分光センサ

分光センサとは

分光センサとは、物質に光を照射し、その光の反射や散乱、吸収を測定することで分子の情報を得る分光分析装置の一種です。

分光器とほとんど同じもので、検出器一体型のものが一般的です。分光センサは使用する光の波長の範囲や原理の違いによって区別され、様々な種類があります。分光センサを用いることで測定対象の色測定、膜厚測定、化学物質の同定などをモニタリングすることができます。最近では小型で高性能な分光センサが開発され、手軽にリアルタイムの分析ができるようになっています。

分光センサの使用用途

分光センサは種類が多く、幅広い用途で利用されます。半導体をはじめとする工業分野、医薬品などの医療用途、食品や水質の分析など様々な分野で活用されています。

例えば、食品分野では、非接触かつ食品を損傷せずに測定できる近赤外分光センサが利用されています。農作物の食味分析を非破壊で行うことが可能で、トマトに含まれるリコピンの量や、野菜に含まれるクロロフィルの量、豚肉に含まれる脂肪の量などをリアルタイムで測定することができます。測定結果がすぐにわかるので、生産管理や品質管理には近赤外分光センサが有効です。

分光センサの原理

図1-分光センサの構造

図1. 分光センサの構造

分光センサは光を物質に照射し、反射または透過した光を検出することで物質が吸収した光の量を測定します。物質が吸収する光は組成や構造に依存するため、分光センサを用いることで物質の組成を推測することができます。

分光センサは、主に光源、分光部、試料部、検出器から構成されています。光源から生じた光を分光部にて特定の波長の光に整えて試料に照射します。この際、照射光の波長を一つにしぼる場合はモノクロメータ、複数使用する場合はポリクロメータと呼ばれます。前者は測定波長を走査するため測定に時間がかかりますが、精度が高いです。後者は短時間で測定できますが、信号強度が弱くなり精度が劣ります。

試料に照射されて反射または透過した光は検出器に導かれ、その強度が測定されます。検出器は測定波長毎に異なります。180nm~1,100nmの紫外~近赤外光範囲ではCCD検出器、900~1,700nmの近赤外光ではInGaAs型、1700~2,500nmの近赤光では拡張型InGaAs型が使用されます。

分光センサの種類

図2-光の種類

図2. 光の種類

分光センサは測定に用いる波長で区別されます。それぞれ特徴があるため、目的に合わせて選択する必要があります。光の種類は何種類もあり、それぞれを用いた測定装置がありますが、一般的には、紫外・可視光、近赤外光、中赤外光、遠赤外光が分光センサに使用されます。

1. 紫外・可視光

測定する試料に紫外・可視光を照射し、反射または透過した光を測定します。対象物体が赤・青・緑の3色をどの程度吸収するかという情報から物体の色を決定します。 物質の色を検出するカラーセンサとして、製品の色の管理や、不良品や不純物の検知に用いられています。

2. 近赤外分光

測定対象の試料に近赤外線を照射し、透過または反射した近赤外線を測定します。近赤外線はほとんど吸収されずに物体を透過します。固体、粉体、液体などさまざまな状態の試料の分析ができます。前述のとおり、農産物や食品の非破壊に用いられるほか、血中酸素飽和度を測定するパルスオキシメーターや、赤外線カメラなどにも利用されています。

3. 中赤外分光

測定対象の試料に中赤外線を照射し、反射した中赤外線を測定します。分子ごとに固有の吸収パターンをもつため物質の同定が可能です。固体試料の場合、照射光が当たっている表面付近しか測定できないため、主に気体や液体の不純物を検出する用途などで用いられています。エンジンオイルの分析や尿検査などに利用されています。

4. 遠赤外光

測定対象から放出された遠赤外線を測定します。遠赤外線は温度と密接な関係があり、温度の違いを測定することが可能です。サーモグラフィや人感センサーなどで利用されています。

分光センサのその他情報

分光センサ以外の分光分析法

図3-主な分光分析装置

図3. 主な分光分析装置

分光分析法は、物質を透過または反射した光のエネルギーを測定し、入射光のエネルギーと比較することで、物質の定性・定量分析を行います。分光分析法としては次のような手法が代表的で、使用される波長は、ガンマ線からラジオ波まで様々です。

1. 吸光分光法
吸光分光法は、試料に光を照射し、反射または透過した光を測定し、入射光のエネルギーと比較することで、物質の定性・定量分析が可能な分析方法です。代表的分析装置は、各波長での吸光分光装置です。

2. 蛍光分光法 (または発光分光法)
蛍光分光法は、試料に光を照射し、試料から生じる蛍光 (または発光) を測定し、その光のエネルギーから物質の定性・定量分析が可能な分析方法です。代表的分析装置は蛍光燐光分光や、蛍光X線分光 (XRF) などがあります。

3. 光散乱分光法
光散乱分光法は、試料に光を照射し、散乱された光を測定し、その光のエネルギーや強度から、物質の定性・定量分析が可能な分析方法です。代表的分析装置はラマン分光法や動的光散乱法 (DLS) 、X線小角散乱 (SAXS) などがあります。

4. 磁気共鳴分光法
磁気共鳴分光法は、磁場中で試料に光を照射し、透過した光を測定し、吸収された光から物質の定性・定量分析が可能な分析方法です。代表的分析装置は核磁気共鳴 (NMR) 、電子スピン共鳴 (ESR) 、核磁気共鳴画像法 (MRI) などです。

5. 光電子分光法
光電子分光法は、試料に光を照射し、光電効果により放出された電子を測定し、そのエネルギーから、物質の定性・定量分析が可能な分析方法です。X線光電子分光 (XPS)、紫外光電子分光 (UPS)、オージェ電子分光 (AES) などが代表的です。

