サンプリング装置

サンプリング装置とは

サンプリング装置とは、液体・気体などの原料や製造された製品などを抽出するための装置です。

種類はさまざまで、ガス分析計と液体分析計に分類されたり、石炭サンプリング装置といった特定のサンプリングに特化した装置などもあります。また、バイオリアクタなどの本来工数がかかるサンプリングを自動で行うものもあります。

サンプリング装置の使用用途

産業分野におけるサンプリング装置の主な用途は、原料や製品が規格を満たしているか、製造工程に偏りがないかなどを調査するためのサンプル (試料) 作成です。例えば、溶銑、溶鋼においては作業環境が過酷なことから、測温・サンプリング装置の導入による自動化が図られます。

また、水質浄化施設の貯水槽やバイオ研究の培養槽などの成分調査にも使用されています。工業、医療、食品産業など多岐に渡る分野で利用されている装置です。

1. 石炭サンプリング装置

石炭サンプリング装置では、試料を採取し、成分や水分量を分析し品質を管理することが目的です。分析情報を元に契約条件に違反していないか調査します。

その他にも、輸入時の税関申請書類の作成、燃焼効率の分析などにも役立てられます。適切にサンプリングすることにより輸入コストの削減や二酸化炭素排出量の削減を見込むことが可能です。

2. 化学

化学分野の研究開発においては、反応追跡のため経時的にサンプリングを行うことが必要な場合があります。昼夜を問わずサンプリングが必要になる場合があるほか、手動サンプリングでは精度や再現性が十分でない場合もあります。

このような状況においては、化学反応解析のための自動サンプリング装置が有効です。自動サンプリング装置は、反応の確実な追跡や、操作の正確性の向上、信頼性の高いサンプルの作成などの目的で利用されています。

サンプリング装置の原理

サンプリング装置は、様々な分野で広く用いられていることから、形状等は様々ですが、どれも試料採取を目的としている点では共通しています。

1. 石炭のサンプリング装置

石炭のサンプリング装置は、搬送中のコンベヤから一部を採取し、破砕・縮分を繰り返して分析・測定に適した試料として調製します。

2. 排ガスサンプリング装置

排ガスのサンプリング装置のイメージ

図1. 排ガスのサンプリング装置のイメージ

自動車等の排ガスのサンプリング装置では、排ガスを大気で全量希釈し、希釈排ガスの一部をバッグに比例サンプリングしています。

3. 溶銑・溶鋼

溶銑・溶鋼のサンプリング方式の例

図2. 溶銑・溶鋼のサンプリング方式の例

溶銑、溶鋼の測温・サンプリング装置の代表的なサンプリング構造は以下の通りです。

  • 傾動昇降タイプ
    ガイドフレームを測定物側へ傾動する構造
  • 固定昇降タイプ
    昇降駆動ユニットでランスを昇降させる構造
  • 炉側旋回昇降タイプ
    電炉作業孔から測定し、測定後は待機側へ旋回する構造

4. 反応解析のための自動サンプリング装置

化学反応の反応解析のためのサンプリング装置のイメージ

図3. 化学反応の反応解析のためのサンプリング装置のイメージ

研究開発分野で使用される反応解析のための自動サンプリング装置は、予め設定されたスケジュールに沿って自動的にサンプルを採取する他、温度、pHなどの特定の条件下において自動的にサンプリングを開始することができます。採取した試料について反応のクエンチや希釈も行い、HPLCやNMR解析用のサンプルを自動で調製することが可能です。

サンプリング装置の種類

サンプリング装置は、様々な分野において多様な製品が製品化されています。産業用の代表的なものは、石炭サンプリング装置や溶銑・溶鋼などにおける自動測温・サンプリング装置、自動車などの排ガス用の定容量希釈サンプリング装置などです。

ボイラー水用のボイラーサンプリング装置、貯槽用サンプリング装置、粉体用のサンプリング装置などもあります。その他には、海水汚染度を調べる用途の海水サンプリング装置なども販売されている他、研究開発用の化学反応の解析用自動サンプリング装置や試験研究用の検体サンプリング装置などもあります。用途に合わせて適切なものを選択することが必要です。

サンプリング装置のその他情報

サンプリング装置の利点

サンプルを作成する際は、抽出元の母集団と偏りのないサンプルを作成することが重要になります。人の手でサンプルを抽出すると、先入観や思い込みで工程内の一部のみのサンプルを集めたり、仕上がりの良いものだけを集めたりする危険性があります。

信頼性の高いサンプルを抽出するためには、プロセスや条件を全て同じにして、毎回同じ手順でサンプリングすることが重要です。装置を使用することにより、プログラミングによる条件やプロセスの設定が可能になります。毎回同様の手順で同じ操作が行われるため信頼性の高いサンプルが抽出できます。

参考文献
https://www.jemima.or.jp/tech/1-01-05-03.html
https://www.dhowa-technos.co.jp/business/product/sampling.html
https://www.mt.com/jp/ja/home/products/L1_AutochemProducts/EasySampler.html

