粉体混合機

粉体混合機とは

粉体混合機

粉体混合機とは、食品や医薬品など多くの産業で欠かせない、粉体を均一に混合するための装置のことです。

形状や原理によって種類が異なります。それぞれの特性を理解し、扱う粉体の種類や比重、重量などを考慮して最適な混合機を選択することが重要です。例えば、粉体の粒度が大きい場合や粘着性が高い場合は、強力な撹拌が可能な混合機が望ましいです。

また、使用目的に応じて、連続式や一括式の混合機の選定が必要です。連続式は生産効率が高く、大量の粉体を扱えますが、一括式は混合精度が高く、小ロットの粉体混合に適しています。

粉体混合機の選択は、製品の品質や効率に大きな影響を与えるため、慎重な検討が必要です。適切な混合機を選択することで、製品の品質向上やコスト削減に繋がります。粉体混合機の活用により、さまざまな産業において効率的な粉体処理が実現されています。

粉体混合機の使用用途

粉体混合機は、食品工場や薬品工場をはじめとする多くの場所で使用されています。

1. 食品分野

粉体混合機は粉末状の食品の製造において、重要な役割を果たしています。粉末かつおぶしやふりかけ、あられ、ダシの素などの製品は、各成分が均一に混ざっていることが品質に直結します。

粉体混合機は、これらの製品の製造過程で、成分の均一性を確保するために有用です。

2. 医薬品分野

投与物の主剤の均一性が極めて重要です。ヒトや動物の体内に投与されるため、安全性や効果が求められます。粉体混合機は、医薬品製造においてこの均一性を実現するために使用され、製品の品質向上に寄与しています。

3. 化学分野

樹脂粉末、火薬、ウラン粉末、農薬、粉末塗料などの製造過程で、粉体混合機が活用されています。これらの製品でも、成分の均一性が品質や安全性に関わるため、粉体混合機の使用が不可欠です。

粉体混合機の原理

粉体混合機は、粉体を効率よく均一に混合するための装置で、その原理は大きく2つに分類されます。それぞれの原理に基づいて機能し、異なる特性や利点を持っています。

適切な混合機を選択することで、製品の品質向上やコスト削減に繋がり、多様な産業において効率的な粉体処理が実現されています。

1. 容器回転型

容器を回転させて、中の粉体を混合します。容器内のスペースを有効に活用できるため、粉全体が均一に混ざります。

また、羽根を使わないので、粉体をできる限り壊さずに混合することが可能です。容器回転型の代表的なものには、W型混合機やV字型混合機、ドラム型混合機などがあります。

2. 撹拌型

容器内に羽根を設置し、羽根を回転させて粉体を混合します。撹拌型の混合機は、広い設置スペースが不要で安全性が高いです。撹拌型の代表的なものとして、リボン混合機や円錐スクリュー型混合機などが挙げられます。

粉体混合機のその他情報

粉体混合機併用する機械

粉体混合機は、粉体の均一な混合を実現するために使用される機械ですが、その効率と効果をさらに向上させるために、粉砕機、シーブ機 (ふるい機) 、充填機などの機械と併用されることがあります。

1. 粉砕機
粉体混合機の前工程として、粉砕機が使用されることがあります。粉砕機は、原料を所定の粒度まで粉砕する機械で、混合に適した粒度の粉体を得ることが可能です。混合機での混合効果が向上し、製品の品質が一定に保たれるようになります。

2. シーブ機 (ふるい機)
粉体混合機の後工程として、シーブ機 (ふるい機) が使用されることがあります。シーブ機は、粉体を振動させることで、粒度の異なる粉体を選別する機械です。

混合後の粉体をシーブ機で選別することで、均一な粒度の製品が得られ、製品品質の向上が期待できます。

3. 充填機
製品化の最終工程として、充填機が使用されます。充填機は、混合された粉体を容器や袋に充填する機械で、一定量の製品を正確に充填することが可能です。充填機を使用することで、製品の量を一定に保ち、品質管理が容易になります。

参考文献
https://www.nitto-kinzoku.jp/archives/technic/powder_mix/
http://www.aichidenki.jp/rm/applications/index.html

研磨機

研磨機とは

研磨機

研磨機とは、主に表面の仕上げ加工などの研磨加工で使用される加工機のことです。

さまざまな研磨方法が存在し、適切な砥石や研磨剤などが必要となります。研磨方法によっては、高速回転する砥石に加工物を近づけて作業することもあるため、作業時の火花によるやけどや、加工機への巻き込みなどに注意しながらの作業が必要です。

研磨機の使用用途

主に部品表面の仕上げに使用することが多いですが、部品のバリ取りを目的とした粗い研磨加工を行うこともあり、各用途に応じて最適な加工方法および加工機が存在します。また、表面の仕上げだけではなく、円筒状の部品の内側を仕上げる際などにも使用されます。研磨により面が滑らかになることで、摺動性の向上効果を得られるからです。