参考文献
https://www.yokogawa.co.jp/about/yokogawa/rd/inv_center/spectroscopy/
https://www.argocorp.com/cam/special/HeadWall/applications.html
https://www.klv.co.jp/iot/infrared-spectrometers-and-sensor.html
https://www.britannica.com/science/spectroscopy/Basic-properties-of-atoms#ref80589
http://www3.u-toyama.ac.jp/nozaki/souti/Emsp.html
https://xtech.nikkei.com/dm/article/WORD/20100722/184385/
https://www.klv.co.jp/iot/about.html
http://www.cc.u-ryukyu.ac.jp/~tanahara/kikisiryo/bunsibunkou.pdf
https://www.britannica.com/science/spectrophotometry

アーク溶接ロボット

アーク溶接ロボットとは

アーク溶接ロボット

アーク溶接ロボットとは、アーク溶接を人に代わって行うロボットです。

他の溶接ロボットと比較すると、やや小型な点が特徴です。アーク溶接はアーク放電によって強烈な光と強力な紫外線が放出するため、溶接点は非常に高い温度となります。そのため、ゴーグルや作業服で保護していてもやけどの危険性が高いです。

金属が蒸気となったヒュームを吸い込むと有害でもあり、ロボットによる作業代替の需要が高い作業の1つです。ロボットはスピードが速く、安定した品質の溶接を行うことが可能な点がメリットがあり、コスト削減にも貢献します。

アーク溶接ロボットの使用用途

アーク溶接は、鉄鋼同士やアルミニウムチタンといった金属の接続に利用されます。ほぼすべての金属構造物に適用される溶接方法です。以下はアーク溶接ロボットを使用される製品の一例です。

  • 鉄骨フレームや建設機械
  • 自動車や鉄道車両などの陸送機械
  • 航空機などの大型空輸機械
  • 船舶などの大型海運機械

アーク溶接ロボットは、上記製品の製造工場などで使用されます。近年溶接の合理化が進んでおり、アーク溶接ロボットの導入事例も増加傾向です。アーク溶接の一種であるティグ溶接、マグ溶接などにも対応しています。

アーク溶接ロボットの原理

アーク溶接は、空気中の放電を利用した溶接方法です。電極となる溶接棒に電流を流し、接合したい金属に接触させてゆっくり引き離すことでアーク放電が起こります。このアークは最高20,000℃にも達するほど高温なため、金属が素早く溶けて接合します。

ロボットは垂直方向に取り付けられた6~7軸の多関節で精密な動きを再現可能です。それぞれの軸ごとに可動できる角度や速度が決まっており、資格を持つ作業者がロボットに溶接の条件をティーチングします。この際の条件決めや位置決めが重要で、実溶接を行いながら決める場合もあります。

実際に溶接を行う部分は溶接トーチと呼ばれ、ロボットの先端に固定します。溶接対象に合わせてトーチやコンタクトチップなどの選択が必要です。

アーク溶接ロボットの構造

アーク溶接ロボットの構造はマニピュレーター、コントローラー、プログラミングペンダントから構成されています。

1. マニピュレーター

マニピュレーターは、ベース部やモーター部、エンドエフェクタなどで構成されています。エンドエフェクタに装着されている溶接トーチを取り替えることで、さまざまな溶接条件に対応可能です。また、サーボモーターによる複数軸の多関節構造を取っています。

2. コントローラー

コントローラーは、データ保存ストレージとマニピュレーターとの通信機器などで構成されます。溶接条件などをコントローラに記憶させて保存します。

3. プログラミングペンダント

プログラミングペンダントは、人がロボットに溶接条件を教え込むインターフェイスです。マニピュレーターの動作手順を記述するデータを作成したり、変更や修正したりできます。制御パラメータの変更やティーチングも、プログラミングペンダントで実施します。

アーク溶接ロボットの選び方

アーク溶接ロボットは溶接材料、ストローク、設置方法などに応じた選定が必要です。溶接材料は鉄鋼やアルミなどがあります。溶接したい材料に対応したロボットを選定します。

ストロークはロボットがアームを伸ばすことができる距離のことです。ストロークが長いほど遠い位置まで作用が可能ですが、高価になります。大きな部材を溶接する場合は複数台設置することもあります。

設置方法はロボットを設置条件に応じて壁掛や天吊などがあります。ロボットの設置個所に適した設置方法を選定します。

アーク溶接ロボットのその他情報

アーク溶接ロボットの市場

世界のアーク溶接ロボット市場は、2026年までには117億米ドルに達すると予想されています。また、自動車業界は堅調であり、2024年以降も需要が伸びていくと考えられます。先進国を中心とした自動化の流行や労働力不足問題も、需要を後押しする要因です。

アーク溶接ロボットの価格は一般的に数百万円程度から販売されています。溶接する材料や使用条件によって金額が異なります。

参考:ロボット溶接の市場規模

参考文献
https://www.gii.co.jp/report/infi605147-global-arc-welding-robots-market.html
https://www.yaskawa.co.jp/newsrelease/product/8911
https://robot-meister.com/system/

接触式センサー

接触式センサーとは

接触式センサーとは、被計測物との距離を専用の検出器を直接接触させて計測する計測機器です。

検出器を接触させて距離を測定するため、非接触式センサーと比較して精度が高い点がメリットです。ただし、被測定物に検出器を当てる必要があるため、少なからずダメージを与えてしまうというデメリットがあります。

また、非接触式センサーと比較して安価である場合が多いです。

接触式センサーの使用用途

接触式センサーは産業用途として幅広く使用されています。以下は接触式センサーの使用用途一例です。

  • 製品・試験品の厚みなどの変位測定
  • 搬送・加工装置の製品検査・位置確認
  • 貯水タンクの液位管理
  • バルブやダンパーの開閉フィードバック信号発信用

