電子負荷

電子負荷とは

電子負荷とは、被試験装置に接続され、負荷抵抗として機能する装置です。

従来は抵抗器を接続して被試験装置の負荷としていましたが、抵抗値を変更する都度抵抗器を差し替える作業が必要でした。電子負荷のメリットは、負荷の大きさを任意に設定できることです。

外部コントローラを利用すると、高速で負荷の設定を切り替えることも可能です。また、定電流モードとして一定の電流を被試験装置から流す機能や定電圧モードとして被試験装置の出力電圧を一定に維持する機能などがあり、様々な測定や試験に対応できます。

電子負荷の使用用途

電子負荷は、電子回路や電源装置、電池などの性能評価試験及び製品の検査に用いられます。具体的には、以下のような用途があります。

  • 電子回路における負荷のドライブ能力
  • 電源の負荷特性試験
  • 電池の充電/放電試験

また、外部コントローラによる制御が可能なため、負荷条件を目的に合わせて変更すること等、試験の自動化にも対応します。

電子負荷の機能

電子負荷は、バイポーラトランジスタFETなどで構成した増幅器を内蔵していて、そこに引き込む電流 (負荷電流) を制御するものです。特徴的な機能は以下に記します。

1. 電力の消費・変換方式

電力の消費・変換方式は、電子負荷のタイプによって異なります。

熱変換タイプの電子負荷
電子負荷内で消費される電力は、増幅器を構成する半導体素子により熱に変換されています。これは見掛け上抵抗器に電流を流した場合と同じ効果ですが、半導体素子が発熱するため、その放熱機構が必要です。

電力回生タイプの電子負荷
電子負荷内に入力された電力を、インバーターにより交流電流へと変換するものです。変換された電流は配電線網に再び戻されるので、消費電力は小さく、放熱も比較的簡単な構造で済みます。しかし、回生した電力エネルギーを電力系統に戻していることから、系統連係動作が可能な環境に限られます。

2. 電子負荷の動作モード

一般的に電子負荷は以下に示す4つのモードを備えていて、試験の目的により最適なモードを選択します。

定電流 (Constant Current) モード
このモードでは、電子負荷の入力電圧に関係なく、設定した定電流が流れるように動作します。被試験装置の出力電圧が変動した場合でも負荷電流が一定になるように電子負荷が対応しています。

定抵抗 (Constant Resister) モード
このモードでは固定抵抗のように設定された抵抗値を一定に保ちます。電源投入時直後の過渡期を除き、設定した抵抗値を維持することが特徴です。入力電圧に対して負荷電流が直線的に変化するため、電池やバッテリーの容量試験、電子機器の起動テストなどに使用されています。

定電圧 (Constant Voltage) モード
このモードでは被試験装置の出力電圧を一定値に維持します。被試験装置の出力電圧が変動すると、電子負荷は負荷電流を変化させて、出力電圧を一定に保ちます。その結果、負荷電流は変動するものの、被試験装置の出力電圧は一定になります。

燃料電池、バッテリー充電器などのテスト用として使用される場合が多いです。バッテリー充電器のテストでは、複雑なバッテリーの電圧挙動を電子負荷で再現して、試験することもできます。

定電力 (Constant Power) モード
このモードでは、電子負荷は設定された電力を消費するように働きます。まず、被試験装置の電圧を計測し、その電圧と設定された電力値から電流値を算出し、その電流を引き込みます。

電子負荷の選び方

電源装置やバッテリーなどの電力源の開発や生産において、各装置の性能試験を行う際に電子負荷は欠かせません。電子負荷装置を選定するときの注意事項を以下に記します。

1. 電力容量と耐電圧

被試験装置が電源であれば、その最大出力電力までカバーする電力容量を備えていることが原則です。また、耐電圧の規格は実際に印加される可能性のある電圧以上であることも必須条件となります。

2. 電子負荷装置が対応できる最小電圧

電子負荷は一般的に低い電圧領域での使用は困難で、電子負荷が対応できる最小電圧を、最低動作電圧と呼びます。前述の通り、電子負荷はバイポーラトランジスタやFETなどで構成した増幅器に流す電流を制御するものです。従って、その増幅器が動作する電圧を下回る場合は電子負荷が正しく動作しません。

その結果、ある電圧を境にして、それより低い電圧では電流が引き込めなくなります。即ち、電子負荷両端の電圧が最低動作電圧より低いと、動作しなくなります。

3. 周囲の温度や時間

電子負荷には、最大負荷を保証する周囲温度のスペックに注意が必要です。特に、熱変換式電子負荷では、自身の発熱により周囲温度が上昇するため、高温下での使用に制限が生じることを考慮しなければなりません。

また、最大負荷を維持できる時間が制限されている場合もあるため、事前にカタログやスペックシートの記載内容を確認しておく必要があります。

参考文献
https://www.keisoku.co.jp/pw/support/oyakudachi/dc-load/dcl-08/
https://www.toyo.co.jp/material/casestudy/detail/id=30425

デジタルマルチメーター

デジタルマルチメーターとは

デジタルマルチメーター

デジタルマルチメーターは、一般に直流電圧・交流電圧・直流電流・抵抗値など基本的な電気特性を測定する装置です。旧来の電圧計電流計及び抵抗計はメーター指針が測定値を指示するアナログ表示であったのに対し、複数の測定機能を備えかつ3桁から8桁の数値表示であることからデジタルマルチメーターと呼ばれます。また、静電用容量や交流周波数、温度など測定機能を拡張した機種も販売されています。

尚、小型軽量で、工事現場等での使用に適したコンパクトな機種は、デジタルテスターとも言われます。表示桁数は4桁程度、測定精度は直流電圧の場合0.05~0.1%、交流電圧では0.5~1%程度が一般的な性能です。実験室での精密な測定には精度が不十分ですが、屋外へ持ち出す用途では使いやすいものです。そのような使い方を想定して、落下にも耐えるよう頑丈な構造を持った機種も販売されています。

