スラリーポンプとは
スラリーポンプは、液体と固体の混合物であるスラリーを輸送するために使用されるポンプです。
一般的なポンプとは異なり、特別な設計が施されます。スラリーは非常に粘性が高く、ポンプ内部の部品を摩耗させたり詰まらせたりする可能性があります。そのため、耐久性に優れるように設計されているのが特徴です。
ポンプの輸送の方式としては、スラリーの容積を変化させて輸送する容積式と、遠心力を使ってスラリーを輸送する遠心式があります。
スラリーポンプの使用用途
スラリーポンプは様々な産業分野で幅広く使用されています。以下はスラリーポンプの使用用途一例です。
1. 鉱石・石油採掘業界
鉱山業界では、功績や鉱泥を輸送するために使用されます。粉体を運搬する機会が多い鉱山業界ではスラリーポンプは重宝されます。
石油掘削業界でも、広く使用されています。石油採掘の際は石油井戸の深部に到達するために、岩石を削り出す必要があります。この岩石屑のスラリーをポンプで排出するために使用されます。
2. 水力発電所
水力発電所でも、スラリーポンプが使用されることが多いです。水力発電所ではタービンが回転するために水を供給しますが、河川水には固体の微粒子が含まれています。スクリーナなどで濾過した後の土砂などが混じった水をスラリーポンプで排出します。
3. 建築業界
建設現場で使用される砕石や砕砂を輸送するために使用されます。また、ダム建設現場で大量の土砂を輸送するためにも使用されます。
スラリーポンプの原理
スラリーは密度が高く、様々な固体微粒子が含まれるため、スラリーポンプは特殊な設計が必要となります。スラリーを受け入れる取水口、ポンプ内部でスラリーを加速させるインペラ、スラリーを放出する吐出口から構成されます。
取水口でスラリーを吸い込み、インペラの回転によってスラリーを加速させます。インペラーによって加速されたスラリーは、吐出口に送られるのが一連の流れです。
スラリーポンプは高密度流体に対応するため、ポンプ内部に複数の補助羽根を持ちます。これにより、高い圧力を発生させることができます。
スラリーポンプの種類
スラリーポンプには多岐に渡る種類のポンプが採用されます。以下はスラリーポンプの種類の一例です。
1. シングルステージ式
シングルステージスラリーポンプは、スラリーを輸送するための基本的なポンプです。1段のインペラーで構成されるポンプで、構造が簡単で安価な点が特徴です。ただし、インペラが1段であるため、対応揚程は低い場合が多いです。
2. マルチステージ式
マルチステージスラリーポンプは複数段のインペラを持つポンプです。多段式設計により高揚程に対応可能であり、スラリーを効率的に輸送することができます。ただし、シングルステージに比べて高価な場合が多いです。部品点数も多いため、シングルステージよりも故障や閉塞の可能性が高いです。
3. 耐摩耗性スラリーポンプ
高い耐摩耗性を有するスラリーポンプです。ポンプに使用される材料が、摩耗や腐食に対して耐性を持っています。内部部品には特殊な合金鋼、ゴム、セラミックなどの材料が使用され、耐久性や寿命を向上させることが可能です。
スラリーポンプの選び方
設計段階でスラリーポンプを選定する場合、移送目的、対象物の形状や硬さ、化学的腐食性の有無、使用温度などから総合的にポンプの方式を選定します。
輸送するスラリーの性質を把握することが最も重要です。スラリーの比重や固体濃度などを調べることで、選択に役立つ情報を得ることができます。スラリーの性質を把握したら、流量は圧力を必要能力に応じて選定します。
維持管理や修理のしやすさも考慮する必要があります。スラリーポンプは、過酷な環境下で使用されることが多いため、維持管理や修理が困難な場合があります。簡単にメンテナンスができるポンプを選択することが望ましいです。
コストを考慮することも重要です。スラリーポンプはその特性から、他のポンプよりも高価なことが多いです。しかしながら、イニシャルコストが高くても、長期的には適切なスラリーポンプを選択することでコスト削減に繋がる場合もあります。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jtappij/66/6/66_609/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/15/5/15_5_304/_pdf
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https://xn--zck0cra1cf9c3c.jp/knowledge/detail04/
https://www.iwakipumps.jp/blog/naruhodo/09/