スラリーポンプ

スラリーポンプとは

スラリーポンプ

スラリーポンプは、液体と固体の混合物であるスラリーを輸送するために使用されるポンプです。

一般的なポンプとは異なり、特別な設計が施されます。スラリーは非常に粘性が高く、ポンプ内部の部品を摩耗させたり詰まらせたりする可能性があります。そのため、耐久性に優れるように設計されているのが特徴です。

ポンプの輸送の方式としては、スラリーの容積を変化させて輸送する容積式と、遠心力を使ってスラリーを輸送する遠心式があります。

スラリーポンプの使用用途

スラリーポンプは様々な産業分野で幅広く使用されています。以下はスラリーポンプの使用用途一例です。

1. 鉱石・石油採掘業界

鉱山業界では、功績や鉱泥を輸送するために使用されます。粉体を運搬する機会が多い鉱山業界ではスラリーポンプは重宝されます。

石油掘削業界でも、広く使用されています。石油採掘の際は石油井戸の深部に到達するために、岩石を削り出す必要があります。この岩石屑のスラリーをポンプで排出するために使用されます。

2. 水力発電所

水力発電所でも、スラリーポンプが使用されることが多いです。水力発電所ではタービンが回転するために水を供給しますが、河川水には固体の微粒子が含まれています。スクリーナなどで濾過した後の土砂などが混じった水をスラリーポンプで排出します。

3. 建築業界

建設現場で使用される砕石や砕砂を輸送するために使用されます。また、ダム建設現場で大量の土砂を輸送するためにも使用されます。

スラリーポンプの原理

スラリーは密度が高く、様々な固体微粒子が含まれるため、スラリーポンプは特殊な設計が必要となります。スラリーを受け入れる取水口、ポンプ内部でスラリーを加速させるインペラ、スラリーを放出する吐出口から構成されます。

取水口でスラリーを吸い込み、インペラの回転によってスラリーを加速させます。インペラーによって加速されたスラリーは、吐出口に送られるのが一連の流れです。

スラリーポンプは高密度流体に対応するため、ポンプ内部に複数の補助羽根を持ちます。これにより、高い圧力を発生させることができます。

スラリーポンプの種類

スラリーポンプには多岐に渡る種類のポンプが採用されます。以下はスラリーポンプの種類の一例です。

1. シングルステージ式

シングルステージスラリーポンプは、スラリーを輸送するための基本的なポンプです。1段のインペラーで構成されるポンプで、構造が簡単で安価な点が特徴です。ただし、インペラが1段であるため、対応揚程は低い場合が多いです。

2. マルチステージ式

マルチステージスラリーポンプは複数段のインペラを持つポンプです。多段式設計により高揚程に対応可能であり、スラリーを効率的に輸送することができます。ただし、シングルステージに比べて高価な場合が多いです。部品点数も多いため、シングルステージよりも故障や閉塞の可能性が高いです。

3. 耐摩耗性スラリーポンプ

高い耐摩耗性を有するスラリーポンプです。ポンプに使用される材料が、摩耗や腐食に対して耐性を持っています。内部部品には特殊な合金鋼、ゴム、セラミックなどの材料が使用され、耐久性や寿命を向上させることが可能です。

スラリーポンプの選び方

設計段階でスラリーポンプを選定する場合、移送目的、対象物の形状や硬さ、化学的腐食性の有無、使用温度などから総合的にポンプの方式を選定します。

輸送するスラリーの性質を把握することが最も重要です。スラリーの比重や固体濃度などを調べることで、選択に役立つ情報を得ることができます。スラリーの性質を把握したら、流量は圧力を必要能力に応じて選定します。

維持管理や修理のしやすさも考慮する必要があります。スラリーポンプは、過酷な環境下で使用されることが多いため、維持管理や修理が困難な場合があります。簡単にメンテナンスができるポンプを選択することが望ましいです。

コストを考慮することも重要です。スラリーポンプはその特性から、他のポンプよりも高価なことが多いです。しかしながら、イニシャルコストが高くても、長期的には適切なスラリーポンプを選択することでコスト削減に繋がる場合もあります。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij/66/6/66_609/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/15/5/15_5_304/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/18/11/18_11_653/_pdf
https://xn--zck0cra1cf9c3c.jp/knowledge/detail04/
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/09/

GPSモジュール

GPSモジュールとは

GPSモジュール

GPSモジュールとは、宇宙上空に多数ある人工衛星から発信されているGPS信号を受信して、位置情報などを割り出す装置のことです。

GPSは「Global Positioning System」の頭文字をとった用語で、全世界の正確な位置情報を測位することができるシステムです。正確な位置情報をGPSモジュールで得ることができれば、現在移動している速度や方角、目的地までの距離を算出することが可能です。

GPSは米国で運用される衛星測位システムですが、日本にはGPS情報を補正できる「みちびき」という日本で運用される衛星測位システムがあります。

GPSモジュールの使用用途

GPSモジュールは、動作、位置情報、移動速度、方向などが必要な機器の位置検出の用途に使用されます。GPSモジュールの具体的な用途は以下のとおりです。

  • スマートフォンやスマートウォッチの地図アプリを使用するための位置観測 
  • カーナビにおける自動車の位置、速度、方向、目的地までの距離の算出

GPSモジュールの製品のスペックによって、位置精度や算出時間、位置情報の誤差の度合いが製品にどの程度影響を与えるのかを考慮して選定することが大切です。

地下や建物などのGPS信号の遮蔽物がある場合、信号を正確に受信できないことがあります。遮蔽物によって小さくなった信号を処理することで、受信できる高精度のGPSモジュールもあります。

