オペ・アンプとは
オペ・アンプとは、2つの入力端子と1つの出力端子を備え、入力側の電気信号を増幅して出力することができる集積回路です。
「オペレーショナル・アンプリファイヤー(Operational Amplifier)」の略語で、演算増幅器とも呼ばれています。オペ・アンプは接続する回路素子を工夫することで、単なる増幅にとどまらず、入力電圧の加算、減算、時間積分などの演算機能を持たせることが可能です。
現在では、この特徴を活かしたアナログ増幅回路が広く利用されています。
オペ・アンプの使用用途
オペ・アンプを利用した多種多様な回路が知られていますが、その代表的なものを以下に示します。
- センサー・アンプ
- ボルテージ・フォロア回路
- 差動増幅回路
- 加算増幅回路
- 積分回路
- 微分回路
- 直線検波回路
- 対数増幅回路
- 位相発振回路
- アクティブ・フィルタ
1. センサー・アンプ
オペ・アンプは、マイクロフォン、光センサー、圧力センサーなどから出力されるいろいろな微小信号をA/Dコンバータが扱える信号レベルまで増幅するセンサー・アンプの分野で使用されています。ここではノイズの影響を避けるため、差動増幅器構成であったり、バンドパス・フィルターを介して信号の周波数帯域外のノイズを除去したりする等の手段が採用されていますが、そこに必ず使用されるのがオペ・アンプです。
2. ボルテージ・フォロア
オペ・アンプは、ボルティジ・フォロアとしても使用されています。高いインピーダンスの信号源はノイズに弱くケーブル長を伸ばせませんが、オペ・アンプをボルティジ・フォロアとして信号源近くに配置すると、オペ・アンプの低い出力インピーダンスで信号を送り出すことが可能です。オペ・アンプを使用することで、ケーブルを長くしてもノイズの影響を減らせるようになります。
オペ・アンプの原理
オペアンプは、2つの入力端子と1つの出力端子から構成され、次のような理想的な特性を備えています。
- オープンループ・ゲイン:無限大
- 入力電流:0A
- 出力インピーダンス:0Ω
実際には、オープンループ・ゲインは90dB以上、入力電流は数nA~1μA程度、出力インピーダンスは0.1Ω~数Ωですが、原理的には上記を前提として考えることができます。
また、オペ・アンプの2つの入力端子は次の機能を備えています。
- 反転入力端子
入力信号の位相が180°反転して出力される端子で、回路記号に”-“が表示されます。 - 非反転入力端子
入力信号と同相の出力が得られる端子で、回路記号に”+”が表示されます。
オペ・アンプの種類
オペ・アンプの種類は、「素子」「電源構成」「特性」の観点から分類できます。
1. 素子による分類
回路を構成する素子により、次の3種類となります。
- バイポーラ・トランジスタだけで構成したオペ・アンプ
一般的なオペ・アンプで、特性面で優れた高性能タイプから一般汎用タイプまで多くの種類があります。 - 入力端子にFETを採用したオペ・アンプ
基本的にはバイポーラ・トランジスタで構成されていますが、入力回路の初段部をJ-FETによる差動型のソース・フォロアとすることで、高い入力インピーダンスと大きなスルー・レート特性を得ています。 - CMOSで構成したオペ・アンプ
耐電圧が比較的低いものの、入力バイアス電流が極めて小さなレベルであることや消費電流が少ないことが特徴です。また入出力のダイナミックレンジが広く、大きな振幅の信号を扱えることも利点です。但し、高い周波数の信号には対応できません。
2. 電源構成による分類
オペアンプを動作させるための電源構成により、次の2種類に分類できます。
- 両電源タイプ
アースレベルに対し、プラスとマイナスの電源電圧が必要なオペアンプ - 単電源タイプ
プラスもしくはマイナスの電源電圧のみで動作するオペアンプ
3. 特性による分類
用途に応じて特に重要な特性が異なることから、特徴を持ったオペ・アンプが供給されています。その一例を以下に記しますが、要求仕様に基づいて、適切なデバイスを選択する事が求められます。
- 広帯域
- ローノイズ
- 高精度
- Rail to Rail 動作
- 低バイアス電流
- 低消費電流
- 高出力電流
オペ・アンプの使い方
オペ・アンプは、アナログ回路特有のエラー要因を有します。また、「オペ・アンプの原理」の項で解説した理想的な特性から外れた部分が、回路動作に悪影響を及ぼすことがあります。そのため、それらを避ける対策が必要です。具体的な対策は、以下に記します。
- オペ・アンプに供給する電源はノイズの少ない安定した電圧を出力するものであること
- 電源端子の近傍にノイズ吸収コンデンサを実装すること
- デジタル処理回路から距離をとる、もしくはシールドケースに収めること
- 温度変動が少ない環境に設置すること
- 正確な増幅率や周波数特性を求める場合は、フィードバック回路の素子の精度や温度特性を踏まえて設計すること
その他にも以下のような注意事項がありますが、個々の対処方法については、専門の文献やオペ・アンプメーカーが提供している資料を参照して下さい。
- オフセット電圧のキャンセル
- 発信防止
- ダイナミックレンジの確保
- バイアス電流の影響除去
- 電流供給能力の確保
- 過大入力信号からの保護
オペ・アンプのその他情報
増幅回路の基本
オペ・アンプは、オープンループ・ゲインが極めて高いため、出力端子から入力端子へのフィードバック回路を適切に設定して、前項に記した様々な機能を実現します。ここでは、オペ・アンプを用いた基本的な増幅回路として次の2つを実例として解説します。
1. 反転増幅器
信号Viは抵抗Riを介して反転入力端子に接続し、反転入力端子と出力端子間は抵抗Rfで接続します。また非反転入力端子は直接アースに接続します。この構成で得られる出力信号Voは (-Rf/Ri) ×Viとなります。”-“は位相が反転していることを示します。
2. 非反転増幅器
信号Viは直接非反転入力端子に接続します。反転入力端子はRiを介してアースにするとともにRfを介して出力端子に接続します。この構成で得られる出力信号Voは (Rf/Ri) ×Viとなります。
参考文献
https://www.ablic.com/jp/semicon/products/analog/opamp/intro/
https://www.marutsu.co.jp/pc/static/large_order/1104opamp
http://www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/course/mechatronics/analog.html