ロータリースイッチ

ロータリースイッチとは

ロータリースイッチ

ロータリースイッチ (Rotary Switch) とは、回転させることで接点を切り替えるスイッチです。

オーディオコンポの音量ボリューム調節や、電子レンジのつまみなどで使用されます。ロータリースイッチの多くは複数接点の切り替えに利用されますが、1接点のみを切り替えるスイッチも販売されています。最近では超小型のロータリースイッチも開発されており、音声機器などの小型化に寄与しています。

ロータリースイッチの使用用途

ロータリースイッチは、身近な家電製品から産業用機器まで幅広い用途で使用されます。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • オーディオコンポの音量ボリューム調節
  • 電子レンジの出力設定
  • 扇風機の電源や強弱の切替
  • 測定機械や通信機器のボリューム切替
  • インバータや空調機などの制御基板設定切替

最近ではレトロな雰囲気を出すために、1接点のロータリースイッチで電源操作をするペンダントライトも販売されています。また、近年ではDIYの一環としてポータブルLED照明の電源切替スイッチなどに使用されることもあります。

ロータリースイッチの原理

ロータリースイッチは摺動子、ケース・固定接点、端子などで構成されます。

摺動子は可動接点と同時に動き、操作に従って接点を切り替える部分です。切り替えた接点はケースに付属する固定接点の2か所以上を導通させます。固定接点の接点出力は端子部を通して外部へ出力されます。

ロータリースイッチの種類

ロータリースイッチにはノンショーティングタイプとショーティングタイプがあります。使用目的にそぐわないタイプを選んでしまうと回路が故障してしまう場合もあるため、適切な選択が必要です。

1. ショーティングタイプ

ショーティングタイプ (Shorting Type) とは、接点を切り替える際に同時に2接点以上が導通する種類です。回路が断線する瞬間がないのが特徴です。そのため、接点間が電気的に接続される状態が一時的に発生します。

変圧器のタップ切替回路などの一時的な断線が許容できない場合に用います。ショーティングタイプはメーク・ビフォア・ブレイクとも呼ばれます。英語で「接点が離れる前に接続される」という意味です。

2. ノンショーティングタイプ

ノンショーティングタイプ (Non-Shorting Type) とは、隣り合った端子同士は完全に独立しており、接点を切り替える瞬間は回路が一度断線する種類です。こちらは接点切り替え時に、一瞬どちらの接点も電気的に未接続の状態が発生します。

したがって、切替による一時的な断線が問題とならない場合に用います。一般用途では多くがノンショーティングタイプです。ノンショーティングタイプはブレイク・ビフォア・メークともよばれます。英語で、「接点が接続される前に離れる」という意味です。

ロータリースイッチのその他情報

1. ロータリースイッチの使い方

ロータリースイッチは操作部を回転することで回路を切り替えます。ディジタル回路の設定を行う際に、利用されることが多いです。設定用などに用いるため、スイッチの切替頻度が高くないときに用います。

操作部がフラットな製品やシャフト状の製品など、ロータリースイッチの種類はさまざまです。形状の違いにより、切り替えの操作に指で操作できる製品やドライバーなどが必要な製品があります。

2. サムロータリースイッチ

ロータリースイッチの中にはサムロータリスイッチがあります。これは、スイッチの表示部に数字が書かれた円盤状の部品が使用されたロータリースイッチです。視覚的に確認が容易なことが特徴で、古い無線機のチャンネル設定用などに用います。

代表的なサムロータリスイッチはケース、押しボタン、摺動子、ロータ、プリント基板、取り付け版などの部品で構成されます。

参考文献
https://www.nkkswitches.co.jp/support/klg/knowledge.html
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/15/330/index.html

セラミックコンデンサ

セラミックコンデンサとは

セラミックコンデンサ

セラミックコンデンサとは、誘導体にセラミックを用いたコンデンサです。

コンデンサは、2枚の金属板と金属板に挟まった誘導体によって構成されています。コンデンサの誘導体にはいくつかの材料が用いられており、それぞれ特徴があります。

セラミックコンデンサは誘電率が高く、小型で熱に強いのが特徴です。さらに、周波数特性の良いコンデンサとして、高周波回路などに多く用いられています。

セラミックコンデンサの使用用途

セラミックコンデンサは、デジタル回路のバイパスコンデンサとして利用されます。コンデンサは、交流電流を通しますが、直流電流を通さないのが特徴です。

セラミックコンデンサはセラミックの性質を利用して、カップリングコンデンサやラインフィルタとして利用されます。例えば、AC/DC、DC/DCコンバータ回路やサーキットブレーカー用回路等です。

また、高周波や低周波のノイズをキャンセルするためにも、広く利用されています。

セラミックコンデンサの原理

一般的なコンデンサと原理は同じです。2枚の電極の間にセラミックの誘電体を入れて、電極間に電圧を発生させると電極に電荷が貯まり、一定程度貯まると電荷を放出するというコンデンサとしての性質が現れます。

コンデンサが蓄えられる電荷の容量を静電容量と呼びます。誘電体の材質や電極間の距離、誘電体の層の数によって容量や性質が変わります。

セラミックの誘導体には、誘導率が高いセラミックが使われており、主な材料は酸化チタンアルミナ です。また、チタン酸バリウムを使うとやや価格が高くなりますが、より容量の大きいコンデンサになります。

