電気二重層コンデンサ

電気二重層コンデンサとは

電気二重層コンデンサは電極と電解液の界面に形成される電気二重層を利用して電荷を蓄えるコンデンサで、中でも特にエネルギー密度が高いのが特徴です。エネルギー密度が高いので、ニッケル水素電池リチウムイオン電池といった二次電池とよく比較されますが、電池は充放電時に化学反応を伴うのに対して、電気二重層コンデンサは物理的な電荷の吸着のみで化学反応を伴いません。

このため、電気二重層コンデンサはエネルギー密度(単位重量または体積当たりに貯められるエネルギー量)では二次電池と比べて劣りますが、その反面、出力密度(瞬間的に取り出せる電力の大きさ)や、繰り返し充放電による性能の劣化(寿命)が極めて小さいといったことがメリットとしてあげられます。

電気二重層コンデンサの使用用途

電気二重層コンデンサは蓄電デバイスとして利用されており、多くのエネルギーを必要とする用途では二次電池が適していますが、急速充放電が必要とされ、耐久性が要求される箇所では電気二重層コンデンサが選択されています。

具体的にはモバイル機器等の電子回路のバックアップ用電源、プリンター、コピー機、電動歯ブラシ、太陽電池時計等に使用されています。小惑星探査機のはやぶさのロボット動力システム、自動車の減速時のエネルギー回生にも利用されています。

電気二重層コンデンサの原理

電解二重層コンデンサは、活物質の界面に発生する電気二重層を利用してコンデンサにしています。静電容量Cは「C=εS/d」という式で定義され、この式から静電容量Cを大きくするためには、下記の対策が必要です。

  1. 活物質の表面積(S)を大きくする
  2. 電気二重層の厚さ(d)を小さくする
  3. 電解液の誘電率(ε)を大きくする必要があります。

電解液は4級アンモニウム塩、イミダゾリウム塩などの電解質を有機溶媒に溶解させたもの、正極と負極の活物質は活性炭が使用されており、静電容量Cを大きくするためには下記の対策が必要です。

  1. 表面積の大きい(粒径が小さい)活性炭を使う
  2. イオン半径の小さい電解質を使う
  3. 高誘電率の有機溶媒を使う

コンデンサの充放電は、電解液中の正負のイオンがそれぞれの電極に吸着されると、対になるように電解液と電極の界面に電荷が増える作用を利用しています。蓄えた電荷が放電されるとイオンが電気二重層から脱着します。電気二重層コンデンサの形状は円筒型または積層型があります。円筒型は正極、負極、セパレータを重ねて丸めて円筒に入れた後、電解液を注液するだけで、生産しやすいといった利点があります。

電気二重層コンデンサのその他情報

1. 電気二重層コンデンサの寿命

電気二重層コンデンサは電池と違って充放電時に化学反応を伴いません。このため二次電池では1000サイクル程度で初期から容量が大きく減少するのに対して、電気二重層コンデンサは原理的には100万回充放電してもほとんど性能低下しないとも言われています。しかし、実際は以下のような要因により電気二重層コンデンサの容量は低下していきます。

  • 充放電時、内部抵抗により発熱するため、温度上昇による劣化が起こり、容量が低下していきます。
  • 使用環境温度が、10℃上がるにつれて劣化速度が2倍になります。(使用環境70℃以下において)
  • 使用上限電圧以上の電圧がコンデンサに加わると電解液が分解します。

電気二重層コンデンサを使用する際には寿命への影響を考え、温度上昇・直列や並列に使用する場合は電圧や電流の偏りなどに注意する必要があります。

2. 電気二重層コンデンサの欠点

電気二重層コンデンサの欠点としては、以下のような点が挙げられます。

ドライアップ
電気二重層コンデンサの封止部から電解液が外へと蒸発してしまうことが原因で起きます。このデメリットは沸点の高い電解液を使用することや封止部を小さくすることで抑えることが可能です。

液漏れ
封止しているブチルゴムが劣化し液漏れすることがあります。ゴムを劣化させる原因となる水分が内部に侵入しにくいように封止部を小さくすることで抑制できます。

交流回路で使用できない
直流回路における電源バックアップ等の二次電気的な使用を想定しているため、交流回路で使用ができません。

 

参考文献
https://www.tokin.com/products/cap/sucap/edlc-guide/
https://www.tokin.com/products/cap/sucap/edlc-guide/#life_time
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/electric-double-layer-capacitors-guide

Tofセンサ-

ToFセンサ-とは

ToFセンサ- (英: time of flight sensor)とは、パルス投光した光が対象物表面で反射して返ってくるまでの時間から距離を測定するセンサーです。

多くのセンサーは、レーザー等から発された赤外線などを使用します。ToFセンサ-は時間を測定して距離に換算するので、近距離、長距離に関わらず、検出精度を一定に保つことができます。

ToFセンサ-は、対象物との距離の測定をはじめ、レベルセンサーとしての使い方、物体の位置確認・位置決め、空間内の人数確認等に使用されます。

ToFセンサ-の使用用途

1. VRやARの認識

TOFセンサーの使用用途-AR

ToFセンサーは対象との距離の測定が正確なので、近年話題のVR (Virtual Reality) やAR (Augmented Reality) の認識に利用され、画像をこれまでより立体感を持って表示することが可能です。

