研削盤

研削盤とは

研削盤

研削盤(英語:grinding machine, grinder)とは、高速で回転する砥石に、加工物を接触させて表面を削り、精密に仕上げ加工をする工作機械です。砥石の運動と、加工物の運動の組合せにより多くの種類があります。円筒の内・外径用、平面用、歯車用などです。

研削盤は、通常の切削加工が困難な焼入鋼や特殊合金鋼などの硬い材料でも加工できる特徴があります。機械の操作により加工量を正確に調整して加工をするものは機械研削盤と呼ばれ、いわゆるグラインダーと呼ばれる自由研削盤と区別されます。

自由研削盤は労働安全衛生法による規制があります。研削砥石の取替え又は取替え時の試運転の業務等においては、グラインダ特別教育を受けなければなりません。

研削盤の使用用途

研削盤は、主として加工物の表面を仕上げ加工することに用いられます。切削加工により、形状や精度を整えた一次・二次加工を施した後、寸法や表面性状をさらに精度よく仕上げるために研削加工を行います。

具体例は、クランクシャフト・カムシャフト、歯車・ねじおよびスプライン・工具・ジグ研削・ローラーなどの仕上げ加工に使用します。また、ガラスや宝石・セラミックスの加工にも使用します。

研削盤の原理

研削盤は、研削砥石を使用して加工物の表面を削り取って精度良く加工するものです。使用する研削砥石は砥粒を結合剤で固めたもので、内部には気孔が無数に存在します。砥粒は加工時に切れ刃の役割をし、加工の際に結合剤から剥離して切り粉とともに排出されます。

研削盤では、剥離と排出が常に繰り返されて常に新しい砥粒が使用されるので、非常にきれいな加工面を形成することが可能です。研削盤は、非常に小さい切り込み量で高精度加工をします。高い周速の砥石で繰り返し加工するので、熱が大量に発生します。

そのため、加工液などをかけ続けて常に冷却しながら加工します。研削盤は僅かな切り込み量で加工するため、他の加工法に比べ、加工時間が長くなる短所があります。

研削盤の種類

研削盤には、研削加工の目的や加工物の形状に応じていくつかの種類があります。

1. 平面研削盤

前後方向および左右方向に移動するテーブルに加工物を固定します。そして、加工物の平面部を回転する砥石で研削します。

2. 円筒研削盤

円筒状の加工物の外周を研削します。加工物は左右に、砥石は上下に移動させます。そして、砥石と加工物の両方を高速回転させながら、外周を研削します。

3. 内面研削盤

円筒状の加工物の内面を研削します。固定した加工物を高速回転させ、加工物の穴に挿入した砥石で研削を行います。

4.センターレス研削盤

円筒や円柱の形をした加工物の研削を行う機械です。芯なし研削盤とも呼ばれ、回転速度が異なる2つの砥石の間に加工物を挟んで研削します。加工物を固定せずに軸方向に移動して連続作業ができるため、生産性が高くなるメリットがあります。

研削盤のその他情報

1. 研削盤の砥石

研削盤を使った研削加工の際は、研削砥石と呼ばれる工具が必要です。研削砥石は、砥粒・結合剤・気孔の3つの要素があります。砥粒で削り取りを行い、摩耗した砥粒は自然に脱落して新しい砥粒が表面に出てくるのが特徴です。

砥粒は対象物を削る働きをします。結合剤は砥粒を結合し、砥石の性能を調整します。気孔は切り屑を排出して目詰まりを防ぐ働きと、砥石の発熱を抑える働きをします。

砥粒は、金属や難削材を削るための硬い材質の粒子です。一般的にはアルミナ(酸化アルミニウム)や炭化ケイ素を用います。アルミナは鉄鋼や非鉄金属の研削に使用し、炭化ケイ素は非鉄金属に使います。難削材の場合は、ダイヤモンドやCBN砥粒(立方晶窒化ホウ素)を使用します。

結合剤は、砥粒同士を固めるための接着剤です。セラミック系、樹脂系、金属系の3つに分けられます。精密研削にはセラミック系の「ビトリファイド」、研削から仕上げまで幅広く行う場合には樹脂系の「レジノイド」、粗研削や切断では金属系の「メタル」など、加工目的に合わせた材質の砥石を選定します。

2. 研削盤のチャック

研削盤に加工物を取り付けるチャックは、研削盤の種類によって異なります。平面研削盤は直方体の素材を切削するため、チャックはテーブルタイプです。加工物をマグネットなどの磁気チャックや真空チャックで吸い付けて固定します。

円筒研削盤の場合は、円筒状の加工物の直径を小さくするような加工を行うため、素材の両中心部を固定します。内面研削盤の場合は、旋盤のように素材の端を三つ爪または四つ爪のチャックに取り付けて加工を行います。

滑り軸受

滑り軸受とは

滑り軸受

滑り軸受は、軸受の滑り面で直接的に、軸の回転や移動部品の直線運動を支持する軸受です。回転軸もしくは移動部品と滑り軸受の滑り面は、直接接触しているために摩擦力が大きく、摩擦熱が発生します。そのため相互の接触面は、オイルで潤滑させたり、軸受滑り面に潤滑剤を含侵させた金属を使用したり、潤滑性の高い樹脂素材を使用します。

潤滑剤を使用しない滑り軸受は、ドライベアリングと呼ばれています。滑り軸受は、安価で使い勝手が良く材質や大きさは自由度が高く、用途や使用環境によって使い分けられています。

滑り軸受の英語名表記は下記の3種類です。

  • Plain Bearing
  • Sliding Bearing
  • Slide Bearing

滑り軸受の使用用途

滑り軸受は、下記の特徴(特に転がり軸受と比較した場合になります)があります。

  • 構造や形状が単純
  • 寸法がコンパクト
  • 高速性能(高速回転)に有利
  • 低速性能(低速回転)は不向き
  • 許容荷重は比較的大きい
  • 発生音は静かで、振動も少ない
  • 寿命が長い

滑り軸受の種類

一般的産業用途で使用する滑り軸受の種類は、「荷重の種類」「材質」「形状・構造」に分けられます。

またISO 4378-1では下記のように分類されています。

滑り軸受の分類

図1. 滑り軸受の分類

1. 荷重の種類

荷重の種類は、「動圧軸受」「静圧軸受」「ジャーナル軸受」「スラスト軸受」の4種類に分けられます。

動圧軸受と静圧軸受

動圧軸受と静圧軸受

図2. 動圧軸受と静圧軸受

動圧軸受は、軸の回転により発生する動圧により、軸と軸受滑り面の間に油膜が形成され、軸を支持します。動圧が発生するように、隙間をくさび状にしたり、滑り面に滑り面工したりする方法があります。一般的に、滑り軸受動とは動圧軸受を示すことが多いです。

