アブソリュートエンコーダ

アブソリュートエンコーダとは

アブソリュートエンコーダとは、原点からの絶対角度を出力するエンコーダのことです。

エンコーダは、位置の変化を電気信号に変換して出力する装置を指します。アブソリュート (absolute) は、英語で「絶対的である」という形容詞です。現在の角度に応じて特定の信号が送られるため、直前の角度情報無しで現在の角度を確認することができます。

電源始動後に即座に角度を検出したい場合や角度検出の信頼性を確保したい場合などに使用され、アブソリュートエンコーダの多くは光学式エンコーダが採用されています。

アブソリュートエンコーダの使用用途

アブソリュートエンコーダは角度検出の信頼性が高いため、ロボティクス分野で急速に使用が拡大されています。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • 多関節アームロボット
  • 遠隔手術ロボット
  • 精密部品用の工作機械
  • 自動車生産ラインの産業ロボット
  • 産業用の製品受け渡し装置
  • 協働ロボットの手関節や足関節動作

今後の制御システムの高度化に伴って遠隔操作ロボットも急速に進化すると予想されるため、アブソリュートエンコーダのニーズも増加していくと可能性が高いです。 

アブソリュートエンコーダの原理

アブソリュートエンコーダには小さな溝を掘った円盤が回転軸に付いており、その小溝を光センサで読み取ります。軸にCDを固定したような構造です。この構造によって、電源を入れた瞬間でも円盤がどの位置にあるかを正確に読み取って現在角度を出力することができます。

ただし、角度を読み取る仕組みが複雑なので、相対角度検出のエンコーダより高価です。また、信号の伝送方式もデジタル式とアナログ式が存在します。

  • デジタル方式
    ノイズに強い反面、信号線が多くなります。シリアル通信などの伝送通信を使用すれば、信号線を少なくすることができます。ただし、通信遅延が発生する場合がある上、送受信装置双方に専用送受信機の用意が必要です。
  • アナログ方式
    信号線2本で遅延も発生しない反面、伝送時のノイズに弱くなります。

以上の特性を踏まえて、目的に合った伝送方式の選択が必要です。

アブソリュートエンコーダのその他情報

1. アブソリュートエンコーダのグレイコード利用

アブソリュートエンコーダは、磁気タイプと光学タイプがありますが、光学式が一般的です。光学式では回転ディスクの符号化技法として、グレイコードがよく用いられます。

グレイコードとは、数値符号化の一つで、交番二進符号とよばれます。隣り合うビットの変化が1ビットしかないようにしたものです。これらは、信頼性担保のために用いられます。2ビット以上が同時に変化してしまう場合、精度上の問題で信号の信頼性を保証できなくなります。1ビットのみ変化する場合は、信号の読み間違えを防止することが可能です。

通常の二進数をグレイコードに変換する場合は、二進数の値を右に1文字シフトして 元の二進数の値と排他的論理和を取ります。例えば、10進数で6を2進数で表現すると0110です。これを右に1ビットシフトすると0011となります。0110と0011の排他的論理和は0101です。これが10進数で6のグレイコードです。

2. バッテリレスのアブソリュートエンコーダ

サーボモーター用にバッテリレスのアブソリュートエンコーダが販売されています。アブソリュートエンコーダは、絶対位置を小溝で検出しバッテリで位置情報を保存するため、電源オフ後再開時の原点復帰が不要です。ただし、バッテリを搭載しているため、バッテリ寿命によるメンテナンスが必要です。

その欠点を補うべく、バッテリレスのアブソリュートエンコーダが各メーカーで販売されています。バッテリレスの原理は各社さまざまですが、一例として不揮発性メモリの使用が挙げられます。モータが回転するときに軸に取り付けた磁石が一緒に回転して自己発電するものです。発電電力によって不揮発性メモリに位置情報を書き込むことで、バッテリレスを実現しています。

参考文献
https://www.akm.com/jp/ja/technology/technical-tutorial/basic-knowledge-encoder/type-mechanism-2/
https://www.fa.omron.co.jp/product/special/knowledge/re/principle_structure.html
https://www.orientalmotor.co.jp/tech/teruyo/vol46/

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