スリップリングとは
スリップリングとは、回転体の外部から電力や電気信号を伝えることができる回転コネクタのことです。
回転体に配置された金属製リングと固定側のブラシを介して電力や信号を伝達します。回転体の振動や応力、軸力を計測し、微小な信号を伝送して制御用に利用されています。回転体に電源を供給するリード線の役目として利用されることも多いです。
スリップリングの取り付けは主に2種類あり、軸端取り付けタイプと 中空タイプです。軸端取り付けタイプは回転体の末端に取り付けます。中空タイプは回転軸にリングブロックをはめ込みます。また、リングとブラシが一体型のタイプとリングとブラシが分離しているタイプもあります。
スリップリングの使用用途
スリップリングは低速回転用から20,000rpmの高速用まで展開されています。また、対応できる電力も3,000A以上の大電流のものもあり、実験、開発用から設備用まで広く利用されています。
風力発電機、工作機械、遠心分離機、撹拌機、ロボットアーム、クレーン車、監視カメラ、及びヘリコプター、ターンテーブル、ドラムヒーター、レーダーアンテナなどの回転体のヒーターやモーターの電源供給に使用されます。
また、半導体製造装置やCTスキャンのような医療機器、非破壊検査、音響装置など幅広い用途があります。回転体の温度、ひずみ、トルクの測定にも使われています。
スリップリングの原理
回転体のターンテーブルなどの回転軸にリング状の電極部分(リングユニット)がついています。リングユニットの外周や側面にブラシ状の電極部分が接触し、接触した箇所を接点として、電力と信号を伝送する構造です。
リングユニットが回転してもブラシとは常に接点を持つため、安定した電力の供給と信号の伝送が可能となります。リングユニットにはベアリングがあり、ブラシ側を支持しています。
スリップリングのリングとブラシの接点部分には銅や銀などの貴金属を使用することで液漏れなどの心配もなく、接触抵抗を安定化させることが可能です。リングには青銅、銀、金などが使われ、ブラシ部分にはカーボンや銅、銀合金などが使用されます。
電力や信号の配線が多い場合にはスリップリングも必然的に大型になります。また、ある程度摩耗するため、定期的なメンテンナンスが必要です。
スリップリングのその他情報
1. スリップリングのブラシの役割
スリップリングは、ブラシが接点の役割をしていることによって回転体上の電気機器から固定側に送受信しています。ブラシが常に回転体と接触しているため、回転体が360°どの位置にあっても配線のねじれやシャフトへの絡まりなく送受信が可能となります。
回転体側と固定側との送受信が必要な信号数に応じて、ブラシ(接点)の個数は変化します。そのため、通信機器が多くなればなるほどブラシの個数が多く必要となり、結果としてスリップリング全体の巨大化につながります。
この場合、シリアル通信や自動車に使われているCAN通信を使用すれば、ブラシ数を減らすことが可能です。
2. スリップリングのデメリット
スリップリングのデメリットは、ブラシの摩耗による接点不良が発生する可能性があることです。ブラシは物理的に回転体と接触しているため、経年劣化により接触不良が発生することがあります。
特に屋外で使用する機器では、密閉ケースで保護されていない場合は、砂埃や水の侵入によって早期にブラシが損傷する場合もあります。そのため数年に1度はブラシの掃除や潤滑剤の塗布を行うことで寿命を延ばすのが一般的です。
このとき使用する潤滑剤は、導電性のあるものを選択します。導電性がない場合、ブラシ部分で通電不良が発生し、回転体側と固定側との間が通信不良となる恐れがるため注意が必要です。
ブラシ部の寿命は、一般的には1,000万回転~1億回転程度であり、メーカーによっては5億回転ぐらいまでです。長寿命の機器に使用する場合は、定期的にブラシ部のメンテナンスが必要になります。
参考文献
https://www.totukizai.co.jp/product/slipring/about.html
http://www.hikari-slipring.co.jp/publics/index/43/
http://www.kyoeidenki.jp/slipring/
https://slipring-japan.com/Slipring.html