FPC

FPCとは

FPC

FPCは柔軟性のあるプリント基板のことです。紙のように薄く、柔らかいのが特徴です。通常の基板よりも軽量小型で経済的なため、近年では広く用いられるようになりました。

FPCはフレキシブル基板とも呼ばれ、Flexible Printed Circuitsの頭文字を取って略した名称です。

FPCの使用用途

FPCは電化製品や民生品に広く使用されます。代表的な使用用途はスマートフォンです。スマートフォンの制御基板はほとんどの場合、FPCが使用されています。小型軽量のため、普段から携帯する製品には重宝されます。

家電の中では液晶テレビなどに使用します。電子制御基板を小型化可能なため、経済的に有利です。他製品としてはキーボードやプリンターなどにも使用されており、使用用途は幅広いです。その他、重厚長大産業にも用いられています。近年では、宇宙開発や航空産業にも必需部品となりました。

FPCの原理

FPCの仕組みは、基本的にはプリント基板と同じですが、最大の相違点として基材がフィルムであることが挙げられます。絶縁性を持ったポリイミドやポリエステルなどのフィルムに、などの金属を配線として回路が印刷されます。フィルムと銅箔はともに12μm~50μm程度なので、貼り合わせてもかなりの薄さを維持することができます。

FPCは以下の方法で製作します。

  1. ベースとなるフィルムに、エポキシ樹脂などの接着剤で銅の薄い箔を貼り付けます。
  2. この基材に、エッチング用のドライフィルムをコーティングします。
  3. 紫外線を照射して回路図をドライフィルムに転写します。
  4. 必要な回路図の部分がドライフィルムに残るので、エッチングすると銅箔の回路パターンが完成します。
  5. ドライフィルムをはがして、全体に絶縁体のフィルムを貼ってメッキ処理します。

上記の工程で軽量で丈夫なFPCが完成します。FPCには片面FPCと両面FPCがあります。両面は片面よりも耐久性は劣る反面、設計が高密度にできるのが利点です。両面FPCでは、片面FPCの工程が繰り返されて製作されます。

近年では、FPCにリジッド基板をはさんだフレックスリジッド構造の基板や多層構造のFPC基板も開発されています。基材としては、ポリエステルよりもポリイミドの方が熱に強く丈夫です。

FPCのその他情報

1. FPCの特徴

FPCには、柔軟性が高い、重量が軽い、高価であるという3つの特徴があります。

  • 柔軟性が高い
    FPCの材料には、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが使用されます。プラスチックフィルムは柔軟で折り曲げ可能なため、電子機器の可動部などに使用されます。
  • 重量が軽い
    FPCの材料はプラスチックであり、軽量です。重量制限の厳しい宇宙業界や航空業界では必需品です。
  • 高価
    FPCは通常のプリント基板であるリジッド基板に比べて価格が高くなる傾向にあります。

2. FPCを使用する際の注意点

FPCを使用する上での注意点は、大きく分けて2つあります。

  • 耐屈曲性の違い
    FPCの特徴は高い柔軟性ですが、耐屈曲性はメーカーや製品ごとに異なります。FPCを使用する際には、耐屈曲性の確認が必須です。
  • 機械的に弱い
    FPCは軽薄なフィルムのため、機械的に弱いという性質を持ちます。部品を実装する際は補強板と呼ばれる板を電子部品の下に貼り付ける必要があります。

以上の点を考慮してFPCを使用する必要があります。

3. FPC市場規模の増加

Credence Resarchの調査によると、世界のFPC市場は年々増加しています。2018年から2027年にかけて年平均成長率 10.6%で推移すると予測され、フレキシブルエレクトロニクスの世界市場規模は2027年には約4.5兆円に拡大すると予測されています。

市場が拡大している背景として、自動車、家庭用電化製品、航空宇宙業界でのFPCの需要の高まりが関係しています。

参考文献
https://www.mektron.co.jp/product/fpc/
https://www.p-ban.com/about_pcb/flexible.html
https://www.okidensen.co.jp/jp/prod/fpc/flexible/fpc_setumei.html
https://www.elephantech.co.jp/pickups/what-is-flex-pcb/
https://www.credenceresearch.com/report/flexible-printed-circuit-boards-market

DINコネクタ

DINコネクタとは

DINコネクタ

DINコネクタとは、ドイツ工業規格であるDIN規格にを満たすコネクタのことです。

形状は直径13.2mmの丸形コネクタが多いですが、ツーピースコネクタと呼ばれるコネクタもあります。また、小型で丸形の直径9.5mmのコネクタはミニDINコネクタです。

丸形コネクタの場合、ピン数は3ピンから多数のピンを持つ構造です。古いタイプのスピーカーDINコネクタ等では2ピンのピン数を持つものもあります。通常、ロック機構がついていないので、強い力で引っ張ると抜けてしまいます。オス型とメス型があり、プラグの形状に合わせて接合して使用します。

DINコネクタの使用用途

DINコネクタは、音響機器に使用される場合が多いです。具体的には、ステレオ信号の入出力に使用され、レコーダーの接続用やリモートコントロール端子、カーオーディオ、スピーカー等の接続に使用されています。

その他、電子楽器、コンピュータ、テレビ、テレビゲーム機、マイクなどにも有用です。パソコン用には、電子基板同士を接続するツーピースコネクタが使用されている場合があります。ツーピースコネクタは四角い形状で、ピン数やピッチのバリエーションが多いです。

DINコネクタの原理

DINコネクタには、オスのプラグ側とメスのソケット側があります。DINコネクタの構造としては、オスにもメスにもハウジング部とコンタクト部があります。

オスとメスでうまく接合できるようそれぞれハウジングとコンタクトで多少形状は異なっていますが、役割は同じです。オスのプラグとメスのソケットを組み合わせるとコンタクトが接触し、電気的な接続が可能になります。

