小型NC旋盤

小型NC旋盤とは小型NC旋盤

小型NC旋盤とは、入力された数値データに従って動く小型の旋盤装置です。

卓上旋盤やミニ旋盤とも呼ばれています。旋盤とは、円筒形状をした被加工材料 (ワーク) の加工作業で使われる代表的な工作機械です。その中でも数値制御 (Numerical Control) で正確に加工ができるNC旋盤は、職人技に頼らずに高度な加工ができることから工場での導入が進んでいます。小型のNC旋盤は、主に少数の加工を行う工場や試作・研究開発用、作業者の教育用などで使用されています。

小型NC旋盤の使用用途

小型NC旋盤は、金属や樹脂、木材などの円筒形をしたワークを削って所定の寸法にしたり、テーパーを付ける、ネジを切るなどの加工作業で使用します。旋盤は、船舶用のシャフトなど大型機械用の部品の製造から精密部品の製造まで幅広く使用されています。小型NC旋盤はその名の通り小型であるため大きなワークの加工にはあまり適さず、精密部品のような小型で高精度を要求される部品の加工に広く使用されています。

また、小型NC旋盤は大量生産をする現場よりも試作や研究開発用に適した機械と言えます。そのため小型NC旋盤が導入される場所は、企業などの研究開発部署や少数品を生産する中小企業、工房などが代表的です。

NC旋盤に所定の動作をさせるためには、数値制御プログラムを理解する必要があります。数値制御プログラムを学びその成果としてNC旋盤を実際に動作させてみるには、小型NC旋盤が教材として適しています。従って、企業等の工作機械の教育現場や職業訓練所などにも小型NC旋盤が導入されています。

小型NC旋盤の原理

旋盤は、チャックで円筒形のワークを挟み、ワークをチャックと同一軸上に回転運動させながら様々な方向から刃を当てることによって、ワークの寸法を変える、テーパーを付ける、溝やネジ山を付けるなどの加工を施します。

1. 旋盤

基本的な旋盤は、ハンドルやレバーを操作して手作業で刃を動かしながらワークを加工します。しかし、旋盤を正確に操作してワークを複雑な形状や精密な部品に仕上げるには、作業者の熟練した技術が必要とされます。

2. NC旋盤と小型NC旋盤

NC旋盤は、数値制御プログラムに書き込んだ加工の手順や寸法がNC旋盤に渡されることで、正確に所定の作業を行いワークを加工します。NC旋盤の小型の機械が小型NC旋盤です。

3. CNC旋盤と小型NC旋盤

NC旋盤に投入する数値制御プログラムは、人間が理解できる図面を基に、加工したい形状の座標や刃物の動き方、加工速度など、機械が必要とする情報を数値情報として記述したものです。従って、数値制御プログラムの作成においても相応の知識とスキルが必要となります。

そのため、マン/マシーンインターフェースに優れたコンピュータを機械に組み込んで、より人が使いやすく高度な作業ができるように進化した旋盤がCNC (Computer Numerical Control) 旋盤です。文書ではNC旋盤とCNC旋盤が区別して表記されている場合が多いのに対して、小型NC旋盤には小型のCNC旋盤が含まれていることも多いため注意が必要です。

小型NC旋盤の選び方

小型NC旋盤は旋盤の中では安価であり、設置スペースやユーティリティなどにおいて大型の旋盤機械よりも有利な点が数多くあります。その一方で、大型の旋盤よりも厳しい制約もあります。小型NC旋盤を選択する際には以下の点に注意が必要です。

  1. 加工できるワークサイズが大型NC旋盤と比較して小さくなる。
  2. 大型のNC旋盤と比較すると、加工できるワークの材質や硬さに制約を受けやすい。
  3. 高スループットや大量生産にはあまり向いていない。

また、小型NC旋盤には小型CNC旋盤も含めてさまざまなユーザーインタフェースがあるため、用途に合った使いやすい機械を選択するのが良いでしょう。

多軸ボール盤

多軸ボール盤とは

多軸ボール盤

多軸ボール盤とは、複数のドリルビットを同時に使用できる工作機械の1種です。

一般的な卓上ボール盤は、1本のドリルビットのみで加工しますが、多軸ボール盤は2本以上のドリルビットを使って同時に加工できることが利点です。多軸ボール盤は複数のドリルビットで同時に加工できるため生産性が向上し、また複数のドリルビットを使用することで、複雑な形状の穴や面を効率的に加工できます。

ただし、多軸ボール盤での加工は単純な加工に比べて操作が複雑で、加工物の寸法精度や位置精度にも注意が必要です。

多軸ボール盤の使用用途

以下は多軸ボール盤の代表的な使用用途の一部です。

  • 穴加工
    時計の歯車やピン、人工関節、エンジン部品など
  • 切削加工
    金属部品の切削、プラスチック部品の切削など
  • 彫刻加工
    家具製造、宝石や貴金属の彫刻やデザインの加工など
  • フライス加工
    電子基板の溝の切削や精密な穴加工など
  • 研削加工
    時計やベアリングなどの製造など

多軸ボール盤の原理

多軸ボール盤による穴の切削過程は以下のようになります。

1. 材料の固定

クランプやバイスなどを使用して、切削する材料を多軸ボール盤のテーブルに固定します。固定が不十分な場合、切削中に材料がずれたり振動したりする可能性があるので注意が必要です。

2. 切削工具の選択

使用する切削工具は、切削する材料と加工する穴のサイズと形状に応じて選択されます。ドリルビット、エンドミル、リーマなどが一般的な切削工具です。

3. 切削条件の設定

材料の種類や硬さ、切削工具の特性などに基づいて、切削速度や送り速度、切削深さなどの切削条件を設定します。適切な切削条件を設定することにより、切削効率や加工品質を最適化できます。

4. 穴の位置決め

多軸ボール盤は、複数の軸を制御できるため、穴の位置が正確に配置できます。事前に設定された座標系や工具補正などを使用して位置決めします。

5. 切削操作

切削工具が材料に接触した後、多軸ボール盤は切削工具を回転させながら下降させます。切削工具は回転しながら材料を削り取ります。加工時には、冷却液や潤滑剤を適宜使用して過熱や摩擦を軽減することが必要です。