セラミックコンデンサの種類

セラミックコンデンサの種類には大きく低誘電率型、高誘電率型、半導体型があります。

1. 低誘電率型

酸化チタンを主な誘電体に用いており、温度変化に強く温度補償用に利用されています。カップリング用にも使われます。

2. 高誘電率型

チタン酸バリウム等が誘電体で、酸化チタンより誘電率が高くなっています。静電容量が大きい特徴があり、平滑回路に使われますが、やや高価です。

3. 半導体型

誘電体にチタン酸ストロンチウムなどの半導体セラミックを用いています。小型で容量が大きく絶縁性も良好なコンデンサとされています。価格は3つのうち最も高価です。

セラミックコンデンサのその他情報

セラミックコンデンサの容量の読み取り方

セラミックコンデンサは本体サイズが小さいため「0.1uF」「10uF」などのような容量を直接記載するようなことはせず、1~3桁の数字のみで表示しています。

1~2桁の場合
1~2桁の場合は、単に数字をそのまま読み取り「pF (ピコファラド) 」の単位を付けたものが静電容量です。例えば、「5」なら5pF、「33」なら33pFとなります。

数字が小さい分そのまま印字できること、容量の小さなコンデンサはその分本体サイズもより小さくなることから、このように表現されています。

3桁の場合
3桁の場合は、炭素被膜抵抗などと同様に、上位2桁をそのまま数値として読み取り、3桁目を乗数として掛け算します。こちらも単位は「pF」です。例えば、「104」なら10×10の4乗=100000pF=100nF=0.1uF、「223」なら22×10の3乗=22000pF=22nF=0.022uFとなります。

一方で、チップタイプのセラミックコンデンサには容量を本体に記載しないものが多くなっています。実装や部品交換の際には使用する直前にテープから取り出したり、小分けのできるケースに保管したりするなど、静電容量の測定できるテスターで確認してから実装するのがおすすめです。

2. セラミックコンデンサの極性

一般にセラミックコンデンサには極性がないため、回路上でどちら向きに取り付けてもかまいません。リード部品の場合、片面にしか静電容量が印刷されていないため、基本的に静電容量が印刷されている面が同じ向きを向くようにします。

また、背の高い部品が近くにある場合は、後から数値が読み取れる向きで実装しておくと、確認する際に見やすい基板となります。

3. セラミックコンデンサの耐圧

セラミックコンデンサには、印加できる電圧の上限が定められています。しかし、コンデンサ本体のサイズや定格値によっては本体に記載されていない場合や略号として記載されている場合があります。

特に高い電圧を扱う回路で使用する際は、データシートやメーカー型番などをよく確認してください。長い英数字の羅列となっているメーカー型番の中には、耐圧に関する情報が含まれていることもあるためです。

参考文献
https://www.matsusada.co.jp/column/post-15.html
https://article.murata.com/ja-jp/article/basics-of-capacitors-5
https://search.murata.co.jp/Ceramy/image/img/A01X/G101/JPN/RDE_X7R_X7S_25V-100V_J.pdf

プリント基板

監修: OKIサーキットテクノロジー株式会社

プリント基板とは

プリント基板

プリント基板は、電気工作には必要不可欠な部品です。

絶縁体(プラスチック)の表面上の主にの配線パターンにトランジスタや抵抗等の部品を配置して、はんだ付けを行い、電子回路を製作する事が可能になります。ほぼ全ての電子機器 (TV PC スマートホン 家電 )にプリント基板は使われており、機器に内蔵された電子回路はプリント基板によって作動しています。

日本では1936年頃に世界に先駆けて特許が取得され、技術開発が進みました。そのため、1990年頃は、日本が生産額では、世界一でした。近年では、中国 アジアに電子機器の生産がシフトしており、中国、アジアで大量に生産されています。

プリント基板の使用用途

プリント基板は、電子工作はもちろんのこと、パソコンやテレビ、電気機器の配線基板として利用されています。

こうした特に精密な電気機器のプリント基板には基板自体にすでに必要な回路パターンが形成されており、部品を載せるだけで、電子回路が完成します。さらにより高密度に対応するため、1枚の板の中に何層もの回路を重ねた、多層基板もあり、PC、マートホン等の電子機器に使われております。

また、用途に応じて多くの種類の材料があり、何百種類もの品種があります。一般には、堅い材料が主ですが、近年 スマートホン等のモバイル用途では、柔らかいフレキ基板が多数使われており、柔軟性のある材料(フィルム)の使用が増えております。

プリント基板の製造方法

プリント基板は、絶縁性の板に小さな穴を開けて、その穴に銅などでメッキを行います。(スルホール、ビアホールと呼びます。)小さな穴に電子部品と電線をはんだ付けし電気が流れるようにすることで、回路を組むことができます。多層基板の場合、スルホール、ビアホールを通じて、中の信号が他の層と接続しております。

プリント基板には片面、両面、多層基板があり、多層になるほど回路をたくさん組むことができるので省スペース化が可能になります。

使用される材料

プリント基板の基材は、家電(冷蔵庫 洗濯機)では、紙にフェノール樹脂を含浸させた紙フェノール基板が主力です。ただ 反りが出てしまったりするので、強度は高くありません。PC、スマートホン、自動車、測定装置等の信頼性が必要とされるものは、ガラスエポキシ基板(ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させ物)

また、放熱性が要求される所では、放熱性の良いアルミ基板を使用する事もあります。昨今は、自動車のEV化に伴い、大電流化が進んでおりますので、需要がでてきております。

また、薄いポリイミドやポリエステルのフィルムを基板とするフレキシブル基板も登場しました。フレキシブル基板は機械的強度が弱い反面、柔軟性があり折り曲げることができます。こうした基板の材料には、難燃性(火がついても燃えにくい)が求められています。そのため、ハロゲン系の物質が使われており、環境のためにハロゲンフリーを要求するお客様もおり、その対応が求められています。

近年では、回路のパターン形成方法も自動化されており、小型化 高密度化に対応した製品の開発が進んでいます。

プリント基板の構造

プリント基板は目的により数種類あり、それぞれ構造・材質などが違います。

片面基板

パターン面にだけ銅箔がある基板のこと。比較的簡単なパターンのみ実現ができます。プリント基板の製造コストが一番安く、自作のプリント基板にはもっとも使われているタイプです。