DINコネクタの丸形コネクタでは3pin以上のピン数を持ち、各ピンで別々の信号を送ることが可能です。例えば、ゲーム機で使用される丸形コネクタでは、音声、グラウンド、映像信号のGreen・Blue・Redの3色信号や電圧信号等のデータを送信しています。

DINコネクタの構造

DINコネクタは前述の通り、ハウジング部とコンタクト部から構成されます。

1. ハウジング部

ハウジング部は、コンタクトが組み込まれている本体部分です。コンタクトを保護する目的で、プラスチックを主とした絶縁体で作られています。

2. コンタクト部

コンタクト部は、コネクタをつないだ時に電気的な接続を行う接触子で、コネクタとしての役割を果たします。

コネクタの種類によって、コンタクトを保護するシェルやシェルとハウジングをつなぐアイレットという部品が使用されている場合もあります。

DINコネクタの種類

DINコネクタは形状によって丸形コネクタ、スピーカーDINコネクタ、小型丸形コネクタ、ツーピースコネクタ等に分類できます。丸形コネクタは直径13.2mmのコネクタであり、ピン数は3pin〜多数のピン数を持ちます。音響機器やゲーム機、パソコンのキーボードを接続するためにも使用されていました。

スピーカーDINコネクタはピン数は、2pinで以前スピーカーで使用されていたコネクタです。2pinのピン形状が異なるため、指し間違いを防いでいる構造です。

DINコネクタのその他情報

DIN規格

DIN規格は、ドイツ規格協会が規定するドイツ工業規格です。DINコネクタの他にもカーナビゲーションの外寸等が規定されています。

ドイツは標準化でビジネスや社会を発展させようといった思いがあり、標準化活動が盛んです。標準化規格は企業だけでなく、研究機関や消費者など誰でも提案することができます。

参考文献
https://www.omron.co.jp/

スリップリング

スリップリングとは

スリップリングとは、回転体の外部から電力や電気信号を伝えることができる回転コネクタのことです。

回転体に配置された金属製リングと固定側のブラシを介して電力や信号を伝達します。回転体の振動や応力、軸力を計測し、微小な信号を伝送して制御用に利用されています。回転体に電源を供給するリード線の役目として利用されることも多いです。

スリップリングの取り付けは主に2種類あり、軸端取り付けタイプと 中空タイプです。軸端取り付けタイプは回転体の末端に取り付けます。中空タイプは回転軸にリングブロックをはめ込みます。また、リングとブラシが一体型のタイプとリングとブラシが分離しているタイプもあります。

スリップリングの使用用途

スリップリングは低速回転用から20,000rpmの高速用まで展開されています。また、対応できる電力も3,000A以上の大電流のものもあり、実験、開発用から設備用まで広く利用されています。

風力発電機、工作機械、遠心分離機撹拌機ロボットアーム、クレーン車、監視カメラ、及びヘリコプター、ターンテーブル、ドラムヒーター、レーダーアンテナなどの回転体のヒーターやモーターの電源供給に使用されます。

また、半導体製造装置やCTスキャンのような医療機器、非破壊検査、音響装置など幅広い用途があります。回転体の温度、ひずみ、トルクの測定にも使われています。

スリップリングの原理

回転体のターンテーブルなどの回転軸にリング状の電極部分(リングユニット)がついています。リングユニットの外周や側面にブラシ状の電極部分が接触し、接触した箇所を接点として、電力と信号を伝送する構造です。

リングユニットが回転してもブラシとは常に接点を持つため、安定した電力の供給と信号の伝送が可能となります。リングユニットにはベアリングがあり、ブラシ側を支持しています。

スリップリングのリングとブラシの接点部分にはや銀などの貴金属を使用することで液漏れなどの心配もなく、接触抵抗を安定化させることが可能です。リングには青銅、銀、金などが使われ、ブラシ部分にはカーボンや銅、銀合金などが使用されます。

電力や信号の配線が多い場合にはスリップリングも必然的に大型になります。また、ある程度摩耗するため、定期的なメンテンナンスが必要です。

スリップリングのその他情報

1. スリップリングのブラシの役割

スリップリングは、ブラシが接点の役割をしていることによって回転体上の電気機器から固定側に送受信しています。ブラシが常に回転体と接触しているため、回転体が360°どの位置にあっても配線のねじれやシャフトへの絡まりなく送受信が可能となります。

回転体側と固定側との送受信が必要な信号数に応じて、ブラシ(接点)の個数は変化します。そのため、通信機器が多くなればなるほどブラシの個数が多く必要となり、結果としてスリップリング全体の巨大化につながります。

この場合、シリアル通信や自動車に使われているCAN通信を使用すれば、ブラシ数を減らすことが可能です。

2. スリップリングのデメリット

スリップリングのデメリットは、ブラシの摩耗による接点不良が発生する可能性があることです。ブラシは物理的に回転体と接触しているため、経年劣化により接触不良が発生することがあります。

特に屋外で使用する機器では、密閉ケースで保護されていない場合は、砂埃や水の侵入によって早期にブラシが損傷する場合もあります。そのため数年に1度はブラシの掃除や潤滑剤の塗布を行うことで寿命を延ばすのが一般的です。

このとき使用する潤滑剤は、導電性のあるものを選択します。導電性がない場合、ブラシ部分で通電不良が発生し、回転体側と固定側との間が通信不良となる恐れがるため注意が必要です。

ブラシ部の寿命は、一般的には1,000万回転~1億回転程度であり、メーカーによっては5億回転ぐらいまでです。長寿命の機器に使用する場合は、定期的にブラシ部のメンテナンスが必要になります。

参考文献
https://www.totukizai.co.jp/product/slipring/about.html
http://www.hikari-slipring.co.jp/publics/index/43/
http://www.kyoeidenki.jp/slipring/
https://slipring-japan.com/Slipring.html

