整流用ダイオードとは
整流用ダイオードとは、電源回路において商用電源の交流を整流して、脈流を得るための半導体素子です。
一般的な小信号用ダイオードダイオードと比べると、大型で高電流が流せたり、高耐圧で丈夫な構造を有したりすることが特徴です。真空管である二極管もダイオードと言われ、かつて整流器として盛んに使われましたが、現在では特殊な用途に限定されるため、本稿では半導体素子に限定します。
整流用ダイオードの使用用途
整流用ダイオードは、商用電源から直流電源を作り出す電源装置の整流回路で必ず使用されます。スイッチングレギュレータなど高い周波数の交流を整流する回路では、逆回復時間が短いファーストリカバリダイオードや損失が少ないショットキーバリアダイオードが採用されますが、これらも整流用ダイオードの1種と考えられます。
整流用ダイオードの原理
整流用ダイオードは、P型の端子側をアノード、N型の端子側をカソードと言います。PN接合部近傍では、N型の電子とP型の正孔が打ち消しあい空乏層が生じます。アノード-カソード間に順電圧をかけると、P型部分に正孔、N型部分に電子が注入されるので、空乏層が狭まり、電流がP型からN型に流れるようになります。
逆電圧をかけると、P型部分に電子、N型部分に正孔を注入することになり、空乏層が拡大して電流は流れません。これは、ダイオードでは電流がP型からN型方向にのみ流れる特性を示しています。以上より、ダイオードのアノードからカソードに交流電圧を加えると、順方向のみ電流が流れ、逆方向では電流が流れません。これが整流の原理です。
なお、整流ダイオード単体では半波整流となり、交流の半周期だけ電流が出力されます。一方、ダイオードを4つ使ったブリッジ接続では全波整流となり、大きな電流が得られることやリップルが減少するなどのメリットがあるので、ブリッジ接続されたダイオードが一般的です。
整流用ダイオードの種類
整流用ダイオードには、主に3つの種類があります。
1. シリコンダイオード
最も流通されているPN接合型ダイオードの1つです。整流用ダイオードといえば、通常シリコンダイオードを指します。ゲルマニウムダイオードが使われていたこともありましたが、耐熱性に劣り大きな電流を流すことが難しいため、ほとんど使われなくなりました。
2. ファーストリカバリダイオード
PN接合のダイオードのN型半導体領域中に重金属拡散や電子線照射によりキャリアトラップを作り、スイッチング時にキャリアを捕える構造を持ったものです。逆回復時間を通常のダイオードに対して1/100から1/1,000に改善できますが、順方向電圧が大きくなる弊害があります。
高速動作が要求されるスイッチング電源では逆回復時間が短いダイオードが有利なので、ファーストリカバリダイオードが採用されます。
3. ショットキーバリアダイオード
金属と半導体を接合することによって生じる「ショットキー効果」を利用したものです。ショットキー効果によって一定以上の電圧がかからなければ電流が流れない障壁 (ショットキー障壁) ができるため、これを利用して整流作用を得ています。順方向電圧が小さくなりますので、ダイオードによる損失が小さくなりますが、耐圧が低いことが欠点です。
整流用ダイオードのその他情報
整流用ダイオードの使い方
商用電源から直流に変換する場合、次の2つの手順がありますが、各々に適した整流用ダイオードがあります。商用電源ラインに整流用ダイオードを直接接続して尖頭値が140V程度 (日本国内) 程度の脈流を取り出し、それを平滑回路で直流にした後、スイッチングレギュレータなどで所望の電圧に変換する方法があります。
この方法では機器全体の電源供給が一組の整流ダイオードに集中するので、一般に大電流/高耐圧のダイオードが採用されます。一方、商用電源から変圧器を介して所望の電圧付近まで電圧を変換し、その変圧器の出力に整流用ダイオードを接続して直流にする方法では、扱う電圧が低くなるため耐圧性能は緩くなり、電流は大きくなります。
特にダイオードの順方向電圧による損失がエネルギー効率に影響するので、ショットキーバリアダイオード等の順方向電圧が低いデバイスが有利です。
参考文献
https://www.shindengen.co.jp/products/semi/column/basic/diodes/general_rectifier_diode.html
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/e-learning/discrete/chap2/chap2-2.html
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/diodes/di_what3
https://hegtel.com/diode-sikumi.html
https://www.matsusada.co.jp/column/diode.html
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