2. モニタリング

ToFセンサはレベルセンサとして機械のリフト量の監視、タンク内の残量のモニタリング、倉庫の在庫確認、ロール材料の残量確認、及び自動倉庫の在荷確認等に利用します。

3. ワークの着座確認

生産ラインで、ワークが治具に着座したことを、ToFセンサで確認します。

4. 空間内の人の人数把握

3次元ToFセンサーにより、特定の空間内の人数をカウントできます。物体までの距離をデータ化し、AIを使って人物を判別して人数を把握します。

5. 物体の寸法や体積の測定

3次元ToFセンサーを使って、物体の各部寸法を測定し、体積の測定が可能です。

6. スマートフォンの顔認証機能

暗い場所でも立体的に物体の像をとらえ、オートフォーカスの機能を高めることができるので、今後のスマートフォンの顔認証機能への応用が増加すると予想されます。

ToFセンサ-の原理

ToFセンサーの原理は比較的シンプルです。まず、センサ内のレーザーダイオードから変調された近赤外線などを投射します。対象物に当たって反射した近赤外線などはセンサ内の受光素子に戻ってきます。発した近赤外線と反射した近赤外線の位相差を時間差に変換し、発した光の速度を掛け合わせることで距離を割り出す仕組みです。

位相差の測定の他、時間差を直接測定する方法もあります。ToFセンサーでは距離に関わらず検出精度を一定にすることが可能で、暗い環境でも奥行きの精度が良く作動させられる点が、他のセンサより優れています。

レーザーの光には赤外線や近赤外線を用いることが多くありますが、センサによって異なり、人の目に害のある波長もあるので、用途によっては注意が必要です。

赤外線や近赤外線のレーザーの場合は、測定ポイントを目で見て確認することはできません。対象物にレーザーが照射されているかを確認するために、別にスコープやガイドレーザー等が必要になります。

ToFセンサーの種類

ToFセンサーには、1DToFと3DToFがあります。

1. 1DToFセンサー

1DToFセンサーは、センサから特定の点までの距離を測定します。人感センサや液体・粉体の量を測るレベルセンサなどに使用されます。

2. 3DToFセンサー

3DToFセンサーは、カメラのように画像で距離情報の取得が可能です。空間全体にある物体との距離を測定します。

ToFセンサーのその他情報

ToFセンサーのメリット

1. 遠距離設置が可能
ToFセンサーは、遠距離でも精度よく検知できるので、対象物から離れた場所に設置することが可能です。人やロボットの動線を避けた位置に設置できます。自動車などの大きなものはToFセンサーを複数設けて、多方向から位置決めが可能です。

2. 設置の自由度が高い
センサー自体が小型であり、省スペースで設置が可能です。また、照射方向も上下・水平・斜めなど自由に選択できます。

3. 対象物の表面状態に無関係
ToFセンサーは、高速でサンプリングして平均化処理するので、対象物の色、材質などを問わず、受光量が不足しても安定して検出できます。

参考文献
https://www.appps.jp/333174/
https://www.optex-fa.jp/tech_guide/tof_special/
https://news.mynavi.jp/article/20200320-smartphone_word/

コアレスモーター

コアレスモーターとは

コアレスモーター

コアレスモーターとは、鉄心のない小型のモーターです。

無鉄心電動機とも呼ばれます。コアレスモーターのメリットは、鉄心がないため鉄損による損失がないことです。コギングによる振動がなく、静かに稼働します。

ただし、発生する磁力が通常のモーターより弱いので、トルクは小さくなります。

コアレスモーターの使用用途

コアレスモーターは、小型で振動や騒音、電磁障害が少ない特徴を活かし、携帯電話のバイブレーションを起こす振動モーターやラジコンやロボットのサーボモーター等に利用されています。

応答性や制御性も優れているため、測量機器やカメラレンズのモーター、超音波内視鏡、サージカルドリル等でも使用されており、特に医療用途で欠かせないモーターです。各メーカーで、独自のコイルの巻き方や材質等の開発が進んでいます。

コアレスモーターの原理

通常のモーターは鉄心にコイルを巻き、その外側に磁石が配置された構造です。コイルに電流を流し、電磁誘導により発生する磁界を利用して磁石に回転を起こしています。

コアレスモーターでは、逆に内側に永久磁石を配置して、磁石の外側に樹脂などを利用してカップ状にコイルを巻くことで鉄心をなくしています。コイルに電流を流すと、フレミングの左手の法則を受け、コイルが回転する仕組みです。コイルが回転するため、ロータと呼びます。

1. 電流への応答

コアレスモーターは巻き数のインダクタンスが少なく、高効率なモーターです。入力電圧に対する電流立ち上がりの特性を示すパラメータとしてモーターの電気的時定数があります。

電流がピーク値の63.2%に達するまでの時間を示します。コアレスモータでは電気的時定数が比較的低いため、電流は非常に高速に反応します。

2. 加減速応答

コアレスモータは重量が軽くなっている分、イナーシャも小さいモータです。イナーシャとは、慣性モーメントのことを指し、質量に比例して大きくなります。

イナーシャは、所定の回転速度まで加速または減速するのに必要なトルクである加減速トルクと比例関係にあります。つまり、コアレスモータでは加減速トルクも小さくなるため、急な加速・減速に適したモータです。

内部の磁石をネオジム磁石など、強力な希土類磁石を使用することで、より一層の小型化とトルクの拡大が進んでいます。小型、薄型、軽量化に役立っています。

コアレスモーターのその他情報

1. コアレスモーターの効率性

コアレスモーターの場合、鉄損が発生しません。鉄損は、主にヒステリシス損と渦電流損から成ります。鉄心の磁界報告が変化することで生じるエネルギー損失をヒステリシス損と呼びます。

また、磁界方向の変化によって鉄心内部で電流が発生します。発生した電気エネルギーは熱となり外へ逃げていきますが、この損失が渦電流損です。

コアレスモーターの場合、上記の鉄損が生じないため、高速回転時であっても高効率に動作可能です。コイルの巻き方に各社の技術が現れており、無駄を少なくし、効率を上げるよう工夫がなされています。

2. コアレスモーターとブラシレスモーターの違い

コアレスモーターとは、鉄心 (コア) を使用せずコイルと磁石から構成されたモーターのことです。一般的な鉄心の周りにコイルが巻かれたモーターのことをコアードモーターと呼びます。