GPSモジュールの原理

GPSモジュールの原理は、人工衛星から発信されるGPS信号を受信し、その信号を処理解析することで、モジュールの現在位置を算出する信号処理のアルゴリズムを有する点にあります。GPSモジュールの受信部は通常はパッチアンテナ等の受動アンテナとLNA (低雑音増幅器) により、微弱な信号を検波増幅しRF処理とベースバンド処理がなされることで正確な位置情報を算出するためのGPS信号が処理されます。

このGPS信号を処理するアルゴリズムは、位置検出の精度を高め、消費電流を低減させるために製品ごとに、さまざまな工夫が施されています。人工衛星から発信されるGPSの信号は、2種類の周波数で発信されるのが一般的です。その信号には、信号を発信した時点での時刻と、その時刻における人工衛星の正確な位置情報が含まれています。

そのGPS信号をGPSモジュールの受信部で、4つ以上の多数の人工衛星からの信号を受信します。このGPS信号によって、人工衛星からの距離を算出可能で、3つの人工衛星からの距離が分かれば現在の地球上の位置を算出することができます。

4つ目以降の人工衛星は、時刻の誤差の調整に使われ、より正確な位置情報の算出に役立ちます。

GPSモジュールのその他情報

1. GPSモジュールで扱う周波数

GPSモジュールで扱う周波数は、通常L1帯といわれる1575.42MHzとL2帯と呼ばれる1227.6MHzです。L5帯という1176.45MHzの周波数が用いられる場合もあります。

L1帯にはC/Aコードという民生品向けの識別コードとPコードと呼ばれる軍事用コードが含まれており、C/Aコードが通常は用いられます。

2. GPSモジュールの位置精度

GPSモジュールの測定精度にはさまざまな要因がその位置精度に影響を与えますが、以下が誤差を発生させる主な要因です。

電離層
大気中にある層の1つで、この層をGPS衛星の電波が通過する際に速度が落ちて誤差を生じさせます。

対流圏
これも大気中の層の1つです。乾燥大気中と水蒸気中での電波の屈折で誤差を生じさせます。

マルチバス
GPS衛星から発信された電波を受信したときに、地面や構造物など、さまざまなものに電波が反射します。マルチパスと呼ばれるこの現象によって、電波が乱れることにより誤差が発生します。

この中でもマルチパスは、それが起因で受信できる衛星数量自体やその衛星間の配置が制限されるため、最も大きな誤差要因となります。なお、GPSモジュール自体の性能によって誤差は異なりますが、一般的な機器に搭載されているタイプで受信状況の良い環境で半径10メートル程度、受信状態の悪いところでは100メートル程度の誤差が発生します。

ただし、スマートフォンには、WiFiや時刻補正、アプリ位置情報システムなどGPSを補正するシステムがあるため、それらを併用することで、位置精度をさらに向上させることが可能です。

3. 日本の衛星測位システム「みちびき」

GPSモジュールをより高精度で安定した受信状況にするために、現在は「みちびき」という日本の衛星測位システムがあり、2018年の11月から4機で運用を開始しています。衛星での測位は4機以上衛星があれば可能なのですが、安定性を求めるためには、もっと多くの衛星が見える事が望ましいです。

日本版GPSと呼ばれる「みちびき」は、従来のGPS衛星の電波が遮られて位置情報が不安定になる地点を補い安定した高精度測位を実現しています。

参考文献
https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps
https://www.garmin.com/ja-JP/aboutgps/
https://www.amazon.co.jp
https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps
http://www.ne.jp/asahi/nature/kuro/HGPS/principle_gps.htm
https://jp.techcrunch.com/2019/07/05/2019-07-03-gps-on-the-moon-nasas-working-on-it/

タクタイルスイッチ

タクタイルスイッチとは

タクタイルスイッチ

タクタイルスイッチとは、人がスイッチを押したときに、クリックすることで通電するモーメンタリータイプのスイッチのことです。

ここでのタクタイル (英: Tactile) には「触って感じられる」「触覚の」という意味があり、タクトスイッチとも呼ばれます。タクタイルスイッチは、一般にプリント基板上に設置されて使用されます。

スイッチを押したときに、押したという感触がフィードバックすることが特徴です。そのため、人が操作する電子機器全般に広く利用されています。取り付け方法は、基板の穴に挿入するタイプか基板の表面に取り付けるタイプで大別され、防塵などに有効なシールがあるかどうかでさらに分類されています。

タクタイルスイッチの使用用途

タクタイルスイッチの使用用途は、通信機器やOA機器、実験機器や医療機器、家電品のリモコンの操作部などであり、人の操作が必要な機器で非常に幅広く使用されています。タクタイルスイッチを使用する基板の設計段階で、穴に埋め込むのか、表面に取り付けるのかを適切に見分けて選定する必要があります。

また、精密機器や故障した時の損失が大きい機械でタクタイルスイッチを使用する場合は、防水や防塵等の効果を有し信頼性の高いシール構造のタイルスイッチを選定した方が良いです。プッシュ時のストロークの長さを製品によって使い分けることで、素早く連続でタッチできるような製品にしたり、強い力で押さなければ作動しないような製品にしたりすることもできます。

タクタイルスイッチの原理

タクタイルスイッチは、内部のプッシュ板と呼ばれる板を人手で押した場合に、スイッチ内部に形成されている電気的なスイッチの接点同士が接触することで電流が流れ、スイッチが動作する機構を有しています。タクタイルスイッチは筐体、プッシュ板、フィルム、メタルドーム、3つの接点、取り付け台で構成されています。

メタルドームは、ドーム状の形状をしている導体です。ドームのふちに接点が2つ取り付けられており、ドームの中心部に取り付け台にもう1つの接点が取り付けられています。タクタイルスイッチのプッシュ板が手で押された時、メタルドームの中央が潰されて、ドーム中央にある接点とメタルドームが接します。接点とメタルドームが接することで、3つの接点で電流が通るようになり、スイッチがONになります。

