半導体外観検査装置

半導体外観検査装置とは

半導体外観検査装置

半導体外観検査装置とは、半導体の製造過程のウェハーや半導体チップの不良を外観上で検査する装置です。

半導体の主な製造工程としては、印刷の原版に相当するフォトマスク製造工程、半導体の基盤となるウェハー製造工程、フォトマスクを使ってウェハー上に微細な回路構造を形成していく前工程、回路形成後に半導体チップを個別パッケージングする後工程があり、詳細に見れば数百の工程が存在します。

近年の半導体の微細加工技術は数ナノ (髪の毛の太さの約1万分の1) という領域に達すると同時にウェハーも大口径化し、数十億個のトランジスタを搭載した半導体チップが1枚のウェハーから数千個作られるようになっています。

このような生産性を誇る半導体製造工程で検査装置は極めて重要であり、早期の不良品選別、コスト削減、品質や信頼性の向上に繋がっています。半導体外観検査装置を選定する基準としては、ウェハーの径、使用する工程、検出する不良の種類を考慮する必要があります。

半導体外観検査装置の使用用途

半導体外観検査装置は、半導体製造工程の様々なフェーズで使用されます。

半導体外観検査装置を使用して検出する不良としては、フォトマスクやウェハーのゆがみや割れ、傷、異物の付着、前工程で形成される回路パターンのずれ、寸法の不良、後工程でのパッケージングの不良等、様々なケースが挙げられます。

このため、工程ごとに適切な半導体外観検査装置やソフトウェアを選定する必要があると共に、検査を高速化、省人化するために、AI等を駆使した自動化が進められています。

半導体外観検査装置の原理

半導体外観検査装置は、計測する装置と計測したデータを処理するソフトウェア、適切な計測を行うための設備で構成されます。

計測する装置としては、高解像度カメラや電子顕微鏡、レーザー計測器が使用されます。計測したデータを処理するソフトウェアは、検査する工程に応じたアルゴリズムが開発されています。適切な計測を行うための設備として、振動を抑える設備やライトを当てる設備も必要です。半導体外観検査装置の中心となる画像撮像技術、画像処理技術、欠陥分類技術を以下に説明します。

  • 画像撮像技術
    画像撮像技術は、レーザー光をウェハーに照射し、その散乱光を検出することで欠陥を測定する技術です。微小な凹凸を光らせることで、異物や破損を検出します。
  • 画像処理技術
    画像処理技術は、ウェハー上の全てのチップに形成されるパターンが同じであることを利用し、隣接するパターンを比較して欠陥を検出する技術です。高速で広範囲の処理が可能です。
  • 欠陥分類技術
    欠陥分類技術は、欠陥を検出した後に、その欠陥を分類分けして原因を抽出する技術です。欠陥の原因を突き止めて対処するために必要な技術です。

半導体外観検査の種類

1. ウェハー製造工程・前工程での外観検査

ウェハーはシリコンを代表とする半導体の原料を、インゴットと呼ばれる円柱状の単結晶素材として成形し、1mm程度の厚さにスライスして表面を研磨したものであり、その直径は最近では12インチ (約30cm) となっています。

ウェハーの欠陥には、付着した異物だけでなく、ウェハー自体にある表面のキズやクラック、加工ムラ、結晶欠陥などがあり、主にレーザー光照射によりその欠陥を検出することがウェハー製造工程での外観検査です。

前工程はウェハー状態のまま進められ、そこで発生する欠陥には主に2種類の欠陥があり、ランダムとシステマチックと呼ばれます。ランダムな欠陥は、主として異物の混入によって起きる不具合ですが、ランダム故にその発生場所は予測不能です。そのためウェハー上にあるランダムな欠陥を画像処理により検出します。一方、システマチックな欠陥はフォトマスクや露光工程条件、例えばフォトマスク上に付着したパーティクルが原因で発生する欠陥であり、ウェハー上に並ぶ各半導体チップの同じ場所に発生する傾向にあります。

2. 後工程での外観検査

後工程ではウェハーを各チップに切断 (ダイシング) し、樹脂やセラミックのパッケージに収納し、チップ上の端子とパッケージ側の端子を接続 (ワイヤボンディング) し、封止します。後上程では電気的な検査が主となりますが、外観検査としてワイヤボンディング不良や品番の印字不良などの検査が行われます。

半導体外観検査のその他情報

1. 半導体外観検査の重要性

一般的に、製造工程での外観検査は汚れや傷等の確認を目的とする場合も多く、製品の機能や性能とは関係無いケースもありますが、半導体製造での汚れや傷などは単なる見かけ上の問題ではなく、ほぼ全てのケースで機能や性能に影響する問題です。

半導体は電子デバイスであり、他の電気・電子デバイスのように電気的な検査も行われますが、数十億個のトランジスタとそれらを接続する配線の全てを検査することは非常に困難であり、トランジスタのゲートや配線の細り等は外観検査でしか確認できません。

2. 半導体外観検査における精度

数ナノという微細レベルの半導体プロセスでは、1本の配線の太さや隣接する配線の間隔が数ナノになります。

ここにナノオーダーの不良が存在すると配線ショートや断線の原因となります。更にこの1/10の大きさの不良により配線幅が設計値の90%の太さになった場合でも、配線の抵抗値や容量が変化してしまいます。この配線に電流が流れた時、電子の移動により金属原子が移動するエレクトロマイグレーションという現象が起こることで急速に配線が細くなり、短期間で断線が発生する原因になります。

このように半導体製造では極めて微細な精度での外観検査が要求され、微細加工技術の進化に伴い、今後も要求精度はより高まっていきます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2013S/0/2013S_39/_pdf
https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/inspection.html
https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/process.html