ブラシレスモーターとは、ブラシを使用せず電子回路によって電流の向きを制御し、回転させているモーターのことです。一方、ブラシと整流子により回転させているモーターのことをブラシ付きモーターと呼びます。DCモーター (直流モーター) では、回転させ続けるために電流の向きを定期的に反転させる必要があるため、これを電子回路で制御するか整流子とブラシで制御するかで分類されます。

コアレスモーターは、ブラシ付きとブラシレスの2種類です。コアレスかつブラシレスであるモーターのことをコアレスブラシレスモーターと言います。ブラシ付きモーターの場合はローターがコイル、ステータが永久磁石です。ブラシレスモーターの場合は、ローターが永久磁石、ステータがコイルとなります。

3. コアレスモーターのメリットとデメリット

メリット

  • 小型で軽量
  • 高速回転が可能
  • 高効率で消費電流が少ない
  • コギングレス

モーターの重量は、鉄心が大部分を占めています。コアレスモーターでは鉄心がない分、小型・軽量化を実現しています。また、慣性モーメント (イナーシャ) が小さいため、応答性や制御性に優れ、モーター効率が良く高速回転が可能です。

コアードモーターの場合は、鉄心と磁石が近づいたり離れたりという動作を繰り返し、その度にコギングという磁力の引っ掛かりを生じます。しかし、コアレスモーターではコギングが発生しないため、滑らかで静かな回転である点もメリットです。

デメリット

  • トルクが小さい
  • 熱に弱い
  • 高価格

コアレスモーターは、一般的にトルクが小さい点がデメリットです。トルクの大きさは電流値に比例します。高トルクにするためには大電流を流す必要がありますが、線が細い上に鉄心がないため機械的にコイルが弱く、大きな電流をかけることができません。

許容電流値の小さなコアレスモーターに大きな電流を流すと、熱でコイルが変形しモーターの故障につながる可能性があります。

参考文献
https://www.jp.tdk.com/tech-mag/ninja/041
https://jp.aspina-group.com/ja/learning-zone/columns/what-is/002/
https://toshiba.semicon-storage.com/
https://www.hamacho.net/jp/
https://www.cls-motor.com/products/dc

ピンヘッダ

ピンヘッダとは

ピンヘッダ

ピンヘッダは、プリント基板上に取り付けて使用する端子です。

ピンやソケット、ジャンプソケットを含む総称としても使われています。総称であっても、実際には差し込むオス端子を持つものをピンヘッダ、端子を差し込むメス側の端子を持つものをピンソケットと呼び分けられています。いずれにしても、プリント基板にケーブルを使わず電気的な接続を行えるのが特徴です。

例えば、ブレッドボードブレッドボードにピンヘッダを取り付けてPICkitを接続し、PICマイコンにプログラムを書き込んだりします。

ピンヘッダの使用用途

ピンヘッダの使用用途は、基盤同士をケーブルを使うことなく、ピンを差し込むことで接続する用途です。

例えば、ブレッドボードやユニバーサル基板などの基板に取り付けて、信号の入力や外部との接続をしやすくしています。また、基板間にピンヘッダをはさみ、複数の基板間にスペースを確保するのもよくある用途です。

一般的には、2.54mmのピッチのものがよく利用されています。この他にも様々なサイズや長さのものがあります。ピンの片側がエル字に曲がったものなど形状のバリエーションが多いのも特徴です。

車載制御、産業機器、コンピュータ、通信機器、医療機器、ストレージ、家電製品など様々な電子機器の内部接続に使われています。

ピンヘッダの原理

伝導体であるピンと絶縁体であるハウジングからできていて、回路をつなぐ役割をしています。両側ともオス型やオス‐メス型などがあるコネクタです。オス‐オス型は両端にピンが出ていて、基板に取り付けることができます。ブレッドボードは差し込むだけで使用できますが、ユニバーサル基板でははんだ付けをします。ピンヘッダの基本的な構造は、プリント基板に差し込むオス側の端子を複数有し、これをハウジングと呼ばれる絶縁体の筐体で保持している構造です。

端子は金やスズでメッキされています。筐体であるハウジングは細長い形状のものが一般的です。細長いハウジングに40本ものピンが一列になっていて、1本ずつ取り外せるようになっているものが多く販売されています。これらピンは、カッターやニッパーで取り外せます。

なお、ピンヘッダには種類があり、ハウジングの長さ方向に対向する2面の両方にピンが配されたものがオス・オス型、2面の片側のみピンが配され反対皮の面には端子を差し込むメス側の端子があるものがオス・メス型です。片側のメス側の端子しかないものや両面にメス側の端子のものはピンソケットと呼ばれています。

オス‐オス型は両端にピンが出ていて、複数の基板を電気的に接続可能です。ブレッドボードは差し込むだけで使用できますが、ユニバーサル基板でははんだ付けをします。ピンヘッダの径がブレッドボードの穴経と合わないと基板の穴に納まりが悪くなるため、ピンヘッダの径の検討は重要です。

ピンヘッダのその他の情報

1. ピンヘッダのピンの種類

ピンヘッダで電気的な接続をおこなう端子であるピンには色々な種類があります。
まず、ピンの形状には、角ピンと丸ピンがあります。角ピンは、基板の穴に挿入する端子部分となるコンタクトの根元部分が板バネ状になっているピンです。この角ピンの根元部分をピンを保持する筐体であるハウジング内部の板で挟み込んでいます。角ピンを基板の穴に差し込むと、板バネの力で穴の内部にピン先端部の面が押し当てられ、電気的な接続がなされます。
丸ピンは、円柱状のピンです。丸ピンはハウジングに嵌合されています。そのため、ピンの挿抜は最低500回程度可能です。保持性もよく、衝撃や振動に対しても高い耐久性を持ちます。

