MOSFETのメーカー5社を一覧でご紹介します。まずは使用用途や原理についてご説明します。
目次
MOSFETは電子機器に欠かせない素子の一つでありトランジスタの一種です。MOSとはMetal Oxide Semiconductorの略であり日本語では金属酸化膜のこと、FETとはField-Effect Transistorの略で日本語では電界効果トランジスタと呼ばれます。MOSFETは基本的にオンオフのスイッチングや信号の増幅の動作を行います。長所としては、動作速度が非常に速く緻密な制御に向いています。
以前のトランジスタはハイポーラトランジスタが主流でした。しかし機器の小型軽量化や効率化のニーズが高まり、近年の主流はMOSFETになりつつあります。
マイコンや各種LSI(Large scale integration:ICに比べて集積度の高い複雑な回路を収めた集積回路のこと)の中身はほぼMOSFETです。
MOSFETが使われる分野としてはパワーエレクトロニクス、センサなどの業界があり、他にも電源系やインバーターなどの用途に使われています。MOSFETは小型軽量化が可能で、集積化に対応できるため、近年の製品においては無くてはならない存在です。
MOSFETは端子(電極)を3本有しており、それぞれドレイン・ゲート・ソースと呼ばれます。電圧を印加することで電流が流れる性質を持っており、ゲート電極に電圧を印加することでスイッチのオンオフ動作を行います。
MOSFETにはNチャンネル(N-Ch)型とPチャンネル(P-Ch)型の2タイプがあります。Nチャンネル(N-Ch)型はソースの電位よりも正になる電圧をゲートに印加することで電流が流れます。一方、Pチャンネル(P-Ch)型は、ソースの電位よりも負になる電圧をゲートに印加することで電流が流れます。Nチャンネル(N-Ch)型の方が性能ならびに回路面において使い勝手が優れているため頻繁に使われます。
MOSFETは、動作速度が速く、高速スイッチングが可能となります。また駆動電力が小さいため高周波動作にも適しています。大電流化に弱いという性質を持っているものの、近年では主力デバイスとなっています。
MOSFETにはp型とn型が存在していますが、動作特性の違いから、更にエンハンスメント型とデプレッション型に分類されます。それぞれについて簡単に紹介します。
2つの方のMOSFETを紹介しましたが、スイッチング用途として良く使われるのはエンハンスメント型です。
最初に開発されたMOSFETはデプレッション型でしたが、現在では非常に限定的な用途で使われています。例えば、負電源を回路に持たなければならない場合を想定します。-5Vを生成した際に、ここにデプレッション型のゲートを10kΩ程度の抵抗で接続をしておきます。通常、負電圧-5Vが正しく出力されていれば、デプレッション型のソース・ドレイン間には電流が流れませんが、何らかの異常により負電源が正しく出力されていない場合はソース・ドレイン間に電流が流れるため、アラートを出力することが可能となります。
MOSFETの選定で最も重要なのはソース・ドレイン間耐圧VDSSの絶対最大定格です。これはMOSFETの耐圧を大きくすると、オン抵抗が高くなる傾向があるからです。システム用途を考慮して、マージン込で最適な耐圧を選定しないと、無駄にオン抵抗が高く、システムの消費電力増加につながってしまいます。
ソース・ドレイン間に加わる電圧がほぼ一定の場合は特に問題なく選定できますが、問題はサージが生じた場合をいかに考慮するかです。サージ込で考えるとどうしても定常定格の数倍のマージンを見込む必要があります。
同じ耐圧のMOSFETでも、アバランシェ電流やアバランシェエネルギーに対する耐量には違いがあります。サージ込で考える場合は、高アバランシェ耐量のものを選定できれば、より低耐圧で低オン抵抗のMOSFETを選定できます。
参考文献
https://contents.zaikostore.com/semiconductor/4779/
https://www.shindengen.co.jp/products/semi/column/basic/mosfet/mosfet.html
https://amasawahakusyo.com/electronics/mosfet-how-work/
https://toshiba.semicon-storage.com/jp/semiconductor/knowledge/faq/mosfet_common/what-is-a-mosfet.html
http://sudoteck.way-nifty.com/blog/2011/05/post-2a19.html
https://www.infineon.com/dgdl/Infineon-JPPowerDevice1311-02-ART-v01_00-JA.pdf?fileId=5546d462576f34750157b11d2413134c
社員数の規模
設立年の新しい会社
歴史のある会社
FCA150AC120は(株)三社電機製作所のパッケージ技術と(株)パナソニックのSiC-MOSFETを組み合わせた信頼性の高いスイッチングです。
サイズは99 mm×32 mm×21 mmと小型で、かつ低消費電力での動作が可能です。
最大電圧はドレイン・ソース間で1200 V、ゲート・ソース間で-7 V~+22 Vです。
また最大電流はドレイン電流、ソース電流のいずれも150 Aとなっています。
動作温度は-40 ℃から+150 ℃、保管温度は-40 ℃~+125 ℃が推奨されています。RDSにはほとんど温度依存性がなく使用できます。
シングルNチャンネルELM52444WSA-Nは、大電流出力のMOSFETでありながら、低入力容量、低電圧駆動、低ON抵抗などの優れた特性を備えています。
最大電圧はドレイン・ソース間で30 V、ゲート・ソース間で-20 V~+20 Vです。また最大の連続ドレイン電流は25 ℃において11 A、70 ℃において8.8 Aまで出力可能です。
ON抵抗については、ゲートソース電圧が10 VのときはRDSは15 mΩ、4.5 Vでは20 mΩと極めて低い値です。
また動作接合部温度は150 ℃、保管温度は-55 ℃~+150 ℃が推奨されています。
SupIR SMD-2は、宇宙環境での耐放射線性能に優れたMOSFET内蔵パッケージです。
従来はデッドバグ方式と呼ばれるはんだ付けを利用した実装手法では、熱放散効率が最適でなく、MOSFETの電力容量が減少する課題がありました。
しかし、本パッケージをPCBに直接実装することで、直接的な熱伝導経路を確保しただけでなく、フットプリントの削減や質量の軽量化、電流密度増加などの性能が向上しています。
人工衛星や宇宙電力システム、ペイロード電源として使用することができます。
SCT3160KW7は、第3世代トレンチゲートを使用したSiC MOSFETです。
従来のプレーナゲートと比べて抵抗が約50 %低いため、高効率が必要な各種装置(サーバ電源や太陽光発電コンバータ、電気自動車充電ステーションなど)に適しています。
さらに新たな7ピンパッケージ採用することでソース端子のインダクタンス部品によるゲート電圧低下が抑えられ、スイッチング性能が極めて優れています。
最大電圧はドレイン・ソース間で1200 V、ゲート・ソース間で-4 V~+22 Vです。
また、-55 ℃~+175 ℃での保管が推奨されています。
XP221P05013Rは汎用PチャンネルMOSFETで、低ON抵抗や高速スイッチング性能を兼ね備えています。また、サイズは2.1 mm×1.25 mm×0.95 mmと非常に小型です。
ON抵抗はゲートソース電圧が-4.5 VにおいてRDS = 1.3 Ωと小さな値で、駆動電圧は-1.8 Vです。
最大電圧はドレイン・ソース間で-20 V、ゲート・ソース間で-8 V~+8 Vです。最大の連続ドレイン電流は25 ℃において-0.5 Aとなっています。
また動作接合部温度は150 ℃、保管温度は-55 ℃~+150 ℃が推奨されています。
ゲート保護ダイオードによる静電対策もされており、リレー回路やスイッチング回路など、幅広く使用可能です。