グリッパ

グリッパとは

グリッパ

グリッパ(Gripper)とは物体を把持(掴んで保持すること)する機構を指します。

グリッパの形状は使用用途によって様々ですが、最も多く汎用的に使用されているグリッパは2本の平行な指が直動して物体を挟み込む2指平行グリッパです。このグリッパはロボットアームや直動機構の先端で機能する装置(エンドエフェクタ)として活躍します。

グリッパを活用することで様々な形状の物体の把持・運搬・設置が可能となり、従来は手作業で行っていた作業の自動化や高効率化を実現することができます。 

グリッパの使用用途

グリッパは指の本数や形状、動力の種類に至るまで種々のタイプが存在しますが、ここでは最も一般的な2指平行グリッパについて説明します。

製品の生産ラインなどで一般的に使用されるグリッパは2本の指を空気圧で開閉するものと電動で開閉するものの2種類が主に存在します。また、把持力や大きさ、指の形状にも製品ごとにバリエーションが設けられています。

シリンダなどの直動機構やロボットアームの先端に用いる際には、動力源を揃えたりグリッパの重量を可搬重量以下に設定したりと固定する可動設備に応じた仕様のグリッパが選定されます。

また、把持する物体の形状によってもグリッパの仕様は異なり、曲面をもつ物体や破損しやすい物体を把持する場合には指表面に柔軟材料を設置するなどの工夫が施されています。 

グリッパの原理

グリッパを動力源の違いで大別すると空気圧グリッパと電動グリッパが挙げられます。

空気圧グリッパは内部が2つの閉空間に分かれており、一方の空間に高圧空気を流入させるとグリッパが閉じ、もう一方を高圧にするとグリッパが開くようになっています。この2つの空間に工場内の高圧エア配管を接続し、電磁弁などで接続の切り替えを行うことでグリッパの開閉動作を制御します。

空気圧グリッパはエア配管内の弁の開閉を切り替えるだけで制御可能なためリレーのみの単純な制御でも運用可能であり、機構も比較的単純なために安価であるという利点がありますが、把持力が安定しない点やサイズの異なる物体の把持は得意ではないことが欠点として挙げられます。

電動グリッパは内部にモーターと送りねじが組み込まれており、モーターの回転方向と速度を制御することでグリッパの開閉動作を制御します。

モーターで動作するので複雑な制御を構築することが可能ですが、PLCなどのコントローラーが必要となります。複数種類の物体を把持できる点や開閉幅が用意に変更できる点も利点として挙げられます。

また、より複雑な形状を把持したい場合や人間の動作を学習させたい場合には3指以上のグリッパが使用されることもあります。 

参考文献
https://www.orientalmotor.co.jp/products/solution_application/detail15/
https://www.nbk1560.com/resources/handling_technology/article/electric-gripper/

アブソリュートエンコーダ

アブソリュートエンコーダとは

アブソリュートエンコーダとは、原点からの絶対角度を出力するエンコーダのことです。

エンコーダは、位置の変化を電気信号に変換して出力する装置を指します。アブソリュート (absolute) は、英語で「絶対的である」という形容詞です。現在の角度に応じて特定の信号が送られるため、直前の角度情報無しで現在の角度を確認することができます。

電源始動後に即座に角度を検出したい場合や角度検出の信頼性を確保したい場合などに使用され、アブソリュートエンコーダの多くは光学式エンコーダが採用されています。

アブソリュートエンコーダの使用用途

アブソリュートエンコーダは角度検出の信頼性が高いため、ロボティクス分野で急速に使用が拡大されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 多関節アームロボット
  • 遠隔手術ロボット
  • 精密部品用の工作機械
  • 自動車生産ラインの産業ロボット
  • 産業用の製品受け渡し装置
  • 協働ロボットの手関節や足関節動作

今後の制御システムの高度化に伴って遠隔操作ロボットも急速に進化すると予想されるため、アブソリュートエンコーダのニーズも増加していくと可能性が高いです。 

アブソリュートエンコーダの原理

アブソリュートエンコーダには小さな溝を掘った円盤が回転軸に付いており、その小溝を光センサで読み取ります。軸にCDを固定したような構造です。この構造によって、電源を入れた瞬間でも円盤がどの位置にあるかを正確に読み取って現在角度を出力することができます。

ただし、角度を読み取る仕組みが複雑なので、相対角度検出のエンコーダより高価です。また、信号の伝送方式もデジタル式とアナログ式が存在します。

  • デジタル方式
    ノイズに強い反面、信号線が多くなります。シリアル通信などの伝送通信を使用すれば、信号線を少なくすることができます。ただし、通信遅延が発生する場合がある上、送受信装置双方に専用送受信機の用意が必要です。
  • アナログ方式
    信号線2本で遅延も発生しない反面、伝送時のノイズに弱くなります。

以上の特性を踏まえて、目的に合った伝送方式の選択が必要です。

アブソリュートエンコーダのその他情報

1. アブソリュートエンコーダのグレイコード利用

アブソリュートエンコーダは、磁気タイプと光学タイプがありますが、光学式が一般的です。光学式では回転ディスクの符号化技法として、グレイコードがよく用いられます。

グレイコードとは、数値符号化の一つで、交番二進符号とよばれます。隣り合うビットの変化が1ビットしかないようにしたものです。これらは、信頼性担保のために用いられます。2ビット以上が同時に変化してしまう場合、精度上の問題で信号の信頼性を保証できなくなります。1ビットのみ変化する場合は、信号の読み間違えを防止することが可能です。