静圧軸受は、軸受外部の機器や設備から、油(潤滑油)や圧縮空気を軸受へ供給し、軸と軸受間のポケットに充満させることで、軸を支持します。

ジャーナル軸受とスラスト軸受

ジャーナル軸受とスラスト軸受

図3. ジャーナル軸受とスラスト軸受

ジャーナル軸受は、軸の中心線方向(ラジアル方向)に荷重がかかる場合に使用します。スラスト軸受は、軸の中心線と垂直方向(スラスト方向)に荷重がベアリングにかかる場合に使用します。

2. 材質

材質による種類は、「樹脂系」「金属系」の2種類に分けられます。

樹脂系
樹脂系材質の例を下記に示します。

  • 四フッ化エチレン樹脂(PTFE)
  • ポリアセタール樹脂(POM)
  • ポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK)
  • ポリフェニレンサルファルド樹脂(PPS)
  • ポリエステル系エラストマー樹脂
  • ポリアミド樹脂(PA)

樹脂系滑り軸受は、オイル・黒鉛など添加し、潤滑性を向上させているため、ほとんどの場合は無給油で使用されます。また、機械的強度の向上のために金属と組み合わせて使用する場合もあります。

金属系
金属系材質の例を下記に示します。

  • 鉛製銅鋳物 (JIS H5120 CAC601, CAC603, CAC606)
  • リン青銅鋳物 (JIS H5120 CAC502A)
  • ホワイトメタル (JIS H5401 WJ1~WJ10)
  • アルミニウム系合金 (JIS AJ2, SAE770, 780, 781)

潤滑油を使用する金属系材質では、ホワイトメタル、銅系合金、アルミニウム合金などが一般的です。ホワイトメタルは、静荷重や船用エンジンに使用されることが多く、銅系合金は耐摩耗性に優れるため、ブッシュなどに多く使用されます。

一方でアルミニウム合金は、エンジン用、ブッシュなど幅広い用途で使用されます。無給油の滑り軸受は、潤滑材の添加、表面のコーティング、固体潤滑材料を埋め込んでいます。無給油の滑り軸受は、オイルレス軸受と呼ばれています。

形状・構造

滑り軸受の種類

図4. 滑り軸受の種類(1)

形状・構造による種類は、「円筒形」「円筒形鍔(フランジ)付き」「円盤形(スラスト軸受) 」「球面形(球面スラスト軸受) 」に分けられます。

滑り軸受の種類

図5. 滑り軸受の種類(2)

滑り軸受の原理

滑り軸受は、回転軸や移動部品と滑り軸受の滑り面が画接触して支持しています。そのため、相互の面間(摺動面)で発生する摩擦の対処方法が重要になります。

一般的な滑り軸受は、摺動面に潤滑油・潤滑材や空気などを介在させ、摩擦抵抗を低減させています。よって摺動面の潤滑状態は非常に重要になります。この潤滑状態は下記3種類に区分されており、図3 ストライペック曲線にて示されます。

1. 境界潤滑

摺動面は、十分な潤滑被膜が形成されてなく摩擦が大きいため、ほぼ固体潤滑で良好な潤滑状態ではなく、焼き付き固着することがあります。

2. 混合潤滑

摺動面は、表面粗さと潤滑被膜厚みがほぼ同一で、流体接触と固体接触の混在状態になっていて、完全に十分な状態ではありません。

3. 流体潤滑

摺動面は、十分な潤滑被膜が形成されて、相互は直接接触していない状態で、相互が摩耗することなく良好な潤滑状態です。

 ストライペック曲線

図6. ストライペック曲線

滑り軸受の潤滑方法は、「強制給油」「油浴」「飛沫給油」「滴下給油」があり、軸受の使用条件により使い分けます。強制給油は、ポンプで軸受給油部に潤滑油を送る方法で、確実に一定量の潤滑油を給油することができます。油浴と飛沫給油は給油装置の必要がなく、シンプルな構造にすることができます。滴下給油は潤滑油の量が少ないので高負荷運転には適していません。

強制給油では、ハウジング側に給油する方法と軸側に給油する方法があります。また、ハウジングや軸に油溝を設けることで冷却効果を上げることも可能です。ただ、潤滑膜が不連続になり軸受の負荷能力の低下が起こることもあり、油溝の設計は十分注意が必要です。

潤滑油が使用できない環境(高温など)は、固体潤滑材を使用する場合もあります。固体潤滑材にはグラファイト、PTFEなどがあります。滑り軸受は、油圧、油膜等の管理を正確に行うことで、長寿命化を実現することが可能です。

滑り軸受のその他情報

滑り軸受の規格

滑り軸受に関するJIS, ISO規格を下記に示します。

JIS規格

ISO規格

番号

規格名

番号

規格名

JIS B01623-1

滑り軸受−用語、定義及び分類 第1部 設計、軸受材料及びその特性

ISO 4378-1

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 1: Design, bearing materials and their properties

JIS B01623-2

滑り軸受−用語、定義及び分類 第2部 摩擦及び摩耗

ISO 4378-2

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 2: Friction and wear

JIS B01623-3

滑り軸受−用語、定義及び分類 第3部 潤滑

ISO 4378-3

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 3: Lubrication

JIS B01623-4

滑り軸受−用語、定義及び分類 第4部 計算パラメーター及びその記号

ISO 4378-4

Plain bearings -Terms, definitions and classification- Part 4: Calculation parameters and their symbol

 

転がり軸受の仕様は、規格で規定されているため、軸受型式によって嵌め合い公差や製作公差、隙間公差などは、全てのメーカーで同じ仕様になっています。したがって互換性があり汎用部品として使用することが可能です。

それに対して滑り軸受は、現状国際的に共通の規格はありません。そのため互換性はなく、汎用性はありません。したがって、使用用途、使用環境、設計仕様によって独自に検討し決定する必要があります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md05/g0016.html
https://www.ntn.co.jp/japan/products/catalog/pdf/5116.pdf
https://www.skf.com/group/products/plain-bearings
https://engineer-education.com/machine-design-12/
https://www.tribology.jp/outline/shokai.html

リニアガイド

リニアガイドとは

リニアガイド

リニアガイドは、直線運動の摩擦を減らして、部品を案内する機械要素です。JIS用語では「玉[ころ]循環リニア軸受」(英語:recirculating ball [roller] linear bearing)、工作機械工業会では「リニアガイドウェイ」と呼んでいます。THK株式会社ではLMガイド(Linear Motion Guide)と呼び、登録商標になっています。