反対に、タクタイルスイッチのプッシュ板から手が離れた場合、メタルドームとメタルドームの中央にある接点が離れ、スイッチがOFFになります。

タクタイルスイッチのその他情報

1. タクタイルスイッチの修理

タクタイルスイッチは一般的に十分な耐久性を持っていますが、使用箇所や使用頻度によっては故障することもあり得ます。修理を行うことになりますが、古い製品やメーカーが既に存在しない等、修理を依頼できないケースもあります。それでも、はんだ付けが行える場合は、ユーザーでの新品への交換は対応可能です。

故障したタクタイルスイッチから品番を確認して、同一のタクタイルスイッチが入手できるかを調査します。もし入手できなければ外観の寸法などから同様の製品のタクタイルスイッチを探すことは、それほど困難ではありません。タクタイルスイッチでは、規格がある程度統一化されているためです。

2. メカニカルキーボードの軸色

パソコンのメカニカルキーボードには、赤軸や茶軸、青軸等のタイプがあります。これらは、キーボード向けのキースイッチの大手メーカーであるドイツのメーカーのキースイッチが、タイプごとに軸の色を変えていることからきています。キースイッチのタイプ毎に軸色が変わるため、軸色を確認すれば、キースイッチのタイプを判別することが可能です。

このうち、茶軸と呼ばれるキースイッチはタクタイルタイプと呼ばれています。ただし、実際にタクタイルスイッチは使われておらず、キースイッチの構造 (によるキーの打感) からその様にメーカーが呼んでいるだけです。

なお、主なキーボードの軸色は6種類あり、赤軸、ピンク軸、銀軸、黒軸、茶軸、青軸です。それぞれキーボードの打感が異なりますが、この打感の違いはキースイッチの構造から来ており、スイッチ構造自体は同一です。

3. タクタイルスイッチとハプティクス

タクタイルスイッチだけでなく、昨今はスマートフォンの操作時に振動を与えることで、実際には存在しない操作ボタンがあるかのような物の感触を生み出す「ハプティクス」と呼ばれる触覚技術が、電子メーカーを中心に盛んに開発されています。

VRやARなどの双方向の高度な通信技術の応用で、仮想空間の中であたかも物に触れているかのような触覚技術を取り入れる技術進歩は非常に早いです。近い将来には、遠隔医療やロボット操作といった領域に、タクタイルスイッチから進化した触覚技術が活躍すると期待されています。

参考文献
https://ac-blog.panasonic.co.jp/20160701
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120510/217190/
https://keshilog.com/jiku/

半導体露光装置

半導体露光装置とは

半導体露光装置

半導体露光装置は、半導体製造工程の内、シリコンウェーハに回路パターンを描写するための装置になります。回路パターンの原型となるフォトマスクに強力な紫外光を透過させ、フォトレジストを塗布したシリコンウェーハに回路パターンを転写します。近年では、細かい回路パターンを微細化するためにEUVと呼ばれる波長が13nmのレーザーを使用する装置もあります。位置決めなどが非常に高精度で要求されるため、装置の値段が高価です。

半導体露光装置の使用用途

半導体露光装置は、MOS(金属酸化物半導体)-FET(電界効果トランジスタ)などの半導体素子を含むIC(集積回路)の製造工程における露光工程で使用されます。

ICの製造工程では、シリコンウェーハ上においてフォトリソグラフィおよびエッチングのサイクルを順次回繰り返し、シリコン酸化物や金属などのレイヤ(層)を所定のパターンに積層および加工する過程で、半導体素子として必要な特性を持つような処理が行われます。一例としてn型MOS(NMOS)の場合、p型のシリコン基板上のゲート領域にシリコンの酸化膜とその上にゲート金属を形成し、ドレインおよびソース領域には高濃度の不純物をイオン注入することで、n型(n+型)のMOSを形成します。このような一連のプロセスにおけるフォトリソグラフィおよびエッチングの各工程は、図のように構成されます(成膜工程S1~レジスト剥離工程S6)。

半導体露光装置

このうち、露光工程(S3)が、半導体露光装置を用いて行われる工程です。回路パターンの寸法や半導体素子の精度によって、露光装置の波長が使い分けられています。

半導体露光装置の原理

半導体露光装置は、光源、コンデンサレンズ、フォトマスク、投影レンズ、ステージで構成されています。光源から発生した紫外光がコンデンサレンズによって、同じ方向を向くように調整されます。その後、回路パターンを構成する1つのレイヤの原型となるフォトマスクを紫外光が通過して、投影レンズで光が縮小され、シリコンウェーハ上に半導体素子の回路パターン(の1つのレイヤ)を転写します。ステッパのような露光装置では、1回転写が終われば、ステージによってシリコンウェーハが移動し、シリコンウェーハ上の別の位置に同じ回路パターンを転写します。フォトマスクを取り換えることで、半導体素子の回路パターンの別のレイヤの転写が可能になります。

光源には、248nmの波長のKrFエキシマレーザーや、193nmの波長のArFエキシマレーザー、13nmの波長のEUV光源などが使用されます。

最新の半導体製造工程のデザインルール(最小加工寸法)は、3~5nm程度まで微細化が進んでいるので、コンデンサレンズやフォトマスク、投影レンズ、ステージすべてに、ナノ単位の高精度が要求されています。また、積層化も進んでいるので、露光は回路パターンを変えて1つの半導体ができるまでに何回も行われます。

半導体露光装置の市場規模とシェア

世界の電子機器市場は拡大を継続しており、それを支える半導体産業の重要性はますます重要になっています。世界の半導体市場は2019年にマイナス成長になりましたが、過去もリーマンショックなどを経験しながらも拡大を継続しています。近年メモリは微細化から3D化へ技術開発が変化しておりエッチング技術の重要性が高くなってきています。