6. 終了と仕上げ

必要な深さや穴の形状が完成したら、切削操作を終了します。穴が正確な寸法と位置になっているかを確認し、必要に応じて面取りやバリ取りをして仕上げます。

多軸ボール盤の構造

多軸ボール盤の構造は、主に以下のような要素で構成されています。

1. モーター

モーターは、多軸ボール盤の複数の回転軸を駆動するための動力源として使用されます。一般的には、電動モーターが使用されます。

2. 回転軸

モーターによって駆動される回転軸が複数配置されています。回転軸は精密な加工が施された軸で、異なる径や形状のものがあります。

3. ベルト

モーターと回転軸をつなぐためのベルトが使用されます。ベルトは様々なサイズがあり、回転数やトルクの変化に対応可能です。

4. テーブル

テーブルには、異なる形状や大きさの材料の取り付けが可能です。クランプやバイス、固定ネジなどが使用して材料を固定します。

5. 切削工具

切削工具は多軸ボール盤の回転軸に取り付けられます。切削工具により多様な切削ができます。

6. 制御装置

多軸ボール盤には、モーターや切削工具の回転数を調整する制御装置があります。制御装置は、操作パネルやコンピューターなどで操作できます。

多軸ボール盤のその他情報

1. 多軸ボール盤の長所

多軸ボール盤は、複数のスピンドルを備えた工作機械です。これにより同時に複数の穴をあけられます。多軸ボール盤の最大の長所は、高い作業効率です。一度に複数の穴をあけられるため、作業時間を短縮可能で、特に大量生産や連続加工の場合には生産性が向上します。

また、多軸ボール盤は、複数の穴を正確に位置決めすることができます。複数のスピンドルを均等に配置することで穴の位置や間隔を一貫して保てるため、精度の高い加工が可能です。

さらに、異なるサイズや形状のドリルビットを使用できるので、多様な穴の加工に対応しています。それぞれのスピンドルに適切なドリルビットを選択することで、材料や加工要件に応じた穴をあけられます。

2. 多軸ボール盤の短所

多軸ボール盤は機械自体のサイズが大きくなり、複数のスピンドルを搭載しているため、単軸ボール盤よりも大きいスペースが必要です。小規模な作業場や限られたスペースでは、利用が制約される場合があります。

また、多軸ボール盤の操作や調整は複雑です。複数のスピンドルを同時に制御し、均等に加工するためには緻密な調整が必要です。スピンドルの位置や加工条件を均等に調整することが重要であり、操作の難易度が高くなります。

さらに、スピンドル同士が固定されており、独立して操作できません。そのため、複雑な形状や角度での穴加工には限定されます。また、スピンドル同士の位置関係や干渉によって、一部の穴が加工できない場合もあり、加工対象によっては、他の種類の工作機械の方がより適している場合もあります。

多軸ボール盤は、複数のスピンドルや関連部品、制御システムなどが必要です。それに伴う費用も増え、複数のスピンドルや部品のメンテナンスや修理も必要となり、コストや手間がかかることも考慮しなければなりません。

3. 多軸ボール盤による生産性の向上

多軸ボール盤は、自動化された生産ラインに組み込まれることで、生産性を向上できます。自動化された生産ラインは、複数の機械を連携させ、製品の加工や組み立てや検査などを自動化するので、従来の手作業に比べて生産性と品質を高められることがメリットです。

多軸ボール盤が自動化された生産ラインに組み込まれる場合、機械に自動化機能を搭載する必要があります。例えば、切削工具の交換やテーブルの移動を自動化することで、作業者が手作業で行う必要がなくなり、生産ラインの生産性向上につながります。

自動化された生産ラインに組み込まれた多軸ボール盤は、コンピュータによって制御されることが一般的です。コンピュータは、加工条件や切削工具の交換タイミングなどを管理し、自動的に加工できます。また、コンピューターによって加工結果の検査や不良品の自動分別なども可能です。

窒素発生装置

窒素発生装置とは

窒素発生装置はガス発生装置の一つです。空気の構成成分は窒素約78%、酸素約21%、その他アルゴンや二酸化炭素が1%となります。その空気から窒素のみを取り出します。窒素は不活性ガスとも呼ばれ、酸素雰囲気を排除したいときに使われます。

工場などではボンベや液化窒素、ローリーなどいろいろな搬入方法がありますが、使用量が多い場合は自社にて窒素発生装置で窒素を生成します。従来の窒素ガスと比較しても20~70%のコストダウンが見込めると言われています。

窒素発生装置の使用用途

窒素は主に酸素が少ない空間を作り出すために使用されます。例えば化学反応などで酸素が存在すると酸化して試薬が不活性になってしまい反応がうまくいかないケースも多々あります。そんな時、窒素により酸素を追い出します。これを窒素パージと呼びます。

窒素は生成方法によりPSA式、膜式、深冷式の3種類に分類されます。PSA式は短時間低コストで窒素を手に入れることができますので、一般的に用いられています。より純度が高い窒素が必要であれば深冷式となります。

窒素発生装置の原理

SPA式は吸着式とも呼ばれます。吸着材を用いて加圧下にて窒素を選択的に吸着します。吸着材を減圧下にさらすことで吸着した窒素を脱着させることで窒素を得ることができます。吸着初期には吸着速度が大きいので、その初期の短時間(1~2分)で窒素・酸素を分離します。この方法は酸素でも同様の操作で得ることができます。こうして加圧や減圧を繰り返していることから、PSA(圧力スイング吸着:Pressure Swing Adsorption)と呼ばれます。

膜式は中空糸膜による濾過作用を利用します。空気を高圧にして膜のモジュールに流し込むことで窒素の膜通過特性により高純度の窒素を得ることができます。比較的低純度の窒素が必要な場合に用いられます。

深冷式は空気を冷却して生成します。窒素の沸点は-195.8℃、酸素の沸点は-183℃、アルゴンの沸点は-185.7℃です。これら沸点の違いから高純度の窒素を得ます。つまり非常に低温ではありますが、これは蒸留操作に当たります。高純度且つ大容量の窒素が必要な際に利用します。

参考文献
https://shinko-airtech.com/equip_n2_psa.html
https://shinko-airtech.com/equip.html
https://www.fukuhara-net.co.jp/product_n2_psa.html

超硬エンドミル

超硬エンドミルとは

超硬エンドミル

超硬エンドミルとは、工作機械で使用する切削工具の一種です。

非常に硬くて耐摩耗性に優れた超硬質材料で作られています。超硬エンドミルは金属や非金属の材料を加工する際に使用され、高い精度で加工できます。超硬エンドミルの主な材質は、カーバイドやコバルト合金、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素 (CBN) などの超硬質材料です。

これらの素材は通常の鋼や切削工具よりもはるかに硬く、耐摩耗性や耐熱性に優れています。超硬エンドミルの切削刃は、一般的に高速回転で切り込みます。この高速回転は、高速度加工のために非常に重要です。