デジタルマルチメーターの使用用途

デジタルマルチメーターは、実験室における測定、工場の生産ラインにおける製品の電気調整、電気設備の工事や保守点検など、様々な場面で利用されています。

受電設備や動力制御盤に組み込まれていることが多いです。このような場合、電流・電圧・抵抗値といった基本的なパラメーターに加え、静電容量・周波数・温度などを測定する機能が組み込まれているものあります。

また、上記のように専門的な用途だけでなく、一般家庭での電子工作などに使える安価なものも販売されています。

デジタルマルチメーターの原理

デジタルマルチメーターの中枢は高精度/高分解能のA/Dコンバータと、そのデジタル出力を基に測定値を算出するプロセッサから構成されます。

1. 直流電圧測定

2つのプローブ間の電圧を増幅(微小電圧の場合)もしくは減衰(高電圧の場合)するアンプやアッテネータを通してダイナミックレンジ内の電圧に変換し、A/Dコンバータの入力電圧とします。A/Dコンバータはその入力電圧に対応するデジタル値を出力し、プロセッサはこのデジタル値とアンプのゲインやアッテネータの減衰率を基にプローブ間の電圧を算出して、表示器に直流電圧値を表示します。

2. 交流電圧測定

整流回路を通して交流電圧を直流電圧に変換してから、A/Dコンバータに入力し、以降直流電圧と同様の処理を経て、表示器に交流電圧値を表示します。

3. 抵抗測定

デジタルマルチメーターに内蔵した定電流電源から2本のプローブを介して、被測定抵抗に一定の電流を流します。この時プローブの両端に現れる直流電圧をA/Dコンバータに入力することで被測定抵抗の両端電圧が測定できます。この電圧値と定電流電源の電流値から、プロセッサが被測定抵抗の抵抗値を算出します。

4. 電流測定

直流電流の測定には、デジタルマルチメーター内の微小抵抗器に流れる被測定電流によって発生する微小抵抗器両端の電圧をA/Dコンバータに入力します。このA/Dコンバータの出力値からプロセッサで電流値を算出し、表示器にその電流値を表示します。交流電流の場合は、微小抵抗器両端の交流電圧を整流回路で直流電圧に変換し、A/Dコンバータに入力します。

5. A/Dコンバータ

デジタルマルチメーターのA/Dコンバータは非常に高精度(高分解能)、例えば7桁の表示には24bit以上、が求められるので、一般に二重積分型が採用されます。その為変換に要する時間は比較的長く、1秒間に数回測定する事が精一杯です。但し表示桁数を減らしてA/Dコンバータの変換時間を短縮することで、測定時間を短縮させることも可能です。

デジタルマルチメーターの使い方

デジタルマルチメーターの使い方は以下の通りです。

1. 電圧・電流測定

デジタルマルチメータでは、Hi端子とLo端子の2つの入力端子間に被測定系を接続します。直流電圧測定の際、Hi端子は高電圧側、Lo端子は定電圧側に接続すると、Lo端子側の電位を基準にHi端子側の電圧を表示します。直流電流測定の際、Hi端子から被測定電流が流れ込みLo端子から流れ出す場合に電流値はプラスと表示され、逆方向の場合はマイナスと表示されます。交流電圧、電流や抵抗の測定では極性を考慮する必要はありません。

2. 測定レンジの設定

最大入力定格以内の電圧、電流であれば、Autoレンジ機能により自動的に最適なレンジに切り替わるので、一般的な使い方では最適なレンジを探す作業は不要ですが、生産ラインでの調整時など測定時間の短縮が求められる場合は、予想される測定値を基に手動でレンジ設定することになります。

3. 被測定回路への影響

デジタルマルチメーターを接続することにより、被測定系に影響を与えて測定値が変動することがあります。例えば、暗い環境下で光センサーの出力電圧を測定する場合など、非常にインピーダンスが高い回路にデジタルマルチメーターを接続すると、その内部インピーダンスが測定系の負荷となり、本来の出力電圧より低い値を示すことがあります。

同様に、インピーダンスが小さい回路の電流を測定する場合は、デジタルマルチメーター内の電圧検出用微小抵抗が、被測定回路に無視できない誤差を発生させることがあります。従って、デジタルマルチメーターが被測定回路に与える影響を考慮した上で、使用の可否を判断して下さい。

4. 低抵抗測定

抵抗の測定において4端子測定が可能なデジタルマルチメーターがあります。特に低抵抗値の計測において、プローブと被測定抵抗器との接触抵抗が誤差の原因となる場合に、4端子測定は極めて有効な手法です。4端子と云われる通り、一対の端子の定電流電源と、一対の端子の電圧計から構成されるもので、被測定抵抗器の両端に定電流電源を接続して定電流を流します。

電圧計は定電流端子の内側、抵抗器側のポイント、にプローブをあてて抵抗器の両端電圧を測定します。この測定電圧と定電流値から抵抗値を算出します。定電流端子の接触抵抗は電圧の測定値に影響しないこと、電圧計のプローブの接触抵抗は電圧計の内部抵抗10MΩに対して無視できるレベルであることから、低抵抗を正確に測定できます。

 参考文献

https://jeea.or.jp/course/contents/12145/

https://www.elprocus.com/multimeter-types-and-applications/

光マルチメータ

光マルチメーターとは

光マルチメーター (英: Optical multimeter) とは、光を利用した測定器です。

さまざまな光の特性を測定するための機能が組み込まれています。光損失テスタ・光ロステスタ・光ロステストセットなどと呼ばれることもあります。

光の強度を測定する光パワーメーター、光ファイバーの信号がどれくらい損失されるかを測定のための、ロステスタ・リターンロステスタの機能を持っていることが理由で呼ばれるようになりました。また、光源としてレーザーを搭載しているものもあり、安定光源としても利用することができます。