摩擦を減らすために、一般には金属ボールが使われます。ローラーや高機能エンプラを使うものもあります。ボールは搬送台と直線レールとの間で転動して重量を支えながらレール上を移動します。ボールは搬送台の中で循環できるようになっています。

リニアガイドは小さい力で滑らかに移動ができます。精密加工されたガイドレールとボールはガタが少なく、ボールの回転が正確に搬送台の移動に伝わるため、高い位置決め精度を得ることができます。リニアガイド自体では推進力を持っていないため、搬送台を任意の方向に動かすためにボールネジシリンダなどの機構と組合わせて使用されます。

リニアガイドの使用用途

リニアガイドは、正確な直動運動が必要な箇所に使用されます。工作機械などのテーブル・搬送装置・検査機・ロボットなどに使用されます。さらに、木材加工機・建設機械・自動化機械などでも使われています。直線運動部のころがり化は、メカトロニクス機器の高精度化・高速化・省力化など、機械性能を向上させています。

液晶製造ライン・鉄道車両・福祉車両・医療用機器・高層ビルや住宅の免震制震装置・アミューズメント機器・ドローン・プリンターなどにも使用が拡大しています。正確な直線運動が必要な場合では、ガイドレールを2本使用します。そしてリニアガイドの取付面は精度よく加工されていることが必要です。

リニアガイドの原理

リニアガイドは、ガイドレール・搬送台ブロック・ボール及びボールリテーナ・リターンキャップなどで構成されます。構造部材に取り付けられたガイドレールの上を、搬送台ブロックがボールによるころがり運動で移動します。

ガイドレールの転動面にボール径に近似したR形状の溝を設けます。転動面とボールとの接触が点接触から面接触に近づき、許容荷重と寿命が大幅に向上します。複数の条列でボールを受ける構造により、急加減速時のモーメント荷重や長時間連続運転などの厳しい可動条件でも精度が維持できます。

稼働時にボールが転がることで、ボール間の距離が変化し稼働にムラができることを防ぐ必要があります。そのためリテーナを設け、ボール間の距離を一定に保ちながら稼働できるようになっています。リニアガイドには、ボールやガイドレールの精度によって等級別に分かれています。

精度等級が上がるほど使用環境が制限されてきますので、使用の際は荷重計算を行い、定格寿命を考慮した上で使用する必要があります。ガイドレールのボールが転がる溝の形状が、オフセットゴシックアーチ溝のものもあります。静的負荷容量が高いメリットがあります。

リニアガイドの種類

リニアガイドには、「ミニチュアタイプ」と「中・重荷重タイプ」などがあります。

1. ミニチュアタイプ

ガイドレールの軌道面と4点で接触するボールを2条列に配置したタイプです。特別大きな荷重がかからない状況下で使用されます。

2. 中・重荷重タイプ

ガイドレールの軌道面と2点で接触するボールを4条列に配置したタイプです。重切削を行う工作機械などで使用されます。ボールが転動する溝をガイドレールに設けることで、許容荷重が大きくなります。

3. その他のタイプ

ボールを使用しないタイプがあります。ローラー・高機能エンプラ・オイルレスメタルなどが摺動部に使われています。ボール式に比べ、耐荷重が大きく、粉塵などの異物環境下に強いという特徴があります。短所は摩擦力が大きいことです。

さらに、直線レールのほか、クロスガイドやRガイドなどの種類があります。また、高剛性を必要としない場合は、ステンレス鋼鋼板をU字形に精密成形し、軌道部分と取付面を一体にした小型・軽量・低価格の精密ボールスライドがあります。

リニアガイドのその他情報

リニアガイドの特徴

循環ボールタイプのリニアガイドは、剛性が高い、長寿命で高精度、静かで滑らかな作動、優れた振動特性などの特徴があります。ボールを使わないすべり式のリニアガイドは、ボール式に比べ最大40%ぐらい低コストです。メンテナンスフリー・潤滑剤不要で粉塵や水分に強く、優れた耐食性・衛生的で低騒音・軽量などのメリットがあります。

参考文献
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/machine_design/md01/c1087.html
https://jp.misumi-ec.com/special/linearguide/about/
https://jp.misumi-ec.com/special/linearguide/select/

オーリング

オーリングとは

オーリングオーリングとは、管などから流体の漏れを防ぐために使用するシールです。

断面は円形で、文字のOの形をしているため、こう呼ばれます。シールする部分の部材で押しつぶして使用するので、材質はゴムやシリコンなどの弾性力があるものが主流です。

ガスケットやパッキンなどと同じような使われ方をしますが、Oリングは使い方や、取り外しなどのメンテナンスの容易さ、安価であるなどの理由から、様々な場所で広く使われています。

オーリングの使用用途

オーリングは、管などから流体の漏れを防ぐためのシール材として使用します。また、電子顕微鏡のような高真空が必要な機器内にガスが入り込まないようにするためにも用いられます。

オーリングは使用するにあたり、リングのための溝が必要です。これは、シールするためにオーリングを押しつぶして使用する必要があることから、オーリングが適切な形に変形するためや、適切な圧力をかけるためなどの理由があります。
また、ガスケットやパッキンと異なり、オーリングは固定・稼働のいずれにも使用できます。その際は、使用箇所に合わせて適切な硬さのオーリングの選定することが重要です。

オーリングの原理

オーリングの原理

図1. オーリングの原理

オーリングは、押しつぶすことで変形してシール部分の隙間を塞ぎ、つぶした際の反発力によってシールをします。そのため、オーリングは取付用の溝にはめて使用します。オーリングを押しつぶして圧力をかけると、オーリングは溝からはみ出す方向に向かって変形します。そのため、溝が大きすぎるとオーリングが部材からはみ出してしまい、その部分から劣化が進み、最終的にはシール機能を失ってしまいます。

また、流体圧力が高くなると、その圧力によりオーリングが押し出され、はみだしによりシール機能が低下します。バックアップリングを使用することでオーリングのはみだしを防止することができ、流体圧力が6.9MPa以上ではバックアップリングを使用することが望ましいです。

加えて、使用部分の部材でオーリングを押しつぶす際は、変形によるシールを確実にするため、つぶし代を考慮して溝深さを決める必要があります。適切な溝深さとオーリングの太さ(断面直径)は、JIS規格を参照することで選定が容易になります。JIS規格では、Oリングのつぶし率が太さの約8~30%となるよう溝寸法を規定しています。