コンパクトスケール

コンパクトスケールとは

コンパクトスケール

コンパクトスケールとは、小型でコンパクトな計量器のことです。

計量した値をデジタルで表示する電磁式はかりの1種で、フォースバランス式はかりとも呼ばれます。比較的高精度 (電磁式や音叉式) のものを一般的に「電子天秤」、体重計など比較的精度の低いロードセル式のものは「電子はかり」をさします。

「天秤」と「はかり」の違いは精度で、比較的軽いものを計量するものを「天びん」、比較的重いものを測定するものを「はかり」と呼びます。

コンパクトスケールの使用用途

コンパクトスケールは、農業や飲食業、教育関連、貴金属関連など様々な業界で使用されています。

具体的な使用例は以下の通りです。

  • 肥料・農薬の計量
  • 食材・調味料の計量
  • 実験や調理実習
  • 貴金属の計量

コンパクトスケールの原理

フォースバランス方式と呼ばれる、てこの原理と電磁力を利用した方法で計量しています。対象物が上皿に置かれて重さがかかると、バランスをとるためにフォースコイル (電磁力を発生させるためにコイル内部に円形の永久磁石を入れたもの) に電磁力が生じます。

この発生した電気量を計測することで、対象物の重さを算出しデジタルパネルに表示します。

コンパクトスケールの特徴

コンパクトスケールは小さいため、スケール自体が軽く携帯性に優れているのが大きな特徴です。ポケットに収まるほどに小さいものもあり、持ち出して使用する場合に重宝します。

また、比較的安価な製品やデザイン性に優れたものあり、インテリア商品としても活用されます。デメリットは、コンパクトな形状なため、計量物をのせたときにデジタル表示が見えにくい場合があること、電池式のタイプは付属の電池がないと使えなくなってしまうことなどです。

コンパクトスケールは、メーカーにより特徴が異なるため、使用目的にあった製品を購入することが重要です。

コンパクトスケールの選び方

コンパクトスケールは、最大重量や最小表示単位などの機能が製品により異なるため、使用する場所や目的に合わせて、適切なものを選ぶ必要があります。

1. 最大重量

最大計量とは、計れる重さの上限値のことで、製品により計れる上限が異なります。一般的な家庭で使用するのであれば、1〜2kgまで計れるるものであれば十分ですが、重い容器を使用してかたと計量する場合は、3kg以上のものを用意する必要があります。

日常生活において計測するものをイメージし、使用目的にあった製品を選ぶことが大切です。

2. 最小表示単位

コンパクトスケールは、製品によりはかれる重量の最小値が異なり、一般的に0.1g・0.5g・1g単位ではかれるものに分かれています。

お菓子の材料や薬品など、重量が軽いものを計測する場合は、0.1g単位ではかれる製品を選ぶ必要があります。

3. ゼロ設定

ゼロ設定とは、風袋 (ふうたい) 引き機能とも呼ばれ、何かをのせた状態でogと表示できる機能です。

容器をのせた状態でゼロ設定を行なうと、計量物を乗せた状態で0gと表示されるため、計量物のみ計測することが可能です。また、追加で計量する場合も簡単に行えます。

4. 手入れのしやすさ

コンパクトスケールは、手入れのしやすさも重要な項目です。ステンレス製や強化ガラス製などであれば、汚れた場合も簡単に拭き掃除ができます。また、上皿を取り外して洗うことができる製品もあり、清潔に保つ様々な工夫が施されています。

5. 収納のしやすさ

使用しない時は、複数のコンパクトスケールを専用のケースに入れ、重ね置きができるものや、フックにかけることができるものがあります。購入する際は、収納方法もあわせて検討することで、作業スペースを有効に活用できます。

6. 防水機能

防水機能がついている製品であれば、汚れが付着したとした場合、水洗いすることができるため、衛生的に使用できます。

7. オプション機能

コンパクトスケールには、様々なオプション機能がついているのも大きな魅力です。自動で電源が切れるオートパワーオフ機能・同じ物の個数を数えるカウント機能などがついた製品があります。購入する際は、作業するうえで必要な機能を把握しておくことも大切です。

コアドリル

コアドリルとは

コアドリル

コアドリルとは、主に筒状の大きな穴をあけるために使用される機械のことです。

建築工事において、エアコンや水回り、電気の配線など、さまざまな設備の設置に必要な穴をあける際に欠かせない道具として、広く活用されています。コアドリルの刃先を変えることで異なる素材の穴あけが可能です。コンクリートや石膏ボード、モルタル、レンガなどの素材に対しても、適切な刃先を使用すれば、効率的かつ正確に穴あけができます。

通常のドリルでは加工が難しい大きな直径の穴あけもコアドリルを使えば容易に加工可能です。そのため、大きな穴あけが必要な作業では作業効率が良く、時間短縮にも繋がります。

コアドリルの使用用途

コアドリルは一般的に建築工事の現場で使われている工具です。例えば、エアコンの設置工事や水回りの配管工事、電気の配線工事において、通常のドリルでは加工できないような大きな直径の穴あけが容易に加工可能です。

また、強化プラスチックやサイディング、塩ビ管など、さまざまな素材に対応した刃先が用意されているため、それぞれの素材に適した刃先を選べます。さらに、硬くて補強の筋が入っているALCと呼ばれる素材にも対応しており、加工が難しい素材でも効率よく穴あけが可能です。

