塗装ロボット

塗装ロボットとは

塗装ロボット (英: painting robot) とは、塗装に使用する産業用のロボットです。

繊細な塗装に対応できるように、多関節型のアームに塗装ガンを取り付けたタイプが多く使われます。人が塗装する場合は、塗料に含まれる有機溶剤による健康影響が懸念されますが、塗装ロボットのおかげでリスクを軽減することが可能です。

また、塗装ロボットの導入により、生産性が向上し、人的ミスやばらつきを減らすことも可能です。実際に屋根塗装の事例では、生産性が35倍も上がる効果が出ており、産業界でのロボット導入が急速に進んでいます。 

塗装ロボットの使用用途

塗装ロボットは、自動車業界を始めとして、塗装が必要な多くの製造現場で導入されています。自動車用の大型から、電子部品用の小型まで各種のサイズが幅広く市販されるようになり、さらに導入が拡大しています。

人が行うよりも生産が安定し、人体の健康被害が軽減できるため、屋根工事、壁工事、日用品、各種部品などの分野でも導入され始めました。中には、伝統工芸の漆器で塗装ロボットが採用されている事例もあります。 

塗装ロボットの原理

塗装ロボットは、産業用ロボットに塗装ガンを取り付けた構造です。塗装時に噴霧された塗料がロボット自身にもふりかかるので、防爆が課題でしたがクリアすることができたため、導入が広がりました。

ロボットの形状として5~6軸を持つ多関節の製品が多くあり、主に次の3種類が使われています。

1. 垂直多関節ロボット

垂直方向に回転する関節が5~6軸あり、見た目でも人間の腕に近い動きが可能です。軸の向きを変えれば、垂直方向だけでなく斜め方向にも回転ができます。複雑な形状の塗装にも対応しています。

2. 水平多関節ロボット

ジョイントとリンクが水平方向につながり、回転は水平方向が可能です。ほぼ水平方向のみの動きなので、平面状の対象物への塗装に適しています。

3. 直角座標ロボット

3軸がスライドして移動する構造で、直交ロボットとも呼ばれます。複雑な動作はできないので、シンプルな形状の対象物に向いています。

塗装ロボットのその他情報

1. 塗装ロボットの活用事例

壁面吹付塗装ロボットの導入
距離センサで壁面と塗装ガン間の距離を計測し、その距離を一定に保持するように、ロボットの位置を制御することが特徴です。この技術を使うことで塗布量の分布が均一になり、熟練作業者と同等の品質が得られるようになります。

また、半自動にして、壁の隅などロボットでは難しいところは、人が作業する「人とロボットの協業」も可能です。

漆器における塗装ロボットの導入
熟練技術が必要なため、手作業で行なっていた漆器の塗装作業に、垂直多関節の塗装ロボットを導入しました。従来2名で行っていた作業をアシスタント1名で行えるようになり、労働生産性は約3倍に大きく向上しました。

さらに、少子高齢化による技術継承問題の解決に貢献しています。

屋根塗装作業における塗装ロボットの導入
屋根塗装作業に塗装ロボットを導入した例では、塗装ロボット導入前後で労働生産性が35倍の効果があります。

2. 塗装ロボットの塗装方式

塗装ロボットでは、仕上げが美しい静電塗装方式が使われます。静電塗装は、静電気の仕組みを利用した塗装方法です。ワークを正極、塗装ロボットを負極として、微粒化した塗料に高電圧をかけて負極に帯電させ、静電力線に沿って正極のワークに塗着させます。この方式は、塗料の無駄が少なく、塗装工数を大幅に削減でき、環境にも優しい点がメリットです。

使用する塗装ガンには、回転霧化方式と静電霧化方式が多く使われます。回転霧化方式は、塗料を微粒化しながら塗布パターンを広げる方法です。エアモータを高速回転させ、圧縮空気で軸と軸受の間に空気膜をつくり、この機構を非接触で高速回転させます。これらの回転により塗料は微粒の霧状になり、空気圧でワークの方向へ噴出します。

また、静電霧化方式は、静電気力で塗料の微粒子化を行う方法です。静電塗装方式は、自動車の車体、鉄道車両、電気製品、スチール製の事務機器、住宅関連の部品など大量生産の工業製品の塗装に広く採用されています。

参考文献
https://www.kajima.co.jp/news/press/202011/16a1-j.htm

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です