接触式センサーと言えば、接触式変位センサーが代表的です。接触式変位センサーは、主に製品・試験品の厚み測定などに使用します。変位以外にも液位測定などに使用される場合もあります。

非接触式センサーの多くは、レーザーなどを投射して反射光を受光することで距離測定を実施します。接触式センサーは、反射光を受光すること不可能な大きな傾斜面などの計測も可能な点がメリットです。その利点を生かして、3次元形状の被計測物の表面形状を計測することができます。

また、被計測物を載せてその移動を制御する粗動ステージの変位を実測したり、一方向へステージを動かす際の振れ幅を計測したりする際にも使用します。誤差の計測把握から調整へのフィードバック制御に使うことも可能です。

接触式センサーの原理

接触式センサーの中でも代表である接触式変位センサーは、一般的に専用のプローブが付属されています。プローブはスピンドル構造となっており、上下に機械的に伸び縮みします。プローブが何にも接触していない状態では、バネの力でプローブは最大限伸びた状態です。

被計測物にプローブが接触すると、プローブが縮みバネの力で被計測物へ向かって一定圧力が掛かります。その際のプローブシャフトの変位を検出することで、長さ情報に変換します。そのため、計測できるレンジはこのプローブの伸縮するレンジ以内になります。

プローブの中には、コイルが巻かれていることが多く、伸び縮みするシャフト部分が鉄心の役目をします。このシャフトが動いた位置によって、コイル内のインピーダンスが変化し、出力が変化します。シャフトの位置に応じたインピーダンスが決まっているため、絶対位置をセンシングすることが可能です。

接触式センサーの種類

接触式センサーは、さまざまな種類が販売されています。以下は接触式センサーの一例です。

1. 差動トランス (LVDT) 式変位センサー

測定対象に押し付けた接触子を移動させて発生する垂直方向の変位量を電気信号に変換し、測定対象物の形状を読み取るセンサーです。接触子の上部には鉄心があり、この鉄心は接触子の上下動によって近傍のコイルインピーダンスが変化して電気信号出力します。

構造上、測定値が飛ぶことが少ない点が特徴です。一方、コイルの磁界を利用しているため、コイル内の鉄心の位置によっては磁界の特性が安定しない場合があります。

2. スケール式変位センサー

スケール式は接触子の変位量をデジタル的に測定するセンサーです。磁気型と光カウント型が存在します。

磁気型
磁気型は、S極及びN極が交互に並んだスケールの上下移動を磁気検出素子で検出して変位量を計測します。一方、光カウント方式は多数のスリットを開けたスケールに投光し、スリットを通過する光を受光素子でカウントして変位量を測定します。

光カウント型
光カウント型は、デジタル的な測定方法であるためノイズが無く、精度を高く測定可能です。ただし、接触子の急激な移動では磁気検出素子や受光素子が正しく反応できない場合があり、この場合は測定値の値が飛ぶことになります。

3. リミットスイッチマイクロスイッチ

リミットスイッチやマイクロスイッチは、物体の位置を接点信号として出力する接触式センサーです。先端にアクチュエータと呼ばれるドグが取り付けられており、物体が接触することで駆動して内部接点を開閉します。構造が簡単かつ堅牢で、産業に幅広く使用される部品です。

4. フロート式レベルセンサー

浮きが付属しており、液位の上下動に合わせて浮きが上下動してレベル出力するセンサーです。構造が簡単で安価なため、貯液タンクの液位管理用として多くの場面で使用されます。ただし、浮きをタンクに浮かべる必要があるため、撹拌するタンクなどには不向きです。

平面度測定器

平面度測定器とは

平面度測定器とは、主に加工した面の平面の度合いを評価するための計測器です。

平らに見える加工面であっても、実際にはごくわずかな凹凸やうねりを伴っているのが一般的です。このわずかな凹凸やうねりが、工業製品においては製品の機能に影響を与える場合があります。

平面度測定器は平面度合いを評価することによって、製品の機能を保証するために必要な測定器です。平面度を測定する方法には大きく3つあります。汎用の測定器であるダイヤルゲージを使用した測定、基準原器を使用した測定、レーザー光による測定です。

平面度測定器の使用用途

平面度測定器は、主に金属製工業製品の平坦部分、平面加工部分の評価に用いられます。例えば、気密性が求められる機械のケーシング部品が複数の部品で構成される場合、必ず部品同士を組み合わせる「合わせ面」があります。

合わせ面はあるレベルの平面が確保されていなければ、気密性を確保できません。このような合わせ面の平面度を評価するために、平面度測定器は用いられます。具体的には、エンジンや自動車用の変速機などです。内部にオイルを封入している機械のケーシング部品の合わせ面は、平面度を確保することが重要になります。

その他の用途として、光学用特殊プリズムが挙げられます。プリズムは光を屈折させたり反射させるガラス器具で、カメラやなどに使われています。光通信ガラス面が真っ平な平面でないと、光の屈折、反射がうまくいかなくなってしまうため、平面度の確認が必要です。

平面度測定器の原理

平面度を測定する方法として、主に以下の3つが挙げられます。

1. ダイヤルゲージを用いた測定

ダイヤルゲージを用いた平面度測定は、比較的さまざま部位の測定に応用しやすい方法です。まず、ダイヤルゲージは、平面度を測定する専用の測定器ではなく、段差など1方向の距離を直接接触して移動量を読み取る汎用の計測器です。

ダイヤルゲージと平面度を測定したい部品を定盤などの基準になる平面に置いて、複数箇所の高さを測定します。比較的容易に測定できますが、基準となる定盤の平面が確保できていなかったり、計測対象の製品が傾いてたりすれば、評価結果に影響してしまいます。

評価する部位もなるべく広範囲に、また評価する点数によっても結果は変わることに注意が必要です。

2. 平面度基準原器による測定

平面度基準原器は、平面度が保証された原器です。測定したい対象物と平面度基準原器を接触させ、接触部分に光を照射し、両者の隙間から洩れる光を測定することで平面度を評価する方法です。