シリンダやレールスライダーなど多くの摺動動作を行う部品にも研磨加工が施されています。最近では、卓上サイズの研磨機も多く存在するため、工場以外でも、自宅でのシルバーアクセサリーの研磨やプラモデルのバリ取りなどに使用される機会が増えてきています。

研磨機の原理

研磨に使用する砥石や研磨剤などに含まれる砥粒が小さな刃物のような効果を発揮することで、少しずつ加工物を削っていきます。最も代表的なものは、高速回転している砥石に加工物を当てて磨く「砥石研磨」です。

非常にシンプルな研磨方式ですが、加工物を押し当てる力や角度の小さな差によっても仕上がりが異なるため、その作業には熟練を要します。また、加工を進めるにつれて、砥石自体も損耗して削れていくため、砥石の損耗量を見ながら適切なタイミングで新しい砥石に交換しながら運用する必要があります。原理的には、紙やすりなどで行うヤスリ作業も同様ですが、より効率的な研磨が可能です。

同様の手順で研磨を行う「バフ研磨」が存在しますが、こちらは砥石の代わりに、綿やフェルトなどの軟らかい素材でできた「バフ」を使用して研磨を行います。砥石研磨よりも表面を滑らかにする効果が高く、鏡面仕上げなどに使用されます。一方で、研磨に時間がかかるため、加工物の厚みを減らすような用途を伴う場合には向いていません。

研磨加工機では高速回転する物体に対して加工物を近づけて作業することから、作業時には怪我をしないように注意が必要です。特に、手袋をしての研磨を行う際には、ほつれた糸が高速回転部に巻き込まれてしまう可能性があります。小型の研磨機でも、巻き込まれた際の力は非常に大きいため、大怪我に繋がる可能性があり危険です。また、加工物の素材によっては、砥石との接触時に火花が発生することもあるため、やけどへの注意も必要です。

研磨機のその他情報

1. 電解研磨機によるステンレス表面処理

ステンレスは表面に大気中の酸素と結合して形成した数ナノメートル厚さの不働態被膜により、防錆・防食性と耐熱性を持つ金属材料です。しかし、機械加工や表面仕上げ、搬送や保管などにより適正な表面状態が保てていないと、不働態被膜が均一に形成されず優れた特性が出ずに不良品などの原因になります。

電解研磨はステンレスの表面の不純物や粗さを綺麗に除去し、高い特性を有する不働態被膜を形成することを目的とした処理です。ステンレスの電解研磨機では、電解研磨溶液中で被研磨物であるステンレスを陽極として直流電流を流すことで、表面をミクロン単位で電気化学的に溶解し綺麗にします。

粗い表面の凸部が優先的に溶解されるので表面の粗さが小さくなり、研磨や機械加工によって生じたバリの覆いかぶさりや、その下の空隙など、通常の研磨では除去しにくい欠陥も滑らかに仕上げることが可能です。また、処理方法がシンプルで、電解液槽のサイズ次第で大量の研磨も可能なため、生産性にも優れています。

不働態被膜は防食性や耐熱性能に優れていますが、厚さは数ナノメートルと薄く弱いため、ステンレス表面が滑らかであるほど均一で密着性の高い被膜になります。電解研磨は、ステンレスの特性を最大限に引き出すための大切な工程です。

2. 電解複合研磨機

電解研磨よりさらに平滑な表面が必要な場合は、研磨材による物理的な研磨を複合した電解複合研磨が有効です。回転研磨ディスクを陰極とし、被研磨物の表面に電解液と電流を流しながら移動研磨します。

凸部の不働態被膜が機械的に除去され、そこから金属が溶出することで、電解研磨と機械研磨をそれぞれ単独で行った場合よりも滑らかに研磨されます。ナノメートルオーダーの粗さにできるのが特徴です。

平面だけでなくパイプのような曲面を研磨できるため、半導体製造関連部品や配管、バルブ類、医薬機器などの精密さと耐久性が要求されるものに広く利用されています。

参考文献
https://www.agency-assist.co.jp/column/717/
https://www.kinzokuh.co.jp/technology/technology_ep/
https://www.nakano-acl.co.jp/fukugo/

プリプレグ

プリプレグとは

プリプレグ

プリプレグとは、繊維をシート状にしたものに樹脂を含浸させて作る複合材料で、繊維強化プラスチックの成形原料の1種です。

含浸させる樹脂はエポキシなど、加熱により硬化する熱硬化性樹脂や、加熱により軟化し、冷却すると固まる熱可塑性樹脂が使用されます。繊維は、炭素繊維やガラス繊維がよく用いられます。