両面基板

プリント基板の表裏両面に銅箔がある基板のこと。表と裏でパターンを描き分けることができ、片面基板よりも複雑なパターンが実現できます。少し高度になりますが、自作も可能です。表裏のパターンのずれに注意してください。また、ベタアースパターン基板はスルホールも必要です。

多層基板

両面基板では実現できない複雑なパターン(コンピューターボードなど)や基板の大きさの制約でパターンを重ねる必要がある場合(携帯電話、携帯オーディオ機器など)などで使われます。~8層までの多層基板が使われています。大量生産が要求される基板の場合は、月産数十万枚など製造する場合は1台 何億円という装置を組み合わせて、製造する必要があり、設備産業となっています。

プリント基板の材料

プリント基板の材質は以下のように数種類あり、それぞれ性質が異なります。目的に合致するものを選択してください。

紙フェノール基板

基材に紙を使い、接着樹脂はフェノール樹脂です。ベーク基板、ベークライトとも呼ばれます。古くから使用されています。安価で加工性が高いですが、基板が反りやすく、耐熱性、吸湿性が悪いです。また、絶縁抵抗、高周波特性が悪く、スルホールを形成できません。

紙エポキシ基板

基材に紙を使い、エポキシ樹脂を接着樹脂とした基板です。紙フェノール基板とガラスエポキシ基板の中間的な特性です。片面基板として作られています。紙フェノール基板に比べて耐熱性、吸湿性、電気特性に優れているが、ガラスエポキシ基板には劣ります。

ガラスエポキシ基板

ガラス繊維にエポキシ樹脂を含ませて製造したプリント基板です。現在最も多用されており、多層基板はほとんどがガラスエポキシ基板です。0.2mmの薄物から電力機器用、マザーボードなどの2.4mmまでの板厚など、幅広く使用されています。寸法変化が小さく、耐久性に優れています。併せて電気特性、機械特性が良好です。但し加工性が悪く、専用の工具が必要です。コストは高くなりますが機能性は向上します。

このようにプリント基板には、色々な種類があり、色々な材料を使用します。プリント基板の種類により、設計ルールも、大幅に異なりますので、お困りの時は、専門のメーカーに問い合わせてみてください。

本記事はプリント基板を製造・販売するOKIサーキットテクノロジー株式会社様に監修を頂きました。

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分光器

分光器とは分光器

分光器とは、様々な波長の光が混在した合成光の中から、測定対象とする波長の光の強度のみを測定するために、光の成分を分離する装置です。

最近では分離した光の検出器を一体化したものも多く、光の分離から検出機構までをまとめて分光器と呼ばれることもあります。

分光器の使用用途

分光器は、反射光や透過光を問わず、また可視光のみならず電波から放射線に至るまで、原理的に様々な波長帯の光源(線源)を分光することができるため、あらゆる産業や研究場面で使用されます。

分析化学分野では、太陽光やプラズマ発光強度を測定するために用いられ、素材の反射率などの光学的性質を評価する場面でも用いられます。

また、レーザーなどの光源を使った製品検査ラインにおいて、反射光など任意の波長の検出をする品質管理ラインに意識せずとも組み込まれていることも多いです。

分光器の原理

分光器の原理

図1. 回折格子 反射型(左) / 分光器 回折格子型 (右)

一般に、光源を分光するには、まず光の整形が必要です。

スリットと呼ばれる隙間に光源を通すことで光の分解能を設定したのち、レンズやミラーで作られたコリメータにより光源を平行光化します。この平行光を分光素子に入射させることで分光が可能です。分光素子には、光の回折現象を利用した回折格子型か、光の屈折現象を利用したプリズム型があります。

回折格子型では、分光素子表面に一定の間隔で刻んだ回折格子による光の反射を利用して分光するため、回折パターンを変更することで検出できる光の波長と分解能が変化します。ここで、回折格子型分光器の原理について、図を用いて説明します。

回折格子には透過型と反射型がありますが、図1は、反射型の回折格子の概念図を表しています。さまざまな波長の光を含む光源(白色光)の平行光を回折格子に入射させると、複数のグレーティングすなわち格子状の構造部分(G1、G2...)のそれぞれの位置において、広い角度方向への反射光の回折が生じます。ここで光の干渉が起こり、各グレーティングに由来する反射光の光路差(dsinθ)が所定の条件(波長λの整数倍)を満たす角度(θ)方向に対して、特定の波長λのみが強められた単色光が出射します。

このようにして、回折格子によって、異なる波長が異なる角度に分散(虹状に分離)することになります(図2参照)。さらに図2に示したスリットを用いることで、分散した反射光のうち特定波長の単色光のみを取り出すことができます。以上が回折格子型分光器の原理となります。なお、回折格子を回転させれば、取り出す光の波長を変化させることも可能です。

分光器の選び方

検出器一体型の分光器を使用する場合には、測定した光源の波長について適切なものを選定する必要があります。

例えば、紫外線から近赤外線までの範囲の光源であれば、CCDでいいですが、それを超える長波長光源を検出するのであれば、InGaAs型の検出器が必要です。

また、測定原理でも述べたように、回折格子型の分光器は回折パターンにより検出できる波長がきまるため、目的の波長に適したものを選ぶ必要があります。

プリズム型はプリズムの性質によって分解能は決まりますが、光の強度ロスがないという特長があるため、用途によって使い分けるとよいでしょう。

分光器のその他情報

1. 分光器の使い方

分光器を使用した分析機器の使い方は、一般的に以下の流れとなります。

  1. 測定する物質と、測定波長域を決めます。
  2. 測定したい波長に対応した分光器を選択します。
  3. 物質に光を当てて、目的の波長を分光します。
  4. 目的の光をセンサーに入れて信号を検出します。
  5. 得られた信号をスペクトルに変換します。

研究室で使用する高価なモノなら、マイケルソン干渉計と呼ばれる分光箇所で特定の光の波長を自動で検出します。持ち運び可能な小型機でも、物質を透過、反射した光を交換可能な分光器を通すことで、目的波長を検出できます。

