低周波発振器

低周波発振器とは

低周波発振器 (英: Low frequency oscillator) とは、比較的低い周波数の信号を発生させる装置のことです。

低周波という言葉自体の定義は使われる分野によって異なりますが、販売されている機器としての低周波発振器の仕様はおおよそ数Hz~数百kHzの範囲です。発振回路を用いることにより特定の周波数の交流信号を生成することが可能で、一般には周波数信号を用いた試験における基準信号を生成する役割があります。

発振器で作ることのできるおおよそ20Hz~20kHzの信号は可聴域なので、増幅することで音として人間が聞き取ることができます。

低周波発振器の使用用途

低周波発振器の使用用途として最も多いのが、オーディオ機器の周波数特性を解析する時です。周波数信号を用いた通信用の電子機器では高周波 (RF) が用いられる場合がほとんどであり、身近な低周波は音波になるため、音響機器が低周波数信号を用いる回路として主流と言えます。

例えば、オーディオアンプをDUT (Device under test: 被試験機器) として、入力信号を低周波発振器によって生成します。出力信号をFFTアナライザなどで解析することによって、対象のアンプの特性を解析することが可能です。

低周波発振器の原理

低周波発振器の原理は、発振回路に基づく安定した周波数信号の生成技術にあります。通常よく知られているLC共振回路ベースのハートレー型やコルピッツ型の発振回路では波長の制約で低周波の波形の実現が困難なため、RC型 (ないしはCR型) の発振回路が用いられているのが特徴です。

RC型発振器にはウィーンブリッジ回路やブリッジドT型回路、状態変数型回路などがあり、いずれもアンプの帰還量を調節することで発振を得ることが可能です。中でもウィーンブリッジ回路はよく知られており、回路にアンプが1つだけという簡便さもあり、広く利用されています。

一方で、状態変数型ではより低歪かつ、2相出力が得られます。周波数の制御には可変抵抗器やバリキャップと呼ばれる可変容量コンデンサが用いられることがあります。また、キャパシタ固定抵抗を用いたステップ可変も周波数決定の手法の一例です。

RC発振回路だけでは、振幅の一定した正弦波を得ることはできません。そのため、振幅を制御する装置が通常は必要です。電球やサーミスタなどの印加電圧により抵抗値が変化する素子を用いて帰還量を調整する方法や、出力の電圧を検知して帰還量を調節する電子回路を組む方法などがあります。

低周波発振器のその他情報

1. 自作電子回路キットやPCソフト

低周波発振器は、比較的身近な電子回路ということもあり、得られた機器で例えば家庭などで用いるブザーなども作成可能です。そのため、自作用の電子回路キットや電子回路を学習する学生向けの教材としても、幅広く扱われています。

また、WindowsPC上で低周波の音源を生成可能なフリーソフト (WaveGeneなど) も広く出回っています。

2. 低周波発振器の精度とキャリブレーション

一般にRC型発振器の周波数精度は、水晶 (クォーツ) やセラミックを用いた発振器と比較してそれほど良くはありません。その理由は抵抗や容量の値にばらつきを有することと、そのRC値が温度によって変化してしまうためです。

ただし、RC型発振器は水晶 (クオーツ) などに比べ比較的安価で簡便に構成できるため、広く用いられており、精度を改善させるための工夫が施されています。その代表的な改善手法が、キャリブレーションと呼ばれる合わせこみです。そのキャリブレーションには、デジタル回路を活用する手法が広く用いられており、特に製品の出荷前には周波数の値はキャリブレーションにて調整されています。

デジタル回路を活用するキャリブレーションは、内部に有するクロックと比較して補正をかける手法が用いられており、例えばメモリアドレスのある値をキャリブレーション用途に使うのが一般的です。これはデジタル回路の動作的にOSCCALと呼ばれるレジスタの値を変化させながら、所望の発振周波数になるようなレジスタ値を、自動的に選択できます。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/3-05-01.html

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