なお、ピンの材質は黄銅で、スズメッキか金メッキが施されています。金メッキのほうが防錆効果が高く耐久性があります。使用温度範囲は―40℃~105℃程度です。

2. ピンヘッダの仕様

ピンヘッダの仕様には、ピンのピッチがあります。複数のピン間の寸法で表され、ピンとピンの中心間の距離で表されます。2.54mm、2.0mm、1.27mmが一般的です。
また、ピンヘッダの仕様にはピンの列数もあります。ハウジングの長さ方向に並ぶピンの列の数を示します。1列と2列が一般的です。定格電流、定格電圧がありますので超えないように注意してください。

ピンヘッダの仕様には、ピンの向きもあります。基板とピンの取り付け方向が垂直取り付けのものをストレートといい、平行に接続するものをライトアングルといいます。

3. ピンヘッダの取り付け

ピンヘッダを基板に固定する場合、差込 (DIP) もしくは、表面実装 (SMT) 半田付けでおこないます。基板と基板を連結するピンヘッダでは、両端ともはんだ付けをします。また、補強板を使用することでフレキシブル基板にも使用可能です。ピンヘッダを利用してフレキシブル基板とリジッド基板を実装接続することも可能です。また、メス側の端子を利用して着脱を可能にすることもあります。

参考文献
https://hirosugi.co.jp/technical/pn-code/pinheader_1.html

スペクトラムアナライザー

スペクトラムアナライザとは

スペクトラムアナライザ

スペクトラムアナライザは電気計測器の一つです。通称「スペアナ」と呼ばれています。スペクトラムアナライザの画面では、周波数を成分として分布することで横軸に周波数、縦軸に振幅を表示します。

高周波用と低周波用が存在しており、それぞれで用途が異なっています。主に高周波用は、電波の高周波信号の「周波数成分の分布の表示」「AC電源の成分の分析」を行なっており、低周波用では「ノイズの分析」などに使用されています。

静電気や過大電力信号等で不正確な結果になる場合もありますので、使用方法や条件をよく確認してから使用することをお勧めします。

スペクトラムアナライザの使用用途

高周波のスペクトラムアナライザは「無線機」「送信機」「受信機の検査」「測定」「設計」「修理」「送信波」「スプリアスの測定」などに使用されています。各種の設定項目が重要なので、用途に応じて適切な値を入力する必要があります。

低周波用では、小型で持ち運べる製品もあり、フィールド試験で「電界強度の測定」「周波数特定」「騒音測定」「機械の診断」「構造解析」「振動試験」と幅広く使用されています。 身近な例としては、ワイヤレスランの設置作業にも利用されます。

スペクトラムアナライザは、オシロスコープと比較して説明されることがあります。一般に、オシロスコープは、低い周波数帯の時間軸を観察することが多いため、信号を周波数で捉えて観察することが可能なスペクトラムアナライザと共に使用されます。しかし、オシロスコープとスペクトラムアナライザは、信号を違う角度から観測しており、得意な領域が異なるため、必要な情報を検討して使用する必要があります。

スペクトラムアナライザの原理

多くのスペクトラムアナライザは、スーパーヘテロダイン方式です。ヘテロダインとは、信号の処理技術のことを表しており、受信した電波にその他の周波数を混ぜたり、組み合わせることで発生する周波数の差を波に変換して生まれる信号周波数のことを指しています。

一般的にはスーパーヘテロダインは、受信した信号を元の搬送波よりも処理しやすい固定の中間周波数(IF)に変換する受信方式のことを指しています。しかし、スーパーヘテロダインは、受信機のことを呼称している場合もあり、受信方式を採用している受信機のことをまとめてスーパーヘテロダインと呼ぶこともあります。アナログ時代からある方式で、ラジオや受信機と同じ仕組みです。

スーパーヘテロダイン同調掃引方式では、入力信号をアッテネータとローパスフィルターで制限されながら通過します。さらに、ミキサと局部発振器(ローカルオシレータ)が入力信号を周波数変換します。そして、バンドパスフィルターによって設定された周波数分解能で帯域制限された周波数を掃引して測定していきます。狙った周波数範囲のみを測定可能なため、ノイズレベルを下げることができます。

近年では、FFT方式が開発されたことで人気が出てきています。入力信号が周波数変換されるところまではスーパーヘテロダイン同調掃引方式と同じです。バンドパスフィルターの出力をADコンバータでデジタル信号に変換してから高速フーリエ変換で周波数を表示する場合もあります。計測するまでの時間を短縮することが出来るため、スペクトラムが短時間で変化する場合の測定に向いています。

スペクトラムアナライザのアプリケーション

スペクトラムアナライザには大きく分けて2つの種類があります。まず、オーディオ信号を取り扱うものが挙げられます。次に、電波の強度を可視化するタイプが挙げられます。

スペクトラムアナライザは、入力された信号を周波数成分に分解することで、それぞれのシグナル強度をグラフ化するための計測器です。測定信号をアプリケーションのデジタル解析により演算処理を行います。

オーディオ信号を取り扱うものは、数十~22kHz程度の音声信号をパソコンのサウンドボードに入力します。そして「FFT演算」「グラフ表示」を行うことで、どの周波数信号が強く出ているかをアプリケーションで可視化して確認することが出来ます。これらの過程を経て部屋の音響確認や楽器のチューニングなどが行えます。

電波強度用の計測器に付属するアプリケーションは、Wi-Fi信号の検出や強度の確認のために可視化ツールとして使用されています。Wi-FIデバイスなどで受信した信号を演算処理することで「2.4GHz帯」「5GHz帯」の信号強度をグラフ化することができます。

スペクトラムアナライザの価格

オーディオ信号用のスペクトラムアナライザは、パソコンのサウンドボードで代用できるため、数千円で購入することができます。

実質的にWi-Fi信号の可視化だけが目的のスペクトラムアナライザであれば、スマホやパソコンのWi-Fi受信機で実現が可能なため、追加の購入費用の削減が見込めます。