通常の二進数をグレイコードに変換する場合は、二進数の値を右に1文字シフトして 元の二進数の値と排他的論理和を取ります。例えば、10進数で6を2進数で表現すると0110です。これを右に1ビットシフトすると0011となります。0110と0011の排他的論理和は0101です。これが10進数で6のグレイコードです。

2. バッテリレスのアブソリュートエンコーダ

サーボモーター用にバッテリレスのアブソリュートエンコーダが販売されています。アブソリュートエンコーダは、絶対位置を小溝で検出しバッテリで位置情報を保存するため、電源オフ後再開時の原点復帰が不要です。ただし、バッテリを搭載しているため、バッテリ寿命によるメンテナンスが必要です。

その欠点を補うべく、バッテリレスのアブソリュートエンコーダが各メーカーで販売されています。バッテリレスの原理は各社さまざまですが、一例として不揮発性メモリの使用が挙げられます。モータが回転するときに軸に取り付けた磁石が一緒に回転して自己発電するものです。発電電力によって不揮発性メモリに位置情報を書き込むことで、バッテリレスを実現しています。

参考文献
https://www.akm.com/jp/ja/technology/technical-tutorial/basic-knowledge-encoder/type-mechanism-2/
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/knowledge/re/principle_structure.html
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/teruyo/vol46/

ばね蝶番

ばね蝶番とは

ばね蝶番

ばね蝶番とは、蝶番とコイルばねを組み合わせたものです。

外力を加えて角度を変えても、外力を解除することでばねの復元力により初期角度に戻る機能を備えています。ばね蝶番は主に自動で閉じさせたい扉などの回転機構として使用されます。

ばね蝶番の復帰機能を利用することで、開口動作のみで扉の開閉が可能です。適切な回転機構に使用することで、作業の効率化やユーザビリティの向上、閉め忘れの防止など多くの利点を得ることができます。

ばね蝶番の使用用途

ばね蝶番は、郵便ポストの蓋部分やゴミ箱上面の蓋部分など、身の回りの多くの製品に活用されています。比較的小さな力でも動かすことができる部分に多用されており、安価で大きな役割を果たしている部材の1つです。

その他、産業用機械部品として用いられることもあります。加工材を仮固定する際などに手軽にコイルばねの力で挟むことができるため、作業性の向上に貢献しています。

なお、ばね蝶番は通常の蝶番と同様に、一方の板を固定側部材に固定し、もう一方の板を回転部材に固定することで設置します。

ばね蝶番の原理

固定側部材を固定し、回転側部材に外力を加えると、2つの板を接続する軸を回転中心として回転側部材が回転し、同時にコイルばねが変形します。その後外力を解除すると、ばねの復元力により蝶番が元の角度に戻る力が働くため、回転側部材が元の位置に戻ります。

ばね蝶番の構造

ばね蝶番は、通常の蝶番のピンと呼ばれる軸部分にコイルばねを通し、ばねの両端を蝶番の両側の板にそれぞれ固定するという単純な構造となっています。蝶番が変形するとコイルばねが捻られることで弾性エネルギーが蓄積され、外力を解除すると弾性力として働き、初期位置に復帰します。

繰り返し開閉動作を繰り返すと、蝶番の軸部分と軸を受けている管と呼ばれる部分の摩耗が進み、開閉時の動作が不安定になって来ます。摩耗を防ぐためには、適切な注油が必要です。

また、軸部分だけではなくばねが腐食により破損したり、繰り返しの動作によりばねが弱くなったりします。そのため、取付部よりも可動部が先に寿命を迎えることが多いです。

ばね蝶番のその他情報

1. ばね蝶番の取付

取付は蝶番側に穴が開けられており、固定側部材とネジ止めやリベットでの固定が一般的です。固定側部材が金属であれば、穴の合いていない蝶番と溶接して固定することもあります。

ネジ止めやリベットなどは繰り返し使用することで固定力が落ちてくるケースが多いですが、溶接では長期的な使用でも固定力を持続させることができます。自動で閉じる扉は身の回りに多くありますが、軸経が数mm程度の蝶番に設置するコイルばねの復元力には限界があるため、初期位置に復帰するために大きな力が必要な扉には使用できません。

ただし、比較的軽量な扉であれば使用する場合があります。玄関などの比較的重量が大きい扉には、ばねとダンパを組み合わせたドアクローザーを使用する場合が多いです。その場合、装置を取り付ける場所を追加で設ける必要があります。

2. ばね蝶番の調整

コイルばねの初期角度や線径を変更することで、ばね蝶番の初期角度や復元力の強さを調整できます。ただし、ばねの復元力を大きく設定すると、ばねを変形させるために必要な力も大きくなるため、扉を開く力の大きさを考慮する必要があります。

加えて、ばねの復元力を大きく設定すると扉が閉まる際に指を挟まれ怪我をする危険性が高いです。安全面にも配慮し、必要に応じてゴム材による保護やダンパの設置などを行う必要があります。