3. レーザー光による測定

平面度測定装置として販売されている製品の多くは、レーザー光を用いたものがほとんどです。これらの装置では、対象物にレーザー光を照射し、反射を測定することで平面度を測定します。

表面を傷つけることがないこと、測定が一瞬で終わることが利点ですが、他の2つの方法に比べると高額な測定装置を用意する必要があります。

平面度測定器のその他情報

1. 平面度について

平面度が良いものが触れ合うようにすることは、製品の機能、例えば気密性や耐摩耗性において、非常に重要なことです。場合によっては、外観品質に影響することもあります。

JISでは平面度を「平面形体の幾何学的に正しい平面からの狂いの大きさ」と定義しています。簡単に言えば、面の最も凸の部分と最も凹の部分を、理想的な2つの平面で挟んだ場合の距離のことです。また、平面度は平らな面でなければ指定できないということはなく、曲面であっても指定することができます。

円筒や内径の場合は、同心度や同軸度も指定する必要があります。用途や目的によって、適切な幾何公差を選ばなければなりません。

2. 平面測定での注意点

平面度を測定する際は、評価する面のキズやゴミ、突起といった特異点に注意が必要です。場合によっては除去しなければなりません。

もし、特異点が除去しきれない場合は、測定ポイントを少しずらした位置で変位を求めます。特異点を除去せずに平面度を求めると、本来の値より大きく悪化した数値になってしまいます。

さらに、特異点を除去して求めた値でも、それが製品の反りによる影響であるかどうか見極めることが大切です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/flatness/info/
https://ekuippmagazine.com/business/plane/

寸法検査装置

寸法検査装置とは

寸法検査装置は、LED基板やCMOSセンサ基板、セラミック基板など主に小さな電子部品の寸法を検査する高機能な外観検査装置です。

外観検査装置の中の一つである寸法検査は、部品や製品が仕様通りに仕上がっているかの合否判定を行う検査装置です。マイクロメートル単位の精密な寸法の測定が可能で、完成品の合否検査に装置を使用することで全数の検査ができるようになりました。

また、搬送装置と画像処理を連動させることで、自動寸法検査ラインの構築が可能です。画像処理には、高性能なカメラが搭載されているので、中間品においても状態確認のため使用されたり、加工の際の位置決めに利用されたりする場合もあります。また、電子部品だけでなく、金属部品の寸法測定を行うこともできます。

寸法検査装置の使用用途

寸法検査装置は、ミクロン単位の精度が要求される電子部品用に多く使用されています。具体的には、電極シートの間欠塗工、ストライプ塗工などの塗工部のエッジ幅、整列の有無、レジスター長などの寸法の計測です。また、欠点や未塗工部の検出を行う際にも使用されています。

その他、外壁のボード、タイルなどの寸法検査や、木材や押出工程後の表面チェックなども寸法検査装置の使用用途です。3Dの寸法検査が可能な機種では、鉱物や食品等の容積確認もすることができます。

また、人では計測が不可能な部分の計測が可能です。例えば、Oリングの内径や外径、金属部品の先端のR形状や角度の測定など、画像処理を用いることで測定しにくい部位の寸法測定ができるようになります。

寸法検査装置の原理

寸法検査装置は、高性能なCCDやCMOSカメラを使用して検査を行っています。レーザー光をスキャンし、高さ情報を得て3DのXYZ軸の寸法を測定できる機種もあります。

製造ラインでは、画像処理を用いた寸法測定の結果、規格外と判別された不良品は排除され、良品だけが自動で次工程に回っていきます。

寸法検査装置の作業手順としては、まず照明を対象物に照射し、レンズを通してカメラで画像を撮影します。その画像を画像処理装置で認識し、測定を行います。

1. カメラの選定

測定対象の検査が必要とする寸法公差に合わせて画素数を選定します。

2. 照明

正反射タイプ、拡散反射タイプ、透過タイプがあり、測定対象の表面状態により選定します。

3. 画像処理 (エッジの検出)

エッジは画像処理において色の濃淡がよく表れている箇所です。製品の高さや材質、色、質感の違いなどがエッジとして現れます。寸法検査装置では、エッジとして現れた箇所の長さや角度、エッジからの中心位置などを測定することが可能です。エッジとエッジの間の距離を測定するので、測定精度はエッジがはっきり表れているかによって決まります。

寸法検査装置のその他情報

1. 外観検査装置

外観検査装置とは、自動で製品の外観を検査できる装置です。外観検査装置は目視確認に相当するものが、カメラ等の画像センサで、頭脳に代わるものが、画像処理装置やソフトウェアとなります。判断基準に記載される数値は、過去のデータを参考にするため、基準値の作成は容易です。

ただし、外観検査装置は、導入したらすぐに稼働ができるとは限りません。検査機には準備が必要であり、事前の調整や確認に時間がかかるためです。映像などのセンサーや光源ポジション、異物を検出する判定値の設定が難しく、画像ソフトが本来検出したかった異物を検出することができないケースもあります。

このようなトラブルは、ハードウェアの位置設定を繰り返し変更して、適正な位置を探し出すことで解決します。ソフトウェアの設定では想定外の不合格が初回で検出したとしても、そのデータを学習して、次の適正な判定値などの判定データを更新するため、その後同じ不合格が出ることはありません。

2. 画像寸法検査

画像寸法検査とは、画像を通して対象物の高さや深さなどを瞬時に測定できる方法です。画像センサの寸法測定では、対象物の平面化でエッジを検出し、その位置や幅やアングルを計測します。また、エッジ検出原理の習得で、最適検出が設定可能になります。

