差圧センサ

差圧センサーとは

差圧センサー

差圧センサーとは、センサーに接続された2点の圧力の差を計測するための圧力センサーです。

差圧センサーは、あくまでも2点間の差を測定することが目的です。よって測定する圧力は大気圧、負圧、流体圧力のいずれであるかは関係ありません。また、差圧センサーは絶対値を計測するものではないため、機器本体は比較的小型で、安価な製品が数多く販売されています。

さらに、差圧センサーはキャリブレーションも用意に行えるのも特徴の1つです。

差圧センサーの使用用途

差圧センサーは汎用的なセンサーであり、産業界の各分野で幅広く使用されます。 主な使用用途は、風速計、空調関係の機器です。

また、産業用機器においては、ポンプやコンプレッサなど機器の動作状況やフィルタの目詰まりの監視にも使用されます。フィルタの目詰まりとして用いられているものの代表例は、自動車用のディーゼルエンジンです。

ディーゼルエンジンでは、デーゼルパティキュレートフィルター (DPF) という、ディーゼルエンジンから排出される粒子状物質を取り除くためのフィルターが装着されています。差圧センサーは、DPFへの粒子の堆積状態を計測するために使われています。

その他、タンク内の液体の容量の測定にも有用です。このときに、差圧センサーの構造を利用し、タンク内の液体と大気圧といった異なる相 (形態) の差圧の測定にも利用できます。

差圧センサーの原理

差圧センサーは大きく分けて、ひずみゲージを使用したものと静電容量センサーを使用したものの2つに分類されます。 いずれの方式のセンサーにおいても測定原理は同じであり、2点間の圧力の差によって、ダイヤフラムが変形することを利用しています。ダイヤフラムの変形 (ひずみ) 量を測定するために、いずれの方式を用いるかは、それぞれの方式の特徴によって選定します。

1. ひずみゲージを使用したもの

ひずみゲージを使用したものは、ダイヤフラムにひずみゲージを貼り付け、ダイヤフラムの変形によるひずみゲージの抵抗値の変化を測定します。時間経過に伴う抵抗値の変化がほとんどないため、長期的でかつ静的な力を計測する用途に向いているのが特徴です。

2. 静電容量センサーを使用したもの

静電容量センサーを使用したものは、ダイヤフラムに設置した2つの電極間の距離がダイヤフラムが変形することで変化し、その変化に伴って電極間の静電容量が変化します。静電容量センサーは、その変化量を測定するものです。

静電容量センサーを用いた差圧センサーでは、構造的に時間の経過に伴いわずかに出力値が変化しますが、センサーの筐体が高剛性であり固有振動数が高くなることから、動的な計測には強い傾向があります。

差圧センサーのその他情報

1. 圧力測定における圧力の種類

さまざまな計測器で測定される圧力には、3つの種類があります。それぞれの値の意味と関係を、正しく覚えておくとよいでしょう。

絶対圧
絶対圧とは、絶対真空を基準とした圧力です。絶対真空とはある空間に物質が全くなにも無い状態を指します。

ゲージ圧
ゲージ圧とは、大気圧を基準とした圧力です。大気圧も場所や時間によって変化するため、ゲージ圧は測定値が同じであっても、場所や時間によって変化していることになります。

差圧
差圧はある場所の圧力を基準として、基準との差を表したものです。よって差圧を測定する際には、必ず測定対象以外に基準となる圧力もセットで測定しなければなりません。

2. 差圧センサーによるゲージ圧の測定方法

差圧センサーは、2点間の圧力の差を測定する機器です。片方を大気圧測定し、ゲージ圧を測定することもできます。

差圧センサーでゲージ圧を測定するためには、差圧センサーのHIGH側にゲージ圧を測定したい対象に接続し、LOW側は大気解放にすることが一般的です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/35/28/index.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/process/levelsensor/type/difference.jsp
https://www.ni.com/ja-jp/innovations/white-papers/11/pressure-measurement-overview.html

トルクセンサー

トルクセンサーとは

トルクセンサーの外観

図1. トルクセンサーの外観

トルクセンサーとは、図1のようにトルク (軸をねじる力) を計測するための装置です。

トルクセンサーは軸にトルクがかかったときの軸の微小のねじれをトルクに換算し、出力・表示します。生産ラインでのトルク管理や産業機器の性能評価など、トルクの計測が必要な様々な場面で使われています。

製品によってはトルクゲージ、トルクメーターなどと呼ばれることもあります。名称の使い分けにこれといったルールはありませんが、おおむね次のような使い分けがあります。本記事では、どのような使われ方であっても名称は「トルクセンサー」に統一します。

  • トルクセンサー
    電動自転車やロボットなどに組み込まれ、検知したトルクをモーターやロボットの制御に使うための計測装置。
  • トルクゲージ
    ドライバーなどの締め付けトルクを測定して、表示器でトルク値をその場で確認するための計測装置。
  • トルクメーター
    モーターの試験装置で使われる計測装置で、モーターのトルクを評価するために使われる。

トルクセンサーの使用用途

トルクセンサーが使われている身近な例は、電動アシスト自転車です。電動アシスト自転車は、人間がペダルを踏む力 (トルク) をトルクセンサーが検知します。そのトルクに応じてモーターが必要なアシスト力を出して、ペダルを踏む負担を減らしています。

トルクセンサーが多く使われている領域は産業用途です。産業用途では主に品質管理や試験研究のために使用されます。

1. 品質管理

品質管理の目的では、主に次のような状況で使用されています。

  • 抜き打ち検査
    製造中の容器のキャップがどの程度の強さで締まっているかの検査。
  • 定期点検
    製造ラインで使用される電動ドライバーが正常な範囲で作動しているか、始業前のチェック。

2. 試験研究

試験研究の目的では、主に次のような状況で使用されています。

  • 強度測定
    試験材料や部品のねじれに対する強度の測定。
  • モーター性能評価
    モーターに負荷をかけて性能評価するための測定。
  • 機械の回転トルク測定
    輪転印刷機などのローラーのトルクを測定し、機械の最適な運転条件を決めるための測定。

トルクセンサーの原理

トルクセンサーは、次のような順番でトルクを検出しています。

  1. 軸にねじりの力 (トルク) が加わる。
  2. トルクによって、軸にねじれ・ひずみが発生する。
  3. 軸のねじれ・ひずみを測定する。
  4. 測定量から、軸にかかるトルクを算出する。