繊維や含浸樹脂の組み合わせにより、目的に合わせた材料を作ることが可能です。

プリプレグの使用用途

プリプレグに使用される繊維としては、炭素繊維やガラス繊維の他にもアラミド繊維なども用いられます。それぞれの用途は以下のとおりです。

1. 炭素繊維プリプレグ

炭素繊維を使ったプリプレグはカーボンプリプレグと呼ばれ、炭素繊維強化プラスチック (CFRP) 用の成形材料として使用されます。CFRPの特徴は軽量性、高強度、高剛性などが挙げられます。

また、導電性の炭素繊維を用いているため電子伝導性があります。主に航空機分野で用いられることが多いですが、他にも自動車やゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレームなど、用途は幅広いです。

2. ガラス繊維プリプレグ

ガラス繊維プリプレグは、ガラス繊維強化プラスチック (GFRP) の成形材料として使用されます。GFRPの特徴は、金属材料よりも大きな比強度を有し、軽く、絶縁性のガラス繊維を用いているため電子伝導性はありません。

この特徴を生かして、アンテナカバー、プリント基板などで使用されています。

3. アラミド繊維強化プラスチック

アラミド繊維は非常に軽くて切れにくく、耐衝撃性や強度が高いです。一方で、炭素繊維やガラス繊維に比べると折れにくいため、自由な形状の成形が難しく、後加工が困難という欠点があります。耐衝撃性や強度が高いため、航空機、宇宙用各種部品、圧力容器などに使用されています。

プリプレグの原理

プリプレグはCFRPやGFRPなどの成形材料として使用されやすい形状、物性をもっています。予め決まった量比で樹脂と繊維が複合化してシートになっているため、他のCFRP製造方法と比較して、性能のバラつきの小さい成形品を作ることが可能です。

プリプレグは繊維を1方向に並べた状態で樹脂を含浸させています。これはUD材と呼ばれ、繊維方向の強度は強いですが、繊維の垂直方向については非常に弱いため、繊維強化プラスチック (FRP) に成形する際には、繊維の方向を変えながら積層していくことが大切です。

遷移の方向を変えることで、どの方向に対しても高強度のFRPが成形されます。織物に樹脂を含浸させたプリプレグもあり、これはファブリック材と呼ばれています。含浸する樹脂については使用用途やCFRPとGFRPの違いにより異なりますが、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂の他に、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂も使用される場合が多いです。

特に熱硬化性樹脂を用いたプリプレグは、FRPに成形加工されるまでは未硬化の状態であるため、表面はタックがあり、保管時に硬化が進んでしまわないように密封して冷凍保存する必要があります。

プリプレグのその他情報

プリプレグの製造方法

プリプレグは、含浸させる樹脂が熱硬化性か熱可塑性かによって製造方法が異なります。

1. 熱硬化性樹脂
熱硬化前の樹脂フィルムを成形し、これを1軸方向にならべた繊維または繊維の織物と合わせてヒートプレスします。フィルムの厚さにより繊維の含有率をコントロールでき、繊維含有率のムラも生じにくいという特徴があります。

2. 熱可塑性樹脂
樹脂自体の粘度が高いため、溶媒に樹脂を溶解させて含侵させ溶媒を乾燥する方法や、樹脂を細かく粉砕して繊維や織物に振り掛けてヒートプレスする方法があります。

参考文献
https://www.torayca.com/lineup/product/pro_003.html
https://www.kurimoto.co.jp/composite/cfrp/
https://tip-composite.com/products/gfrp/
https://www.cybernet.co.jp/ansys/case/analysis/333.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sosei/53/613/53_613_145/_pdf
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00434255?mftokyo2017web=0705

使い捨て防護服

使い捨て防護服とは

使い捨て防護服

使い捨て防護服 (英語: Disposable protective clothing) とは1回限りの使用用途を想定した防護服です。

通常の衣類の上から羽織って使用し、各種用途に応じて最適なものを使い分けます。従来の用途は自衛隊の訓練や演習、作戦実行、病院での感染症治療 (例.新型インフルエンザ、SARS) などです。しかし、最近はコロナ禍における医療分野での使用ニーズが高まっており、入手性が悪くなっています。

防護服の概要

図1. 防護服の概要

使い捨て防護服の使用用途

使い捨て防護服はあらゆる作業現場におけるさまざまな危険有害因子 (ハザード) から作業者を防護するために用いられます。

危険有害因子とは、酸アルカリ成分や化学薬品、および、放射性物質やウイルスなどです。更に、ナイフなどの鋭利な刃物による突き刺し、高速飛散物や高温、火炎、電気火花なども含まれます。

服の特性や危険有害因子の種類によってISO/JIS規格が詳細に規定されています。JIS規格 T8115の定義は、「酸、アルカリ、有機薬品、その他の気体及び液体並びに粒子状の化学物質を取り扱う作業に従事するときに着用し、化学物質の透過及び/又は浸透の防止を目的として使用する防護服」です。また、対象の危険物質や化学防護服の構造に応じて、種類が異なっており、それぞれに要求性能が規定されています。