圧力センサー

圧力センサーとは

圧力センサー

圧力センサー (英語: Pressure sensor)とは、気体や液体などの圧力を計測する装置です。

測定部が圧力によって生じる変化を、電気信号に変換して圧力を出力します。代表的な測定部はゲージ式です。

ゲージ式の圧力センサーには、半導体ゲージやひずみゲージ、金属薄膜などが使用されます。測定時の圧力の基準は大気圧や絶対圧、任意の基準に設定できる種類もあります。

圧力センサーの使用用途

圧力センサーは、多くの産業プロセスで、配管や装置内の圧力の測定に使用されます。

圧力の大きさの範囲やどの様な気体や液体のもとで使用するか、使用する温度、耐久性などを考慮し、適切な圧力センサーを選定する必要があります。

圧力センサーの使用例は、下記のように多方面で使用されています。

  • 液体の充填装置における液体の圧力測定
  • プラントにおけるパイプ内を流れる液体や気体の圧力測定
  • 圧力への反応性の高い物質を使用する装置内での圧力制御のための圧力測定
  • 圧力センサーマットへの応用
  • 自動車・産業機械・航空宇宙・医療などへの応用

圧力センサーの原理

ゲージ式の圧力センサーは、ダイアフラムの変形を検出して圧力を測定します。検出方法には半導体ゲージ式、ひずみゲージ式、金属薄膜式などの種類があります。

ダイアフラムの表面に4個のゲージ抵抗を配置し、圧力によってダイアフラムが変形すると電気抵抗値が変化します。4個のゲージ抵抗をブリッジ回路に組んで抵抗の変化を電圧として出力します。

1. 半導体ゲージ式圧力センサー

半導体ゲージ式圧力センサーは、半導体自体をダイアフラムとし、ピエゾ効果と言って半導体が圧力を受けると電気抵抗が変化するという性質を利用して圧力を測定します。圧力に対する抵抗値の変化が他方式にくらべ非常に大きく、堅牢なダイアフラムを作成できるため、装置の耐久性が高いことが特徴です。

2. ひずみゲージ式圧力センサー

ひずみゲージ式圧力センサーは、ひずみゲージをダイアフラムの裏側に貼り付け、ゲージ抵抗値の変化を測定します。ひずみゲージは、変形すると電気抵抗が変化するという金属の性質を利用してひずみを測定する装置で、ひずみと圧力を対応させることで圧力の出力が可能になります。

3. 金属薄膜式圧力センサー

金属薄膜式圧力センサーは、ダイアフラム上に金属薄膜を形成し、圧力によって変形した金属薄膜の電気抵抗の変化を測定することで圧力を測定します。ひずみゲージ式よりも高感度で高温下でも使用できることが特徴です。

4. ゲージ式以外の圧力センサー

ゲージ式の圧力センサーのほかに、静電容量式、光ファイバー式、振動式などの圧力センサーがあります。

静電容量式は、固定された電極とダイアフラム電極との間の静電容量を検出する方式です。圧力の変化に応じて変形するダイアフラムの変位量を静電容量の変化として計測し,圧力に換算します。複数のガス種や混合ガスの圧力を測定するのに適しています。

光ファイバー式は、ダイアフラムに圧力がかかると、光ファイバー先端の回折格子が変形し、反射する光の波長の変化を測定します。高温・高精度の測定ができ、溶融樹脂の圧力や身体内の血圧測定などに使われます。

振動式は、シリコンのダイアフラムチップに振動子を設け、圧力によりダイアフラムが変形すると、振動子の固有振動数が変化します。振動数の変化を検出して圧力に換算します。高精度・高感度・高分解能などの特徴があります。

圧力センサーの応用例

1. 圧力センサーマット

圧力センサーの応用例の一つとして圧力センサーマットがあります。圧力センサーマットは床などに敷くことを想定しており、薄いマット状になっていることが一般的です。

圧力センサーマットの用途例は、セキュリティーが高い部屋への立ち入り検知や工場での危険な場所への立ち入り検知などが考えられます。立ち入り者が圧力センサーマットを踏めば、圧力センサーが検知した情報を元にブザーを鳴らしたり、ランプを点灯させることが可能です。

また、施設の部屋や自宅の玄関などに圧力センサーマットを設置しておくことで、認知症の方の外出するタイミングを把握することが出来ます。

2. 自動車用圧力センサー

自動車用圧力センサーは、燃費などを向上させるために、液体や気体などの圧力を精密に測定するセンサーとして使用されています。自動車で使用される圧力センサーは、小型で精度の高い測定が行え、かつ過酷な使用環境で使われるため、ピエゾ抵抗を用いた半導体ゲージ式圧力センサーが多く使用されています。

自動車用圧力センサーは、使用温度が-30℃~150℃、使用箇所によっては300℃を超える温度まで確実に長期的に高精度な動作が求められます。また、ディーゼルエンジンは燃料と空気の混合気体を非常に高い圧力で圧縮する必要があることから、圧力センサーは200MPaという非常に高い圧力まで高精度に測定できる能力が要求されます。

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/52/4/52_4_610/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsass1969/34/388/34_388_269/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu1932/45/12/45_12_1159/_pdf
https://www.creact.co.jp/item/tactilus-mat
https://www.takex-eng.co.jp/ja/products/item/1496/
https://clicccar.com/2020/03/24/962804/

ネジ締め機

ネジ締め機とは

ネジ締め機とは、工場における組み立ての工程などで、ネジ締め作業を一部または全てを自動化する装置です。

位置やトルクの制御を自動化しているため、手動で行うよりも早くで正確なネジ締めができます。ネジ締め機の種類として、主に下記の3種類があります。

  • ハンディタイプ
    手に持ってネジ締めを行います。
  • 自動ネジ締めタイプ
    ネジ締め機が軸の移動により位置を調節し、ネジ締め作業を行います。
  • ロボットタイプ
    ロボットアームを用いて移動することで、ネジ締めを行います。