光マルチメーターの使用用途

光マルチメータは、電気回路において光を利用した測定器であり、主に電流や電圧を測定するために使用されます。高周波電流や高電圧測定にも適しており、多くの工業分野で広く使用されているだけでなく、高速で信頼度の高い測定ができることから、医療現場などでも使用されています。

1. 電子回路のテスト

光マルチメータを使用することで、回路内部の電圧や電流、抵抗、容量などを測定し、回路の動作状態を確認することができます。また、光マルチメータは、高速な測定が可能なため、高速な回路の動作確認にも適しています。

2. 温度測定

光マルチメータは、表面から放射される赤外線を検出して、温度分布を画像化する熱イメージングや非接触温度測定にも使用されます。例えば、建築物の断熱性能の評価や、電気機器の過熱の検出などです。

測定対象の表面温度によって、赤外線や近赤外線が放射されます。この放射された光を光マルチメータで検出することで、測定対象の温度を非接触で測定可能です。

3. 医療

皮膚や目の病気の診断や治療に利用されます。特に、眼科医が緑内障などの病気の診断や治療に光マルチメータを使用することがあります。

また、近赤外線光を使用して、脳の活動を非侵襲的に画像化する脳の機能イメージングを行う技術も開発されている状況です。これにより、脳神経科学や臨床医学の分野での応用が期待されています。

光マルチメーターの原理

光マルチメータは、電気回路において光を利用した測定器であり、信号と光源の原理は以下の通りです。

1. 信号の原理

光マルチメータのは、光ファイバーを使用して光を送受信します。光ファイバーは非常に細いガラス繊維でできており、送信側で発生させた光が、光ファイバーを介して受信側に送信されます。

受信側の光センサーは光を受け取って、信号に変換しますが、この信号は回路の電気パラメータとして読み取られます。非常に高い精度で測定できることができる他、電気回路において電気ノイズの影響を受けにくく信頼性が高い測定が可能です。

2. 光源の原理

光マルチメータの光源は、主に発光ダイオードまたはレーザーダイオードが使用されます。これらの光源は、低消費電力であり、非常に高い明るさを発することから、光マルチメータに適しています。

送信された光は、測定対象の回路に入射し、回路内部で反射、屈折、散乱などが起こります。これらの光は、再度光ファイバーを介して受信部に戻り、フォトダイオードなどの光センサーによって光信号に変換され、測定値として表示されます。

このように、光ファイバーを使用することによって、非接触で精度の高い測定が可能です。また、光ファイバーは、電気信号よりも信号の遅延が少ないため、高速な測定にも適しています。

光マルチメータのその他情報

光マルチメータの特徴

非接触で測定ができるため、安全性や信頼性が高く、計測対象に損傷を与えることがないという特徴があります。一方で、測定対象の表面温度を測定するため、内部温度や部品の劣化状態などは測定できません。

使用する環境によっては、測定精度に影響を与える可能性があるため、測定前には測定対象や測定条件を正確に把握し、注意深く測定することが重要です。

基板外観検査装置

基板外観検査装置とは基板外観検査装置

基板外観検査装置とは、プリント基板などの基板への実装部品の良否、不具合を調べる装置です。

この装置では、実装部品の位置ずれ・断線・ショート・クラック・部品浮き・はんだ付けなどに問題がないかを調べています。電子基板の検査には正しく動作するかという機能試験の他に、各電子部品が正しい位置に欠陥なく装着されているかを検査する、基板外観検査 (基板検査・実装検査) があります。

電子基板検査はAOI (Automated Optical Inspection) と呼ばれており、基板外観検査によって問題がなければ、実際に設計通りに動作するのかという機能検査です。この機能検査ではファンクションテスタが使用されます。

基板外観検査装置の使用用途

基板外観検査装置は、様々な装置に搭載される基板のチェックに使用されています。基板に実装された部品の位置のずれや断線、部品浮きおよびはんだ付け不良などのチェックを実施し、下記のような欠陥を発見することが可能です。

1. 部品の欠陥

  • 部品未実装
    部品の実装位置が正しくない状態
  • 部品の位置ずれ
    パッドから部品が外れてしまい、間違えた位置に実装されている状態
  • 部品の浮き
    部品片側のみがはんだ付けがされた状態で、他方が立ち上がってしまっている状態

2. はんだの欠陥

  • 断線
    はんだがついていない状態
  • ショート
    はんだの量が多すぎて、隣接したパッドにも付着している状態
  • ボイド
    はんだ付けの際に、気泡によりできる不具合
  • 濡れ不良
    はんだがきれいに付いているが電気的接触が不完全な状態
  • はんだボール
    はんだのボール状の塊ができる状態
  • ブリッジ
    隣接したICピン間にはんだがつながっている状態
  • クラック
    はんだ表面に割れがある状態
  • イモハンダ
    はんだがうまく接合できず、はんだがイモのようにデコボコになっている状態

なお、基板外観検査によって問題がなければ、実際に設計通りに動作するのかという機能検査が行われ、機能検査にはファンクションテスタが使用されます。

このような基板外観検査装置は、電子基板の回路の集積化が進み、小さく集積された基板では人間の目視によるチェックが困難となってきたことから導入が増えています。また、省力化・省人化などによるコストダウンや生産性アップ、人的ミスを減らしての品質価値を高めることもメリットです。

基板外観検査装置の原理

1. 基板外観検査装置の構成

基板外観検査装置においては、人間と同様に外観を見る「目」の機能を果たす装置と、良し悪しを判断する「頭脳」の機能を果たす装置が最低限必要な構成です。これにより、人間の目視によっておこなっていたチェックを代わりに実施します。