半導体露光装置の市場規模は、2018年時点で1兆852億円です。
消費地域別のシェアは、1位韓国36%、2位台湾19%、3位中国18%、4位米国14%、5位日本7%と続きます。半導体露光装置のベンダ国籍別シェア(2018年)は、欧州(84%)、日本(14%)、米国(2%)で、欧州・日本でほぼ寡占されています。

EUV露光装置について

EUV(Extreme Ultravioletの略)露光装置とは、極端紫外線と呼ばれる非常に短い波長の光を用いた半導体露光装置です。従来のArFエキシマレーザ光を用いた露光装置では加工が難しいより微細な寸法の加工が可能となります。

半導体の微細化は、ムーアの法則(半導体集積回路は3年で4倍の高集積化,高機能化が実現される)に従い微細化されてきています。これまでにもステッパーと呼ばれる縮小投影露光技術や露光波長の短波長化や液浸露光技術の開発により、解像度を飛躍的に向上させてきています。

微細化はウェーハに焼き付けることのできる最小加工寸法が小さくなることであり、その最小加工寸法Rは以下のレイリーの式で表されます。
 R=k・λ/NA ※kは比例定数,λは露光波長,N.A.は露光光学系の開口数

これまでも様々な技術開発により、kを小さくしたりλを小さくしたりNAを大きくすることで、微細化を実現してきています。
EUV露光装置は、露光波長の短波長化によりこれまでの限界を突破できる技術とされ、近年量産化がされています。

半導体露光装置の価格について

半導体露光装置は、現在半導体を効率的に量産するのに欠かすことのできない装置ですが、史上最も精密な機械といわれており、価格は高価になります。

半導体露光装置で利用する光源波長が短いほど、微細なパターンが形成できる上、露光装置の価格も高くなるとされています。波長ごとに、i線が約4億円、KrFが約13億円、ArFドライが約20億円、ArF液浸が約60億円、EUVが約200憶円規模といわれています。

回路が微細になればなるほど信号伝達の高速化や省エネ化などを図ることができますが、近年半導体露光装置の価格も含め微細化によるプロセスコストの増大が無視できなくなってきています。

また半導体露光装置に求められる性能として、半導体製造するコスト面から半導体露光装置のスループットも重要な指標になります。スループットとは、どれだけ高速に回路パターンを露光できるかを示す性能で、スループットが上昇するとシリコンダイ1枚当たりの製造コスト(ランニングコスト)は低下します。半導体チップの量産時に重要視されます。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl1962/41/1/41_1_8/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe1986/57/4/57_4_615/_pdf
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000182.pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspf/79/3/79_3_221/_pdf
http://koueki.jiii.or.jp/innovation100/innovation_detail.php?eid=00064&test=open&age=

ミストコレクター

ミストコレクターとは

ミストコレクターとは、工作機械の切削加工時に発生するオイルミストを吸引し、空気からオイルを分離して回収する装置のことです。

オイルミストとは、オイルが煙状になり、空気中に拡散したものです。オイルミストのほとんどは有害物質であり、人体への悪影響があるほか、その他の機械に付着すれば故障の原因にもなるので、確実に除去しなければなりません。

現在のミストコレクターにはオイルミストを除去する方法として、フィルターを用いる方法、ミストを帯電させて除去する方法、遠心力を用いて除去する方法があります。

ミストコレクターの使用用途

ミストコレクターは、NC旋盤ボール盤マシニングセンタなどを使用する際に生じるミストオイルを回収するために使用されます。

オイルミストが多く発生するのは特に切削加工であり、特に切削油が高いせん断を受ける高圧給油加工、研削加工、高速切削加工などです。このような工作機械とあわせて、ミストコレクターが使用されます。

ミストコレクターの原理

ミストコレクターには大きく、フィルター式、電気集塵式、遠心分離式の3つの方式があります。それぞれの原理について説明します。

1. フィルター式

フィルター式のミストコレクターでは、オイルミストをフィルターを用いたろ過により除去します。ミストコレクターとしては最も一般的な方式であり、通常フィルターは何層も重ねられて使われます。

フィルター式のメリットは構造がシンプルのため、安価に導入できること、現場で管理しやすいこと、安全性が高いことです。デメリットはフィルターの交換など、定期的なメンテナンスが必要であること、フィルターの通気抵抗により、電動機の消費電力が多くなること、交換した後のフィルターは、産業廃棄物として処理しなければならないことなどが挙げられます。

2. 電気集塵式

電気集塵式は、高電圧によるコロナ放電によりオイルミストに電荷を与えて、マイナス電極である電圧使用集塵極板の静電力によって油分を吸着、回収する仕組みのオイルコレクターです。コロナ放電とは、普通は電気を通さない気体でも高電圧を印加すると気体の一部が電離して、電子や正負イオンが発生し、電界中を移動することによって気体中に電流が流れる現象のことです。

電気集塵式のメリットは、1μm以下の非常に微細なオイルミスト粒子でも回収できること、フィルターを用いていないので、フィルター交換や、フィルター廃棄の手間が不要である、電極は洗浄によって再使用できることです。一方で、デメリットとしては導入コストが高く、高電圧の取り扱いに注意が要ること、電極のメンテナンスや洗浄の手間やコストがかかることなどが挙げられます。

3. 遠心分離式

遠心分離式は、回収したオイルミストが含まれている空気を遠心力によって、空気とオイルミストに分解する仕組みのミストクレクターです。遠心分離式は他の方式に比べると、メンテナンスや設置が容易なのがメリットです。しかし、1μm以下の微細なオイルミスト粒子の捕集には向いていません。

ミストコレクターのその他情報

1. ミストコレクターの設置

ミストコレクターの設置には、設置する機械によって注意が必要です。オイルミストが適切に回収できなければ作業者への健康被害や、空調設備などの故障にも繋がりかねません。ミストコレクターには3つの設置方法があり、工作機械や工場の環境によって使い分けることが大切です。