ネジ締め機の使用用途

ネジ締め機は、工場の組み立て工程で、自動化と品質担保、作業効率化を目的に利用されます。家電の自動組み立て工程におけるネジ締め作業や工場の設備機器の設置作業などが代表的な使用用途です。

工程をどの程度自動化させるか、ネジ締め作業の複雑さなどを考慮して、適切なネジ締め機を選択する必要があります。下記では、使用用途別に適切なネジ締め機を解説します。

  • 簡単な手動でネジ締めを行う場合
    手に持って行うハンディタイプを使用します。
  • 操作の自動化を行い、簡単なネジ締めを行う場合
    調整機能を持つ自動ねじ締めタイプを使用します。
  • ロボットの動作を取り入れ、複雑なネジ締めを行う場合
    自動化で効率が上がるロボットタイプを使用します。

ネジ締め機の原理

ネジ締め機は、制御装置とトルクを生み出すモータを使い、ネジ穴にはめ込む工具であるビットを用いて構成されています。

自動ネジ締めタイプでは、ビットなどが軸を移動するための設備が追加されており、ロボットタイプではロボットアームが追加で必要になります。ネジ締め機の多くがトルク計測器が一体の装置になっており、自動ネジ締めタイプやロボットタイプはネジ供給機が一体となっていることが多いです。

1. ハンディタイプ

ネジ穴にビットを当てて動作ボタンを押すと、モータの回転によってネジ締めを行います。トルク計測器がついているタイプは、ネジ締めが完了するとネジ締め動作が自動で停止することで、ネジやネジ締め対象への不要な負荷を低減できます。

2. 自動ネジ締めタイプ

ネジ締め時の動作はハンディタイプと同様ですが、ネジ締め対象まで、ビット部分が軸を介して移動してネジ締めを行います。移動の自由度は軸の数に依存し、軸が回転可能であれば斜め方向からのネジ締めも可能になります。

3. ロボットタイプ

ネジ締め時の動作はハンディタイプや自動ネジ締めタイプと同様です。ネジを締める箇所にビットを移動する際に、ロボットアームを使用します。また、ネジ締め対象を持ち上げ、ネジ締め部をビットがある向きに移動させることで、自動ネジ締めタイプでは不可能な面のネジ締めにも対応しています。移動の自由度はロボットアームを使用することで、複雑なネジ締めや短時間で多くのネジ締めが可能となります。

ネジ締め機のその他情報

ネジ締め機のメリットと特徴

1. ハンディタイプ
ハンディタイプのメリットは、ネジ締めでの作業効率と品質を向上させることであり、ネジ締めでの締め付けトルクを均等に保つことができるため、締め付けによる緩みや破損を防ぐことができます。ネジはドライバの先端に自動で供給され、片手だけで指定のトルクで締め付けを行うことができ、1分間に数十本のネジを締めることが可能となります。

2. 自動ネジ締めタイプ
自動ネジ締めタイプのメリットは、手作業では難しい極小ネジも正確にネジ締めができるため、より多くの種類のネジ締めを効率的にすることが可能となり、卓上タイプで使いやすさと性能が向上したネジ締め機となっています。特徴としては、締め付け部分が軸を介して移動するため、調整が容易に行えるので、楽にネジ締めを行うことができます。

3. ロボットタイプ
ロボットタイプのメリットは、トルク量・回転量・ネジ進み量を制御が可能になるのでネジ締めでの品質不良を低減させることができ、自動で同じ動作を繰り返すので、 ネジの締め忘れ防止にも効果があります。ネジの種類やサイズを選択でき、組み付けるワークに合わせてネジ締め条件の設定が可能であり、速度にばらつきがないので、生産性が上がり一日の組み立て可能な数量が増加します。

 参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kikai1938/38/315/38_315_3017/_pdf
http://microscrew-tightening.com/

流量計

流量計とは

流量計

流量計 (英: Flowmeter) とは、配管などを流れる流体の体積流量や質量流量を計測するための装置です。

様々な流れを圧力や温度などの条件に応じて適切に計測するために、多くの測定原理が開発されています。流れの種類としては、気体や液体、混相流などがあります。

一部製品では、配管の外側に取り付けて流量を測定することができます。しかし、多くの製品が配管の内部に設置して流量を計測するため、配管の設置前や設計時に流量計の取り付けを検討する必要があります。

流量計の使用用途

流量計は、化学製品や石油プラント、自動車、半導体、医薬品、食品などの流体を使用する製造において幅広く使用されています。

流量計は、10種類以上の動作原理が開発されており、扱う流体に応じて適切な流量計を選定する必要があります。

管内に設置する流量計は、流れを乱す可能性があります。その影響がどの程度なのかを検討して選定する必要があります。また、メンテナンスの頻度や時間、コストも考慮する必要があります。

流量計の種類

下記流量計の種類とそれぞれの仕組み・原理やメリットについて簡単に紹介します。

  • 容積式流量計
  • コリオリ式流量計
  • 超音波式流量計
  • 電磁式流量計
  • 熱式流量計
  • カルマン渦式流量計
  • 面積式流量計
  • タービン式流量計
  • 差圧式流量計
  • 渦式流量計
  • フローセル流量計

1. 容積式流量計

容積式流量計は、測定対象の配管と同じ内径の管と回転子、回転検出機で構成されています。配管を流れる流体によって回転子が回転し、回転数を検出することで流量が測定できます。

構造が簡便で高精度ですが、ギアを用いるため噛みこみ等が問題となります。

直接流体の体積を測定するため、密度の変わりにくい燃料油や潤滑油の流量測定に使用します。高精度な流量計のため、燃料油の取引などの用途に適しています。

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2. コリオリ式流量計

コリオリ式流量計は、2本のU字管と振動機、力センサで構成されています。コリオリの力という、流体が流れている振動する2本のU字管には、お互いに反対の方向に力が発生するという原理を利用した流量計です。

