カムポジショナ

カムポジショナとは

カムポジショナ (英: Cam Positioner) は、機械工学や自動制御の分野で使用される装置の1つです。

機械式カムを代替し構造を単純化することを目的としています。機械式カムは、円形または楕円形のカム軸を回転させることで、その形状に基づいて特定の動作をする部品を操作する機構です。

カムポジショナは、センサやエンコーダなどを使って、軸の回転角度や位置を検出し、それを制御システムにフィードバックするのが一般的です。制御システムは、予め設定されたカムのプロファイルに基づいて、軸を制御します。

つまり、カムの形状をカムポジショナの中にプロファイルとして設定しておくことで、従来の機械式カムに代替することができます。これにより、機械式カムの複雑なメカニズムを回避し、構造を単純化することが可能です。

カムポジショナの使用用途

1. 自動車産業

エンジンのバルブ制御に使用されます。エンジンの正確なタイミングやバルブの開閉制御を行い、燃費の向上や排出ガスの削減などを実現します。

2. 機械加工

機械加工装置で使用されます。例えば、旋盤やフライス盤などの工作機械で、正確な位置制御や工具の切削動作を制御するために使用されます。

3. 組み立てライン

製品のパッケージングや組立ラインで使用されます。正確な位置制御によって、製品のパッケージングや組み立て作業を高速かつ正確に実行することができます。

4.ロボット工学

ロボット工学や自動化システムで使用されます。ロボットアームの運動制御や位置決めにおいて、カムポジショナが利用されることがあります。

5. 印刷

カムポジショナは、印刷工程でも使用されます。印刷ヘッドの位置制御やインクの供給制御において、カムポジショナーが使用されます。

カムポジショナの原理

カムポジショナは、センサによる計測、制御システムによる情報処理、アクチュエータによる位置制御などの要素から構成されます。これにより、軸の位置と速度を正確に制御し、所望の動作を実現することが可能となります。

1. センサまたはエンコーダ

カムポジショナは、軸の回転角度や位置を計測するためにセンサやエンコーダを使用します。これにより、現在の軸の状態を検出し、制御システムにフィードバックします。

2. 制御システム

カムポジショナは、制御システムと連携して動作します。制御システムは、センサやエンコーダからのフィードバック情報を受け取り、目標とする軸の回転位置や回転速度との差異を計算します。

3. アクチュエータ

制御システムは、軸の位置を制御するためのアクチュエータに指令を送ります。アクチュエータは、電動モータ、油圧シリンダ、空気シリンダなどの形態を取ることがあります。アクチュエータは、制御システムからの指令に基づいて、軸を正確な位置に移動させます。

4. フィードフォワード制御

カムポジショナでは、フィードフォワード制御も使用されることがあります。フィードフォワード制御では、事前にプロファイルに基づいて予測された位置や速度情報を使用して、アクチュエータを制御します。これにより、遅延や応答時間の影響を最小限に抑え、より正確な制御を実現可能です。

カムポジショナの種類

主なカムポジショナの種類は以下の通りです。

1. 光学式カムポジショナ

 光学センサーを使用して、カムの凸部の位置を検出します。光学センサーはカムの凸部との間の光の反射または透過を検知し、位置情報を取得します。

2. レーザーカムポジショナ

 レーザーセンサーを使用して、カムの凸部の位置を非接触で検出します。レーザー光の反射または散乱パターンを解析し、位置情報を取得します。

3. エンコーダポジショナ

エンコーダと呼ばれるデバイスを使用して、カムの回転角度を検出します。エンコーダはカムの回転に応じてパルス信号を生成し、位置情報を取得します。

4. ポテンショメータポジショナ

ポテンショメータと呼ばれる可変抵抗器を使用して、カムの位置を検出します。カムの回転によって可変抵抗器の抵抗値が変化し、位置情報を取得します。

 参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/12/108/index.html
http://hikari-cam.co.jp/cam/about-cam

低周波発振器

低周波発振器とは

低周波発振器 (英: Low frequency oscillator) とは、比較的低い周波数の信号を発生させる装置のことです。

低周波という言葉自体の定義は使われる分野によって異なりますが、販売されている機器としての低周波発振器の仕様はおおよそ数Hz~数百kHzの範囲です。発振回路を用いることにより特定の周波数の交流信号を生成することが可能で、一般には周波数信号を用いた試験における基準信号を生成する役割があります。

発振器で作ることのできるおおよそ20Hz~20kHzの信号は可聴域なので、増幅することで音として人間が聞き取ることができます。

低周波発振器の使用用途

低周波発振器の使用用途として最も多いのが、オーディオ機器の周波数特性を解析する時です。周波数信号を用いた通信用の電子機器では高周波 (RF) が用いられる場合がほとんどであり、身近な低周波は音波になるため、音響機器が低周波数信号を用いる回路として主流と言えます。

例えば、オーディオアンプをDUT (Device under test: 被試験機器) として、入力信号を低周波発振器によって生成します。出力信号をFFTアナライザなどで解析することによって、対象のアンプの特性を解析することが可能です。

低周波発振器の原理

低周波発振器の原理は、発振回路に基づく安定した周波数信号の生成技術にあります。通常よく知られているLC共振回路ベースのハートレー型やコルピッツ型の発振回路では波長の制約で低周波の波形の実現が困難なため、RC型 (ないしはCR型) の発振回路が用いられているのが特徴です。

RC型発振器にはウィーンブリッジ回路やブリッジドT型回路、状態変数型回路などがあり、いずれもアンプの帰還量を調節することで発振を得ることが可能です。中でもウィーンブリッジ回路はよく知られており、回路にアンプが1つだけという簡便さもあり、広く利用されています。