得られた波長はセンサー(検出器)に入り、各波長ごとに信号として検出されます。この信号はスペクトルと呼ばれる波の波形に変換され、このスペクトルを解析することで、物質の状態を解析します。

2. 分光器の実験例

分光器を使用した実験はいくつかありますが、測定する波長によって様々な例があります。

例えば短波長側から各波長域の実験例を見ていくと以下の通りとなります。

  1. X線分光器は、物質表面にX線を当て、その反射光を分光器に通すことで、表面の組成を特定します。
  2. 紫外・可視分光器は、物質に光を透過させることで、対象の成分や含まれる量を特定します。
  3. 赤外分光器は分子間の結合に光を当てることで、物質の構造が分かります。

このように、分光器の波長域によって得られる情報は異なってきます。

3. 分光器から得られるスペクトル

分光器を使用する目的は、未知、もしくは既知の物質から情報を習得して、解析を行い物質の状態を特定することです。その解析に用いるのが、分光器から最終的に得られるスペクトルと呼ばれる波形図です。

分光器から得られるスペクトルには以下のような例があります。知りたい情報を最初に定義することで、適切な分光器を選択してスペクトルを習得することが重要になります。

  1. X線分光器は測定される特性X線のピークから原子を特定します。
  2. 紫外・可視分光器は光を試料に透過させたときに励起する電子のエネルギー差をスペクトルとして検出します。
  3. 赤外分光器は原子間を繋ぐ結合間の振動エネルギーをスペクトルとして検出します。

参考文献
https://www.klv.co.jp/technology/spectrometer.html
https://www.mst.or.jp/method/tabid/1222/Default.aspx

油圧ポンプ

油圧ポンプとは

油圧ポンプ

油圧ポンプは、電動機を動作させることで機械エネルギーを発生させます。油圧ポンプを駆動すると油が循環して機械エネルギーを流体エネルギーに変換します。流体エネルギーは、油圧エネルギーと呼称されることもあります。この流体エネルギーは、油圧アクチュエーターが必要としている圧力と流量が組み合わさったものです。圧力は、どちらか一方のエネルギーが発生していなければ、流体を押し付けるだけの状態になります。油圧アクチュエーターに油が侵入すると流体エネルギーは、機械エネルギーに変換されます。変換された機械エネルギーは、直線運動や回転運動となってポンプの力になります。

油圧ポンプの種類には、一般的な容積式ポンプや定容量形ポンプ、可変容量ポンプなどがあります。

油圧ポンプの使用用途

油圧を利用した構造品には、油圧ユニットと呼ばれる一連の動作機構が使用されており、多少の構造型式に違いがありますが、そのすべてに油圧ポンプが内蔵されています。油圧機器の力は、圧力と流量の組み合わせであるため、流量を変えずに圧力を2倍にすれば馬力が2倍になります。圧力を変えずに流量を2倍に変更すると、馬力も約2倍になります。

一般的に、油圧を必要とする場面では大きな外部への動力を必要とする場面が多いため、特に建設現場などで用いられるショベルやクレーンなどの重機に使われています。また、小型ながらも大きなトルクが必要な装置にもよく使用されます。例えば、飛行機や船、自動車に代表される運輸業界にも広く適用されています。

その他にも自然の力を利用したポンプも存在しています。具体的な例として、農場で水を汲み上げるような装置を使用する場合にも使われており、このようなポンプは、連続運転が必要なため、水位を検知するセンサーと共に使用されています。風車もそのひとつです。風車は、風の力で地中から水を汲み上げるために油圧ポンプを使用しています。

油圧ポンプの選び方

流体を利用した動力として、空圧式と油圧式があります。どちらもパスカルの原理を応用して小さな力を大きな力へ変換する構造をしています。しかし、特長はいくらか異なります。

空圧式は、安価で構造が単純です。周囲の温度などへの環境依存性が高く応答性も低くなります。ただし、作動オイルの種類を適切に選択すれば全天候下で使用することが可能になります。空圧式では実現できないような大きな力を必要とする場合は、油圧式のユニットとそれに付帯する適切な油圧ポンプを選定することが望ましいです。

油圧ポンプの原理

全てのポンプには容積式と非容積式のタイプがあります。ほとんどの油圧システムでは容積式ポンプが使用されているため、ここでは容積式ポンプの原理について説明します。

容積式ポンプは、作動油が充填された部分と気体だけの容積室と呼ばれる部分に分けられています。容積式ポンプは、吸気弁で流体をポンプ室に吸い込み、排気弁で流体を吐き出します。

まず、外部から駆動力を与えることでピストン運動を行うと、容積室側に負圧が生じて吸い込み圧力が発生します。これを膨張工程と呼びます。

次に、吸い込み工程に入ります。この圧力がある一定値を超えると作動油の部屋と繋がる油タンクとの大気圧差により作動油を吸気弁から吸い込みます。このときに排気弁は、閉じています。

そして、容積室側が陽圧化することで気圧差が逆転します。この工程を圧縮工程と呼びます。

最後に、吐出工程に入ります。作動油が外に押し出される力が働くことで排気弁から油が吐出されます。油が押し出されると吸気弁が閉じることで排気弁が解放されます。

この4工程を1サイクルとして無限に繰り返すことで、作動オイルを一定方向へ送り出し続けることが出来ます。

なお、作動オイルタンクの吸い込み側と吐き出し側は、それぞれ1方向への逆止弁がついているため、どちらか一方に圧力が発生すると片側がその圧力に引かれて閉じてしまうので逆流することはありません。

油圧ポンプの構造

油圧ポンプを含めた油圧システムは、少ない動力で大きな力が得られるため、産業の場で多く使用されています。まず、システムは、原動機にて油圧ポンプを経由して作動油を昇圧することで動力にします。次に、油圧バルブで圧力のコントロールなどを行うことで油圧アクチュエーターに作動油が送り込まれます。その後、回転運動などの機械エネルギーに変換されます。その中でも油圧ポンプは、作動油を昇圧することで必要な機械的動力を確保するためには重要な機器です。