軸のねじれ・ひずみは電気信号として処理・出力されます。トルクセンサーではアンプが搭載されている製品も多く、電気信号をアンプで増幅させてA/Dコンバータで計測しやすい値に出力されます。トルクセンサーによっては表示計が備わっている製品もあり、トルク値をその場で目視で確認することができます。

トルクセンサーの種類

軸のねじれやひずみを測定する方式は様々にありますが、現在実用化されているトルクセンサーでは次の4つの方式がよく使われています。

1. ひずみゲージ式トルクセンサー

ひずみゲージ式トルクセンサーの原理

図2. ひずみゲージ式トルクセンサーの軸

軸のひずみをひずみゲージで測定する方式です。ひずみゲージとは、伸び縮みすることで変化する電気抵抗からひずみを測定するセンサーです。図2のように、軸にトルクが加わると軸は±45°方向に引張・圧縮の応力が発生します。この応力方向のひずみをひずみゲージで測定します。

2. 静電容量式トルクセンサー

軸のひずみをコンデンサーの静電容量の変化で測定する方式です。軸に2枚の電極を配置し、軸がひずむことで電極同士の位置が変わることで変化する静電容量を測定します。

ひずみゲージ式と比べシンプルな構造、かつ軸長を短くすることができる方式で、ロボット用トルクセンサーで広く採用されています。

3. 磁歪式トルクセンサー

軸のひずみをコイルのインダクタンスの変化で測定する方式です。軸にねじりの力が働くと、透磁率 (磁束の通りやすさ) が変化します。この原理は逆磁歪効果と呼ばれています。磁歪式トルクセンサーは軸の外側にコイルを配置し、軸の透磁率の変化をコイルのインダクタンスの変化で検知します。

磁歪式トルクセンサーは非接触でトルクを測定できるため、次のようなメリットがあります。

  • モーターやエンジンの回転軸など、回転している軸のトルクが測定可能である
  • センサーの軸への貼り付け加工が不要なため、軸の強度を損なわずにトルクを測定できる

4. 光学式トルクセンサー

軸のひずみを光学センサーで測定する方式です。軸のねじれ・ひずみが発生すると、投光部と受光部の位置がずれ、受光量に差が生じます。この受光量の差を電気信号に変換し、トルクとして検出します。

トルクセンサーのその他情報

トルクセンサーを内蔵した製品

近年の技術の発達により、トルクセンサーは小型になり、トルクセンサーを内蔵した製品も出てきました。ここでは産業用途でのトルクセンサーを内蔵した製品を紹介します。

1. トルクセンサ―内蔵モーター
モーター、減速機、トルクセンサーが一体になった製品です。減速機やトルクセンサーを外付けする必要がないため、装置を小型化することができます。

トルクセンサーによって出力軸のトルクを直接測定できるため、精度の高いトルク制御が可能となります。これによって装置を滑らかに駆動させたり、人との接触を検知してより安全な装置を実現することができます。

2. ロボットのトルクセンサー
人協働ロボットに内蔵されたトルクセンサー

図3. 協働ロボットに内蔵されたトルクセンサー

トルクセンサー内蔵の多関節ロボットが近年製品化されています。特に協働ロボットと呼ばれるカテゴリーでトルクセンサー内蔵型のロボットが増加傾向です。図3のように協働ロボットに内蔵される場合は、円筒形状でロボットアーム内に組み込まれています。

トルクセンサーはロボットの回転軸の出力トルクを検出し、ロボットの作業で必要となる押し付け力など力を制御したり、人や障害物と接触したことを検知したりします。ロボットにとってトルクセンサーはより高度な作業を行い、人と同じ空間で一緒に働くために必要なデバイスです。この分野のトルクセンサーは今後も市場の成長が見込まれています。

参考文献
https://www.tohnichi.co.jp/products/categories/30
https://www.forcegauge.net/catalog/products/top/torquegauge/torque_gauge
https://www.unipulse.tokyo/productitems/torque-meter/

環境センサー

環境センサーとは

環境センサーとは、周辺の環境情報を検出し、その環境情報を定量的に計測するために用いるセンサーです。

環境センサーの計測対象として、温度や湿度や光の照度、CO2濃度、気圧、騒音などといった環境の各種パラメータの計測や、人体検出を対象とした人感センサーなどが挙げられます。昨今は、複数の環境センサーを小型USBタイプのパッケージに取り込み、評価の利便性を向上させている製品もあります。

環境センサーの使用用途

環境センサーは、情報を表示するために単体で使用される場合もありますが、他の機器や装置の制御のために外部環境情報を検出する際に使用される場合が多いです。

具体的な使用例は、温湿度管理が必要な機器や人が接近することで作動する自動ドア・照明、自動車、航空機、排気ガスや乗員の検出などです。自動車では、外気や車内温湿度、太陽光の日射量を測定し、エアコンの温度や送風量を決定することを目的としています。

また、航空機では機体の姿勢を制御することを目的として使用されています。

環境センサーの原理

環境センサーの原理は、環境の温度や湿度といった検出したい情報を各種の物理現象を活用して、電気的な信号に変換し、定量的な値として把握することにあります。環境センサーは、一般的には外部からの入力 (気象情報、光、遮蔽物、音など) を対象としており、微弱な信号を増幅して出力したり測定単位を変換したりする機能をもつセンサーも多いです。

代表的な環境センサーで、汎用性の高い温湿度センサーは、装置として一体型であることも多いですが、温度と湿度の測定はそれぞれ別々に行われ、温度は熱電対やサーミスタでの検出が一般的です。熱電対の場合は、2つの異なる金属線の電位差を活用します。サーミスタは、金属線と金属酸化物半導体で構成された抵抗体で温度の検出が可能です。

中でも、温度上昇とともに電子の移動度が上昇し抵抗値が下がる負の相関を有し、温度と抵抗の関係性が分かりやすくNTCサーミスタが広く使われています。湿度センサーは、空気中の水蒸気量を計測し、空気中に存在できる最大の水蒸気量との比率で湿度に換算しています。半導体の静電容量の変化を計測するタイプと半導体の抵抗値の変化を計測するタイプがあり、抵抗値検出の方が安価ですが、測定精度は静電容量タイプに劣る点に注意が必要です。

そのほか、赤外線や紫外線などの光を検出する光センサーと照度センサーなども環境センサーの一部です。これらのセンサーは光電効果を活用したフォトダイオードや、各種波長に対応したフォトレジスタなどを、光の強度の検出用に利用しています。なお、人が近づいた場合に反応する人感センサーも、その多くは人体から発せられる赤外線を検出しています。

