溶存酸素計

溶存酸素計とは

溶存酸素計とは、水中に溶け込んでいる酸素の量を測定する機器です。

ポータブルで簡単に持ち運びできるものから、溶存酸素を測定したい個所に設置して固定する設置型、またその信号をDCSなどの集中管理装置などに送信してリアルタイムで表示できるものまであります。

水中の酸素量を正確に測定するために必要な機器で、水質管理や水産業、環境調査などで使用されます。

溶存酸素計の使用用途

溶存酸素計は、排水処理施設などでの水の汚染の指標の表示に多く使われています。日本国内では多くの工場で採用されているのが、好気性処理と呼ばれる水の中の汚れを分解するときに酸素を消費する好気性生物を利用した排水処理です。

この方法はその名の通り酸素が必要なので、水の中から酸素がなくなると効果的な排水処理ができなくなります。そのため、溶存酸素計で常に水の中の溶存酸素濃度を測定しています。そのほか、食品業界では発酵食品などの発酵具合を測定する際に使用されています。

溶存酸素計の原理

溶存酸素計は、隔膜電極法や蛍光法などの方法で測定することができます。

1. 隔膜式溶存酸素計

隔膜式は、メンブレンと呼ばれる隔膜に電解液を入れてそこにセンサーを取り付けることにより、測定が可能になります。ただし、電解液の交換などが必要になるため、定期的なメンテナンスが必要です。

2. 蛍光式溶存酸素計

蛍光式は、下水処理場や排水処理場などでの計測に適しており、隔膜や電解液を使用しません。測定時に酸素を使用しないのも特徴で、流速のない環境であっても測定することができます。

また、蛍光式は屋外で使用する場合の防水性能などを備えたものも多く、実際の河川や排水処理場で投げ込んで使用する場合でも安心です。その他にもpH等も同時に測れるものがあり、多くの指標を同時に測定できます。

溶存酸素計の種類

溶存酸素計は定置型、携帯型、卓上型の3つに分類されます。

1. 設置型

設置型は、水中に設置して使用するよう設計されていて、おもに河川や工場排水等の水質監視などで使用されます。一般的に、水中に設置されてた検出器により溶存酸素濃度を測定し、そのデータを変換器へ伝送する仕組みです。

また、長期間測定を続けると、検出器の隔膜面に汚れが付着することで、検出感度が低下するため、設置型の機種の多くは、自動洗浄機構を有するタイプが多いです。

2. 携帯型

携帯型は軽く、コンパクトにできているため携帯性に優れていています。主に、水族館や養殖場、屋外での水質調査などに使用されています。比較的簡単な操作で、かつ測定時間が短いため、リアルタイムで計測可能です。

携帯型の多くは、防塵や防水等の機能が付いており、現場での計測に便利です。

3. 卓上型

卓上型は高精度のセンサーを使用していて、非常に正確な酸素濃度の測定が可能なため、研究機関や試験室等で使用されます。携帯型同様、コンパクトなタイプが多く、持ち運ぶことができます。

溶存酸素計のその他情報

溶存酸素計の校正

溶存酸素計は、定期的に校正を行う必要があり、以下のような方法があります。

低濃度の溶存酸素を正確に測定したい場合や、低濃度の数値が異常と感じる場合に、溶存酸素計のゼロ点を理論値に合わせるための校正方法として、ゼロ標準液 (JIS K 8061に規定された亜硫酸ナトリウム (無水) 約25gを水に溶かし、水を加え500mLに調整したもの) を使用したゼロ点校正を実施します。

また、水中の飽和溶存酸素分圧と大気中の酸素分圧はほぼ等しいことを利用する方法もあります。簡易的に大気中の酸素分圧を利用して行うスパン校正と、溶存酸素飽和水 (水500mL程度で10~20分エアレーションしたもの) を使用して行う飽和水校正です。

ただし、飽和水校正でも気圧の影響を受けるため測定水を基準にしている計器で測定し、その値に合わせこむマニュアル校正という方法もあります。なお、溶存酸素計の校正には、国家標準にトレースされている標準液がないため、校正証明書の発行はできません。

測温抵抗体

測温抵抗体とは

測温抵抗体

測温抵抗体とは、化学プラントなどでプロセス流体 (液体、気体) の温度を測定する際に使用される機器のことです。

温度を測定する機器として熱電対も挙げられますが、測温抵抗体は熱電対よりも測定誤差が少なく、特に低温の方では精度が高いのが特徴です。そのため、低温を重視する場合や高温をそれほど測定しない場合によく使用されます。

また、保護管を使用すれば多種多様な流体に対して使用可能であるため、化学プラントにおける温度測定でも幅広く使用されています。

測温抵抗体の使用用途

測温抵抗体は、配管内やタンク内を流れていたり、保管されたりしているプロセス流体 (液体、気体) の温度を測定するために使用されています。特に温度を表示し、かつ制御やコントロールする場合などに使用される場合が多いです。

例えば、熱交換器の入口と出口の冷却水の温度を測定し、熱交換量に応じて冷却水量を調整したり、オリフィス流量計の流量を測定する際に気体の温度を測定して、温度補正をかけたりする場合などが挙げられます。

測温抵抗体実験図

図1. 測温抵抗体を熱交換器に設置した実験例

測温抵抗体は温度の誤差が少なく高精度であるため、それほど温度が高くない場所のコントロールや温度が低い不凍液などの制御やコントロールにも使用可能です。

測温抵抗体の原理

測温抵抗体は金属の抵抗値が温度によって変化する特性を利用して、温度変化を測定しています。一般的に、金属は温度が上がると抵抗値が上昇するので、その特性を利用していますが、白金を使用するケースが多いです。