JIS規格にはオーリングの種類と用途によって、材料や硬さも決められているため、用途に応じた使い方が求められます。

オーリングのその他情報

1. オーリングの材質

オーリングに使用される材質の一例を紹介します。

NBR (ニトリルゴム)
Oリングに使用される最も一般的な材質です。耐油性と耐磨耗性に優れ、安定した耐熱性を持ちます。一般的な工業機械に使用されています。ただし、NBRの中でもJIS規格、ISO規格にある材料番号によってさらに細かく性能が分かれているため、選定時には規格を確認してから適切な材質を検討する必要があります。

FKM (フッ素ゴム)
耐熱性、耐油性に優れた材質です。材料番号によって耐酸性や耐アルカリ性に優れているものがあり、薬液を取り扱う機器に広く使用されています。また、高圧機器に使用される場合や低温機器に使用される場合もあります。価格はNBRと比較すると高価です。こちらも、NBRと同様材料番号によって細かく性能が分かれているため、規格と用途を確認し材質決定を行う必要があります。

FFKM (パーフロロエラストマー) 
耐熱性に優れ、合成ゴムの中で一番優れた耐薬品性を有している材質です。通称パーフロです。薬品によるOリングの膨潤が発生しにくい材質です。価格はFKMよりさらに高価であり、サイズにもよりますが1万前後~/個という驚きの値段です。危険物など絶対に漏洩を防ぎたい場合などは導入しています。

主要メーカーから各種Oリングが生産、販売されています。選定の際には、過去実績や在庫管理の面からも統一性を持たせつつ、適切な選定を行いましょう。

2. オーリングの規格 (P,G,V)

オーリングには様々な規格がありますが、ここではその一部を紹介します。一般的に使用頻度が高いOリングはP-〇〇、G-〇〇、V-〇〇などと表記されています。それぞれの頭文字には次のような意味があり使用目的によって使い分けます。

  • P (Packingの頭文字) 
    運動用、固定用のOリングとして使用されます。
  • G (Gasketの頭文字)
    固定用のOリングとして使用されます。
  • V (Vacuumの頭文字)
    真空用のOリングとして使用されます。いずれも線径で判別できます。また、それぞれの規格で対応表がありますので選定時には確認が必要になります。

昇降機

昇降機とは

昇降機

昇降機とは、人や荷物を載せて垂直や斜めに移動させるための装置です。

水平移動するものも昇降機と呼ばれることがありますが、一般的に上下移動するものを指します。人を載せず、荷物のみを昇降、運搬するものはリフトと呼ばれる場合もあります。

人を載せて垂直移動するものは箱型のものはエレベーターと呼ばれ、階段式のものはエスカレーターをイメージするのが分かりやすいです。現在は、日常生活のさまざまな場面で昇降機を目にすることができます。

昇降機の使用用途

昇降機は、人や荷物を載せて垂直、斜めもしくは水平に移動させる装置の総称です。油圧ジャッキなどにより荷物を載せて移動させるものはハンドリフトなどとも呼ばれ、移動式の台車として活用されています。

電動で箱型の昇降機はエレベータと呼ばれ、荷物専用のものから人が乗り降りできるものまであります。自動車に昇降機を組付け、人が運転操作できるようにしたものはフォークリフトとして使用されています。事務椅子などの高さを変える部分に使用されているガスシリンダーによるものも、広義の意味では昇降機の使用例です。

昇降機の原理

昇降機を上下移動させるための機構は、歯車によるもの、電動アクチュエータによるもの、油圧ジャッキやガススプリングによるものなど、大きさや対象物、移動量によってさまざまなものがあります。最も単純で身近な昇降機構は滑車によるものです。その場合、釣り合い用のおもりや動滑車などを用いて負荷を軽くすることで小型化や省エネを実現しています。

エレベーターなどのように、昇降機そのものは移動せず、その場で昇降を繰り返すものは機械式、電気式タイプがあります。ハンドリフトやフォークリフトのように、昇降機そのものを別な場所へ移動させるものは機械式によるものが多く、電気式であっても内蔵バッテリー等を使用しているものが見られます。

また、昇降機は故障した際に自由落下を防止する安全装置が付いています。これは、故障時の人的、物的被害を最小限にするために必ず必要なものです。さらなる安全策として、建築基準法や労働安全法といった法により寸法や点検、使用方法などに規制をかけています。

昇降機の種類

昇降機の代表的な種類は、以下の通りです。

1. エレベーター

エレベーターは、人や荷物の移動に使われます。高層ビルやマンションなど幅広い建築物に設置されており、私たちの日々の生活に欠かせない昇降機です。主索や鎖で吊るタイプと、油圧ジャッキを使った駆動タイプがあります。

2. 段差解消機

段差解消機は、段差がある場所で使われます。テーブル台が段差に合わせて上下し、玄関の出入りや建物内で段差がある場所でも楽に移動が可能です。スロープを設置できない狭い場所などでも活躍します。

3. いす式階段昇降機

いす式階段昇降機は、階段の上り下りを助ける昇降機です。公共施設や個人宅のどんな階段にも設置が可能で、高齢者や足腰が不自由な方を助けます。いす式と車いす式の2タイプがあり、利用者の介助のレベルに合わせて選びます。

4. エスカレーター

エスカレータは移動階段とも呼ばれ、踏段が動力により連続的に昇降する装置です。時速1.8kmほどの速度で移動し、1段に2名が乗ると1時間に9,000名が利用できます。より多くの人が移動する場所に設置されます。

5. 小荷物専用昇降機

小荷物専用昇降機は、荷物専用の昇降機です。比較的小さめの荷物を運ぶ昇降機なので強度などの安全基準が緩和されており設置費用は割安です。荷物を運ぶ多様な職場で活用され、機能性や安全性だけでなく環境負荷の軽減にも貢献します。

昇降機のその他情報

1. 昇降機の価格

昇降機の価格は大きさ、構造、機能によって大きく異なります。手動で小さな荷物を昇降させるタイプであれば1万円前後です。しかし、小型といっても昇降以外に走行可能なタイプや電動タイプなど、機能が増える分だけ価格は増加し、少なくとも数万円程度は必要となります。

エレベータタイプの昇降機は、設備の設置費用がかかるため割高です。配膳や書類用の小荷物用昇降機は90万円以上、工場などで使用される何百キロも昇降可能なタイプは150万円以上となります。

昇降機には介護・医療施設で使用される階段昇降機もあります。階段の端にレールを施工し、そこに備え付けられた椅子に乗ることで階段の上り下りが可能となる昇降機です。直線の階段に据え付ける昇降機であれば工期1日で取り付けることが可能で、価格は60万円程度です。曲線タイプも工期1日で価格は120万円程度となります。