コリオリ流量計は測定原理から全長が長くなる欠点はありますが、質量流量を直接測定することができる流量計です。高精度かつ応答性も高く、高精度かつ応答性も高く、流体の密度も同時に測定したい場合などに広く用いられます。

一方で、他と比較して効果であり、振動のある場所や気泡を含む流体の流量計測はできません。

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3. 超音波式流量計

超音波式流量計は、超音波発生器と計測器で構成されています。超音波の伝播時間と、超音波の反射によって生じるドップラー効果を測定することにより、流量を算出します。配管の外側から測定できることができる流量計です。

非接触で流体流量を測定できる利点があります。配管に対して流量計を後付けすることも可能であり、大口径の配管に対しても低コストで設置が可能であるという利点もあります。

ただし、配管の肉厚などによる誤差が生じるため、高精度な流量測定が必要な場合には不向きです。

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4. 電磁式流量計

電磁式流量計は、測定対象の流体の内部に配置した磁性体の速度を、電磁式流量計の構成要素であるコイルによって、発生する起電力を測定することで、流量を算出する流量計になります。

管内に設置する必要がないものも多く、汚染水などの管内に設置する流量計ではメンテナンスコストがかかる場合に利用されます。

電磁流量計は可動部もなく、流体の流れを妨げないことから、固体交じりのスラリーの流量測定などに使用されます。ただし、油などの非導電性流体に対しては測定できません。

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5. 熱式流量計

熱式流量計は、2つの温度センサとヒータで構成されています。ヒータで温められる前の流体の温度と、ヒータで温められた後の流体の温度の差を測定し、流量を換算します。幅広い温度帯に対応していることが特徴です。

熱式流量計は非接触でガス流量を測定できるため腐食性ガスの測定が可能です。加えて圧力損失はほとんどなく、質量流量を測定できることが特徴です。その一方で、ガスに汚れ成分が含まれている場合は適しません。

熱式の原理

図1. 熱式の原理

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6. 面積式流量計

面積式流量計は垂直のテーパー管内のフロートにより下から上への流れがさえぎられることで、フロート前後で圧力差が生じます。フロートの重量と圧力差による力が均衡した位置で静止し、その位置を読み取ることで流量が求まります。

液体または気体の流量測定、パージ流体またはガスの測定などに使用されます。構造は簡素のため安価でありますが、測定精度はあまり高くはありません。

面積式の原理

図2. 面積式の原理

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7. タービン式流量計

タービン流量計は、流れの中に置かれ、流れと平行な軸を持つ羽根車の回転速度が流速に比例することを利用し、羽根車の回転数から体積流量を算出します。

軽量なので、取り付けの自由度が高くいです。軽量で安価かつ、繰り返し精度や応答性に優れており、大容量の流体の測定に向いております。ただし、軸受が劣化するので、使用寿命が短い点があります。

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8. 差圧式流量計

差圧流量計オリフィスにより圧力損失を生じさせ、1次側と2次側の圧力差を利用して、それを流量として計測します。

安価で広い範囲の応用ができることが特徴です。また実流校正が不要です。

差圧式の原理

図3. 差圧式の原理

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9. カルマン渦式流量計

カルマン渦式流量計は、カルマン渦を発生させるための障害物、渦測定機で構成されています。カルマン渦を測定することによって流量を算出します。

カルマン渦は障害物の後流に発生する規則正しい渦のことです。

カルマン渦式流量計は、機械稼働部や電極がないため幅広い流体を測定可能です。しかし、直管長が必要な上に振動などによる誤動作があるため、高振動な場所などでは使用できません。

蒸気や清浄な水などの測定に使用されます。

カルマン渦式の原理

図4. カルマン渦式の原理

10. 渦式流量計

渦流量計は、カルマン渦を利用した流量計です。カルマン渦とは、流体の流れの中に置かれた物体(渦発生源)の下流に発生する交互に並んだ規則正しい渦列のことです。

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11. フローセル流量計

フローセル流量計とはオリフィス流量計の一種で、水や空気が流れている配管にオリフィスを設置することによって差圧を発生させ、発生させた差圧を支流内に設置したフロートの指し示す値を計測する流量計です。

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流量計のその他情報

デジタル流量計について

アナログ仕様の流量計はほとんどが面積式の流量計で、現場で流量を確認するためのものです。安価であり、古くから使用されている流量計です。

近年、流量計はデジタル仕様のものも多く販売されています。伝送出力を持つ流量計はほぼデジタル仕様で、内部に電子部品や基盤を積んでいます。電子回路に余寿命があるという欠点はありますが、オートゼロ点調整やスパン値変更、積算機能や流量単位変更などが可能で利便性は向上しています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1951/9/9/9_9_553/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/20/9/20_9_531/_pdf
https://www.compoclub.com/products/knowledge/mf/netu_kiso1.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/flowmeter/type/electromagnetic.jsp
https://www.m-system.co.jp/rensai/pdf/r0110.pdf

光パワーメーター

光パワーメーターとは

光パワーメーター

光パワーメーター(英: Optical power meter)とは、光の強度 (パワー) を測定するための装置のことです。

特に光ファイバー通信に使う光の強度を測る際に「光パワーメーター」という名称が使われます。測定する光の種類や測定の単位系によって様々な名称が使われており、他にも、例えば例をあげると、レーザーパワーメーターや放射照度計、光度計、照度計などという名称が一般に使われています。

名前が違うだけでなく、測定結果を表示する際の単位が異なりますが、どれも物理的な光の強さを表すものという意味では共通です。

光パワーメーターの使用用途

光パワーメーターの使用用途は、光の強度の絶対値を正確に測定したい場合に用いられます。

光の強度を測定する装置として非常に汎用性が高く、光ファイバー通信の通信波長光源や各種レーザー・LEDなどの汎用光源など様々な光源の出力を測定するのに利用されています。価格も手頃であり、実験室内のみならず様々な現場で活用されるために、小回りの効くハンディタイプのものが種類も多く販売されています。