3. ばね蝶番の応用

単純に取り付けただけのばね蝶番では 、ばねに蓄積した弾性エネルギーは一方的に開放されますが、中にはダンパが蝶番に内蔵された蝶番があります。

その他、ばねのエネルギーを応用し、重量のある扉を小さな力で開けられるようにした蝶番やばねの強さを段階的に調整できるばね蝶番もあります。また、簡易的なばね蝶番でも扉に取り付ける個数を調整することで、扉の閉まる強さを調整できます。

参考文献
https://search.sugatsune.co.jp/product/g/gSA/
https://www.fusehatsu.co.jp/product/product-03/choban.html
https://www.e-newstar.co.jp/support/select/select_dc/

すべりねじ

すべりねじとはすべりねじ

すべりねじとは、送りねじの1種で、モータなどから得られる回転運動を直線運動に変換するための機械要素です。

ねじ軸の回転に伴ってナット部が直動運動することによって、モータの回転運動をリニアガイドなどの直動機構上の運動に変換することができます。ねじ軸とナット部の組み合わせで構成されており、ナット部には摺動特性が良好な材料が使用されます。

類似の機構をもつボールネジと機能は同じですが、すべりねじはボールを必要としないため単純な機構で実現でき、比較的安価です。以上のような利点から、すべりねじはや精密機器の直動部、その他様々な電子機器に使用されています。 

すべりねじの使用用途

すべりねじは精密機器で直線運動をする部分、代表的なものには半導体製造装置などに用いられます。ボールねじの場合には、万が一の際にボールが脱落し製造品に混入する恐れがありますが、すべりねじであればボールなどの混入を心配する必要がありません。そのため、医療や食品製造の設備でも広く用いられています。

すべりねじの原理

すべりねじが回転運動を直進運動へと変換できるのは、ねじが螺旋状に形成されているからです。ねじ軸が回転することによって、ナット部品がねじ軸の軸方向に移動します。

ねじ軸とナット部の摺動により力を変換するので、接触面の摩擦係数と耐摩耗性が非常に重要です。低摩擦と耐摩耗性を満足させるために、ナット部には青銅鋳物BC6Cや、ポリアセタール樹脂POMが使用されます。POMは結晶性樹脂なので、自己潤滑性を有し耐摩耗性に優れる樹脂です。

ねじ軸の材料としては耐摩耗性に優れる機械構造用炭素鋼S45Cや、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304が使用されます。ステンレス製のねじ軸とポリアセタール樹脂のナット部の組み合わせは耐食性に優れるため、水に濡れる環境で使用される機械などの直動機構として有用です。

また、樹脂製のナット部に部材を固定する際は、ナット部が破損しないように締付けトルクを調整する必要があります。

すべりねじの種類

すべりねじにはねじの形状により3つの種類があります。

1. 三角ねじ

締結用などにも用いられる、ねじ山形状が正三角形のねじです。加工がしやすく、すべりねじの中では高い精度が得られます。逆に動力の伝達効率が悪いのが欠点です。

2. 台形ねじ

ねじ山形状が台形形状のねじです。ねじ山半角と呼ばれる斜面の角度は30度や29度のものが使われます。加工機のすべりねじや機械部品などに多く使われます。

3. 角ねじ

角ねじはねじ山の形状が正方形になっているねじです。位置決め精度は劣りますが、動力伝達効率が高いため、プレスやジャッキなど、軸方向に大きな力を伝える機械で多く用いられています。

すべりねじのその他情報

1. ボールねじとの違い

すべりねじはボールねじと比較すると、複雑な機構を必要としないため安価なのが特徴です。一方で、位置決め精度 (次の項目で説明) はボールねじよりも低く、C10級相当程度しかありません。 さらに、すべりねじはせん断方向の力や、軸方向以外のモーメントに弱いこと、ボールねじと比較すると、伝達効率が悪い点が欠点です。

したがって、すべりねじを使用する際は、負荷の方向を限定するためにリニアガイドなどと併用されることもあります。また、高効率で運用したい場合や、高い位置決め精度が要求される場合にはボールねじが向いています。

2. 位置決め精度

位置決め精度とは、位置ぎめを行った際に得られた実際の位置と目標位置との一致度、さらに複数回の位置決めを行ったとき、実現位置の平均値と目標値との距離の差のことです。JISではボールねじのリード精度として、JIS B 1192 (ISO 3408) にて精度が等級化されています。

C0,C1,C2,C3,C5は精密ボールねじとして、数字が小さいほど高精度、さらにC7,C8,C10は転造ボールねじとして定められています。先にすべりねじの位置決め精度はC10級相当程度と説明しましたが、C10は300mmの移動量に対して、±210μ mまでの誤差が許容されています。

参考文献
https://www.ozak.co.jp/leadsc/lsc2/
https://www.toyoshaft.co.jp/products/leadscrew/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech/M0100000000/M0115000000/M0115040000/

