傾斜センサー

傾斜センサーとは

傾きセンサー

傾斜センサーとは、被測定物の傾きを検出する機器です。

水平位置からの傾きを測定し、被測定物の傾斜や角度、勾配を検出します。傾斜センサーは、対象物の傾きを検出する機器です。

重力を基準として水平位置からの傾きを測定し、物体の傾斜や角度、勾配を表示します。傾斜センサーはチルトセンサー、角度センサーとも呼ばれます。傾斜センサーは厳密には傾斜の検出部分のみを示し、これに入出力を調整する電子機器を付加した傾斜計といったものが存在します。

傾斜センサーの使用用途

傾斜センサーは傾きの検出や、そのデータを用いた姿勢制御などに使用されています。具体的には、建設機械の荷台の水平維持やクレーンの傾き検出、自動車のヘッドライトの照射角の調整などです。また、土地や部屋の水平確認、スマートフォンの画面の自動回転にも利用されています。

なお、厳密には傾斜センサーとは傾斜を検出する素子部分だけを指し、入出力を調整する電子機器を付加した場合は傾斜計と称されます。しかし、慣用的に入出力機器や演算機器がある装置も傾斜センサーと呼ばれます。

傾斜センサーの原理

傾斜センサーは、被測定物が傾斜することで電気的な出力を発生させて傾きを検出する機器です。傾斜は1軸方向、2軸方向および3軸方向で起こることから、検出したい傾斜の軸数に合わせて傾斜センサーを選択するのが重要です。

また、傾斜センサーは、従来よく使用されていた傾斜を検出するとスイッチがオン・オフされるスイッチ形態のものから、近年ではセンシング技術を組み合わせたものが主流となっています。そして、傾斜センサーの傾きを検出する手法には、初期から使われていた電電解液式、MEMS式などがあります。近年では、精度や応答時間の観点からMEMS式が主流です。

1. 電解液式傾斜センサー (静電量式傾斜センサー) 

電解液式傾斜センサーは、液体の表面が常に水平になる性質を用い、液体の傾きを静電容量の変化量として検出する仕組みです。具体的には、内部に空洞を有する筒状の本体の中に電解液 (導電性を有する液体) が長さ方向の半分程度の深さで封入されて、長さ方向で対向する電極板を有する構成です。

すなわち、対応する電極は長さ方向で半分ほど電解液に漬かった状態となります。電極板間に電圧を印加した状態で筒状の本体が長さ方向を軸に傾くと空洞内の電解液が水平を保つため、対向する電極には液体に漬かっている部分の差が生じて回路内の内部抵抗が変化します。電解液式傾斜センサーの傾き検出は、この回路の内部抵抗の変化を検出して角度に変換して行われます。

ただし、応答時間が比較的遅いことや、液面が振動による影響を受けやすいデメリットがあります。なお、電解液式傾斜センサーは、検出する一対の電極2組を直交させて配置することで、2軸の傾斜を検出可能です。

2. MEMS (Micro Electro Mechanical Systems) 式傾斜センサー

MEMS式傾斜センサーは、微小電気機械システム技術を利用した傾斜センサーです。傾きにより部位がたわむことで電気的な出力が生じることで傾斜を検出します。MEMS式傾斜センサーは、本体内に一対の固定された固定電極と、この一対の固定電極の間にバネで指示された可動電極を有する構成です。

MEMS式傾斜センサーが固定電極および可動電極の支持方向を軸として傾くと、固定電極は動かず、可動電極はセンサーが傾いた方向に移動します。すなわち、各固定電極と可動電極間の静電容量が変化します。この静電容量の変化を検出して角度に変換するのがMEMS式傾斜センサーの仕組みです。

可動電極をXY方向に直交するように設け、それぞれを一対の固定電極で挟むようにすれば、2軸方向の傾斜を検出できます。

3. その他の方式

傾斜センサーで利用される他の方式としては、振り子式や水晶式などがあります。

振り子式傾斜センサー
振り子式傾斜センサーでは、本体の内部に振り子と磁気抵抗素子などの検知部を設けています。振り子傾斜センサーでは、本体が傾いて振り子が動いたことに起因する磁界の変化を検出し、これを傾斜角に演算しています。

水晶式傾斜センサー
水晶式傾斜センサーは、水晶振動子の特徴を活用した高感度な傾斜センサーです。水晶を加工したカンチレバーと保持部分が対向した状態で一端が固定され、カンチレバー、保持部分のそれぞれに電極が設けられています。

センサーが傾斜しても保持部分は撓まないのに対し、カンチレバーはたわみます。カンチレバーにたわみが生じるため、極板間距離が変化して静電容量も変化し、静電容量を周波数の変化として計測するのが水晶式傾斜センサーの仕組みです。静電容量から周波数への変換は傾斜センサーを水晶振動子や発信回路と組み合わせて実現させています。

傾斜センサーのその他情報

加速度センサー

傾斜センサーと同様に、傾きを検出するセンサーとして加速度センサーがあります。傾斜センサーは、センサー出力自体が傾斜角の情報をもって出力します。周波数変動が低いため、ゆっくりした動きや静止状態の傾斜角測定には有効です。一方の加速度センサーは、物体に加わる加速度を検出するセンサーです。

加速度センサーでは、ニュートンの運動法則である物体に働く加速度は外力に比例する法則を用いて、加速度そのものの測定や、外力が加わったことを検出するのに用いられます。加速度そのものを検出できるため、重力の計測や地震計測などで利用されます。また、外力が加わったことを検出できるため、傾き、振動、動き、衝撃、落下など、重力方向以外に前後左右の方向の動きの検出が可能です。傾斜センサーと比較すると、周波数帯域が広く早い動きの測定も対応しています。

このような差があることから、傾斜センサーは、例えば建機などのクレーン車や建設車両の転倒防止などに使われます。一方の加速度センサーは、例えばスマートフォンの縦横表示を使用環境に合わせて変更するアプリケーションなどに用いられます。

参考文献
https://pac-tech.com/files/libs/1718/202007021532529007.pdf
https://www.jcmanet.or.jp/wp-content/uploads/2017/03/1fe60fa1769b5144036195f2b900813b-1.pdf
http://www.tokugikon.jp/gikonshi/261/261techno.pdf

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