主に油圧ポンプは「ギアタイプ」「ベーンタイプ」「プランジャタイプ」などに分かれています。

ギアポンプは、ケーシング内で歯車が噛み合うことで、作動油を昇圧するものです。

ベーンポンプは、ケーシング内の羽にローターが組み込まれており、羽を回転させて作動油を昇圧させます。この羽のことをベーンと呼びます。

プランジャーポンプは、往復運動するピストンやプランジャーが作動油に圧力を加え、昇圧するものです。

いずれのポンプも作動油を昇圧することに変わりはありませんが、作動油の漏れが発生すると、環境を汚染するため、処理に時間がかかります。シール性は、技術の進歩で高水準です。しかし、漏れがゼロになることはないため、設置型のポンプユニットでは防油堤の内側に設置するなどの工夫が必要です。また、運搬式のポンプユニットは、一式を移動することになるので漏れを防止するためにシール性を高めておく必要があります。万が一、作動油が外に漏れても受ける油槽などを設けておくことで油の流出を防ぐことが出来ます。

油圧ポンプの動力

油圧ポンプには「電動型」「手動型」があります。主に産業や実験設備で使用されるのは、電動型でポンプの作動源が電気です。一方、手動型は、人の加える力を動力として使用します。 主に手動型は、動力を生み出す経路にピストンが使われています。人の力によってハンドルを操作することで、作動油をピストンに送り込みます。ピストンは、作動油の圧力を受けて、外界に対して動力を与えます。手動型を採用するメリットは、機構が単純なことから保守性に優れている点が挙げられます。また、動力を伝える際にゆっくりと力が伝わることで細かな調整が可能になります。このことは、結果としてリスクアセスメントに繋がります。

よく利用されるのが、車のタイヤ交換などで使用する油圧ジャッキです。これは、手動式の油圧ポンプで作動油を送ることで動力を伝えて車を持ち上げる力になります。

電動型は、より大きな仕事を与えたいときに使用するポンプなので、多くは産業用で使用されています。電動型は、手動型に比べて構造が複雑なため、求められる性能に合わせて種類が豊富に準備されています。しかし、構造が単純なポンプも製造されており、安価で手軽に導入することが可能になっています。また、陸上や水上において大きな動力を必要とする場合でも使用することが出来ます。

このように、電動タイプと手動タイプでは動力の源が違うだけでなく、使用する用途の規模感も異なります。

参考文献
http://www.kyoritsu-ss.co.jp/recruit/oilpressure/

クランプメータ

クランプメータとは

クランプメータ

クランプメータとは、回路に流れる電流を測定する器具です。

一般の電流計は電流回路の内部に組み込む必要があり、回路を一度停止させる必要があります。一方で、クランプメータは電線部分を外からクランプするだけで電流を測定可能です。回路を遮断する必要がなく、素早く安全に作業を行えます。

クランプメータの使用用途

簡易的に回路に流れている電流値を知りたい場面で使用します。

下記は使用の一例です。

  • 電気工事作業における通電の事前および事後確認
  • 電気回路が故障時の原因調査のための通電部確認
  • 電動機器の稼働状況確認

また、クランプメータの特徴は無停電で利用可能なことです。連続稼働する設備に対しても適用できます。

クランプメータの原理

クランプメータは電流を実測せず、電流から発生する磁場を測定することで電流換算値として出力します。

クランプメータのクランプ部分には磁気コアがあり、その部分で磁場を検知し電流値に換算します。交流と直流で磁場の極性が異なるため、原理は異なるものです。

多種ある測定方式の中でも直流・交流どちらも検知できる方式として、ホール素子式があります。この方式では磁気コア内にホール素子を組み込み、被測定回路の磁界を電圧として計測し、内蔵されたアンプを介して電流値に換算します。

クランプメータの選び方

電流回路には直流回路と交流回路があります。計測したい回路の電流成分と測定したい精度によって適切なクランプメータを選定することが重要です。

大きな精度を必要としない場合、直流・交流どちらも対応できるホール素子式が無難です。ただし、回路の設置位置によってはうまくクランプできないことも想定されます。交流の場合は、コアがないロゴスキー式のクランプメータを選定することで、クランプ部を曲げながらの計測が可能です。

クランプメータのその他情報

1. 漏れ電流の測定方法

漏れ電流があると感電の恐れがあるため、電気設備の保守において非常に重要な点検項目です。その測定に漏れ電流クランプメータを用います。
漏れ電流は非常に微小な電流で、漏れ電流クランプメーターには敏感な変流器が搭載されます。変流器には透磁率が高く微小電流の検出に適したパーマロイが使われます。

漏れ電流の測定は、「零相電流の測定」と「アース線電流の測定」の2通りです。

零相電流の測定
零相電流の測定では全相一括でクランプします。クランプメータは電流による磁界を検出して電流値に変換しますが、負荷に対して流れる電流による磁界は互いに打ち消し合います。ただし、漏れ電流がある場合は磁界が不平衡となり、クランプメータに電流値が表示されます。この電流値を読むことで、漏れ電流の大きさを測定可能です。

アース線電流の測定
電気機器は筐体をアース線にて接地します。漏電の際はアース線を通して大地に漏れ電流が流れるので、アース線を直接クランプして電流値を測定することが可能です。

2. クランプメータの精度

交流電流の測定方法として、「平均値型」と「実効値型」の2通りがあります。

平均値型
平均値型とは交流の半周期の電流値を平均し、その平均値に波形率をかけて測定値とする方法です。

実効値型
実効値型とは電流値を周期的にサンプリングして測定し、その測定値にRMS演算を実行して実効値を求める方法です。

電流計測では、測定対象の電流が正弦波であれば測定方法に関わらず同じ数値を示します。しかしながら、測定対象の電流が歪波である場合、高調波成分によって平均値型クランプメータが正しい実効値を得られません。