そのため、日本ではPt100と呼ばれる白金で製作された測温抵抗体が幅広く用いられています。また、工業プロセスで温度を制御やコントロールするには4-20mAの電流により制御するのが一般的なので、測温抵抗体の端子箱内に変換機を内蔵して、4-20mA出力を可能にした製品もあります。このような製品を使用すると、制御盤内で変換機が不要となるため、非常に便利です。

測温抵抗体はその等級も規定されており、JIS C1604では主に2種類の規格で定められています。高精度で正確な温度測定が可能な機器ですが、必要な精度は使用するプロセス流体 (液体、気体) によって異なるため検討が必要です。ただし、熱対応が遅いと、使用するプロセス流体 (液体、気体) の物性によってはうまく使えない場合もあるため、精密な制御やコントロールなどをする際は注意が必要です。

測温抵抗体の配線方法

測温抵抗体の配線方法には、2線式、3線式、4線式の3通りがあります。2線式は測温抵抗体の両端に1本ずつ配線したもので、最も簡単な方法ですが、配線の抵抗値がそのまま加算される点がデメリットです。配線の抵抗値をあらかじめ測定し、補正をかけておく必要があるため、実用的ではありません。

3線式は最も一般的な結線方法で、測温抵抗体の片端に2本、もう片端に1本配線します。3本の線の電気抵抗が等しい場合、配線の抵抗値を無視することができます。4線式は測温抵抗体の両端に2本配線します。高価ですが、配線の抵抗値を完全に無視することが可能です。

測温抵抗体のその他情報

測温抵抗体と熱電対の比較

測温抵抗体と熱電対は、両者とも温度を測定する機器ですが、温度測定範囲や測定精度に違いがあります。

1. 主な材質と測定温度範囲

測温抵抗体
「白金」「」「ニッケル」「白金・コバルト」があり、それぞれ温度測定範囲が異なりますが、最大600℃程度です。

熱電対
「白金・ロジウム合金」「ニッケル・クロム合金」「鉄」「銅」などが使用され、温度測定範囲が異なります。使用される材質と素材構成によって「B」「R」「K」などの呼び記号があります。B熱電対の過熱使用温度は1,700℃となっています。高温を測定する場合は熱電対が使用されます。

2. 測定精度

測温抵抗体
測温抵抗体規格

図2. 測温抵抗体JIS C1604規格の許容差

測温抵抗体の測定精度等級はAとBがあり、JIS規格の許容差を下表に示します。クラスA測温抵抗体の最大測定温度である450℃のときの許容差を比較すると、クラスAで±1.05 ℃、クラスBで±2.55 ℃となります。

熱電対
熱電対温度許容差

図3. 熱電対温度許容差

熱電対の測定精度等級はクラス1~3があり、各測定温度範囲で規定されています。熱電対 (K) が450℃の時、クラス1で許容差は±1.8℃、クラス2で±3.375℃、クラス3では450℃は規定されていません。許容差から、測温抵抗体は熱電対よりも測定精度が高いといえ、高精度であることが求められる測定に使用されます。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/products/sokuon_sentei.html
https://www.watanabe-electric.co.jp/sensor/faq/sokuon/01.html
https://www.keyence.co.jp/ss/products/recorder/lab/thermometry/resistance_bulb.jsp

液体充填機

液体充填機とは液体充填機

液体充填機は定量充填機の中でも液体を充填するためのものです。定量充填機は計量器を用いてある一定量を測り取って充填することができる充填機です。

定量充填機には自動充填機と半自動充填機の2種類があります。自動充填機は充填容器が搬送ラインを通って流れてき、それがある位置までたどり着くと自動で充填を開始する充填機を指します。一方半自動充填機は搬送ラインから充填場所までは自動で、充填開始動作を手動で行います。

液体充填機の使用用途

液体充填機は何かを製造して販売するメーカーであれば多くが利用しています。例えば水や油などです。これらはポンプやタンクからのヘッド圧を用いて充填します。また液体にも粘度が高いものから低いものがあります。はちみつや水あめといった粘度が高い液体の場合、温度を加えて粘度を下げるかポンプで圧送する方法があります。

液体に近いものとしてみそや餡子のようなものもあります。これらは半固体でありますが充填することができます。その場合タンクなどにスクリューを設け、閉塞を防ぎます。 

液体充填機の原理

液体の定量充填機はタンクやホッパーから充填します。タンクなどから配管をたどって充填ノズルまで液が満たされます。充填開始を行うとノズルのバルブが開いて液体が充填を始めます。決められた量になると計量器から信号が送られ、充填が停止します。

定量充填機の計量器は計量法により厳しく定められています。これは取引先への出荷量を少し少なめに充填して出荷したりすることを防いで充填量の正確さを維持するために必要です。そのため定量充填機に使用する計量器は計量証明が必要となります。これは計量機関にて検定を行って初めて発行されるものになります。

計量器はロードセルを用いていることが多いです。ロードセルは荷重による力を電気信号に変えることができます。ロードセルは金属の起歪体(きわいたい)にストレインゲージという電気抵抗線歪計(センサ)をはりつけ、その抵抗値の変化を測定しています。これまでのばねばかりと比べて非常に精度が良いものとなりました。

参考文献
https://hikari-kikai.co.jp/product/
https://www.yokogawa.co.jp/library/resources/faqs/an-ir-07-measurement-method/
https://hakari-shouten.com/help/knowhowhistory