10GHzまで計測できるような電子機器の電波解析用スペクトラムアナライザの場合は、200万円から1000万円が相場になります。

スペクトラムアナライザの通過帯域幅(RBW)

スペクトラムアナライザで観測したい信号成分だけを検出して不要なノイズを除去するために重要なのがRBW(Resolution Band Width:分解能帯域幅)の設定です。

必要な信号に対して、基準となる既知の周波数の信号をミキシングすると、中間周波数と呼ばれる信号が生成されます。この中間周波数の通過帯域を絞り込むことで不要な信号を除去することが出来るため、観測したい信号だけを取り出すようにします。

このときに絞り込む通過域によって信号の分解能が決まることから「RBW」と呼ばれています。

RBMを狭くした場合は、計測に時間を伴いますが、精度を上げることが出来ます。RBMを広くした場合には、計測する時間が短縮されます。しかし、ノイズが含有されるため、分解能は低下します。

参考文献
http://www.micronix-jp.com/note/application/fundamentals_of_speana_1.html
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/spectrum-analyzer-guide
https://www.jstage.jst.go.jp/article/lsj/39/8/39_627/_pdf
https://www.techeyesonline.com/tech-column/detail/Reference-SpectrumAnalyzer-01/?page=2
https://dl.cdn-anritsu.com/ja-jp/test-measurement/files/Application-Notes/Application-Note/MS269xA_MS2830A_JF4100.pdf

マイクロスイッチ

マイクロスイッチとは

マイクロスイッチ

マイクロスイッチは、物体の位置を検知して接点出力する部品です。主に検出用スイッチとして使用されますが、操作用として使用される場合もあります。

マイクロスイッチの接点出力を制御回路に組み込み、機械を運転停止させて使用します。マイクロスイッチの接点自体は数A程度の許容電流が一般的です。物体と接する部分にはアクチュエータが付いており、形状はボタン、ローラー、レバー型のものがあります。

マイクロスイッチの使用用途

マイクロスイッチはスナップアクション機構を持っているので位置を検出する精度が高いのが特徴です。

ドアのインターロックや、自動販売機、電子レンジ、エレベータの安全スイッチや産業機器に使用されています。プリンター等の開閉を検知するセンサーにも利用されます。

サイズは一般形~極超小型まで4種類に分類されており、振動や衝撃が激しい場所には逆動作型、直流回路の安定した動作が必要な場合は磁気消弧型、シール性の高い防浸型などが販売されています。産業機器から家電まで用途も幅広いです。

マイクロスイッチの原理

マイクロスイッチは5つの部分に分かれていて、アクチュエータの動きが接点までつながります。

1. アクチュエータ部

外部の力や動きを内部の機構に伝達します。アクチュエータがスナップ動作機構につながっており、形状はボタンやローラー、レバー型などがあります。

2. スナップ動作機構

ばね、可動片、共通端子、受金といった部品で構成されています。アクチュエータからかかる力が増えてくると、可動片とばねにより接点を動かします。

3. 接点

種類としては常開接点、常閉接点があります。一般的に1つのマイクロスイッチに1つずつ付いていますが、片方だけのものもあります。接点にはクロスバー型やリベット型があり、回路の電圧や電流に応じて使い分けます。材質には金や銀、めっきなどが用いられます。

4. 端子

スイッチと回路を接続します。端子の形状ははんだ付け型、コネクタ型、ねじ締め型、プリント基板型等があり、用途に応じて接続方法を選定します。

5. ケース部

ケースは回路と機構を保護する役割をしていて、必要な機械的強度や耐熱性に応じて樹脂を選択します。

マイクロスイッチの使用用途

1. ドアやプリンター開閉のカバー

ドアやカバーの位置をマイクロスイッチで検出します。形状に幅のあるアクチュエータを持つマイクロスイッチを使用されます。マイクロスイッチであれば、限られたスペースにも設置可能です。

2. 食器洗浄機のカバーや洗濯機のふたの開閉検出

カバーやふたの位置をマイクロスイッチで検出します。これらの機器ではマイクロスイッチに水が掛かる恐れがあり、防水対策が施されています。

3. マウスの操作入力

位置検出スイッチとしての役割ではなく、操作スイッチとしてマウスに使用されています。マウスのクリックをマイクロスイッチが検出し、コンピュータに出力します。

マイクロスイッチのその他情報

1. マイクロスイッチとリミットスイッチの違い

マイクロスイッチとリミットスイッチは混同されることの多い部品です。リミットスイッチはマイクロスイッチと同じく検出スイッチとして使われますが、構造と使用箇所に違いがあります。リミットスイッチは内蔵されたマイクロスイッチを樹脂や金属のケースに組み込んだ構造となっています。

雨水の影響を受ける場合などに対候性を高めるためにリミットスイッチが使用されます。産業設備によっては粉塵や油分の対策としてリミットスイッチを使用する場合もあります。

2. マイクロスイッチのスナップアクション機構

スナップアクション機構とは、スイッチを操作する速度とは無関係に可動接点を素早く切り替える機構です。対して、操作速度が可動接点の移動速度となる機構はスローアクション機構と呼ばれています。

スナップアクション機構を持つマイクロスイッチは、接点の切り替わる速度が速いため接点間のアークを最低限にできるという特徴があります。小型のマイクロスイッチでも接点寿命が長くでき、耐久性に優れています。

参考文献
https://jp.rs-online.com/web/c/switches/microswitches-accessories/microswitches/
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/29/325/index.html
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/289/
https://xtech.nikkei.com/dm/article/LECTURE/20120329/210447/
https://www.fa.omron.co.jp/products/category/switches/basic-switches/