使い捨て防護服の具体的な使用例には下記のようなものがあります。

  • 化学プラントの工事など、皮膚が酸、アルカリ、有機薬品、粉じん等の有害化学物質に暴露または接触する可能性がある現場
  • 寒冷地での作業時における凍結防止
  • アスベスト作業時
  • ダイオキシンやPCB処理
  • 新型コロナ感染症の治療の際の二次感染対策
  • 放射性物質の取り扱いや除染作業
  • チェーンソーなどの機械的な衝撃への対処が必要な現場

使い捨て防護服の種類

使い捨て防護服は、用途・使用素材に応じて様々な種類のものに区分されます。

1. 用途別分類

特殊な防護服の例

図2. 特殊な防護服の例

化学防護服
有毒ガスや薬品の浸透を防ぐ目的で作られている防護服です。身体に危害を加える液体 (酸、アルカリ、有機溶剤など) 、ガス、エアロゾル、粉じんなどが付着したり経皮吸収するのを防ぎます。JIS T8115では、対象の危険物質や化学防護服の構造に応じて、タイプが分かれており、そのタイプ毎に要求性能が規定されています。

バイオハザード対策用防護服
生物的危険物質 (ヒトに危害を及ぼす病原体及び生物由来物質) への暴露又は接触の危険から防護するための防護服です。

熱と炎に対する防護服
熱や炎から身体を防護するために使用する防護服です。例えば、高い輻射熱や高温溶融金属の飛散に晒される、製鉄業界の製錬所などが例として挙げられいます。 

機械的な衝撃に対処する防護服
刃物などの鋭利な物による切創や突き刺しを防ぐために使用する防護服です。具体的な例としては、チェーンソー使用現場では、下半身の大腿部や膝下を保護することが必要です。

放射性物質による汚染に対する防護服
放射性物質による汚染に対する防護を目的として使用する防護服です。

電気に対する防護服
電気による危険から身体を防護するために使用する服及び静電気帯電を防止するために使用する防護服です。

寒冷に対する防護服
外気温がマイナス温度まで下がる地域や特殊な場所で、寒冷から身体を防護するために使用する防護服です。

高視認性安全服
車両・建機などの移動体による接触・衝突事故を防止するため、着用者の存在について視覚的に認知度を高めるために使用する防護服です。

2. 素材別分類

様々な防護服素材

図3. 様々な防護服素材

不織布一層タイプ
スパンボンド・ポリプロピレンの素材を使用した製品です。スパンボンドの単層構造であるため、繊維間の空隙が多数あります。バリア性は多少劣るものの安価であり、コストを重視する場合に適当です。軽度の汚れには十分対応可能です。

SMS
SMSポリプロピレンを素材に用いた製品です。スパンボンド、メルトブロー、スパンボンドの3層構造となっています。強固な耐摩擦性と、布のような手触り感が特長です。比較的安価でであるものの、擦れや軽度の汚れに強く、粉じんや飛沫などに対して高いバリア効果があります。

FS
フィルムラミネートが使用されている製品です。ポリプロピレン、スパンボンド不織布などの表面に薄いフィルム素材を貼り付けた構造をしています。汚れ、粉じんに対するバリア性が高く、優れた防水性があるため、水場作業に適しています。

タイベック®
タイベックとは、デュポン社独自の特殊素材であり、0.5~10ミクロンの高密度ポリエチレンの連続極細繊維に熱と圧力を加えて結合させたものです。1ミクロン以下の微粒子に対しても優れたバリア性を発揮します。ポリマーコーティングを施した2層構造の防護服もあります。

使い捨て防護服の選び方

上記で紹介したように、防護服は、ハザードの種類により様々な種類の製品があります。作業管理者及び作業担当者は、これらのハザードや防護服に対する正しい知識を身につけ、ハザードに合致する防護服を選ばなければなりません。誤った使い方で使用すると、健康を損なう可能性が高まります。

また、知識が十分でない場合、汚染された防護服をそのまま作業場外へ持ち出してしまい、当事者以外の人員がハザードにばく露する二次災害の危険性も高いです。作業時は周囲環境に潜むハザードを調査し適切な防護服を選定した上で、正しい使用方法や着脱方法をしっかり教育する必要があります。

参考文献
https://www.askul.co.jp/f/special/product_column/protectiveclothing/
https://www.tyvek.co.jp/pap/use/

電源モジュール

電源モジュールとは

電源モジュール

電源モジュールとは、電子デバイスに必要な電力を適切に供給するためのキーとなる部品です。

元の電力供給をデバイスが必要とする特定の電圧や、電流に変換する役割を果たします。その結果、デバイスは安全で効率的な電力を受け取ることができます。電源モジュールは自社で設計するのではなく、専門の電源モジュールメーカーから部品としての購入が一般的です。

このアプローチにはいくつかのメリットがあります。第一に、時間とコストの節約が挙げられます。専門メーカーが提供する電源モジュールは、品質が保証されており、また既に一定の性能が確認されています。したがって、自社で電源回路を設計し、テストするよりも迅速かつ安価に電源ソリューションを実装可能です。