エッジは画像の中の明と暗の境を指し、エッジの検出とはこの濃淡の境を画像処理で検出を行うことです。エッジは以下の過程で処理されます。

①投影②微分③微分の最大値が100%になる様に補正④サブピクセル処理 (微分波形の最大部分を中心とする概ね3画素に対して、その画素で形成される波形から補間演算をして、エッジ位置を100分の1画素単位まで計測実行) の4ステップです。

画像処理のメリットとしては、撮像したデータをもとに部品各部の寸法を自動で測定し、数値をデータとして保存できることです。また、画像処理による寸法検査を行い、各部の計測した寸法を数値として保存し、データを活用することで、寸法情報の管理・形状の分析・工程改善にも役立てられます。

参考文献
https://www.daitron.co.jp/products/wafer_transfer_packing_machine.html
https://www.active-ltd.co.jp/products/automatic_check.php

https://www.keyence.co.jp/ss/products/vision/visionbasics/basic/soft/size.jsp

協働ロボット

協働ロボットとは協調ロボット

協働ロボットとは、人とロボットが同じ作業エリアで働くことができるロボットです。

従来のロボットといえば、例えば自動車などの製造現場で組み立てや搬送などを行う産業用ロボットが主でしたが、設置場所は自動化専用ラインであり、人が立ち入るのはメンテナンス時などに限られていました。

このような自動化専用ラインは人手による作業に対して飛躍的に生産性が向上する一方、設計も含め大きな初期投資が必要になりがちな上、小さなトラブルの発生時や製造品目の変更に対する柔軟性が人手と比較して低くなります。

このような中、2013年の規制緩和により人と隣り合って作業をする協働ロボットの導入が可能になりました。協働ロボットは安全柵なしに人と同じ作業エリアで共に働けるため、人手不足の解消に役立ちます。従来の自動化専用ラインに比べて初期投資も抑えられる上、ラインの稼働を止めることなく追加導入などもできるため中小企業での採用も容易になりました。

現在では、食品、自動車、電子部品など様々な製造現場で利用されている他、飲食業での配膳ロボットなども開発され、日常生活の中でも目にすることが増えてきています。

協働ロボットの使用用途

協働ロボットは比較的小型で、狭い作業スペースで細かい作業を行うことが可能です。カメラを搭載して画像処理能力を備えたものが一般的なため、幅広い業界で導入されています。

特に、これまで部品の挿入などは向きや位置等を人手でセットした状態でラインに供給していましたが、画像処理能力の獲得により、ロボットは大量の部品の色や形状、向きなどを判別してピッキングを行い、次工程に供給することが可能となり生産性の向上に大きく貢献しています。

協働ロボットの原理

協働ロボットは従来の産業用ロボットよりも柔軟な作業に対応しており、5軸や6軸といった関節を持ち、高速で高精度な作業が可能です。また、カメラやセンサを搭載し、画像処理により対象物だけでなく周辺環境も認識します。ロボットの動作指示をアームに付いているボタンで操作できるようになっているモデルもあります。

また、人と同じ作業エリアで協調して働くために安全対策が取られています。多くの協働ロボットは形状に丸みをつけて人にケガをさせないように配慮しており、人に触れるとセンサが感知し動作が停止するものがほとんどです。

他には、例えばロボットアームにロボットの状態を表示するLEDライト機能を付けて、稼働状態を確認できるように工夫されているものもあります。導入にあたって、安全性に配慮した設計はされていますが、リスクアセスメントにより導入事業者自らによる安全性の確保は必要です。

協働ロボットのその他情報

ロボットの導入にあたっては、産業用ロボットか協働ロボットかを問わず、作業の動作を定めてロボットの制御システムにセットするティーチングが必要です。ティーチングには以下のようにいくつかの方式があります。

1. オフラインティーチング

オフラインティーチングはプログラムを作成し、それをロボットにインストールします。パソコンがあれば作成可能ですが、実際の動作や環境を確認しながらの作成ではなく、プログラミングエラーの可能性もあり、複雑な動作や複数のロボットが同時に作業を行うようなケースでのプログラミングは難易度が高くなります。これに対してはデジタルツイン技術を適用し、リアルに動作を再現するアプローチが進められています。

2. オンラインティーチング

オンラインティーチングは実際の現場でリモコン操作をしながら、その動作履歴からプログラムを構成する方式です。様々なケースを想定し現場現物で実施するため、その間は稼働を停止する必要があります。

3. ダイレクトティーチング

ダイレクトティーチングは、人が直接的にロボットを手で動かし、ロボットに動作を覚えさせます。ロボットアームには力覚センサートルクセンサー、またはトルク検知が可能なサーボモーターが内蔵されています。これによって、外部から加えられた力や速度、回転の角度を自動で演算しプログラムを構成する方式であり、特に協働ロボットでよく取り入れられている方式です。

4. AIを利用したティーチング

近年ではAIを活用し、作業目標だけを与えてAIがプログラムを自動で作成するような技術が開発され、容易に短時間で作業プログラムを作成できるようになってきています。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/robotics/collaborative/collaborative_outline/
https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/topics/2020/04_robot/factory/index.html
https://www.robot-befriend.com/blog/direct-teaching/
https://www.automation-news.jp/2020/01/45819/

3D形状測定機

3D形状測定機とは3D形状測定機

3D形状測定機とは、表面形状をサブミクロンレベルで測定することができる機器です。

サブミクロンとは、ミクロン以下のレベルであり、ミクロンは1mmの1/1,000の大きさをいいます。3D形状測定機では、部品の形状を三次元でとらえて、さまざまな測定を行うことが可能です。

電子部品の基板や半導体などの表面粗さや高さ、厚みの測定などにも使用されます。高速、高分解能、高精度であることが特徴です。

また、3D形状測定機には設置方法や測定方式によって、さまざまな種類があります。設置方法では据え置き型、ポータブルタイプ、測定方法では接触型、非接触型、レーザートラッカー、レイアウトマシンなどがあります。