環境センサーのその他情報

1. 喚気の指標となる環境センサー

環境センサーの1種としてあげられるCO2センサーは、室内の喚起指標として用いられることがあります。主に人の呼吸で発生する二酸化炭素の濃度を計測して、会議室や病院の待合室など人が多く集まる場所などで活用可能です。

建築物環境衛生管理基準等で、空気環境の基準の1つとして二酸化炭素の含有率も規定されています。室内においてはおよそ1,000ppm以下にすることが目安として定められています。人が多く集まっている状態は指標化されていないため、換気自他は各自の判断で行うこととなります。

塾や教室な人が多く集まる場所では、二酸化炭素濃度が濃すぎる場合、人間の集中力にも影響を与えると言われていることから、仕事の効率化向上も期待されています。

2. 環境センサーの小型化

昨今ではセンサー関連の技術も進歩しており、環境センサーも小型化されています。温度や気圧、加速度など複数の環境センサーを搭載した基板において、小さいものでは1cm弱にまで小さいものもあり、医療や農業、製造現場などさまざまな分野で活用可能です。

また、USB型の環境センサーもあります。一般的なUSBメモリよりも小型のサイズで、USBで給電することにより常時駆動させられます。USBやBluetoothなどの通信でネットワーク接続して、測定データの送信なども可能です。

しかし、パソコンのUSBポートに接続した場合、パソコン本体の熱により温度センサーの値が正しく計測できない恐れもあるため、延長ケーブルなどを利用することが推奨されています。

参考文献
https://omronfs.omron.com/ja_JP/ecb/products/pdf/CDSC-015.pdf
http://www.jisedaisensor.org/PDF/J30sensor.pdf
https://www.ratocsystems.com/products/subpage/wfevs1.html
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei10/
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000144.000023921.html
https://www.elecs.co.jp/microprism/

傾斜センサー

傾斜センサーとは

傾きセンサー

傾斜センサーとは、被測定物の傾きを検出する機器です。

水平位置からの傾きを測定し、被測定物の傾斜や角度、勾配を検出します。傾斜センサーは、対象物の傾きを検出する機器です。

重力を基準として水平位置からの傾きを測定し、物体の傾斜や角度、勾配を表示します。傾斜センサーはチルトセンサー、角度センサーとも呼ばれます。傾斜センサーは厳密には傾斜の検出部分のみを示し、これに入出力を調整する電子機器を付加した傾斜計といったものが存在します。

傾斜センサーの使用用途

傾斜センサーは傾きの検出や、そのデータを用いた姿勢制御などに使用されています。具体的には、建設機械の荷台の水平維持やクレーンの傾き検出、自動車のヘッドライトの照射角の調整などです。また、土地や部屋の水平確認、スマートフォンの画面の自動回転にも利用されています。

なお、厳密には傾斜センサーとは傾斜を検出する素子部分だけを指し、入出力を調整する電子機器を付加した場合は傾斜計と称されます。しかし、慣用的に入出力機器や演算機器がある装置も傾斜センサーと呼ばれます。

傾斜センサーの原理

傾斜センサーは、被測定物が傾斜することで電気的な出力を発生させて傾きを検出する機器です。傾斜は1軸方向、2軸方向および3軸方向で起こることから、検出したい傾斜の軸数に合わせて傾斜センサーを選択するのが重要です。

また、傾斜センサーは、従来よく使用されていた傾斜を検出するとスイッチがオン・オフされるスイッチ形態のものから、近年ではセンシング技術を組み合わせたものが主流となっています。そして、傾斜センサーの傾きを検出する手法には、初期から使われていた電電解液式、MEMS式などがあります。近年では、精度や応答時間の観点からMEMS式が主流です。

1. 電解液式傾斜センサー (静電量式傾斜センサー) 

電解液式傾斜センサーは、液体の表面が常に水平になる性質を用い、液体の傾きを静電容量の変化量として検出する仕組みです。具体的には、内部に空洞を有する筒状の本体の中に電解液 (導電性を有する液体) が長さ方向の半分程度の深さで封入されて、長さ方向で対向する電極板を有する構成です。

すなわち、対応する電極は長さ方向で半分ほど電解液に漬かった状態となります。電極板間に電圧を印加した状態で筒状の本体が長さ方向を軸に傾くと空洞内の電解液が水平を保つため、対向する電極には液体に漬かっている部分の差が生じて回路内の内部抵抗が変化します。電解液式傾斜センサーの傾き検出は、この回路の内部抵抗の変化を検出して角度に変換して行われます。

ただし、応答時間が比較的遅いことや、液面が振動による影響を受けやすいデメリットがあります。なお、電解液式傾斜センサーは、検出する一対の電極2組を直交させて配置することで、2軸の傾斜を検出可能です。

2. MEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 式傾斜センサー

MEMS式傾斜センサーは、微小電気機械システム技術を利用した傾斜センサーです。傾きにより部位がたわむことで電気的な出力が生じることで傾斜を検出します。MEMS式傾斜センサーは、本体内に一対の固定された固定電極と、この一対の固定電極の間にバネで指示された可動電極を有する構成です。

MEMS式傾斜センサーが固定電極および可動電極の支持方向を軸として傾くと、固定電極は動かず、可動電極はセンサーが傾いた方向に移動します。すなわち、各固定電極と可動電極間の静電容量が変化します。この静電容量の変化を検出して角度に変換するのがMEMS式傾斜センサーの仕組みです。

可動電極をXY方向に直交するように設け、それぞれを一対の固定電極で挟むようにすれば、2軸方向の傾斜を検出できます。

3. その他の方式

傾斜センサーで利用される他の方式としては、振り子式や水晶式などがあります。

振り子式傾斜センサー
振り子式傾斜センサーでは、本体の内部に振り子と磁気抵抗素子などの検知部を設けています。振り子傾斜センサーでは、本体が傾いて振り子が動いたことに起因する磁界の変化を検出し、これを傾斜角に演算しています。

水晶式傾斜センサー
水晶式傾斜センサーは、水晶振動子の特徴を活用した高感度な傾斜センサーです。水晶を加工したカンチレバーと保持部分が対向した状態で一端が固定され、カンチレバー、保持部分のそれぞれに電極が設けられています。