海水ろ過装置

海水ろ過装置とは

海水ろ過装置

海水ろ過装置とは、海水中に含まれる塩化ナトリウムをろ過によって脱塩処理し、淡水化する装置です。

古くから海水の淡水化は行われてきましたが、海水を蒸発させて処理することが多く、莫大なエネルギーとコストを必要としていました。しかし、海水ろ過装置が開発されたことにより、状況が一変します。

海水ろ過装置では、浸透圧の原理を応用したシステムで逆浸透膜を使用して脱塩処理を行います。中東やアフリカなど水資源に乏しい国ではすでに導入がされている状況です。

海水ろ過装置の使用用途

海水ろ過装置の主な用途は、海水の淡水化です。水資源に乏しい国や地域で導入されています。日本は水資源が豊富なため導入例はほとんどありません。

しかし、日本企業の技術は世界トップレベルであり、海外で多くの導入実績を持ちます。特に乾燥地帯では深刻な水不足に悩まされており、生活用水の確保は緊急課題となっています。また、人口増加による水資源の不足が懸念されており、今後は乾燥地帯だけでなく世界各国で需要が拡大していくと予想されています。

海水ろ過装置の原理

海水は世界中で豊富に存在しますが、生活用水として使用することはできません。その要因は塩分、すなわち塩化ナトリウムが含まれているからです。海水ろ過装置には逆浸透膜が備えられており、浸透圧を応用したろ過によって塩化ナトリウムを除去します。

濃度の異なる溶液を浸透膜で仕切ると、濃度を一定にしようと濃度の低い溶液から高い溶液に水が移動していきます。この際に生じる圧力が浸透圧であり、この現象と逆の手順を行うのが海水ろ過装置です。濃度の高い溶液、すなわち海水を逆浸透膜で仕切り浸透圧以上の圧力を加えると、塩化ナトリウムは膜に阻止され、純水のみが透過していきます。これにより海水が淡水化され、生活用水として利用できるようになります。

海水ろ過装置のその他情報

1. 船舶における海水ろ過装置 (淡水化) の重要性

船舶にたくさんの淡水を積み込むことは、重量の観点から実施できない場合が多いです。その際に、海水ろ過装置が活躍します。この装置があるだけで、必要なときに必要な分だけの淡水を精製することができるようになります。

例えば、小型の海水ろ過装置 (幅 1,200mm × 奥行き600mm × 高さ600mm、重量約120kg程度の規模) で、1時間に250リットルの海水を淡水へとろ過することが可能です。ろ過された淡水は、日本の飲料水としての基準をクリアしているため、安心して飲むことができます。この装置を船舶に積載しておくことで、周りに海水しかないような環境でも、生活水や飲料水の心配をせずに航海が行えます。

従来は、航海する際に大量の水を積載したり、途中の港で水を仕入れたりする必要がありました。しかし、船舶に積載できるような小型の海水ろ過装置が開発されたことによってその必要がなくなり、より効率的な航海が可能となりました。

2. 水槽内の海水ろ過装置

海水を海水としてろ過する場合もあります。その具体例として最も身近なものは、アクアリウムです。アクアリウムで用いる水槽内での海水ろ過の具体的な仕組み・流れは以下の通りです。

目視できるくらいのゴミを取り除く
物理ろ過 魚のフンやエサの食べ残し、海水中に漂う目視できるくらいのゴミを取り除くのが目的の工程です。網やスポンジ、ウール素材のマットなどを用いてろ過するのが一般的です。

目視できないゴミを取り除く
化学ろ過 活性炭やアルミナ、海養石などの資材を用いて海水中の目に見えないゴミを取り除きます。これら資材にゴミを吸着させたり、イオン交換を行ったりすることで水中から取り除きます。

ゴミの吸着やイオン交換によって資材は、徐々に劣化していきます。そのため、資材は定期的に交換する必要があります。

ろ過を行う
生物ろ過 バクテリアなどの微生物の働きによって海水中の有機・有害物質を分解してろ過を行います。上記2つの方法ではろ過できないような、有機物質を取り除くことができるため、アクアリウムでは最も重要なろ過です。

海水ろ過装置のその他情報

海水ろ過の課題

海水ろ過の課題は残されており、日々改善が進められています。その中の1つが排水問題です。逆浸透膜でのろ過後に残るのは、塩分と銅の濃度が高いブラインと呼ばれている残液です。基本的には海中へ放流されますが、環境への影響が懸念されています。

海中の塩分濃度の上昇は溶存酸素の低下を招き、海洋生物が適用できない環境が海中に生まれる可能性があるためです。国によっては放流前に希釈処理で塩分濃度を低下させることを推奨しています。希釈処理にもコストが発生するため、よりリサイクルを意識した有効利用が求められます。

現在は、ブラインを水酸化ナトリウムへ再生する研究が進められており、実用化に向け試験が行われている状況です。その他、脱塩処理前に海水を薄めてから使用するろ過装置も登場しています。

浄化剤

浄化剤とは

浄化剤のイメージ

浄化剤とは、土壌や水質などを浄化する薬剤の総称です。

特に水に対して用いる浄化剤に凝集剤があります。凝集剤を汚濁した原水に対して使用すると汚染物質を集めて固め、水と汚染物質とを分離することが可能です。

このような浄化剤は、きれいな水質の水を得ることに役立てられています。

水質浄化のイメージ

浄化剤の使用用途

水質浄化剤は河川の浄化、工業廃水や農業廃水、産業用水の浄化、畜産や水産の養殖場などにおける水質の改善を目的として使用されている物質です。特に、工業排水などでは重金属の粉末や有機物などの汚染物質を除去する目的で使用されます。その他、悪臭の防止などの目的でも使用されている製品です。

