POM丸棒とは
POM丸棒とは、POM (ポリアセタール) 製の丸棒です。
耐摩耗性が求められるカムやギアなどの機械軸要素部品、耐薬品性や耐燃料性などが求められる信頼性部品を中心に数多くの原料として使用されています。 元々、金属が用いられていた用途に使われることが多く、部品の軽量化に役立っています。
POM樹脂は、1959年にデュポン社がDerlinという商品名で世界で初めて販売を開始しました。結晶性の熱可塑性樹脂で、成形加工性、機械的強度、耐摩耗性、耐衝撃性、耐疲労性、耐クリープ性、絶縁性、耐薬品性など多くの長所をもつエンジニアリングプラスチックです。
日本ではポリプラスチックス社のジュラコンⓇ (ポリプラスチックス株式会社の登録商標) が有名で、POM=ジュラコンⓇと認識している人も多くいるほどです。POM樹脂を押出機で溶融混錬し、丸型の金型で成形すると丸棒になります。日本でも多くのプラスチック加工メーカーで製造されています。
POM丸棒の使用用途
POM丸棒は、摺動する部品や複雑な形状を有する部品を製作する際の加工前原材料として使用されます。POM樹脂は機械的強度が高く、自己潤滑性を有し、成形加工性も良好です。
機械部品としては、耐摩耗性と自己潤滑性を活かし、軸受けやベアリング、バルブ、ギアパーツとして使われています。潤滑剤を配合することにより、摺動性をより向上させられることから、自動車部品にも応用がなされています。
また、電装部材としては、電気絶縁性に優れることから基板の間に設置するスペーサが広く普及しており、POM丸棒に穴加工やタップ加工を行うことで製造されます。
耐薬品性については同じくエンジニアリングプラスチックのポリテトラフルオロエチレン (PTFE) に劣るものの、PTFEよりも重量当たりの価格は安価なので、薬品をビーカー内で撹拌するための棒や試験管立ての部材としてPOM丸棒が使用されることもあります。
POM丸棒の原理
プラスチックは結晶性が高いほど摩擦係数が小さくなりますが、POM樹脂はエンジニアプラスチックの中でも特に結晶性の高い特徴があります。そのため、摩擦係数が非常に小さく、自己潤滑性を有しています。摩擦係数は接する物質によって異なりますが、特に金属との摩擦係数が低いため、POM樹脂はカム・ギア・軸受といった摺動部品に適した材料です。
これら部品は、POM丸棒を旋盤やフライス盤を用いた切削加工やホブ盤を用いた歯切り加工をすることで生産されています。成形加工性が良好であるため、卓上機械や手作業でも加工することができます。一般の方がネット通販やホームセンターなどでPOM丸棒を購入しDIYで加工するケースも多いです。
一方、短所としては不透明である点が挙げられます。これは高分子鎖が結晶化し、入射する光が回折するために透過することができないからです。POM樹脂は耐久性の高い材料ではありますが、覗き窓など透明性が必要な場合には、アクリル樹脂や塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などが使用されます。
その他、分子構造に酸素を含むため燃えやすい点、耐候性が低い点、接着性が悪く接着剤を用いた接着ができない点 (溶接は可能) 、強酸には耐えられない点も短所です。したがって、防爆指定エリアや屋外での使用、強力な溶剤や洗浄剤を使用する環境における材料選定の際には注意する必要があります。
POM丸棒の種類
POM丸棒は、樹脂の組成や配合によっていくつかの種類があります。
1. ホモポリマー
代表的なものとして、ホルムアルデヒド単位のみが重合したホモポリマーが挙げられます。寸法安定性には若干の難がありますが、結晶性が高く機械的強度や耐摩耗性、耐熱性に優れています。
2. コポリマー
コポリマーはトリオキサンとコモノマーを重合することで合成されます。ホモポリマーと比較すると、寸法安定性や成形性が改善されています。
POM樹脂にゴムやガラス繊維を配合し、丸棒に成形したものも販売されています。これらは通常よりも高い衝撃強度や剛性が求められる用途に使われています。
参考文献
https://www.polyplastics-global.com/jp/product/duracon.html
https://www.yumoto.jp/technology
https://i-maker.jp/blog/polyacetal-8492.html