3D形状測定機の使用用途

3D形状測定機の使用用途は以下の通りです。

1. 線粗さ測定

3D形状測定機では、触針式の表面粗さ計と同様に、Ra, Rzなどの代表的な表面粗さのパラメータを測定することができます。

2. 面粗さ測定

3D形状測定機では面全体を測定することによって、うねりや面と面との段差などを高精度で測定可能です。具体例として、ワッシャーうねり評価、ブロックゲージ段差測定が挙げられます。

3. 平面測定

2点間の距離、直線、円心間の距離、その他さまざまな平面測定に使用されます。医療機器、考古学、成形、時計産業などあらゆる業界で使用されています。

3D形状測定機の原理

多くの3D形状測定機は、白色干渉方式を採用しています。白色干渉方式は、白色干渉計を使用した測定方式です。光の干渉とは、対象物表面からある点までの光の距離に差が生じることによって発生する現象です。光干渉計はこの現象を利用して、表面の凹凸の状態などを測定するのに用いられています。

光の干渉によって、試料表面の凹凸から発生する光路差により縞模様が出現します。この縞模様の本数が、試料表面の凹凸高さを表します。実際には干渉レンズと呼ばれる参照ミラーを内蔵した対物レンズを使用し、白色光を参照ミラーと対物レンズに照射し、対物レンズを上下に動かしながら、カメラで干渉信号を観察します。

また、高感度CMOSを搭載しているものもあります。CMOSとはレンズから入った光を電気信号に変換する半導体のことです。CMOSを用いた固体撮像素子により、形状と同時に外観写真を取り込むことができ、表面観察と測定が同時に行えます。解析内容は3Dモデルのようなデータ化し、CADで見ることができます。

3D形状測定機のその他情報

1. 3D形状測定機の機能

現在市販されている3D形状測定機には最新の技術が使われ、従来では不可能であった測定も自在にできるようになりました。仮想の原点から特定の点の3次元の座標は、ノギスマイクロメーターといった一般的な測定器では難しいとされています。

また、仮想点や仮想線を用いた測定や幾何公差も、他の測定機では測定することが到底困難ですが、3D形状測定機なら測定が可能です。最近では、試作品の形状を3次元で読み取り、それを3Dプリンターを用いて3次元のオブジェクトを作ることによって、実物と同じ要領で形状の確認も行えます。

2. 3D形状測定機の課題と解決策

3D形状測定機の高精度な測定技術や測定データの処理速が向上したことによって、測定作業の効率が飛躍的に改善されましたが、その一方で下記のような課題もあります。

  • 導入するための費用が高い
  • 設置スペースが広く、メンテナンスに負担がかかる
  • 3D形状測定機そのもののサイズに制限があることによって、測定できる対象物のサイズも制限されてしまう

これらの課題を解決すべく現れたのが、多関節アーム式の3D形状測定機です。本来は義手、義足のメーカー向けに開発された技術を用いて、運搬可能な3D形状測定機が使われるようになりました。

測定者の意のままにアームを動かすことが可能になったことによって、測定できる範囲がさらに広がりました。また、レーザーを用いて測定を行う非接触型が導入されたことによって、大型の対象物を測定も可能です。

参考文献
https://www.nidec-read.com/ja-JP/product/image_testing/nvr-e2000
http://www.3s-dc.co.jp/wp/wp-content/uploads/2016/11/VR-3000_C_250071_JA_1096-1-1.pdf
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/3d/info/
https://www.keyence.co.jp/ss/3dprofiler/keijou/3d/info/

真空炉

真空炉とは真空炉

真空炉とは、真空熱処理加工ができる炉です。

炉の中を真空にした状態で対象物を加熱するため、対象物の表面を酸化させずに加工することができます。脱炭を防止し、熱処理した後にステンレスなどの光沢を維持することも可能です。

また、表面の清浄性が高いため、異種の金属の接合もきれいに加工できます。加熱から冷却をゆるやかに行うため、歪みを減らせるのが大きな特徴です。

二酸化炭素の排出量が少なく済み、寸法や硬度のバラつきも減らせる処理方法です。真空炉に窒素ガスなどを流しながら熱処理を行う場合もあります。

真空炉の使用用途

真空炉は主に金属や半導体の加工に使用されます。以下は真空炉の使用用途一例です。

  • 金属の焼き入れ、焼き戻しや焼結
  • エバポレータなどのろう付け
  • 焼鈍

また、以下は真空炉で製作する製品の一例です。

  • 超硬工具用の高級鋼
  • マグネットやコンデンサなどの電子製品材料
  • 自動車部品や産業機械部品

特殊な機能が要求される金属が真空炉で作製されます。真空炉で処理した金属は光輝性が高い特徴があり、表面の酸化や不純物を減らすことが可能です。

利点が多い真空炉ですが、メンテナンス費用や初期導入コストが高いという欠点もあります。

真空炉の原理

真空炉は油回転ポンプやターボ分子ポンプなどを組み合わせて、炉内の空気を排気して高真空状態を維持します。高真空で酸素がない状態で加熱すると、酸化を防ぐことが可能です。

1. 容器材料

炉の容器材質は、ステンレスを使用する場合が一般的です。1,000℃~2,300℃までの加熱が可能で、タングステンモリブデン、炭化ケイ素といったメタルヒーターで加熱しています。

小型の炉には、アルミナや石英ガラスによる管状炉の中に対象物を入れて加熱する製品も販売されています。ヒーター材にはカンタル線などが使用され、700℃~1,600℃程度まで加熱することが可能です。

2. 冷却方式

冷却方式は自然冷却、ガス冷却、油冷却などがあります。高温の場合には容器を二重構造にして水冷する方式も取られています。また、高温の温度測定には外部から放射温度計で測定されます。