昇降機には様々な種類、使用用途があるため、目的によって価格は大きく異なります。また、選択する機能によっても価格が変化するため、本当に必要な機能を選ぶことが大切です。

2. 昇降機のレンタル

昇降機は機能によっては非常に高額となる場合があります。そのため、昇降機はレンタルをしている企業が多く存在します。購入と同様に施工は1日で、施工前に設置可能かどうか相談することも可能です。一般的に、階段式昇降機のレンタルが多くあります。お年寄りがいる家庭、ケガで階段の昇降が困難になっている場合など、昇降機が必要ではあるものの購入まではしたくないという要望を叶えてくれます。

直線式、曲線式などタイプにもよりますが、相場は月々1~2万円程度です。契約年数は、最低契約期間を定めている業者があるため注意が必要です。また、設置および撤去費用として別途費用が必要であり、この費用も業者によって異なります。メンテナンス費用を無償としている業者もあり、使用中に不具合が出ても対応してくれるサービスが安心です。

参考文献
https://www.n-elekyo.or.jp/encyclopedia/mechanism/elevator.html
https://www.monotaro.com/k/store/%E6%89%8B%E5%8B%95%20%E6%98%87%E9%99%8D%E6%A9%9F/
http://www.shinkosangyo-as.com/stairlift/index.html
https://www.kaidan-shoukouki.com/rental/
https://www.smilecare.co.jp/price_rentallinear/

パワーサプライ

パワーサプライとは

パワーサプライ

パワーサプライとは、コンセントなどの交流電源から安定した直流電源に変換する装置です。

コンセントなどの交流電源は産業用・家庭用にかかわらず高電圧のため、そのままでは電子機器を使用することができません。そのため、機器に適した直流の電圧に変換する必要があります。

一般的なパワーサプライには、「スイッチング方式」「トランス方式」の2種類に大別されますが、現在は小型で軽量、高効率などの観点から、スイッチング方式が主流となっています。

パワーサプライの使用用途

パワーサプライは、その名の通り、電源を供給するための装置です。交流の電源から電子機器に適した直流の電圧に変換するためのものなので、どこの家庭にもある電子機器類のほぼ全てに内蔵されています。

壁のコンセントにケーブルを繋ぐと、ケーブルの反対側にはパワーサプライがあると思ってよいと思うほど、どの電子機器にも使用されています。

電圧を調整することのできる装置ですので、パワーサプライの使用によってトランスを使用しなくでも電源電圧を供給することができます。

パワーサプライの原理

トランス方式のパワーサプライは、交流の電源電圧をトランスで適切な電圧に変圧し、整流器で直流に整流します。それをコンデンサで平滑して安定化した直流電圧を供給します。

スイッチング方式のパワーサプライは、交流の電源電圧を直流にし、それを高速スイッチング回路でパルス状の高周波電力に変換します。この高周波電力をトランスを用いて電力を整流、平滑して、直流の適した出力電圧を得ます。

トランス方式はノイズを小さく抑えられますが、大きく重くなり、電力効率も悪くなってしまいます。対してスイッチング方式は、高効率で軽くすることができますが、ノイズが大きくなってしまいます。

パワーサプライを100%の効率で動作することはできませんので、損失が熱となり発熱します。その発熱量は、一般的には以下の式で求められます。

発熱量(W)=入力電力-出力電力=(出力電力/効率)-出力電力

発熱量が大きくなりすぎると、出力の低下や故障の原因となります。

パワーサプライのその他情報

1. パワーサプライの自作

パワーサプライは構造が単純なため、自作することが可能です。必要な材料は、抵抗、平滑用コンデンサ、ダイオードの4つです。

まず、受電電圧を、抵抗によってドロップさせます。その後、ダイオードを使用して直流へと変化させます。このとき、全波整流したい場合はダイオードが2つ必要です。

最後に、平滑用コンデンサを負荷と並列に接続すれば完成です。抵抗は、変圧器でも代用出来ます。パワーサプライの容量はこれら個々のパーツの容量によって決定されます。複数台負荷を接続する場合はより多くの容量が必要です。

2. 小型パワーサプライ

産業用のパワーサプライは、一般に制御盤内に収納されている場合が多く、盤内に貼り付く程度に小型です。現在はDINレール取り付けが主流と言えます。

一般家庭では、パソコンやスマートフォンの充電用に使用されるACアダプタがパワーサプライです。小型化も進み、手のひらサイズとなっています。音響機器関係では、アンプ用としてパワーサプライが用いられます。こちらも、手のひらサイズで8機器ほどに電源を分配することができます。

3. パワーサプライによるノイズ

音響機器の用語として、パワーサプライは、エフェクタ等へ電源を供給する装置です。エフェクタは音楽にリバーブやローパスフィルタなどのエフェクトを追加する装置です。分類としては、アナログ機器とデジタル機器に分けられます。

パワーサプライ自体は容量以下であれば、1つでいくつのエフェクタへも電源を供給できます。ただし、アナログ系エフェクタとデジタル系エフェクタを同じパワーサプライに接続すると、ノイズが発生します。

原因は、デジタルエフェクタの仕組みにあります。デジタル系エフェクタは電子回路を用いているため、音声信号や電気信号をチョッパ等で変換して方形波を作っています。方形波はアナログ波形に歪みを生じさせるため、音声のノイズとなってしまいます。</br />
ノイズ対策として、アナログ系エフェクタとデジタル系エフェクタのパワーサプライを分けます。電気的に絶縁することで、方形波によるノイズを除外できます。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/22/140/index.html

リミットスイッチ

リミットスイッチとは

リミットスイッチリミットスイッチとは、機械部品の動きや物体の存在によって作動するスイッチです。

制御システムの一部として、安全インターロックや特定位置を通過する物体を検出して、自動起動・停止や機械の可動域の制限、位置検出などの制御をするために使用します。

リミットスイッチは、使用環境における外力、水、油、ガス、粉塵などから保護するために、金属や樹脂製ケースにマイクロスイッチを封入ケースに組み込んだもので、アクチュエータ(機械的検出部)が動くことで接点がオン、オフします。

アクチュエータは、プランジャ式(直動式)、回転レバー、フォークロックレバー、フレキシブルロッドなどがあり、用途や使用環境に応じてさまざまな形状をしたものがあります。