ギヤードモーター

ギヤードモーターとは

ギヤードモーター

ギヤードモーターは、ギヤとモーターが組み合わせた装置です。ギヤとモーターを組み合わせることで、回転数やトルクを任意に設計できます。

ベルトプーリーなどと比べて摩擦による騒音が小さく、メンテンナンスも簡便です。モーターの回転数とトルクから、ギヤ比を選定して適切なギヤを選びます。ギヤヘッド部分のスペースが必要になるので大きさも確認する必要があります。

取り付け方法としては、フランジ取り付けタイプやタップ取り付けタイプなどがあります。

ギヤードモーターの使用用途

ギヤードモーターは、ギアによって低回転数で高トルクとなります。食品加工機や立体駐車場、半導体製造装置木工機械など、大型機械では特に使用されることが多いです。

身近な例としては、電動シャッターや洗車機にも使用されます。低回転数で高トルクな特性を活かし、産業用ロボットなどにも使用されます。

超小型から大型までギヤードモーターには多くのサイズがあります。また、電磁ブレーキ付きの製品やステッピングモーターを用いた製品など、ギヤードモーターは幅広いラインナップで展開しています。

ギヤードモーターの原理

ギヤードモーターは、モーターと減速機からなります。

高速で回転するモーターに対し、歯車を組み合わせてその回転数を調整しているのが減速機です。ギヤードモーターは、減速機によって低回転数で高トルクとなります。

モーターは、産業用では三相誘導モーターが多く使用されます。誘導モーターは定格回転数が周波数と極数によって決まっているため、ギヤ比を調節して回転数とトルクを選定します。

ギヤ比は、モーター回転軸と減速機出力回転軸の回転比で、ギヤ比を大きくするほどトルクが高くなります。高トルクを必要とする場合はギヤ比を高くします。

ギヤとモーターの位置によって平行軸か直行軸かを選定します。また、モーターの運転・停止が頻繁な際にはクラッチブレーキタイプを使用する場合もあります。

ギヤードモーターの使い方

ギヤードモーターの使用方法は多数ありますが、その中で代表的なものが、減速、高負荷、高精度になります。

1. 減速

三相誘導モーターなどは回転速度が極数や周波数で決まります。そこで、誘導モーターを所要の回転速度で使用するために減速機で減速します。

各社様々な減速比のギヤードモーターを販売しているので、所要回転数に合うように型式を選択します。

2. 高負荷

減速によって出力トルクが減速比に比例して大きくなり、許容慣性モーメントは減速比の2乗に比例して大きくなります。これにより速度は落ちる代わりに大きな物体を回転させることができます。

3. 高精度

位置決め運転に使用する場合、モーターの停止角度精度が良くなります。

例えば、減速比が2の場合、モーター出力軸の誤差が1.0°とすると減速機出力軸の誤差は0.5°となり、精度が良くなります。ただし、減速機にはバックラッシと呼ばれる遊びがあるものが多く、高精度位置決めに使用する際には注意が必要です。

ギヤードモーターのその他情報

ギヤードモーターの減速機

ギヤードモーターに使用される減速機にはいろいろな種類があり、用途によって選択します。代表的なものとして、「平歯車減速機」「ベベルギヤ減速機」「ハイポイド減速機」「ウォーム減速機」「遊星歯車減速機」「波動歯車減速機」などが挙げられます。

1. 平歯車減速機

平歯車減速機は最も一般的な減速機で、平歯車の組み合わせで減速します。多段式もあり、大きな減速比も製作することができますが、バックラッシが大きめです。

2. ベベルギヤ減速機・ウォーム減速機

ベベルギヤ減速機とウォーム減速機は入力軸と出力軸が直交しています。ウォームギヤはセルフロック機能を持っているので、昇降機などに多く使用されます。

3. ハイポイド減速機

ハイポイド減速機はスパイラルベベルギヤを使用した減速機で、大きな減速比と滑らかな動力伝達が特徴です。

4. 遊星歯車減速機

遊星歯車減速機は遊星歯車を使用した減速機で、入力軸と出力軸が同心になります。ステッピングモーターなどの減速に多く用いられます。

5. 波動歯車減速機

波動歯車減速機は開発したハーモニックドライブシステムズの社名から、「ハーモニック減速機」とも呼ばれます。バックラッシが無い減速機として、ロボットの関節に多く使用されます。

その他、ボール減速機やサイクロ減速機などもあり、減速機によって出力特性が変わるので、ギヤードモーターの選定には減速機の特性を知ることが重要になります。

参考文献
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/213/
https://www.cls-motor.com/products/dc/geared
https://www.mikipulley.co.jp/JP/Products/SpeedChangersAndReducers/about.html
https://www.orientalmotor.co.jp/products/stepping/overview_3/

ディップスイッチ

ディップスイッチとは

ディップスイッチ

ディップスイッチは、プリント基板などに使用される小型スイッチです。デュアル・インライン・パッケージスイッチを省略してディップスイッチと呼ばれます。

端子間距離が3mm程度、高さも3mm程度と非常に小型で、精密ドライバー等で切り替えます。設定用スイッチとして使用され、操作頻度が低い場合に用いられます。

操作方式には、スライドスイッチやプッシュロックスイッチ、ロータリースイッチなどがあります。また、基板の穴に挿入するタイプや実装するタイプがあります。極数やシール性能もさまざまな種類が展開されています。

ディップスイッチの使用用途

ディップスイッチは家電製品、通信機器、音響機器など広範囲の製品に組み込まれています。産業用としては、温度調節器サーボコントローラに使用されます。

OA機器にも使用され、パソコンやストレージ基板などに用いられます。主に電子機器の基本設定用に利用されます。多様な使用条件に耐えるため、高温使用にも耐える耐熱仕様や薄型仕様などさまざまなタイプがあります。