POM丸棒

POM丸棒とは

POM丸棒とは、POM (ポリアセタール) 製の丸棒です。

耐摩耗性が求められるカムやギアなどの機械軸要素部品、耐薬品性や耐燃料性などが求められる信頼性部品を中心に数多くの原料として使用されています。 元々、金属が用いられていた用途に使われることが多く、部品の軽量化に役立っています。

POM樹脂は、1959年にデュポン社がDerlinという商品名で世界で初めて販売を開始しました。結晶性の熱可塑性樹脂で、成形加工性、機械的強度、耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性、耐クリープ性、絶縁性、耐薬品性など多くの長所をもつエンジニアリングプラスチックです。

日本ではポリプラスチックス社のジュラコンⓇ (ポリプラスチックス株式会社の登録商標) が有名で、POM=ジュラコンⓇと認識している人も多くいるほどです。POM樹脂を押出機で溶融混錬し、丸型の金型で成形すると丸棒になります。日本でも多くのプラスチック加工メーカーで製造されています。

POM丸棒の使用用途

POM丸棒は、摺動する部品や複雑な形状を有する部品を製作する際の加工前原材料として使用されます。POM樹脂は機械的強度が高く、自己潤滑性を有し、成形加工性も良好です。

機械部品としては、耐摩耗性と自己潤滑性を活かし、軸受けやベアリング、バルブ、ギアパーツとして使われています。潤滑剤を配合することにより、摺動性をより向上させられることから、自動車部品にも応用がなされています。

また、電装部材としては、電気絶縁性に優れることから基板の間に設置するスペーサが広く普及しており、POM丸棒に穴加工やタップ加工を行うことで製造されます。

耐薬品性については同じくエンジニアリングプラスチックのポリテトラフルオロエチレン (PTFE) に劣るものの、PTFEよりも重量当たりの価格は安価なので、薬品をビーカー内で撹拌するための棒や試験管立ての部材としてPOM丸棒が使用されることもあります。 

POM丸棒の原理

プラスチックは結晶性が高いほど摩擦係数が小さくなりますが、POM樹脂はエンジニアプラスチックの中でも特に結晶性の高い特徴があります。そのため、摩擦係数が非常に小さく、自己潤滑性を有しています。摩擦係数は接する物質によって異なりますが、特に金属との摩擦係数が低いため、POM樹脂はカム・ギア・軸受といった摺動部品に適した材料です。

これら部品は、POM丸棒を旋盤やフライス盤を用いた切削加工やホブ盤を用いた歯切り加工をすることで生産されています。成形加工性が良好であるため、卓上機械や手作業でも加工することができます。一般の方がネット通販やホームセンターなどでPOM丸棒を購入しDIYで加工するケースも多いです。

一方、短所としては不透明である点が挙げられます。これは高分子鎖が結晶化し、入射する光が回折するために透過することができないからです。POM樹脂は耐久性の高い材料ではありますが、覗き窓など透明性が必要な場合には、アクリル樹脂や塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが使用されます。

その他、分子構造に酸素を含むため燃えやすい点、耐候性が低い点、接着性が悪く接着剤を用いた接着ができない点 (溶接は可能) 、強酸には耐えられない点も短所です。したがって、防爆指定エリアや屋外での使用、強力な溶剤や洗浄剤を使用する環境における材料選定の際には注意する必要があります。

POM丸棒の種類

POM丸棒は、樹脂の組成や配合によっていくつかの種類があります。

1. ホモポリマー

代表的なものとして、ホルムアルデヒド単位のみが重合したホモポリマーが挙げられます。寸法安定性には若干の難がありますが、結晶性が高く機械的強度や耐摩耗性、耐熱性に優れています。

2. コポリマー

コポリマーはトリオキサンとコモノマーを重合することで合成されます。ホモポリマーと比較すると、寸法安定性や成形性が改善されています。

 

POM樹脂にゴムやガラス繊維を配合し、丸棒に成形したものも販売されています。これらは通常よりも高い衝撃強度や剛性が求められる用途に使われています。

参考文献
https://www.polyplastics-global.com/jp/product/duracon.html
https://www.yumoto.jp/technology
https://i-maker.jp/blog/polyacetal-8492.html

デジタルサーモ

デジタルサーモとはデジタルサーモ

デジタルサーモとは温度制御装置のことで、熱帯魚の水槽などの温度調整が必要な環境において温度を一定に保つための機器です。一般的にデジタルサーモは水や空気などの温度を測る温度計と温度調整を行うヒーター、そしてヒーターの出力をコントロールして温度を一定に保つための制御部からなります。

デジタルサーモは様々なタイプがありますが、小さな水槽に見合わない大きな出力を持ったヒーターを選択すると温度コントロールが上手くいかずに設定温度に対して温度が激しく上下するなど意図しない現象が起こりますので、使用目的に合ったタイプを選択することが大切です。

デジタルサーモの使用用途

デジタルサーモですが、よく使用されるのがペット用で熱帯に住む水生生物の飼育の際に無くてはならない機器です。

熱帯地方は高温ですので、熱帯産の生き物を日本で飼育する際には生息している地域の環境に合わせて温度を高く保ち、生きられる環境を作り出す必要があります。この温度調整を行う危機がデジタルサーモで大抵の熱帯魚の水槽に設置されています。ヒーターは水中に設置されますので、漏電が起こらないようにしっかりとした防水加工が施されています。