直接吸気方式
マシニングセンタやNC旋盤など、加工エリアが仕切られた工作機械では、密閉エリアを直接吸気します。最も効率よくオイルミストを回収できます。

局部吸気方式
汎用旋盤や研削盤など、加工部が開放空間になっている工作機械では、局部吸気方式でオイルミストを回収します。工作機械の加工部でオイルミストが発生する部分に、フードやホースなどを近づけて、オイルミストを吸引します。

広域吸気方式
広域吸気方式は、工場全体の空気を吸引します。直接吸気方式、局部吸気方式とセットで行う吸気方式です。

2. ミストコレクターと集塵機の違い

ミストコレクターと類似した装置に集塵機があります。集塵機は、切削加工で生じる粉塵などの個体を回収するための装置です。ミストコレクターが切削油を用いた切削加工で使われるのに対して、集塵機は切削油を用いないドライ加工で使う装置になります。

なお、粉塵は一般的に、空気中に浮遊するすべての細かい粒子状の固体のことです。粉塵でも10μm以上のものは煤塵 (ばいじん) 逆に細かい粉塵で特に小さいものが、PM2.5と呼ばれる微小粒状物質です。PM2.5は人体にとっては特に肺の奥深くまで入り、呼吸器や循環器に影響を与えることが懸念されています。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2016.7/0/2016.7_45/_pdf
https://www.apiste.co.jp/gme/technical/detail/id=4340

PTCサーミスタ

PTCサーミスタとは

PTCサーミスタとは、ある一定の温度を超えると抵抗値が急上昇する電子部品です。

PTCとは、Positive Temperature Coefficient (正の温度係数) の頭文字をとったもので、温度と抵抗に正の相関があるという意味です。サーミスタ (英: Thermistor) は、Thermal Sensitive Resistor「熱に敏感に反応する抵抗体」から派生した言葉です。抵抗体を被測定体に接触させ、電気抵抗の差から温度を測定することができる部品のことを指します。抵抗体には金属酸化物半導体を使用していることが特徴です。

また、PTCサーミスタを使用した過電流保護装置をリセッタブルヒューズと呼ばれます。管ヒューズやブレードヒューズは一度切れると交換が必要な合金エレメントを使用するため、一般的なヒューズとは原理が異なります。

リセッタブルヒューズは回路に過大電流が流れる場合、PTCサーミスタが高温になり抵抗値が高くなることで電流値が制限されます。過大電流発生の原因が解消されると、PTCサーミスタの温度が低下して抵抗値が低くなります。そのため、復帰可能なヒューズとして利用されます。

PTCサーミスタの使用用途

PTCサーミスタは電子基板などに使用されており、家電製品から産業用途まで幅広く使用されます。以下はPTCサーミスタの使用用途一例です。

  • スマートフォンなどの過電流・過負荷保護
  • 小型モータの過負荷保護
  • 電気カーペットや電気ヒータ
  • モーターやパワー半導体の過負荷保護

PTCサーミスタは温度が低い時には抵抗値も低いですが、過大電流によって過熱すると抵抗値が急上昇します。この仕組みにより、電気回路の過電流保護に使用されます。組み込まれる回路はヒーター回路や電子通信機器などです。

また、パワー半導体やモーターなどを使用する際には、過熱の保護を考慮する必要があります。そこでPTCサーミスタが使用されます。過熱から保護するために排熱用のヒートシンクやモーター巻線などと、PTCサーミスタを物理的に熱結合させることで利用します。

PTCサーミスタの特性から抵抗値が増加することを利用し過熱検知を行い、動作の停止や電源遮断を行う形で回路を構成します。

PTCサーミスタの原理

PTCサーミスタは大きく3つの特性を得ています。

1. 抵抗温度特性

抵抗値が室温からキュリー点 (室温の2倍程度の抵抗値を示す温度) まではほぼ一定であり、キュリー点 を超えると急激に抵抗値が上昇します。この性質により、電子回路の過熱を素早く検知して回路電流を制限することで、電子部品の故障を防止します。

2. 静特性 (電圧電流特性) 

キュリー点を超えるまでは、電圧の上昇に比例して電流も上昇します。キュリー点を超えるとサーミスタ自体の抵抗値が上昇するため、電流値は減少していきます。すなわち一定電力を保ちます。電圧電流特性は、山なりのようなグラフになるのが特徴です。

3. 動特性 (電流時間特性) 

PTCサーミスタの電流時間特性は、時間の経過とともに電流値が減少していく点が特徴的です。通電直後に大きな電流を流すことができる特性を利用して、モータ起動などに使用されます。

PTCサーミスタの種類

PTCサーミスタにはポリマー系とセラミック系の2種類に大分されます。

1. ポリマー系

ポリマー系はポリエチレンなどのポリマー材料に導電性粒子を混ぜて製造されるPTCサーミスタです。導電性粒子にはカーボンブラックやニッケルなどが使用されます。

頭文字を取ってPPTCともばれます。また、リセッタブルヒューズはポリスイッチなどとも呼ばれますが、この名称はポリマーが由来です。過電流保護の用途にのみ使用されるPTCサーミスタです。

2. セラミック系

チタン酸バリウムに微量の希土類元素を添加したセラミックが材料のPTCサーミスタです。添加剤の量や種類を調整することでキュリー温度を調整します。過電流保護のみではなく、消磁回路や自己制御型の加熱素子にも使用されます。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/3898/
https://ednjapan.com/edn/articles/1712/20/news012.html
https://www.maximum-tech.co.jp/ptc.html
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/temperature/limt-sensor/technote/apn-limt-sensor.html
https://www.murata.com/ja-jp/products/thermistor/ptc/basic/ptc
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/temperature/limt-sensor/technote/apn-limt-sensor.html