一方で、状態変数型ではより低歪かつ、2相出力が得られます。周波数の制御には可変抵抗器やバリキャップと呼ばれる可変容量コンデンサが用いられることがあります。また、キャパシタ固定抵抗を用いたステップ可変も周波数決定の手法の一例です。

RC発振回路だけでは、振幅の一定した正弦波を得ることはできません。そのため、振幅を制御する装置が通常は必要です。電球やサーミスタなどの印加電圧により抵抗値が変化する素子を用いて帰還量を調整する方法や、出力の電圧を検知して帰還量を調節する電子回路を組む方法などがあります。

低周波発振器のその他情報

1. 自作電子回路キットやPCソフト

低周波発振器は、比較的身近な電子回路ということもあり、得られた機器で例えば家庭などで用いるブザーなども作成可能です。そのため、自作用の電子回路キットや電子回路を学習する学生向けの教材としても、幅広く扱われています。

また、WindowsPC上で低周波の音源を生成可能なフリーソフト (WaveGeneなど) も広く出回っています。

2. 低周波発振器の精度とキャリブレーション

一般にRC型発振器の周波数精度は、水晶 (クォーツ) やセラミックを用いた発振器と比較してそれほど良くはありません。その理由は抵抗や容量の値にばらつきを有することと、そのRC値が温度によって変化してしまうためです。

ただし、RC型発振器は水晶 (クオーツ) などに比べ比較的安価で簡便に構成できるため、広く用いられており、精度を改善させるための工夫が施されています。その代表的な改善手法が、キャリブレーションと呼ばれる合わせこみです。そのキャリブレーションには、デジタル回路を活用する手法が広く用いられており、特に製品の出荷前には周波数の値はキャリブレーションにて調整されています。

デジタル回路を活用するキャリブレーションは、内部に有するクロックと比較して補正をかける手法が用いられており、例えばメモリアドレスのある値をキャリブレーション用途に使うのが一般的です。これはデジタル回路の動作的にOSCCALと呼ばれるレジスタの値を変化させながら、所望の発振周波数になるようなレジスタ値を、自動的に選択できます。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/3-05-01.html

パワーインダクタ

パワーインダクタとはパワーインダクタ

パワーインダクタとは、インダクタの中でも電源回路に用いられるコイルの素子です。

パワーチョークとも呼ばれます。基本の構造は、積層技術で巻き線を形成したもの、棒状のコアに巻き線を施したもの、ドラム型のコアに巻き線を巻き付けたものの3種類です。

パワーインダクタを含むインダクタは、直流電流を通しますが、交流電流を通りにくくする性質を持っています。この性質を利用し、電圧変換のための回路の高周波ノイズ除去に利用されています。

交流電流の通りにくさを表すのがインピーダンスであり、以下のインダクタのインピーダンスの公式からもこの性質を容易に説明できることがわかります。

インダクタのインピーダンス[Ω]ZL=jωL 
(L: インダクタンス[H] ω: 角周波数[rad/s])

パワーインダクタの使用用途

パワーインダクタは電源回路の電圧供給の安定化のため、家電製品、通信機器、輸送機器など幅広い分野で使用されています。具体的には、スマートフォンや自動車などです。

直流電源の電圧を制御することは、あらゆる電子機器にとって非常に重要です。理由として、電子デバイスには正常動作を保証できる電源電圧範囲が存在するため、各部品に適切な電圧を供給できるかどうかが、安定した回路動作や機器の寿命に影響を及ぼすことが挙げられます。

DC-DCコンバータは電圧を変換する回路であり、安定電圧の供給はパワーインダクタの性能に依存します。コンバータ回路には、電圧を下げる降圧型と上げる昇圧型が存在します。どちらも部品として、スイッチング素子とダイオードとパワーインダクタを含んでいます。

パワーインダクタの原理

インダクタに交流電流が流れると、電磁誘導によりその電流の時間変化率に比例する誘導起電力が生じます。

 誘導起電力[V]e = -L* (dI/dt)
(L: インダクタンス[H] I: 電流[A] t: 時間[sec])

誘導起電力の向きは元の磁束の変化を妨げる方向であるため (レンツの法則) 、それを明示的に示すためにマイナスの符号がついています。電流変化を打ち消す方向の誘導起電力が発生し、交流電流は流れにくくなります。

誘導起電力に関わる比例定数がインダクタンスです (単位はヘンリー[H]) 。電気エネルギーを磁気エネルギーへと変換する能力として表されます。

インダクタンスを大きくするためには、「コイルの断面積を大きくする」「巻き数を多くする」「コアを入れ透磁率を大きくする」といった方法があります。コンバータでの使用ではスイッチング周波数に合わせてインダクタンスが決定されます。

他の用途向けのインダクタと比較するとパワーインダクタは、部品の外寸が大きく、インダクタンスも大きいという特徴があり、より直流電圧の安定供給に適した特性が得られるよう設計されています。

パワーインダクタの選び方

パワーインダクタを選ぶ際は、最初にインダクタンス値とインダクタに流れる許容電流値を考えます。そしてこれらに加え、形状やインダクタンスの周波数特性などを含めて、最適な部品を見極める必要があります。設計対象のDC-DCコンバータにどの程度の効率、出力特性、ノイズ耐性が必要かで判断します。