アクチュエータの種類

図1. アクチュエータの種類

リミットスイッチの使用用途

リミットスイッチの使用用途は、物体の位置を検出した結果で電気回路をオン、オフすることです。

工場の生産ラインなどの自動制御を行うオートメーションシステムでは、リミットスイッチで機械の動作や位置を検出します。例としては、リミットスイッチを検出位置に取り付け、異常動作位置でオンになり警報を発報し機械の操作を停止します。

また身近な例では、エレベーターのカゴ(人や荷物を載せ昇降する搬器)が、停止階の所定の位置に来た特に、リミットスイッチが作動しモータを停止させカゴが停止します。
このように、リミットスイッチは自動的制御システム内では、さまざまな用途で使用されています。

リミットスイッチの原理

基本的なリミットスイッチは、本体、ヘッド、マイクロスイッチ、プランジャ回転軸(回転レバー、フォークロックバーのみ)、アクチュエータで構成されています。

リミットスイッチの原理を以下に、回転レバー式アクチュエータの場合で説明します。

リミットスイッチの動作

図2. リミットスイッチの動作

  1. 被検出物体が移動し検出すべき位置に向かって移動します。
  2. アクチュエータは被検出物体に押され回転します。
  3. アクチュエータと固定された回転軸が回転します。
  4. 回転軸のカムがプランジャを押します。
  5. プランジャ先端に取り付けられている可動接点が移動します。
  6. 可動接点が固定接点接触し、電気回路がオンになります。

リミットスイッチの接点

図3. リミットスイッチの接点

リミットスイッチの選び方

リミットスイッチには多くの種類や仕様があり、基本的な選び方としてポイントを以下に説明します。

1. 使用環境による選び方

  • 一般形
    一般的な環境の屋内外で使用するタイプです。使用できる周囲温度は、-10~80℃ぐらいになります。
  •  耐環境形
    下記のような特殊な環境で使用するタイプです。
    使用する環境の雰囲気が、高温もしくは低温になる
    リミットスイッチに薬品や油、水滴、粉塵がかかる
  • スパッタ対策形
    溶接のスパッタがかかる
  • 長寿命形
    高耐久性が必要な使用方法である
  • 防爆形
    使用する場所が危険場所で耐防爆を使用する必要がある

2. アクチュエータの種類による選び方

使用用途に適したアクチュエータの種類を選定します。下記は代表的な例で、その他にも数種類のアクチュエータがあります。

  • プランジャ式(直動式)
  • 回転レバー
  • フォークロックレバー
  • フレキシブルロッド

3. 特性による選び方

動作までの動き(PT)
ここでの「動作」は、接点がオン、オフするまでの角度や距離を示します。回転レバー、フォークロックレバーの場合は、被検出物体がアクチュエータを回転させる角度は、動作までの動き(角度)より大きくなるように、リミットスイッチの取り付け位置とアクチュエータの角度を設定する必要があります。

プランジャ式とフレキシブルロッドの場合は、被検出物体がアクチュエータを押す距離は、動作までの動き(距離)より大きくなるように、リミットスイッチの取り付け位置とアクチュエータの位置を設定する必要があります。

※ なお、被検出物体の動きは、アクチュエータの動作限界位置(TTP)以内に抑える必要があります。

定格
リミットスイッチには、それぞれの型式ごとに定格が規定されており、カタログや取扱説明書に記載されています。電気回路の使用電源に適合した定格のリミットスイッチを選定する必要があります。

リミットスイッチのその他情報

リミットスイッチの故障と対策

リミットスイッチの故障の原因は、機械寿命や摩耗による経年劣化の場合もありますが、大半は使い方に原因があるといわれています。ドッグやアクチュエータの位置調整不良、シール不良などがそれに当たります。

たとえば、リミットスイッチの取り付け不良も故障の原因の一つです。機械の可動域の制限用に取り付けたスイッチが複数回作動すると位置が徐々にずれていき、押し込み量が足りずにスイッチが作動しなくなることがあります。対策として、スイッチ本体に設定位置表示機構が付属されたものもあります。あらかじめ設定した位置までスイッチを押し込むようプログラムしておけば、スイッチの位置が多少ずれたとしても正常な動作をするようになります。

リミットスイッチの作動に使用する被検出物体の設計にも注意しなくてはなりません。被検出物体のカット角度は45度以下が適当とされています。45度を超えると、被検出物体の移動速度によってはレバーシャフトに加わる力が過大になるため、故障の原因になります。移動速度が速い場合は、レバーを被検出物体のカット面と平行にするのも効果的です。

また、ドッグに急な段差があると、スイッチが基準位置に回帰した際に強い衝撃が加わる可能性もあります。スイッチのON/OFFの切り替わりはなるべく滑らかになるように設計しましょう。

プランジャ式は、プランジャ部分をOリングやゴムダイヤフラムでシールするものと、ゴムキャップで覆うものの2種類があります。

前者はシールゴムが外部に露出していないので、工作機械の切屑などの熱を持った異物に対して強い反面、砂、切粉などの細かい粒子や塵埃などがプランジャ摺動面にかみ込むという弱点があります。

後者は砂、切粉など粒子や塵埃のかみ込みはなくシール性能が優れていますが、工作機械の切屑などの熱を持った異物はゴムキャップが溶ける、破れるなどの恐れがあるため、コストや用途、使用場所によって使い分けが必要になります。

リミットスイッチは動作時に、プランジャのピストン運動による空気の圧縮・吸引が行われます。このため、長時間プランジャを押し込んだままにしておくと、リミットスイッチ内の内圧が大気圧と同じになり、プランジャの復帰時に大気圧が抵抗となりプランジャがゆっくり復帰することがあります。

また、プランジャや回転軸のシール部分に油や埃が溜まることで動作が阻害され、リミットスイッチの動きが悪くなることもあります。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/limitswitch_apparatus_tg_j_3_2.pdf
https://www.fa.omron.co.jp/guide/faq/detail/faq02986.html

タンタルコンデンサ

タンタルコンデンサとは

タンタルコンデンサ

タンタルコンデンサとは、電解コンデンサの一種で、誘電体にタンタルの酸化物が使われているものです。

電解コンデンサとは、アルミニウムやタンタルなどの酸化皮膜を誘電体として用いたコンデンサを指します。一般的な特徴として、「静電容量が大きいこと」「電圧の極性があること」が挙げられますが、タンタルコンデンサはレアメタルであるタンタルの表面を酸化させて五酸化タンタル (Ta2O5) を形成し、それを誘電体としたものです。

タンタルコンデンサはアルミ電解コンデンサよりも小型で寿命が長く、温度変化にも強く周波数特性が良い特徴があります。一方、主材料のタンタルは非常に高価なので、コンデンサとしては比較的価格が高いです。