その他の用途では、例えば道路の舗装作業において、舗装されたアスファルト面に穴を開けるために使用できます。また、自動車や航空機の製造において、部品の加工作業にも使用されます。

コアドリルの原理

コアドリルはドリルビットとは異なり、素材を切り出すために刃物の周囲にある中空の円筒部分が使われます。この円筒部分を回転させながら、加工対象の素材を切り抜くことで、穴あけ加工が可能です。

コアドリルの円筒部分の中心には軸を持つ鋼製の筒状の刃物を使用していますが、この刃物は加工対象の素材に対して垂直に接するように配置され、素材の周囲を切り取るように切り進みます。また、乾式と湿式に分けられ、それぞれ原理が異なります

1. 乾式

乾式は水を使用しないで加工するため、排水できるかどうかに左右されず、養生の手間が省けるというメリットがありますが、湿式に比べて刃物の摩耗が激しく、加工速度が遅くなる傾向があります。

2. 湿式

湿式は水を使用することで素材を冷却し、高速加工が可能になります。また、刃物の摩耗も抑えられますが、排水する環境や養生が必要であり、給水する設備が必要です。

3. その他のコアドリル

コアドリルには、ALC用やマルチタイプ、振動用や複合材用などの種類があります。振動用は、硬くて難削な素材に使用し、加工した穴がきれいに仕上がる特徴があります。複合材用は、複数の材質を同時に穴あけすることができ、壁や木材に釘が入っていた場合でも穴をあけられるため、特に建築現場での加工に適しています。

コアドリルのその他情報

コアドリルと併用される機械

コアドリルは、電動のハンマードリルや電気ドリル等に取り付けて使用することが一般的です。このため、コアドリルと併用される機械としては、主にハンマードリルや電気ドリルが挙げられます。必要に応じて、他の機械と併用することで柔軟な加工が実現できます。

1.  ハンマードリル
ハンマードリルは、普通の電気ドリルとは異なり、回転運動と同時に打撃を与えられるため、コアドリルを使用する場合には、より効率的かつ正確な穴あけ加工が可能です。

2. 電気ドリル
電気ドリルは回転運動しかできないため、比較的軟らかい素材に対して使用されることが多く、コアドリルを使用する場合には、加工が難しくなります。

参考文献
https://www.google.com/amp/s/osusume.mynavi.jp/articles/4589/amp/
https://www.google.com/amp/s/electrictoolboy.com/media/17587/amp/

クランプテスタ

クランプテスタとはクランプテスタ

クランプテスタとは、測定しようとする電流が流れるケーブルをヘッドで挟む (コアで囲む) ことにより、ケーブルに流れる電流を測定できる測定器です。

被測定回路に直接接続する必要がないので、回路への影響は少なく、大きな電流も安全に測定できます。通常配線やケーブルに流れる電流を測定したい場合、回路を切断して電流計を挿入して測定します。

しかし、これは面倒な作業となるので、電気設備の点検時などではクランプテスタを使用して電流測定するようになりました。電流値の表示形態として、かつては測定値をメータで表示するアナログタイプもありましたが、現在では製品数が少なく、数値をディスプレイに表示するデジタルタイプが主流です。

尚、クランプメータと呼ばれる測定器も基本的には同じものですが、電流測定以外に、電圧や抵抗の測定機能を付け加えたものをクランプテスタとしている場合もあります。電圧測定や抵抗測定は通常のテスタと同じものですので、本記事では電流測定に限定して記します。

クランプテスタの使用用途

クランプテスタの主な用途は、家庭や事業所などにおける各種電気工事や点検作業時の電流測定です。ケーブルを切断せず、ケーブルに流れる電流を測定することを目的としています。

測定の度にケーブルを切断する必要が無いので、普段通り照明や設備を稼働したまま電流を測定できることが大きなメリットです。また、微小な電流を測定できる高感度な機種では、機器からアースへ流れる漏電電流の測定にも利用できます。

クランプテスタの原理

クランプテスタはトランスの機能を応用したもので、ケーブルを挟むヘッド部がトランスのコアに相当し、高透磁率磁性材料 (パーマロイなどの鉄系の素材) が使われています。トランスとは、1次側と2次側の巻き数比に応じて、1次側に加えた交流を2次側で巻き数比に応じた電圧や電流に変換できるものです。

コアで囲まれた中に電流が流れるケーブルを入れると、トランスの1次側巻数として作用することになります。また、ヘッドには2次側巻数に相当するコイルが設置されていて、そこに電流が流れることから電流値を測定し、ケーブルに流れる電流値を算出します。

但し、トランスを電流の検出用とした方式では2次巻き線に電流が流れないので、直流電流を測定できません。そのため、直流電流も計測できる交流/直流両用タイプのものは、ホール素子をコアの内部に埋め込んだヘッドを用います。ホール素子は直流、交流どちらでもホール効果により磁束密度に応じた電圧を出力しますので、この電圧を測定してケーブルに流れる電流値を算出します。

クランプテスタのその他情報

クランプテスタの使い方

1. クランプ方法
クランプテスタの操作は、ケーブルをヘッド部で挟むだけの至極簡単なものです。ケーブルをヘッドの中心に置くと測定誤差が小さくなりますが、多少ズレても大きな影響はありません。