パワーインダクタでは直流重畳許容電流と温度上昇許容電流が規定されます。インダクタについては、

  • インダクタに流れる直流電流が大きくなるとインダクタンスが低下する
  • 電流が大きくなると巻き線の抵抗に起因するジュール熱が増大する

などの特性があるため、インダクタンス値だけでなく許容電流値も重要です。メーカー各社が幅広い用途向けに多種多様なインダクタを製造しています。たとえば、インダクタンスの大きい部品はDC損失が小さいため効率が高いですが、部品の外寸が大きく、より多くの熱を発生するといったトレードオフがあります。こういった点にも十分注意が必要です。

設計対象の各回路群の直流電源の電圧値が常時一定値を維持することが理想ですが、現実に実現できることはまずありません。しかし、トラブルを未然に防ぐためにも、特性の優れたデバイスを選定することが重要です。

参考文献

https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/power-inductors-guide

https://product.tdk.com/info/ja/products/inductor/inductor/smd/technote/power/apn-power- inductor.html

https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b5

ロジックアナライザ

ロジックアナライザとは

ロジックアナライザ(英語:Logic analyzer)はデジタル信号専用のアナライザ(解析装置)で、デジタル回路の動作検証を主な目的とする測定器です。

信号を分析する装置として、主にアナログ信号の解析に用いられるオシロスコープと比較される場合があります。

ロジックアナライザの使用用途

ロジックアナライザはデジタル回路の検証やトラブルシューティングにおいて必須のツールで、製品の開発や製造現場で用いられています。

複数の信号の入力に対して、アナログ特性は測定せず、閾値を用いて0と1に変換して処理を進めます。信号をデジタルデータとして扱うことから、デジタル回路において以下のような用途で使用されます。

  • システム操作のデバッグと検証
  • 複数のデジタル信号の同時トレースと相関付け
  • バスにおけるタイミング違反と過渡的現象の検出
  • 組み込みソフトウェアの実行トレース

ロジックアナライザの原理

試験対象システム(SUT:System under test)の測定箇所にプローブを設置し、信号をロジックアナライザに入力します。取り込まれた信号は、まずコンパレータに入力されます。

コンパレータではユーザーが任意に設定するスレッショルド電圧(閾値)と比較され、これより高ければ”1”、低ければ“0”として後段へ伝達されます。即ち、コンパレータを通過した後はデジタル信号として扱われるということです。

コンパレータの出力は、クロックとトリガ条件に対応してデジタル信号として出力されます。クロックはロジックアナライザの内部のサンプリングクロックを用いる場合と、SUTからの外部クロックに準ずる場合があり、用途により使い分けます。

前者は各信号間のタイミング情報を得るために行われ、後者はステートを得るためです。トリガ条件は特定のロジックパターンや、任意のイベント数のカウント、イベントの持続時間など様々な項目の設定ができます。

試験対象回路の信号レベルから適切な閾値を設定し、得ようとする情報に対して適切なクロック、トリガ条件を設定することが重要です。

ロジックアナライザの使い方

プローブをSUTへ接続し、個々の入力信号に名称を設定します。この時、バスなど複数の信号を測定する場合は、グループ化して登録すると測定結果を観測しやすいです。

次いで信号をサンプリングする時間を決めます。サンプリングクロックの周波数が高くなるほど、より細かい信号測定が可能となります。一方、取り込めるデータ量は一定なので、観測できる時間幅は狭くなります。なお信号のサンプリングインターバルは、以下の式から求めることが可能です。

サンプリングインターバル(秒)=1/周波数(Hz)

最後にトリガ条件設定です。トリガ条件設定では測定の開始以外にも、トリガが発生した時の画面表示方法の指定が行えます。画面表示方法では、トリガが1回発生したらストップするのか、トリガが発生するたびに測定結果を更新するのかを指定できます。

ロジックアナライザのその他情報

1. ロジックアナライザとオシロスコープの違い

オシロスコープが信号の波形などアナログ特性を観測できるのに対して、ロジックアナライザは信号からデジタルデータ(情報)を取り扱います。

一つの信号から得られる情報量はオシロスコープの方が多いですが、同時に観測できる信号は4つ(4チャンネル)程度に限られるのに対し、ロジックアナライザは同時に多数の入力信号を扱えることが特徴です。

2. ロジックアナライザを使用する上での注意点

ロジックアナライザには、使用する上でいくつか注意点があります。SUTやロジックアナライザの故障を防いだり、正しい測定結果を得るために知っておくと役に立ちます。

SUTの電源が切れていることを確認する
SUTにプローブを接続する際、測定箇所とその周辺部がプローブを介して接触する恐れがあります。SUTが通電されていると、その瞬間に大きな電流が流れて故障する場合があります。従って、常にプローブの接続が終わってからSUTに通電するよう心掛けて下さい。

用途に応じたプローブを選択する
プローブには測定する信号毎にリードを個別に接続するフライングリード・プローブ、ロジックアナライザ専用のコネクタと接続するコネクタ・プローブ、基板のフットプリントに直接接続するコネクタレス・プローブなどがあります。用途に応じてプローブを選択してください。

用途に応じて測定条件を設定する
測定したい信号の変化頻度や測定範囲に応じて、サンプリングクロックや記録時間の設定をおこないます。ロジックアナライザの性能にもよりますが、分解能やメモリ容量を踏まえて、正しい測定結果が得られるよう設定や機種の選定を行いましょう。

参考文献
https://www.softech.co.jp/mm_071107_plc.htm
https://ekuippmagazine.com/measuring/logicanalyzer/
http://literature.cdn.keysight.com/litweb/pdf/5988-7905JA.pdf