超硬エンドミルの使用用途

以下は超硬エンドミルの代表的な使用用途の一部です。

1. 金属加工

鋼材の切削、アルミニウムの溝切り、銅や真鍮の加工など

2. 金型加工

プラスチック成形用の金型やプレス金型の加工など

3. 造船・船舶部品製造

船体や舵の形状加工、ネジ穴の開け方向、船舶部品の切削など

4. 自動車産業

エンジン部品の切削、歯車の切削、車体部品の穴あけなど

5. 航空産業

航空機のフレーム加工、エンジン部品の切削など

6. 電子機器製造

基板の穴あけや加工、マイクロチップの製造など

7. 医療機器製造

人工関節や歯科インプラントの形状加工、医療用器具の穴あけなど

超硬エンドミルの原理

超硬エンドミルは、切削工具の一種であり、フライス盤やCNCマシンなどの工作機械で使用されます。超硬エンドミルが切削する一般的な過程は以下の通りです。

1. 位置調整

超硬エンドミルを工作機械のスピンドルに取り付けます。切削する材料を正確に配置し、超硬エンドミルの先端を材料の表面に適切な位置に配置します。

2. 切削条件の設定

切削する前に切削条件 (回転数や送り速度、切削深さなど) を設定します。材料の性質や切削目的に応じて、最適な切削条件を選択します。

3. 切削開始

切削条件を設定したら超硬エンドミルを回転させます。エンドミルは材料の表面に接触し、切削が始まります。

4. 切削液の使用

切削過程中に切削液が使用されることがあります。切削液は冷却や潤滑の目的で使用され、切削時に発生する熱や摩擦を軽減します。切削液は加工物や切削工具に供給され、品質の向上と切削工具の寿命の延長に効果的です。

5. 切削とチップの排出

超硬エンドミルの刃部分が材料を削り取ります。切削時にはチップ (切りくず) が発生しますが、エンドミルの刃部分の形状の効果でチップは効果的に排出され、切削面が形成されます。

6. 切削領域の移動

切削が進むにつれて、超硬エンドミルと工作機械の制御システムによって加工領域を移動させて切削します。超硬エンドミルは、直線的な移動や回転、曲線的な軌道など様々な動きができ、必要な切削が完了するまで、超硬エンドミルの移動と切削が継続されます。

7. 切削終了

切削が終わったら,切削過程で発生したチップや削りくずを除去します。

8. 切削結果の確認

加工物の寸法や形状、表面状態などを確認します。必要に応じて修正・仕上げ作業を行います。

9. エンドミルのメンテナンス

超硬エンドミルを清掃したり研磨したりします。また残り寿命を確認したり、必要に応じて交換したりします。

超硬エンドミルの種類

超硬エンドミルにはさまざまな形状と特性を持つ種類があり、以下に代表的な超硬エンドミルの種類を挙げます。メーカーによって名称が異なる場合があります。

1. フラットエンドミル(平刃エンドミル)

底面が平らな刃先を持ち、直線的な切削を行うための一般的なエンドミルです。一般的な加工や溝切りなどに使用されます。

2. ボールエンドミル

球状の刃先を持ち、曲線的な切削や凹凸面の加工に使用されます。円形の切削面を作成したり、曲線の形状を形成したりするのに適しています。

3. コーナーラジアスエンドミル

刃先に丸み (コーナーラジアス) を持ち、角やエッジのある加工に使用されます。フラットエンドミルよりも滑らかな曲線を形成できるため、表面仕上げや複雑な形状の加工に適しています。

4. Tスロットエンドミル

T字型の刃先を持ち、Tスロットや溝などを形成するために使用されます。工作機械のテーブル上でボルトやナットを固定するためのスロットを作成するのに適しています。

5. その他

フェースミル、ホールミル (ドリルエンドミル) などがあります。

超硬エンドミルの特徴

1. 長所

超硬エンドミルの主な長所は「高い硬度と耐摩耗性」、「優れた切削性能」、「多様な材料に適用」、「高い精度と品質」、「長寿命と経済性」です。以下にて説明します。

高い硬度と耐摩耗性
超硬エンドミルは非常に硬度が高い工具であり、硬い材料や難削材料を効果的に切削できます。また耐摩耗性も高いため長時間の使用にも耐えられ、切削性能を維持できます。

優れた切削性能
超硬エンドミルは鋭い切削刃を持っていて切削性能が優れているため、高速かつ精密な切削が可能であり生産性が高くなります。また微細な加工や複雑な形状の切削にも対応できます。

多様な材料に適用
超硬エンドミルは、金属やプラスチック、セラミックスなど、様々な硬度や特性を持つ材料を加工できます。また異なる切削条件や刃先の選択により、材料に最適な切削性能を発揮できます。

高い精度と品質
超硬エンドミルは高い剛性を持っていて加工時の振動や歪みを最小限に抑えられるため、精密な加工が可能であり加工品質が高くなります。また切削時の切りくずが少ないため、加工表面の品質が向上して滑らかで精密な仕上がりになります。

長寿命と経済性
超硬エンドミルは耐摩耗性に優れていて寿命が長くなるため、交換頻度が少ないことが利点です。作業を中断する回数が減り、また交換用の超硬エンドミルを購入する頻度が減るためコストの削減につながります。また高い切削性能と耐久性により、生産性が向上し経済的な加工が可能です。

2. 短所

超硬エンドミルの主な短所は「高コスト」、「脆性」、「切削速度の制限」、「加工できない材料」、「切削液の必要性」です。以下にて説明します。

高コスト
超硬エンドミルは高度な材料と製造工程が必要であり、他の一般的な切削工具に比べて価格が高くなるため、初期投資や交換コストが高いことが短所です。

脆性
超硬エンドミルは非常に硬い材料であり、脆い性質を持っています。誤った使用や衝撃、過剰な負荷などが加わると、エンドミルの刃先が欠けたり破損したりする可能性があるため取り扱いには注意が必要です。

切削速度の制限
超硬エンドミルは高硬度材料を切削ができますが、切削速度が制限されることがあります。特に大径の切削や硬い材料の加工においては適切な切削速度を維持することが難しい場合があり、加工時間が増加する可能性があります。

加工できない材料
超硬エンドミルは多様な材料に対応できますが、非常に脆弱な材料や熱に敏感な材料に対しては、使用が制約される場合があります。これらの材料では、エンドミルの寿命や加工品質に悪影響を及ぼす可能性があります。

切削液の必要性
超硬エンドミルでの切削時には、切削液の使用が推奨されます。切削液は冷却や潤滑の役割を果たし、切削時の摩擦や熱を制御しますが、切削液を使用すると環境への影響を配慮する必要があり、その管理や廃棄物処理が必要となることが短所として挙げられます。

超硬エンドミルのその他情報

超硬エンドミルの刃先に使用される材質

一般的に超硬エンドミルの刃先材質には、タングステンカーバイド (Tungsten Carbide) とコバルト (Cobalt) から構成されるものが使用されます。

