パワーインダクタ

パワーインダクタとはパワーインダクタ

パワーインダクタとは、インダクタの中でも電源回路に用いられるコイルの素子です。

パワーチョークとも呼ばれます。基本の構造は、積層技術で巻き線を形成したもの、棒状のコアに巻き線を施したもの、ドラム型のコアに巻き線を巻き付けたものの3種類です。

パワーインダクタを含むインダクタは、直流電流を通しますが、交流電流を通りにくくする性質を持っています。この性質を利用し、電圧変換のための回路の高周波ノイズ除去に利用されています。

交流電流の通りにくさを表すのがインピーダンスであり、以下のインダクタのインピーダンスの公式からもこの性質を容易に説明できることがわかります。

インダクタのインピーダンス[Ω]ZL=jωL 
(L: インダクタンス[H] ω: 角周波数[rad/s])

パワーインダクタの使用用途

パワーインダクタは電源回路の電圧供給の安定化のため、家電製品、通信機器、輸送機器など幅広い分野で使用されています。具体的には、スマートフォンや自動車などです。

直流電源の電圧を制御することは、あらゆる電子機器にとって非常に重要です。理由として、電子デバイスには正常動作を保証できる電源電圧範囲が存在するため、各部品に適切な電圧を供給できるかどうかが、安定した回路動作や機器の寿命に影響を及ぼすことが挙げられます。

DC-DCコンバータは電圧を変換する回路であり、安定電圧の供給はパワーインダクタの性能に依存します。コンバータ回路には、電圧を下げる降圧型と上げる昇圧型が存在します。どちらも部品として、スイッチング素子とダイオードとパワーインダクタを含んでいます。

パワーインダクタの原理

インダクタに交流電流が流れると、電磁誘導によりその電流の時間変化率に比例する誘導起電力が生じます。

 誘導起電力[V]e = -L* (dI/dt)
(L: インダクタンス[H] I: 電流[A] t: 時間[sec])

誘導起電力の向きは元の磁束の変化を妨げる方向であるため (レンツの法則) 、それを明示的に示すためにマイナスの符号がついています。電流変化を打ち消す方向の誘導起電力が発生し、交流電流は流れにくくなります。

誘導起電力に関わる比例定数がインダクタンスです (単位はヘンリー[H]) 。電気エネルギーを磁気エネルギーへと変換する能力として表されます。

インダクタンスを大きくするためには、「コイルの断面積を大きくする」「巻き数を多くする」「コアを入れ透磁率を大きくする」といった方法があります。コンバータでの使用ではスイッチング周波数に合わせてインダクタンスが決定されます。

他の用途向けのインダクタと比較するとパワーインダクタは、部品の外寸が大きく、インダクタンスも大きいという特徴があり、より直流電圧の安定供給に適した特性が得られるよう設計されています。

パワーインダクタの選び方

パワーインダクタを選ぶ際は、最初にインダクタンス値とインダクタに流れる許容電流値を考えます。そしてこれらに加え、形状やインダクタンスの周波数特性などを含めて、最適な部品を見極める必要があります。設計対象のDC-DCコンバータにどの程度の効率、出力特性、ノイズ耐性が必要かで判断します。

パワーインダクタでは直流重畳許容電流と温度上昇許容電流が規定されます。インダクタについては、

  • インダクタに流れる直流電流が大きくなるとインダクタンスが低下する
  • 電流が大きくなると巻き線の抵抗に起因するジュール熱が増大する

などの特性があるため、インダクタンス値だけでなく許容電流値も重要です。メーカー各社が幅広い用途向けに多種多様なインダクタを製造しています。たとえば、インダクタンスの大きい部品はDC損失が小さいため効率が高いですが、部品の外寸が大きく、より多くの熱を発生するといったトレードオフがあります。こういった点にも十分注意が必要です。

設計対象の各回路群の直流電源の電圧値が常時一定値を維持することが理想ですが、現実に実現できることはまずありません。しかし、トラブルを未然に防ぐためにも、特性の優れたデバイスを選定することが重要です。

参考文献

https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/power-inductors-guide

https://product.tdk.com/info/ja/products/inductor/inductor/smd/technote/power/apn-power- inductor.html

https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b5

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