FPCとは
FPCは柔軟性のあるプリント基板のことです。紙のように薄く、柔らかいのが特徴です。通常の基板よりも軽量小型で経済的なため、近年では広く用いられるようになりました。
FPCはフレキシブル基板とも呼ばれ、Flexible Printed Circuitsの頭文字を取って略した名称です。
FPCの使用用途
FPCは電化製品や民生品に広く使用されます。代表的な使用用途はスマートフォンです。スマートフォンの制御基板はほとんどの場合、FPCが使用されています。小型軽量のため、普段から携帯する製品には重宝されます。
家電の中では液晶テレビなどに使用します。電子制御基板を小型化可能なため、経済的に有利です。他製品としてはキーボードやプリンターなどにも使用されており、使用用途は幅広いです。その他、重厚長大産業にも用いられています。近年では、宇宙開発や航空産業にも必需部品となりました。
FPCの原理
FPCの仕組みは、基本的にはプリント基板と同じですが、最大の相違点として基材がフィルムであることが挙げられます。絶縁性を持ったポリイミドやポリエステルなどのフィルムに、銅などの金属を配線として回路が印刷されます。フィルムと銅箔はともに12μm~50μm程度なので、貼り合わせてもかなりの薄さを維持することができます。
FPCは以下の方法で製作します。
- ベースとなるフィルムに、エポキシ樹脂などの接着剤で銅の薄い箔を貼り付けます。
- この基材に、エッチング用のドライフィルムをコーティングします。
- 紫外線を照射して回路図をドライフィルムに転写します。
- 必要な回路図の部分がドライフィルムに残るので、エッチングすると銅箔の回路パターンが完成します。
- ドライフィルムをはがして、全体に絶縁体のフィルムを貼ってメッキ処理します。
上記の工程で軽量で丈夫なFPCが完成します。FPCには片面FPCと両面FPCがあります。両面は片面よりも耐久性は劣る反面、設計が高密度にできるのが利点です。両面FPCでは、片面FPCの工程が繰り返されて製作されます。
近年では、FPCにリジッド基板をはさんだフレックスリジッド構造の基板や多層構造のFPC基板も開発されています。基材としては、ポリエステルよりもポリイミドの方が熱に強く丈夫です。
FPCのその他情報
1. FPCの特徴
FPCには、柔軟性が高い、重量が軽い、高価であるという3つの特徴があります。
- 柔軟性が高い
FPCの材料には、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが使用されます。プラスチックフィルムは柔軟で折り曲げ可能なため、電子機器の可動部などに使用されます。 - 重量が軽い
FPCの材料はプラスチックであり、軽量です。重量制限の厳しい宇宙業界や航空業界では必需品です。 - 高価
FPCは通常のプリント基板であるリジッド基板に比べて価格が高くなる傾向にあります。
2. FPCを使用する際の注意点
FPCを使用する上での注意点は、大きく分けて2つあります。
- 耐屈曲性の違い
FPCの特徴は高い柔軟性ですが、耐屈曲性はメーカーや製品ごとに異なります。FPCを使用する際には、耐屈曲性の確認が必須です。 - 機械的に弱い
FPCは軽薄なフィルムのため、機械的に弱いという性質を持ちます。部品を実装する際は補強板と呼ばれる板を電子部品の下に貼り付ける必要があります。
以上の点を考慮してFPCを使用する必要があります。
3. FPC市場規模の増加
Credence Resarchの調査によると、世界のFPC市場は年々増加しています。2018年から2027年にかけて年平均成長率 10.6%で推移すると予測され、フレキシブルエレクトロニクスの世界市場規模は2027年には約4.5兆円に拡大すると予測されています。
市場が拡大している背景として、自動車、家庭用電化製品、航空宇宙業界でのFPCの需要の高まりが関係しています。
参考文献
https://www.mektron.co.jp/product/fpc/
https://www.p-ban.com/about_pcb/flexible.html
https://www.okidensen.co.jp/jp/prod/fpc/flexible/fpc_setumei.html
https://www.elephantech.co.jp/pickups/what-is-flex-pcb/
https://www.credenceresearch.com/report/flexible-printed-circuit-boards-market