タングステンカーバイドは、タングステンと炭素の化合物であり、非常に硬い材料です。非常に高い硬度と耐久性を持ち、切削時の高い熱および摩耗にも耐えられます。しかしタングステンカーバイド自体はもろくて衝撃や振動に弱いため、刃先材質として単独では使用されず、コバルトなどの金属がバインダーとして使用されます。

コバルトはタングステンカーバイドと結合し、刃先を強固に保持するバインダーです。コバルトは硬くて摩耗に強い性質を持っており、タングステンカーバイドと組み合わせることで、エンドミルの刃先に必要な強度と耐久性が備わります。またコバルトはタングステンカーバイドと比較して比較的柔らかいため、切削時の衝撃や振動を吸収することも可能です。

タングステンカーバイドとコバルトの組み合わせにより、超硬エンドミルは高速での切削や硬い材料の削り取りに優れた性能を発揮します。刃先材質は、切削条件や材料の種類に合わせて選択され、例えば硬度の高い材料を切削する場合には、より硬いタングステンカーバイドの割合を増やすことが一般的です。また切削速度や切削力の要求に応じて、刃先材質の組成を調整することもあります。

さらに刃先の形状やコーティングも切削性能に影響を与えます。例えば刃先にチップ状の交換可能なカッターを使用すれば、刃先の磨耗が生じた場合には交換が容易です。また刃先に特殊なコーティングを施すことで、摩擦を低減し、切削時の熱や摩耗を軽減する効果があります。

超硬ドリル

超硬ドリルとは

超硬ドリル

超硬ドリルは、硬度が非常に高い人工的に作られたダイヤモンドやカーバイドなどの超硬質材料を使用して作られたドリルのことです。

超硬質材料は非常に高い耐摩耗性と耐久性を持ち、非常に硬く金属などの硬い材料を簡単に切削できます。これらの特性を利用して超硬ドリルは非常に硬い材料の加工に使用される工具です。

超硬ドリルは、通常旋盤フライス盤などの工作機械に取り付けられ、高速回転して材料を切削します。超硬ドリルは鉄やアルミニウムなどの一般的な材料から硬いセラミックスやグラファイトまで様々な材料を加工できます。

超硬ドリルの使用用途

超硬ドリルの主な使用用途は以下の通りです。

  1. 金属加工
    自動車部品の製造、航空機部品の製造、石油掘削装置の製造など

  2. セラミックス加工
    セラミックス製のベアリングや軸受、陶器や磁器の製造など

  3. ガラス加工
    ガラス管や光ファイバーの加工、ガラスの製造など

  4. 医療器具製造
    人工骨や歯科用インプラントなど

  5. 電子機器製造
    マイクロチップや半導体の製造など

超硬ドリルの種類

超硬ドリルには、いくつかの種類があります。以下はその一部です。

  1. PCDドリル
    PCDは超硬質材料の一種です。PCDは、炭素原子が結合した非常に硬い素材で、非常に高い耐摩耗性を持っています。

    PCDは、人工合成されたポリクリスタルダイヤモンド (Polycrystalline Diamond) の略称です。

  2. CBNドリル
    CBNは超硬質材料の一種です。CBNはダイヤモンドと同様に非常に硬く高い耐摩耗性を持っていて、熱に強いという特性があります。CBNドリルは、鉄やステンレスなどの難削材料の切削に適しています。

    CBNは、立方晶窒化ホウ素 (Cubic Boron Nitride) の略称です。

  3. マイクロドリル
    マイクロドリルは非常に小さなドリルで、一般的に直径が0.1mm以下の超硬質材料を使って作られています。マイクロドリルは、半導体や光ファイバーの製造など、精密な加工が必要な分野で使用されます。

超硬ドリルの原理

超硬ドリルが切削する過程は以下のようになります。

  1. ドリルの挿入
    超硬ドリルは、適切な工具 (ドリルチャックなど) に取り付けられ、切削する対象物の表面に対して垂直に配置します。ドリルの中心軸を、対象物の切削部分の中心軸に合わせることが重要です。

  2. 回転と進行
    超硬ドリルを回転させながら進行させます。回転によってドリルの先端が対象物の表面に接触し、切削が始まると同時にドリルは対象物に対して進行します。進行速度は加工物の材料や切削条件に合わせて適切に調整することが必要です。

  3. 切削とチップの排出
    超硬ドリルの先端は、対象物の表面を切削しながら進んでいきます。切削時にはチップ (切りくず) が発生しますが、ドリルの螺旋状の刃や切削エッジによってチップは効果的に排出されます。

  4. 穴の形成と仕上げ
    超硬ドリルが対象物を切削しながら進行することで、徐々に穴が形成されます。進行と回転の繰り返しによって穴が拡大していきます。穴が完成したら寸法や形状を測定したり仕上げ作業をしたりすることが必要です。

超硬ドリルの特徴

長所

超硬ドリルの主な長所は「高い硬度と耐摩耗性」、「優れた切削性能」、「多様な材料に適用」、「高い精度と品質」、「長寿命と経済性」です。これらについて説明します。

高い硬度と耐摩耗性
超硬ドリルは人工的に合成されたダイヤモンドやカーバイドなどの超硬質材料から作られており、非常に高い硬度を持っているため、硬い材料や難削材料を効果的に切削できます。また超硬ドリルは耐摩耗性が高いため、長時間の使用においても耐久性があり切削性能を維持できることも利点です。

優れた切削性能
超硬ドリルは鋭い切削刃があるため切削性能が優れています。よって効率的かつ精密な切削が可能であり、高速回転による切削や微細な穴あけ加工など、高度な加工に対応可能です。

多様な材料に適用
超硬ドリルは多様な材料に対応でき、金属やセラミックス、ガラスなど様々な硬度と特性を持つ材料を加工できます。また切削条件の調整や刃先の選択により、異なる材料に対して最適な切削性能を発揮できることが長所です。

高い精度と品質
超硬ドリルは高い剛性を持ち、加工時の振動や歪みを最小限に抑えられるため、精密に加工できます。また超硬ドリルは切削時の切屑が少ないため、加工表面の品質が向上し、滑らかに仕上がります。

長寿命と経済性
超硬ドリルは耐摩耗性に優れているため交換頻度が少なくなり、作業の中断やコストの削減につながります。また高い切削性能と耐久性により生産性が向上し、経済的な加工が可能です。

短所

超硬ドリルの主な短所は「高コスト」、「脆性」、「回転方向の限定」、「加工速度の制限」、「加工できない材料」です。これらについて説明します。

高コスト
超硬ドリルは高度な材料と製造工程が必要であるため、製造コストが高くなります。超硬質材料や特殊な加工技術の使用により、超硬ドリルの価格は他のドリルより高くなります。