ACサーボモータ

ACサーボモータとは

ACサーボモータ

ACサーボモータ (英: AC servo motor) は上位コントーラなどからの電気指令信号を物理的な動作に変換するアクチュエータの一つです。

例えば、ロボットのアームを指定の位置に移動する動作などが挙げられます。サーボモーターのサーボは、忠実に、命令通りに動くという意味合いがあり、ACサーボモータは電気制御により、正確な回転位置、回転速度、回転力を実現することが可能です。

モータには直流モータ、交流モータ、パルスモータなどがありますが、ACサーボモータは交流モータに分類され、現在特にFA (ファクトリーオートメーション) 分野で用いられている位置・速度制御用のモータは、ほぼACサーボモータです。

ACサーボモータの使用用途

ACサーボモータはオートメーションのシステム内で、物理的な作業を要する際に使用され、特に高い精度が要求される工業製品の生産現場における用途が多いです。

例えば、自動車製造工場で稼働する産業用ロボットはACサーボモータを用いて、ロボットのアームを動かし、溶接や塗装などの作業を行っています。他にも半導体・液晶製造装置、電子部品実装、LED製造などで、高い生産性と高精度な位置決めに貢献しており、身近な場面では、鉄道駅のホームドアや医療機器の可動部分にも用いられています。

ACサーボモータの原理

ACサーボモータの原理

図1. ACサーボモータの構造

モータの回転部分であるロータ (回転子) は永久磁石が貼り付けてあり、そのロータの中心軸であるシャフトには、回転角、回転速度を検出するための検出器 (エンコーダ) がつながっています。

ロータの周りは、ステータ (固定子) と呼ばれる電磁鋼板を積層した鉄心にエナメル電線が巻き付けられたコイルで構成され、この電線に適切な電流を流すことによって、モータを駆動します。ACサーボモータの制御は、上位のサーボコントローラが制御部であるサーボアンプへ位置指令や速度指令などの指令信号を送り、この信号に基づいてサーボアンプは電力をモータへ供給、動作させます。

ACサーボモータの正確性は、自身に備え付けられた検出器が回転数、回転角を検出して、サーボアンプへとフィードバック信号を送ることで達成されます。

コントローラからの信号と、フィードバック信号の比較により、サーボアンプがモータの正確な動作を支えているわけです。図2はACサーボモータの制御構成例を示しています。

ACサーボモータの制御

図2. ACサーボモータの制御

その他のACサーボモーターの情報

1.  ACサーボモーターとステッピングモーターの使い分け

モーターは、種類も様々で用途や条件によって使い分けも必要ですが、産業用によく使われているモータとして、ACサーボモーターとステッピングモーターが挙げられます。どちらのモーターも高精度な位置決め制御が可能なモーターですが、構造や動作原理からそれぞれの特徴があります。

ステッピングモーター
ステッピングモーターは、別名パルスモーターとも呼ばれ、パルス信号に応じたステップ角度ずつ動くモーターで、パルスの数によって回転角度が決まってくる為、正確な位置決めが可能です。回転速度は、パルス信号の速度に比例します。

小型で高トルクを発生するので、加速、応答性に優れており、起動と停止を頻繁に繰り返す動作が必要な用途に適しますが、デメリットとして以下が挙げられます。

  • ステップ角は最小でも回転角で0.72°程度 (1/5,000@1回転)
  • 制御がオープンループで、脱調が起きると元の位置に戻らない

ACサーボモーター
ACサーボモーターは、エンコーダと呼ばれる回転速度と回転位置を検出するエンコーダを搭載し、モータの回転制御にフィードバックすることで、正確な位置決めを行うことが可能です。エンコーダの性能にもよりますが、1/5,000回転@1回転以上の回転分解能を持つ機種も多くあります。

サーボモーターは、低速域から高速域まで、安定したトルク特性を持っているため、比較的長い距離を高速に動かす動作が必要な用途に適しています。

2.  ACサーボモーターのブレーキ

ACサーボモータのブレーキ機構

図3. ACサーボモータのブレーキ機構

ACモーターを使用した駆動装置などの産業機器の安全性確保の為、電源遮断時や故障発生時にモーターを緊急停止させるブレーキを持つ例があります。ブレーキには、大きく分けて2種類あります。

制動用ブレーキ
1つは制動用ブレーキと呼ばれており、大きな負荷慣性エネルギーを抵抗器で熱消費させたり、回生エネルギーとしてサーボアンプを通して電気エネルギーとして電源に戻すとこによりブレーキ力を発生させます。熱消費される方式をダイナミックブレーキ、電気エネルギーとして再利用する方式を回生ブレーキと呼びますが、どちらもあくまでも減速用で保持機能はありません。

機械式ブレーキ
もう1つは機械式ブレーキで、垂直方向に上下駆動している装置で、停電などが発生した場合の落下防止に使用されます。落下防止には、停止状態で長時間その状態を保持している必要があり、そのために保持用ブレーキまたは電磁ブレーキが使用され、上記の画像では横型マシンニングセンタのような工作機械のY軸 (停電時に自然落下する軸) に電磁ブレーキ付きACサーボモータを使用する例を示しています。

無励磁作動型電磁ブレーキを使うと、通電が切れた時にブレーキがかかり、停止状態を保持してくれます。

参考文献
https://www.on-side.co.jp/pdf/yokuwakaru_ac_servo_motor.pdf
https://www.yaskawa.co.jp/product/mc/about-servo
https://www.softech.co.jp/mm_060201_plc.htm
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/teruyo/vol10/

 