したがって、基板外観検査装置は目となるカメラと頭脳となる画像処理ソフトウェアを搭載したコンピューターによって構成されています。

2. 基板外観検査装置の判定方法

基板外観検査装置で最も検出されるはんだ付け不良の判定方法を説明します。基板外観検査装置において、はんだ付けの良し悪しは、基板接着面境界と電子部品接着面との境界を結ぶ直線距離を閾値として、はんだ部分の長さがこれを超えるか否かによって判断されます。

つまり、ソフトウェアの判断は、はんだ部分が閾値以上の長さであれば、はんだが基板と電子部品間を電通可能な状態でつないでいる良であり、閾値未満であれば不良です。部品の形状など、電子基板によって閾値が変わるため、画像処理ソフトウェアにはあらゆる閾値データを入力しておく必要があります。

近年では、複数のカメラを用い三次元撮影する、X線カメラで透過画像を撮影する、レーザーの反射光データを得るなどして、二次元の通常のカメラだけでは検出できない欠陥の検出を可能としています。例えば、三次元撮影をおこなうと、はんだ部分の高さや面積および体積などを計測できるため、はんだ量や大きさおよびフィレット形状などの測定ができます。

このような自動化された光学的手段による基板外観検査は、AOIと呼ばれています。AOIとは「Automated Optical Inspection」の略で、和訳すると自動光学検査です。

基板外観検査装置のその他情報

人間による基板外観試験の問題点

これまで、基板の外観試験は人間の目視によりおこなわれていました。しかし、人間によるチェックでは、検査員の経験や主観によって合格・不合格の基準が異なる場合がありました。また、検査項目が増えるとそれに伴なって人員も増やす必要があるため人件費の増加にもつながっていました。

さらには、工場でライン生産される電子基板の生産数は膨大で、目視による検査では処理能力に限界があり生産数に追い付きません。このため、生産効率の向上が難しいという課題もあります。そこで、基板外観検査装置を導入して人の力で実施していた検査を自動化し、生産効率の向上とコスト削減を達成しています。

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参考文献
https://www.keyence.co.jp/

ファンクションテスタ

ファンクションテスタとは

ファンクションテスタとは、電子基板が実際に正しく動作するかの機能 (ファンクション) 検査を行うテスト装置です。

あらゆる装置の電子制御は、電子基板を組み込むことで達成されています。安全かつ正しく装置が動作するかは、まず電子基板に欠陥がないかを検査することによって確認されます。

電子基板の検査には基板外観検査 (AOI) とインサーキット検査 (ICT) 、および機能検査 (FCT) があり、基板外観検査は板検査・実装検査とも呼ばれます。

基板外観検査には、基板の配線に欠陥がないかどうかや基板上の部品が適切に組み込まれているかをカメラなどの外観で検査する基板外観検査装置が使われます。機能検査は、一般に基板外観検査後に行われ、実際に電子基板が正しく動作するかを検査します。ファンクションテスタはこれらの機能検査を行う際に使用されます。

ファンクションテスタの使用用途

ファンクションテスタの使用用途ですが、電子基板が所望の機能通りに動作するかどうかの機能チェックする用途のために用いられます。

内容は機能検査したい電子基板に入力 (英: input) 信号を送ったときに期待される出力 (英: output) 信号や電子部品の動作が実施されるかを確認するために使われます。

電子基板ごとに期待されるファンクションは当然異なるので、意図する検査が可能なファンクションテスタを選定することが非常に重要です。

例えば、電源基板であればスイッチを入れたときに、期待されている電圧や電流が流れるかということや、LED点灯検査であれば入力電流に応じて対応したLEDがどの程度の出力で点灯するかといったことがテストされます。近年では、様々な種類の基板に対応した非常に汎用性の高いファンクションテスタも出てきています。

ファンクションテスタの原理

ファンクションテスタの原理は、所望の機能 (ファンクション) 通りに電子基板が動作するかどうかを検査するために、電子基板に電源を供給し必要な電気的な入力信号を印加することで、出力端子信号や、搭載されている電子部品の挙動が意図したものかどうか確認することにあります。

機能検査では、検査したい基板をファンクションテスタに取り付けて実際に動作するかを確認します。入力信号はFPGAなどで生成されたテストパターンを用い、マイコンなどのIC動作を行うことも多いです。

電子基板を動作させるために、実際の動作電流を流して、出力波形を確認します。もし基板にはんだ付け不良などがあると基板内がショートして基板そのものが破損する恐れがあります。そのため、ファンクションテスタによる機能検査の前に基板外観検査を入念に行い、基板配線不具合や部品実装不良がないかを確認することが重要です。

ファンクションテスタは、あくまで基板が実際に動作を出力できるかどうかをテストするものであり、各部品の電気的な特性 (抵抗値やダイオード特性など) を細かく検査することとは区別されます。この場合はインサーキット検査 (ICT) と言い動作電流よりも遥かに微弱な電流を通電させることによって行われます。

ファンクションテスタのその他情報

1.インサーキット検査との違い

インサーキット検査は意図する部品が正しく実装されているかどうかをチェックするのが主な目的です。

例えばチップ部品の実装時に半田断線が発生していないかどうかや、ダイオードの極性 (向き) やICの1ピンに相当する箇所が正しく搭載されているかどうか、チップ抵抗の抵抗値は正しいかなどです。

ベースは部品の端子にプローブピンを接触させて電気的に評価する検査につき、例えばBGAのような内部に端子が存在するICパッケージや基板の内層のブラインドVIAの接続といった箇所は評価できません。

これに対して、ファンクションテストは、機能不全品は基本的に除去可能ですので、こちらがより重視され、汎用性の高いファンクションテスタにはインサーキット検査を行う機能が組み込まれているものが多くあります。

2. 実際のファンクションテスト項目事例

実際のファンクションテスト項目事例には、出力回路の電流値や電圧波形、LED点灯やスイッチ動作、マイコン動作をFPGAからのパターンにて確認、コネクタの断線などのチェックといったような項目があげられます。