脆性
超硬ドリルは脆いため、誤った使用や衝撃や過剰な負荷などがあると、ドリルの先端が欠けたり破損したりする可能性があります。また刃先部分が非常に鋭利であるため、ケガや事故のリスクもあるので、取り扱いには注意が必要です。

回転方向の限定
超硬ドリルは一般的に正転方向 (回転方向) での切削に使用されますが、逆転方向 (逆回転) での切削には適していません。逆転切削が必要な場合、他のタイプの工具が必要になる場合があります。

加工速度の制限
超硬ドリルは高硬度材料に対して効果的な切削が可能ですが、一般的に切削速度が制約されることがあります。特に大径の穴あけや硬い材料の加工において、適切な切削速度を維持しづらい場合があり、加工時間が増加する可能性があります。

加工できない材料
超硬ドリルは多様な材料に対応できる一方で、非常に脆弱な材料や熱に敏感な材料に対しては、超硬ドリルの使用が制約される場合があります。

超硬ドリルのその他情報

超硬ドリルの切削時には、高速回転するドリルと材料との間に発生する熱を効果的に冷却することが必要です。切削によって発生する熱が加工品質に影響を与えるためです。また超硬材料は非常に硬いため、切削時にドリルに摩擦や熱が発生し、ドリルの寿命を縮めてしまうことがあります。

切削液は、これらの問題を解決するための手段の一つです。切削液は、水を主成分とする水溶性切削液、油を主成分とする無水型切削液、水と油を混合させた乳化型切削液などがあります。適切な切削液を選択することで、ドリルの寿命を延ばし、加工品質を向上できます。

水溶性切削液は、環境にやさしく切削液による汚染を抑えられことが利点です。一方、乳化型切削液は、水溶性切削液よりも高い潤滑性と冷却性を持っています。無水型切削液は、摩擦や熱に強く、ドリルの寿命を延ばせることが利点です。

直立ボール盤

直立ボール盤とは

直立ボール盤

直立ボール盤とは、材料に穴をあけるための工作機械の1種です。

主に金属や木材やプラスチックやセラミックなどの材料に使用されます。直立ボール盤は、基本的には垂直に立っているドリルを用いて穴をあけるため、工作物を固定するテーブルはドリルビットに対して垂直に配置されています。

直立ボール盤は、ドリルビットのサイズや形状を変えることで、異なるサイズや形状の穴をあけられることが利点です。また、ドリルビットを交換することで、金属用や木材用など材料に合わせた刃物を使用できます。直立ボール盤は、精度の高い加工に必要な機械です。

直立ボール盤の使用用途

以下は直立ボール盤の代表的な使用用途の一部です。

  • 穴あけ
    金属製の部品や家具の部品などの穴あけ
  • タップ
    金属板やアルミ板などのネジ穴製作
  • 溝彫りや表面仕上げ
    切削や研磨による金属やプラスチックの部品の仕上げ
  • 仕上げ作業
    サンダーなどによる金属やプラスチックの部品の表面仕上げ
  • 超硬合金の切削
    超硬合金の穴あけや超硬合金の部品の切削など
  • 電子部品など微細な部品の加工
    電子回路基板上の微細な穴あけなど

直立ボール盤の原理

直立ボール盤による穴あけの過程は以下の通りです。

1. 材料の固定

材料をクランプやバイスなどを使用して、ボール盤のテーブルにしっかりと固定します。目的の穴の位置に合わせて材料の位置を調整します。

2. ドリルビットの取り付け

ドリルビットをドリルチャックに取り付けて、しっかりと固定します。穴のサイズや材料の種類に応じてドリルビットを選択します。

3. 加工条件の設定

加工する材料とドリルビットに適した回転速度と送り速度を設定します。適切な加工条件を設定することで、効率良く正確に穴あけできます。

4. 穴あけの開始

加工条件を設定したら、ボール盤のモーターを起動しスピンドルを回転させた後、材料にドリルビットを垂直に当て、軽い圧力をかけながらゆっくりと進めていきます。ドリルビットの尖った部分が材料に切り込みを入れ、回転しながら穴をあけていきます。

5. 穴の加工と深さの確認

ドリルビットを少しずつ進めながら穴を加工していきます。定期的に進行状況や穴の深さを確認するために、穴の深さを示す目盛りや目視で確認することが重要です。

6. 穴あけの終了

穴あけ作業が終了したら、ボール盤のモーターを停止させます。ドリルビットをゆっくりと引き上げながら材料から取り外します。ドリルビットを引き上げる際には、ボール盤の移動ハンドルやクランクを使用して、ドリルビットを正確な位置まで移動させます。

7. 材料の取り外し

穴あけが完了した材料をボール盤から取り外します。クランプやバイスを緩め、材料を慎重に取り扱いながら取り外します。材料を取り外す際には、怪我や破損を防ぐために注意が必要です。

直立ボール盤の構造

1. ベース

ベースは頑丈な鋳造鉄や鋼材で作られており、その重さと剛性によってボール盤が安定して固定されます。これにより、ボール盤が作業中にぶれたり揺れたりすることなく正確な加工が可能です。

2. スピンドル

ドリルビットを保持して回転させる部品であり、上下に動かせる機構を備えています。スピンドルはモーターによって回転し、材料に対して垂直方向に動かせます。

3. ドリルビット

スピンドルに取り付けられる回転する刃物であり、材料に穴をあけるために使用されます。ドリルビットには異なるサイズや形状があり、材料に合わせたものを選択することが必要です。

4. ドリルチャック

ドリルビットをスピンドルに固定するための部品で、異なるサイズのドリルビットに対応できるように調整可能です。

5. テーブル

材料を固定するための平らな面で、ドリルビットの軸とは垂直な位置関係です。テーブルは上下左右に動かせるため材料を正確に位置決めできます。

6. ベルトプーリー

モーターの回転力をスピンドルに伝える部品であり、ベルトを巻き付けたプーリーを備えています。ベルトがプーリーの周りを回転し、スピンドルを駆動します。

7. モーター

スピンドルを回転させるための電動モーターであり、回転数を調整可能です。一般的には電気モーターが使用され、モーターの性能やパワーによって、ボール盤の加工能力や作業速度が決まります。

直立ボール盤の種類

1. 卓上ボール盤

卓上ボール盤は、卓上に設置される小型のボール盤です。一般的に、小さな部品や軽量物を加工するために使用されます。卓上ボール盤はコンパクトで使いやすく、簡単な穴あけや軽作業に適しています。

2. 床置き型ボール盤

床置き型ボール盤は、床に固定された大型のボール盤です。広範なサイズや重量の部品を加工するために使用されます。

床置き型ボール盤はより高いパワーと耐久性を持ち、工業分野で使用されることが一般的です。大型の金属製部品や木材の加工など、重い作業物に対応する能力があります。

3. ラジアルボール盤

ドリルヘッドがラジアル (水平方向) に移動できる特徴を持つボール盤です。複雑な位置や角度での穴加工に適していて、部品を固定したまま主軸を動かせるため、より柔軟な作業が可能です。ラジアルボール盤は特に大型の部品や長い部品の加工に向いており、工作機械や車両の修理、鉄工所などで使用されます。