DCソレノイド

DCソレノイドとは

DCソレノイドとは、コイルに印加した電磁力の電気的エネルギーを、可動鉄心による直線駆動の機械的エネルギーに変換する電気部品です。

そのアクチュエータとしての機能をコイルと可動鉄心を組み合わせた部品で実現しています。一般的なソレノイドは、可動鉄心を引き込むためプル型動作が基本です。

さまざまな可動鉄心の先端形状や駆動部の組み合わせることで、「引く・押す・止める・打つ・曲げる」などの動作を安価に実現できます。そのため、家電製品やATM、自動の販売機や改札機、自動ドアなど、工業機械用途に限らず、日常生活でのさまざまな用途で使用されています。

DCソレノイドの使用用途

DC ソレノイドは、制御性や応答性の良さに加え、可動鉄心や先端形状によって、引く、押す、止める、打つ、曲げるなどさまざまな動作を安価に実現可能なため、日常生活の周辺の機械や装置向けに実にさまざまな用途で利用されています。

主な使用用途は、自動販売機の硬貨選別機、電車のプラットホームの自動ドアや改札機、駐車場や自動ドアのロック機構、ATM内の制御機器、マンションやコンビニに設置されている宅配BOXなどです。

DCソレノイドの原理

DCソレノイドの原理は、ファラデーの電磁誘導の法則に基づいています。コイルを流れる電磁力の電気的エネルギーを、可動鉄心による直線駆動の機械的エネルギーに変換しますが、一般的なソレノイドは可動鉄心を引き込むためプル型動作が基本です。

また、DCソレノイドは、ACソレノイドと比較して、通電時の突入電流が発生せず、動作音も小さいことが特徴として挙げられます。通常は、本体フレーム、コイル、バネ、固定鉄心、可動鉄心の構成部品にて成り立っています。

コイルに電流が流れると同時に磁界が発生し、電磁誘導により固定鉄心に可動鉄心が吸い寄せられることで、プル型の動作を実現可能です。通電している間は固定鉄心に可動鉄心が吸い寄せられ、通電を遮断すると同時にバネの力で可動鉄心が戻ります。

一方、このプル型の基本動作に対して、固定鉄心にプッシュバーを備えることで、可動鉄心が吸い寄せられると同時にプッシュバーを押し出すプッシュ型もあります。これらの先端形状を変更することで、さまざまな動作を安価に実現できます。

DCソレノイドのその他情報

1. ACソレノイドとDCソレノイドの違い

ACソレノイドは、DCソレノイドよりも起動電流や吸引力が大きい特徴を有します。しかし、ACソレノイドでは可動中に過負荷が発生し、ロックされてしまうと大電流が流れ続けて、コイルが焼損してしまいます。よって、ACソレノイドを採用する際には、温度ヒューズや過電流保護等の安全を配慮した設計が重要です。

これに対して、DCソレノイドでは、電流そのものが微小で吸引力も小さいので、可動部が過負荷状態やロックにしてしまっても、コイルが焼損するようなことはありません。DCソレノイドの方が安全性に関しては優れていますが、一般に性能そのものはACソレノイドには劣るため、使用条件による使い分けが必要です。

2. 自己保持ソレノイド

自己保持ソレノイドとは、高性能な永久磁石を組み込んだソレノイドコイルに、一瞬だけ通電することです。通称プランジャと呼ばれる可動部が吸引し、その後は永久磁石によって、可動部が保持されるソレノイドを言います。

通電時間が短いため、超省エネを目指した電気機器に最適なリニア可動タイプのソレノイドであり、例えば蓄電池の動作寿命を延ばし、温度上昇を低下させたい場合に効果がある部品です。コイルに通電されると、可動部が1方向に吸引して保持する1方向の保持型と1方向の保持型をシリーズ接続させ、それぞれのコイル巻線部に電気を通すことによって、2方向に可動して保持しようとする2方向保持タイプの2種類があります。

自己保持型ソレノイドの磁極形状は、1方向保持型では円錐タイプと水平タイプの2種類です。2方向保持タイプのソレノイドでは、ストロークが決まっているため、円錐タイプだけが標準となっています。ストロークの大きさと保持力の大小で磁極形状は使い分けるため、事前に各ソレノイドの特性カーブの仕様をよく確認することが大切です。

参考文献
https://www.takaha.co.jp/technological/action.html
https://smt.shindengen.co.jp/product/download/pdf/smtcom15.pdf
https://smt.shindengen.co.jp/product/lineup/seihin/c/act/selfhold/

真空エジェクタ

真空エジェクタとは

真空エジェクタ (英:vacuum ejector) とは、圧縮エアーを使用することで、ベンチュリ効果により真空を発生させる機器です。

真空ポンプなど複雑な機械的構造を備えた真空発生機器とは異なり、機器内部にベンチュリ効果による真空発生構造を備えたシンプルな構造が特徴です。このベンチュリ効果を発生させるために、生産現場などで使用される圧縮空気が用いられることで、部品の持ち上げ動作などに必要な真空がエジェクタによって得られます。

真空エジェクタの使用用途

真空エジェクタは、自動化された生産ラインに多く使われます。また、集塵用途や粉体輸送にも使用されます。

1. ワークの吸着用途

真空ラインに吸着パッドを取り付け、ワークに押し当てると、ワークを吸着できます。ワークの重量やサイズ、材質に応じて吸着パットの形状や材質の選定が必要です。

真空エジェクタと吸着パットによって、部品のピックアップやワークの搬送などに利用されます。また、真空エジェクタと吸着パットを複数使用することで、自動車生産工場におけるフロントガラスなどの重量物のピックアップや搬送などにも利用が可能です。

2. 集塵用途

真空エジェクタを室内で使用すると、真空エジェクタの真空ポートへの空気の流れが発生し、室内の埃や塵を吸引することができます。半導体や電子部品の製造ライン、食品製造ラインなどの埃や塵の付着が嫌われる環境で、真空エジェクタにより室内の清浄化に使われます。