強すぎる光の暴露は、例えば眼球へのダメージなど生体にとって毒性をもたらし危険な場合があるので、レーザー光源などを安全に正しく扱うために、使用する光の強度を測定することは非常に重要です。

光パワーメーターの原理

光パワーメーターの原理は、光電効果を用いたフォトダイオードやバイオセンサーなどのセンシングデバイスを用いて、計測対象の光の強度値を電流値や温度変化などの物理的な尺度へ変換することで、その計測を実施しています。

一般に光パワーメーターは光強度を測定するための半導体センサーとその結果を出力するディスプレイのような表示器によって構成されています。半導体センサーとして用いられるのは光電効果によって、光強度を電流値として測定するフォトダイオードセンサーと、センサーが受光した際の温度変化を測定する、サーモパイロセンサーやパイロエレクトリックセンサーが用いられます。

特にフォトダイオードセンサーは受光した光子量に対して、高い線形性で電流値に変換できるため、多くの光パワーメーターで採用されています。

これらのセンサーにおいて電流値への変換や温度変化は、受光する波長によって効率が異なるため、測定結果の信憑性を担保するために、センサーは各波長で正しく校正されている必要があります。場合によっては感度の低い波長帯を補正するためにセンサー入力アンプを用いてシグナルを増幅することもあります。

光パワーメーターのその他情報

1. 光パワーメーターが扱う光波長について

光パワーメーターはあくまで光の強度を測定するための装置なので光の波長を測定することはできません。測定結果として光の波長と強度が表示されますが、この波長は測定されたものではなく、その波長に最適化された校正を用いていることを意味するもので、ユーザー自身が測定に合わせて設定するものなので注意が必要です。

一般に光パワーメーターは、例えばBlue-ray DiscやDVDなどの用途に可視光の400nmから700nmの波長レンジで複数の波長が選択可能なタイプや、光ファイバー通信向けに1,300nmから1,550nmなどよく使用される範囲のレーザー光源の波長を中心に、複数の波長を選択できるようなタイプが需要もあり多く扱われています。

2. 光パワー測定における留意点

光パワーメーターで非常によく用いられるフォトダイオードは、半導体のPN接合に光が入射することで生じるバンド間吸収での光起電力、すなわち光電効果をその動作原理としていますが、フォトダイオードはそのバンドギャップ量に応じて電流値に変換可能な光波長は大きく異なります。

例えば、InGaAsという化合物半導体系のフォトダイオードでは、800nmから1,700nm付近の光波長が対応可能であり、Si系のフォトダイオードでは、400nmからという可視光に対応可能です。

よって、測定したい光波長に適した光パワーメーターを用いないと値が正確でないだけでなく、場合によっては評価できない可能性もあります。光ファイバー通信の評価では温度変化や振動で波長が揺らぐ可能性もあり、正確な評価のためには、測定波長の整合性と、安定した温度、振動のない環境への配慮が重要です。

参考文献
https://www.rp-photonics.com/optical_power_meters.html
https://www.nicera.co.jp/products/infrared-sensor/thermopile-sensor http://www.neotron.co.jp/product/S2/S&LEnergySensorHeads%20.pdf

レーザーマーカー

レーザーマーカーとは

レーザーマーカー

レーザーマーカー (英: laser marker) とは、対象物の表面にレーザーを照射することで印字や加工を行う装置です。

レーザー照射によって表面を削り取ったり、化学反応させたりすることで変色させて印字を行います。ピンポイントで光を照射するため、高精度で印字可能な点やインクジェットプリンタなどと比較して、印字が消えにくい点がメリットです。

また、金属や樹脂をはじめ、ガラスや木材など多種多様の素材に印字することができます。

レーザーマーカーの使用用途

レーザーマーカーは、主に自動車・食品・半導体などの産業分野で活用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 自動車部品の製造履歴管理のための二次元コード印字
  • 電子部品のロットナンバー印字
  • 飲料用缶への製造番号や賞味期限などの印字
  • 金属部品などの微細加工

特に、金属への加工はこれまでドリルなどによる刻印が主流でしたが、精密加工が可能なレーザーマーカーの需要が増加傾向にあります。

レーザーマーカーの原理

レーザーマーカーによる印字は主にマスク方式とスキャニング方式の2種類があります。

1.マスク方式レーザーマーカー

印字したいパターンの穴を持ったマスクにレーザー光を照射し、通過した光線で印字を行います。印字パターンごとに異なるマスクを準備しなければならないため、手間とコストが掛かる点がデメリットです。

2. スキャニング方式レーザーマーカー

レーザーを印字のパターン通りに走査します。走査にはガルバノミラーを使用し、X軸に対応するミラーとY軸に対応するミラーの2枚でレーザー光を反射させて平面上を走査します。

Z軸に対応するミラーを追加すれば曲面の走査も可能です。現在販売されているレーザーマーカーは、スキャニング方式を採用している製品が一般的です。

レーザーマーカーの種類

レーザーマーカーに使用するレーザーは、基材の種類や加工内容によって適切なものを選択する必要があります。以下はレーザーマーカーに使用するレーザーの代表例です。

1. YAGレーザー

イットリウム (Yttrium) 、アルミニウム (Aluminum) 、ガーネット (Garnet) を使用したYAG結晶と呼ばれる材料を使用したレーザーです。アルミ缶やプラスチック表面への印字など、広い用途に使用されます。素材にダメージを与えにくいレーザーです。