画像センサ

画像センサーとは

画像センサー

画像センサーとは、光の情報を電気信号に変える部品です。

イメージセンサー (英: Image sensor) とも呼ばれています。デジタルカメラや撮影機材などに搭載されている、CCD (Charge Coupled Device、電子結合素子) やCMOS (Complementary Metal Oxide Semiconductor、相補型金属酸化膜半導体) が該当します。

画像センサーは、機械にとっての「目」です。カメラで使われる画像センサーの画素数は、画像センサーの総数を指します。それぞれのセンサーは光の強さを検知し、光の強さは数値化されて、電気信号として処理されます。

画像センサーの使用用途

画像センサーは主に、大量生産される製品の生産ラインで使用されています。例えば自動車部品、食品や医療品、電子デバイス、液晶や半導体、樹脂製品の生産ラインにて有用です。

画像センサーの役割は、人の目による目視検査に代わるシステムになることです。例えば、数量のカウントや欠品をチェックする有無検査や、傷や欠陥をチェックする外観検査に応用されています。

また、高度な画像解析技術との組み合わせにより、文字判別 (OCR: Optical Character Recognition) や3次元測定が実現しています。画像センサーは車の自動運転システムにも使われており、今後も必須のデバイスです。

画像センサーの原理

画像センサーの中心となるのが、受光素子 (フォトダイオード) です。この半導体は光の強弱を感じ、電荷として蓄えることが可能です。受光素子に光が当たると、光の強さに比例した量の電子が生じます。

半導体としての性質を利用して電子を蓄積させ、その量を数値化するのが画像センサーの基本原理です。画像センサーでは、受光素子に蓄えられた電子をどのように信号化するかによって、異なる原理の装置が存在します。主な装置はCCDとCMOSです。

CCDでは、電荷をCCD転送路によって電気信号へと変換します。この転送路では、素子から素子へとバケツリレーのように電荷が移動します。CMOSでは受光素子1つ1つに増幅回路 (アンプ) が組まれているため、複数の受光素子を経由することなく電荷を転送することが可能です。

CMOSは装置1つで駆動するので、電力消費が低く、処理速度が速いことがメリットです。また、CCDより製造コストが低いことも注目されています。

画像センサーのその他情報

1. 画像センサーのサイズ

画像センサーには、複数のサイズがあります。通常、センサーサイズが大きくなるにつれて画質は良くなります。理由としては、センサーのサイズが大きいほど、より多く集光することができるためです。

写せる光の範囲、すなわちダイナミックレンジが広がることによって白とびや黒つぶれが少なくなる画像を撮像することができます。また、同じ画素数の画像センサーでもサイズが大きいほど画質が良くなるのは、1画素 (1ピクセル) あたりの受光面積が大きいので、ノイズ低減効果もあるからです。

2. 画像センサーにおける照明の役割

FA用の画像センサーを補間する機器として、照明があります。画像センサーが外乱光の影響を受けずに安定的にワークを検出するために、照明を必要とします。照明の方式として代表的なものは、以下の3つです。

正反射方式
ワークの斜め上から照射し、ワークの表面で反射した像を撮像する方式です。金属板に凹凸があるワークなどで、平面部分と凹凸部分のコントラストをとりやすくなります。

透過方式
ワークの裏から照射し、表面からの像を浮き上がらせて撮像する方式です。複雑な形状のワークの輪郭をより正確に撮像できます。

同軸落射方式
ワークに照射する照明光軸と、カメラの光軸を同軸にする方式です。ワーク全体を均等に照射でき、影の発生を少なく抑えることができます。

3. 画像センサーの価格

画像センサーの価格は、「視野」と「精度」で決まります。

視野
通常画像センサーは画素数が大きいほど、より細かいものを検出することができます。画素数が大きくなると、センサーのサイズも大きくなり価格が上がります。

また、データの転送に時間がかかるため処理時間も大きくなりがちです。運用するシステムのタクトに合わせたセンサーを選定することが重要です。

精度
より高画素な画像センサーのほうが高くなります。また、検出する物体によってモノクロセンサー、カラーセンサーが必要になりますが、カラーカメラのほうが価格が高くなります。

 参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visionbasics/
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/04.html
https://global.canon/ja/technology/s_labo/light/003/05.html
https://www.photografan.com/basic-knowledge/compare-camera-sensor-sizes/

抵抗計

抵抗計とは

抵抗計

抵抗計とは、電気回路の抵抗値を測定するための計測器具です。

電子工学や電気作業において欠かせない測定器具の1つで、さまざまな精度やレンジの製品が存在します。オームメーター (英: ohmmeter) とも呼ばれます。オームの法則を利用して抵抗値を測定するためです。

一般的な抵抗計の他にも複数の種類があり、mΩ以下の抵抗値に特化したものを低抵抗計 (ミリオームメータ) 、絶縁体の抵抗値を調べるものを絶縁抵抗計、接地された導体と大地間の抵抗値を測定する接地抵抗計と呼びます。回路などの抵抗値を調べる際に簡便なテスターを用いることもありますが、精度の高い抵抗計が開発や製造の現場で求められます。

抵抗計の使用用途

抵抗計は、電気回路の抵抗値測定に使用される計測器具です。以下は抵抗計の使用用途一例です。

1. 故障箇所の特定

電気回路の故障箇所特定に役立ちます。電気回路の各部位の抵抗値を測定し、正常な範囲から外れている箇所を特定することが可能です。このような、電気回路の保守・保安に欠かせない測定機器です。

2. 回路設計・電気機器の開発

回路の設計においても使用されます。回路を設計する際には素子の正確な抵抗値測定が必要です。抵抗計の中には基本精度0.02%、分解能1 µΩといった高精度製品も存在し、このような抵抗計を用いて電子機器設計や製造・品質管理などが行います。