標準的な真空炉では加熱と冷却を同じ室で行いますが、近年作業効率を高めるために別の室に分ける製品も登場しています。

真空炉の構造

真空炉は、搬送・加熱・冷却の3工程により被熱処理品を熱処理加工します。熱処理部品の種類や目的によって大きく「一室型」と「多室型」の2つの構造に大別されます。

1. 一室型真空炉

一室型は、作業員が被処理品を炉内に搬送・設置し、一室で加熱と冷却を行う真空炉です。加熱と冷却工程を同室で行うため、急激な温度差に耐える必要があります。ヒータや構造部材には耐熱性ステンレス鋼やカーボン部材が使用されます。

構造がシンプルなため、小型から大型までラインナップが豊富な点も特徴です。冷却は炉内と被熱処理品の汚染を防止するため、自然冷却か窒素などによる不活性ガス冷却が採用されます。冷却ガスの吹出し口構造や攪拌ファンによって、均一で汚染の少ない冷却が可能です。

したがって、表面の汚染や変形に敏感な製品の処理に適しています。一方で、前の処理が完了するまで次の被熱処理品を投入できないため、生産性が低いのがデメリットです。

2. 多室型真空炉

多室型は、搬送・加熱・冷却工程を2室以上で行う構造の真空炉です。搬送室に投入すれば基本は設定通り全自動で加熱・冷却を完了します。ゾーン毎に温度制御できたり、小バッチの加熱室を複数設けて処理時間をずらしたりすることが可能です。

上記工夫によって、生産性を向上することができる点が特徴です。冷却を別室にすることで、油などの冷却能力の高い液体冷媒が選択可能です。冷却室が加熱されないため、高い冷却能を維持することができます。

焼入れ性が低く、冷却速度に敏感な金属材料などでもしっかり性能を出すことができます。一方で、冷媒による処理材の汚染があることから熱処理後に洗浄が必要です。冷却速度が速いために歪や割れが発生する危険もあります。

真空炉のその他情報

真空炉のカーボン部材

真空炉には、カーボングラファイトやC/Cコンポジットなどのカーボン部材が使用されます。使用箇所は発熱体や構造材、熱処理治具です。

カーボン部材は耐熱性が高く、最高3,000℃までの耐熱性があります。軽量で熱膨張係数が小さく、熱疲労による変形が小さく低熱容量な点が特徴です。

軽量なため、被熱処理品の積載量アップと段取り負荷の低減が可能です。変形しにくいためランニングコストの低減にもつながります。低熱容量で省エネ効果も高いことから、多くの生産性向上効果のメリットがあります。

ただし、加熱時にカーボンが揮発するため、炉内や被熱処理部品の汚染が発生する点がデメリットです。冷却方式もガス冷却だけに限定されます。 

参考文献
https://www.chushin-koshuha.co.jp/technology/technology04/
https://chugai.co.jp/pro_01_parts_01/
https://www.satovac.co.jp/products/vacuum_equipment/furnace/index.html
https://www.toyotanso.co.jp/Products/application/heat-treatment.html

搬送機器

搬送機器とは

搬送機器

搬送機器とは、物品や資材などを移動させる機器の総称です。

具体的には、コンベア式や昇降式、パイプライン式、レール式、自走式など搬送する対象の形容や大きさ搬送用途などに合わせた様々な形態のものがあります。一口に搬送機器と言ってもコンベア単体などのユニットを指す場合もあれば、生産システムに組み込まれた搬送装置を指す場合、倉庫や工場や物流を一体にしたようなロジスティックスに組み込まれる搬送システムを指す場合もあります。

搬送機器の取り扱いは概ねFA (Factory Automation) 業界で扱われることが多いです。単体ユニットだけでなく、搬送する対象や内容や設置条件などに対して最適な搬送システムとして、提案するようなケースが多くあります。

搬送機器の使用用途

搬送機器は、運送業などの物流倉庫や通販業などでの在庫管理倉庫、集荷梱包出荷を担う施設倉、生産工場、処理施設などにおける物品や資材の移動に使用されています。移動には水平移動、昇降移動、反転移動、回転移動、流動などがあり、それらの用途に応じた搬送ユニットを使用します。

搬送ユニットのみでは目的を達成できない場合は、それらを組み合わせて目的の搬送を行うシステムとして構築したうえで使用します。

搬送機器の原理

1. コンベア搬送

搬送ユニットには、ベルト式やチェーン式やローラー式のものがあります。ベルト式やチェーン式は、ある程度の区間さでベルトやチェーンが周回するように張ります。ローラー式は、ある程度の区間にローラーを一定の間隔で配置します。

そして、モーターによってベルトやチェーンあるいはローラーを回転させます。その状態でベルトやチェーンやローラーの上に搬送対象物を置くことで、搬送対象物を平行移動させるものです。

2. レール搬送

レース搬送は、搬送区間にレールを設置します。レール上に駆動装置を付帯したコンテナを設け、コンテナ内に搬送対象物を置いた状態でコンテナを駆動することで、搬送対象物を搬送するシステムです。

3. 反転搬送

搬送には、搬送対象物の向きを揃えたりするために、搬送対象物を反転させる必要が出てくる場合もあります。例えば、横向きに転がってくる瓶を立てて、中身を入れるケースなどです。

そのような場合には、搬送対象物を反転させながら搬送する仕組みが必要になります。

4. 回転搬送

搬送には、搬送対象物の方向を揃えたりするために、搬送対象物を回転させる必要があるような場合があります。例えば、方向が不定で流れてくる箱のラベルの向きを揃えるようなケースです。