2. 電流の向き
直流電流測定の際は、ケーブルに流れる電流の方向に注意が必要です。一般的なクランプテスタのヘッド部には”+”と”-“が表示がされています。これが電流の向きを示すガイドとなり、直流電流が”+”から”-“方向に流れる場合はプラスの電流値、”-“から”+”方向に流れる場合はマイナスの電流値となります。

3. リーク電流測定
機器に流れる電流を測定する場合は、往路もしくは復路どちらかのケーブルをヘッドに通しますが、往路と復路2本をヘッドに通すと、磁束密度が打ち消しあい電流値は0Aとなるはずです。しかし、機器内部で漏洩電流があると、アース (大地) に電流の一部が流れますので、往路の電流に対して復路の電流が若干少なくなります。

その差分に応じた磁束密度が発生してクランプテスタに測定値が表示されますが、これはリーク電流の大きさと等しくなります。この原理を利用して機器のリーク電流を測定することが可能です。なおリーク電流は数mAから数十mA程度ですので、利用するクランプテスタの感度は1mA程度の性能を必要とします。

4. アクセサリー
一般の家電製品では平行コードが使用されていますが、クランプテスタで平行コードの電流測定を実施する際にラインセパレータなどのアクセサリーを利用すると、平行ケーブルを一旦分離できるため、測定が容易になります。また、無線通信でPCに直接測定データを転送するワイヤレスアダプタを使うと、現場作業におけるデータの転記ミスを防ぐことが可能で非常に便利です。

参考文献
https://tmi.yokogawa.com/jp/solutions/products/portable-and-bench-instruments/clamp-on-testers/
https://www.sanwa-meter.co.jp/japan/support/faq/faq56.html

エンジンコンプレッサ

エンジンコンプレッサとは

エンジンコンプレッサ

エンジンコンプレッサとは、その名の通り電気方式ではなく、エンジンにて稼働させるタイプのコンプレッサです。

コンプレッサは、圧縮空気を作り工具や機械を動かす際に必要になります。エンジンコンプレッサの最大の特徴は、電源を確保する必要がないため、あらゆる場所でエアー工具を使えることです。

電源の確保が困難な屋外作業で威力を発揮します。コンパクトに設計されているものが多く、車輪がついているタイプがほとんどです。場所を選ばずに作業可能で、なおかつ移動や運搬がしやすく、機動力に優れています。

エンジンコンプレッサの使用用途

エンジンコンプレッサは、電源を確保するのが難しい状況にある屋外での作業で使用される場合が多いです。建築工事や塗装工事、出張工事等は、電源確保が難しい上、コンプレッサを運搬しながらあらゆる場所でエアー工具を使います。

エンジンコンプレッサであれば、電源確保が不要な上、車輪がついているため運搬しやすいです。機動力が高いエンジン式も広く普及しておりますが、工場などではモーター式が使われています。

エンジンコンプレッサの原理

エンジンコンプレッサの仕組みは圧縮・吐出・吸入の3つの仕組みからなります。

1. 圧縮

モーターでピストンが上昇し、コンプレッサ内の空気は圧縮されます。これによりコンプレッサ内の圧力は上昇し、空気がエネルギーを持った状態になります。圧縮行程中に発生する熱の冷却とエアーリークを防ぐためにコンプレッサオイルが注入されます。

2. 吐出

ピストンが最高点に到達した際に吐出弁が解放されます。この時シリンダ内部の高圧の空気が吐出されます。吐出された空気は機械や工具の動力源となります。この時オイルはオイルクーラーに移動して冷却されます。

3. 吸入

吐出完了後にピストンが下降し、吐出弁が閉じます。コンプレッサ内部の圧力が下降した際に吸入弁が開いて必要な空気量だけ空気が吸入されます。

エンジンコンプレッサの選び方

空気量と圧力、アフタークーラーの有無等に着眼してエンジンコンプレッサを選びます。

1. 空気量

単位時間当たりにコンプレッサが吐き出す圧縮し空気量を指します。単位はL/minやm3/min等を使用します。

選定の際は、工具1台あたりについてカタログに記載されている必要な空気量の20%程余裕を見てエンジンコンプレッサを選定してください。例えば、さく岩機は1.5~3.5 m3/minの空気量が必要になります。空気量が不十分だと動かしたい工具や工作機械が制御不能になってしまいます。

2. 圧力

圧縮空気が持つ単位面積当たりに加えることができる力を指します。単位はMPa等を使用します。圧力の表示方法には2種類あり、真空を基準とする絶対圧と大気圧を基準とするゲージ圧です。

エンジンコンプレッサの圧力は、ゲージ圧で表記されます。標準仕様のコンプレッサの吐出圧力は0.7MPaです。空気量と同様に圧力が不十分だと工具や工作機械が制御不能になります。

3. アフタークーラー

空気中には水蒸気が含まれており、コンプレッサで空気が圧縮されると凝縮して液体になります。アフタークーラーは凝縮した水を除去しながら高温の圧縮空気を冷却するのが役割です。