また、電気機器の開発においても重要な役割を果たします。製品としての電気機器も正確な抵抗値が必要であり、抵抗計で電気機器内の抵抗値を測定して開発します。

3. 研究開発・教育

基礎素材の研究開発の分野でも使用されます。抵抗計を使用することで、材料や回路の特性を調べます。教育用途にも使用され、電気工学や電子工学の学習で抵抗計を使用して回路の測定を行います。これにより、学生は回路の特性や抵抗値の測定方法を理解します。

抵抗計の原理

抵抗計は、オームの法則を使用して抵抗を測定します。オームの法則とは、電流と電圧の比である抵抗値が一定であることを表す法則です。この法則により、回路内の抵抗値を求めることができます。

抵抗計の内部には、電源と測定回路が組み込まれています。測定用電源は一般的に電池やACアダプタから供給されます。また、測定回路には測定対象の回路電流を検出するアンペアメーターと、回路の電圧を測定するボルトメーターが組み込まれています。

精密な抵抗計の多くは接触式の4探針法で測定します。4本のうちの2本は対象に一定電流を流し、他方の2本がボルトメーターとして電圧を測定します。一定電流が流れるときに生じる電圧を測定することで、オームの法則から抵抗値が求められます。

簡便なテスターでは安価で構造が簡単な2端子法が用いられます。4端子法は測定リードの抵抗や接触抵抗の影響を受けないため、2端子法に比べて正確に抵抗値を測定可能です。

抵抗計の種類

抵抗計は用途などに応じて、さまざまな種類が販売されています。以下は抵抗計の種類一例です。

1. アナログ式抵抗計

アナログ式抵抗計は、アナログ指針で抵抗値を示す抵抗計です。回路に流れる電流によって針が振動し、抵抗値を示します。比較的安価な点が特徴ですが、測定対象回路の抵抗範囲に応じて適切なレンジを選択して使用する必要があります。

2. デジタル式抵抗計

デジタル式抵抗計は、7セグメント表示で抵抗値を示す抵抗計です。高精度な測定が可能であり、レンジも自動的に切り替える機能が備わっていることが多いです。電圧測定機能や電流測定機能を持つテスターなどもデジタル抵抗計の一部です。

3. クランプ式抵抗計

クランプを挟んで回路周囲に磁場を発生させて抵抗値を測定する抵抗計です。測定対象の回路に接触せずに測定できる点がメリットです。接地抵抗計として多く使用されます。

4. 絶縁抵抗計

絶縁状態を診断するための抵抗計です。一端子を接地させ、高電圧を印可して漏れる電流を測定することで絶縁抵抗を測定します。系統の電圧に合わせてDC1,000V程度の高電圧を印可できる絶縁抵抗計も販売されています。生産現場の保守に広く使用される抵抗計です。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=33
https://www.akaneohm.com/column/lowmeasure/
https://www.hioki.co.jp/jp/support/faq/detail/?dbid=1682

磁気センサー

磁気センサとは

磁気センサー

磁気センサーとは、磁気を検知するセンサーのことです。

永久磁石・電磁石から生じる磁気や地磁気を検出する際に用いられます。磁気センサーでは磁気のベクトル(大きさや向き)を検知できます。

磁気センサの使用用途

磁気センサーは近年では、民生品から産業機器まで幅広く使用されます。
代表例はスマートフォンです。地図アプリや方角アプリの方向検知などに使用されます。

また、産業・研究分野では磁気を発生させる物質の検査・検知に使用されることが多いです。以下に検出対象例を列挙します。

  • 地球から発生される地磁気検知
  • 岩盤内における鉱物の磁気検知
  • 筋肉や脳から発生される生体の磁気検知
  • 紙幣の偽造を防ぐための磁性インク検知
  • 構造物の非破壊検査に使用される磁気検知
  • 電流が生み出す磁束検知

上記を検出することで、以下の製品に応用することが可能です。

磁気センサーの原理

磁気センサーは磁束によるローレンツ力を電気的信号に変換して磁気のベクトル (大きさ・方向) を検知します。
磁気センサーにも種類がありますが、ホールエレメントを用いたホールセンサーと磁気抵抗エレメント (MR) を用いた磁気抵抗エレメントセンサーに大別可能です。

ホールセンサー

ホールセンサーはホールエレメントと垂直磁束の間に生じるホール効果を利用して磁気ベクトルを検知します。ホール効果とは磁束に対して直角の電流が生じたとき、磁束と電流に対して90度の方向に起電力が生まれる現象です。

MRセンサー

MRセンサーは磁気を感じ取ると抵抗が変化する磁気抵抗エレメントを利用して磁気ベクトルを検知します。
磁気抵抗エレメントには半導体磁気抵抗エレメント・異性磁気抵抗エレメント・巨大磁気抵抗エレメント・トンネル磁気抵抗エレメントの4種類があります。

磁気センサーのその他情報

1. 磁気センサーとコンパス

コンパスは方位を知るための道具です。古くから永久磁石が使用されてきましたが、近年では永久磁石の代わりに磁気センサーを用いて方位を算出する電子コンパスが普及しています。

電子コンパスはスマートフォンにも搭載されています。スマートフォン内での役割は、方角アプリによる方角検知や地図アプリでのナビゲーションなどです。

地図アプリの多くはGPSを用いますが、GPSの位置検出精度は数メートル単位です。そのため、ナビゲーションとして使うには十分ではありません。また、電波状態の悪いエリアではGPS信号が受け取れない場合もあります。