一方、実効値指示型のクランプメータはサンプリング周波数が十分高ければ、測定精度を低下させることなく測定可能です。以上のように、測定対象の電流が歪波を含む場合は実効値型クランプメータを使用します。ただし、安価なクランプメータは平均値型の可動コイル型です。

参考文献
https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=44
https://www.marutsu.co.jp/contents/shop/marutsu/mame/184.html
https://www.kew-ltd.co.jp/support/knowledge/technical/clampmeter
https://kurashi-no.jp/I0015676

ブラシモータ

ブラシモーターとはブラシモーター

ブラシモーターとは、回転軸に電流を流すためにブラシと呼ばれる摺動接点をしたモータです。

巻線型の交流モータなどもブラシを用いますが、ブラシモーターと言えば一般的には直流ブラシモータを指します。

構造が簡単で安価、さらにトルク制御が容易なのが特徴です。ただし、ブラシは回転によって摩耗するため定期的なメンテナンスが必要です。駆動時の騒音が発生するという欠点があります。

ブラシモーターの使用用途

ブラシモーターは民生品から産業用途まで幅広く使用されています。代表例としては下記の通りです。

  • オフィス用小型扇風機やPC冷却ファン
  • ボイラー排気ファンなどの産業用機器
  • 通勤電車の走行モータ
  • エレベータの昇降モータ

直流モータの中では安価なことから、直流オフィス機器の冷却ファンなどに用いられます。また、トルク・回転速度制御が容易なため、電車やエレベータなどの移動機器に古くから利用されてきました。

近年、移動機器のトルク制御はブラシが不要で保守が容易なインバータ制御が主流となってきました。また、ブラシレスモータなども普及しつつあります。

ブラシモーターの原理

ブラシモーターの構成は、回転子、固定子、整流子です。固定子にはコイルを用いる場合と永久磁石を用いる場合があります。

固定子からは常時磁界を発生させ、回転子に巻かれたコイルによって流れる電流と固定子磁界で電磁力が発生してモーターを回転させます。
ブラシは整流子に接し、コイル電流の向きを一方向となるようにすることが大切です。

電流の大きさを変えることでトルクと速度を制御可能なのが特徴です。

ブラシモーターのその他情報

1. ブラシモーターの寿命

ブラシモーターのブラシ寿命は一般的に数百時間~数千時間とされます。一方、ブラシモーター本体の寿命は軸受の寿命で決定され、一般的に数万時間~数十万時間です。

ブラシモーターは固定子と回転子との間で、反発する力と引き合う力が切り替わることによって回転します。回転子が回転するには磁力の極性を回転角度によって切り替える必要があり、整流子がその役割を果たします。

駆動は単に直流電圧を印加すればよく、駆動が簡単で使いやすい反面、ブラシは機械接点のため回転により摩耗するためブラシを取替できない場合はブラシ寿命がモータの寿命になります。

2. ブラシレスモータとの違い

ブラシモーターは直流電源で簡単に駆動できるため、DCモータとも呼ばれます。一方のブラシレスモータは永久磁石同期モーターとも呼ばれます。ブラシモーターはブラシレスモータよりも駆動が簡単でコストも安価なため、幅広い用途に使用可能です。

ブラシモーターは多くの場で活用されていますが、ブラシの摩耗により寿命が短いところが欠点です。長期間使うためにはブラシ交換が必要となります。ブラシモーターの制御には、直流電圧の制御だけでなくPWMパルスで駆動する方法もあります。

一方のブラシレスモータは、整流子とブラシを排除して回転子に永久磁石を使用しています。ブラシが無いため寿命が長く、軸受寿命がブラシレスモータの寿命です。

ブラシレスモータの駆動は「矩形波駆動(正方波電圧で駆動する方法)」と「正弦波駆動(サイン波電圧で駆動すること」に分類されます。矩形波駆動は駆動回路が比較的簡単な半面、回転時に騒音や振動などが発生します。一方の正弦波駆動では駆動回路は複雑になりますが、回転時の騒音や振動が低いのが特徴です。

参考文献
https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/002/
https://interface.cqpub.co.jp/wp-content/uploads/interface/2010/01/if01_045.pdf
https://www.renesas.com/jp/ja/application/home-building/motor-control-solutions/motor-types

タブ端子

タブ端子とは

タブ端子とは、電線及びハーネス同士を接続するために使用される端子の一種です。

ファストン端子とも呼ばれている端子です。コネクタのオス側がタブ端子であるのに対し、雌側はレセプタクルと呼ばれています。タブ端子にレセプタクルを嵌めることで、接続を行います。

電線やハーネスの接続端子には多くの規格があると混乱の元となってしまうため、メーカーの間で端子規格を統一することで設計しやすくしています。タブ端子は端子規格のうちの1つです。

タブ端子の使用用途

タブ端子の使用用途は、タブをレセプタクルに挿し込むことによるケーブルの接続です。レセプタクルはタブと同じようにケーブル端に圧着されている場合もありますが、基板などにに実装されている場合もあります。

タブ端子はケーブル同士を完全に固定して接続せず抜き差しが可能になっているため、ケーブルを差し替える、交換するなどのメンテナンスが必要な箇所などに重宝されます。また、組立時にケーブルの引き回しが不便な場合は、中継のための安価なコネクタとして使用されることもあります。

タブ端子の原理

タブ端子は、金属の平板を折り曲げたタブを同じく平板を折り曲げて作ったレセクタプルの溝に挿し込むことでケーブル同士を接続可能です。レセクタプルの溝幅をタブの厚さよりやや小さくすることで、金属の弾性力で固定します。標準的なものでも接続は強固ですが、より強固に接続するために抜け防止のツメがあるタイプもあります。