アフタークーラーを使用することで、コンプレッサのパイプシステム内で水が溜まるのを防ぎます。気泡が入るのを防ぐために、塗装用コンプレッサ等でも使用されます。アフタークーラーの無いコンプレッサを使用すると、凍って動かないことや水が飛散して汚れるトラブルが発生します。

エンジンコンプレッサの種類

1. スクリュー式

雄と雌のスクリューロータがケーシングと呼ばれる容器に格納されています。スクリュー式は、ケーシング内でスクリューロータを回転させて空気を圧縮する方式です。スクリュー式の中でもさらに、油冷式とオイルフリー式に大別されます。

オイルフリー式は、スクリューが噛み合う所で接触しないため油の注入が不要です。そのため、油分の少ない空気を出力可能な方式となります。なお、油冷式はスクリューロータにオイルを噴射しながら空気を圧縮する方式です。一般的な工業用途で使用されます。

2. スクロール式

渦巻き状の圧縮部が空気を圧縮する構造となっています。小容量で低騒音が求められるコンプレッサで使用されます。固定スクロールと可動スクロールと呼ばれる部品から構成されています。この2つの部品で仕切られた空間の容積が変化することで空気を吸入・圧縮します。

参考文献
https://www.anest-iwata.co.jp/compressor/reshipuro/ta2vfs0000004g3u.html

エッジセンサー

エッジセンサーとは

エッジセンサーとは、光やその他のエネルギーを利用して対象物の端 (エッジ) の位置や幅、隙間を精密に測定するための装置です。

工業用途において高い精度での測定が求められる場面で広く使用されており、製品の品質向上や製造プロセスの効率化に大きく寄与しています。

金属やプラスチックといった一般的な部品の測定だけでなく、透明性の高いフィルムやシート、ガラスなどの素材にも対応が可能です。これにより製造業で使用される幅広い種類の材料を正確に測定できる特性を持ち、製造業や品質管理で極めて重要な装置として位置づけられています。

エッジセンサーの使用用途

エッジセンサーは多岐にわたる用途に利用されますが、主に以下の2つの目的に分類されます。端面の検出と、隙間や幅の測定です。

1. 端面の検出

端面を検出する場合、センサーは光を対象物の端部に向けて照射しその反射や遮断の挙動を解析します。この方法により対象物の端と光軸や基準軸との距離を高精度で測定することができます。測定データをもとに対象物の正確な位置を把握することができるため、製品の形状や寸法の確認に役立ちます。例えば部品の加工精度をチェックする工程や、製品を搬送する際の位置決めなど、多くの場面で利用されています。

2. 隙間や幅の測定

隙間や幅を測定する場合、センサーは光の透過や遮蔽の状態を解析します。この技術により、部品や製品の幅や隙間の寸法を正確に計測することが可能です。具体的には機器や部品の外形検査、プレス加工後の穴径の確認などで使用されます。また部品や製品の変形や歪みを検出する際にも有効です。製品の品質向上や信頼性確保、製造プロセスの最適化を目的として、多くの産業分野で採用されています。 

エッジセンサーの原理

エッジセンサーは光の特性を利用して物体のエッジや隙間を正確に検出します。基本構造は光源、光源レンズ、受光レンズ、受光素子といった部品から構成されます。 動作の仕組みは以下の通りです。

光源から放射された光は光源レンズを通過することで整えられ、互いに平行な光線 (コリメート光) となります。この光は対象物の表面に投射され、反射や吸収といった挙動を示します。反射した光は、受光レンズを通じて光の位置や強度の変化を感知する、高感度の装置である受光素子に届きます。対象物のエッジ部分に光が当たると、受光素子に届く光の位置や分布が変化しエッジの位置や形状に対応して発生するため、センサーはその変化を正確に捉えることができます。

エッジセンサーの種類

エッジセンサーには主な種類として、光学式、静電容量式、超音波式などがあります。光学式は光を用いて位置を検出し、紙やフィルムなどの透明または半透明の材料に適しています。静電容量式は金属や導電性の物体を高感度に検出可能で、非接触型としても利用されます。超音波式は音波を使い、幅広い材質や形状に対応できるのが特徴です。これらのセンサーは使用環境や検出対象に応じて選択します。 

エッジセンサーの構造

エッジセンサーはいくつかの重要な要素から構成されています。それらの要素の機能は以下の通りです。

1. 光源

光源はエッジを検出するために必要な光を生成し、対象物に投射します。一般的にはLED (発光ダイオード) などの半導体光源が使用されます。LEDは高い発光効率と安定性を持ち、正確で安定した光を供給するのに適しています。光源レンズは生成された光を適切な方向に整え、対象物に正確に照射する役割を果たします。

2. 受光素子

対象物に照射された光が反射した後、その光を受け取るのが受光素子です。この素子は光の強度や位置を感知し、その変化に基づいてエッジの位置を特定します。使用される受光素子にはフォトダイオードやCCD (電荷結合素子) 、CMOSセンサー (CMOSを用いた固体撮像素子) などがあります。これらの素子は光の変化をリアルタイムで高精度に検出します。対象物のエッジ位置が変わるとそれに伴い受光量も変化します。この変化量を解析することで、エッジの位置や形状を高精度で把握することができます。エッジセンサーは光の変化を正確に捉え解析することで、製造業における重要な役割を果たしています。特に高精度が求められる工程や品質検査においてその性能が発揮されます。 