さらに、電源モジュールはサーバーやネットワーク機器、家電製品、産業機器など、幅広い電子機器に適用可能です。その形状や性能は、使用するデバイスやその用途により異なりますが、その主な目的は、電力を適切に調節し、デバイスの正常動作を保証します。

電源モジュールの使用用途

電源モジュールはその汎用性から、幅広い分野で利用されています。以下に具体的な使用事例をいくつか紹介します。

1. コンピューターシステム

パーソナルコンピュータやサーバーでは、電源モジュールが主要な役割を果たします。コンピュータは、マザーボード、CPU、メモリ、ストレージデバイスなど、様々な部品で構成されており、それぞれが特定の電圧と電流で動作します。電源モジュールはこれらの部品に対して適切な電力を供給し、システム全体の安定した動作を確保します。

2. ネットワーク機器

ルーターやスイッチなどのネットワーク機器も、電源モジュールの重要な使用例です。これらの機器はデータを高速に送受信するため、安定した電力供給が必須となります。

3. 産業機器

製造業では、CNCマシンやロボットなどの高度な機器が使用されます。これらの機器もまた、特定の電圧と電流で動作するため、電源モジュールが必要です。

4. 医療機器

医療機器には、人体に影響を与える可能性があるため、安全性や信頼性が高い電源モジュールが必要です。例えば、人工心臓や人工呼吸器などの生命維持装置には、停電時にもバックアップできる電源モジュールが使われています。

5. 家電製品

テレビ、洗濯機、冷蔵庫などの家電製品でも電源モジュールが使用されます。これらの製品は家庭の電源から電力を得ますが、電源モジュールはその電力を製品が必要とする形に変換します。

電源モジュールの原理

電源モジュールには、スイッチング電源とリニア電源の2方式があります。

1. スイッチング電源

スイッチング電源は、電源を高頻度でオンオフして電流を制御します。具体的には、まず交流電源を整流器で直流に変換します。次にこの直流は、MOS FETなどのスイッチング素子を使用して高周波のパルス波に変換されます。この高周波パルス波を高周波トランスに送り、所要の電圧に変換します。

高周波トランスは物理的に小さくできるため、電源自体の小型化を実現可能です。PWM制御では、パルス波の幅を調整して出力電圧を一定に保ちます。スイッチング素子のON/OFFで必要なだけ電圧を生成し、余分な電力を消費しません。これにより、スイッチング電源は高い効率を達成します。そのため、高電力アプリケーション、例えば、コンピュータの電源供給などでよく使用されます。

2. リニア電源

リニア電源は、電流を直接調節して出力電圧を制御します。これにより、出力は入力電圧の変動から分離され、非常に平滑なDC電源が提供されます。しかし、この方法は効率が低く、熱が発生する傾向があります。そのため、リニア電源は音響機器や精密測定機器など、ノイズが許容されない分野で使用されます。

電源モジュールのその他情報

ノイズについて

スイッチング電源の問題は、高速スイッチングによって発生するノイズです。高周波ノイズは周囲の電子機器に干渉を与える可能性があるため、ノイズ対策が重要視されます。ノイズ対策としては、フェライトコアの使用や各種のEMIフィルタを組み込みます。

このように、スイッチング電源は小型で高効率な電源モジュールの実現を可能にしましたが、発生するノイズには注意が必要です。電源設計は、両者のトレードオフを考慮しながら最適な設計を行います。

参考文献
https://www.tamuracorp.com/electronics/jp/pm/
https://ednjapan.com/edn/articles/1603/07/news004.html

帯電防止チューブ

帯電防止チューブとは

帯電防止チューブとは、帯電防止機能をそれ自体に付与したチューブです。

帯電防止機能のない通常のチューブにおける帯電対策としては、金属線や金属メッシュなど、導電性を持つ材料でチューブを覆う方法が取られてきました。この方法で帯電は防止できるものの、チューブを覆う作業が発生すること、適切に覆えていない部分があるとアースが取れてしまうことといった問題があります。また金属製の素材を用いるため、腐食しやすい環境には向きません。

帯電防止チューブではチューブ自体に導電性を持たせているため、上記の作業は必要なく、これらの課題が解消できます。

帯電防止チューブの使用用途

帯電防止チューブは帯電しにくいように設計されているため、静電気の蓄積や静電気の放電による火花の発生を防ぐことが可能です。そのためアセトンやシンナーなど、着火の危険性がある有機溶剤を扱う際に重宝されています。主な使用例としては、こうした溶剤およびそのガスを移送する必要がある、半導体の製造装置などです。