土壌浄化剤には農薬、PCB、ダイオキシン、重金属などの有害物質を吸着して浄化するものや、土中にいる微生物を活性化して汚濁を分解したり植物に良い栄養素を作り出したりするものなどがあります。

浄化剤の原理

浄化剤が汚染物質を浄化する方法は、製品によって多種多様です。それぞれ、微生物の効果や化学反応、炭などの性質を利用しています。

1. 凝集剤

凝集剤による凝集のイメージ

図3. 凝集剤による凝集のイメージ

凝集剤は、水中に浮遊するコロイド粒子を凝集させる効果のある物質です。凝集剤による水質浄化処理は、大きく下記の2工程に分かれています。

  1. 基礎フロックと呼ばれる微細なフロックを析出させる凝結反応
  2. 基礎フロックを成長させて粗大化する凝集反応

自然界に存在する微細粒子は一般に負電荷を帯びているため、一般に凝集剤として用いられる物質はプラスの電荷を帯びている物質です。具体的には、アルミニウム塩や塩化鉄ポリ鉄などの無機凝集剤です。凝集剤を添加すると荷電が中和されて凝結し、基礎フロックと呼ばれる小さい塊が生じます。

フロックの粗大化において、排水処理では凝集助剤 (ポリマー) を使用しますが、用水処理においては主にポリ塩化アルミニウム (PAC) を使用します。用水処理には基本的に高分子凝集剤は使用しません。これは、高分子凝集剤が残存した場合、イオン交換装置や逆浸透膜装置の有機物汚染を引き起こす可能性があるためです。汚濁物質の沈降を促した後、固液分離によって綺麗な水が得られます。

2. 多孔質・キレート剤

ゼオライトや多孔性を持つ炭などには有害物質、貴金属や悪臭の元となる物質を吸着する効果があります。また、人工ゼオライトは高い陽イオン交換機能をもっており、酸性を中和する土壌改良や汚水・排水中のアンモニウムイオンの除去などが可能です。肥料の保持力が強いため、土壌浄化剤として用いると農作物の育成向上や高付加作物の育成に効果が期待できます。

キレート剤を用いる方法では、水溶液中の金属イオンをキレート剤と反応させ、水に不溶な錯体を形成することで除去を図ります。重金属と選択的に結合するキレート剤を用いることにより、水銀、カドミウム、鉛、クロムなどを除去することが可能です。

3. 微生物

好気性微生物を利用して、水中や土着の微生物の力でVOCなどの有機物を吸収分解する方法もあります。天然ミネラルなど、微生物の分解作用を活性化させる物質や微生物製剤などが該当します。化学物質を使わないことから自然環境にも無害でクリーンな方法です。

浄化剤の種類

浄化剤の種類には、以下のようなものがあります。

  • 凝集反応によって汚濁の原因となっている物質を沈殿させる凝集剤
  • 有害物質を吸着する多孔質物質
  • 微生物を活性化して汚濁の原因となっている物質の分解を促進するもの

それぞれの方法で原理や浄化できる汚濁の種類が異なるため、目的に合わせたものを選択することが必要です。また、水質浄化は、排水浄化と用水浄化とで、利用するべき浄化方法が異なります。剤形も粉状、粒状、ゲル状などがあるため、最適なものを選択することが重要です。

参考文献
http://www.poly-glu.com/product_information/index1.htm
https://www.kankyo-business.jp/column/002301.php
https://www.nihonsafety.com/products/chelatemarine/

水素ガス発生装置

水素ガス発生装置とは

水素ガス発生装置とは、水素ガスを発生させる装置です。

この装置を利用することでガスボンベを用いずに水素ガスを利用することができます。水素ガスは分析機器などの実験用途や、燃料電池自動車の燃料としてなど幅広く利用されています。

水素ガス発生装置の使用用途

水素ガスは、研究や工業分野から一般向けまで幅広く利用されています。

1. 研究用途

水素ガスが、ガスクロマトグラフィー (GC) のキャリアガスや燃料ガスとして多く使用されています。特に、水素炎イオン検出器 (FID) の燃料ガスとして利用される場合が多いです。

2. 工業用途

水素ガスは製品の生産に多く使われています。石油製品などの脱硫やアンモニア合成の原料、マイクロ波プラズマCVD法によるダイヤモンド合成や薄膜シリコン合成の水素源などへの利用が代表的です。水素と酸素や空気を混合したガスを用いるバーナーは高温で安定した炎が形成され、すすで汚れないという特徴から様々な用途でもちいら用いられています。

他にも、超純水に水素を溶かした水素水の利用したシリコンウェハ等の洗浄方法や、二酸化炭素排出量を抑制できる水素還元製鉄技術の実用化が期待されています。

3. 燃料などの用途

自動車や家庭用電池として利用される燃料電池や、発電設備や自動車の内燃機関として利用される水素燃料エンジンに水素ガスが利用され、カーボンニュートラル社会の実現が期待されています。

4. 一般向け

水素ガス吸入器は、化粧品分野や医療分野、スポーツ分野やリラクゼーションなどの業界で展開されています。

水素ガス発生装置の原理

水素ガス発生装置は水素ガスの製造方法によっていくつかの種類に分けられます。

1. 水の電気分解

図1-水の電気分解による水素の生産

図1. 水の電気分解による水素ガスの生産

 

水の電気分解によって酸素と水素を取り出すことができます。この方法は純水で行うと効率は非常に低く多量に発生させるには不向きな方法なため、一般的に、水酸化カリウムなどの電解質や固体高分子電解質などを利用したり、イオン交換膜を用いたりすることで効率を上昇させています。また、水素ガスの純度を向上させる目的で、発生した水素ガスをパラジウムなどの触媒が含まれる精製装置が付属する場合もあります。