センサーが傾斜しても保持部分は撓まないのに対し、カンチレバーはたわみます。カンチレバーにたわみが生じるため、極板間距離が変化して静電容量も変化し、静電容量を周波数の変化として計測するのが水晶式傾斜センサーの仕組みです。静電容量から周波数への変換は傾斜センサーを水晶振動子や発信回路と組み合わせて実現させています。

傾斜センサーのその他情報

加速度センサー

傾斜センサーと同様に、傾きを検出するセンサーとして加速度センサーがあります。傾斜センサーは、センサー出力自体が傾斜角の情報をもって出力します。周波数変動が低いため、ゆっくりした動きや静止状態の傾斜角測定には有効です。一方の加速度センサーは、物体に加わる加速度を検出するセンサーです。

加速度センサーでは、ニュートンの運動法則である物体に働く加速度は外力に比例する法則を用いて、加速度そのものの測定や、外力が加わったことを検出するのに用いられます。加速度そのものを検出できるため、重力の計測や地震計測などで利用されます。また、外力が加わったことを検出できるため、傾き、振動、動き、衝撃、落下など、重力方向以外に前後左右の方向の動きの検出が可能です。傾斜センサーと比較すると、周波数帯域が広く早い動きの測定も対応しています。

このような差があることから、傾斜センサーは、例えば建機などのクレーン車や建設車両の転倒防止などに使われます。一方の加速度センサーは、例えばスマートフォンの縦横表示を使用環境に合わせて変更するアプリケーションなどに用いられます。

参考文献
https://pac-tech.com/files/libs/1718/202007021532529007.pdf
https://www.jcmanet.or.jp/wp-content/uploads/2017/03/1fe60fa1769b5144036195f2b900813b-1.pdf
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/261/261techno.pdf

メモリモジュール

メモリモジュールとは

メモリモジュール

メモリモジュールとは、複数のメモリチップを基盤に実装したものです。

マザーボードのメモリスロットに挿入して使用します。コンピュータのプログラムや処理内容を一時的に記憶させておくための電子部品です。

メモリモジュールにはサイズによって、主にDIMMとSO-DIMMがあります。

メモリモジュールの使用用途

メモリモジュールはデスクトップパソコンやノートパソコン、サーバー、産業用機器などでCPUと共に使われます。メモリをメモリモジュールに構成したことで、使用用途によってメモリ容量を簡単に増設ができるようになりました。

例えば、オフィス文書作成に使っているパソコンと同じモデルのパソコンにメモリモジュールを追加して、簡単な写真編集にも対応できるようになります。

メモリモジュールの原理

ほとんどのメモリモジュールは、DRAMメモリチップが複数個実装された基板から構成されます。DRAMは電荷を蓄えるキャパシタ (コンデンサ) とスイッチとしての電解効果トランジスタ (FET) 一対から成るメモリセル、メモリセルが集まったメモリセルアレイ、ビット線、ワード線等で構成されています。

DRAMのキャパシタ (コンデンサ) に蓄えられた電荷の有無で、1ビットの論理情報が記憶されます。電荷は時間経過で消失するため、1秒間に数回程度、電荷の更新 (リフレッシュ) が必要です。 ワード線に電圧が印加されると、メモリセルのFETがキャパシタとビット線を導通になり、キャパシタの電荷移動によって1ビットの論理情報”0″または”1″が読み出し、書き込みされます。

メモリモジュールの記憶容量は、メモリ容量で表されます。基板に実装されているDRAMメモリチップの個数によって決まり、大きいほどより多くの作業や同時作業を行うことが可能です。 メモリの規格とデータ転送レートをまとめて、メモリクロックをスペックで示し、データ転送レートが大きいほどデータ転送を高速に行えることを意味します。

メモリモジュールの種類

メモリモジュールには、形状によっていくつかの種類があります。 DIMM以前に普及したSIMM、信号出力の効率化を図ったDIMM、企業が独自に開発したRIMMなどがありますが、一般的には高速かつ大容量のDIMMが広く採用されています。

1. SIMM (英: Single Inline Memory Module)

SIMMとは、基板の表裏両面で同じ信号を出力するよう設計されたメモリモジュールです。DRAMメモリチップが4または8個単位で構成されています。取り付けピン数がDIMMより少なく、大きさも一回り小さいのが特徴です。

2. DIMM (英: Dual Inline Memory Module)

DIMMとは、基板の表面と裏面でそれぞれ異なる信号を出力するよう設計されたメモリモジュールです。SDRAMメモリチップ規格が採用されています。 さらにDIMMはサイズによって2種類に分けられます。

  • DIMM: デスクトップPC向け。
  • S.O.DIMM: ノートPC、プリンタやルータなどのハードウェア向け。DIMMの半分程度の大きさ。

3. RIMM (英: Rambus Inline Memory Module)

RIMMとは、米国のRambus社が開発したDirect RDRAMと呼ばれる特殊なメモリモジュールです。DIMMとは異なる独自の技術で作られており、帯域幅が広い代わりに遅延時間(レイテンシ、CL)が比較的大きく高価である特徴があります。

メモリモジュールのその他情報

1. メモリチップの規格

メモリチップにも規格が存在しています。規格名として、DDRn (nには世代を示す数字が入ります) が挙げられます。現在、市場で流通しているのはDDR2、DDR3、DDR4、DDR5の4世代です。

メモリモジュールは、同一規格のメモリチップで構成する必要があります。そして、世代間で互換性はありませんので、今までのDDR3に代わってDDR4のメモリモジュールを使用するようなことはできません。

最新の世代になるほどメモリのデータ転送速度は高速となりますが、CPUやマザーボードが対応している必要があります。

2. デュアルチャネル

デュアルチャネルは、同一規格・同一容量のメモリモジュールを2枚1組で使用しデータ転送速度を2倍にする方式です。マザーボードがデュアルチャネルに対応している必要がありますが、多くのモデルが対応しています。

参考文献
http://www.ritsumei.ac.jp/se/re/fujinolab/FujinolabHP_old/IntroLSI/IntroLSI-11.pdf

漏電リレー

漏電リレーとは

漏電リレー

漏電リレーとは、電気回路の漏電状態を検知するための機械装置です。

地絡継電器 (英: Ground Relays) とも呼ばれます。電気回路は、ポリエチレンやビニルといった絶縁樹脂などによって周囲と絶縁されている場合が一般的です。

この絶縁物の破損などによって電気回路の一部が導電物と接触し、電気が流れる状態となることを漏電と呼びます。漏電した電気回路および周辺金属を誤って触れると、人体へ感電し人身災害の原因となります。建屋鉄骨などを電気が伝った場合は、火災の原因にもなるため注意が必要です。