また、壊れたときに電極間がショートする危険性があります。そのため、適切な使い方を守ることが大切です。

タンタルコンデンサの使用用途

タンタルコンデンサの用途は幅広く、携帯電話、パソコン、テレビゲーム機、カーナビ、オーディオ機器等々、あらゆる電子機器で使われています。アルミコンデンサと比較すると高周波特性や温度特性に優れているため、高い周波数で電流をON-OFFするスイッチング電源の平滑回路に採用されます。

また、電源回路のスパイクノイズを吸収するデカップリングコンデンサも最適な用途の一つです。さらに、バックアップコンデンサとして、一時的な電源の保持を目的とした使い方もあります。

近年では小型化が進んでおり、高さ0.5mmの製品も登場していて、携帯電話やパソコン等の小型化に貢献しています。

タンタルコンデンサの原理

タンタルコンデンサは、謡極、誘電体、陰極の3つで構成されています。

1. 陽極

材料はタンタルで、焼結された金属棒を介して電極に接続されています。

2. 誘電体

陽極のタンタルを酸化した五酸化タンタルの薄膜が誘電体となります。五酸化タンタルと陰極との間では一種のダイオードが形成され、逆バイアスが維持されている状態では静電容量を持ちますが、順方向に電圧が印可されると大きな電流が流れてしまします。

これがタンタルコンデンサに極性がある理由です。なお、五酸化タンタルの層は極めて薄いため、静電容量を大きくすることができます。

3. 陰極

陰極材料としては、二酸化マンガンもしくは導電性高分子が使われ、電極との間の導通を確保します。導電性高分子は二酸化マンガンより抵抗値が小さく、ESR特性が優れています。

さらに、陰極と電極の間に銀やグラファイトなどの通電用の金属類を挟んで、抵抗値を下げる工夫がなされています。アルミ電解コンデンサでは電解液を使いますが、その電解液が徐々に蒸発して比較的寿命が短いことが短所です。一方、タンタルコンデンサは全て固体材料で構成されているため、寿命が長いです。

タンタルコンデンサのその他情報

1. 使用上の注意事項

タンタルコンデンサが故障する主な原因は、コンデンサの誘電体が局所的にショートした状態になるためです。電源ラインなどの低インピーダンス回路に接続されていると、大きな電流がショートした箇所に集中して発熱し、発火に至ることがあります。

タンタルコンデンサが一旦発火すると、炎を発して燃焼を続け、燃え尽きます。そのため、高信頼性を求められる機器や常時通電する設備を製造するメーカーの中には、タンタルコンデンサの使用を一切禁止しているところも多いです。電池を電源とするポータブル機器においても、タンタルコンデンサの焼損は報告されているため、使用する際は十分な注意と回路検証が必要です。

一般的な対策としては、「いかなる場合も逆電圧を印加しないこと」「コンデンサにかかる電圧に対して十分余裕を持った定格電圧のコンデンサを選定すること」の2つが挙げられます。特に電源回路に採用する場合は、その電源電圧の2倍以上、可能であれば3倍の定格電圧のタンタルコンデンサを採用する事が望ましいです。

また、流入するリップル電流が大きい場合は、コンデンサ内部の発熱で劣化が進行する可能性があるので、放熱に有利な大きめのパッケージを選定することも有効です。

2. タンタルコンデンサの極性表示

タンタルコンデンサは有極性であり、指定された極性を誤ると大きな電流が流れ、最悪の場合発火に至ります。そのため、電極の極性表示を理解しておくことが必要です。

タンタルコンデンサはその構造から、チップ型、金属ケースハーメチックシール形、樹脂ディップ形の3種類にに分類できますが、これらのタンタルコンデンサの極性は次の様に読み取ります。

  • チップ型
    黒いモールドのケースの上面に静電容量や定格電圧とともに白い帯が印刷されていますが、その帯の下側の電極が陽極になります。
  • 金属ケースハーメチックシール型
    高信頼性が要求される用途向けですが、丸い筒状の形状の表面に静電容量、定格電圧などとともに+記号が印刷されています。その+記号側のリード線が陽極です。
  • 樹脂ディップ型
    縦型構造ですが、樹脂表面に静電容量、定格電圧とともに+記号が記されています。+記号が近い側のリード線が陽極です。また、リード線長が不等で陰極側のリード線が短くなっています。

なお、同じように有極性のアルミ電解コンデンサには負極側に表示があり、タンタルコンデンサとは表示方法が異なります。アルミ電解コンデンサからタンタルコンデンサに置き換える場合、極性を間違えないよう十分な注意が必要です。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/capacitors/tc_what1
http://www.hitachihyoron.com/jp/pdf/1966/02/1966_02_11.pdf
https://www.matsusada.co.jp/column/post-15.html
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/capacitors/tc_what1

射出成形機

射出成形機とは

射出成型機

射出成形機とは、プラスチックなどの樹脂を成形する射出成形を行う機械のことです。

射出成形の製造過程は、まず、加熱して軟化した樹脂を金型に流し込みます。その後、高い圧力を金型にかけて成形し、冷却した製品を取り出します。

射出成形は、プラスチック等の樹脂を成形する方法として最もよく利用されている方法です。自動車部品や家電部品はもちろんのこと、文房具や携帯部品といった身近な製品の多くは射出成形で製作されています。

射出成形機の使用用途

射出成形機は、生活用品の多くを製造するのに使用されています。射出成形機が、樹脂の成形を得意としているからです。射出成形機が成形できる材料は、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂、エラストマなど、幅広い樹脂材料の成形が可能です。

射出成形機で製造される製品には、自動車の内外装部品などがあります。自動車内外装部品は、ほとんどが射出成形機で成型されています。また、扇風機や電子レンジ、テレビ、洗濯機など生活に関わる製品でも、ほとんどの外装は射出成形機で製作されています。

射出成形機は小型部品から大型の製品まで、身近な製品の製造になくてはならないものです。

射出成形機の構造

射出成形機の構造は、樹脂を射出する「射出部」と、製品を成形する「型締め部」に分かれます。まず射出部で、約200℃もの高温で樹脂を溶かし、金型に流します。流し込む量や温度を機械に設定するだけで、自動化されて流れていくのが特徴です。

型締め部に設置されるのが金型です。この金型には、樹脂が張り付かないよう離型剤をなじませて昇温させておく必要があります。射出部から金型に流し込まれた樹脂を高い圧力で型締めし、成形します。