電気分解による水素ガスの生産は、電力を必要とするため大量生産には向いていない代わりに、材料の純水さえあれば一定量を安定的に生産し続けられるという特徴があります。また、水素ガス発生装置自体は小型であるため、研究用途や一般向けなどの室内での使用目的で利用されています。

2. 水蒸気改質

図2-水蒸気改質による水素ガスの生産

図2. 水蒸気改質による水素ガスの生産

 

水蒸気改質は、高温の水蒸気を触媒存在下で炭化水素や石炭に吹きかけることで水と炭化水素を反応させ、反応後のガスとして水素を得ることを指します。炭化水素中の炭素は水の酸素と結びついて一酸化炭素を形成しますので、炭化水素と水の両方から水素分子が分離されます。水蒸気改質によって発生させた水素は不純物が多いため、圧力変動吸着法 (PSA法) などを用いて精製します。

水蒸気改質による水素ガスの生産は、装置自体が大型化する代わりに、水素ガスを大量に効率よく生産することが可能であり、工業的には水蒸気改質が用いられています。

その他にも水素ガスを製造する方法は様々ありますが、上記2種類が一般的です。

水素ガス発生装置のその他情報

1. ガスボンベと比較した水素ガス発生装置のメリット

水素ガス発生装置は、ガスボンベを用いる場合と比べて、ガス漏洩のリスクが少ないこととガスボンベの交換が不要であることの2つのメリットがあります。

水素ガス漏洩による事故リスクの軽減
水素ガスは可燃性気体であり、空気中の酸素と混合した状態で引火すると爆発を起こす危険性があります。水素ガスは空気よりも軽く、拡散性も高いため屋外や風通しの良い室内では爆発の危険性は低いですが、換気の不十分な狭い室内では、ガスボンベからの漏洩で空気中の水素の割合が4 vol%以上になると爆発する危険性があります。また、可能性は低いですが、室内であれば窒息の可能性もあります。

水素ガス発生装置を用いる場合、必要な量だけ生産することが可能ですし、余剰ガスが排気されるように装置を設置するため、上記の危険性はかなり低く、比較的安全に使用することができます。

ガスボンベの交換が不要
水素ガス発生装置は一度設置すれば交換が不要で、ガスボンベのように交換のためにトラックで運搬する必要がなくなるため、作業コストや二酸化炭素の排出量の削減に繋がります。

2. 水素生産における再生可能性

図3-製造方法による水素の色分け

図3. 製造方法による水素の色分け

 

水素がクリーンエネルギーとして注目されている理由は、水素を使用する際に排出される物質が水のみであり、二酸化炭素や他の有害な物質を排出しないためです。

しかし、現状では水素ガスの生産や運搬には従来と同様に二酸化炭素等が排出されており、本当の意味でクリーンエネルギーとして利用するためには原料の運搬から生産、消費までのすべての二酸化炭素排出量の総和を0以下に抑える必要があります。このようにして生産された水素はグリーン水素と呼ばれ、完全にクリーンなエネルギーとして注目されています。

水素ガスを利用する場所に設置することで、水素ガス生産後から消費までの輸送を不要にすることが可能です。そのうえで、水素ガスの生産時に、二酸化炭素排出量を0に抑えれば、グリーン水素の生産が達成されたといえます。

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを利用して生産された電力を用いて、電気分解によって水素を生産することで、グリーン水素が生産されます。バイオマスを利用した水蒸気改質によってもグリーン水素は生産されますが、原料の収集にコストがかかるため、大規模生産にはあまり向いていません。

また、研究段階ではありますが、水やメタンの熱分解や人工光合成などもグリーン水素の生産方法として検討されています。

参考文献
https://www.peakscientific.jp/discover/articles/how-does-a-hydrogen-generator-work/
https://www.awi.co.jp/business/industrial/plant/vh.html
https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/course50.html
https://www.kenko-media.com/health_idst/archives/14894
https://www.this.ne.jp/news/3307/
https://www.ismz.co.jp/suiso-kihon/index.html
https://univ-journal.jp/27980
https://www.peakscientific.jp/discover/articles/how-does-a-hydrogen-generator-work/

気流可視化装置

気流可視化装置とは

気流可視化装置

気流可視化装置とは、純水を微細な霧状にしてミストを発生させて、ミストが気流の動きにあわせて動くことを観察し、気流の状態を目視で確認できるようにするための装置です。

純水に対応している気体可視化装置は、汚染の原因となるような煙や粒子を必要とせず、純水と清浄された空気を用いるため、人体や機械に無害です。そのため、クリーンルームなどの衛生的な環境でも安全に使用することができます。

Fig1 気流可視化装置とは

確認したい気体の用途に合わせて、ミスト気流を発生させる速度を変化させます。また、ファンでミストを送り出す風量を調節し、空間内の気流に与える影響を限りなく小さくすると、確認対象の気体を効率的に追い出してより鮮明に可視化することが可能です。

気流可視化装置の使用用途

気流可視化装置は、特定の空間の気流を確認する場合に用いられます。具体的には、不良原因箇所の特定、部屋の乱気流や差圧の確認、逆流の有無などを確認する場合です。

熱源付近での上昇気流を確認する際にも、使用されています。一般的に、空気中の気体の流れは見ることができません。しかし、気流可視化装置を用いることで、空間中の気体の流れを目視で確認できるようになります。