昨今の電子基板の機能は、スマートフォンなどの電子通信機器や自動車での高度な電子制御用途に代表されるように非常に複雑な構成になっており、市販のままのテスタがそのまま使える事例はむしろ少なく、カスタム要求対応のものが増加しています。基板に合わせた周辺回路やフィクスチャー、場合によっては電磁シールドBOX (電波暗箱) などもセットで取り扱うメーカーもあります。

 参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/3-07-01.html
http://protec5461.co.jp/protec/?p=3143

信号発生器

信号発生器とは

信号発生器

信号発生器 (英: Signal generator) とは、様々な電気的な信号波形を生成する装置のことです。

発生させた信号は、あらゆる装置においてテスト用の信号として利用されます。生成できる信号は、無線通信のデジタル変調含めた高周波 (RF) の標準信号やオーディオ信号をはじめ、パルス波を生成するものまで多岐にわたります。

信号発生器の使用用途

信号発生器は、試験対象装置や通信用高周波部品などのDUTの実施試験の前に疑似的な信号を用いてシミュレーションや実測評価を進め、デバッグ調整を行う目的で使用されます。

信号発生器はあくまで基準となるテスト用の信号波形を生成する機能を有しているため、測定用途に用いる装置ではありません。この点はオシロスコープデジタルマルチメータースペクトラムアナライザなどの、対象となる物理量を評価するための測定装置とは異なります。

信号発生器の原理

信号発生器のおける波形信号の生成は、現在ではデジタル信号を入力することでアナログ信号に変換しています。実際にはデジタル直接合成発振器(DDS)というデジタル回路がこの操作を行っています。

DDSは位相アキュムレータと波形ROM、D/Aコンバータで構成されており、さらに位相アキュムレータはラッチと加算器により成り立っています。クロックに同期して周波数設定値Nを積算していくと、Nに比例した速度でデジタル化された三角波が生成されます。このデータから波形ROMのアドレスを指定して出力された波形をD/Aコンバータでアナログ変換し、低周波数フィルタに通すとスムースなアナログ波形を得ることが可能です。

一般に、波形ROMに格納されている波形は正弦波なため、出力される波形は正弦波になります。ここで逆フーリエ変換の基本的な考え方に立ち返って、任意の波形は正弦波の合成で生成することができるということを念頭に置くと、こうして生成した擬似的な正弦波を組み合わせることで、信号発生器は基本的にはあらゆる波形を生成することができます。

信号発生器の種類

信号発生器の種類は様々ですが、代表的なものとして下記の2つが挙げられます。

1. ファンクションジェネレータ

高い汎用性を持った信号発生器の一つが、ファンクションジェネレータです。信号発生器の中でも、デジタル技術の発展により一つの信号発生器で任意の波形を生成できるものが開発されています。

ファンクションジェネレータを用いると、あらゆる信号を擬似的に生成できるので、試験対象装置の実地試験の前に疑似信号を用いてシミュレーションを行いデバッグや調整を行うことが可能です。また、高周波 (RF) のデジタル変調波形生成用の信号発生器は、スペクトラムアナライザやパワーメーター等とともに、RFの電子部品の特性評価用に広く使用されています。

2. RFデジタル変調波形生成用信号発生器

信号発生器には5GやWifi信号等の複雑な変調波形を生成する高周波 (RF) のデジタル変調波形生成用の信号発生器もあります。ベクトル標準信号発生器 (デジタル標準信号発生器) と呼ばれるこの計測器は、I/Q変調器を内蔵しています。

そのため、1024QAMやQPSK等のI/Q変調方式へのアップコンバートが可能です。この信号発生器はIQベースバンドジェネレーターと組み合わせることで、通信システムがサポートする情報帯域幅内の大半の信号をエミュレートして出力できます。

信号発生器のその他情報

1. 信号発生器の使い方

信号発生器は、電圧電流計やシグナルアナライザ、パワーメーター等と共に電子回路の測定器の中心的存在です。昨今は複雑な変調なデジタルシステムに対してもPC内の専用のソフトウエア上のアプリケーションと併用することで、簡易に任意の信号を発生可能な測定環境を計測器メーカーが用意サポートしてくれています。

また複雑な最新のデジタルシステム対応のみならず、電子、電気回路の入門者向けに手軽に信号生成可能な測定器のキットが市販されています。こちらは、最新の複雑な信号を扱うわけでもないので、ネット通販などで非常にお手頃な価格で購入可能です。

この信号生成用キットは、電子、電気回路の入門者においても基本的な正弦波、三角波、パルス波形等の信号をその動作周波数と共に任意に調整出力可能であり、ちょっとした電子回路の実験検証には、非常に役立つ機器になっています。

2. 信号波形の回路シミュレータへの取り込み

昨今、一部の測定器ベンダーにおいては、この実際の信号波形を回路シミュレーションにそのまま取り込めるEDA環境も構築されており、RFやアナログ・デジタル回路設計者にとっては、非常に頼もしい存在になっています。

例えば一例として、RFの非線形動作がデジタル変調信号波形の歪に与える影響については、かつては実測で変調波形を入力しての出力波形評価、ないしはIMD(相互変調歪)などの挙動で代替検証し、回路設計へフィードバックするのが通例でした。

しかし現在では、実際の変調信号波形そのものをRFアナログ回路やフロントエンドモジュールに回路シミュレーター上で取り入れることができ、EVM(変調精度)といった通信システム上の特性を、回路設計的に、シミュレーター上にて検討可能になっています。

参考文献
https://www.electronics-notes.com/articles/test-methods/signal-generators/what-is-a-signal-generator.php
https://ekuippmagazine.com/measuring/function-generator/
https://www.electronicdesign.com/technologies/test-measurement/article/21801200/the-fundamentals-of-signal-generation
https://download.tek.com/document/76Z-16672-4.pdf