CNC画像測定システム

CNC画像測定システムとは

cnc画像測定システム

CNC画像測定システムとは、測定対象物をCCDカメラで拡大して寸法や形状、表面性状を観察するためのシステムのうち、コンピュータにより数値制御され自動測定を行うものです。

測定対象物やCCDカメラを任意の位置に高速で高精度に移動させることができるだけでなく非接触で測定を行うため、測定対象を傷つけることがありません。また、レーザや画像処理によるオートフォーカスによる高精度なピント合わせが可能で、画像処理により肉眼では観察できないキズや欠陥などを見つけることができます。

CNC画像測定システムの使用用途

CNC画像測定システムの使用用途は、連続した自動測定を高速高精度で行うことです。基盤のパターン測定や電子部品の測定など、極微小で同じパターンが連続するような測定に適しています。

同じパターンの連続により、どこを測ったか分からなくなる混乱や疲労が人間には生じるため、常に同じ動作を精度よく行うCNC画像測定システムは半導体の製造ラインでは欠かせないものです。また、人間による測定では微妙な位置合わせのばらつきが誤差に与える影響が大きく、手動による測定に向いていないものにも適しています。

CNC画像測定システムの原理

CNC画像測定システムは、寸法や形状、表面性状を観察するためにCCDカメラで測定対象物を拡大します。CCDカメラで得た画像を表示するための装置や、画像から寸法や表面性状を測定したり、画像そのものを加工するためのシステムが必須です。

測定システムの制御から画像処理までは、専用のアプリケーションソフトをインストールしたPCで行うことが一般的です。CNC画像測定システムの設置および使用は、温度管理された専用の測定室を用意することが必要になります。これは装置の精度の高さと測定対象の微細さから、温度の変化が測定の誤差に与える影響が大きいためです。

CNC画像測定システムは、手動で操作することもできますが、そのほとんどは専用のコントローラもしくはPCのアプリケーションソフトから行います。早い応答性と高精度の位置決めをするため、ステッピングモーターボールネジを組合せた機構にデジタルスケールで座標を読み取り、フィードバック制御を行っています。

CNC画像判定システムのその他情報

1. CNC制御

CNC制御とは、「Computer Numerical Control」の略称で、コンピュータを使って工作機械等を制御することです。移動方向や移動速度といった機械の動きをプログラミングで自動化することで、高精度かつ高速な動作が実現可能になります。

CNC制御ではGコードとMコードと呼ばれる2種類のプログラム言語を用いて記述されます。Gコードでは位置決め等の加工、動作の条件や順番を記述しており、MコードはGコードを補助する役割です。

2. CCDカメラの構成

CNC画像判定システムにも使用されているCCDカメラは大きくマイクロレンズ、カラーフィルター、フォトダイオードから構成されており、各部品は以下に示す働きがあります。

マイクロレンズ
レンズを通った光を効率良くフォトダイオードに届けるために集光する働きを担っています。

カラーフィルター
光の色をRGB (赤、緑、青) もしくはCMY (シアン、マゼンダ、イエロー) に分解し、フォトダイオードに届けます。

フォトダイオード
受光すると電荷を発生させる光電変換を行ち、電荷を垂直及び水平に転送します。転送された電荷はCCDの出力部で電荷量を電圧に変換し、画素ごとに画像出力されます。

各フォトダイオードにR、G、Bと割り当てているため解像度は本来のCCD画素数の1/3ほどに落ちてしまいます。画像処理エンジンが補完を行い、本来の画素数の画像に仕上げています。なお、合成処理を行わずにフォトダイオードで取り出したデータをそのまま保存したのがRAW形式です。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/image.jsp
https://www.nikon.co.jp/technology/product/nexiv/

輪郭形状測定機

輪郭形状測定機とは

輪郭形状測定機

輪郭形状測定機とは、物体の輪郭形状をトレースし、その形状を正確に記録、解析、測定するための装置です。

輪郭形状測定機の中でも、スタイラスと呼ばれる触針で測定対象の表面を直接なぞり、その動きを正確にトレースするものは接触式と呼ばれます。対して、レーザ等で表面からの反射光をとらえて表面をトレースするものを、非接触式と呼びます。

非接触式の輪郭形状測定機は、比較的容易に作業ができる反面、物体表面の材質や性状などにより反射光の状態が大きく変化してしまうのが欠点です。そのため、条件に左右されない接触式のものが広く普及しています。

輪郭形状測定機の使用用途

輪郭形状測定機は、主に金属加工製品の開発や生産、品質管理のために、広く用いられています。さらに、一連の測定動作をプログラムにして、生産ラインサイドでの自動計測用として使用されることもあります。

なお、触針式の輪郭形状測定機は表面にキズをつける恐れがあるため、外観品質が重要な製品の場合には、抜き取りで検査を行うことも多いです。輪郭形状測定機は細かいピッチで正確に形状、寸法が測れるため、リバースエンジニアリングとしての活用例もあります。

輪郭形状測定機の原理

ここでは、広く普及している接触しきの輪郭形状測定機の原理について説明します。接触式の輪郭形状測定機は、水平方向に移動する検出器と、上下に大きく円弧運動するスタイラスで構成されています。

水平方向の移動によるX座標と、スタイラスの上下位置のY座標とし、デジタルスケールを用いてスタイラスの先端の座標を常にプロットすることで、輪郭形状をトレースすることが可能です。スタイラスを取り付けるアーム部分は、円弧運動として上下運動することに注意が必要です。

つまり、スタイラス先端も測定物の形状に従い、円弧運動で追従します。よって正確にXY座標をプロットするには、円弧運動によるX方向の誤差を補正しなければなりません。また、スタイラスの上下運動量を測るためのデジタルスケールが、直動の移動量しか測れないものは、円弧運動を直動運動に変える機構が必要です。

