磁性材料とは
磁性材料とは、磁場の印加もなく、磁場を取り去った状態でも磁化を有する材料です。
強い磁性特性を生かして様々な機能を発揮し、磁気が求められる用途で活用されています。 元々は磁気を有しない素材を加工によって磁性材料にするのが一般的ですが、元々磁気を有する物質も存在しています。
磁性材料の使用用途
磁性材料は環境や物理的条件によってその性能を大きく変化させるため、使用環境や目的で最適な物を選択する必要があります。
1. 硬磁性材料
磁石としての特性を活用しての採用が多く、モーターやスピーカー、ヘッドフォンなどで使用されています。その他、マグネトグラフィでの記録ドラムや記憶装置における磁気ディスク、磁気テープ等の記録媒体でも必須材料です。
2. 軟磁性材料
磁気歪を避けたい用途での採用が多く、電磁弁、ソレノイドバルブ、各種センサー、テレビ、ビデオ、パソコンなどに使用されます。 一時的な磁性特性の利用がほとんどであり、柔軟に性状が変わる点が重宝されています。
磁性材料の原理
磁性材料は、素材を磁化させることで磁性を有する材料です。鉄やニッケルなどの金属が、主な素材となっています。人工的に磁界を作り、その中に素材を放置することで、着磁と呼ばれる磁性が付く現象が起こります。
強い磁力を着磁させるには、より強い磁界が必要です。しかし、素材が保持できる磁力には限界があるため、磁界を作る際は電流を使用するのが一般的です。セッティングした電線に電流を流すことで、磁界が発生します。
磁性材料の種類
1. 硬磁性材料
強い磁場により磁化されたことにより、磁場が取り除かれても磁性が残る材料です。飽和磁束密度、保磁力や残留磁束密度において高い値を誇るのが特徴です。
具体的には、ハードフェライト (フェライト磁石) 、アルニコ磁石、サマリウムコバルト磁石、ネオジウム磁石、サマリウム鉄窒素磁石などが挙げられます。一般的には、磁石や永久磁石を指すケースが多いです。物質の磁化のされやすさを表す比透磁率は、1よりはるかに大きな値になります。
2. 軟磁性材料
軟磁性体とは、磁場に対して磁束密度が変わる材料です。具体的には、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ、 ソフトフェライト、センダスト、パーメンジュール、電磁ステンレス、アモルファス、ナノ結晶などが挙げられます。飽和磁束密度と透磁率は高く、保磁力と残留磁束密度は低いという特徴があります。
透磁率が高いことで磁場への反応性が高く、高い飽和密度を小さい磁場で出力可能です。磁場を無くした際は、磁性を持たない素材に戻る性質であり、保磁力と残留磁束密度は可能な限り低い値となります。
磁性材料のその他情報
フェライトの種類
フェライト (英: Ferrite) とは、酸化鉄を主成分としたバリウム、ストロンチウム、コバルト、ニッケル、マンガンなどを混ぜ合わせて1,000℃〜1,400℃で焼結した磁性体です。代表的なものは下記の通りです。
1. 希土類・レアアース磁石
希土類系の磁性材料は、主に自動車部品、モーターおよび電子機器などに使用されている磁性材料です。 特にネオジム・鉄系の磁性材料は硬く耐久性に優れており、非常に大きい磁気エネルギー積を有しています。
この磁性材料は高温の下ではその磁気を失いやすいため、特に使用熱環境に注意する必要があります。 同じ希土類系のものでもサマリウム・コバルト磁石は磁力はネオジム系のものに比べるとやや劣りますが、熱や錆に対して大きな耐久性を持つのでネオジム系の材料が適さない高温下において使用可能です。
2. アルニコ磁石
アルニコ性の磁性材料はアルミニウム、ニッケル、コバルトなどを主原料とした鋳造材料です。 この材質は温度に強く、高硬強のために割れにくい特徴があり、主に計器類などに使用されています。
ただし、保磁力が他の材質のものに比べると低いため、外部衝撃により磁力を失いやすい性質を持ちます。
3. フェイライト磁石
フェライト磁石は粉末状の鉄酸化物が主原料で、非常に汎用性の高い磁性材料です。 使用用途として、小型のモーター・スピーカーや磁気テープなどが挙げられます。高い保磁力の割に比較的安価で使用できるため、大量生産向けの製品に用いられます。
ただし、粉末状のものから製造される材料なので、衝撃などに対して脆く、切断や穴あけ加工には向いていません。