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザとは

光スペクトラムアナライザ

光スペクトラムアナライザ (英語: Optical spectrum analyzer) とは、この光スペクトルを測定するための分光装置です。

光スペクトルとは、横軸に波長・縦軸に光強度をプロットした、波長ごとの強度分布を指します。同様の装置に光波長計がありますが、光スペクラムアナライザには、測定値を補正する機能や、波長をスキャンするためのミラーが搭載されています。

光波長計よりも光学系は複雑になりがちですが、多機能で汎用性が高いのが特徴です。そのため、装置の価格は比較的高額になります。

光スペクトラムアナライザは、光ネット通信やフォトカプラなどの光半導体の開発で利用されています。その他、光を使った分析や水分量測定、膜厚測定、医薬や生物等のバイオや化学を始めとした全ての光関連部品分野に応用されています。

光スペクトラムアナライザの使用用途

光スペクトラムアナライザは、主に光学系の性能評価に利用されています。特にレーザー光源やLED光源は産業・医療応用・情報通信・学術研究に至るまで、非常に幅広く応用されており、その波長特性を調べることは非常に重要です。

光スペクトラムアナライザの使用用途の一例は下記の通りです。

  • レーザーやLEDをはじめとする単色光源や水銀・キセノンランプなどの白色光源の波長特性の評価
  • 光学部品の波長依存的な反射率・透過率の評価
  • 光波長多重通信のなど、光ファイバー通信におけるクオリティチェック

光スペクトラムアナライザの原理

光スペクトラムアナライザの原理は、分光方式によって以下の分散型と干渉型の二種に大別されます。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ

分散分光方式は、分光素子を用いて波長成分を空間的に分解し,波長ごとの強度を測定する方法です。

分光素子には、プリズムや回折格子が用いられます。分光器は、その他にコリメートと呼ばれる鏡とレンズ、集光用のカメラやレンズで構成されています。

プリズムの場合は、波長による屈折率の違いを利用して分光します。プリズムに入射した光は波長に依存して異なる屈折角で射出されます。これによって測定したい光の波長成分を空間的に分解することが可能です。

回折格子の場合は、波長による回折角の違いを利用して分光します。回折格子に光が入射すると、回折条件を満たした角度で波長ごとに異なる角度で出射します。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ

干渉分光法は、測定したい光を干渉させ、その干渉パターンからスペクトルを測定する方法です。

測定したい光を干渉させるために、ビームスプリッタを用いた二光束干渉方式と、対向させた高反射ミラーを用いる多光束干渉方式があります。二光束干渉方式では、二光束の光路長を変化させ、干渉光強度の変化 (インターフェログラム) を測定し、これを逆フーリエ変換することでスペクトルを算出できます。

多光束干渉方式では、測定したい光を多重反射させると共振した波長成分だけを取り出すことが可能です。ミラーの間隔を変えれば共振する光の波長も変わるため、これを繰り返すことでスペクトルの測定が可能となります。

波長毎に分離した光の強度を検出する分散分光方式に比べると、ダイナミックレンジの性能が劣りますが、高波長確度が得られます。

光スペクトラムアナライザのその他情報

光スペクトラムアナライザの性能

光スペクトラムアナライザの性能を表す最も重要なものとして、波長分解能が挙げられます。波長分解能は、光スペクトルの分解できる波長幅の限界を指す言葉です。

1. 分散分光方式光スペクトラムアナライザ
分散分光方式の場合、波長分解能は使用している回折格子の種類や光路の距離、スリット幅などに依存します。そのため、波長分解能が高い装置の場合、大型の装置になります。

また、検出する際に光が通るスリットの幅を狭くすると分解能が高くなりますが、検出する強度も下がるため、必要な分解能幅を考慮して光学系を調整することが大切です。カメラに冷却装置がついているものを使用している場合は、暗電流等のバックグラウンドを下げて測定することが可能になります。

2. 干渉分光方式光スペクトラムアナライザ
干渉分光方式の場合、光路長を変化させる際のステップ幅によって波長分解能が決まります。そのため、高い波長分解能を求める場合、より多くのステップで測定する必要があるため、測定時間がより長くなります。

参考文献
https://www.rp-photonics.com/optical_spectrum_analyzers.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf
https://www.anritsu.com/ja-jp/test-measurement/products/ms9740b
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/5/39_354/_pdf

シャントレギュレータ

シャントレギュレータとは

シャントレギュレータ (Shunt regulator) とは、回路の入力電圧をモニターし、出力電圧を一定に保つようにフィードバックをかける集積回路 (IC) です。

一般に集積回路内の電圧は、温度変化や部品の個体差など、様々な要因により偏差やばらつきを生じます。一方で、シャントレギュレータは、高い精度で電圧をコントロールできるため、基準電圧源としての利用が多いことから、基準電圧集積回路とも呼ばれています。

リニアレギュレータスイッチングレギュレータのような電圧を安定化する回路に比べて、高い精度で電圧をコントロールできることが特徴です。

シャントレギュレータの使用用途

シャントレギュレータは、電子機器の高精度制御に伴い、AD/DAコンバータ、DSPのRef用基準電圧源などの高精度基準電源が必要な用途で広く用いられています。

シャントレギュレータは高精度な電圧制御が可能ですが、負荷と並列の定電圧化機能に伴い、特に高電流下動作時には効率が非常に低いです。そのため、その効率の低さが無視できるような低電流な負荷条件での基準電圧源として用いられ、その後段に高電流の別のレギュレータを直列につないで駆動する目的でも使われます。

例えば、コンパレータのように2つの電圧を比較するような論理回路の場合、比較対象に基準電圧を使用します。仮に基準電圧のドリフトが生じると、意図した回路動作そのものが破綻する恐れがあるため、基準電圧値には可能な限りの安定性が必要です。

シャントレギュレータの原理

シャントレギュレータの原理

図1. シャントレギュレータの原理

シャントレギュレータの動作原理は、その構成要素である負荷と並列に接続された誤差増幅器 (エラーアンプ) とトランジスタにより、入力電圧の変動を補正し負荷電流を一定に保つ働きをすることで、高精度な電圧値が得られる点にあります。