クリーンルームなどの衛生環境でも使用可能で、障害物などによる気流の吹き溜まりやゴミだまりなどが発生していないかなども調べられます。

気流可視化装置の原理

Fig2 気流可視化装置の原理

図2. 気流可視化装置の原理

気流可視化装置は、超音波発生部分、ファン、ノズル、純水タンクなどの部品から構成されています。超音波発振子ユニットで発生させた超音波で振動を起こすことで、純水をマイクロメートル単位の微細な霧状にします。

そのミストをファンで押し出むことで、発生させたミストをノズルから空間内に送り込むという原理です。発振子の周波数を調整すると、ミストの粒径を制御することができます。目でみることができるくらいに大きく、かつ流れに影響を与えないぐらい小さいミストを生成しています。

気流可視化装置は、空気中に放つ物質に何らかの成分を持った煙や粒子を用いません。純水を霧状にしたミストを用いているため、汚染など心配せずに使用できます。さらに、HEPAフィルタを通しているため、ポンプの異物などがでることもありません。

気流可視化のその他情報

1. 気流可視化の手法

Fig3 気流可視化の種類

図3. 気流可視化の手法

気流可視化の手法には、気流可視化装置のほかにもタフト法や超音波法などがあります。

タフト法
タフト法は流れの中に糸などを挿入し,その挙動から流れの方向や非定常性、はく離領域の存在などの流れの模様を調べる方法です。人の手が届かないところなどの測定をする際に適しています。

超音波法
超音波法は超音波によって、流体内にある反射物からのドップラー信号を検知して流速分布を計測する技術です。流れ場を非接触で数値化できる手法ですが、高価でまだまだ使い勝手に課題があります。

どの手法も一長一短ですが、気流可視化装置 (ミスト法) は比較的手軽で、持ち運びができるため、手が届く範囲であればすぐに測ることができます。

2. 気流可視化装置の測定の工夫

気流可視化装置によって放出されるミストの粒径は、数μmから5μm程度です。暗い場所などではミストが見えづらくなるため、明るい光源が必要になります。強力なレーザー光源やLED光源などを用意するとよいでしょう。

また、色によって見えやすさが変化する場合があります。市販のものは、目に優しく感度が高い緑色が多いです。色を付けることによって、明るさ自体が落ちると逆効果の場合もありますので試行錯誤することをお勧めします。光の当てる角度などによって印象が大きく変わります。

さらに、流れ場をカメラで記録したい場合には、カメラにも一工夫が必要になるケースもあります。最近では、カメラによる動画と画像解析をあわせて流れ場の数値化を試みるPIVという手法もあります。全てに適用できる手法ではありませんが、効果的なケースもあるため検討するとよいでしょう。

参考文献
https://www.webshiro.com/sokutei_sc/airflow-visualization-apparatus.html
https://www.webshiro.com/syouhinsetumei4/M812-CV-M01K.html
https://www.csc-biz.com/csc%20bland/mist_st/mist.html
https://www.kotohira.biz/products/clean/airflow

 

次亜塩素酸水生成装置

監修:金澤工業株式会社

次亜塩素酸水生成装置とは

次亜塩素酸水とは、食塩水あるいは塩酸を電解することで得ることができる次亜塩素酸を溶質とする水溶液のことです。幅広い細菌やウイルスの除菌・除去に有効性を示し、「使用上の注意事項等を守って適切に使用した場合には人の健康を損なう恐れがない」ということから、厚生労働省により、食品添加物(殺菌料)に指定され、そのときに「次亜塩素酸水」という名称が付与されました。

食品添加物(殺菌料)としての次亜塩素酸水は、pHや有効塩素濃度などで規定されています。

食品添加物(殺菌料)に指定されている次亜塩素酸水

  電解槽 pH 有効塩素濃度(mg/kg)
微酸性次亜塩素酸水 1室型 5.0〜6.5 10〜80
弱酸性次亜塩素酸水 2室型/3室型 2.8〜5.0 10〜60
強酸性次亜塩素酸水 2室型/3室型 2.7以下 20〜60

 

次亜塩素酸に似ているものとして次亜塩素酸ナトリウムがあります。この二つの違いとしては、水液中での次亜塩素酸分子の形がそれぞれ異なり、殺菌力に差があることが挙げられます。次亜塩素酸ナトリウムは水液中では主にイオンの形で存在しているのに対して、次亜塩素酸水は水液中では主に分子の形で存在しています。
次亜塩素酸は、イオン型よりも分子型の方が殺菌力は高いといわれており、同じ有効塩素濃度では、次亜塩素酸水の方が高い殺菌効果を示します。

次亜塩素酸ナトリウムは殺菌効果を得るために、200 ppm以上の比較的高い濃度で使用されるのが一般的です。そのため、食品の取扱い現場では、手荒れの原因となったり、食品に塩素臭が付着してしまい、食品の味や香り、食感に影響を与えてしまったりといった問題が指摘されてきました。一方、次亜塩素酸水では、より低濃度で殺菌効果が得られることから、食品や人に与える影響が少なく、利点があるとされています。

次亜塩素酸水生成装置とは、この次亜塩素酸水を即時的に生成できる装置のことで、次亜塩素酸水生成装置を使うことで、手間をかけることなく安価で安全に除菌・消臭などの衛生管理を行うことが出来ます。
次亜塩素酸生成装置には、大小さまざまな大きさがあるので、使用目的に合った大きさの装置を選択することで効率よく作業することが出来ます。