参考文献
https://www.azbil.com/jp/corporate/technology/techne/techne16_j1.html
https://newji.ai/procurement-purchasing/edge-sensor-technology-and-its-applications-in-manufacturing-industry/

イージーレーザー

イージーレーザーとは

イージーレーザーとは、レーザーを用いて芯出し測定や水平測定などを行う装置のことです。

連結された回転機器どうしの回転軸にレーザーを照射することで軸のズレを測定します。機器や部品などの平行度や垂直度などを確認しながらの調整が可能です。回転軸どうしの接続にズレがおこると、軸のひずみや機器への負荷が発生し故障の原因となります。イージーレーザーを用いて測定と確認を行うことで、機器を長持ちさせます。また、保守点検の作業効率が向上するためコストの削減も期待できます。

経験や知識を積んだ職人でなくても容易に精度の高い測定を行うことが可能です。

イージーレーザーの使用用途

軸芯出し、平行や水平度の確認・調整など工作機器に幅広く利用されます。チェーンなどを有する回転機器、ロール設備、ガスや蒸気タービンなどの調整にも使用されます。軸芯出しとは、軸で連結された機器双方の回転軸が運転時に同一線上になるように調整する作業のことです。回転機器では回転軸のズレを修正することが重要です。

イージーレーザーの原理

光が拡散せず直進して一点を照射するレーザー光の原理を利用しています。レーザーを照射するレーザー発信器、照射されたレーザーの位置を感知するレーザー受光器があり、2つを安定して設置するためのブラケットが付属しています。更に測定値をデータとして表示し、端末上で扱うためのソフトウェアから成り立っています。

参考文献
https://www.easylaser.co.jp/
https://www.tetsugen.com/easylaser/lps/
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/drive-chain/accessory/easy-laser/
https://www.tsubakimoto.jp/power-transmission/drive-chain/accessory/easy-laser/laser/

インクジェットプロッタ

インクジェットプロッタとは

インクジェットプロッタ

インクジェットプロッタとは、描画にインクジェット方式を用いたプロッタです。

プロッタには大きく3つの種類がありますが、インクジェットプロッタは、ラスタプロッタと呼ばれるプロッタに分類されます。プロッタはプリンターとは区別されます。印刷物に精度の高さが要求される図面などの印刷に、特に向いている出力装置です。

プロッタがプリンタと大きく異なる点は、描画の仕方です。プロッタは「線」を描きますが、プリンタは「点」の集まりによって画像などを描画します。プロッタは点ではなく線によって描画するために、図面などの描画においては正確で綺麗な描画が可能です。

また、大きなサイズの出力をメインとして行うため家庭用ではなく、事業用として用いられることがほとんどです。プロッタは線を描画することによる出力の動作と、出力後に元データに基づいて正確にカットするという裁断の動作を行うこともできます。

インクジェットプロッタの使用用途

インクジェットプロッタは、大判サイズでの線画の出力から裁断までを行う出力装置として、建築分野や産業分野における図面やポスターの大型出力印刷や、研究発表などのポスター印刷などを作成する用途で使用されています。

この他、データに忠実なカッティングを行うこともできることから、看板などの作成も可能です。建設現場や設計事務所や、学校などの教育機関や学会などでも、インクジェットプロッタは広く使用されています。

インクジェットプロッタの原理

インクジェットプロッタは、ラスタプロッタという方式に分類されます。プロッタにはインクジェットプロッタ以外に、ペンプロッタがあります。ペンプロッタと比較するとラスタプロッタによる出力は画質が落ちる一方で、高速描画ができる点で優れています。

インクジェットプロッタは、インクジェットプリンタと同じ原理をしています。インクカートリッジから内蔵されたインクをノズルに供給し、印刷対象物に対してノズルからインクを噴射することで出力を行います。出力の速度は劣るものの、印刷の品質が高いという点で優れています。

インクジェットプロッタのその他情報

プロッタの種類

1. ペンプロッタ
ペンプロッタでは、実際に紙の上にペンを動かして線を描きます。ペンにはインクペン、ボールペン、シャープペンシルなどを用います。入力したデータがそのまま出力され、実際にペンが移動して描画します。

2. ラスタプロッタ
入力されたデータを点として出力するプロッタです。入力データは、ベクタデータというデータで扱います。ベクタデータは複数の点の位置と、点同士を繋いだ線、曲線、色などを数値データ化したものです。

ベクタデータのメリットとして、拡大縮小してもエッジが綺麗に表示できることが挙げられます。反対に細かく複雑な画像を表現する場合には向いていません。

ラスタプロッタはベクタデータの画像を、点で描画していきます。インクジェット方式以外にも、静電、レーザー、感熱式、LEDといった描画方法があります。

3. カッティングプロッタ
カッティングプロッタは、描画した紙をカットすることができるプロッタです。カットする方法によって3つのタイプがあります。

  • グリッドローリングタイプ
    カットする紙やシートが動いてカットされるタイプです。このタイプでは用紙を広げる必要がないために、機械本体をコンパクトにすることができます。
  • フラットヘッドタイプ
    フラットヘッドタイプはヘッドに取り付けられたカッターが動くことで、紙やシートを切断します。細かい部分でもカットでき、最も一般的なカッティングプロッタです。
  • 小型タイプ
    個人でも使用できるよう、本体も小型化されています。