一般のシャントレギュレータは内部基準電圧端子、誤差増幅器、トランジスタによって構成されており、回路中の負荷に対して並列に接続されます。入力電圧が上昇したとき、これに伴って出力電圧も上昇しようとします。しかし、誤差増幅器がそれを感知しトランジスタに流す電流を増加させることで、負荷を流れる電流は減少し、出力電圧の上昇が抑えられる仕組みです。

最も単純なシャントレギュレータの例は、ツェナーダイオードレギュレータです。ツェナーダイオードは、通常のダイオードと異なり逆方向に電圧をかけ、それが一定の閾値を超えると大きな電流が流れ始めるという特性を持っています。このときの電圧の閾値をツェナー電圧と言います。流れる電流の大小に関わらず一定の値になり、ツェナー電圧はPN接合部への不純物の添加によって正確に設計することが可能です。

このダイオードの特性をうまく利用したシャントレギュレータは、ダイオードだけで定電圧を得られるので回路の簡素化やコストダウンに繋がります。しかし、温度変動が大きいため、温度特性を重視する場合には誤差増幅器やトランジスタによって構成されるシャントレギュレータを利用する必要があります。

シャントレギュレータのその他情報

1. シリーズレギュレータとシャントレギュレータの違い

リニアレギュレータは、入力電圧より低い出力電圧を作るDCDCコンバータですが、その種類はシリーズレギュレータとシャントレギュレータの2つの方式に分類できます。

シャントレギュレータは電圧降下発生用の抵抗器を用いたDCDCコンバータであり負荷に対して制御を行う制御素子が並列に入る方式で、並列制御型ともよばれます。それに対して、シリーズレギュレータは負荷に対して制御素子が直列に入る方式であり、直列制御型ともよばれます。

シャントレギュレータは、シリーズレギュレータとは異なり、設定された電流を流し続けるのが特徴です。無効電力が大きくなりやすく、大電流のアプリケーションには不向きと言えます。

2. 三端子レギュレータとLDO

シャントレギュレータと異なり大電流用にも用いられるシリーズレギュレータは、三端子レギュレータとLDO (Low Dropout Regulator) に分類できます。三端子レギュレータは、入力、出力、GNDの三端子でデバイスが構成されています。一般的に、直流電源回路には効率の良さからスイッチングレギュレータが使用されますが、三端子レギュレータはノイズが少なく外付け部品も少なく、低価格なため、アプリケーション用途によっては用いられるケースもあります。

LDOは、入出力の電位差が少なくても動作可能なシリーズレギュレータであり、汎用のシリーズレギュレータと比較して電力損失が少なくて済むのがメリットです。ただし、その動作上入力電圧値の制限や負荷条件など使用上の注意点もあるため、仕様の確認が重要です。

参考文献
https://www.electronics-notes.com/
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap2/chap2-5.html
https://emb.macnica.co.jp/articles/7645/
https://ja-support.renesas.com/knowledgeBase/17793549

光波長計

光波長計とは

光波長計 (英: Optical wavelength meter) とは、光の波長を測定することを目的にした専用の装置です。

光の波長を測定するための装置という点では、光スペクトラムアナライザとほぼ同義ですが、一般に光波長計では測定のダイナミックレンジを絞っているため感度が高いという特徴があります。

光スペクトラムアナライザは汎用性を持たせるために様々な機能が組み込まれていますが、光波長計は波長計測という最小限の機能に留められているため、価格が手頃な機種も多いです。

なお光波長計で得られた結果は真空中の光の波長であり、実際に空気中で観測される波長とは空気の屈折率の分だけ (0.03%程度) のズレがあります。

光波長計の使用用途

光波長計の使用用途ですが、光学部品などの特性評価において、より高い波長の精度が求められる場合によく利用されます。

例えば、レーザーやLEDなどバンド幅の狭い光源の波長特性を正確に測定するためや、光ファイバー通信で用いられる光の波長特性の評価などにも用いられます。

光波長計は、もともと光ファイバー通信に使われる光の波長を測定するためによく使われていた背景もあり、1,000~1,800 nmの光を測定できるようにレンジが設定されているものが数多くあります。

光波長計の原理

光波長計の原理は、フィゾー干渉計やマイケルソン干渉計などの光の物理的な干渉を利用することで、光の波長特性の測定を行う点にあります。

フィゾー干渉計を用いたものは、コリメーターレンズと参照面と呼ばれるガラス板と測定用ミラーからなる非常にシンプルな光学系です。

フィゾー干渉計に入射した光はコリメーターレンズによって平行光となった後、参照面を通過する際にその一部が反射されます。参照面を通過した光は測定用ミラーで反射され、参照面で反射した光と干渉し、縞のようなパターンを形成します。この干渉縞は光の波長と干渉する光の光路差によって固有のものが形成されます。

参照面と測定用ミラーとの距離 (光路差) は既知なので、干渉縞パターンから波長を算出できます。また、マイケルソン干渉計を用いたものは、入射した光をビームスプリッタによって2本に分け、さまざまに光路差を変えることで干渉光強度の変化を測定します。これを逆フーリエ変換することで、光のスペクトル(波長)が算出可能です。

光波長計のその他情報

1. 光波長計と光ファイバー通信

光ファイバー通信用の光計測用に広く用いられている光波長計ですが、光ファイバーは1,500nm帯が、光ファイバー内伝送時の光の損失量が最も低いために、一番よく使われている波長帯です。

しかし近年はこの波長帯だけでは、光ファイバー通信網がすでに飽和状態であるために周辺の光の波長帯の利用も盛んに開発が実施されている状況です。

光ファイバー通信の大容量化のためには、複数の波長を取り扱う波長多重通信が欠かせない技術の一つであり、光波長計にもこの場合の多重波長の同時測定機能やその実用的な分解能が求められています。このような背景のもと、昨今では最大1,024波長まで複数の波長を同時測定が可能な機種を扱うメーカーがあります。