ディップスイッチの原理

通常のスイッチと同様にオン・オフを切り替えることで回路の導通・遮断します。ストライカと呼ばれるつまみと摺動子が連動しており、摺動子と接点が接触・開放することで回路が切り替えます。ストライカは、摺動子と接点を接触させるおもりの役割も持ちます。

接点と端子はベース樹脂と一体に成型されます。はんだ付けの際に高温になるので、ベース樹脂には耐熱性の高いプラスチックが使用されます。部品を一体に成型することで、小型化軽量化します。また、ベース樹脂は端子保護の役割も持ちます。

接点端子の形状は基板穴に挿入するタイプと表面に実装するタイプがあります。長期間スイッチが放置されやすいので、酸化しないよう接点に金メッキを施すこともあります。セルフクリーニング機構で摺動時に接点を清掃し、異物や酸化物を除去する製品もあります。

ディップスイッチはとても小さいので、切り替えには先の細いドライバーピンセット等が必要です。

スイッチやディップスイッチの種類

スイッチは用途によって種類も様々です。スイッチには以下のような種類があり、産業、民生問わずさまざまな場所で使用されます。

スイッチの種類

  • プッシュスイッチ
    名前の通りボタンを押して切り替えるスイッチです。
  • トグルスイッチ
    レバーを上下や左右に倒して切り替えるスイッチです。
  • ロッカスイッチ
    ボタンの両端を押すことで切り替えるスイッチです。
  • スライドスイッチ
    名前の通りスライド操作で切り替えるスイッチです。
  • ロータリースイッチ
    スイッチ部のつまみをまわすことで切り替えるスイッチです。
  • マイクロスイッチ
    わずかな力で切り替えるスイッチです。
  • ディップスイッチ
    電子機器の各種設定に利用される基板上に実装されるスイッチです。
  • タクタイルスイッチ
    基板上に実装され、人がスイッチを押し込むことで電気回路を通電させる小型のスイッチです。

ディップスイッチの種類

  • スライドタイプ
    操作部を摺動させて切り替えます。操作部がフラットなものや凸型になっているものがあります。
  • ピアノタイプ
    操作部を押し下げて切り替えます。レバーが短いものや長いものなどがあります。
  • ロータリータイプ
    操作部を回転させて値を設定します。操作部が基板に対して垂直上面から操作するものや、水平方向に操作するものがあります。

操作部以外についても実装の方式や、極数などその特性によりさまざまな種類があります。

ディップスイッチの構造

ディップスイッチの構造は、カバー、ストライカ、摺動子、ベースの4つから構成されます。カバーは、スイッチ上面を覆う樹脂の射出成型部品です。ベースと嵌合させて内部機構を保護します。

ストライカはスイッチの操作部です。摺動子に力を伝え、接点を動作させます。摺動子は加工された金属板などで可動する接点です。ベースは、金属端子と接点を樹脂射出成型により一体化したもので、耐熱性がある樹脂材料が使われます。

参考文献
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120605/221411/
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120605/221411/

NTCサーミスタ

NTCサーミスタとはntcサーミスタ

NTCサーミスタとは、温度が上がると抵抗値が下がる性質を持つ電子部品です。

NTCとは、Negative Temperature Coefficient (負の温度係数) の頭文字をとったもので、温度と抵抗に負の相関があるという意味です。サーミスタ (英: Thermistor) は、Thermal Sensitive Resistor「熱に敏感に反応する抵抗体」から派生した言葉です。抵抗体を被測定体に接触させ、電気抵抗の差から温度を測定することができる部品のことを指します。抵抗体には金属酸化物半導体を使用していることが特徴です。

NTCサーミスタは材料が安価で加工しやすいため、サーミスタの中でも最も汎用性が高いです。微小な温度変化でも抵抗値が変化するため、高精度なサーミスタです。身近な家電製品や産業機器など広く利用されています。

抵抗値の違いを検出して、温度センサーとして利用されています。リードタイプやチップタイプ、ディスクタイプ、薄膜タイプなどがあります。

NTCサーミスタの使用用途

NTCサーミスタは安価な特性から、産業用途から家電製品まで幅広く使用されます。主に温度センサーとして利用されており、一例を以下に示します。

  • スマートフォンの内部温度検知
  • 電子基板における突入電流低減
  • 電子体温計の温度測定
  • 掃除機のモーター温度監視
  • 冷蔵庫の温度検知

1. スマートフォンへの応用

スマートフォンは熱に弱い部品や熱で精度が落ちる部品が使用されているため、熱がこもらないようにすることが重要です。そこで内部の温度変化をNTCサーミスタが検知して、ICに情報を伝えています。室温を測定するだけではなく、回路の安定化や故障を防ぐために過熱から回路を守る温度保護素子としても利用されます。

2. 突入電流低減

電気・電子機器において、電源投入時に一時的に定常電流値を超えて大きな電流が流れることがあります。この電流は突入電流と呼ばれます。突入電流の発生理由としては、大容量コンデンサの初期充電などが考えられます。

NTCサーミスタにおける低温時の高抵抗値を利用し、電源投入時の突入電流抑制に使用される場合があります。電流負荷によってサーミスタの温度が上昇すると、抵抗値が減少して電力も同様に減少します。

通電による温度上昇で抵抗値が低下するため、固定抵抗を使用するよりも電力損失を低減することが可能です。そのため、NTCサーミスタは突入電流を簡便・効果的に制限するICL(Inrush Current Limiter:突入電流リミッタ)として、電気・電子機器の回路保護に使用されます。

3. 温度測定回路

NTCサーミスタは温度測定回路として広く使用される部品です。温度変化を抵抗値変化で検出する部品のため、他の抵抗器と組み合わせて使用することが多いです。最もよく使用される回路構成は、定電圧源にプルアップ抵抗またはプルダウン抵抗を介して、サーミスタを接続し使用する方法です。