デジタルサーモの原理

デジタルサーモの温度制御の原理は、まずは環境温度を熱電対で測定しその温度を制御部が読み取ります。その時の温度が設定温度に対して低ければヒーターがオンになります。ヒーターがオンになると温度は次第に上昇していきますが、やがて設定温度に到達するとヒーターはオフになります。すると熱源を失いますので環境温度は次第に下がっていきます。設定温度以下になると再度ヒーターがオンになることを繰り返すことで環境を設定温度に保ちます。

デジタルサーモで特に気をつけなければならないのがヒーターの出力です。ヒーターの出力は加熱する環境の熱容量にマッチしていなければならず、熱容量の大きなものの温度制御の際にはヒーター出力の大きなタイプを使用しなければ温度が上がり切りません。ヒーターの出力が小さすぎると十分に温めることが出来ずに温度が低いままになってしまいます。特に冬場などは外気の温度が下がりますのでその分ヒーター出力が高くなり、場合によってはヒーターが加熱しきれずに設定温度以下に落ちてしまう場合もありますので使用に際しては最低温度での使用を念頭に置いて機器のタイプを選択する必要があります。

参考文献
https://www.monotaro.com/g/00259307/?t.q=%83f%83W%83%5E%83%8B%83T%81%5B%83%82

真空バルブ

真空バルブとは

真空バルブ

真空バルブとは、真空状態の制御や封入を目的として使用される特殊なバルブ (弁) のことです。

真空技術の領域において、システム内の圧力や流れを適切に制御することに貢献しています。また、真空機器全体の性能や安全性を確保しています。

真空バルブの使用用途

1. 真空チャンバーの封入と排気

真空バルブは、真空チャンバー内のガスを封入したり排気したりするのに使用されます。真空チャンバー内の圧力を必要なレベルに調整することで、特定の実験やプロセスを行うために必要な真空状態を維持できます。

2. 真空ポンプの制御

真空バルブは、真空ポンプの作動を制御するのに使用されます。ポンプのオン/オフやポンプからのガスの排出を調整することで、効率的な真空作成が可能になります。

3. ガスフロー制御

真空バルブは、ガスの流れを制御するのに使用されます。特定の実験やプロセスに必要なガスの流量を調整し、適切な条件下での実験を行うことができます。

4. 真空槽の連結と分離

真空バルブは、異なる真空槽や真空系を連結したり分離したりするために使用されます。例えば、複数の真空チャンバーを1つのシステムに組み合わせる場合に、真空バルブを介して接続を行います。

5. イオンポンプやチューブポンプの保護

真空バルブは、真空ポンプを保護するために使用されることもあります。特定のプロセスによって生成された物質がポンプに悪影響を与えるのを防ぐために、ポンプと真空槽を分離する際に真空バルブを使用します。

真空バルブの原理

真空バルブの目的は、真空中でのガスの流れを制御することです。一般的な動作原理は、以下のとおりです。

1. ゲートバルブ

ゲートバルブは、円盤状のバルブを真空チャンバーの内部で回転させることによって、ガスの流れを制御します。バルブが開いている場合、ガスは円盤の周囲を通過して流れます。バルブを回転させることで、円盤が真空チャンバーの中央に位置するため、ガスの流れを遮断してバルブを閉じることが可能です。

2. ソレノイドバルブ

ソレノイドバルブは、電磁コイルを使用してバルブの開閉を制御します。電流がコイルに流れると、コイルによって生じる磁力がバルブを動かし、バルブが開きます。電流が止まると、磁力が消えてバルブが閉じます。このようにして電磁的にバルブを開閉することで、リモート制御が可能です。

3. バタフライバルブ

バタフライバルブは、円盤状のバルブを回転させることによって、ガスの流れを制御します。円盤が真空チャンバーの中央に位置するときは、バルブが開いており、ガスが流れます。一方、円盤が真空チャンバーの外周に位置するときは、バルブが閉じてガスの流れを遮断します。

4. ピンチバルブ

ピンチバルブは、柔軟なチューブを挟むことによってガスの流れを制御します。バルブを挟むことでチューブの内部の流れを遮断し、バルブを開放することでチューブの内部が開かれてガスが流れます。ピンチバルブは、チューブを挟む力を調整することで、ガスの流量を調整可能です。

真空バルブの種類

上記で紹介したバルブ以外に、以下のような種類もあります。

1. ボールバルブ (英: Ball Valve)

回転する球体を用いて開閉するバルブです。球体が真空チャンバーの流路を遮断することでバルブを閉じ、回転させることで開きます。

2. インラインバルブ (英: Inline Valve)

直線的なパスに配置されたバルブで、ガスの流れを一貫して制御するために使用されます。

3. アングルバルブ (英: Angle Valve)

接続が90度の角度を形成するバルブで、限られたスペースに適しています。

4. ポペットバルブ (英: Poppet Valve) 

シリンダー状のバルブがシートに対して開閉するタイプのバルブで、特に高いシール性が求められる場合に使用されます。

これらのバルブは、真空機器の設計や用途によって選択され、組み合わせられます。真空機器の性能や操作の正確さを確保するために、適切なバルブの選択が重要です。

参考文献
http://www.ikc.co.jp/technical/valve/whats_valve.html
http://www.asahiseiki.co.jp/column/post/05
https://www.giho.mitsubishielectric.co.jp/giho/pdf/2014/1411107.pdf