次亜塩素酸水生成装置の使用用途

ここで、次亜塩素酸水生成装置の使用用途について説明します。
次亜塩素酸水生成装置を使えば、希釈など作業の手間がなくても、安全な次亜塩素酸水を水道水のようにいつでもすぐに使用することができます。
これらの次亜塩素酸水生成装置を使うことで、効率よく衛生管理をすることができるため、医療施設や福祉施設、教育施設・農業、水産業、飲食店、食品加工施設など様々な分野で使用されています。
例えば、食品加工施設や飲食店では調理器具や施設などの除菌、様々な食材の殺菌に、医療や福祉、教育施設では、施設内の除菌、器具や衣服などの洗浄や除菌などに用いられています。

次亜塩素酸水は、食品添加物に指定された除菌水ですが、最近では食品添加物の規定範囲外のものも、次亜塩素酸水生成装置として流通しており、食材の殺菌に使用する場合は、食品添加物(殺菌料)としての規定範囲内のものを使用するよう注意が必要です。

次亜塩素酸水生成装置の原理

続いて、次亜塩素酸水生成装置の原理について説明します。
次亜塩素酸水は、食塩水か希塩酸を電解することで得られます。強酸性次亜塩素酸水と弱酸性次亜塩素酸水は、陽極と陰極を隔膜で隔てた電解槽で食塩水を電解して、陽極から次亜塩素酸水を生成します
一方、微酸性次亜塩素酸水は、希塩酸または希塩酸と食塩の混合液を、無隔膜電解槽内で電解し生成します。

食品添加物(殺菌料)指定の次亜塩素酸水を生成する装置

次亜塩素酸水は、2002年に厚生労働省より食品添加物の殺菌料として指定をされ、pHや有効塩素濃度、成分や生成装置などの規格基準や使用方法が定められています。

【食品添加物として指定されている次亜塩素酸水の成分規格および装置】
■微酸性次亜塩素酸水(pH5.0〜6.5 ・ 有効塩素濃度10〜80ppm)
 生成装置:1室型電解槽
  被電解液:塩酸水または塩酸+塩化ナトリウム水溶液

■弱酸性次亜塩素酸水(pH2.8〜5.0・ 有効塩素濃度10〜60ppm)
 生成装置:2室型電解槽/3室型電解槽
 被電解液:塩化ナトリウム水溶液

■強酸性次亜塩素酸水(pH2.7以下・ 有効塩素濃度20〜60ppm)
生成装置:2室型電解槽/3室型電解槽
被電解液:塩化ナトリウム水溶液

【使用基準】

・使用前に次亜塩素酸水のpHと有効塩素濃度が規定内であるか確認をする。
・使用前に水道水で汚れを除去し、次亜塩素酸水で洗浄後、水道水ですすぐ。

コロナウイルス感染症対策における次亜塩素酸水生成装置

次亜塩素酸水は、独立行政法人 製品評価技術基盤機構(NITE)の検証により、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対する有効性が示されています。ただし、使用用途に応じて以下の条件があります。

  • 拭き掃除に使用する場合
    有効塩素濃度は80 ppm以上のものを使用する。
  • 生成装置から掛け流して使用する場合
    有効塩素濃度は35 ppm以上のものを使用する。

使用する際のポイントとしては、以下のとおりです。

  • 目に見える汚れが付着している場合には、予め落としておく。
  • 十分な量の次亜塩素酸水を使用する
    掛け流して使用する場合には、消毒したい物に対して20秒以上の掛け流しを行う。

次亜塩素酸水は少量使用での効果は確認できていないため、注意が必要です。またNITEによる検証は、あくまでも物品の除菌を想定して実施されたものであり、手指等の除菌に対する有効性や、具体的な使用方法までは評価の対象外となっている点にも注意が必要です。

本記事は電解水(次亜塩素酸水)生成装置を製造・販売する金澤工業株式会社様に監修を頂きました。

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参考文献
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002wy32-att/2r9852000002wybg.pdf
https://www.hoshizaki.co.jp/p/e-water/additive.html
https://www.hoshizaki.co.jp/p/e-water/merit-woxrox.html
https://www.kotohira.biz/products/jiasui/jiasui_l
http://ikeda-shokai.shop/hclo-generator.html
https://pro.saraya.com/sanitation/column/kogure/kogure12.html
http://bisan.fwf-aew.jp/about_SAEW/index.html
https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0819-8l.pdf
https://www.nite.go.jp/information/osirase20200626.html
https://www.nite.go.jp/data/000111315.pdf

樹脂ベアリング

樹脂ベアリングとは樹脂ベアリング

樹脂ベアリングとは、樹脂素材を用いて作製したベアリングのことです。

樹脂ベアリングはプラスチックベアリングとも呼ばれます。ベアリングとは日本語では軸受という意味で、回転機器の回転軸を受け止めて回転を円滑にする役割を担う部品です。

樹脂ベアリングは樹脂素材で作製されるため、軽量化や自在な成形が可能です。熱や薬品に対する耐性や絶縁性などが高く、金属には不向きな特殊環境下での使用が可能という特徴があります。

また、オイルグリースなどの潤滑剤を必要としないため、メンテナンス頻度が低い点もメリットです。樹脂ベアリングに使用する素材は主に合成樹脂であり、種類が豊富なため用途に合わせて最適な材質を選ぶことができます。

樹脂ベアリングの使用用途

樹脂ベアリングは家具などの家庭用品から産業・商業用機器まで幅広く使用されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • オフィスで使用する家具や冷蔵庫
  • 自動販売機などの電気製品
  • スチール家具や駐輪用の器具
  • グリスを使用したくない食品工場
  • 薬品を使用する化学系工場
  • 水中ポンプ用モーター・ポンプの回転軸