NTCサーミスタの原理

NTCサーミスタの主成分はセラミックスです。NTCサーミスタはマンガンニッケル、コバルトなどの酸化物を混合・焼結した半導体セラミックスに電極をつけています。ドーピング物質によってN型半導体とP型半導体があります。

通常は温度上昇時に自由電子と正孔の移動速度は小さくなります。しかしながら、NTCサーミスタは価電子帯の電子が熱エネルギーを受けて伝導体へ移動し、伝導体中の自由電子と正孔の増える割合のほうが上回るため、抵抗が小さくなります。温度が上がると指数関数的に抵抗値が下がる特性を持っており、抵抗温度係数は1℃あたり3~5%下がります。NTCサーミスタは抵抗値がなだらかに低下する点が特徴です。

NTCサーミスタを作るには、原料の酸化物を均一になるように混合して800℃~1,000℃で仮焼きします。それらを粉砕した後に粒の大きさを成型に適したサイズまで大きくし、最終形状に成型して1,300~1,500℃で焼成します。最後に電極を形成し、エポキシ樹脂で外装して完成します。

NTCサーミスタの選び方

NTCサーミスタは用途や寸法、B定数、抵抗値などによって選定します。用途はNTCサーミスタを使用する用途です。車載用や電子基板実装用などがあります。寸法と合わせて実装する場面に応じて選定します。

B定数は温度変化に対する抵抗値の傾きで、NTCサーミスタの材料配分によって変化します。B定数が大きいほど温度による抵抗変化が大きくなります。したがって、B定数が大きい製品は高感度であり、小さい製品は低感度です。

抵抗値は室温 (25℃) における通常抵抗値です。一般的には低温環境下では抵抗値が小さい製品を選定し、高温環境下では抵抗値が大きい製品を選定します。

参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/3898/
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/temperature/chip-ntc-thermistor/technote/apn-chip-ntc-thermistor.html
https://product.tdk.com/info/ja/products/protection/current/ntc-limiter/technote/apn-ntc-limiter.html

ヒューズホルダー

ヒューズホルダーとは

ヒューズホルダー

ヒューズホルダーとは、電気回路にヒューズを取り付けるための器具です。

固定用の留め金と電気回路との接続用端子から構成されます。ヒューズを簡単に交換できるように設計されています。

ヒューズは、過電流による機器の故障防止に利用されます。ヒューズ素材や配合具合に応じて適性があり、場面に応じて選定します。

ヒューズホルダーの使用用途

ヒューズホルダーは電気回路の保護機能向上させるために広く使用されます。以下はヒューズホルダーの使用用途一例です。

  • テレビなどの家電
  • 家庭用または産業用照明器具
  • 自動車用オーディオやETC用車載装置

家電にはヒューズホルダーを使用した製品も多く、異常時にヒューズが切れて電気回路を保護するため安全性が確保されます。車載製品でもヒューズホルダーが広く使用され、車両の電気回路を保護します。LEDライトや高精度電子基板にも、使用される場合が多いです。

ヒューズホルダーの原理

ヒューズホルダーの原理は、ヒューズの原理と密接に関係しています。ヒューズは通常状態で回路を通電させるための低抵抗状態です。しかしながら、電流が異常に高くなった場合にはヒューズの熱膨張により、ヒューズが切れて回路を遮断することができます。

ヒューズホルダーは、このヒューズを回路に固定するための器具です。ヒューズを取り付けるための留め金と電気回路接続用の端子があります。

回路に接続されたヒューズホルダーの中にヒューズを差し込んで使用します。ヒューズホルダーはさまざまなラインナップがあり、ヒューズの大きさに合わせてサイズを選びます。

ヒューズホルダーの種類

ヒューズホルダーは、場面に応じてさまざまな種類が存在します。以下はヒューズホルダーの種類一例です。

1. パネルマウント

パネルに取り付けて使用するヒューズホルダーです。パネルに穴を開けて固定し、ヒューズを差し込む形式が一般的です。パネルマウントタイプには取り付けネジがついている製品や、クリップでパネルに固定する製品など、さまざまな種類が販売されています。

2. インライン

電気回路中で直接使用するヒューズホルダーです。ヒューズを差し込む形式やスイッチのようにON/OFFできる形式などさまざまなラインナップがあります。また、インラインタイプはスルーホールやワイヤーリードなど接続方法も多彩です。

3. スルーホール

ヒューズホルダーの端子が穴状になったヒューズホルダーです。ヒューズをスルーホールに通して取り付けるため、ヒューズとヒューズホルダーの接触面積が大きく点が特徴です。したがって、接触抵抗が少なく信頼性が高い利点があります。

4. クリップ式

クリップでヒューズを固定するヒューズホルダーです。ヒューズを差し込む形式ではなく、クリップを開いてヒューズを挟み込んで使用します。ヒューズを簡単に取り外すことができるため、交換が簡単に行えるという利点があります。

5. ヒューズボックス

ヒューズを収納するボックス状のヒューズホルダーです。ヒューズを収納するためのボックスと、ヒューズと電気回路を接続する端子が一体化しています。防塵性や防水性に優れているため、屋外での使用に適しています。

ヒューズホルダーの選び方

ヒューズホルダーを選ぶ際には、サイズ、種類、定格電流、接続方法などを考慮します。

1. サイズ

まず、ヒューズのサイズに合わせたヒューズホルダーを選ぶ必要があります。ヒューズホルダーにはヒューズを取り付けるため、サイズ一致は必須です。

2. 種類

また、多彩な種類から適切な製品を選定することも必要です。ヒューズの種類に応じてヒューズホルダーを正しく選定します。ヒューズとホルダーが不一致であった場合、正しく電気回路に導入できません。

