電流プローブ

電流プローブとは

電流プローブとは、オシロスコープで直接電流を測定するためのプローブです。

被測定電流が流れるケーブルをヘッド部で挟み込むことにより、電流波形を観測します。ケーブルを切断せず、ケーブルに流れる電流を測定することを目的とした計測器にクランプメータがあります。

測定する度にケーブルの切断が不要なため、普段通り照明や設備を稼働したまま電流を測定できることが大きなメリットです。クランプメータと同様、電流プローブもケーブルを切断せずに電流波形を観測することができます。

電流プローブの使用用途

電流プローブは、オシロスコープを用いて電流波形を観測する場合に使用されています。用途としては、産業機器や電子機器の電流測定です。具体的にはインバータ機器の電流測定、モーターの負荷電流、スイッチング電源の測定、LED照明の駆動回路の評価などさまざまです。

電流の大きさや用途により、大電流用、微小電流用、高速電流用など、色々な機種が販売されています。また、直流電流及び交流電流両用の電流プローブと交流電流のみ測定が可能な交流専用の電流プローブがあります。

電流プローブの原理

電流プローブは電源ケーブルに電流が流れる際に生じる磁束を利用しているため、電流計を挿入する場合とは異なり、被測定回路を切断せずに測定できます。電流プローブのヘッド部 (ケーブルを挟む部分) は、トランスのコアと同様に高透磁率磁性材料 (パーマロイなどの鉄系の素材) を用いて、ケーブルから発生する磁束を閉じ込める構造です。

ただし、交流専用の電流プローブと交直両用の電流プローブとでは、磁束の検出方法が異なります。

1. 交流専用の電流プローブ

トランスは、1次側に加えた交流を2次側で巻数比に応じた電圧や電流に変換することができるものです。電流プローブにおいて、コアで囲まれた空間に交流電流が流れるケーブルが置かれると、トランスの1次側巻線と同様に作用します。

また、コアには2次側巻線に相当するコイルが巻かれていて、コア内の磁束変化に応じてその両端に現れる電圧からケーブルに流れる電流値を知ることができます。交流専用の電流プローブでは、この方法が主に採用されています。

ただし、直流では磁束の変化が無いため、2次側巻線に電圧が現れません。したがって、トランスの原理を利用した上記方法は使えません。

2. 交直両用の電流プローブ

直流電流も計測できる交直両用タイプのものは、ホール素子をコアの内部に埋め込んだヘッド部を用います。ホール素子は直流、交流どちらでもホール効果により磁束密度に応じた電圧を出力するため、この電圧をオシロスコープの端子に入力すると、電流値 (波形) がディスプレイ上に描かれることになります。

電流プローブのその他情報

1. 電流プローブの調整

電流プローブを使用する際に、事前に調整しておくべき事項として以下の2点があります。

オフセットキャンセル
交直両用の電流プローブは、直流から120MHz程度の交流まで測定可能であるため使いやすいですが、電流の検出にホール素子を用い、その出力をDCアンプで増幅してオシロスコープの入力端子に繫げることから、DCオフセットが避けられません。したがって、正確な測定にはこれをキャンセルする必要があります。

なお、手順は以下の通りです。

  1. プローブの先端にあるコアの残留磁気を消去するため、デガウス処理を実行します。
  2. オフセット電圧調整機能を使って、オシロスコープの表示が0Aとなるように調整します。
  3. この調整が終わってから、電流プローブを被測定回路に取り付けます。しかし、長時間測定を続けていると、徐々にDCオフセットが変動して0Aのポジションが変わってしまうため、時々上記手順を繰り返す必要があります。

スキュー調整
電源回路での電力測定など、電流プローブと電圧プローブを使って電流波形と電圧波形を同時に観測する場合、オシロスコープ本体に到達する信号の遅延時間がプローブ毎に異なるので、信号波形の位相合わせ、いわゆるスキュー調整が必要です。パワー測定デスキュー・フィクスチャ等の名称で調整用機器が販売されているので、これらを利用してプローブ間の位相合わせを行います。

2. 交流電流プローブにおける測定対象

交流電流プローブは前述した通り、トランスの原理を利用して被測定回路に流れる電流を検出しますが、低い周波数の電流では波形が小さく観測されます。特に低速のパルス信号はサグにより波形が歪んでしまいます。

したがって、直流を含む低い周波数の信号を測定する場合は、交直両用の電流プローブを選択することが重要です。

3. 電流プローブの周波数特性

電流プローブで扱える電流の大きさはその周波数に依存し、周波数が高くなると測定可能な電流は低下します。これは高い周波数ほど、コアやトランスの発熱が激しくなるためです。

被測定電流の周波数を踏まえ、使用するプローブの機種を選択する必要があります。

4. 挿入インピーダンスの影響

電流プローブを被測定回路に取り付けるのは、被測定回路に小さなインピーダンスを挿入することになります。このインピーダンスが回路に及ぼす影響は小さいので、通常は無視しても差し支えありません。

しかしながら、微小電流を測定するために電流が流れるラインをコアに複数回巻き付けると、前述のインピーダンスは巻き付けた回数倍の大きさになるため、被測定回路に影響を及ぼす可能性が高くなります。

参考文献
http://www.ktek.jp/probe-v-a-frm2011-11/tek-current-probe-tech-note.pdf
https://tmi.yokogawa.com/jp/solutions/products/oscilloscopes/current-probes/
https://news.mynavi.jp/article/oscilloscope2-8/
http://www.ktek.jp/hantek-dso-dmm-awg-2018/%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%96%E5%85%A5%E9%96%80-2009-TEK%E7%89%88.pdf
https://www.keysight.com/ja/pd-1325146-pn-U1880A/power-measurement-deskew-fixture?cc=JP&lc=jpn

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