タブ端子はカシメによりケーブルを圧着しています。レセプタクルとの接続は強固なため、抜き差しの際は慎重に作業しないと端子からケーブルが抜けるおそれがあるため注意が必要です。

タブ端子の種類

タブ端子はIEC国際規格に準拠した日本産業規格のJISで規格化されており、平型接続端子のオス側のことを言います。そのタブ端子の種類は、メス側の接続子と組み合わせで、端子勘合部の幅によってシリーズがあり、通称110、187、250ファストンなどと呼ばれています。

この110ファストンが、タブ端子110のことです。更に205シリーズ等と言った独自のシリーズを加えて標準品として準備しているメーカもあります。なお、基板実装用ファストン端子としては、袋詰めの梱包品やラジアルリードテーピング品やSMT用エンボステーピング品、または連鎖リール状が一般的に標準品として準備されています。

いずれも、JISの平型端子の規格に準拠していますが、実際のファストン端子メーカーの数は、国内外含めると数十社です。簡単に製造できるので、タブ端子の選定と信頼性が電気配線の安全性を確保するために、重要な要素です。

タブ端子のその他情報

1. タブ端子の使用上の注意

タブ端子はそのままでは金属が剥き出しになってしまうため、絶縁体で端子を覆って感電や漏電からの保護が必要です。レセクタプル側にのみカバーをかけ、ケーブルを接続したらタブ側はカバー内に隠れるような形状にします。

タブ端子の形成は、平板の折り曲げと圧着を行うため専用工具が必要であり、電線の太さやコネクタの形状、大きさにより使う端子を選定することが大切です。多くはJISなどで規格化されているので、規格表を見ながら選定することになります。

2. タブ端子の圧着工具

平型端子の正しい付け方 (かしめ方) は、端子のツメを曲げて配線コードに付けるだけならラジオペンチなどでもできそうですが、電工ペンチで圧着します。その際に、ワイヤバレルが重要なキーワードとなります。

ワイヤバレルとは、圧着端子形状において、電線の絶縁被覆を除去した芯線を圧着する部分の名称です。結局は、端子台のこのワイヤバレルの部分が、いかに電線の芯の部分をしっかり確実に圧着しているかで、端子台の接続に関する信頼性が決まります。

ここをしっかり圧着していないと、引張強度が弱く抜けてしまいます。逆に、圧着強度が不適格で、強すぎたりすると、芯線が切れて断線が生じます。メーカー推奨の専用圧着工具を使用して、しっかり確実に圧着することが重要です。

参考文献
https://www.kyoshin-k.co.jp/products/daien.html
https://www.diylabo.jp/basic/basic-93.html

シール材

シール材とは

シール材

シール材とは、2つ以上の物体を密着させるために使用される材料です。

配管などに使用され、液体や気体といった流体の漏れを防ぐのが目的です。部品によるシール材はガスケットやパッキン、Oリングと呼ばれ、薬品などの硬化によるシール材はシーリングやコーキングなどと呼ばれます。

水道やガスなど配管接合部のねじに巻くシールテープのようなシール材もあります。なお、駆動箇所に使用するシール材はパッキン、固定箇所に使用するシール材はガスケットです。

シール材の使用用途

シール材はあらゆる産業において使用される部材です。以下はシール材の使用用途一例です。

1. 機械・自動車業界

機械や自動車の内部には、潤滑用油や冷却水などが内封されている場合があります。これらの液体が漏れ出さないようにするため、シール材が使用されます。また、振動や衝撃から部品を保護するためのクッション材としても有用です。

冷蔵庫やエアコンなどの家電製品にも気密向上を目的として、シール材が使用されます。樹脂製タッパーの蓋などのパッキンもシール材の1種です。

2. 建設業界

建物の隙間や屋根の隙間を塞がずに使用すると、雨漏れなどの原因となります。したがって、シール材を建物防水や断熱材として使用します。また、窓枠やドアフレームなどの隙間を埋めるためにも使用されます。

3. 航空宇宙産業

宇宙の高温や低温、高圧や低圧など、極端な条件下に耐えるシール材が必要です。具体的には、高真空でも安定したシリコンシール材や高温に強いフッ素ゴム系シール材などが使用されます。

シール材の原理

シール材の接着方法として、圧着、挿入、粘着、膨張、変形などの方法があります。材料や形状によってさまざまな方法で密封します。

ただし、その基本的な原理は隙間を埋めることで物質の漏れを防止することです。物体同士の隙間を埋めることで、密封します。ガスケットやOリングなどは、変形によるシール材です。一方、シリコンやポリウレタンなどのボンドシーリングは挿入・粘着によるシール材です。

1. 圧着

圧着は、シール材を物体の間に挟むことで物体同士を強く密着させる方法です。

2. 挿入

挿入は、シール材を物体の隙間に挿入することで隙間を埋める方法です。

3. 粘着

粘着は、シール材に粘着性を持たせることで密着させる方法です。

4. 膨張

膨張は、シール材を水や液体に浸すことで膨張させて密着させる方法です。

5. 変形

変形は、シール材を加工して物体の形状に合わせることで密着させる方法です。

シール材の種類

シール材は、材質や形状によってさまざまな種類に分類されます。以下はシール材の種類一例です。

1. ゴムシール

ゴム材料使用したシール材です。耐久性や柔軟性に優れ、高い密着性を持つ点がメリットです。一般的には、エチレンプロピレンゴム、ニトリルゴム、シリコーンゴムなどが使用されます。

2. シリコーンシール

シリコンを材料としたシール材です。耐熱性に優れたおり、高温環境での使用に適しています。また、耐薬品性にも優れているため、医療機器や食品関連製品などでも使用されます。

3. フッ素シール

フッ素樹脂を材料としたシール材です。耐薬品性や耐熱性に優れ、高真空環境でも使用可能です。半導体製造装置や液晶パネル製造装置などで使用されます。

4. メタルシール

金属製のシール材です。高温・高圧環境で使用することが可能で、重工業において広く使用されています。自動車のエンジンやガスタービンエンジン、航空機の部品などに有用です。