成形後、樹脂を冷却して完成です。取り出した樹脂にはバリが発生しているため、バリの除去や検査を行い製品となります。

射出成形機の種類

射出成形機の種類は、成形する材料と、射出成形機の構造によって分類されます。射出成形機が使用する材料には、大きく分けて「熱可塑性プラスチック用」と「熱硬化性プラスチック用」の2種類があります。

  • 熱可塑性プラスチック: 熱を加えると変形するプラスチック
  • 熱硬化性プラスチック: 熱を加えると硬化するプラスチック

一般的な射出成形機のほとんどは、熱可塑性プラスチック用です。また、射出装置の種類には、「プランジャ式」「プリプランジャー式」「スクリュー式」の3種類があります。

1. プランジャー式

ピストン型のプランジャーを使用し材料を射出します。この方式は、1960年代までは一般的でしたが、現在では特殊用途でのみ使用されています。

2. プリプランジャー式

2本のシリンダを組み合わせた方式です。シリンダはそれぞれ、加熱用シリンダと射出用シリンダで構成されています。2本のシリンダを使うため、高いサイクルで成形することが可能です。

3. スクリュー式

1本のスクリューで材料の計測や射出を行う方式です。スクリュー・イン・ライン式とも呼ばれ、現代では最も一般的な方式として使用されています。

 

射出成形機の選定には、使用材料と構造の種類をよく理解しておく必要があります。組み合わせが悪い場合には、うまく製品が成形できない可能性があるからです。

また、成形を失敗するとさらに費用が膨大になってしまうため注意が必要です。

射出成形機のその他情報

射出成形機のメリット・デメリット

射出成形機のメリットは、生産効率が非常に高いことです。小さい部品を製造するときは、効率よく生産するために、一つの金型でとれる製品の個数がなるべく多くなるように製作されています。

また、射出成型の方法は簡単で、射出成形機はかなり自動化が進んでいます。このため、生産性が非常に高い点が大きなメリットと言えます。

射出成形機のデメリットは、コストがかかってしまうことです。射出成形機は、射出部の高い圧力に耐える強度が必要です。さらに型締め部では、精度のよい金型を製作することが求められます。

射出部が高強度であることや、金型の高精度という条件を満たすために、開発費用や加工費用がかかってしまいます。目的の製品に合わせて個別の金型を製造するため、初期費用が多く必要です。

参考文献

https://www.npl-jsw.co.jp/about_injection-molding/
https://www.polyplastics.com/jp/support/mold/outline/
https://i-maker.jp/blog/injection-molding-5609.html
https://www.jdmia.or.jp/mold/

タッチセンサー

タッチセンサーとは

タッチセンサー

タッチセンサーは人が触れたり近づいたことを感知できるセンサーです。

透明なフィルム基板上にタッチセンサーを配置し、人が触れるとオンオフといった回路を切り替えたり、選択したりして操作することができます。

タッチセンサーは強い力を必要とせず軽く触れるだけで作動するので、照明器具のスイッチや自動ドア、エレベータ等に使われています。

タッチセンサーはタッチパネルの原理と同じで、タッチパネルとしては携帯電話やパソコン機器、車載パネル等に利用されています。

タッチセンサーの使用用途

タッチセンサーは軽い力で作動しますので、自動ドアや照明器具のスイッチとして附属されていることが多くなっています。

他に最近では電子レンジや冷蔵庫の画面、コンビニエンスストアのコーヒーサーバーの画面にもタッチセンサーが採用されています。

工業用としては、各種機械の非常停止ボタン、防犯用センサーや着席しているか確認するための着席センサーとしても利用されています。

タッチパネルとしては携帯電話、タブレットパソコン機器、車載パネル、ゲーム機、業務用の端末などがあります。

タッチセンサーの原理

タッチセンサーはガラス基板の上に透明の導電性ポリマーによる透明電極を利用しているものが多いです。

透明のシート状のタッチセンサーというものがあります。また、タッチセンサーには主に静電容量方式と、抵抗膜方式があります。

1. 静電容量方式

人間は導体なので、手をセンサーに近づけるとセンサーの金属板の静電気容量に変化を起こします。
その静電気の容量変化をとらえてセンサーを作動させていますが、手袋をしていると反応しない場合があります。

抵抗膜方式よりも反応が良く、最近のスマートフォンは静電容量方式が主流です。

一般に抵抗膜方式よりも弱い力で操作でき、同時に2点以上のタッチ(マルチタッチ)にも対応可能であるため、最近のスマートフォンは静電容量方式が主流です。 静電容量方式の主要な構成を図に示します。

タッチセンサーの原理

図1. タッチセンサーの原理

初めに自己容量タイプは、センサー電極に指が接近した場合に静電容量が増加する原理を利用して、タッチ座標を算出します。

次に相互容量タイプは、あらかじめトランスミッタ側(送信側)の電極とレシーバ側(受信側)の電極との間に電界を形成しておくと、電極に指が接近した場合に電界の一部が指に向かうため、レシーバ電極で検出される静電容量が減少するメカニズムを利用して、タッチ座標を算出します。

2. 抵抗膜方式

膜の上から圧力をかけると、上下の膜が接触し、通電することによりセンサーとして動きます。主にデジタル方式とアナログ方式の2つの方式があります。

利点としては、検出回路が設計しやすい部分が挙げられます。また、手袋をしたままでも操作が可能で、手での直接操作だけでなくペンによる操作もできますが、その反面、静電容量方式よりしっかりと圧力をかける必要があります。

主に使用用途の一つとしてカーナビが挙げられます。

タッチセンサーのその他情報

フィルム式のタッチセンサー

ここではフィルム式のタッチセンサーについてご紹介いたします。

一般的にタッチセンサーはガラス基板の上に透明の電極を採用しているものが多い一方で、透明のフィルム基材を用いたタッチセンサーも存在しております。

特徴として、一般的に使用されているガラスセンサーよりもフィルム式のタッチセンサーの方が薄く軽いです。また、落としても割れる心配はありません。ガラスセンサーの特徴でもある透明度も備わっており、価格面でも遜色ありません。

フィルム基材は非常に柔らかいため、平面だけではなくガラスセンサーには不可能な曲面形状デザインのタッチセンサーも作製できます。センサーの大きさについてもいわゆるスマホサイズから車載センターインフォメーションディスプレイ向けの大型サイズまで、様々な大きさのフィルムセンサーが市場に出回っています。

参考文献
https://www.sensor-sk.com/fureru/fure01_touchsensor.html
https://www.takagishokai.co.jp/product-search/2017/04/10/118
https://www.nissha.com/products/allproducts/touch.html
https://www.item16.com/touchvu/touchvu_film.html