漏電リレーを使用し、電源を遮断または警報を発報することで、上記現象を防ぎます。

漏電リレーの使用用途

漏電リレーは多くの電気回路で使用される機器です。以下は漏電リレーの使用用途一例です。

1. 漏電遮断器

漏電遮断器は、漏電を検知した際に自動で電源を遮断する装置です。一般的には低圧電圧回路において使用される機器で、家庭用分電盤の内部などにも設置されています。

2. キュービクル内部

キュービクルは、高圧トランス遮断器を内部に内蔵した電力需給用の筐体で、スーパーマーケットや公共施設などに利用されます。キュービクル内部には、漏電火災警報器などが内蔵され、漏電を早期に検知します。

3. 変電所におけるガス絶縁開閉装置 (GIS) や真空遮断器制御用

変電所では、高圧以上の電圧である電気を取り扱うため、通電・遮断に真空遮断器などを使用します。これらは漏電を検知する機能を持たないため、漏電リレーを組み合わせて制御します。

漏電リレーの原理

漏電リレーが漏電を検知する原理はいくつか存在します。

1. 直流の場合

直流電圧が対象の場合は、対地電圧を検知する方法があります。直流回路の2端子は中間地点が対地間0Vとなっていることが一般的ですが、漏電すると地絡した配線端子側が対地間0Vとなります。したがって、両端子の対地電圧を測定することで漏電を検知することが可能です。

2. 交流の場合

交流の場合は、往復する電流を測定することで検知することも可能です。一般的な電気回路は往復する電気の合計が一致しますが、地絡して対地間に電流が流れると不一致になります。したがって、往復する電流を測定し平衡しているかを確認することで漏電を検知することが可能です。

3. 零相電流の場合

そのほか、零相電流を測定する方法も存在します。交流電流を通電するケーブル周辺には常に磁場が発生していますが、往路と復路で打ち消し合っている特徴があります。

地絡が発生すると一方の磁界が強くなるため、完全に打ち消し合うことができなくなり、磁場による零相電流が流れます。この零相電流を確認することで、漏電を検知することが可能です。

漏電リレーの種類

漏電リレーには大きく分けて、無方向性と方向性の2種類があります。どちらも零相変流器で零相電流を測定することで、漏電の有無を判断し、回路に漏電の信号を送信する仕組みです。

1. 無方向性漏電リレー

零相変流器によって漏電した場合の事故電流を検出する仕組みです。地絡継電器 (英: Ground Relays)とも呼ばれます。

三相交流回路の電流は、各線に正相方向に流れる正相電流、逆相方向に流れる逆相電流、同相で流れる零相電流の3種に分けられます。漏電時には零相電流が流れるため、零相変流器で漏電の確認が可能です。

無方向性は地絡の有無のみを確認するため、上位系統などで地絡が発生した場合に誤作動する危険があります。

2. 方向性漏電リレー

零相変流器と零相電圧検出器によって、漏電した場合の事故電流を検出する仕組みです。地絡方向継電器 (英: Directional Ground Relays)とも呼ばれます。

零相電圧検出器は、零相電圧を検出するための機器で、機器内部のコンデンサによって零相電圧を検出します。 零相電圧は通常0Vですが、地絡の場合に電圧が発生します。

この電圧を直列接続した角相コンデンサと検出用コンデンサによって分圧し、検出用コンデンサにかかる電圧をさらに変圧器で下げたものを検出しています。地絡方向継電器では地絡の方向性を検知します。したがって、上位系統の地絡では誤作動せず、自系統で発生した地絡のみを遮断することが可能です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/protection_relay/basic/02/02.html
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/lvd/lvcb/pmerit/elrly/index.html

厚み測定器

厚み測定器とは

厚み測定器

厚み測定器とは、被測定物の厚みを測定するための機器です。

厚み測定器には被測定物に接触して厚みを測る接触タイプと、被測定物に接触せずに厚みを測る非接触タイプがあります。

厚み測定器の使用用途

厚み測定器は被測定物の厚みを測る機器なので、様々なものの厚みの測定に使用されています。被測定物に接触して厚みを測る接触タイプとして代表的なのは、ノギスや超音波厚み測定器です。ノギスはパイプの肉厚などを測定し、超音波厚み計は挟み込めないもの、例えばタンクの腐食検査などに使用されています。

一方、被測定物に接触することなく厚みを測る非接触タイプとしては、赤外線式や放射線式のものが挙げられます。赤外線式は、プラスチックフィルムの厚さなどの測定に使用され、放射線式は、冷間圧延金属板の厚さ測定などに利用されています。

厚み測定器の原理

厚み測定器には、素早く測定できる接触タイプと、光を当てることで非破壊測定できる非接触タイプがあります。接触タイプの厚み測定器は被測定物に機器を直接当てて厚みを測定する機器で、測定器の基準面から被測定物までの距離の演算 (相対値測定)をおこなっています。一方の非接触タイプの厚み測定器は、被測定物に接触すること無く厚さを測定し、被測定物の表面と相対向する裏面へのアプローチによる差分の検出から演算 (絶対値測定)して算出する仕組みです。

厚み測定器の種類

厚み測定器には、接触タイプと非接触タイプがあります。

1. 接触タイプ

接触タイプの厚み測定器には、安価かつ手軽で目視しやすいなどのメリットがあります。しかし、接触することから、被測定物の破損や変形による誤差などに注意が必要です。この接触タイプの厚み測定器として代表的なノギスと超音波厚み測定器について解説します。

ノギス
長さや外径、内径、深さ、段差を測定できる部位を持つ測定器で、本尺、副尺と呼ばれる目盛がついています。アナログ、ダイヤル、デジタルのものがあり、値の確認が容易なデジタル式が広く普及しています。操作は簡単で、ジョウをスライドさせて開き、被測定物をゆっくり挟み込んで数値を確認するだけです。

超音波厚み測定器
超音波厚み測定器では、被測定物に超音波を照射し、超音波の伝播時間をもとに対象物の厚みを計算します。超音波は探触子 (プローブまたはトランスデューサー) から照射され、探触子を被測定物表面に接触させます。

そして、探触子から照射した超音波が被測定物の接触面と反対側の面で反射し、探触子に戻ってくるまでの伝播時間を計測して厚みを算出する仕組みです。厚みは以下の式で算出されます。