2. 光ファイバー通信以外の用途

光ファイバー通信の光源には、一般に化合物半導体基板をベースにした半導体レーザーが広く用いられており、半導体のウエハやレーザーチップの量産ラインのウエハ製造前工程検査向けには、限られた単一波長のみを非常に高速に評価可能な機種のニーズが存在します。

また光ファイバー用アンプの光源が900nm帯であることから、1,000nmよりも低い光波長までの測定を対応可能にした機種が扱われています。

さらに、最近眼科診断によく用いられる光干渉断層計 (英: Optical Coherence Tomography) では800nm帯や1,050nm帯が使用されており、バイオテクノロジー向けの蛍光観察のアプリケーションでは可視光が主体ですので、300nm帯から1,200nm帯までを対応可能なモデルもあります。

3. CWとパルス光源対応機種

レーザーを用いたアプリケーションには、レーザー発振にCW動作を扱う場合と、例えば1KHzといった高速のパルス光源を扱う場合が存在します。

上位機種には、両方を扱うことが可能なモデルがありますが、CW動作時の用途のみを取り扱う光波長計もありますので、仕様をよく確認することが重要です。

 参考文献
https://telecomteststation.com/wavemeter-or-optical-spectrum-analyzer/
https://www.fujifilm.com/jp/ja/business/optical-devices/interferometer/knowledge#
https://www.rp-photonics.com/wavemeters.html

画像処理装置

画像処理装置とは

画像処理装置とは、カメラなどの画像に含まれる情報を抽出し、何が写っているかの特定・測定・解析をする装置です。

画像処理装置には、外部機器と連携するためのインターフェースが用意されています。画像処理装置で得られた物の形、距離、個数などを外部機器に送信することで、生産ラインの制御などが可能になります。

画像処理装置を使用する用途・目的 (対象物の種類、対象物の移動速度、処理の精度、処理速度など) に合わせて、装置の仕様、適用する画像処理手法及び、システム制御方法を選定することが大切です。近年では、人工知能や機械学習と組み合わせた装置の開発も行われています。

画像処理装置の使用用途

画像処理装置は、日常生活から工場、医療、交通・輸送など、様々な分野で利用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 工場における部品等の品質検査や個数の計測
  • 画像モデル、文字、バーコードによる対象物の識別と認証
  • ステレオ画像などの3次元情報を基にしたロボット制御
  • 監視カメラの画像鮮明化と異常検知
  • 車の運転アシストや自動運転
  • レントゲンや CT など医療画像からの診断補助
  • 個人識別のための顔認証システム
  • 駅や商業施設での人数計測システム

画像処理装置の原理

画像処理装置の原理は、カメラやセンサーからの信号を画像化した後、コンピュータ上で画像変換や変形、特徴量などの情報を抽出し、対象物の特定・測定・解析することによる画像から対象物情報への変換です。

画像処理装置は、画像入力部、画像処理部、外部インターフェース部、システム制御部で構成されます。各部の機能は、以下の通りです。

1. 画像入力部

カメラなどのセンサーからの信号をデジタルデータに変換し、画像化します。赤外線カメララインセンサカメラなど、特殊カメラからの信号を画像化できるタイプもあり、使用目的に合わせて選択します。

2. 画像処理部

画像入力部で得られた画像をデータとして処理して画像の変換や変形、特徴量などの情報を抽出する演算を実行し、何が写っているかの特定及び測定・解析をします。画像処理部は、目的に沿って画像処理演算を組み合わせた画像処理手順を実行します。一連の画像処理手順は、プログラムを作成して実行されます。

画像処理演算は、取り扱うデータ量が多いです。そのため、検査など短時間で判定が必要な場合は、画像処理専用LSIや信号処理専用LSIを使って高速化しています。

3. 外部インターフェース部

画像処理開始信号の受信や画像処理部で測定・解析した結果をON/OFF信号やイーサネットやシリアル通信データにして出力します。製造ラインの制御装置やロボットなど使用目的に合わせて連携する機器が変わるため、TCP/IPやRS-232Cの様な一般的な通信方式からOPCの様な工業用の通信方式まで、様々な通信方式から適したものを選定します。

4. システム制御部

画像を取り込み、対象物の特定、計測・解析し、外部機器へ結果を出力する様な一連の処理のために画像入力部、画像処理部、外部インターフェース部の動作と連携を制御します。各部の動作及び連携のタイミングと内容は、画像処理装置の目的に合わせて変わるため、プログラムを作成します。

画像処理装置を用いて検査や品質管理を実施するためには、システムに求められる性能をもとに、画像の取り込みから結果出力までの処理手順を画像処理ソフトウェアの組み合わせと外部機器との連携をプログラム化する必要があります。

画像処理装置のその他情報

画像処理ソフトウェア

画像処理部の役割である画像をデータとして処理を行い、画像の変換や変形、特徴量などの情報を抽出する演算処理は、コンピュータのプログラムとして実行され、画像処理ソフトウェアと呼ばれています。画像処理装置の画像処理ソフトウェアは、画像入力から画像処理、そして外部機器との連携という一連の処理制御ができることが重要です。

最近では、カメラや外部出力の標準化が進み、画像処理だけでなく、カメラの制御、画像の表示や処理結果の外部出力インターフェース制御などを備えたパッケージも出てきています。また、検査や計測に目的を絞り込んだ画像処理ソフトウェアのパッケージなどもあります。

また、近年では、既存の画像処理ソフトウェアと機械学習やAI技術などを組み合わせることで解析や特徴抽出の精度を上げる試みも行われている状況です。

参考文献
https://www.automation-news.jp/2020/03/47975/
http://optronics-media.com/news/20190319/56189/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/2004/09/news052.html