2. ファイバーレーザー

レーザー媒体に光ファイバーを使用したレーザーです。高出力なので金属への深堀加工などに利用されます。金属治具やパイプ表面への文字印字に活用されています。

3. CO2レーザー

炭酸ガスを用いたレーザーです。透明な素材に吸収されやすいためガラスなどの印字・加工に適しています。

レーザーマーカーのその他情報

1. 家庭用レーザーマーカー

市販のレーザーマーカーは、通信販売などで購入可能です。木片や樹脂プレートにレーザーを当てて、名前やイニシャルを刻印するために使用されます。粉塵飛散防止目へのレーザー誤照射防止を目的にカバーが付属しています。

文字や図柄は専用のアプリケーションで作成し、パソコンやスマホから情報を転送して印字させます。

2. ハンディタイプレーザーマーカー

デジカメ程度のサイズであるレーザーマーカーも販売されています。コンパクトなので場所を選ばず、持ち運んでレーザー印字や図柄刻印が可能です。

ただし、印字の間ずらさずに持ち続けることはできないため、三脚などのホルダにセットして使用することになります。角度や製品との距離を自由に決められるメリットはありますが、高精細な印字には不向きです。

3. レーザーマーカーの価格

レーザーマーカーは、家庭で使用するホビーユーズから商品や治具への印字に使用するような産業用まで幅広い価格帯があります。家庭用のものは主に木工や皮革への印字に使用され、価格は50,000円前後です。

産業用のものは1,000,000円〜5,000,000円が相場です。金属への深堀など高出力のレーザーであれば、10,000,000円程度になります。

 参考文献
https://www.keyence.co.jp/
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/350/329/index.html

エミュレータ

エミュレータとは

エミュレータ (英: emulator) とは、あるハードウェアやソフトウェアの動作をemulate (まねる・模倣する) するソフトウェアやハードウェアのことです。

エミュレータの使用用途

一般的にもよく使用されるエミュレータの例としては、Windows OSのパソコン上でスマホのAndroid OSのアプリを実行するような場合に必要となるソフトウェアエミュレータがあります。

ハードウェアエミュレータとしては、例えばマイコン搭載の機器のプログラム開発のデバッグに用いられるエミュレータがあります。

エミュレータの原理

コンピュータのハードウェアとソフトウェアは別物のように見えますが、実際には同じ内容をハードウェアで実行するかソフトウェアで実行するかの違いです。

ビジュアルプログラミング言語や高級言語で作られたプログラムも、ハードウェアで実行するため最終的には0と1で表現されるマシン語に変換されます。一方、0と1のみしか扱えないハードウェアの内部の回路の全てはド・モルガンの法則を実現する論理演算回路で構成されており、数値演算も全て同じ回路で処理されます。

つまり、ソフトウェアとハードウェアのどちらも0と1の論理演算を組み合わせた処理を違う実現方法で行われるということです。これはコンピュータに接続された周辺デバイスも同様で、全てのデジタル技術の基礎となっています。

エミュレータの種類

1. ソフトウェアエミュレータ

Windows OS上でAndroid OSのアプリを実行したいという場合、どちらのOSでも動作するような高級言語で開発されたソフトウェアは両者で実行が可能です。しかし、どちらか一方のアプリ開発環境の上で開発された場合はもう一方のOSで正常に動作しない可能性があります。

このような場合、例えばAndroid OSでのアプリとWindows OSの間をエミュレータソフトで補完することで正常な動作が可能になりますが、エミュレータソフトを介して実行するため動作速度は低下します。

別の例としては、同じOS上でも異なるブラウザー間を繋ぐエミュレータソフトもあります。例えばInternet Explorer向けに作成されているページをEdgeで閲覧するような場合に用いられます。この場合もエミュレータのプログラム処理を介するため動作速度が低下します。

2. ハードウェアエミュレータ

マイコン搭載機器向けのソフトウェア開発に用いられるハードウェアエミュレータの一つとしてICE (英: In Circuit Emulator) があります。ICEは米Intel社の登録商標ですが、他社製品もICEと呼ばれることがあります。

ソフトのデバッグ時は、マイコンや周辺デバイス内部の状態を確認しながら進める必要がありますが、通常のマイコンの内部状態は外部端子からはほとんど知ることができません。このためマイコンと同じ動作をしながら内部状態を外部に出力する端子を設けたエミュレーションチップを作り、マイコンと置き換えたハードウェアがICEです。

ICEではマイコン内部のメモリをトレースする外部メモリを接続したり、プログラムの実行を任意のポイントで停止 (ブレーク) させて内部状態を確認するブレークポイントを設定する等のことができます。

3. その他のハードウェアエミュレータ

ハードウェアエミュレータとしては組み込みソフトのデバッグの他に、故障等で使えなくなったコンピュータ上で動作するソフトウェアを実行したいといった用途向けのものもあります。

エミュレータのその他情報

1. ICE使用時のポイント

ICEの機能を使いこなすにはハードウェアをステップ毎に直接的に動かすようなプログラムが必要なため、マイコン制御向けのソフト開発現場ではC言語が主に用いられます。

より高級な言語の方がプログラム開発が容易でプログラムも短くなりますが、実際にマイコンROMに書き込まれる時にはC言語によるプログラムの方がコードサイズが小さくなります。

これはC言語がアセンブラに近いレベルで記述することが可能なためで、これによりROM容量を抑え、ステップが少なくなることでリアルタイム性が向上し、周辺ハードの精密な制御が可能です。

2. ハード/ソフト混載のエミュレータ

エミュレータの原理に従えば、ハードウェアとソフトウェアの両者によるハイブリッドなエミュレータの実現も可能です。例えば、コンピュータ全体を模倣するハイブリッドなエミュレータ上で新規開発中のOSを動かしてデバッグすることができます。

調節計

調節計とは

調節計とは、機械の出力を自動調節するための装置です。

指示調節計または温度調節計という名称で製品販売されている場合が多いです。温度調節計として販売された機器でも、温度以外を調節可能な製品も多くあります。

温度・湿度・圧力・流量などの物理的なパラメーターをセンサーから入力して値を指示します。これが設定した目標値と同じになるようにフィードバックをかけます。調節したいパラメーターの現在値と設定値をモニタするディスプレイを有した製品が一般的です。