紫外線センサー

紫外線センサーとは

紫外線センサは紫外線を検出するセンサーです。

紫外線は適度に浴びると健康に良いとされ、健康用途に利用されます。また、殺菌作用もあるため、殺菌装置も紫外線利用先の一つです。

ただし、紫外線は目で見ることはできないため、紫外線照射装置には紫外線センサーが利用されています。近年では、紫外線の殺菌効果や紫外線硬化樹脂が注目され、産業界だけでなく家庭でも紫外線照射装置が利用されることが増えました。使用される紫外線センサーの種類も様々で、強度や積算量を出力する機種もあります。

紫外線センサーの使用用途

人工的に紫外線を照射する機器は、小型の健康器具から産業用途まで使用用途は様々です。このような機器には、必ず紫外線センサーが搭載されています。

紫外線は浴びすぎると人体に有害であるため、紫外線の強度を制御するのが目的です。

産業用途では以下のような使用用途があります。

  • 紫外線硬化樹脂の製造
  • 半導体製造設備内部
  • 紙幣の識別や印刷
  • 日焼けサロン用マシーン
  • 紫外線の殺菌効果を期待した水虫の治療器具
  • 空気清浄機 

紫外線センサーの原理

紫外線センサの主要部品は紫外線シリコンフォトダイオードです。フォトダイオードに紫外線を含んだ光を照射すると電流が流れます。紫外線強度に応じて電流値が変化するため、電流値を測定して紫外線量を検出します。

構造によって応答スピードなどが異なるのがフォトダイオードの特徴です。構造はショットキー接合型、PN接合型、フォトコン型があり、それぞれに特徴があるため用途に応じて選定します。

ダイオードが太陽光や白熱灯に反応しないため、光学フィルタがついているセンサが販売されています。また、高感度と低感度の紫外線センサーの差分から可視光成分を差し引いて紫外線を検出するセンサもあります。

紫外線の受光素子にフォトダイオードでなく、光電子増倍管が使用されているセンサもあります。

紫外線センサーのその他情報

1. 紫外線センサーの市場

紫外線センサーをはじめとした環境センサーへの注目は高まっており、世界市場規模は1兆1000億円を超えると予測されています。産業用センサーのうち6種類を対象として調査した世界の市場規模では、最も多くを占めているのはガスセンサー、次いで磁気センサー、3番目が紫外線センサーです。

従来では防災や産業用の紫外線測定が主な用途でしたが、一般での用途拡大によりセンサーの需要は高まるでしょう。2024年は1兆4000億円、紫外線センサーも全体の需要も同様に高まっていくと予測されます。

2. 殺菌の現場で活用する紫外線センサー

紫外線による殺菌効果を活用して、最近では空港などの公共施設や飲食店などの商業施設でも広く用いられています。そのため、一般消費者が紫外線発生装置に触れる機会は以前に比べて多いです。

一般消費者が利用する場で殺菌の需要が高まると、殺菌に十分な強度の紫外線であるかを計測する必要がある一方で、有害な波長の紫外線が漏れていないかの確認が必要です。そのためにも、紫外線センサーは重要な存在となります。

3. 紫外線センサーを用いた炎検知

紫外線センサーを活用した製品に、火炎中の微弱な紫外線を検知する火炎センサーがあります。活用される場所としては、炎が燃え移る危険性のある衣服や寝具売り場や喫煙所などの瞬時に火災を検知したい場所です。また、ボイラバーナの火炎検知などにも使用されます。

火炎センサーは熱や赤外線などの様々な感知方法がありますが、感知するまでに火災が進行するなどの課題があります。紫外線による火炎センサーも、紫外線を発生する機械によって誤報を発報する可能性があるのが課題です。素早く火災を検知するために、高精度センサーが必要となります。

参考文献
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2613
https://www.gii.co.jp/report/infi970180-global-ultraviolet-uv-sensor-market.html
https://www.arucom.ne.jp/picoeye/
https://eetimes.jp/ee/articles/2101/07/news034.html

塗装ロボット

塗装ロボットとは

塗装ロボット (英: painting robot) とは、塗装に使用する産業用のロボットです。

繊細な塗装に対応できるように、多関節型のアームに塗装ガンを取り付けたタイプが多く使われます。人が塗装する場合は、塗料に含まれる有機溶剤による健康影響が懸念されますが、塗装ロボットのおかげでリスクを軽減することが可能です。

また、塗装ロボットの導入により、生産性が向上し、人的ミスやばらつきを減らすことも可能です。実際に屋根塗装の事例では、生産性が35倍も上がる効果が出ており、産業界でのロボット導入が急速に進んでいます。 

塗装ロボットの使用用途

塗装ロボットは、自動車業界を始めとして、塗装が必要な多くの製造現場で導入されています。自動車用の大型から、電子部品用の小型まで各種のサイズが幅広く市販されるようになり、さらに導入が拡大しています。