  厚みd = 1/2 ×被測定物の音速c×伝播時間t

このとき、伝播時間tは往復の時間であるため、1/2を乗じて片道の時間、つまり被測定物の厚みが計算可能です。

2. 非接触タイプ

非接触タイプの厚み測定器は、大掛かりな装置になりますが、被測定物を傷つけることなく測定出来るのがメリットです。非接触タイプの厚み測定器としては、赤外線式と放射線式およびレーザ変位センサ式があります。

赤外線式
赤外線式の厚み測定器は、赤外線が特定の物質を透過する性質を利用して絶対値としての厚みを測定する測定器です。被測定物に赤外光を照射すると、赤外線照射面と相対向する裏面でそれぞれ反射します。これらの反射光をプローブで受光し、反射光の時間差 (干渉差) から厚みを計算します。

放射線式
放射線式厚み測定器は、放射線が被測定物に吸収される量を測定して厚みを算出します。この吸収は被測定物の色調の影響を受けないことから、放射線式厚み測定器は多くの製品で使用されています。

放射線の種類としてはα線、β線、γ線、X線などがありますが、原理はすべて同じです。放射線を被測定物に照射し、物体への吸収量 (減衰量) を測定し、厚みに換算します。放射線の種類は、被測定物に応じて適したものが選択されます。各放射線源に適した材料は以下のとおりです。

  • α線…高分子薄膜
  • β線…金属薄膜、ゴム、プラスチックなど
  • γ線/X線…金属板など

レーザ変位センサ式
レーザ変位センサ式厚み測定器では、レーザ変位センサを1台若しくは2台使用して厚さを算出しています。1台のレーザ変位センサを用いた場合は、被測定物の表面と裏面の反射光の差から厚さを算出します。2台のレーザ変位センサを使用する場合は、被測定物を挟み込んで透過光の差により厚さを算出する仕組みです。

2台のレーザ変位センサを使用する場合には、挟み込んだレーザ変位センサの上下それぞれの基準面から被測定物表面までの距離を測定し、基準面間の距離から引くことで被測定物の厚みを算出しています。

厚みd=基準面間距離d0-(基準面上〜被測定物表面までの距離d1+基準面下〜被測定物表面までの距離d2)

厚み測定器のその他情報

超音波厚み測定器における注意点

超音波厚み測定器においては、ゼロ点・第1回底面エコー方式 (パルス・エコー方式) と多重エコー方式 (エコー・エコー方式) 、表面エコー・第1回底面エコー方式 (インターフェース・エコー方式) があります。それぞれ特徴が異なるため、被測定物に合わせてどの方式を選ぶかが重要です。最も一般的なのは、パルス・エコー方式 (ゼロ点・第1回底面エコー方式) で、被測定物の表面状態があまり良くない場合や厚物、湾曲部なども測定可能です。

なお、超音波厚み測定器は、超音波を利用するため、発泡スチロールのような超音波が通過できない気泡を含む素材や、超音波が減衰してしまい受信できないゴムなどは測定できません。

また、空気の層は音響抵抗を持ち、探触子と被測定物間の超音波の伝播を阻害します。このため、接触触媒 (カプラント) と呼ばれる専用の液体を探触子と被測定物の間に塗布し、空気の音響抵抗を極力無くす必要があります。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/6-04-02-01.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/12/9/12_9_709/_pdf/-char/ja

評価ボード

評価ボードとは

評価ボードとは、ICや特定の機能を持つ回路、入出力端子を搭載した電子基板のことです。

リファレンスボードとも呼ばれます。半導体メーカーによるCPU評価ボードや、マイコンメーカーによるマイコン開発ボード (ターゲットボード) などが存在します。

評価ボードの使用用途

評価ボードは搭載されているICの性能確認や回路の互換性確認、ハードウェア、ソフトウェア開発などの目的に利用されます。 用途に応じたICや電子部品が搭載されている評価ボードを選ぶ必要があります。

評価ボードの使用例は、以下のとおりです。

  • 機器メーカー (評価)
    搭載ICや回路の性能評価、互換性確認を行うため。
  • 機器メーカー (開発)
    評価ボードを利用して新規製品やソフトウェアを短時間、低コストで開発するため。
  • 教育機関、学生、一般向け
    電子工学、電気回路、プログラミングなどの教育学習のため。

各半導体メーカーから多種多様な評価ボードが発売されていますが、代表的な評価対象は以下のとおりです。

  • 車載システム
  • ビデオカメラ
  • 工業用ロボット
  • 地上/衛星通信
  • 移動体通信端末
  • 航空宇宙関係

身近な家電製品に近いものからロボットや衛星に関するものまで、幅広い製品での評価に使われています。

評価ボードの原理

動作原理としては、電源が供給されるとマイコンのメモリに書き込まれているプログラム内容に沿ってマイコンが動作します。 プログラムは任意に書き換えが可能で、PCで作成したプログラムのソースコードを「ライタ」と呼ばれるソフトウェアを使ってマイコンのメモリ領域に書き込みます。

デバッグ作業を支援するためのハードウェアがエミュレータです。エミュレータは、評価ボードに接続して使用します。

評価ボードの構成

評価ボードは、大抵の場合1枚のプリント基板にICチップや通信機器、センサー、入出力端子などを備えています。 評価ボードには搭載されている部品によって様々な種類がありますが、マイコンメーカーが販売するマイコン評価ボードが一般に広く普及しています。

マイコン評価ボードとは、搭載されているマイコンの機能や回路特性を評価、実験するための評価ボードです。

1. マイコン

プログラムを書き込み、他の回路と組み合わせて任意の動作をさせるためのLSIです。様々な処理を行うCPUと、プログラム書き込みのためのフラッシュメモリやSRAMなどで構成されます。

2. 電源IC

AC100Vの電源電圧からマイコンが動作するための電圧を作り出すICです。

3. クロック

マイコンを動作させる特定周波数をもつ発振器です。マイコンに内蔵されていることもあります。

4. 通信機器

プログラミングで外部PCとの通信を行うためのUSB端子やLANが挙げられます。

5. 入出力端子

通信/電源用のUSB端子や、外部インターフェースにデータを送信するための入出力(I/O)ピンが挙げられます。

 

デバッグ機能として、マイコンの状態を目視で確認するためのLEDやリセットボタン、動作の切り替えスイッチ、外部情報を計測するセンサー、収集したデータを表示させるための7セグメント表示器などがあります。