シール材の選び方

シール材は使用目的、環境、要求性能などを基に選定します。

1. 使用目的

使用目的が高温や高圧環境の場合は、メタルなどの耐熱性や耐圧性に優れたシール材を選定します。また、薬品や溶剤に耐性が必要な場合には、フッ素樹脂などの耐薬品性の高いシール材を選定します。

2. 使用環境

シール材を使用する環境も考慮します。屋外や水中などの条件下で使用する場合、耐候性や防水性に優れたシール材が必要です。

3. 要求性能

要求されるシール性能も検討要素の1つです。家庭用窓の気密などにはシリコンボンドなどで問題ありませんが、半導体製造などの高真空環境では金属ガスケットなどを使用する必要があります。

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/seal/
https://rivi-manufacturing.com/

ボールネジ

ボールネジとは

ボールネジ

ボールネジ(英語:ball screw)は、回転運動を直線運動に変換して部材の位置を移動させるための送りねじの一形式です。ねじ軸とナットがボールを介して作動します。ねじ軸とナットが相対回転すると、ボールが転動しながら無限循環します。ねじとナットとの間の摺動抵抗が、従来の台形ねじに比べて格段に小さいのが特徴です。

ねじやボールの精度等級により精密な運動ができるため、高い位置決め精度が得られます。自動車のステアリング装置や精密工作機械などに使われます。

ボールネジの使用用途

ボールネジはモータ等の回転運動を直線運動に変換する機械要素です。主な用途として製品・部品の搬送、半導体製造装置、産業用ロボット、工作機械などの搬送・位置決めがあります。ボールネジが1回転することによる移動量(リード)を精密に再現することができるため、ステッピングモーターと組合わせることで高い位置決め精度を実現することができます。

JISでは、ボールネジの精度等級を6種類に分けています。C0、C1、C3、C5の4等級を精密ボールねじ、C7、C10の2等級を一般ボールねじと規定しています。精度に応じて、物品の搬送と位置決めに使用するボールネジを選定します。

NC制御の工作機械では、送り機構を構成し精密位置決め精度を得るためにボールネジが使用されます。また、食品機械、医療機器、ロボット、及び射出成形機、印刷機器、アミューズメント機器などのほか、自動車、列車や航空機、半導体製造装置、検査装置にもボールネジが使われます。

ボールネジの原理

ボールネジの原理

図1. ボールネジの原理

ボールネジは、ねじ軸、ナット、ボールなどから構成される機械要素部品であり、回転運動を直線運動に、または直線運動を回転運動に変換します。ねじ軸とナットの間にボールを入れて軽く転動させることができるトライボロジー技術を用いた部品です。ねじ面の滑り接触運動を転がり接触運動に変えます。ボールは無限循環する必要があるため、循環部品が必要です。

循環方式には、リターンチューブ式、エンドデフレクタ式、エンドキャップ式、及びこま式、リターンプレート式などがあり、大きさ・精度により使用用途が分かれています。ボールネジの使用に当たっては、ナットをガイドするガイドレールが必要です。ガイドレールは、ナットにかかる軸方向荷重以外の垂直荷重やモーメント荷重を受け持ちます。

ねじ軸は、ナット1回転の移動量であるリードの長さとねじ条数とを組み合わせて、高い精度で移動ができるようにしています。ボールに与圧をかけて、ナットのバックラッシュを無くし、ねじ軸やナットの回転にむらがなく高い位置決め精度を得ることができます。

ボールネジのその他情報

1. ボールネジの特徴

ボールネジは、機械の回転運動を直進運動に変換できる特徴があります。また、逆に直進運動を回転運動に変換することも可能です。ねじ軸を回転駆動するトルクを通常のねじと比べると、1/3以下にすることができます。したがって、ボールネジを駆動するモータの小形・軽量化ができます。

起動摩擦トルクと運動摩擦トルクの差が小さく、またスティック・スリップ現象が回避できるので、高精度に機械を制御できます。ナットを2個使うか、または予め大きな直径のボールを使うかによってナットに予圧をかけることができます。バックラッシュをなくし、剛性が高められるので、制御性が良くなります。

ボールネジの摩耗寿命と転がり疲れ寿命は、計算によって予測できるので、運転の信頼性を高められます。ねじとナットの間の接触面における摩擦係数は、すべりねじで0.1~0.2程度であるのに対して、ボールネジでは0.002~0.004程度です。したがって、伝達効率が高く90%以上あります。

寸法や精度は国際的に標準化され、専用工場で量産されているため使い易く、コストも有利です。一方で、ボールネジは衝撃に弱い短所があります。摺動部が点接触であるために、衝撃が与えられると打痕などが残りやすいと言えます。また、摺動部に異物が入ると不具合や故障の原因になることがあります。工作機械のスライド軸として使用する場合は、切粉の混入が危惧されるため、カバー等をつける必要があります。

2. ボールネジの製造法

ボールネジは作り方の違いによって、「転造」と「研削」に分けられます。

転造ボールネジ
丸棒材を回転させながら転造ダイスと呼ばれる工具に押し当てて、塑性変形させることでねじ溝を成形する方法です。研削と比較すると精度等級は低い傾向にあります。

研削ボールネジ
ねじ研削盤と呼ばれる工作機械を用いて、ねじ溝を研削によって成形する方法です。熱処理後に円筒研削を行うため、転造のものよりも面がなめらかになっているのが特徴です。精密機器用の小型工作機械のスライド軸など、高精度な機械制御を要求される場合に使用されます。

参考文献
https://www.kss-superdrive.co.jp/jp/pdf/qa/Q-BS-01.pdf
https://www.kuroda-precision.co.jp/technical-information/bs/bs019.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td03/a0011.html
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/c1382.html