電気二重層コンデンサとは
電気二重層コンデンサは電極と電解液の界面に形成される電気二重層を利用して電荷を蓄えるコンデンサで、中でも特にエネルギー密度が高いのが特徴です。エネルギー密度が高いので、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池とよく比較されますが、電池は充放電時に化学反応を伴うのに対して、電気二重層コンデンサは物理的な電荷の吸着のみで化学反応を伴いません。
このため、電気二重層コンデンサはエネルギー密度(単位重量または体積当たりに貯められるエネルギー量)では二次電池と比べて劣りますが、その反面、出力密度(瞬間的に取り出せる電力の大きさ)や、繰り返し充放電による性能の劣化(寿命)が極めて小さいといったことがメリットとしてあげられます。
電気二重層コンデンサの使用用途
電気二重層コンデンサは蓄電デバイスとして利用されており、多くのエネルギーを必要とする用途では二次電池が適していますが、急速充放電が必要とされ、耐久性が要求される箇所では電気二重層コンデンサが選択されています。
具体的にはモバイル機器等の電子回路のバックアップ用電源、プリンター、コピー機、電動歯ブラシ、太陽電池時計等に使用されています。小惑星探査機のはやぶさのロボット動力システム、自動車の減速時のエネルギー回生にも利用されています。
電気二重層コンデンサの原理
電解二重層コンデンサは、活物質の界面に発生する電気二重層を利用してコンデンサにしています。静電容量Cは「C=εS/d」という式で定義され、この式から静電容量Cを大きくするためには、下記の対策が必要です。
- 活物質の表面積(S)を大きくする
- 電気二重層の厚さ(d)を小さくする
- 電解液の誘電率(ε)を大きくする必要があります。
電解液は4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩などの電解質を有機溶媒に溶解させたもの、正極と負極の活物質は活性炭が使用されており、静電容量Cを大きくするためには下記の対策が必要です。
- 表面積の大きい(粒径が小さい)活性炭を使う
- イオン半径の小さい電解質を使う
- 高誘電率の有機溶媒を使う
コンデンサの充放電は、電解液中の正負のイオンがそれぞれの電極に吸着されると、対になるように電解液と電極の界面に電荷が増える作用を利用しています。蓄えた電荷が放電されるとイオンが電気二重層から脱着します。電気二重層コンデンサの形状は円筒型または積層型があります。円筒型は正極、負極、セパレータを重ねて丸めて円筒に入れた後、電解液を注液するだけで、生産しやすいといった利点があります。
電気二重層コンデンサのその他情報
1. 電気二重層コンデンサの寿命
電気二重層コンデンサは電池と違って充放電時に化学反応を伴いません。このため二次電池では1000サイクル程度で初期から容量が大きく減少するのに対して、電気二重層コンデンサは原理的には100万回充放電してもほとんど性能低下しないとも言われています。しかし、実際は以下のような要因により電気二重層コンデンサの容量は低下していきます。
- 充放電時、内部抵抗により発熱するため、温度上昇による劣化が起こり、容量が低下していきます。
- 使用環境温度が、10℃上がるにつれて劣化速度が2倍になります。(使用環境70℃以下において)
- 使用上限電圧以上の電圧がコンデンサに加わると電解液が分解します。
電気二重層コンデンサを使用する際には寿命への影響を考え、温度上昇・直列や並列に使用する場合は電圧や電流の偏りなどに注意する必要があります。
2. 電気二重層コンデンサの欠点
電気二重層コンデンサの欠点としては、以下のような点が挙げられます。
ドライアップ
電気二重層コンデンサの封止部から電解液が外へと蒸発してしまうことが原因で起きます。このデメリットは沸点の高い電解液を使用することや封止部を小さくすることで抑えることが可能です。
液漏れ
封止しているブチルゴムが劣化し液漏れすることがあります。ゴムを劣化させる原因となる水分が内部に侵入しにくいように封止部を小さくすることで抑制できます。
交流回路で使用できない
直流回路における電源バックアップ等の二次電気的な使用を想定しているため、交流回路で使用ができません。
参考文献
https://www.tokin.com/products/cap/sucap/edlc-guide/
https://www.tokin.com/products/cap/sucap/edlc-guide/#life_time
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/electric-double-layer-capacitors-guide