正弦波振動試験
一定周期で繰り返す振動を与える試験です。振動周波数と振幅を固定して試験する方法と、周波数を掃引し、振幅は振動数に応じて設定する試験方法があります。主に耐振性の確認に使われます。更に、振動周波数を変化させて試料の共振の有無・共振周波数・振動応答特性を調べる試験があります。

ランダム波振動試験
規則性のないランダム振動波形で加振する試験です。試験条件は振動数帯域と加速度のスペクトル密度で規定します。この試験は、上下左右前後の3方向について行います。電気製品や電子部品が地上の車両走行や航空宇宙輸送の振動負荷でどのようになるかをよく再現できます。そのため、応力累積による性能劣化や機械故障の検出効果が高く、市場環境により近い試験結果が得られます。

衝撃試験
一般的に、規定のピーク加速度と作用時間のパルス波形衝撃を供試品に加える試験です。衝撃環境に対する耐性・特性評価を行います。

2. 振動試験機の大型化と小型化の傾向

振動試験機の大型化が進んでいます。従来は電気製品や電子部品・自動車用部品などが試験の主体でしたが、包装貨物や鉄道車両搭載部品・航空宇宙産業・耐震建築などのニーズが高くなっています。また、航空宇宙産業で必要な振動周波数は、民生品や車載品より高いため、そのスペックに合わせた試験機も開発されています。

振動試験機の小型化のニーズも増えているのが現状です。例えば、卓上型振動試験機があります。この試験機は、プリント基板上のはんだ付け不良や、コネクターの接触不良・ビスやナットの締め付け不良などの検出に使われます。また、ハンディ型の振動試験機が開発されています。この試験機では電子機器の耐振チェックや、特定箇所の振動応答特性の測定に使用されています。

参考文献
https://www.imv.co.jp/pr/simulation_system/
https://www.espec.co.jp/products/trustee/test/compound.html
https://www.test-navi.com/jp/test/cases/pdf/06_sindou.pdf
https://www.iri-tokyo.jp/uploaded/attachment/1745.pdf
https://www.keisokuten.jp/file.php?id=9930