モータドライバとは
モータドライバとは、モーターの回転に関わる駆動を制御するための装置のことです。マイコンなどのコンピュータと組み合わせて、適切な電圧・電流を流すことでモーターの回転に関するタイミングや回転数の制御などを行います。
モータドライバの心臓部であるモータドライバICは非常に小型なので、単体の部品を組み合わせて別途モーターの制御回路を構築するよりも実装面積を削減できるというメリットがあります。また、過電流や過熱に対する保護機能が実装されているものもあり、使用者がモーターの駆動を安全に行うことが可能です。
モータドライバの使用用途
モータドライバはモーターの種類に応じて適切なものを選択します。代表的なモーターには、ブラシ付きDCモーター、ブラシレスモーター、ステッパーモーター、リニアモータなどがあります。
DCモーターは単純で安価なため、洗濯機のような家電製品をはじめ様々な用途に使われる汎用性のモーターです。また、リニアモータにおいて電流の方向を変えることで磁極を変化させる場合にも使用されます。リニア新幹線は同期型リニアモータと言い、レールの磁極を変化させることで推進力を得ているため、この制御にモータドライバは使用されています。
モータドライバの原理
モータドライバは、制御するモーターの種類によって動作原理が異なります。具体的には通電のスイッチングを行うためのブリッジ回路の構成が異なります。
例えばDCモータドライバでは、電磁石に流す電流の向きを切り替えることで回転方向の制御を行います。例えば高速に回転しているモーターに逆向きの電流を流すと、回転にブレーキがかかるため、回転数を低下させることが可能です。
この際、トランジスタを複数使用してハーフブリッジ回路を組みます。トランジスタの組み合わせによって電流を流す方向を決定します。ブラシレスモーターやステッピングモーターでは、モーターからひかれたコイルの本数(相数)に対応した電流の制御を行うのはハーフブリッジ回路です。
ブラシレスモーターでは単相・三相、ステッピングモーターには二相・五相などがあります。この他に、パルス電圧の幅を変調するPWM制御を組み合わせて回転数を制御する方式もあります。
モータドライバのその他情報
ブラシレスモーターとステッピングモーター
モータドライバの市場においては、前述のDCモーター(ブラシ付)とブラシレスモーターおよびステッピングモーターに大きく分けることが可能です。ブラシ付DCモーターは電圧印加で簡便に回転駆動できるために、扱いやすいのですが、群雄割拠の市場においてコスト的には厳しい状況です。
ブラシレスモーターはPCの冷却ファンやその他の比較的高効率動作で高信頼性が必要なアプリケーション用途で用いられます。ステッピングモーターは、その名の通り、モーターの回転の高度な制御が可能な点に特徴を有しており、FA向けの高精度なアクチュエータ制御などの工業用途やプリンターなどの民生機器に用いられ、両者は今後の市場の拡大が期待されます。
昨今の自動車のEV化に代表される車載市場においては、自動車の低速トルク大の状態から高速回転までの広範囲なモーター制御に対応し、かつバッテリーの放電までの寿命が走行距離に直結するため、モータドライバを用いたモーターの高効率な動作は不可欠です。その実現のため、マイコンによるモータドライバのPWM制御は、車載故の高出力向けインバーター制御技術と合わせて必須の技術といえます。
モータドライバは、単体部品を用いて初心者でも自作できる間口の広い技術分野ではありますが、本格的な制御には、モーターの動作原理への理解と、マイコンによる制御アルゴリズムやソフトウエア対応が必要です。
よって最近のモータドライバは専用のアプリケーションソフトなどのサポートにより、ユーザーが簡便に使いこなせるような工夫が取り入れられているものもあります。