また静電気はノイズの原因になるため、電子機器に悪影響を及ぼします。これらの機器周辺での液体やガスの移送も、帯電防止チューブの代表的な活用事例です。 

帯電防止チューブの原理

帯電とは、物質内の電荷のバランスが崩れ、電荷が生じた状態のことを指します。物質どうしが接触や摩擦、または剥離する際などには、帯電が発生します。チューブの場合は流体の移送に用いられるため、チューブと流体との接触および摩擦が起こることによって、チューブ内の表面が帯電するのです。

金属をはじめとする導電性の物質は、帯電しても物質内で電子が自由に移動できるため、
電荷の均一化や拡散が起こりやすいのが特徴です。一方で絶縁性の物質は、導電性の物質と異なり電荷が拡散しにくいため、部分的に帯電が発生してしまうことがあります。

チューブによく使用される素材としては、PTFEやPFAなどのフッ素樹脂が代表的です。フッ素樹脂は薬品や熱に対して優れた耐性があり広く普及していますが、絶縁性が高い、すなわち帯電しやすいという性質を持っています。

流体との接触や摩擦でチューブが帯電すると、火花の発生だけでなく、場合によっては絶縁破壊とよばれる現象が起きてチューブ自体が破損する危険性もあります。チューブに導電性を持たせて帯電を防ぐことは、流体の移送を安全に行ううえで非常に重要です。 

参考文献
https://www.nichias.co.jp/research/technique/pdf/362/03.pdf
https://www.nichias.co.jp/products/product/fluorine/tube/tube03.html 

サイドカッター

サイドカッターとは

サイドカッターとは、工作機械に取り付けられて使用される切削加工器具の一種です。

外周面と両側面に切れ刃を保有しており、側フライスとも呼ばれます。刃の形状には、普通刃以外にも、荒刃や千鳥刃などがあります。サイドカッターと似ているものとしてメタルソーがありますが、外周面にのみ切れ刃を保有しており、刃の形状は普通刃や荒刃などがあります。

サイドカッターはフラット面やスロットなどの形状を加工する際に使用されます。また、縁取りや角取りなどの加工にも適した切削加工機です。金属加工だけでなく木材やプラスチックなどの切削にも利用されます。また、自動車や航空機、家電製品など様々な製造分野で使用されており、製品の形状を決定するために欠かせません。

サイドカッターの使用用途

サイドカッターは切削加工器具として、溝切りや、段削りや、側面削りや、幅決め、溝加工などに使用されます。両側面に切れ刃を保有しているため、幅 (厚み) 方向の寸法が切れ刃の部分が最も大きく、本体の寸法がメタルソーに比べると小さくなっている点が特徴です。

切れ刃の幅 (厚み) は、本体の幅が薄いことにより、切り込みの深さが大きいケースでも本体の側面と工作物の側面が擦れることなく、溝部の側面を奇麗に仕上げることが可能です。そのため、特に溝加工に適しているといえます。

産業用の機械でも使用されており、高速回転する刃で素材を切削できます。素材を固定するための装置や、自動送り装置が付いている場合があります。金属やプラスチックの加工に広く使用され、製造業や建築業などで重要な役割を担っています。

サイドカッターの原理

サイドカッターは素材を刃に引っかけて、回転する刃で素材を切断します。主に手動ツールとして使用され、ハンドルを握って切断する素材を固定し、刃を素材に引っかけて回転することで切断します。

刃は素材を切るために切削角度が付けられており、素材に対して適切な力をかけることで綺麗な切断が可能です。

サイドカッターの種類

サイドカッターには、ダウンカット、アップカット、フライホイールの3種類の加工方法があります。3つの加工方法で共通する点は、少なくとも1つの刃先が常に切削部に食い付くように、カッターサイズやピッチおよびその位置を選択して加工を行うことです。

1. ダウンカット

治具およびアーバサポートは、フライス加工の抵抗に耐えられるように、強靭さを備えていなくてはなりません。最も推奨される加工方法は、ダウンカットという方法であり、主分力により加工物がテーブルに向かって下側へ押しつけられることがないようにします。下側へ押しつけられることにより、送り方向は切削抵抗と同じ方向になります。

2. アップカット

一方、アップカットは剛性が不十分であるため、トラブルが生じるケースで、もしくは新しい被削材を加工するケースで代替する加工方法のことです。この方法を用いると、セットアップ剛性が不十分なケースや、深溝の切りくず詰まりによって発生するトラブルを解消が可能です。

3. フライホイール

フライホイールは、セットアップ剛性が不十分かつ、機械動力とトルクが低いケースにおいて、優れた補完加工法を言います。このフライホイールは、最大限工具の近くに設置し、加工物をよりしっかりと装着することが最善の対策となります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/readingseries/sessakukiso_0606/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/detail/223000581685/
https://www.sandvik.coromant.com/ja-jp/knowledge/milling/pages/groove-or-slot-milling.aspx

ゴム硬度計

ゴム硬度計とはゴム硬度計

ゴム硬度計とは、その名の通りゴムの硬さを測定する装置のことです。

主に、デュロメータという計測器が使われています。この装置は、バネの力で針をサンプルに押し付け、サンプルを変形させた際に針が押し込まれた深さによって、ゴム硬度を測定します。