これらの問題を解決するために電子コンパスと組み合わせて方位や進行方向を検出し、GPSの誤差を補正しています。また、常に進行方向が上を向くように地図表示を調整することも可能です。

なお、電子コンパスは微弱な地磁気から方位を算出するため、スピーカーなどの磁性パーツから受ける影響を補正する技術も使用されています。

2. 磁気センサーと自動車

自動車の安全性や快適性を高める制御システムを実現するために様々なセンサーが搭載されていますが、磁気センサーは信頼性やコスト面で有利です。主に以下の用途で使用されます。

  • 車速検知
  • エンジン回転速度の制御
  • ABS (Anti-lock Breaking System)
  • パワーステアリング
  • カーナビゲーション

近年は自動運転技術が注目されており、AI技術を活用した実現に向けて技術開発が進んでいます。まだまだ多くの課題がありますが、これらを解決する方法として磁気マーカーシステムが注目されています。

磁気マーカーシステムとは、完全自律型の自動運転とは異なり誘導型のシステムです。道路に設置した磁気マーカーを車両の磁気センサーで検出して、現在地を特定し進路を制御する運転支援システムを指します。路線バスでの自動運転実現に向けて実証試験が開始されています。

参考文献
https://www.akm.com/jp/ja/technology/technical-tutorial/basic-knowledge-magnetic-sensor/magnetic-sensor/
https://go.alps.jp/l/506151/2018-09-03/sx9dz
https://www.akm.com/jp/ja/products/electronic-compass/technical-resource/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1805/30/news038.html
https://jidounten-lab.com/u_autonomous-udo
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/84/9/84_769/_pdf/-char/ja

TOFカメラ

TOFカメラとは

TOF (Time-of-flight) カメラとは、光の飛行時間を測定することで対象物との距離を可視化するカメラです。

対象物との距離の計測に使用するのは主に赤外光です。照射した赤外光が物体から戻ってくるまでの時間を測定し、この時間から距離を算出しています。

通常のカメラでは対象物の二次元的な情報しか得られないのに対し、TOFカメラで撮影した画像には奥行きの情報が含まれているため、三次元的な情報を得ることが可能です。カメラのように画像で情報を取得する方法を「3D-TOF」、単純に距離だけを知る方法を「1D-TOF」と呼びます。

TOFカメラの使用用途

TOFカメラは以下のように産業・医療など幅広い分野で応用されています。

1. 人物・形状認識

TOFカメラは、人物や形状認識として利用されています。病院内にいる患者の動きをTOFカメラで認識し、見守る時に役立てられます。また、店舗に設置することで、人の動きを追跡し、人数をカウントする際にも活用可能です。

その他、TOFカメラは車の自動運転にも使われます。自動車が歩行者に追突しないように、TOFカメラで歩行者を検出することができます。

2. 物体検出・安全監視

工場等の生産現場では、物体検出や安全監視の目的でTOFカメラが利用されています。産業用ロボットや運搬機器に取り付けることで、物体の侵入を検知が可能です。

また、プレス機やロボット等の危険源にTOFカメラを設置すれば、接近しているのが搬送されている物体なのか、人物なのかの識別ができるようになります。農作物の観測として活用する場合は、サイズや形状を測定することで収穫時期の判断に役立てられます。

3. スマートフォンへの活用

TOF方式距離画像センサーのスマートフォンへの活用が進んでいます。TOF方式距離画像センサーをスマートフォンに搭載することで、プレイヤーの身体的動作を高精度に捉え、ゲーム内に反映させることが可能です。VRやARでの活用も期待されています。

また、ECサイト上で何か物を売買するときに、瞬時に物の寸法を測って表示することが可能になります。その他、TOFカメラはスマートフォンログイン時の顔認証機能にも使用されています。

顔の形状をTOFカメラで識別することにより、顔認証機能を実現します。一般的なカメラとは異なり、持ち主の顔写真を使っても単なる平面と認識するため、TOFカメラを搭載すればなりすましも防止可能です。

TOFカメラの原理

TOFカメラの原理

図1. TOFカメラの原理

TOFカメラカメラは主にレンズ、光を検出する検出器とこれに同期する光源によって構成されています。搭載された光源から照射された参照光を対象物で反射させ、検出器に到達するまでの時間 (飛行時間、英: Time of Flight) を測定しています。

光の速度は約30万km/sで不変の定数です。したがって、対象粒の距離は両者の積の半分であること分かります。

TOFカメラの種類

飛行時間の計測手法は大別して、直接TOF法と間接TOF法の2種類があります。

1. 直接TOF法

直接TOF法は、参照光としてパルス光を照射し、反射光のパルスを検出します。照射から検出までの時間を直接計測することで、飛行時間を計測する方法です。

参照光の照射と同時に、測定用回路の内部で既知の幅と周期を持った測定用パルス電流を発生させます。測定用のパルス電流と反射光により、検出器でパルス電流が発生する時間との差から飛行時間の測定が可能です。

2. 間接TOF法

間接TOF法は、参照光との位相のずれから距離を求める方法です。光源から出る連続波の振幅を変調して周波数が既知の正弦波を生成します。

これを参照光として対象物に照射し、対象物からの反射光の位相のずれを検出します。位相のずれは正弦波の周波数を用いて時間差に変換することが可能です。これにより、飛行時間を算出することができます。