3. 定格電流

次に、定格電流を選定し、電流に応じて適切なヒューズを選んでヒューズホルダーに取り付けます。

4. 接続方法

ヒューズホルダーの端子部分に接続する配線の種類に応じて、適切な接続方法を持つヒューズホルダーを選定します。

参考文献
https://www.diylabo.jp/basic/basic-100.html
https://jp.misumi-ec.com/

IGBT (日本語)

IGBTとは

IGBT

IGBTとは、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタのことを言います。IGBTの頭文字は「Insulated Gate Bipolar Transistor」から取られており、IGBTの構造はMOSFETにP型半導体を追加した、PNP型バイポーラトランジスタです。

すなわち等価回路として、入力部にNチャンネルのMOSFETがあり、出力部にPNP型バイポーラトランジスタがある複合型のトランジスタの回路構成と考えればよいです。一方で、バイポーラトランジスタ部のベース部分にMOSFETがある構造とも言えるために、小さな電流に対して非常に大きな出力電流を発することができるという特徴があります。

高性能な半導体で、ベースとしているMOSFETよりも高耐圧で、損失が少ないです。さらに熱が発生しにくい利点があります。IGBTは1980年代に日本で開発された半導体で、その当時の構造はパンチスルー型と呼ばれました。

近年はウエハプロセスの進展に伴いさらに小型化、低コスト化が進んでおり、ノンパンチスルー構造やフィールドストップ型と呼ばれるIGBTデバイスが製造されています。

IGBTの使用用途

電力の大きい使用動作条件下においても高速なので、可変速駆動装置や電力変換器に用いられるのが一般的な使用用途です。IGBTの適用範囲は広く、大型の製品だとハイブリッド車や電気自動車、電車といった乗り物の高出力用三相モーター制御用のインバータに使用されています。

また、IH調理器具や洗濯機、エアコンのインバータ回路、プリンターなど大型の家電の電力制御にも広範囲に使用されています。近年の省エネ化に伴って、電力の損失を減らすことができるIGBTはさらに使用用途が拡大しています。

IGBTの原理

IGBTは、冒頭で説明したように入力部分にMOSFET、出力部分にバイポーラトランジスタの構造を持っていて、それぞれの特徴を合わせたような性質があります。IGBTはMOSFETにP型半導体を追加した構造で、そのキャリアは電子と正孔の2種類です。

キャリアが2種類なのでスイッチング速度がMOSFETよりは遅いですが、バイポーラトランジスタよりは早く、耐圧性はMOSFETより向上しています。端子の入力部であるゲートから電圧がかかるとMOSFETから電流が流れ、P型半導体まで導電すると、今度はバイポーラトランジスタの性質として少量の電流を増幅してエミッタとコレクタ間に大きな電流を流すことが可能です。

また、バイポーラトランジスタのように伝導率変調が起こるので、オン抵抗を低くすることができ電流密度が高くなります。コレクタとエミッタ間に一定の電圧降下が生じるので、電流が大きい場合にはMOSFETよりも損失を少なくすることができます。

IGBTのその他情報

1. IGBTを適用したインバータ回路について

インバーター回路とは、ACからDCへのコンバータ回路と対に用いられるDCからACへの変換回路です。このインバータ回路で電圧や周波数を変えた交流を出力の際に、IGBTが用いられます。

IGBTをスイッチングし、ONとOFFの間隔調整を行い、パルス幅の調整をします。異なるパルス波を生成整形することで、正弦波に近づけていきます。これをパルス幅変調と呼び、ここにIGBTはよく利用されています。

パルス幅変調での周波数変換により、モーターの回転数を変えて家電商品の機能は制御されています。エアコンや、冷蔵庫、産業用モーター、コンピューターの電源などの家電商品には広く用いられてます。

2. IGBTとMOSFETの違い

IGBTは、MOSFETとBJT(バイポーラジャンクショントランジスタ)のいいとこ取りのデバイスという説明はよくありますが、実はMOSEFETと比較すると欠点もあります。IGBTでは、その構成上オフセットを有する立ち上がり電圧を有するために、特に低電流領域では、一般にMOSFETデバイスの方がVdsが低くなります。

IGBTは中大電流領域を主眼に置くデバイスですので、この領域ではむしろMOSFETよりも低いオン抵抗を示しますが、低電力領域での効率を重視するようなアプリケーションの場合には、むしろMOSFETの方が良い特性です。Vdsが1V未満の領域は言うまでもなく、Vds=2V程度まではMOSEFETに効率面では軍配があがり、それより大きい電圧ではIGBTが優れています。

3. IGBTモジュールについて

IGBTは複合デバイスであるために、その動作を一から自力で制御するように組み立てるには労力が必要です。そのため、その制御部分の信号処理や増幅回路、保護回路、寄生ダイオード等を複合モジュールにまとめたIGBTモジュールは広く製品化されています。

IGBTはSOA(Safety Operation Area)や絶対最大定格を超えると破壊しやすいトランジスタであるため、その保護回路を内蔵しているものもあります。耐圧とスイッチング速度の両立の為に開発され、長年改良されてきたIGBTですが、このパワーデバイス領域に最近SiCやGaNという化合物半導体の新材料を用いたパワー半導体デバイスが導入され始めています。

これらの次世代パワー半導体デバイスは、IGBTよりも高速なスイッチング動作を可能とし、耐圧にも優れるため、近年研究開発がますます活発です。とはいえ、コストや供給面などのクリアすべき課題も残されており、現在のIGBTの市場領域をすべて置き換えるわけではなく、当面は住みわけが進むでしょう。

参考文献
https://detail-infomation.com/igbt/
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/2857/

外観検査装置

外観検査装置とは

外観検査装置

外観検査装置とは、製品の外観を検査する装置です。

大量生産による生産品の外観を検査することができます。装置を導入することで検品でかかる人件費の削減が可能であり、生産性を向上させて製品価格を抑えられます。また、人間の目では見落としやすい微細な欠陥や異常を高精度に検出し、品質を向上できる場合も多いです。

