すべりねじ

すべりねじとはすべりねじ

すべりねじとは、送りねじの1種で、モータなどから得られる回転運動を直線運動に変換するための機械要素です。

ねじ軸の回転に伴ってナット部が直動運動することによって、モータの回転運動をリニアガイドなどの直動機構上の運動に変換することができます。ねじ軸とナット部の組み合わせで構成されており、ナット部には摺動特性が良好な材料が使用されます。

類似の機構をもつボールネジと機能は同じですが、すべりねじはボールを必要としないため単純な機構で実現でき、比較的安価です。以上のような利点から、すべりねじはや精密機器の直動部、その他様々な電子機器に使用されています。 

すべりねじの使用用途

すべりねじは精密機器で直線運動をする部分、代表的なものには半導体製造装置などに用いられます。ボールねじの場合には、万が一の際にボールが脱落し製造品に混入する恐れがありますが、すべりねじであればボールなどの混入を心配する必要がありません。そのため、医療や食品製造の設備でも広く用いられています。

すべりねじの原理

すべりねじが回転運動を直進運動へと変換できるのは、ねじが螺旋状に形成されているからです。ねじ軸が回転することによって、ナット部品がねじ軸の軸方向に移動します。

ねじ軸とナット部の摺動により力を変換するので、接触面の摩擦係数と耐摩耗性が非常に重要です。低摩擦と耐摩耗性を満足させるために、ナット部には青銅鋳物BC6Cや、ポリアセタール樹脂POMが使用されます。POMは結晶性樹脂なので、自己潤滑性を有し耐摩耗性に優れる樹脂です。

ねじ軸の材料としては耐摩耗性に優れる機械構造用炭素鋼S45Cや、オーステナイト系ステンレス鋼SUS304が使用されます。ステンレス製のねじ軸とポリアセタール樹脂のナット部の組み合わせは耐食性に優れるため、水に濡れる環境で使用される機械などの直動機構として有用です。

また、樹脂製のナット部に部材を固定する際は、ナット部が破損しないように締付けトルクを調整する必要があります。

すべりねじの種類

すべりねじにはねじの形状により3つの種類があります。

1. 三角ねじ

締結用などにも用いられる、ねじ山形状が正三角形のねじです。加工がしやすく、すべりねじの中では高い精度が得られます。逆に動力の伝達効率が悪いのが欠点です。

2. 台形ねじ

ねじ山形状が台形形状のねじです。ねじ山半角と呼ばれる斜面の角度は30度や29度のものが使われます。加工機のすべりねじや機械部品などに多く使われます。

3. 角ねじ

角ねじはねじ山の形状が正方形になっているねじです。位置決め精度は劣りますが、動力伝達効率が高いため、プレスやジャッキなど、軸方向に大きな力を伝える機械で多く用いられています。

すべりねじのその他情報

1. ボールねじとの違い

すべりねじはボールねじと比較すると、複雑な機構を必要としないため安価なのが特徴です。一方で、位置決め精度 (次の項目で説明) はボールねじよりも低く、C10級相当程度しかありません。 さらに、すべりねじはせん断方向の力や、軸方向以外のモーメントに弱いこと、ボールねじと比較すると、伝達効率が悪い点が欠点です。

したがって、すべりねじを使用する際は、負荷の方向を限定するためにリニアガイドなどと併用されることもあります。また、高効率で運用したい場合や、高い位置決め精度が要求される場合にはボールねじが向いています。

2. 位置決め精度

位置決め精度とは、位置ぎめを行った際に得られた実際の位置と目標位置との一致度、さらに複数回の位置決めを行ったとき、実現位置の平均値と目標値との距離の差のことです。JISではボールねじのリード精度として、JIS B 1192 (ISO 3408) にて精度が等級化されています。

C0,C1,C2,C3,C5は精密ボールねじとして、数字が小さいほど高精度、さらにC7,C8,C10は転造ボールねじとして定められています。先にすべりねじの位置決め精度はC10級相当程度と説明しましたが、C10は300mmの移動量に対して、±210μ mまでの誤差が許容されています。

参考文献
https://www.ozak.co.jp/leadsc/lsc2/
https://www.toyoshaft.co.jp/products/leadscrew/
https://jp.misumi-ec.com/vona2/mech/M0100000000/M0115000000/M0115040000/

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