電子負荷

電子負荷とは

電子負荷とは、被試験装置に接続され、負荷抵抗として機能する装置です。

従来は抵抗器を接続して被試験装置の負荷としていましたが、抵抗値を変更する都度抵抗器を差し替える作業が必要でした。電子負荷のメリットは、負荷の大きさを任意に設定できることです。

外部コントローラを利用すると、高速で負荷の設定を切り替えることも可能です。また、定電流モードとして一定の電流を被試験装置から流す機能や定電圧モードとして被試験装置の出力電圧を一定に維持する機能などがあり、様々な測定や試験に対応できます。

電子負荷の使用用途

電子負荷は、電子回路や電源装置、電池などの性能評価試験及び製品の検査に用いられます。具体的には、以下のような用途があります。

  • 電子回路における負荷のドライブ能力
  • 電源の負荷特性試験
  • 電池の充電/放電試験

また、外部コントローラによる制御が可能なため、負荷条件を目的に合わせて変更すること等、試験の自動化にも対応します。

電子負荷の機能

電子負荷は、バイポーラトランジスタFETなどで構成した増幅器を内蔵していて、そこに引き込む電流 (負荷電流) を制御するものです。特徴的な機能は以下に記します。

1. 電力の消費・変換方式

電力の消費・変換方式は、電子負荷のタイプによって異なります。

熱変換タイプの電子負荷
電子負荷内で消費される電力は、増幅器を構成する半導体素子により熱に変換されています。これは見掛け上抵抗器に電流を流した場合と同じ効果ですが、半導体素子が発熱するため、その放熱機構が必要です。

電力回生タイプの電子負荷
電子負荷内に入力された電力を、インバーターにより交流電流へと変換するものです。変換された電流は配電線網に再び戻されるので、消費電力は小さく、放熱も比較的簡単な構造で済みます。しかし、回生した電力エネルギーを電力系統に戻していることから、系統連係動作が可能な環境に限られます。

2. 電子負荷の動作モード

一般的に電子負荷は以下に示す4つのモードを備えていて、試験の目的により最適なモードを選択します。

定電流 (Constant Current) モード
このモードでは、電子負荷の入力電圧に関係なく、設定した定電流が流れるように動作します。被試験装置の出力電圧が変動した場合でも負荷電流が一定になるように電子負荷が対応しています。

定抵抗 (Constant Resister) モード
このモードでは固定抵抗のように設定された抵抗値を一定に保ちます。電源投入時直後の過渡期を除き、設定した抵抗値を維持することが特徴です。入力電圧に対して負荷電流が直線的に変化するため、電池やバッテリーの容量試験、電子機器の起動テストなどに使用されています。

定電圧 (Constant Voltage) モード
このモードでは被試験装置の出力電圧を一定値に維持します。被試験装置の出力電圧が変動すると、電子負荷は負荷電流を変化させて、出力電圧を一定に保ちます。その結果、負荷電流は変動するものの、被試験装置の出力電圧は一定になります。

燃料電池、バッテリー充電器などのテスト用として使用される場合が多いです。バッテリー充電器のテストでは、複雑なバッテリーの電圧挙動を電子負荷で再現して、試験することもできます。

定電力 (Constant Power) モード
このモードでは、電子負荷は設定された電力を消費するように働きます。まず、被試験装置の電圧を計測し、その電圧と設定された電力値から電流値を算出し、その電流を引き込みます。

電子負荷の選び方

電源装置やバッテリーなどの電力源の開発や生産において、各装置の性能試験を行う際に電子負荷は欠かせません。電子負荷装置を選定するときの注意事項を以下に記します。

1. 電力容量と耐電圧

被試験装置が電源であれば、その最大出力電力までカバーする電力容量を備えていることが原則です。また、耐電圧の規格は実際に印加される可能性のある電圧以上であることも必須条件となります。

2. 電子負荷装置が対応できる最小電圧

電子負荷は一般的に低い電圧領域での使用は困難で、電子負荷が対応できる最小電圧を、最低動作電圧と呼びます。前述の通り、電子負荷はバイポーラトランジスタやFETなどで構成した増幅器に流す電流を制御するものです。従って、その増幅器が動作する電圧を下回る場合は電子負荷が正しく動作しません。

その結果、ある電圧を境にして、それより低い電圧では電流が引き込めなくなります。即ち、電子負荷両端の電圧が最低動作電圧より低いと、動作しなくなります。

3. 周囲の温度や時間

電子負荷には、最大負荷を保証する周囲温度のスペックに注意が必要です。特に、熱変換式電子負荷では、自身の発熱により周囲温度が上昇するため、高温下での使用に制限が生じることを考慮しなければなりません。

また、最大負荷を維持できる時間が制限されている場合もあるため、事前にカタログやスペックシートの記載内容を確認しておく必要があります。

参考文献
https://www.keisoku.co.jp/pw/support/oyakudachi/dc-load/dcl-08/
https://www.toyo.co.jp/material/casestudy/detail/id=30425

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