そのような場合には、搬送対象物を回転させながら搬送する仕組みが必要になります。

5. 昇降搬送

搬送には、搬送対象物を上下に移動させる必要があるような場合があります。例えば、棚の高さからコンベアの高さに上下移動させるようなケースです。

そのような場合には、搬送対象物を上下に昇降する仕組みが必要になり、リフターやエレベーターのような機器が使用されます。

6. パイプライン搬送

搬送には、粉体や粒体などを搬送する場合があります。例えば、食品の小麦粉やプラスチック材料のペレットなどを非梱包状態で移動させるケースです。

このような場合には、搬送区間にパイプラインを設置してその中を重力や空気圧などの力で移動させます。

7. 自走搬送

搬送機器には、自走式でAGV (Automatic Guided Vehicle) と称される自動搬送ロボットがあります。AGVは走行ルートをプログラムできるため任意のルートを設定できたり、走行ルートに搬送設備を必要としない特徴があります。

そのため、屋外など搬送機器の設置に苦慮するような場所で活躍しています。

搬送機器のその他情報

ロジスティックスとの違い

搬送機器のことをロジスティックスと称している記事などを見かけることがありますが、実際のところ搬送とロジスティックスは違うものです。ロジスティックスは物資の仕入、物流、加工、出荷など一連の流れ全てを一元管理しています。

それに対して、搬送はその中の一部を担うことはありますが、全ての範囲に及ぶことはありません。

車載用リレー

車載用リレーとは車載用リレー

車載用リレーとは、文字通り自動車の電装品制御に合うように設計されたリレーのことです。

用途別に数多くの車載用リレーが存在します。各自動車メーカによって電気回路設計は異なるため、自動車メーカの規格に沿うように、また負荷別に様々なリレーが製造販売されています。

ここ最近、自動車の故障時に電装品の修理を行う場合、電気回路内の故障した車載用リレーをモジュールごとに一気に取り替えることで、素早い修復対応が可能になりました。

車載用リレーの使用用途

車載用リレーは、自動車の制御に関する電気回路のリレーとして使用されます。一口に車載用リレーといっても、数多くの種類があり、ヘッドライトやテールランプなどのランプ制御に用いられるリレーや、パワーウィンドウやドアミラーなどの動作に用いられるモータ制御関連のリレーなどがあります。

また、エアコンやリアガラスのヒーターを制御するためのリレーやバッテリー充電に必要な回路に用いられるものなど、自動車の電気回路には欠かせない存在です。

車載用リレーの特徴

車載用リレーの特徴

図1. 一般的なリレー構造例

車載用リレーの一般的な構造は、鉄心にエナメル線コイルを巻いた電磁石部と可動接点および固定接点を用いたシンプルな構造となっており、電磁石に通電することにより可動接点を動かし、電気接点の開閉を行い電気回路を制御します。

基本的に、制御リレーとして特別な構造があるわけではありませんが、特長として軽量化や耐振動性および耐久性が意識された設計がなされています。自動車の重量は、燃費や走行性能に影響を与えます。車載用リレーひとつひとつは軽量ではありますが、1台の自動車には数多くの車載用リレーが使用されるため、その重さを軽くすることが重要です。

また、自動車に使われる電装品は家庭電化製品と異なり、走行及びガソリンエンジンなどから来る振動に常に晒されています。自動車の耐久性を上げるためにも、耐振動性、耐久性に優れているリレーが使用されます。

その他、動作音が小さいということも挙げられます。パワーウィンドウの操作など、モータ制御に用いられる車載用リレーは小型で静音設計にすることが多いです。また、各自動車メーカーの仕様要求に合わせ、大量生産に適した構造にしていることも特徴の一つです。

車載用リレーの種類

車載用リレーには、その仕組みによって色々な種類のリレーがあります。

1. ヒンジ形リレー

電磁石に発生した電磁力によって鉄片 (可動接点) を吸引し、その動作によって接点のON/OFFを行います。図1で示したリレーでは、電磁石に通電中時は、鉄片 (可動接点) が電磁石に引き寄せられて、a接点はONになり、b接点はOFFになります。通電が終了すると、復帰バネの復元力によって、鉄片は元の位置まで復帰し、a接点はOFFになり、b接点はONになります。

2. プランジャ形リレー

プランジャ式リレー

図2. プランジャ式リレー構造例

プランジャが電磁力により吸引され、コイルに差し込まれるとプランジャ側にも電磁力が発生し、強い吸引力が得られます。この仕組みは、プランジャの移動距離を大きく取れることから、大型のリレー接点を制御できる点です。

使用例としては以下に示すEV用リレー (SMR) があります。リードリレーでは、一対の磁性リードを用いた接点構造になっています。コイルをガラス管の周囲に巻き、それによってリードを動かして、接点のON/OFFを行います。

EV用リレー (SMR)
EV用リレー

図3. EV用リレー (SMR) 使用例

車載用リレーの中には、EV用リレーがあります。このリレーはSMR (システム・メイン・リレー) と呼ばれ、車両の高電圧バッテリーからの大電力を駆動用インバータなどに送る途中の高電圧回路に挿入し、大元の電力の開閉を行います。

車両が衝突した際には、このSMRを制御して高電圧バッテリーを切り離し、感電などの二次災害を防止します。EV用リレーには、高電圧の直流を短時間で遮断できることや小型・軽量化が求められています。

参考文献
http://researchstation.jp/report/MAM/6/Automotive_Relay_2022_MAM650.html
https://www.automation-news.jp/2015/01/8732/
https://www.monotaro.com/s/pages/productinfo/relay/
https://www3.panasonic.biz/ac/j/control/relay/vehicle/eb-n/index.jsp
https://www.dempa.co.jp/productnews/trend/h120412/h0412.html
https://docs.rs-online.com/498d/0900766b81396550.pdf
https://www.panasonic.com/jp/company/pidswt/products/02.html
https://www3.panasonic.biz/ac/j/control/relay/vehicle/ev_special/index.jsp