デュロメータには計測するゴムの硬度で、針の先端形状が異なるタイプA、タイプD、タイプEの3種類に分類できます。その他、押込み方式という手法もあり、デュロメータ同様にサンプルに対してバネの力で針を押し付けますが、押し付けた力とくぼみの面積から硬度を求める方法です。

ゴム硬度計の使用用途

ゴム硬度計は、ゴムの硬さを評価するために使用されています。具体的には、車のタイヤや消しゴムなどです。また、ゴム以外にもエラストマーやプラスチック製品の硬さを評価するためにも使用されています。

ゴム硬度計の原理

硬さ測定をする際に最も多く使用されているデュロメータは、バネの力でサンプルに針を押し付けて変形をさせます。この時、サンプルは押し付け力に対して反発力を生み出します。

両者の力が平衡となった時に、針がサンプルへどの程度押し込まれたか、その量から硬さの値を測定することが可能です。サンプルの反発力が弱い場合には柔らかく、反発力が強い場合には硬くなります。

ゴム硬度計のその他情報

1. 硬さの表記方法

デュロメータに限らず硬さの測定結果は、重さのような物性値ではなく単位もありません。ある方法で試験をした時の結果なので、数値とともに試験方法を記載する必要があります。測定方法や結果の表記方法は規格で定められています。下記では、JIS K 6253-1997 加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法を例に説明します。

  • A50/S: タイプAのデュロメータで1秒以内に測定して50 (ポイント) だった場合
  • D50/15/S: タイプDのデュロメータで15秒後に50 (ポイント) だった場合

このようにデュロメータのタイプ、指示値、読み取りまでの時間を表記します。 (1秒以内の測定の場合は省略) その他の規格でも類似の表記方法を使います。それぞれ目的の試験方法に沿った表記方法を確認することが大切です。デュロメータを使う主な規格は以下の通りです。

  • JIS K 6253-1997
    加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法
  • JIS K 7215-1986
    プラスチックのデュロメータ硬さ試験方法
  • ASTM D2240-2005
    ゴムの物性―デュロメータ硬さ標準試験方法
  • ISO 48-4
    ゴム―ポケット型による硬さ試験方法
  • ISO 868-2003
    プラスチック―デュロメータ試験方法

2. 測定時の注意事項

デュロメータを使う際は、以下の点に注意が必要です。

  • サンプルのゴムが温度や湿度の影響を受けると正確に測定ができません。
  • ゴム硬度計のサンプルへの押し当て方が不適切であったり、測定物表面に凸凹やそりがある場合は、正確な測定ができません。
  • サンプルの同じ場所を繰り返し測定すると硬度が低くなるので、複数箇所測定する場合には別のポイントで測定してください。一般的には測定ポイントを6mm以上離すことが推奨されています。
  • サンプルの厚みも測定に影響します。一般的にタイプAデュロメータでは、6mm以上の厚さが必要となります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/71/3/71_3_161/_pdf
https://kikakurui.com/k6/K6253-3-2012-01.html
http://www.shimopa.co.jp/product/data/rubber.pdf
https://www.measuring.jp/pdfdoc/tan1003c.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/gomu1944/48/4/48_4_225/_pdf

FBG

FBGとは

FBGとは、光ファイバ内部に対してレーザー光を照射することで形成される回折格子です。

ファイバ・ブラッグ・グレーティング (英: Fiber Bragg Grating) の略称であり、光ファイバのコア内に設置されます。FBGは光ファイバ内部を進行していく様々な波長の光の中でも、FBGの縞の周期 (屈折率) に適合した波長のものだけが反射される回折格子です。

この縞の周期は、加えられた圧力による歪や温度による伸縮によって変化します。それに伴い反射光の波長も変化するため、インテロゲータと一緒に使用することで、圧力や歪、温度などを測るセンサーとして用いられます。

FBGの使用用途

FBGは、高低温や高放射、高真空などの過酷な計測環境に非常に有効です。具体的な使用例として、高電圧ジェネレータにおける振動や温度の管理、変圧器における高温箇所のモニタリングが挙げられます。FBGは従来のセンサー技術が適用できないような計測環境でも有効な代替手段の1つです。

その他、風車におけるブレード監視、航空機の燃料タンクにおける負荷の監視、原子炉内における歪などの監視、宇宙船の監視なども用途として挙げられます。FBGを用いた計測は、必要なセンサー数が非常に多い場合や超長距離にまたがる設置が必要な場合でも可能です。

FBGの原理

FBGセンサーは光の測定を通して、温度や圧力による歪の変化を計測し数値化しています。これらのパラメータは反射光を取得し、その特性を計測することで算出しています。温度、歪、圧力の情報は光から取得するデータを元に計算し直すことで検出可能です。FBGは、歪や温度のダイレクトに検出する直接素子として機能してます。