4. 多機能ボール盤

多機能ボール盤は、複数の作業を行える汎用性の高いボール盤です。例えば、穴あけだけでなくフライス盤やボール盤の組み合わせとして使用できます。多機能ボール盤は、1つの機械で様々な作業をこなせるため生産性を向上できます。

5. CNCボール盤

CNCボール盤は、コンピュータ数値制御 (CNC) システムを備えたボール盤です。CNCシステムにより、事前にプログラムされた指示に基づいて自動的に加工できます。CNCボール盤は高度な制御と精密な加工能力を持ち、複雑な形状や高度な加工要件に対応できます。

直立ボール盤のその他情報

1. 直立ボール盤の長所

直立ボール盤の長所は、穴加工で高い精度が得られることです。ドリルビットを垂直に動かせるため、穴の深さや直径を正確に設定できます。また、適切なドリルビットを選択することで、様々な材料に対して高品質な穴をあけられます。

操作方法も比較的簡単であり、初心者でも取り扱いやすいことも長所の1つです。多機能型の直立ボール盤には、穴加工以外の作業にも使用できるアタッチメントが付属していることがあります。これにより同じ機械で研磨や研削、切削なども可能になり、作業効率の向上につながります。

多機能型直立ボール盤に研磨や研削、切削など穴加工以外の作業にも使用できるアタッチメントが付属してい場合は、同じ機械で様々な作業が対応可能になります。

2. 直立ボール盤の短所

直立ボール盤は比較的大型の機械であり、スペースを取ることがありるため、作業場所に余裕がない場合や移動が必要な場合には制約が生じる可能性があります。また、直立ボール盤は主に穴加工に使用されるので、他の種類の加工作業には適していない場合があることが短所です。

さらに、一度に加工できる穴の数に制限があり、大量の穴加工が必要な場合には時間がかかることも多いです。直立ボール盤は、精密な角度や形状の加工には向いていません。高度な精度や複雑な形状が必要な場合には、他の加工機械や方法が適しています。

3. 直立ボール盤の駆動方式

ベルトドライブ式
ベルトドライブ式の直立ボール盤では、モーターの回転力がベルトを介してスピンドルに伝えられます。モーターとスピンドルの間に複数のプーリーが配置されており、異なるサイズのプーリーを組み合わせることで回転速度の変更が可能です。

ギアドライブ式
ギアドライブ式の直立ボール盤では、モーターの回転力がギア機構を介してスピンドルに伝えられます。ギア機構によって回転速度が変更され、高いトルクや精密な制御が可能です。

ベルトドライブ式とギアドライブ式の直立ボール盤は、それぞれ異なる特徴を持っています。どちらが適しているかは、加工する材料や加工の要件、作業環境などによって異なります。加工条件や作業ニーズに合わせて適切な駆動方式を選択することが重要です。

耐溶剤手袋

耐溶剤手袋とは耐溶剤手袋

耐溶剤手袋 (英: Chemical-resistant gloves / Solvent-resistant gloves) は耐酸や耐アルカリなどの化学薬品耐性を有し、防護性能の高い手を保護するための手袋です。

ケトン類や塩類、洗剤、アルコールなどさまざまな薬品から手を守る事が出来ます。使い捨てタイプと何度も繰り返し使うタイプがありますが、一般的には繰り返し使うタイプが多いです。

多様な厚さの手袋があり、厚い手袋ほど耐性は強いですが、細かい作業が難しくなります。素材により耐久性、耐摩耗性、化学薬品耐性が異なり、厚さも様々なので、使用用途や作業内容により適切なものを選ぶ必要があります。

耐溶剤手袋の使用用途

化学、電子製品、航空宇宙、自動車工業、生命科学、機械、装置、金属製作、リサイクルや廃棄物処理、トランジスタや半導体製造など様々な分野で使用されています。具体的例には以下の通りです。

  • 航空宇宙の装備や部品の取り扱い
  • スプレーガンやロボットを含む塗装道具の取り扱い
  • 予期せぬ漏洩、流出物処理
  • 機器の清掃及びメンテナンス
  •  装着、解体、組立作業
  • 石油化学製品の加工および生産
  • サンプル採取、多様な実験及びテスト
  • 配送作業
  • ガラス、金属エッチング、めっき、染色、化学工場等の薬品の取り扱い

耐溶剤手袋の原理

耐溶剤手袋に主に使われる素材には天然ゴムニトリルゴム、クロロスルフォン化ポリエチレン、ポリウレタンなどがあります。

このような素材で作られた手袋はアンモニア硫酸硝酸塩酸リン酸 など様々な アルカリ、酸類の化学薬品に対する耐透過性試験とケトン類、エーテル類、塩素系溶剤類、アルコール類、油脂類 などの有機溶剤、油類に対する膨潤率試験によりその性能を評価します。

耐透過性試験は結果を3段階に、膨潤率試験は4段階に評価し、製品の性能を表します。

耐溶剤手袋のその他情報

耐溶剤手袋の素材別特徴

1. 天然ゴム
耐油、耐溶剤性とフィット感に優れた手袋で精密な作業が可能です。

2. ニトリルゴム
手に正確に密着し、細かい作業が可能で、Tensionが少ないため、長く着用しても手の疲れが少ないです。特に、静電気、ホコリ、イオン制御性能に優れ、電子·半導体産業や化学薬品処理などの作業に適しています。

ニトリルは天然ゴムと混合剤としても使用されており、燃料油、潤滑油、酸、など化学物質に抵抗性の高い耐化学的手袋で滑り防止の為にダイヤモンド表面処理も可能です。 主に石油化学、機械組立、航空宇宙産業、化学産業、産業用清掃、
重装備組立、有害化学処理などの用途に使用されています。

3. クロロスルホン化ポリエチレン
耐老化性、 耐オゾン性、耐候性、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、耐酸・耐アルカリ性は優れていますが、有機溶剤に対する耐油性は弱いです。

4. ポリウレタン
耐摩耗性があり、柔軟性も優れ、作業しやすい耐溶剤手袋で、機械部品の組立、農業·園芸、DIY、果実水の採取·選別、包装·配送などに使用されます。他に裏地をコットン素材にして着け心地を良くしたものもあります。

参考文献
https://www.hanakigum.co.jp/product/proper.php
https://fnkprddata.blob.core.windows.net/domestic/data/datasheet/HFP/93260060.pdf