評価ボードのその他情報

1. ICE (In Circuit Emurator) 

CPUの機能を担うことができ、開発中の基板にCPUの代わりに装着することでプログラムの動作検証が可能になります。ターゲットボード上にマイコンが無いため、ICE自体にエミュレーションチップやメモリを持っており、周辺回路の動作はターゲットボードが担います。リアルタイムトレース等高度なデバッグ機能が使用可能です。

一般的には、マイコン評価ボードを動作させるためのサンプルプログラムが添付されていることが多いです。

2. 評価ボードの使い方

評価ボードは評価用のPCと接続して使用することが多いです。インターフェースはUSB、RS232Cなど、PCが装備している端子を実装しているものが一般的です。

ボードの電源は一般の家庭用100Vコンセントに差し込めるACアダプターが付属しているものや、電圧の変化による評価も視野に入れて、ACアダプターではなく安定化電源などの電源ユニットに接続するケーブルの場合もあります。

評価用のPCでの環境は評価ボードのメーカーから提供されている、その評価ボードに特化したソフトウェアパッケージを使用することが多いです。しかし、納入を受けたメーカー等で独自に評価用ソフトウェアを準備することもあります。

また、オシロスコープやロジスティックアナライザーなどの測定機器を使用して波形計測することが多いので、評価ボードによってはあらかじめそれらの機器を接続するための端子を用意していることもあります。

3. 評価ボードの価格

半導体メーカーや目的により価格に大きな差がありますが、RFIDなどワイヤレス技術の開発にのみ特化した小型なボードで4,000円未満のものもあります。基本的には10万円前後までで購入できるものが多くなっており、学習の目的での導入コストを考えても無理のない範囲で準備が可能です。

なお、メーカーが自社製品の開発のためにフルカスタムでオーダーする場合は、半導体メーカーの見積もり次第となります。

参考文献
http://rohmfs.rohm.com/jp/products/databook/applinote/ic/audio_video/bu94603kv_evm-j.pdf https://www.tij.co.jp/jp/lit/pdf/jaja310
https://japan.xilinx.com/products/boards-and-kits/see-all-evaluation-boards.html
https://www.mouser.jp/new/xilinx/xilinx-zynq-ultrascale-zcu102-eval-kit/
https://www.macnica.co.jp/business/semiconductor/articles/pickup/130649/
https://eetimes.jp/ee/articles/2101/25/news030.html

プレス加工機

プレス加工機とは

プレス加工機

プレス加工機とは、圧力をかけて材料を変形加工させる装置です。

油圧や空圧、機械圧によって材料を加圧する製品が多いです。上下に分かれた2つの金型の中に部材を挟み込み、上から押し潰すことでせん断や折り曲げ、絞り加工などを行います。 

プレス加工機は自動化が容易であり、高い生産性を実現することが可能です。一度に多くの材料を効率的に加工することが可能で、短時間で大量の製品を生産することができます。

また、プレス加工機は高い精度で作業を行うことが可能です。加工に使用される金型やダイは正確に設計されており、加工される製品は一貫性のある形状や寸法を保つことができます。

プレス加工機の使用用途

プレス加工機は、さまざまな産業や製造業界で幅広く使用されています。以下は主な使用用途の一例です。

1. 自動車産業

プレス加工機は、自動車部品の製造に広く使用されています。ドアやトランクなどのパネルを金型によって加工します。高い精度と強度を持つパネルを大量生産することが可能です。

また、自動車のフレームやシャシー部品の製造にもプレス加工機が使用されます。鋼板を加工して、剛性と耐久性の高いフレーム部品を製造することが可能です。

2. 家電製品

プレス加工機は家電製品の金属ケースやカバーの製造に使用されます。冷蔵庫やエアコンなどの製品において、外観のデザインや機能性を考慮したケースを加工します。プレス加工機によって、汎用品を大量生産することが可能です。

また、家電製品にはさまざまな金属部品が含まれています。プレス加工機は部品のせん断加工曲げ加工を実施することで、家電製品生産に寄与します。

3. 建材

プレス加工機は、建物の外装パネルの製造に使用されます。金属板やアルミニウムコンポジットパネルなどの材料を加工し、耐久性と外観の要件に合ったパネルを製造することが可能です。

また、建物の窓やドアのフレーム、フィッティング部品の製造にも使用されます。正確な形状と高い耐久性を持つ部品を製造することができます。

プレス加工機の原理

プレス加工機の基本的な原理は、材料に圧力をかけて変形させることです。プレス加工機で加工する材料は金属板やシートが一般的で、所定のサイズや形状に切断されてプレス機にセットアップされます。加工する形状に応じて、特定の形状を持つ金型が用意されることが多いです。金型は上下に動くプレスラムと連動し、材料に加圧します。

材料はプレス機の台座上に配置され、金型の上部に正確に位置するように設置されるまでがプレス準備です。その後、プレス加工機のプレスヘッドが下降し、金型と材料に圧力をかけます。プレスヘッドは油圧シリンダーやモーターによって制御され、所定の速度や圧力で下降することが可能です。

材料は圧力によって金型の形状に従って変形します。曲げ、押し出し、穴あけ、エンボスなど、さまざまな加工操作が可能です。ダイの形状とプレスラムの制御により、材料は正確な形状や寸法で変形されます。

プレス加工機の種類

プレス加工機の種類は、動作原理から機械プレス、油圧プレスなどに分類されます。また、プレス方式から、PRG方式とTDM方式に分類されます。

1. 機械プレス

モーターの回転力をクランク機構により直線運動にかえ、スライドを上下させてプレスする方式が機械プレスです。 油圧式のような油を使用しないため、比較的安全性が高い方式です。加工速度が速いため、大量生産に適しています。 

2. 油圧プレス

油圧によってスライドを上下させる方式です。 油圧方式は加工スピードや圧力が自由に変更可能であるため、幅広い加工が可能です。

したがって、加工精度が欲しい部品や深絞り加工を行う際は、ほとんどが油圧プレス方式となっています。ただし、加工速度自体は遅いこともあり、大量生産には不適な場合も多いです。 

3. PRG方式

プレス加工における形状制御を目的とした制御方式です。この方式では、材料の変形や形状加工を達成するためにプレスヘッドの動きをプログラムによって制御します。プレスの下降速度、停止位置、加圧力などのパラメータを指定します。

複雑な形状成形が可能です。形状に基づいた加工プログラムを使用することで、高精度で加工ができます。また、複数の工程を組み合わせた加工や、異なる形状の部品を同一のプレス機で加工することも可能です。