近年では、カメラや画像処理技術の向上により、微細な異物や欠陥の判定も可能となりました。製品や工程に応じて、さまざまな状況に特化した外観検査装置が製作されています。

外観検査装置は製造した製品の表面異物や汚れ・バリといった外観の検査を行い、瞬時に判定します。適用される外観検査の工程としては、製造途中工程や製品の組み立て工程などがあります。

外観検査装置の使用用途

外観検査装置は、多くの生産ラインで使用されています。食品包装や電子デバイス、医療機器、成型シートなど、業界はさまざまです。以下は用途の一例です。

1. 食品工場

食品包装においては容器のへこみや傷を検出するために使用されます。また異物などがないかといったことや、ラベルに印刷不良がないかどうかを検査します。

2. 医薬品工場

錠剤に欠けやヒビがないか、アンプルに異物が入っていないかどうかを検査します。

3. 電子機器工場

電子部品の形状や不良配線を検出することができます。ベアリングにおいては、錆・腐食やへこみを検査します。、また機器の表面や画面に傷や汚れがないかどうかなども検査が可能です。

4. 自動車工場

自動車部品に傷やバリがないか、表面傷や、塗装にムラがないかどうかを検査します。

外観検査装置の原理

画像処理検査方式はあらかじめ多数の合格品の画像を記録しておいて、それぞれの画素の濃淡を記録する方法です。一定の区画に区切った濃度差の平均値と標準偏差を求め、その値と検査対象の画素値を区画ごとに比較します。

合格品と比較して大きく濃度が異なる場合には、傷や異物として判断します。傷や異物の寸法基準を登録しておくことで合格、不合格を判断するという仕組みです。誤検出を防ぐために、微分処理や投影処理が行われる場合もあります。

外観検査装置の動作は一般的に高速で、全数検査が可能です。ただし、装置自体の導入コストが比較的高額です。また、対象物の形状や外観検査基準に応じたソフトウェアの最適化が重要で、立ち上げまで時間がかかる場合があります。以下は、外観検査装置の主な構成です。

1.  カメラ

製品を撮影するカメラです。高画質のカメラを使用することで、より詳細な検査が可能になります。

2.  照明

製品を均一に照らす照明です。照明の種類や角度を変えることで、検査対象となる欠陥をより鮮明に映し出すことができます。

3. 画像処理装置

外観処理装置の画像処理装置は、カメラで撮影した製品画像を分析することで、製品の欠陥を自動的に検出する装置です。目視検査に比べて、人間の目よりも精度が高く、安定した検査が可能です。

4. 排出装置

不良品を自動で排出する装置です。

外見検査装置の選び方

外観検査装置を選ぶ際には、製品や産業の要件に合わせて適切な装置を選びます。一般的には個別に設計して製作します。

まずは何を検査するかを明確にすることが重要です。製品の種類や材料、表面特性などに応じて適切な装置を選びます。特定の外観欠陥や品質基準を定義し、それに基づいて装置を設定できるかどうかも考慮することが必要です。

製造ラインに導入する際は、外観検査の速度と精度も重要です。高速な製造プロセスに対応し、所定の品質基準を満たす精度を持つ装置を選びます。

また、外観検査装置のカメラとセンサーには、さまざまな種類があります。製品の特性に合わせて適切なカメラの解像度、光源の種類、センサーのタイプを選ぶことが大切です。

外観検査装置のその他情報

1. 外観装置検査の機能

近年では、外観検査装置と人工知能 (AI) とを組み合わせ、より高度な外観検査や品質管理を実現するのがトレンドです。人工知能は機械学習や画像処理のアルゴリズムを活用して、大量のデータを解析し学習することができます。これにより、さまざまな機能が実現可能です。

欠陥検出
学習済みのモデルを使用して異常なパターンや欠陥を検出することができます。例えば、不良品の画像データを学習し、それを基に製品の外観を判定することができるため、より高い精度で欠陥を検出することが可能です。

パターン認識
複雑なパターンや形状を認識することが得意です。外観検査装置に搭載されたAIは、製品の外観パターンを学習し、正常な外観との比較を行います。異常なパターンや形状が検出されると、不良品として判定することができます。

自動学習と改善
外観検査装置が取得するデータを分析し、自動的に学習や改善を行うことができます。不良品のデータや検出結果をフィードバックし、モデルを更新することで、検査の精度や効率を自動的に向上させることが可能です。

多品種少量生産への対応
従来の外観検査装置では、品種の切り替え (段取り替え) に人間の手間がかかります。そのため、頻繁に段取り替えの生じる多品種少量生産だと、効率が落ちるという問題が生じます。これに対して、人工知能では、同時に複数の品種の学習を行わせることで、検査の段取り替えを最低限にすることができます。

人工知能を組み込んだ外観検査装置は、より高速かつ正確な検査を実現し、人間の目では見逃しがちな微細な欠陥やパターンを検出することが可能です。

2. 外観検査装置と人による外観検査の使い分け

外観検査装置と人による外観検査は、それぞれ特定の状況や要件に合わせて使い分けることが一般的です。

外観検査装置
外観検査装置は高速で一貫性のある検査を提供し、製造プロセスの効率性を向上させます。機械的な精度を持ち、連続的な監視が可能です。したがって、高速な製造ラインや大量生産が必要な場合や、検査対象が微細な部品である場合などに使用されます。

人による外観検査
人による外観検査は、新しい検査基準や変更に対応しやすく、柔軟に作業を調整できます。また、視覚的な経験や判断力を活用することも可能です。製品の外観基準が主観的で人間の判断が重要な場合や、小規模生産や試験生産では人が外観検査を実施します。