精密ピンセット

精密ピンセットとは

精密ピンセット (英: Precision Tweezers) とは、先端精度に優れ、部品や小物を摘み取るなど緻密な作業には欠かせないものです。

分解、修理など細かい作業のために使われています。先端が精密に作られた矢印の形をしたピンセットでつまみ上げることが可能で、非常に小さい物体でもダメージなくハンドリングできます。

人間工学的に正確に持ち上げることができるように計算した角度、用途別に多様に作られた先端部の模様、そして静電気によって破損する恐れのある敏感な電子機器のために保護コーティングされているピンセットまで、用途に合わせて素材や模様などを考慮して選択することが重要です。

精密ピンセットの使用用途

精密ピンセットは、指だけでは作業が難しい精密部品を扱うさまざまな現場で使用されています。主に精密機器の組立、医療現場、園芸、料理、模型作り、工作や手芸といった伝統工芸工房、金属加工、電子製品の部品組立などの現場で使用されることが多いです。

使用例は以下の通りです。

  • 生体組織やガーゼをつまんだり、刺抜きや毛抜きをする医療現場
  • クラフト工作や手芸のつまみ細工
  • 小骨取りや脇芽の摘心
  • 繊細な昆虫の羽根、展翅などの研究
  • 接着や微細なゴミの除去などのデリケートな作業
  • 趣味の模型作り

精密ピンセットの特徴

精密ピンセットは、2つ先端を持ったV字の形状の物が一般的で、力を加えることで先端が閉じる仕組みです。また、精密ピンセットには、逆作用タイプのものあり、その名の通り力を加えることで、先端が開くようになっています。

精密ピンセットは、形状や使用されている素材、加工方法など、細かな作業を行なうために必要な工夫が多く施されています。

精密ピンセットの選び方

精密ピンセットを選択する際は、作業内容に適したピンセットを選択することが重要です。

1. 形状

ストレートタイプ
腕部分が直線的に伸びており、先端がまっすぐに尖った形状をしています。医療現場から家庭での工作、小骨取りなど多くの場面で使用することができるため、自宅に1本あるととても便利です。

平型タイプ
先端が平型の形状をしており、ホビーやクラフト、精密作業まで幅広く使用することができます。先端が平らになっているため、力を入れすぎても薄くてデリケートな物を傷つけません。

ツル首タイプ
先端部分が鋭利で湾曲しており、真上から見ても手元が見えやすいため、時計の修理や模型作りなど、繊細な作業に使用されます。ツル首タイプは、先端部分を正確な位置に配置する場合や、視野が制限された中での作業時に適しています。

逆作用タイプ
逆作用タイプは、通常のピンセットとは逆で、持ち手をつまむと先端が開き、離すと先端が閉じる仕組みです。手に力を入れ続けなくてもパーツを保持することができるため、はんだ付け作業などで使用されます。

2. 素材

ステンレス製
ステンレス製のピンセットは耐久性がありサビにくいのが大きな特徴です。また、熱にも強く、先端を熱処理することも可能なため、医療現場でも使用されています。

セラミック製
セラミック製のピンセットは、耐熱性、耐薬品性に優れ、硬度もステンレスより高いのが特徴です。また、非導電性であるため感電の心配がないため、電子部品の操作などに適しています。

プラスチック製
プラスチック製ピンセットは、比較的安価で、手にフィットしやすいため長時間の作業に適しています。ただし、耐久性が低く、熱に弱いというデメリットがあります。

3. 噛み合わせ

繊細な作業をするうえで、噛み合わせは非常に重要なポイントです。刃先が正しく噛み合っていない場合、つまんだ部品を落下させたり傷をつけてしまう恐れがあります。

安価な製品には、噛み合わせの精度が低い場合があるため、購入する前に刃先の噛み合わせが正確であるかどうかを確認することが重要です。

4. 滑り止め加工の有無

精密ピンセットは、持ち手部分に凹凸や穴などの滑り止め加工が施された製品があります。滑り止め加工があれば、濡れた手で使用しても滑りにくいため、スムーズに作業にすることができます。

手に汗をかきやすい場合や、細かい作業を行なう場合は、滑り止め加工のある精密ピンセットがおすすめです。

熱風乾燥炉

熱風乾燥炉とは

熱風乾燥炉 (英: Hot Air Drying Oven / Drying Machine ) とは、燃料をバーナーで燃焼させ、熱気を炉内に送り込んで対象物を乾燥させる装置です。

熱風乾燥炉は高温の空気やガスを使用するため、乾燥速度が比較的速く、効率的に乾燥できます。これにより、製品や物質の乾燥時間を短縮可能です。

ただし、高温の空気や燃焼ガスを使用するため、火災の危険性があります。燃えやすい物質や可燃性のガスを熱風乾燥炉内に入れないように注意が必要です。

ガスや灯油などを熱源として使用する場合は、排気ガスが多量に排出されます。したがって、熱料率も高く、取り扱いの簡単な電気式熱風乾燥もよく使用されます。

熱風乾燥炉の使用用途

熱風乾燥炉はさまざまな産業や分野で広く使用されています。以下は使用用途一例です。

1. 食品加工・製薬

果物や野菜などの農産物を乾燥させて保存性を向上させたり、食品加工の工程で使用される原料を乾燥させたりします。フルーツチップスや乾燥野菜、乾麺、乾燥したスパイスやハーブなどの製造が使用例です。

また、製薬業界では、薬剤や医薬品の乾燥が重要な工程です。熱風乾燥炉は、薬剤の乾燥や結晶化、凝固のために使用されます。乾燥によって薬剤の安定性が向上し、長期間の保存や取り扱いが可能です。

2. 工業

化学工業では、塗料やプラスチックなどの原料や製品の乾燥が必要な場合も多いです。これらの物質の水分を取り除いて乾燥させるために使用されます。

また、鉱業では、鉱石や鉱物を溶鉱炉に投入する前に乾燥させることが多いです。水分を溶鉱炉に投入すると、溶鉱炉内の熱を奪われるだけでなく、排気ガスも増加してしまいます。熱風乾燥炉を使用してあらかじめ鉱石や鉱物の水分を蒸発させ、取り扱いや処理の効率を向上させることが可能です。

セラミックス製造では、セラミックスの成形や焼成前に乾燥が行われます。熱風乾燥炉は、セラミックス製品の水分を取り除き、均一な品質や耐久性を確保するために使用されます。

3. 木材加工

木材加工業界では、木材の乾燥が重要な工程です。熱風乾燥炉は、木材の湿度を適切に制御し、乾燥させて安定性を向上させるために使用されます。これにより、木材の収縮やひび割れを防ぎ、製品の品質を向上させることができます。