3. 粉体輸送用途

バキュームコンベアを密閉状態にし、真空エジェクタを使って減圧します。ノズル口から空気を入れると、配管内の気流とともに、粉粒体が搬送できます。

真空エジェクタの原理

真空エジェクタの構造は、機器内部に圧縮エアー入口、ノズル部、ディフューザー部、及び圧縮エアー出口を直線上に設けたものです。このノズル部とディフューザー部の間に真空発生ラインが垂直に設けられ、この構造よってベンチュリ効果が得られるようになっています。

ベンチュリ効果による真空発生の原理は、圧縮エアー入口より小径となったノズル部によって絞られた流体が高速化することで、ノズル部とディフューザー部の空間で圧力が低下し、真空が発生します。発生した真空により、吸引された流体と圧縮エアーの混合流体は、高速のままディフューザー部と出口に向かい排出されます。これにより、高い真空度が得られます。

真空エジェクタの選び方

1. ワークの通気性

ワークの表面とパッドが吸着したときに、どれだけ空気の漏れ量があるかによって真空エジェクタを選定します。部分的な吸着や、通気性が低く平らな表面にパットをつける場合は、シンプルなタイプの真空エジェクタが適しています。

表面が凹凸して通気性がよいワークを運ぶ場合は、吸い込み量の大きい真空エジェクタを選びます。

2. 平均吸い込み量

各メーカのホームページにも記載されていますが、平均吸い込み量Qが、2~3の真空エジェクタを選定します。平均吸い込み量Q=V×60÷T1で算出できます。

※空気の漏れ量がある場合は、算出したものにプラスします。
※V: 配管容量 l T1: 吸着後安定した圧力の63%に達するまでの時間 s

真空エジェクタのその他情報

1. 真空エジェクタの省エネタイプと通常タイプの違い

真空エジェクタには、通常タイプと省エネタイプがあります。通常の真空エジェクタは、空気を流している間に真空を作りますが、真空を作っている間は常に空気が必要というデメリットがあります。

省エネタイプの真空エジェクタは、1度真空を作ったら自動で電気を切り、空気の供給を止めることが可能です。空気が漏れなければ真空は保たれるので、大きなワークを運ぶ時などは、大きな省エネに繋がります。

ただし、ワークの表面に凸凹があるなど、空気の漏れ量が多い場合には、真空圧の変動が大きく、こまめなスイッチの切り替えがあるので、製品寿命が短くなる傾向にあります。

2. 真空エジェクタと真空ポンプの比較

真空エジェクタと真空ポンプは、ともに真空空間を作ります。真空エジェクタは、真空ポンプと比較すると、構造が簡単でイニシアルコストが安く、省スペース、電源不要などのメリットがあります。

反面、ランニングコストが大きく、真空流量が少ないなどは、デメリットです。また、真空エジェクタは、真空発生時は常に圧縮エアを消費するため、タクトタイムが長いのも短所です。

したがって、真空流量が少ない用途には、真空エジェクタが適し、大流量の真空空気が必要な場合は、真空ポンプが使われます。また、ワークの搬送のタクトタイムが1秒以下の工程では、真空ポンプが有利です。

参考文献
http://www.hokuto-mfg.com/product/item04.html
https://www.pisco.co.jp/dl/pdf/VGVP4-01_01.pdf
https://www.smcworld.com/assets/products/pickup/ja-jp/vacuum_device/select/4-P0033.pdf
http://www.smcworld.com/upfiles/pgpdf/sp107x-001j.pdf
http://www.schmalz.co.jp/products/vacuum-components/vacuum-generators.html

渦巻ポンプ

渦巻ポンプとは

渦巻ポンプ

渦巻ポンプは、ポンプのケーシング内部に羽根車状のインペラを備えた遠心式ポンプの一種です。ケーシングは渦巻きの形状をしており、ボリュートポンプともいわれます。

液体は中心部の吸込み口から羽根車に入り、回転による遠心作用によって高速で外側へ飛び出します。そして渦巻き室を通過するうちに徐々に減速して圧力に変換されます。

渦巻ポンプには、羽根車が1つの単段のものと2つ以上の多段式があります。多段式は1段毎に圧力を高めていく方式で、高い圧力が必要な場合に使われます。

渦巻ポンプの使用用途

渦巻ポンプは、流量が多く圧力をそれほど必要としない場合に使われることが多いです。排水用、ボイラの給水、上下水道、及び鉱山、化学工業用など産業用として広く使用されています。また、灌漑用など農業分野や空調機の給排水にも使用されます。

渦巻ポンプは、液体中の固形物容積濃度が20%以下で、比較的粘度の低い溶液に使用されることが多いです。また、羽根の形状や材料を改良して、摩耗や腐食に耐えるようにしたものは、泥水、汚水、スラリー、及びパルプ混液、砂礫、石炭などの輸送に使われます。さらに、羽根数を減らして流路面積を広げることにより、魚やみかんなどを水と共に輸送する用途もあります。

渦巻ポンプの原理

渦巻ポンプは、羽根車状のインペラーをケーシングの中で回転させることにより、遠心力で流体に圧力と速度のエネルギーを与えます。そして渦巻き形状のケーシングの中で減速されて、速度エネルギーが圧力エネルギーに変換されます。これはベルヌーイの定理と呼ばれている現象です。

インペラーには、半径方向に流体が流れる2次元曲面の半径流形と、軸方向から半径方向に序々に変化する3次元曲面の混流形があります。速度エネルギーを効率よく圧力に変えるための重要な要素です。

ケーシングは、インペラーの外側に渦巻き形の部屋を形成するように設置されます。回転方向に徐々に断面積が増加することで、インペラーから遠心力で噴出した高速の流体は次第に減速され、圧力(静圧)が上昇します。

1つのインペラーによる発生圧力には限界があり、より高い圧力が必要な場合は、多段式のポンプにします。多段式は、最初のインペラーを出た流体を2段目のインペラーに吸い込ませて、さらに圧力を上げる方式です。これを何段か繰り返せば、高圧を得ることができます。

