漏電リレーとは
漏電リレーとは、電気回路の漏電状態を検知するための機械装置です。
地絡継電器 (英: Ground Relays) とも呼ばれます。電気回路は、ポリエチレンやビニルといった絶縁樹脂などによって周囲と絶縁されている場合が一般的です。
この絶縁物の破損などによって電気回路の一部が導電物と接触し、電気が流れる状態となることを漏電と呼びます。漏電した電気回路および周辺金属を誤って触れると、人体へ感電し人身災害の原因となります。建屋鉄骨などを電気が伝った場合は、火災の原因にもなるため注意が必要です。
漏電リレーを使用し、電源を遮断または警報を発報することで、上記現象を防ぎます。
漏電リレーの使用用途
漏電リレーは多くの電気回路で使用される機器です。以下は漏電リレーの使用用途一例です。
1. 漏電遮断器
漏電遮断器は、漏電を検知した際に自動で電源を遮断する装置です。一般的には低圧電圧回路において使用される機器で、家庭用分電盤の内部などにも設置されています。
2. キュービクル内部
キュービクルは、高圧トランスや遮断器を内部に内蔵した電力需給用の筐体で、スーパーマーケットや公共施設などに利用されます。キュービクル内部には、漏電火災警報器などが内蔵され、漏電を早期に検知します。
3. 変電所におけるガス絶縁開閉装置 (GIS) や真空遮断器制御用
変電所では、高圧以上の電圧である電気を取り扱うため、通電・遮断に真空遮断器などを使用します。これらは漏電を検知する機能を持たないため、漏電リレーを組み合わせて制御します。
漏電リレーの原理
漏電リレーが漏電を検知する原理はいくつか存在します。
1. 直流の場合
直流電圧が対象の場合は、対地電圧を検知する方法があります。直流回路の2端子は中間地点が対地間0Vとなっていることが一般的ですが、漏電すると地絡した配線端子側が対地間0Vとなります。したがって、両端子の対地電圧を測定することで漏電を検知することが可能です。
2. 交流の場合
交流の場合は、往復する電流を測定することで検知することも可能です。一般的な電気回路は往復する電気の合計が一致しますが、地絡して対地間に電流が流れると不一致になります。したがって、往復する電流を測定し平衡しているかを確認することで漏電を検知することが可能です。
3. 零相電流の場合
そのほか、零相電流を測定する方法も存在します。交流電流を通電するケーブル周辺には常に磁場が発生していますが、往路と復路で打ち消し合っている特徴があります。
地絡が発生すると一方の磁界が強くなるため、完全に打ち消し合うことができなくなり、磁場による零相電流が流れます。この零相電流を確認することで、漏電を検知することが可能です。
漏電リレーの種類
漏電リレーには大きく分けて、無方向性と方向性の2種類があります。どちらも零相変流器で零相電流を測定することで、漏電の有無を判断し、回路に漏電の信号を送信する仕組みです。
1. 無方向性漏電リレー
零相変流器によって漏電した場合の事故電流を検出する仕組みです。地絡継電器 (英: Ground Relays)とも呼ばれます。
三相交流回路の電流は、各線に正相方向に流れる正相電流、逆相方向に流れる逆相電流、同相で流れる零相電流の3種に分けられます。漏電時には零相電流が流れるため、零相変流器で漏電の確認が可能です。
無方向性は地絡の有無のみを確認するため、上位系統などで地絡が発生した場合に誤作動する危険があります。
2. 方向性漏電リレー
零相変流器と零相電圧検出器によって、漏電した場合の事故電流を検出する仕組みです。地絡方向継電器 (英: Directional Ground Relays)とも呼ばれます。
零相電圧検出器は、零相電圧を検出するための機器で、機器内部のコンデンサによって零相電圧を検出します。 零相電圧は通常0Vですが、地絡の場合に電圧が発生します。
この電圧を直列接続した角相コンデンサと検出用コンデンサによって分圧し、検出用コンデンサにかかる電圧をさらに変圧器で下げたものを検出しています。地絡方向継電器では地絡の方向性を検知します。したがって、上位系統の地絡では誤作動せず、自系統で発生した地絡のみを遮断することが可能です。
参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/protection_relay/basic/02/02.html
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/products/lvd/lvcb/pmerit/elrly/index.html