樹脂ベアリングは、金属製ベアリングと比べて耐薬品性や耐水性に優れており、非導電性のため薬品や水中などで使用されています。

樹脂ベアリングの原理

一般的にベアリングには金属素材が用いられますが、樹脂ベアリングは樹脂を材料としています。樹脂には腐食耐性・耐水性・絶縁性に優れ、軽量である上、低コストで製造可能です。これらの利点をベアリングに活かしたのが樹脂ベアリングです。

樹脂ベアリングは、摺動部分に樹脂素材を用いることで樹脂の特性を効果的に発揮し、負荷荷重のバランスを設計して製作されます。樹脂製ボールベアリングのボール部分は樹脂以外の素材を用いる場合もありますが、軌道輪と保持器は樹脂の同一素材を用いることが一般的です。使用用途に合わせて、ベアリングを構成する各部品の材質を指定することもできます。

樹脂ベアリングのその他情報

1. 樹脂ベアリングのデメリット

ベアリングは転がり軸受とすべり軸受に分けられます。さらに、材質の面から、金属製ベアリングと樹脂製ベアリングで分類されます。樹脂製ベアリングは、金属製ベアリングと比較して多くの利点を持ちますが、下記のような欠点もあります。

ベアリングの強度
エンジニアリングプラスチックの性能は向上傾向にありますが、金属と比べると強度は劣ります。そのため、樹脂ベアリングは重負荷での使用はできません。また、強度が低いので変形が大きく、高精度用途には不向きです。

ベアリングの耐熱性
樹脂は耐熱温度が高いテフロン系材料でも260℃程度であり、高温環境では軟化するため使用できません。その他、高精度加工が難しく、高精度ベアリングの作製が困難であること、紫外線や衝撃荷重に弱いことも欠点として挙げられます。

2. 樹脂ベアリングの材質

樹脂ベアリングに使用される材質は、様々な種類があります。すべり軸受には、ポリアセタールや四フッ化エチレンなどの樹脂材料に充填剤や潤滑油を添加したものが多く使用されます。

転がり軸受ではPEEK (ポリエーテルエーテルケトン) やPTFE (テフロン樹脂) 、フェノール樹脂が多く使用されます。PEEKは耐熱性や耐薬品性などに優れ、高い耐摩耗性や寸法安定性を有する高機能樹脂であり高価格です。

PTFEは耐熱性、耐薬品性に優れていますが、一番の特徴は低摩擦係数と低粘着性です。そのため、フライパンのコーティングに使用されます。機械的強度は若干劣りますが、吸水しないため薬品などでも膨潤することがありません。

フェノール樹脂はベークライトとも呼ばれ、絶縁性や耐油性が高いのが特徴です。また、アルカリ以外の薬品にも耐性があります。価格は他の材料と比べて比較的低価格です。導電性材料を添加することで、導電性を持たせた材料や金属を一部使用したものなど、多くの種類が販売されています。

参考文献
http://tok-inc.com/products/index3.html
https://kashima-kagaku.com/about/
https://kashima-kagaku.com/about/jushi_feature/
https://kashima-kagaku.com/about/structure/
https://kashima-kagaku.com/use/environment/environment_01/
http://share.j-treasure.com/tok-jusibearingu/

樹脂バルブ

樹脂バルブとは

樹脂バルブ

樹脂バルブはPVCやPTFEのようなプラスチックで構成されたバルブです。

ステンレスや鋳鉄でできたバルブでも一部樹脂を使用している物もありますが、樹脂バルブの場合は全て樹脂で構成されています。その為、樹脂でなければ使用できない腐食性環境や金属などが使用不可能なラインにおいて使用できるバルブです。

ただし、樹脂でできているので絶対的な強度は金属に劣ってしまいます。また、太陽光の下で長期間使用すると劣化して強度が低下してしまう場合もあります。

樹脂バルブの使用用途

樹脂バルブは薬品に侵されにくい特徴を利用して、腐食性薬品のラインに多く用いられます。特に35%等の高濃度の塩酸のラインでも使用できるので、強度的に問題が生じない場合は樹脂バルブが良く用いられます。

硫酸であれば高濃度の場合はSGPでも問題ないですが、塩酸の場合は不可能ですので必然的に樹脂が第一選択となります。

また、いろいろな流体が混合する時に腐食性流体が流れる場合にも樹脂バルブが良く用いられます。また非常に溶出量の少ない樹脂で作られたバルブを使用すれば、純水のようなラインでも問題無く使用する事が出来ます。

樹脂バルブの原理

樹脂バルブはその構成材料のほとんどすべてをPVCやPTFEで作成する事により高い耐腐食性を発揮します。

これには腐食性以外にも大きな利点があり、基本的に樹脂でできているので重さがとても軽く配管にかかる負担も少なくなります。

ステンレス鋼でできたバルブにPFAコーティングやゴムライニングを施したバルブもありますが、これらは一般的に非常に重くてライニングなどが必要な分工数も多くかかります。また、万が一コーティングやライニングに破損が生じるとその部分の耐食性は無くなってしまうので、腐食が一気に進行してしまいます。

その分樹脂バルブであれば重さも軽く、構成材料自体が耐腐食性を兼ねているので大きな利点となります。

ただし、樹脂の特性上紫外線の下では劣化する場合があります。よく屋外に放置されたプラスチックが白くなるのと同じ現象で、PVCも徐々に劣化して強度を失っていきます。その為、屋外で使用する場合は定期的に交換するなどの対応が必要となります。

同様にプラスチックなので耐衝撃性は劣ります。その為ウォーターハンマーなどがおそれられるライン使用は慎重に検討する必要があるだけでなく、配管サポートもしっかりと確保する必要があります。

参考文献
https://www.eslontimes.com/system/items-view/112/
https://www.asahi-yukizai.co.jp/product_type/valve-manual/