ディスプレイがアナログ指針の場合はアナログ調節計と呼ばれ、7セグメント表示の場合はデジタル調節計と呼ばれます。現在は、デジタル調節計が主流です。アナログ指針の場合は現在値表示が省略されている場合もあります。

調節計の使用用途

調節計は産業機器から家電製品まで広く使用されます。以下は、調節計の使用用途一例です。

  • 業務用水槽や貯液タンクの温度管理
  • エアコンの温度制御
  • 除湿機・加湿器の湿度管理
  • 細胞培養用のCO2インキュベータ における炭酸ガスの流量調節
  • 局所排気装置の圧力管理

パラメーターを一定に保ちたい場合に利用されます。また、コンピューターと連携して、モニターしたデータをロギングする場合もあります。

調節計の原理

調節計はセンサー部分、処理演算・モニタ部分、出力部分で構成されます。センサー部分は、物理量を入力する部分です。温度なら温度計、湿度なら湿度計と調節したい物理量のセンサーを使用します。

処理演算・モニタ部分では、値をモニタしながら出力値を調節します。測定値と目標値は回路に組み込まれたコンパレータなどで大小の比較を行い、出力値を決定して出力部分へ送ります。フィードバックを行うための制御動作にはさまざまな方式があります。

1. ON/OFF動作

測定値が目標値と比べて低いときは出力をONに、高いときはOFFにする動作です。この動作を繰り返すことで測定値を目標値付近に保ちます。

2. 比例動作 (P動作)

目標値との差に比例した制御出力を行う動作です。ON/OFF動作よりもなめらかな動作が可能ですが、目標値付近で比較的大きく変動します。目標値から少しずれたところで安定してしまうことをオフセットと呼び、積分動作などで調整します。

3. 積分動作 (I動作)

目標値と測定値における差の時間積分値を基に制御する動作です。比例動作でオフセットが出現した際、オフセットをなくすために使用することが多いです。比例動作と組み合わせて使用します。

4. 微分動作 (D動作)

測定値の変化率 (微分値) に応じて出力する動作です。現在値が急激に変化した場合に即座にもとに戻すような出力量を与えます。P、I、D動作それぞれを組み合わせたものをPID動作と呼び、各動作のメリットを合わせた効果が得られます。

調節計の選び方

調節計は取付サイズ、入力仕様、出力仕様、通信方式などに応じて選定します。

1. 取付サイズ

取付サイズは、調節計を取り付けるパネルの大きさです。一般的に調節計は、金属製制御盤の表面パネルに取り付けることが多いため、取り付けスペースに応じて製品を選定します。多くの調節計を並べたい場合は、小型の製品を選定します。

2. 入力仕様

入力仕様は、入力信号と入力点数などの仕様です。制御したい物理量に応じて選定します。入力信号が温度の場合は、測温抵抗体や熱電対が使用されるケースが多いです。

測温抵抗体は主にPT100Ω仕様が多く、熱電対は使用温度に応じてK、R、Bなどから使い分けられます。温度以外の場合は、4-20mA入力や1-5V入力の機器を繋げるケースが多いです。

入力信号は導入できる信号の数です。制御対象機器には制御ループを2つ組み合わせた「カスケード制御」を実施したい場合もあり、入力が2点以上必要となることがあります。

3. 出力仕様

出力仕様は出力機器へ伝送する信号の仕様です。アナログ制御の場合は4-20mAまたは1-5V出力が一般的です。ON-OFF制御の場合は接点出力またはトランジスタ出力が多いです。出力先の機器仕様に応じて選定します。

4. 通信方式

通信方式はコンピュータと通信するための方式です。通信によってコンピュータへ測定値や出力値を伝送したり、コンピュータから目標値を変化させたい場合に使用します。

コンピュータと通信を行う場合は、以前は、RS422やRS485などのシリアル通信が一般的でした。近年では、LANケーブルによるEthernet通信が主流です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/53/103/index.html

デジタルポテンショメータ

デジタルポテンショメータとは

デジタルポテンショメータ (英: Digital potentiometer) とは、本来アナログ制御されている可変抵抗の摺動子 (ワイパー) をデジタル制御するための集積回路のことです。

アナログの可変抵抗器と比べて機械的に動かす摺動部を持たないため、非常に構造的に堅牢で故障しにくく、長期間の使用が可能で信頼性が高いのが特徴です。マイコンなどと組み合わせてアナログ回路に実装することで、抵抗値を自由にコントロールしながら電流量を自動的に調整できます。

デジタルポテンショメータの使用用途

デジタルポテンショメータは、オーディオ機器のボリューム用途やデジタル化された家電品例えばAIスピーカーやLED調光用などの制御用途に使用されています。デジタル化された可変抵抗器とも言えるため、摺動部分を持ったアナログ回路の代替として使用されます。

例えば、オーディオ機器の音量調整やディスプレイの輝度・コントラストの調整など、これまで物理的なダイヤルなどで制御していたものをデジタル制御できるようになります。近年では家電のIoTが進んでいるため、アナログ値のデジタル制御は、AIスピーカーとの相性などから需要が高まっています。

デジタルポテンショメータの原理

デジタルポテンショメータの原理は、従来はアナログ的に機械で動作させていた可変抵抗の摺動子 (ワイパー) 部分をデジタル回路と抵抗の組み合わせで切り替え制御する可変抵抗の動作にあります。 

アナログ回路部分は、固定抵抗が直列に接続されており、接続点はCOMSトランジスタによってスイッチングされる仕組みです。これによって、デジタル回路部分からの信号によって抵抗値を切り替える、可変抵抗を実現します。