熱風乾燥炉の原理

熱風乾燥炉は、高温の空気やガスを使用して湿った物質から水分を蒸発させます。また、電気加熱要素やバーナーなどの加熱装置を持ちます。この加熱装置は燃料を燃やす、または電気エネルギーを使用して熱風を生成するもので、生成された熱風は高温です。

熱風乾燥炉は送風装置も有し、加熱された空気やガスを熱風乾燥炉内に送り込みます。熱風は高速で送風され、物質や製品の周囲に広がります。熱風は物質の表面に接触し、水分を蒸発させることが可能です。

乾燥中に発生した水蒸気や排気ガスは、排気装置を通じて外部に排出されます。排気装置は乾燥炉内の湿気や有害なガスを除去します。

熱風乾燥炉の種類

熱風乾燥炉には直接乾燥方式と間接乾燥方式があります。

1. 直接乾燥式

直接乾燥式は加熱した燃焼ガスを直接循環ファンにより循環させる方法です。熱効率が高く、短時間で温度を上げることができるというメリットがあります。

2. 間接乾燥式

間接乾燥式はバーナーで熱交換器を加熱し、燃焼ガスとエアを熱交換させて炉内の温度を高めて循環させる方式です。この方法は炉内全体に熱が行き渡るため、乾燥ムラが少ない点が特徴です。また、不完全燃焼によるススが炉内に入る危険性もありません。

また、直接燃焼による火花が引火性成分に接触しないため、爆発の危険性が低いです。乾燥する際に窒素酸化物が塗料と反応しにくいため、塗膜物性を損なわないというメリットがあります。 ただし、熱効率が低く、温度を上昇させるのに長い時間がかかります。

参考文献
https://www.katsuraseiki.co.jp/?page_id=5579
http://www.p-bes.co.jp/product/kansou.html?yclid=YSS.EAIaIQobChMIvqj5utSh7QIVClRgCh3axgD2EAAYASAAEgJNAfD_BwE

急速凍結機

急速凍結機とは

急速凍結機

急速凍結機 (英: Quick freezer / Sharp freezer) とは、急速に冷凍を行う装置です。

最大氷結晶生成温度帯と呼ばれる水分が、水から氷に変化する「−1℃~−5℃」の温度帯を素早く突破する点が特徴として挙げられます。急速凍結機は主に食品の急速冷凍に用いられており、最大氷結晶生成温度帯を30分以内に通過させて、食品の状態を凍らせる前と近い状態を維持します。

そのため、食品業界や飲食業界から大きな期待が寄せられている状況です。

急速凍結機の使用用途

急速凍結機は、主に食品製造業者、水産仲買業者、菓子店、洋菓子店、和牛販売店、冷凍寿司製造業者の食品関係分野のほかに、遺伝子工学や生命科学分野などでも使用されています。

具体的には、食肉卸加工や加工、ハム・ソーセージのテンパリング、水産加工、水産卸、畜産加工、冷凍フルーツの保存などの食品加工用途です。また、病院食や介護食、スーパーやレストランなどで調理した食品を急速凍結機により凍結すれば冷凍状態で流通可能です。

また、果物や野菜類の凍結や飲料凍結、氷菓類凍結なども用途の1つとして挙げられます。急速凍結機では、平均して氷点下40℃〜氷点下110℃までコントロールできます。

機種によって扱いやすさや凍結スピードに差があるため、実験及び研究分野に利用する場合には、特に注意が必要です。凍らせたい試料に最適な機械を選ぶ必要があります。

急速凍結機の原理

一般的な冷凍方法では、組織内で大きな氷の結晶が生じて組織に損傷を与えます。一方、急速凍結機を使用して急速に冷凍すると組織内の水分が数秒以内で急速に中まで凍るため、氷の結晶が大きくなるのを防止し、凍結時の組織の損傷を防止できます。

また、細胞組織が破壊されていない冷凍食品は、解凍時のドリップの発生がおさえられるのも特徴です。ドリップは旨み成分よりなるため、解凍時これが生じない場合、みずみずしさや食感もキープして冷凍前と変わらない状態に戻すことができます。

なお、急速凍結方式には、冷たい風で凍らせるエアブラスト方式と低温液体で凍らせるリキッド方式 (液体凍結方式) があります。

1. エアブラスト方式

エアブラスト方式は、装置内に−30℃~−45℃ほどの低温の冷風を起こす方式です。エアブラスト方式では、冷気が同時に均一に伝わらないと、風の当たる所と届かない所の凍結速度に差が生じます。

そこで、急速凍結機のメーカー各社は風の当て方などを工夫しており、冷たい風で食品などの試料を包み込み一気に冷凍する方法が多く採用されています。

2. リキッド方式 (液体凍結方式)

リキッド方式は、−35℃以下に冷却されたアルコールで満たされたタンク内に試料を入れて凍結する方式です。最短約10秒程度で凍り始めるこの液体凍結方式は、熱伝導率が高いため細胞破壊を防止し、凍結前とほぼ同じ状態を維持できます。

急速凍結機のその他情報

1. 急速凍結機の価格

家庭用の急速凍結機の価格は、5万円〜20万円程度が相場です。一般的に、値段は庫内の容量に応じて決まります。一方、業務用の急速凍結機の価格は家庭用と違い、1時間あたりの凍結能力で決まります。

つまり、ユーザーが対象の食品を1時間あたり何kg冷凍させたいのかで装置を選択し、それに応じて価格が決まります。そのため、ユーザーの要求に応じて、急速凍結機の機種も価格も多種多様です。

業務用の急速凍結機は家庭用と異なり、1時間あたりの凍結能力で決まります。つまり、「対象の食品を何kg冷凍させたいのか」によって決まるということです。時間あたりの希望凍結量を基準に選択するため、急速凍結機の機種は豊富に揃っています。

最小モデルの急速凍結機は200万円程度で、多くのメーカーの基本的なモデルは1時間当たり10kgを凍結できるモデルで300万円ほどです。大きなモデルになると、1時間あたり数トンを凍結可能なものもあります。

2. 急速冷凍機導入時に適用する補助金

急速凍結機は数百万円する高価な装置です。将来的に利益を生むとしても、中小企業などでは簡単に導入できる装置ではありません。そこで、中小企業庁と独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する「ものづくり補助金」 (正式名称「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」) 制度を利用できます。

ものづくり補助金は、中小企業が経営革新のための設備投資などに使える補助金です。補助率は最大3分の2、補助額は最大1,000万円です。毎年希望者を募っており、支援を受けられれば、生産性の向上や導入費用の大幅削減など、事業の大きな助けになります。

参考文献
https://shunkashutou.com/quick-freeze/
https://kyusokureitoki.jp/
https://shunkashutou.com/quick-freezer/price/
https://portal.monodukuri-hojo.jp/
https://shunkashutou.com/hojokin-support/