厚み測定器とは
厚み測定器とは、被測定物の厚みを測定するための機器です。
厚み測定器には被測定物に接触して厚みを測る接触タイプと、被測定物に接触せずに厚みを測る非接触タイプがあります。
厚み測定器の使用用途
厚み測定器は被測定物の厚みを測る機器なので、様々なものの厚みの測定に使用されています。被測定物に接触して厚みを測る接触タイプとして代表的なのは、ノギスや超音波厚み測定器です。ノギスはパイプの肉厚などを測定し、超音波厚み計は挟み込めないもの、例えばタンクの腐食検査などに使用されています。
一方、被測定物に接触することなく厚みを測る非接触タイプとしては、赤外線式や放射線式のものが挙げられます。赤外線式は、プラスチックフィルムの厚さなどの測定に使用され、放射線式は、冷間圧延金属板の厚さ測定などに利用されています。
厚み測定器の原理
厚み測定器には、素早く測定できる接触タイプと、光を当てることで非破壊測定できる非接触タイプがあります。接触タイプの厚み測定器は被測定物に機器を直接当てて厚みを測定する機器で、測定器の基準面から被測定物までの距離の演算 (相対値測定)をおこなっています。一方の非接触タイプの厚み測定器は、被測定物に接触すること無く厚さを測定し、被測定物の表面と相対向する裏面へのアプローチによる差分の検出から演算 (絶対値測定)して算出する仕組みです。
厚み測定器の種類
厚み測定器には、接触タイプと非接触タイプがあります。
1. 接触タイプ
接触タイプの厚み測定器には、安価かつ手軽で目視しやすいなどのメリットがあります。しかし、接触することから、被測定物の破損や変形による誤差などに注意が必要です。この接触タイプの厚み測定器として代表的なノギスと超音波厚み測定器について解説します。
ノギス
長さや外径、内径、深さ、段差を測定できる部位を持つ測定器で、本尺、副尺と呼ばれる目盛がついています。アナログ、ダイヤル、デジタルのものがあり、値の確認が容易なデジタル式が広く普及しています。操作は簡単で、ジョウをスライドさせて開き、被測定物をゆっくり挟み込んで数値を確認するだけです。
超音波厚み測定器
超音波厚み測定器では、被測定物に超音波を照射し、超音波の伝播時間をもとに対象物の厚みを計算します。超音波は探触子 (プローブまたはトランスデューサー) から照射され、探触子を被測定物表面に接触させます。
そして、探触子から照射した超音波が被測定物の接触面と反対側の面で反射し、探触子に戻ってくるまでの伝播時間を計測して厚みを算出する仕組みです。厚みは以下の式で算出されます。
厚みd = 1/2 ×被測定物の音速c×伝播時間t
このとき、伝播時間tは往復の時間であるため、1/2を乗じて片道の時間、つまり被測定物の厚みが計算可能です。
2. 非接触タイプ
非接触タイプの厚み測定器は、大掛かりな装置になりますが、被測定物を傷つけることなく測定出来るのがメリットです。非接触タイプの厚み測定器としては、赤外線式と放射線式およびレーザ変位センサ式があります。
赤外線式
赤外線式の厚み測定器は、赤外線が特定の物質を透過する性質を利用して絶対値としての厚みを測定する測定器です。被測定物に赤外光を照射すると、赤外線照射面と相対向する裏面でそれぞれ反射します。これらの反射光をプローブで受光し、反射光の時間差 (干渉差) から厚みを計算します。
放射線式
放射線式厚み測定器は、放射線が被測定物に吸収される量を測定して厚みを算出します。この吸収は被測定物の色調の影響を受けないことから、放射線式厚み測定器は多くの製品で使用されています。
放射線の種類としてはα線、β線、γ線、X線などがありますが、原理はすべて同じです。放射線を被測定物に照射し、物体への吸収量 (減衰量) を測定し、厚みに換算します。放射線の種類は、被測定物に応じて適したものが選択されます。各放射線源に適した材料は以下のとおりです。
- α線…高分子薄膜
- β線…金属薄膜、ゴム、プラスチックなど
- γ線/X線…金属板など
レーザ変位センサ式
レーザ変位センサ式厚み測定器では、レーザ変位センサを1台若しくは2台使用して厚さを算出しています。1台のレーザ変位センサを用いた場合は、被測定物の表面と裏面の反射光の差から厚さを算出します。2台のレーザ変位センサを使用する場合は、被測定物を挟み込んで透過光の差により厚さを算出する仕組みです。
2台のレーザ変位センサを使用する場合には、挟み込んだレーザ変位センサの上下それぞれの基準面から被測定物表面までの距離を測定し、基準面間の距離から引くことで被測定物の厚みを算出しています。
厚みd=基準面間距離d0-(基準面上〜被測定物表面までの距離d1+基準面下〜被測定物表面までの距離d2)
厚み測定器のその他情報
超音波厚み測定器における注意点
超音波厚み測定器においては、ゼロ点・第1回底面エコー方式 (パルス・エコー方式) と多重エコー方式 (エコー・エコー方式) 、表面エコー・第1回底面エコー方式 (インターフェース・エコー方式) があります。それぞれ特徴が異なるため、被測定物に合わせてどの方式を選ぶかが重要です。最も一般的なのは、パルス・エコー方式 (ゼロ点・第1回底面エコー方式) で、被測定物の表面状態があまり良くない場合や厚物、湾曲部なども測定可能です。
なお、超音波厚み測定器は、超音波を利用するため、発泡スチロールのような超音波が通過できない気泡を含む素材や、超音波が減衰してしまい受信できないゴムなどは測定できません。
また、空気の層は音響抵抗を持ち、探触子と被測定物間の超音波の伝播を阻害します。このため、接触触媒 (カプラント) と呼ばれる専用の液体を探触子と被測定物の間に塗布し、空気の音響抵抗を極力無くす必要があります。
参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/6-04-02-01.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/12/9/12_9_709/_pdf/-char/ja