具体的には、参照光の1周期に対して反射光の強度を4回測定します。これを離散フーリエ変換することによって、参照光との位相のずれを求めることができます。

TOFカメラのその他情報

TOFカメラのメリット

TOF方式のメリットとしては、小型で、CPU負荷が少なく、暗い所で利用することが可能ということが挙げられます。それぞれのメリットを以下で説明します。

1. 暗所でも利用できる
TOFカメラは、可視光ではなく赤外光を利用しているため、暗下で使用することができるのがメリットです。 周囲に光源が全く無い状況下でも物体の立体的情報を得ることができます。

2. 小型でCPU負荷が少ない
TOFカメラは、シンプルな装置構成をしているので、ストラクチャードライトの方式と比べて、小型化が可能になっています。また、CPU負荷が少ないということも魅力的です。

製造現場で使用される生産装置にTOF方式のセンサーを組み込むことを考えた場合、CPU負荷が少なければ遅延が生じるリスクを減らすことができ、安定的な生産システムの構築を行うことが可能になります

3. 低価格な製品もある
TOF方式のカメラは高価な製品だけではなく、スペックの違いによっては低価格な製品もあります。スペックによりTOFカメラの価格は大きく異なるため、購入前には必要なスペックと照らし合わせて検討することをお勧めします。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/itej/70/11/70_880/_pdf
https://news.mynavi.jp/article/20200320-smartphone_word/
https://www.inrevium.com/pickup/tofcamera/#02
https://emb.macnica.co.jp/articles/5744/

制御盤

制御盤とは

制御盤

制御盤とは、産業用の生産ラインや機械設備を制御するための電気機器が集約された箱です。

一般的に金属製の堅牢な箱形状で製作され、錆、腐食、塩害などを防止する目的から、焼付塗装や紛体塗装が施されます。

制御盤の使用用途

制御盤は産業においてはあらゆる場面で使用されます。以下は制御盤の使用用途です。

  • 工場排水用ポンプの運転制御用
  • 上水道ポンプの運転制御用
  • 製品搬送設備の制御・操作用
  • エレベータの運転制御用
  • 製品加工設備の運転操作用

制御盤は生産ラインや機械設備の制御を担います。機械の制御機器を外環境から保護する目的で制御盤キャビネットに収納された一式が制御盤です。

日常生活では、上水・下水用ポンプなどのインフラ装置制御用の制御盤を街中で目にすることがあります。

制御盤の原理

制御盤は制御盤キャビネット、保護・駆動装置、制御装置などで構成されます。

1. 制御盤キャビネット

制御盤キャビネットは制御盤の外箱です。主に鉄製で、前面はハンドル付きの扉が取り付けられます。下部に接地用端子が付属しており、接地極と電線で接続されて接地されます。また、盤面扉には表示灯や表示計器などが取り付けられ、制御する機械設備の状態を表示している場合があります。

2. 保護・駆動装置

保護・駆動装置は電動機械を動作させる動力部品です。遮断器漏電リレーなどは保護装置で、電気回路で短絡・地絡事故などが発生した際に警報を発報したり安全に遮断したりします。電磁開閉器インバーターサーボアンプなどは駆動装置で、電動機械に電力を供給して駆動させます。

3. 制御装置

制御装置は電動機械などを制御する計装部品です。シーケンサリレーが該当します。計器からの情報を基に駆動装置へ指令を与え、機械設備をコントロールします。

制御盤のその他情報

1. 制御盤、配電盤、分電盤の違い

制御盤と配電盤分電盤は使われる筐体が同じでも、使用用途が異なります。ただし、それぞれに遮断器などの保護装置が使用され、短絡事故などの上位への波及を防止しています。

  • 配電盤
    電力会社などから送電される電源を降圧させて配り分ける装置です。キュービクルなどが該当します。
  • 分電盤
    配電盤から受電した電力をさらに分岐させて各機器へ分配させる装置です。一般家庭に配置されるブレーカが並ぶボックスは分電盤に当たります。また、制御盤は分電盤から電力を受電します。
  • 制御盤
    分電盤から受電した電力をモーターなどの産業機器へ分配する役割を持つ装置です。PLCなどの制御機器で運転状態を監視しつつ機械設備の運転を制御します。

2. 制御盤の設計

制御盤の設計は、電気設備を取り扱った経験が必要となります。低圧機器制御盤は多くの場合、主幹となるメイン遮断器を左上に配置し、右下に向かうに従って計装関係の部品を配置していきます。ただし、インバータやステッピングモーター用アンプなどのノイズを発生する装置はできる限り制御信号配線と遠ざけます。ノイズによる装置の誤作動を防ぐためです。

制御盤の負荷となる機器をあらかじめ洗い出し、それに応じて部品点数を決定します。その部品点数を基に人が組み立てる際に無理が出ないように配置していきます。メンテナンススペースとして、人の指が入る幅を確実に開けて部品配置の設計をします。

盤内の配線はカッチングダクトによって整理されて収納されます。ダクト内配線の占有率をあらかじめ決めておき、その占有率を超えないようにダクト幅を増減させます。制御盤下部には外部端子台が並びます。外部から敷設され、導入される配線を盤内配線と接続するための端子です。端子台では外部配線と内部配線を、ボルトやねじで接続します。大型のボルトで外部配線と接続される場合は、緩みを非接触で確認できるように合いマークを打っておきます。

制御盤の筐体はキャビネットボックスメーカーにより規格品が販売されており、規格品を使用できれば安価に済ませることが可能です。特殊な寸法の制御盤を設計した場合は板金加工で製作する必要があり、想定以上に高価となってしまう恐れがあります。

参考文献
http://www.jsia.or.jp/mamechishiki/seigyoban/
http://www.jsia.or.jp/
https://t-denso.com/archives/429