参考文献
https://www.kimoto.co.jp/products/design_products-inkjet
https://www.large-format-printer.jp/blog/cad-2/plotter/
http://www.pcpulab.mydns.jp/main/it/chapter2_3-6-2.htm

UV乾燥機

UV乾燥機とは

UV乾燥機

UV乾燥機とは、紫外線 (UV) 光を利用して物質を乾燥させるための機械です。

インクや接着剤、コーティング剤などの液体や薄膜を塗布した後、その表面を速やかに乾燥させるために使用されます。紫外線を利用するため、非常に高速な乾燥が可能です。

伝統的な熱乾燥方法と比較して、乾燥時間を大幅に短縮できます。これによって生産性が向上し、製品の生産時間が短縮されます。また、熱を発生させる必要がないため、他の熱乾燥方法と比較してエネルギー効率が高く、省エネルギーです。被乾燥物の熱変形や劣化のリスクも最小限に抑えることができます。熱に敏感な素材に適しています。

ただし、紫外線は人体に悪影響を及ぼす可能性があるため、安全対策が重要です。作業者は適切な保護装備を身に着け、適切な安全規定に従って作業する必要があります。

UV乾燥機の使用用途

UV乾燥機は、さまざまな産業分野で幅広く使用されています。主な使用用途は以下の通りです。

1. 印刷業

印刷業では、インクなどの乾燥に広く使用されています。チラシやパッケージなどの印刷物に使用されるインクは、UV光を照射することで瞬時に硬化させることが可能です。これにより、印刷物の生産性を向上させ、乾燥時間を短縮することができます。

2. 木材加工業

床材など、木材用途にもUV乾燥機が使用されます。木材の表面には艶出しと劣化防止を目的にニスが塗られることが多いです。ニスなどのコーティング剤を紫外線で硬化させることで、高品質な仕上がりを実現します。

3. 自動車産業

自動車部品や車体の塗装プロセスにおいても、UV乾燥機が使用されます。車体のパネルや内装部品に塗布された塗料を紫外線で硬化させることで、耐久性のある仕上がりを得ることが可能です。

UV乾燥機の原理

UV乾燥機は紫外線硬化という化学反応を利用します。インクなどが紫外線と反応すると、紫外線によって光化学反応と光重合反応が起こります。その結果、小さい分子量の物質同士が集まって高分子化し、融点が上昇して硬化・乾燥する仕組みです。

物質同士が重合する際には、特定の波長域の光にのみ反応を示すため、ランプの種類と硬化させたい材料の最適な組み合わせを選ぶことが重要です。

UV乾燥機の構造

UV乾燥機は主に光源、乾燥チャンバー、冷却システムなどで構成されます。

1. 光源

UV乾燥機の中心となる部分は、紫外線を発生する光源です。光源には特殊な紫外線ランプで使用されます。これらのランプは特定の波長範囲の紫外線を放射し、被乾燥物の表面に照射します。

2. 乾燥チャンバー

光源と被乾燥物を配置するための乾燥チャンバーがある場合も多いです。被乾燥物を収容するための専用のスペースであり、紫外線の照射範囲を確保します。適切なサイズや形状で設計されており、被乾燥物が均一に照射されるように配慮されます。

3. 冷却システム

UV乾燥機では紫外線ランプが発熱するため、冷却システムが必要です。冷却システムは、光源や乾燥チャンバーの冷却に使用されるファンや冷却装置を含みます。これによって光源や周囲部品の過熱を防ぎ、安定した動作を確保します。

UV乾燥機の種類

UV乾燥機はランプの種類に応じて用途が性能が異なります。以下はUV乾燥機に使用されるランプ種類一例です。

1. 水銀ランプ

UV乾燥に広く使用される伝統的な光源です。水銀蒸気を使用し、主に紫外線C波長を放射します。UVCは紫外線の中でも波長が短く、高いエネルギーを持っています。

水銀ランプは効率的であり、大面積の乾燥や硬化に最適です。主にコーティング剤の乾燥をするために使用されます。ただし、水銀ランプは使用後に廃棄物処理が必要であり、水銀の環境負荷に注意する必要があります。

2. メタルハライドランプ

水銀ランプの改良型であり、より高い効率と広い波長範囲の紫外線放射を実現するランプです。水銀と他の金属ハライドを含むガスを使用して光を発生させます。

これにより、より均一な照射や多様な化学反応を可能にします。印刷や塗装などの産業で広く使用されるランプです。

3. LEDランプ

LEDランプは発光ダイオードを使用したランプです。小型で照射範囲を制御しやすく、エネルギー効率が高いことが利点です。

特定の波長の光を放射するため、選択性のある硬化や特定の化学反応に適しています。また、長寿命でメンテナンスが簡単であり、点灯/消灯を瞬時に切り替えることが可能です。

参考文献
http://www.npt-print.co.jp/product/uv/uv.html
https://www.mino.co.jp/product/uvdryer/
https://www.u-vix.com/appendix/UV/appendix04.html