参考文献
https://www.keyence.co.jp/landing/req/vision/lp_visual-inspection_01070123.jsp

電流プローブ

電流プローブとは

電流プローブとは、オシロスコープで直接電流を測定するためのプローブです。

被測定電流が流れるケーブルをヘッド部で挟み込むことにより、電流波形を観測します。ケーブルを切断せず、ケーブルに流れる電流を測定することを目的とした計測器にクランプメータがあります。

測定する度にケーブルの切断が不要なため、普段通り照明や設備を稼働したまま電流を測定できることが大きなメリットです。クランプメータと同様、電流プローブもケーブルを切断せずに電流波形を観測することができます。

電流プローブの使用用途

電流プローブは、オシロスコープを用いて電流波形を観測する場合に使用されています。用途としては、産業機器や電子機器の電流測定です。具体的にはインバータ機器の電流測定、モーターの負荷電流、スイッチング電源の測定、LED照明の駆動回路の評価などさまざまです。

電流の大きさや用途により、大電流用、微小電流用、高速電流用など、色々な機種が販売されています。また、直流電流及び交流電流両用の電流プローブと交流電流のみ測定が可能な交流専用の電流プローブがあります。

電流プローブの原理

電流プローブは電源ケーブルに電流が流れる際に生じる磁束を利用しているため、電流計を挿入する場合とは異なり、被測定回路を切断せずに測定できます。電流プローブのヘッド部 (ケーブルを挟む部分) は、トランスのコアと同様に高透磁率磁性材料 (パーマロイなどの鉄系の素材) を用いて、ケーブルから発生する磁束を閉じ込める構造です。

ただし、交流専用の電流プローブと交直両用の電流プローブとでは、磁束の検出方法が異なります。

1. 交流専用の電流プローブ

トランスは、1次側に加えた交流を2次側で巻数比に応じた電圧や電流に変換することができるものです。電流プローブにおいて、コアで囲まれた空間に交流電流が流れるケーブルが置かれると、トランスの1次側巻線と同様に作用します。

また、コアには2次側巻線に相当するコイルが巻かれていて、コア内の磁束変化に応じてその両端に現れる電圧からケーブルに流れる電流値を知ることができます。交流専用の電流プローブでは、この方法が主に採用されています。

ただし、直流では磁束の変化が無いため、2次側巻線に電圧が現れません。したがって、トランスの原理を利用した上記方法は使えません。

2. 交直両用の電流プローブ

直流電流も計測できる交直両用タイプのものは、ホール素子をコアの内部に埋め込んだヘッド部を用います。ホール素子は直流、交流どちらでもホール効果により磁束密度に応じた電圧を出力するため、この電圧をオシロスコープの端子に入力すると、電流値 (波形) がディスプレイ上に描かれることになります。

電流プローブのその他情報

1. 電流プローブの調整

電流プローブを使用する際に、事前に調整しておくべき事項として以下の2点があります。

オフセットキャンセル
交直両用の電流プローブは、直流から120MHz程度の交流まで測定可能であるため使いやすいですが、電流の検出にホール素子を用い、その出力をDCアンプで増幅してオシロスコープの入力端子に繫げることから、DCオフセットが避けられません。したがって、正確な測定にはこれをキャンセルする必要があります。

なお、手順は以下の通りです。

  1. プローブの先端にあるコアの残留磁気を消去するため、デガウス処理を実行します。
  2. オフセット電圧調整機能を使って、オシロスコープの表示が0Aとなるように調整します。
  3. この調整が終わってから、電流プローブを被測定回路に取り付けます。しかし、長時間測定を続けていると、徐々にDCオフセットが変動して0Aのポジションが変わってしまうため、時々上記手順を繰り返す必要があります。

スキュー調整
電源回路での電力測定など、電流プローブと電圧プローブを使って電流波形と電圧波形を同時に観測する場合、オシロスコープ本体に到達する信号の遅延時間がプローブ毎に異なるので、信号波形の位相合わせ、いわゆるスキュー調整が必要です。パワー測定デスキュー・フィクスチャ等の名称で調整用機器が販売されているので、これらを利用してプローブ間の位相合わせを行います。

2. 交流電流プローブにおける測定対象

交流電流プローブは前述した通り、トランスの原理を利用して被測定回路に流れる電流を検出しますが、低い周波数の電流では波形が小さく観測されます。特に低速のパルス信号はサグにより波形が歪んでしまいます。

したがって、直流を含む低い周波数の信号を測定する場合は、交直両用の電流プローブを選択することが重要です。

3. 電流プローブの周波数特性

電流プローブで扱える電流の大きさはその周波数に依存し、周波数が高くなると測定可能な電流は低下します。これは高い周波数ほど、コアやトランスの発熱が激しくなるためです。

被測定電流の周波数を踏まえ、使用するプローブの機種を選択する必要があります。

4. 挿入インピーダンスの影響

電流プローブを被測定回路に取り付けるのは、被測定回路に小さなインピーダンスを挿入することになります。このインピーダンスが回路に及ぼす影響は小さいので、通常は無視しても差し支えありません。

しかしながら、微小電流を測定するために電流が流れるラインをコアに複数回巻き付けると、前述のインピーダンスは巻き付けた回数倍の大きさになるため、被測定回路に影響を及ぼす可能性が高くなります。

参考文献
http://www.ktek.jp/probe-v-a-frm2011-11/tek-current-probe-tech-note.pdf
https://tmi.yokogawa.com/jp/solutions/products/oscilloscopes/current-probes/
https://news.mynavi.jp/article/oscilloscope2-8/
http://www.ktek.jp/hantek-dso-dmm-awg-2018/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%96%E5%85%A5%E9%96%80-2009-TEK%E7%89%88.pdf
https://www.keysight.com/ja/pd-1325146-pn-U1880A/power-measurement-deskew-fixture?cc=JP&lc=jpn