検出器には正確な位置決めが重要なので、ボールネジステッピングモーターを使用した動作を行います。高精度機は、熱膨張による影響を最小限にするために、電源や制御基板などの電装部品は外部ボックスとして独立していることが一般的です。

輪郭形状測定機のその他情報

1. 輪郭形状測定機の追従角度

輪郭形状測定機の先端には、スタイラスと呼ばれる針が付いています。この針の上下動とX軸の移動量で輪郭形状をトレースするわけですが、スタイラスはアームに垂直に取り付けられているため、直角の部分を測定することはできません。

輪郭形状測定機が測定できる角度のことを追従角度といい、上り方向と下り方向のそれぞれを指します。追従角度はスタイラスの形状に左右され、上り方向と下り方向のそれぞれに限界があります。

スタイラスの形状が円錐形や左右対称の形状をしていれば、上りと下りの追従角度は等しくなります。しかし、スタイラスが左右非対称の形状をしている場合は、上りと下りの追従角度が変わるため注意が必要です。また、測定速度や測定力によっても追従角度は変化し、測定速度が速いほど急勾配の追従が難しくなります。

2. 輪郭形状測定機の日常点検

接触式の輪郭形状測定機は、スタイラスの先端が測定対象の表面に接しているため摩耗します。摩耗が少ない場合でも、繰り返し使用することによるヒステリシスなどの経年変化による影響を受けてます。

そのため、定期的な点検が必要となりますが、大掛かりなメンテナンスを頻繁にすることは、工数や費用の面からも現実的ではありません。そこで、日常点検として重要な機能、性能に関する点を簡易的に補正することになります。

輪郭形状測定機の日常点検では、主に以下の3点を確認・補正します。

  • 測定値の正確性
    ブロックゲージなどの校正された基準器を測り、校正値と実測値のズレを補正します。
  • スタイラス先端の摩耗量
    値付けされた段差などを測ると、スタイラスの摩耗量に応じて先端が沈み、実際の形状と測定された形状にわずかなズレが生じます。このズレをもとに、摩耗量を計算して補正します。
  • 上り測定と下り測定の同等性
    ピンゲージや精度等級の高い鋼球など、左右対称な形状を測定し、測定された形状の左右の歪みを同等になるよう補正します。

ほとんどの場合、いずれの補正も測定値からソフトウェアが自動で計算を行ってくれるため、使用する上では日常点検を忘れずに行うよう管理することが重要です。さらに、自動車産業と品質マネジメント規格であるIATF16949や、ISO9001などを取得、維持するなら、定期的にトレーサビリティが確保された校正作業も行う必要があります。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/ss/products/measure-sys/measurement-selection/type/shape.jsp

DCファンモーター

DCファンモーターとは

DCファンモーターとは、モーターによってファンを回転させるもののうち、直流電流で駆動するものです。

構造によりプロペラファン、ブロワ、クロスフローファンなどの種類に大別されますが、送風を行うという点では共通しています。DCファンモーターはどれも大きさや風量、特性があります。

そのため、カタログスペックを確認し、用途や目的に応じて使い分けることが大切です。最も一般的なものは、プロペラファンによる送風なので、選定に迷った場合はこちらを選択するのが無難です。

DCファンモーターの使用用途

DCファンモーターは、ファンの回転で空気を送風したり、対流させて家電製品やOA機器などの電子機器内部を冷却したりするために使用されています。DCファンモーターによる冷却には、内部の熱を外部に排出する方法と外部の熱を内部に流入させる方法があります。

温度が上昇すると、電子機器の熱暴走を招くだけでなく、故障の原因も起きやすいです。DCファンモーターによる冷却は、空気の対流によるものなので、機器の構造や温度などを考慮して、最も効率の良い方法を選ぶことが求められます。

DCファンモーターの原理

DCファンモーターの構造は、大きく分けて構造部材のケーシング、送風のためのファンやランナー、それを回すためのDCモーターに分けられます。DCモーターでファンを連続回転させることで、空気を圧送して送風します。

プロペラファンの場合、送風方向は回転軸と同一方向になるため、小型で大きな風量が得られ、比較的静かに回転します。対してブロアは回転軸と垂直になり、送風の吐出口が絞られるために空気の流れを集中させて高い静圧を得られます。

DCファンモーターの構造

代表的なファンは、羽根車、ケーシング、主軸、軸受、軸封から成り立っています。

1. 羽根車

風をつくる部分でファンにおいて心臓部となる部品です。送風の効率にかかわり用途や環境などに応じてさまざまなものがあります。

2. ケーシング

ファン自体の外枠と内側の風の流れ道をつくるもので、ファンの吸入部や吐き出し部をつくる部分です。

3. 主軸

ファンの中心の軸になる部分で、羽根車を支える強度をもちます。

4. 軸受

主軸の回転運動を受ける部分で、その作用をスムーズにし支える部分です。軸受があることにより、摩擦や摩耗を軽減できます。品質が悪いと、機械的な摩耗などにより故障につながるため、重要な部分です。

DCファンモーターのその他情報

1. 送風抵抗とは

空気を流路内に送る際、流路内に空気が進む方向とは逆向きに送風抵抗が発生します。流路内に送風を妨げる障害物があるほど送風抵抗は大きくなり、風量は減少します。送風抵抗は、装置内の静圧を上昇させるエネルギーとなり、圧力損失とも呼ばれます。

ファンによる冷却の場合、送風抵抗が発生するため、内部構造による圧力損失を考慮してファンの性能を選ぶ必要があります。また、ファンによる冷却を考えると、送風を妨げることない構造となるような設計が重要です。