なお、FBGはインテロゲータと一緒に使用されます。インテロゲータにて帰ってきた反射光の波長強度を計測し、数値化します。得られた波長の情報から、あらかじめ定められた係数によって温度、歪、圧力を計算する仕組みです。

このように、最終的には温度や歪、圧力を導出可能ですが、あくまで検出素子であるFBGによって直接取得しているパラメータは反射光の波長です。

FBGのその他情報

1. ブラッグ波長と波長シフト

入射光が光ファイバを伝ってFBGを通過する際に、回折格子の間隔に比例した波長成分が反射します。この特定の波長成分がブラッグ (英: Bragg) 波長です。

温度や歪、圧力によって、光ファイバが伸縮します。伸縮することで回折格子の間隔が変化するため、ブラッグ波長も変化します。ブラッグ波長の歪依存性及び温度依存性を使って、歪や温度変化の計測が可能です。

2. FBGの作成方法

FBGの作成手法は、ゲルマニウムをドープした光ファイバのコアに対して波長250nm前後の紫外光を照射を行う方法です。照射によって光誘起屈折率変化が発生し、光ファイバの屈折率が変化します。

光の照射を止めた後も屈折率の変化は持続しており、光ファイバのコアに紫外光の干渉縞を形成します。周期的な屈折率変化を書き込むことで、回折格子を光ファイバ内に作成可能です。

このようなFBGは、1本のファイバ内で複数のセンサ部を設けることが可能な点がメリットです。波長多重や時間多重などの手法があります。

3. 反射光の取得

前述の通りFBGは、インテロゲータと同時に使用する装置です。ここでは、インテロゲータが光を取得するまでのプロセスを説明します。

入射光をインテロゲータから光ファイバへ入射させます。この入射光は全反射を繰り返しながらコア内を進んでいき、やがてFBGへと到達します。

FBGに到達した入射光の一部はFBGによって逆方向へ反射される反射光であり、残りの光はそのまま通過する透過光です。この反射光はコア内を逆方向に進んでいき、やがてはインテロゲータへと戻ってきます。

参考文献
https://www.cmiws.jp/faq/fbg%E3%81%A8%E3%81%AF/
https://www.klv.co.jp/technology/what-is-fbg.html
https://www.hbm.com/jp/1629/fiber-bragg-grating-technology-explained/

インクトナー

インクトナーとは

インクトナー

インクトナーとは、プリンターのインクにあたる製品です。レーザープリンターや複写機に採用されています。

プリンター用インクのカートリッジには、インクカートリッジとトナーカートリッジの2種類があります。インクカートリッジはインクジェットプリンター用のインクで、顔料または染料を含む液体が充てんされている製品です。液体を吹き付ける方式のため、専用紙を用いないと印刷時に色が滲む可能性があります。

トナーカートリッジには液体インクではなく、カーボンや顔料を付着させた粉末状の樹脂(トナー)が充てんされています。こちらは用紙上にトナーを定着させる方式のため、用紙の種類にかかわらず滲まずに印刷できるのです。 

インクトナーの使用用途

インクトナーは液体インクと異なり色が滲みにくく、普通紙や再生紙、コピー用紙など、用紙を自由に選んで印刷することが可能です。液体インクのように専用紙を用意する必要がないため、用紙のコストを下げられます。

さらに、液体インクより印刷速度が速いという利点もあります。これらの特徴から、オフィスなど日常的に大量の印刷を行うところに導入されています。

色の表現や再現性の面では液体インクに劣るため、鮮明な画像や写真を印刷したい場合にはあまり向いていません。 

インクトナーの原理

レーザープリンターなどにおけるインクトナーを用いた印刷は、帯電、露光、現像、転写、定着、クリーニングの6段階で行われます。

帯電工程により帯電させた感光ドラムに対し、レーザーやLEDなどを用いて露光を行うと、光の当たった部分のみ電荷が消失します。これによって、ドラム上に印刷パターンの潜像を形成することが可能です。

現像器内でトナーに電荷を与えてドラムに運ぶと、静電気力でトナーが潜像に付着し、現像されます。潜像に付着したトナーは静電気力で用紙へと転写されますが、そのままではただ用紙に載っているだけの状態なのですぐに取れてしまい、定着はしていません。そこで熱で溶かしたり、圧力をかけて押しつぶしたりして、用紙にトナーを定着させています。定着の方式としては熱ロール方式が主流です。

このようにトナーを用いた印刷では、静電気力をトナーの脱着に、熱または圧力を定着に利用しているのです。帯電制御剤を添加したり、使用する樹脂を選定したりして、これらの工程を制御できるようにトナーを設計しています。 

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij1955/53/5/53_5_583/_pdf/-char/ja
https://www.ricoh.co.jp/pps/support/techinfo/laser_dousa1_jp.html#other
https://shop.akebono-sv.co.jp/html/page87.html