人が行うよりも生産が安定し、人体の健康被害が軽減できるため、屋根工事、壁工事、日用品、各種部品などの分野でも導入され始めました。中には、伝統工芸の漆器で塗装ロボットが採用されている事例もあります。 

塗装ロボットの原理

塗装ロボットは、産業用ロボットに塗装ガンを取り付けた構造です。塗装時に噴霧された塗料がロボット自身にもふりかかるので、防爆が課題でしたがクリアすることができたため、導入が広がりました。

ロボットの形状として5~6軸を持つ多関節の製品が多くあり、主に次の3種類が使われています。

1. 垂直多関節ロボット

垂直方向に回転する関節が5~6軸あり、見た目でも人間の腕に近い動きが可能です。軸の向きを変えれば、垂直方向だけでなく斜め方向にも回転ができます。複雑な形状の塗装にも対応しています。

2. 水平多関節ロボット

ジョイントとリンクが水平方向につながり、回転は水平方向が可能です。ほぼ水平方向のみの動きなので、平面状の対象物への塗装に適しています。

3. 直角座標ロボット

3軸がスライドして移動する構造で、直交ロボットとも呼ばれます。複雑な動作はできないので、シンプルな形状の対象物に向いています。

塗装ロボットのその他情報

1. 塗装ロボットの活用事例

壁面吹付塗装ロボットの導入
距離センサで壁面と塗装ガン間の距離を計測し、その距離を一定に保持するように、ロボットの位置を制御することが特徴です。この技術を使うことで塗布量の分布が均一になり、熟練作業者と同等の品質が得られるようになります。

また、半自動にして、壁の隅などロボットでは難しいところは、人が作業する「人とロボットの協業」も可能です。

漆器における塗装ロボットの導入
熟練技術が必要なため、手作業で行なっていた漆器の塗装作業に、垂直多関節の塗装ロボットを導入しました。従来2名で行っていた作業をアシスタント1名で行えるようになり、労働生産性は約3倍に大きく向上しました。

さらに、少子高齢化による技術継承問題の解決に貢献しています。

屋根塗装作業における塗装ロボットの導入
屋根塗装作業に塗装ロボットを導入した例では、塗装ロボット導入前後で労働生産性が35倍の効果があります。

2. 塗装ロボットの塗装方式

塗装ロボットでは、仕上げが美しい静電塗装方式が使われます。静電塗装は、静電気の仕組みを利用した塗装方法です。ワークを正極、塗装ロボットを負極として、微粒化した塗料に高電圧をかけて負極に帯電させ、静電力線に沿って正極のワークに塗着させます。この方式は、塗料の無駄が少なく、塗装工数を大幅に削減でき、環境にも優しい点がメリットです。

使用する塗装ガンには、回転霧化方式と静電霧化方式が多く使われます。回転霧化方式は、塗料を微粒化しながら塗布パターンを広げる方法です。エアモータを高速回転させ、圧縮空気で軸と軸受の間に空気膜をつくり、この機構を非接触で高速回転させます。これらの回転により塗料は微粒の霧状になり、空気圧でワークの方向へ噴出します。

また、静電霧化方式は、静電気力で塗料の微粒子化を行う方法です。静電塗装方式は、自動車の車体、鉄道車両、電気製品、スチール製の事務機器、住宅関連の部品など大量生産の工業製品の塗装に広く採用されています。

参考文献
https://www.kajima.co.jp/news/press/202011/16a1-j.htm

実体顕微鏡

実体顕微鏡とは

実体顕微鏡

実体顕微鏡は、光学顕微鏡の1種であり、双眼実体顕微鏡とも言われます。 光学顕微鏡は、微小な物体を対物レンズで拡大した実像を、接眼レンズによってさらに拡大して観察する光学機器です。実体顕微鏡は2つの光路を持ち、左右の目による視差を利用して、物体を立体的に観察できます。一般的にその倍率は数倍~40倍と比較的低いですが、対物レンズとステージまでの距離が長いため、比較的大きな試料をそのまま観察することが可能です。 また、拡大した像を見ながら、解剖や組立てなどの作業を行うことができます。

実体顕微鏡の使用用途

生物学分野では、昆虫や草花など動植物の観察や解剖に用いられ、教育現場では理科の教材としても使われています。 医療分野では、解剖や細胞操作などに利用されています。また、脳外科や眼科で手術時に用いられる顕微鏡も、本体部分は実体顕微鏡です。 機械工学分野、精密機械・電子産業分野では、組立て作業や検査に用いられます。 その他、歯科技工、手工芸、はんだ付けなどの精密作業や、古銭や宝飾品の観察・研究など、実体顕微鏡の使用用途は非常に幅広いです。

実体顕微鏡の原理

レンズには、「正レンズ」(凸レンズ)と「負レンズ」(凹レンズ)があります。顕微鏡に使用されているのは、正レンズです。

正レンズは縁より中心が厚く、レンズ曲面の中心をレンズに垂直に通る線(光軸)に平行な光を屈折させて光軸上の1点に集めます。この点を、「焦点」と言います。

正レンズ(凸レンズ)の仕組み

図1. 正レンズ (凸レンズ) の仕組み

正レンズの焦点は、レンズの前後に1つずつあり(前側焦点、後側焦点)、焦点とレンズの中心の距離を「焦点距離」と言います。前後の焦点距離は等しく、 物体が正レンズの前側焦点より遠くにある時にレンズによって形成される像を「実像」、前側焦点より近くにある時に形成される像を「虚像」と言います。実像は上下左右が反対になった倒立の像、虚像は正立です。