黒アルマイト

黒アルマイトとは黒アルマイト

黒アルマイトとは、アルマイト処理を施したアルミニウムの表面を染料で黒く着色した、カラーアルマイトの一種です。

アルマイトとは、アルミニウムを陽極で電気分解することで表面を酸化被膜で覆う、アルマイト処理を施したアルミニウムのことを指します。そのままのアルミニウムよりも腐食に強いのが特長です。

加工の前後処理などで光沢の具合を変えることができるため、つや消し黒色アルマイトや光沢黒色アルマイトなどの種類があります。使用する製品の機能や見た目の装飾などの特徴に合ったものを選ぶことが可能です。

黒アルマイトの使用用途

黒色アルマイトは、高い耐食性や耐摩耗性に加えて、強硬度と絶縁性などを有していることから、アルミ製品や、日用品などの身近なものから、電気機械や自動車や船舶まで幅広く使用されています。

具体的な製品には、お弁当箱や水筒、鍋などの調理器具といった生活用品、自動車や半導体の部品、医療機器などの産業機器や、船舶や航空機などの内装などです。また、光沢黒アルマイトやつや消し黒色アルマイトは光学製品などに用いられています。

黒アルマイトの原理

黒アルマイトは、「①アルミニウム素地のアルマイト処理」「②アルマイトの染色」という順番で製造されます。

1. アルマイト処理

アルマイトの模式図

図1. アルマイトの模式図

アルマイト処理は、アルミニウムを陽極として電解を行い、アルミニウム表面にアルマイト皮膜を作る処理方法です。アルマイト処理では、まず電解液中にアルミニウム素地の表面が溶け出してからアルマイト層が形成されるため、皮膜は無孔質のバリアー皮膜、多孔質皮膜の2層から構成されます。

アルマイト皮膜は硬く、耐摩耗性・耐食性に優れており、下のアルミニウム素地を保護することができます。メッキ処理が被メッキ物を陰極として電解を行い、表面に金属膜を析出させる処理方法であるのに対し、アルマイトはアルミニウム素地を陽極として用い、それ自体を電気分解する手法です。

2. アルマイトの染色

アルマイトに対する染色と封孔処理

図2. アルマイトに対する染色と封孔処理

前述の通り、アルマイト皮膜には多孔質皮膜の層が形成されます。黒アルマイトの製造においては、染色槽に投入し、この空洞部分に黒い染料を流して、セルに吸着させた後、吸着させたら封孔処理を行って空洞を塞ぎます。

アルマイトの酸化被膜の厚さによって、染料を吸着する量が変わるため、より濃色を出したい場合は、皮膜の厚みを大きくして、吸着させる染料の量を増やさなければなりません。光沢黒色アルマイトやつや消し黒色アルマイトは、化学薬品を用いて前処理を行っています。

光沢黒色アルマイトは、アルマイト素地に光沢を付加したものです。反対に、つや消し黒色アルマイトの場合は、マット加工を施すことで光沢を消しています。

黒アルマイトの種類

黒アルマイトは、膜厚と染料の観点から分類することができます。

1. 膜厚

黒アルマイトの標準的な膜厚は約10~30μmです。10μm以下など膜厚が薄い場合、表面の被膜に対する染料の付着量が少なくなり、充分な効果が得られません。特にムラのない黒色を得たい場合には、ある程度の膜厚を確保する必要があります。

また、30μm以上の厚い膜も形成できますが、細長い管の内部やとがった形状の内側部分 (鋭角部分) などの物理的制約がある箇所には適用できません。黒アルマイト処理によってできる被膜の性能は材料により大きく異なるので、染料との相性を考慮しつつ、膜厚を検討する必要があります。

2. 染料

代表的なクロム錯体有機アゾ染料の構造

図3. 代表的なクロム錯体有機アゾ染料の構造

黒アルマイトの染料で代表的なものとして、有機系クロム錯体染料が挙げられます。この染料の分子は金属クロムに有機配位子が1:1もしくは1:2で結合した構造です。

有機配位子がクロムと錯体化することで、単体の場合よりも耐光性や耐熱性が増しています。被膜の孔径が数百Åであるのに対し、染料分子のサイズがおよそ数十Åであるため、染料分子が被膜の孔の中に入り込み、吸着することで着色します。

主な有機配位子はベンゼンナフタレンなどの芳香環に、ニトロ基やアゾ基などの発色性を示す置換基が結合したものです。また、溶剤への溶解性を高めるためにスルホン酸基、ヒドロキシ基、アミノ基などが結合した染料も開発されています。

黒アルマイトでは、太陽光に含まれる紫外線や熱の影響で染料分子が分解し、変色や退色が起きることがあります。基本的に有機系の染料を使用していることが原因です。そのため、近年では紫外線などに強い染料も開発されています。

参考文献
https://www.toshin-alumite.jp/knowledge/
https://www.masudakagaku.com/business/
http://www.akg.jp/puresijyon/products/black_alm.htm
http://www.senpoku.co.jp/eng/alumite.html?lid=2
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sfj1989/50/4/50_4_315/_pdf/-char/ja
http://toeidenka.co.jp/assets/doc/Q&A_160921.pdf