4. TDM方式

大量生産におけるプレス加工の効率化を目的とした制御方式です。単発プレス方式ともよばれ、1つのプレス加工機につき1回の加工のみ行います。そのため、複数のプレス加工機を渡って成形します。

切板材を使うので、加工自由度が高く歩留りが良いという点が特徴です。また、複数の工程を一度に実行できるため、部品の取り回し時間を短縮し、生産性を向上させることができます。

プレス加工機のその他情報

プレス加工機の生産速度

加工速度を決める要因は、以下のとおりです。

1. プレス加工機の限界加工速度
上下運動するプレス加工機のストローク量によって限界加工速度が決まります。

2. 次の加工工程への送りスピードとピッチ
プレス加工機が上下している間に次工程へ材料を搬送するため、設備の送りスピードとピッチが影響することが多いです。

3. 材料揺れ
次工程へ材料を搬送した際に材料が揺れている状態では安定した品質で加工ができません。プレス加工機破損の恐れもあるため、揺れが収まるまで次の加工は不可能です。

4. スクラップの排出
加工速度を上げることで、せん断加工時に発生するスクラップがプレス加工機内で詰まることがあります。スクラップの詰まりはプレス加工機破損の主な原因でありスクラップ排出は慎重な検討が必要です。

5. 製品排出時のスピード
加工速度が速いほど、製品排出のスピードは速くなります。出荷時の荷姿によっては、作業要員の増員対応や容器に整理して入れる必要があるかを考慮して加工速度を落とす場合もあります。

参考文献
https://j-fma.or.jp/the-forming-machinery/press-machine
https://www.kousakukikai.tech/presses/
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/machining/plasticity/press.jsp
https://j-fma.or.jp/the-forming-machinery/press-machine

はんだ付けロボット

はんだ付けロボットとははんだ付けロボット

はんだ付けロボットとは、ロボットにはんだごてが取り付けられており、自動ではんだ付けする装置です。

ロボットアームなどを用いていることから、従来の実装マウンターやはんだ付け装置などのはんだ付け自動化装置よりも、狭い場所でのはんだ付けが可能である点が特徴です。従来は、人間の手作業でしか狭い場所へのはんだ付けはできませんでした。

はんだ付けロボットの使用用途

はんだ付けロボットは、はんだ付けに使用されますが、大量生産品よりも多品種で少量の製品の製造に向いています。また、局所的なはんだや耐熱温度の低い部品へのはんだ付けなど、従来人間の手作業でおこなっていた細かく精密な作業が得意です。しかし、その分他のはんだ付け自動化装置よりも作業に時間がかかります。

例えば、スマートファイバーセンサのアンプの基板のはんだ付けは、ロボットを導入したスライドはんだ工法で行われています。ランド幅0.5mmピッチが1mmいう精密な箇所のはんだをロボットが担当し、作業の効率化が図られています。

はんだ付けロボットの原理

はんだ付けロボットは、アームを有するロボット、はんだごて、コントローラ、条件設定などをおこなうティーチングペンダントによって構成されています。窒素ガス発生装置を備えており、はんだごての先やはんだ表面の酸化を防止しているものもあります。

ロボットの種類には、小型の卓上ロボットのほか、ロボットアームの様式に応じてスカラロボットおよび直交ロボットなどがあります。ティーチングペンダントからはんだ付けの条件を入力して、所定のはんだ付けをさせれば使用可能です。

はんだ付けロボットの種類

はんだ付けロボットには、卓上ロボットやスカラロボットおよび直交ロボットなどがあります。このほか、はんだ付けの工法によっても種類分けされます。はんだ付けの工法の代表的なものは、コテ工法とレーザー工法です。現在でも、コテ工法が多く使用されています。

1. コテ工法

コテ工法は、はんだごてを350℃近くまで加熱し、コテ先からはんだを流し込み金属と接合する工法です。クリームはんだを塗布した後、加熱溶融して接合するリフロー工法などと比較すると、電子部品に直接熱が加わらないのが特徴です。このため、熱ダメージを抑えて品質の高いはんだ付けをおこなうことができます。

2. レーザー工法

レーザー工法では、レーザー光によりはんだを溶融させています。レーザー光をレンズやミラーで集光して高密度のビームにすると、物体を高温に加熱出来ることを利用した工法です。レーザービーム径が当たる部分に部品とはんだを置き、はんだ付けします。このレーザー工法は、非接触ではんだ付けすることから狭くて細かい加工に好適です。

はんだ付けロボットのその他情報

1. はんだ付けロボットを導入するメリット

はんだ付けロボットを導入するメリットは、作業の自動化と高速化および作業の正確性が上がることです。はんだ付けの良し悪しは、はんだゴテの温度や基板に対する接触時間および接触面積などのブレが左右します。

各要素が適切に管理されていないと、温度が低すぎること、接触時間が短いことによりイモ付けはんだが生じます。イモ付けはんだが起きると、強度が弱くもろい接着になります。熱の伝導不足により生じるヤニ付けはんだも同様です。特に経験不足の作業初心者が多い現場などではこのような事態が発生しやすく、不良品率が上がり生産効率が低下します。

このような場合に、はんだ付けロボットを現場に導入し、熟練者のような作業をロボットに実行させることが有効です。はんだ付けロボットの多くは、位置決め制御が0.1mm単位で可能で、高い位置再現性 (作業の正確さ) を持ちます。さらに、モーター駆動による高速動作が可能であり、人間よりも作業スピードが速い上、疲れなどによるヒューマンエラーも生じません。

2.  はんだ付けロボットのシステム化

はんだ付けロボットの多くは、比較的簡単にシステム化が可能です。通常、ロボットを生産ラインなどに組み込む場合は複雑なプログラミング作業が必須です。例えば垂直多関節ロボットであれば、専用のロボット言語などを用いて「ロボットに行わせたい作業」をプログラム化してインプットする必要があります。

しかし、はんだ付けロボットのように、ロボットが実施する作業がすでに決まっている場合は、多くの場合、ロボット開発元によってプログラミングがなされています。そのためユーザーは、導入後、はんだ付けの位置情報や、加熱時間などのパラメータを設定すれば生産ラインに組み込み可能です。

参考文献
https://www.apolloseiko.co.jp/product/detail/8/
https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1809/11/news072_3.html
https://www.hakko.com/japan/hikaru/pages/topic1.html