一般的な生物顕微鏡は、2枚の正レンズを組み合わせて、物体を拡大して見る装置です。本装置は対物レンズ(物体に近いレンズ)によって形成された実像を、接眼レンズ(目に近いレンズ)でさらに拡大した虚像を観察しているため、観察される像は倒立となります。

一方で実体顕微鏡は、本体内に正立プリズムが組み込まれているため、観察される像は正立です。これにより、試料の姿をそのまま観察することができ、顕微鏡下での精密な作業が可能になっています。

光学顕微鏡の種類

光学顕微鏡には、その原理や使用目的により様々な種類が存在しますが、生物顕微鏡と実体顕微鏡の二種類に分類されるのが一般的です。生物顕微鏡は透過型顕微鏡の一種であり、最も一般的な顕微鏡と考えて下さい。このタイプの顕微鏡は、試料を薄くスライドしてこれに光を透過させる事で観察します。

一方で実体顕微鏡は、照明方法としては、透過照明、落斜照明の両方が用いられます。実体顕微鏡は、接眼レンズが2個あり、両目で同時に観察できることから、立体的に試料を観察することができる特徴があります。また、接眼レンズと試料を乗せるステージとの距離が長い事から、生物試料を観察しながら解剖するなどの作業にも適しています。

実体顕微鏡のその他情報

1. 実体顕微鏡の使い方

一般的な実体顕微鏡の使い方は以下の通りです。

  1. 必要に応じて光源をセットする。
  2. ステージに試料を乗せる。
  3. 接眼レンズを眼の幅に合うように調節し、視野が一つに重なるようにする。
  4. 右目で右の接眼レンズを覗きながら合焦装置を操作し、試料にピントを合わせる
  5. 左目で左の接眼レンズを覗きながら視度調節環を調節し、ピントを正確に合わせる。

実体顕微鏡は仕様の異なる様々な機種が販売されており、使用用途に合わせて選定する必要があります。これには例えば以下のような違いがあり、選定する際のポイントとなります。

2. 光学系の違い

実体顕微鏡には大きく分けてガリレオ式平行光学系とグリノー式光学系の2種類があります。 ガリレオ式平行光学系の顕微鏡は、接眼レンズから対物レンズまでの光軸が平行で、一つの対物レンズから構成されています。光軸が平行になるように設計されているため、中間部分に別のユニットを挿入して様々な機能を付加することが可能です。

また光は一つの対物レンズに収束するため、高倍率での観察が可能となります。ズームを大きくしても精度が維持しやすく、対物レンズの組み合わせの自由度も高いという特徴があります。 一方、グリノー式光学系の顕微鏡は、接眼レンズから対物レンズまでの光路や光軸は、一定の角度をもってすべて左右独立となるように設計されています。立体的な像が得やすく、顕微鏡本体をコンパクトに設計しやすいという特徴があります。ただし、光路の平行部分がないため、ガリレオ式のように中間部分に別の機能を加えたり、ズームを大きく設定したりするには不向きです。

3. 照明の違い

実体顕微鏡において、試料を最適な状態で観察するためには、照明の選択も重要です。使用する顕微鏡と観察の目的に合った照明を選択する必要があります。照明の種類としては、明るく均一に光を当てることのできるリングライト、影の生じにくいニアバーチカル照明、フラットで光反射率の高い試料の観察に適した同軸照明などが挙げられます。なお、光源としてはハロゲンランプ、LEDが一般的に用いられます。

4. 実体顕微鏡の倍率

顕微鏡の倍率には対物倍率、総合倍率及びモニタ倍率の3種類があります。 対物倍率とは、対物レンズのみの倍率のことを指し、総合倍率とは、対物レンズの倍率と接眼レンズの倍率の積で表します。顕微鏡は、対物レンズで得られた像を、接眼レンズで拡大して観察することから、同じ総合倍率の像であっても、対物レンズの倍率の高い方が分解能は高く、より細かい点まで判別できるという特徴があります。モニタ倍率とは、モニタディスプレイに表示された際の倍率のことで、モニタに映し出されたときに何倍の大きさで見えるかを表します。 同じ倍率の数字でも、その倍率が何を表しているかによって見方は大きく変わります。

参考文献
https://www.wraymer.com/stereo/index.html
https://www.healthcare.nikon.com/ja/ss/cell-image-lab/glossary/optical-microscope.html
https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/02/029/
https://www.olympus-lifescience.com/ja/support/learn/02/033/
http://www.microscope.jp/knowledge/03-3.html
https://www.sci.keio.ac.jp/eduproject/practice/biology/additional.php?eid=00003
http://blog.livedoor.jp/aritouch/archives/3710941.html
https://www.olympus.co.jp/jp/news/2003b/nr030930szx7trj.html
https://xlab.leica-microsystems.com/blog/industrial/stereo_05jun
https://www.wraymer.net/magnificationofmicroscope/