ばね蝶番とは
ばね蝶番とは、蝶番とコイルばねを組み合わせたものです。
外力を加えて角度を変えても、外力を解除することでばねの復元力により初期角度に戻る機能を備えています。ばね蝶番は主に自動で閉じさせたい扉などの回転機構として使用されます。
ばね蝶番の復帰機能を利用することで、開口動作のみで扉の開閉が可能です。適切な回転機構に使用することで、作業の効率化やユーザビリティの向上、閉め忘れの防止など多くの利点を得ることができます。
ばね蝶番の使用用途
ばね蝶番は、郵便ポストの蓋部分やゴミ箱上面の蓋部分など、身の回りの多くの製品に活用されています。比較的小さな力でも動かすことができる部分に多用されており、安価で大きな役割を果たしている部材の1つです。
その他、産業用機械部品として用いられることもあります。加工材を仮固定する際などに手軽にコイルばねの力で挟むことができるため、作業性の向上に貢献しています。
なお、ばね蝶番は通常の蝶番と同様に、一方の板を固定側部材に固定し、もう一方の板を回転部材に固定することで設置します。
ばね蝶番の原理
固定側部材を固定し、回転側部材に外力を加えると、2つの板を接続する軸を回転中心として回転側部材が回転し、同時にコイルばねが変形します。その後外力を解除すると、ばねの復元力により蝶番が元の角度に戻る力が働くため、回転側部材が元の位置に戻ります。
ばね蝶番の構造
ばね蝶番は、通常の蝶番のピンと呼ばれる軸部分にコイルばねを通し、ばねの両端を蝶番の両側の板にそれぞれ固定するという単純な構造となっています。蝶番が変形するとコイルばねが捻られることで弾性エネルギーが蓄積され、外力を解除すると弾性力として働き、初期位置に復帰します。
繰り返し開閉動作を繰り返すと、蝶番の軸部分と軸を受けている管と呼ばれる部分の摩耗が進み、開閉時の動作が不安定になって来ます。摩耗を防ぐためには、適切な注油が必要です。
また、軸部分だけではなくばねが腐食により破損したり、繰り返しの動作によりばねが弱くなったりします。そのため、取付部よりも可動部が先に寿命を迎えることが多いです。
ばね蝶番のその他情報
1. ばね蝶番の取付
取付は蝶番側に穴が開けられており、固定側部材とネジ止めやリベットでの固定が一般的です。固定側部材が金属であれば、穴の合いていない蝶番と溶接して固定することもあります。
ネジ止めやリベットなどは繰り返し使用することで固定力が落ちてくるケースが多いですが、溶接では長期的な使用でも固定力を持続させることができます。自動で閉じる扉は身の回りに多くありますが、軸経が数mm程度の蝶番に設置するコイルばねの復元力には限界があるため、初期位置に復帰するために大きな力が必要な扉には使用できません。
ただし、比較的軽量な扉であれば使用する場合があります。玄関などの比較的重量が大きい扉には、ばねとダンパを組み合わせたドアクローザーを使用する場合が多いです。その場合、装置を取り付ける場所を追加で設ける必要があります。
2. ばね蝶番の調整
コイルばねの初期角度や線径を変更することで、ばね蝶番の初期角度や復元力の強さを調整できます。ただし、ばねの復元力を大きく設定すると、ばねを変形させるために必要な力も大きくなるため、扉を開く力の大きさを考慮する必要があります。
加えて、ばねの復元力を大きく設定すると扉が閉まる際に指を挟まれ怪我をする危険性が高いです。安全面にも配慮し、必要に応じてゴム材による保護やダンパの設置などを行う必要があります。
3. ばね蝶番の応用
単純に取り付けただけのばね蝶番では 、ばねに蓄積した弾性エネルギーは一方的に開放されますが、中にはダンパが蝶番に内蔵された蝶番があります。
その他、ばねのエネルギーを応用し、重量のある扉を小さな力で開けられるようにした蝶番やばねの強さを段階的に調整できるばね蝶番もあります。また、簡易的なばね蝶番でも扉に取り付ける個数を調整することで、扉の閉まる強さを調整できます。
参考文献
https://search.sugatsune.co.jp/product/g/gSA/
https://www.fusehatsu.co.jp/product/product-03/choban.html
https://www.e-newstar.co.jp/support/select/select_dc/