必要な風量や静圧を得るために、ファンを複数使用する場合は、直列、並列どちらで使用するのが最も効率がよいかも検討します。一般的には、ファンを並列に使用すると風量が大きくなり、直列に使用すると静圧が高くなります。

2. ACファンモーターとの違い

DCファンはモーターと回路で回転速度を変えることが可能です。一方、ACファンは交流電源の周波数で回転速度が固定されます。現在は、回転速度を自在にコントロールできるDCファンが主流になっており、AC電源でDCファンを回転させるACDCファンもあります。

3. DC軸流ファンとは

DC軸流ファンとは、直流駆動の軸流ファンになります。軸流ファンはフレーム中央に羽根が取り付けられており、羽根正面から空気を取り込み、後方に排出します。

ファンを使って風を送る方向が軸方向であり、高風量・低騒音といったメリットが挙げられます。発熱した物質の冷却用途として幅広く使用されています。抵抗物による風量の増減が比較的少ないことが、軸流ファンの特徴です。

4. その他ファンの種類

その他の軸流ファンの種類として、遠心ファン、斜流ファンが挙げられます。遠心ファンは、風を送る方向が後方ではなく、吸い込んだ方向とは90度の方向です。

また、斜流ファンは、軸流ファンと遠心ファンの間のようなファンです。羽根の形状によって軸方向から吸気し、軸の斜め方向に圧力が加わることで、排気方向を変えて送風します。小型・軽量になることが特徴です。

遠心ファンは装置のスペース上、風を後方に送風できない際に適したファンになります。密集した装置の内部の空気を引き出す時等に使用されます。軸流ファンで代表的なファンモーターは、プロペラファンです。翼状のプロペラをケーシング内に置き、回転させることで、回転軸方向に風を発生させます。

風の流れが回転軸方向になるため、コンパクトな構造になります。遠心ファンで代表的なファンモーターは、ブロワです。ブロワは、円筒状に配した前向きの羽根の遠心力によって回転軸にほぼ垂直な向きに風の流れを作ります。

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/reference/cooling_fan01/
https://www.nidec.com/jp/technology/motor/basic/00011/
https://techcompass.sanyodenki.com/jp/training/cooling/fan_basic/002/index.html
https://fan-blower-soufuuki.com/handbook1_1/handbook1_9

測長センサー

測長センサーとは測長センサー

測長センサーとは、測定対象物に投光器側からレーザなどの光を照射し、寸法測定を行う装置です。

測定対象物がレーザなどを遮断することによる光量を受光器側でCCDセンサーやフォトダイオードなどでとらえます。レーザなどの光を、レンズを用いて帯状にすることで、光が受光部まで届いているか届いていないかを検出します。その光が届いていない部分の寸法を正確に測定することにより、寸法測定が可能です。

レーザなどの光を用いて測定するシステムなため、非接触で測定できるという利点があります。しかし、比較的外乱に弱いという欠点もあるため注意が必要です。

測長センサーの使用用途

測長センサーは、鋼材の外径やシート状のフィルムの厚みなどを測定する際に使用されています。0.1秒以下の微小間隔で連続してスキャンすることができるため、製造工場の現場などにおいて、測定対象物が長く連続しているものを途中で切断せず測定し続ける場面に適しています。

また、測長センサーを直行させて使用することでXY方向の寸法を測定したり、断面形状が大きいものは測長センサーを2個以上用いて片側端面ずつ測定することで対応したりすることも可能です。

測長センサーの原理

測長センサーは、レーザ光を測定対象物に照射し、レーザが遮られた箇所の幅をセンサーで検出することで対象物の長さを計測します。レーザを測定軸に対して、平行に照射することも重要です。

レーザが遮られた部分をエッジとして、センサーでエッジの両端の幅を検出することで寸法測定が可能となります。よって構成上、レーザなどを照射する発光部と照射されたレーザなどを読み取る受光部に分かれており、測定した値を表示する表示部も必要です。

なお、レーザは帯状もしくは長方形のように幅を持たせた形状になっています。レーザを読み取る受光部は、一断面でレーザが受光できている部分とそうでない部分を連続して読み取る必要があるため、多くの測長センサーにおいてはCCDラインセンサなどが用いられています。

エッジを読み取って寸法を測定するスキャン間隔は表示部の処理速度に依存しますが、通常の製品では、0.1秒間隔でスキャンできるため、測定対象が多少振れても正確に測定することが可能です。

測長センサーのその他情報

1. 測長センサーの受光部のCCD方式と光量変化方式の違い

測長センサーの受光部は一般にCCD方式と光量変化方式の2種類があり、その構成は大きく異なっています。

CCD方式
受光器に投光された平行な帯状の光をCCDイメージングセンサにて検出する方式です。CCDは平行光を受光する分、受光器側に帯状に配置されており、物体が光を遮った箇所だけ、影がCCDに反映されますので、その分から対象物の長さ計測を実施することが可能です。

光量変化方式
受光器側にレンズがあり、そのレンズで集光された光をフォトダイオードなどの受光素子で検出する方式です。対象物が遮った分の集光の光量は減少するため、その割合から対象物の長さを検出します。

2. 測長センサーの誤差要因と対策事例

測長センサーは、非接触で計測可能な利点がある一方で、外乱の影響を受けるため注意が必要です。特に生産現場などの振動を生じる箇所においては、機器の本来有する測定精度以上に誤差を発生させる要因になります。

センサーとワークを一体化した治具で固定する事例の他、場合によってはローパスフィルタ等のノイズフィルタを用いて対策しなければなりません。CCD受光器の場合には、機種によってはシェーディング補正機能という内部の受光器のリニアリティのキャリブレーション補正が実施可能なものもあります。

その場合には、実際の計測前にキャリブレーション補正を実施することが重要です。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/displacemente_linewidth_tg_j_1_1.pdf