デジタル回路部分は、アップダウンカウンタとEFPROMなどの不揮発性メモリとデコーダによって構成されており、設定したい抵抗値を入力すると、カウンタ部分に書き込まれ、不揮発性メモリに入力されます。

この情報をデコーダで読み出し、その値に対応するCMOSトランジスタのスイッチを入れます。デジタル入力によって擬似的に可変抵抗の値を設定することが可能です。外部からの入力は不揮発性のメモリに格納されるため、回路の電源を切った後でも情報が保存されます。

デジタルポテンショメータのその他情報

1. アナログ調整用トリマからの置き換え

昨今では、デジタル家電やIoT電子機器に代表されるように、アナログ機械式の調整から、プログラミングによるデジタル制御への置換が進んでいます。アナログ調整の場合、製造ラインでは最後は人手による調整を経ての出荷が必要になりますが、デジタルポテンショメータを用いることで、マイコン制御などにより自動調整化ができます。

また、自動キャリブレーションも実現可能で、機器の高精度化にも寄与します。機械式なアナログ調整用トリマと異なり、デジタルの制御コードを認識していない外部の人間による調整は不可能なので、セキュリティ面でも有利です。

これらの高い信頼性の担保から、昨今では音量や画面のLEDコントラストが重要なアミューズメント機器へのデジタルポテンショメータの応用展開も盛んに行われています。

2. デジタルポテンショメータのデジタル制御方法

デジタルポテンショメータの制御インターフェイスとしては、通常はSPI (Serial Peripheral Interface) インターフェイスやI2Cインターフェイス、UP/DOWNインターフェイスなどが用意されています。さらに、デジタルポテンショメータをD/Aコンバータ的に連続変化させたいようなアプリケーションでは、デジタル制御時のクロック周波数にも注意が必要です。

通常は最大3MHz程度ですが、製品スペックを事前に確認することが大切です。また、メーカーからこれらの制御用のアプリケーションソフトは通常は用意されており、必要に応じて技術サポートも提供されます。

そのほか、ユーザー自身がプログラミングソフト開発したい場合のGUI (Graphical User Interface) 含めた開発サポートキットが用意されているケースもあります。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/digital-potentiometer-guide
https://components101.com/articles/how-digital-potentiometer-works-and-how-to-use-it

モータドライバ

モータドライバとは

モータドライバ

モータドライバとは、モーターの回転に関わる駆動を制御するための装置のことです。マイコンなどのコンピュータと組み合わせて、適切な電圧・電流を流すことでモーターの回転に関するタイミングや回転数の制御などを行います。

モータドライバの心臓部であるモータドライバICは非常に小型なので、単体の部品を組み合わせて別途モーターの制御回路を構築するよりも実装面積を削減できるというメリットがあります。また、過電流や過熱に対する保護機能が実装されているものもあり、使用者がモーターの駆動を安全に行うことが可能です。

モータドライバの使用用途

モータドライバはモーターの種類に応じて適切なものを選択します。代表的なモーターには、ブラシ付きDCモーターブラシレスモーター、ステッパーモーター、リニアモータなどがあります。

DCモーターは単純で安価なため、洗濯機のような家電製品をはじめ様々な用途に使われる汎用性のモーターです。また、リニアモータにおいて電流の方向を変えることで磁極を変化させる場合にも使用されます。リニア新幹線は同期型リニアモータと言い、レールの磁極を変化させることで推進力を得ているため、この制御にモータドライバは使用されています。

モータドライバの原理

モータドライバは、制御するモーターの種類によって動作原理が異なります。具体的には通電のスイッチングを行うためのブリッジ回路の構成が異なります。

例えばDCモータドライバでは、電磁石に流す電流の向きを切り替えることで回転方向の制御を行います。例えば高速に回転しているモーターに逆向きの電流を流すと、回転にブレーキがかかるため、回転数を低下させることが可能です。

この際、トランジスタを複数使用してハーフブリッジ回路を組みます。トランジスタの組み合わせによって電流を流す方向を決定します。ブラシレスモーターやステッピングモーターでは、モーターからひかれたコイルの本数(相数)に対応した電流の制御を行うのはハーフブリッジ回路です。

ブラシレスモーターでは単相・三相、ステッピングモーターには二相・五相などがあります。この他に、パルス電圧の幅を変調するPWM制御を組み合わせて回転数を制御する方式もあります。

モータドライバのその他情報

ブラシレスモーターとステッピングモーター

モータドライバの市場においては、前述のDCモーター(ブラシ付)とブラシレスモーターおよびステッピングモーターに大きく分けることが可能です。ブラシ付DCモーターは電圧印加で簡便に回転駆動できるために、扱いやすいのですが、群雄割拠の市場においてコスト的には厳しい状況です。

ブラシレスモーターはPCの冷却ファンやその他の比較的高効率動作で高信頼性が必要なアプリケーション用途で用いられます。ステッピングモーターは、その名の通り、モーターの回転の高度な制御が可能な点に特徴を有しており、FA向けの高精度なアクチュエータ制御などの工業用途やプリンターなどの民生機器に用いられ、両者は今後の市場の拡大が期待されます。

昨今の自動車のEV化に代表される車載市場においては、自動車の低速トルク大の状態から高速回転までの広範囲なモーター制御に対応し、かつバッテリーの放電までの寿命が走行距離に直結するため、モータドライバを用いたモーターの高効率な動作は不可欠です。その実現のため、マイコンによるモータドライバのPWM制御は、車載故の高出力向けインバーター制御技術と合わせて必須の技術といえます。

モータドライバは、単体部品を用いて初心者でも自作できる間口の広い技術分野ではありますが、本格的な制御には、モーターの動作原理への理解と、マイコンによる制御アルゴリズムやソフトウエア対応が必要です。

よって最近のモータドライバは専用のアプリケーションソフトなどのサポートにより、ユーザーが簡便に使いこなせるような工夫が取り入れられているものもあります。