トルクセンサー

トルクセンサーとは

トルクセンサーの外観

図1. トルクセンサーの外観

トルクセンサーとは、図1のようにトルク (軸をねじる力) を計測するための装置です。

トルクセンサーは軸にトルクがかかったときの軸の微小のねじれをトルクに換算し、出力・表示します。生産ラインでのトルク管理や産業機器の性能評価など、トルクの計測が必要な様々な場面で使われています。

製品によってはトルクゲージ、トルクメーターなどと呼ばれることもあります。名称の使い分けにこれといったルールはありませんが、おおむね次のような使い分けがあります。本記事では、どのような使われ方であっても名称は「トルクセンサー」に統一します。

  • トルクセンサー
    電動自転車やロボットなどに組み込まれ、検知したトルクをモーターやロボットの制御に使うための計測装置。
  • トルクゲージ
    ドライバーなどの締め付けトルクを測定して、表示器でトルク値をその場で確認するための計測装置。
  • トルクメーター
    モーターの試験装置で使われる計測装置で、モーターのトルクを評価するために使われる。

トルクセンサーの使用用途

トルクセンサーが使われている身近な例は、電動アシスト自転車です。電動アシスト自転車は、人間がペダルを踏む力 (トルク) をトルクセンサーが検知します。そのトルクに応じてモーターが必要なアシスト力を出して、ペダルを踏む負担を減らしています。

トルクセンサーが多く使われている領域は産業用途です。産業用途では主に品質管理や試験研究のために使用されます。

1. 品質管理

品質管理の目的では、主に次のような状況で使用されています。

  • 抜き打ち検査
    製造中の容器のキャップがどの程度の強さで締まっているかの検査。
  • 定期点検
    製造ラインで使用される電動ドライバーが正常な範囲で作動しているか、始業前のチェック。

2. 試験研究

試験研究の目的では、主に次のような状況で使用されています。

  • 強度測定
    試験材料や部品のねじれに対する強度の測定。
  • モーター性能評価
    モーターに負荷をかけて性能評価するための測定。
  • 機械の回転トルク測定
    輪転印刷機などのローラーのトルクを測定し、機械の最適な運転条件を決めるための測定。

トルクセンサーの原理

トルクセンサーは、次のような順番でトルクを検出しています。

  1. 軸にねじりの力 (トルク) が加わる。
  2. トルクによって、軸にねじれ・ひずみが発生する。
  3. 軸のねじれ・ひずみを測定する。
  4. 測定量から、軸にかかるトルクを算出する。

軸のねじれ・ひずみは電気信号として処理・出力されます。トルクセンサーではアンプが搭載されている製品も多く、電気信号をアンプで増幅させてA/Dコンバータで計測しやすい値に出力されます。トルクセンサーによっては表示計が備わっている製品もあり、トルク値をその場で目視で確認することができます。

トルクセンサーの種類

軸のねじれやひずみを測定する方式は様々にありますが、現在実用化されているトルクセンサーでは次の4つの方式がよく使われています。

1. ひずみゲージ式トルクセンサー

ひずみゲージ式トルクセンサーの原理

図2. ひずみゲージ式トルクセンサーの軸

軸のひずみをひずみゲージで測定する方式です。ひずみゲージとは、伸び縮みすることで変化する電気抵抗からひずみを測定するセンサーです。図2のように、軸にトルクが加わると軸は±45°方向に引張・圧縮の応力が発生します。この応力方向のひずみをひずみゲージで測定します。

2. 静電容量式トルクセンサー

軸のひずみをコンデンサーの静電容量の変化で測定する方式です。軸に2枚の電極を配置し、軸がひずむことで電極同士の位置が変わることで変化する静電容量を測定します。

ひずみゲージ式と比べシンプルな構造、かつ軸長を短くすることができる方式で、ロボット用トルクセンサーで広く採用されています。

3. 磁歪式トルクセンサー

軸のひずみをコイルのインダクタンスの変化で測定する方式です。軸にねじりの力が働くと、透磁率 (磁束の通りやすさ) が変化します。この原理は逆磁歪効果と呼ばれています。磁歪式トルクセンサーは軸の外側にコイルを配置し、軸の透磁率の変化をコイルのインダクタンスの変化で検知します。

磁歪式トルクセンサーは非接触でトルクを測定できるため、次のようなメリットがあります。

  • モーターやエンジンの回転軸など、回転している軸のトルクが測定可能である
  • センサーの軸への貼り付け加工が不要なため、軸の強度を損なわずにトルクを測定できる

4. 光学式トルクセンサー

軸のひずみを光学センサーで測定する方式です。軸のねじれ・ひずみが発生すると、投光部と受光部の位置がずれ、受光量に差が生じます。この受光量の差を電気信号に変換し、トルクとして検出します。

トルクセンサーのその他情報

トルクセンサーを内蔵した製品

近年の技術の発達により、トルクセンサーは小型になり、トルクセンサーを内蔵した製品も出てきました。ここでは産業用途でのトルクセンサーを内蔵した製品を紹介します。

1. トルクセンサ―内蔵モーター
モーター、減速機、トルクセンサーが一体になった製品です。減速機やトルクセンサーを外付けする必要がないため、装置を小型化することができます。

トルクセンサーによって出力軸のトルクを直接測定できるため、精度の高いトルク制御が可能となります。これによって装置を滑らかに駆動させたり、人との接触を検知してより安全な装置を実現することができます。

2. ロボットのトルクセンサー
人協働ロボットに内蔵されたトルクセンサー

図3. 協働ロボットに内蔵されたトルクセンサー

トルクセンサー内蔵の多関節ロボットが近年製品化されています。特に協働ロボットと呼ばれるカテゴリーでトルクセンサー内蔵型のロボットが増加傾向です。図3のように協働ロボットに内蔵される場合は、円筒形状でロボットアーム内に組み込まれています。

トルクセンサーはロボットの回転軸の出力トルクを検出し、ロボットの作業で必要となる押し付け力など力を制御したり、人や障害物と接触したことを検知したりします。ロボットにとってトルクセンサーはより高度な作業を行い、人と同じ空間で一緒に働くために必要なデバイスです。この分野のトルクセンサーは今後も市場の成長が見込まれています。

参考文献
https://www.tohnichi.co.jp/products/categories/30
https://www.forcegauge.net/catalog/products/top/torquegauge/torque_gauge
https://www.unipulse.tokyo/productitems/torque-meter/

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です