ポンプの構造

ポンプの構造は流量と揚程とに密接に関係しており、ポンプを選択する際の選定基準として重要になってきます。渦巻ポンプは、インペラーと渦巻き形ケーシングのほか、シャフト、軸受、駆動用カップリング、及び吸込み口と吐出し口のカップリング、軸封装置、必要に応じて圧力計圧力センサー圧力スイッチなどから構成されます。

インペラーの外周に、回転しない固定案内羽根を配置したポンプがあります。渦巻ポンプの仲間ですが、ディフューザーポンプ或はタービンポンプと呼ばれ、遠心式ポンプの1つです。仕組みは渦巻ポンプと類似ですが、インペラーを出た流体は、案内羽根を通る間に効率よく減速されて静圧が上昇するので、全体の効率が良いという特徴があります。

渦巻きポンプのその他情報

渦巻ポンプとキャビテーション

ポンプの構造は液体を圧力変換することを目的として設計されているので、ポンプの内部にガスが混入したり、ガスが発生したりすると問題が発生します。この問題の一つにキャビテーションがあります。

ポンプにおけるキャビテーションとは、ポンプ内部で液体の圧力が急激に低下し、飽和蒸気圧に達すると液体が急激に気化する現象のことです。渦巻ポンプでのキャビテーションは、インペラーに流入した液体の流速が上昇することで流体の静圧が低下し、流入部付近の静圧が流体の飽和蒸気圧を下回ると発生します。

キャビテーションが繰り返し発生すると、インペラーが損傷し、キャビテーション壊食が生じます。振動や騒音も発生し、性能も低下します。これは渦巻ポンプ内だけではなく、管やバルブの損傷も生じ、設備の早期な劣化や破壊に繋がります。

キャビテーションの防止法は、運転条件を変えるほか、吸込み側の抵抗を減らしたり、流体の圧力を飽和蒸気圧以下とならないように、インペラーの形状や面積などを改善する方法があります。

参考文献
https://speckjapan.com/aboutcent
https://engineer-education.com/pump-1/
https://engineer-education.com/pump-2_cavitation/
http://www.ebara.com/about/technologies/abstract/detail/1196383_4292.html
https://hightemperaturepump.eichitwo.com/?page_id=547

スカラロボット

スカラロボットとは

スカラロボット

スカラロボットとは、水平方向に動作する回転軸を3軸備え、上下方向に動作する1軸を備えた水平多関節型の産業用ロボットです。

「Selective Compliance Assembly Robot Arm」の頭文字を取って、「SCARA型ロボット」を通称「スカラロボット」と呼びます。

スカラロボットは、次のような特徴を持っています。

  • 水平方向の動作を素早く行える
  • 比較的安価
  • 上下方向の機械的な剛性が高い (回転軸3軸が全て垂直に配置されるため)

このような特徴を活かして、スカラロボットは部品の挿入や配置、ねじ締めなどの組み立て作業の用途で利用され、生産現場の自動化に貢献しています。

スカラロボットの使用用途

スカラロボットは、食品や電子基盤などの製造ラインにおいて使用される場合が多いです。これらの用途以外にも部品などのピック&プレース作業、圧入作業、ディスペンサーを用いた塗布作業、組み立て作業など、様々な用途があります。

1. 食品製造ラインでの使用用途

  • ベルトコンベヤで流れてきた食品 (個別包装されたお菓子など) をプラスチック製のトレーに詰める作業
  • レトルトパックされた食品を発送用のケースに詰める作業

2. 電子基板製造ラインでの使用用途

  • バラ積みされた部品をパーツフィーダで整列させた後に、トレー上に部品をピック&プレースする作業
  • トレー上の電子部品 (コネクタなど) を、電子基板上に配置する作業
  • 組立済の電子基板を検査機にセットし、検査後の基板を次の工程にセットする作業

3. その他の使用用途

  • ネジ締め:ロボット先端の電動ドライバーで複数個所のネジ締めをする作業
  • 段ボール開梱:テープを切って段ボールを空ける作業
  • ラベル貼り付け:ロボット先端に専用のラベル貼り付け用のハンドを取り付ける作業

スカラロボットの原理

スカラロボットは、基本的に3軸の回転動作と1軸の上下動作の合計4軸の動作軸によって構成されています。3軸の回転軸は全てアーム先端部を水平移動させるために用いられています。このような構成から、スカラロボットは水平方向の動作に特化したロボットと言えるでしょう。

3軸の回転軸によってロボット先端を水平方向に移動し、ワークの真上に高速移動させ、続いて上下軸を用いてロボット先端部をワークに真上からアプローチします。それから、ワークをつかむなどの作業を行います。

スカラロボットのアーム先端は、作業に応じて次のようなツールを装着することができます。

  • エアー吸着パッド
  • 空気圧グリッパ
  • 電動グリッパ
  • ネジ締め機器
  • ディスペンサー

スカラロボットを動かすためには動作を教示 (ティーチング) する必要があります。これまではティーチングペンダントと呼ばれる専用ツールを用いるのが一般的でした。近年では、パソコン上でティーチングができる機種や、ダイレクトティーチングと呼ばれる初心者でも簡単にティーチングができる機種もあり、使いやすさを重視したスカラロボットも増えています。

スカラロボットのその他情報

1. 高速スカラロボット

スカラロボットには高速動作を目的とした製品も存在します。ロボットが高速で動作することで、ライン全体の生産性向上に貢献します。

スカラロボットが早く作業を終えられれば、後工程により早くワークを受け渡すことが可能です。その結果、1つの製品を生産する時間が短くなります。これが、スカラロボットの高速化によってライン全体の生産性が向上する理由です。

高速動作可能なスカラロボットを実現するためには、次のような手段が有効です。

  • モーターの出力を大きくする
  • アームを軽量化する
  • 関節の剛性を上げる
  • ロボットの振動を抑える制御をする

2. カメラを利用したスカラロボット

カメラから得られる情報をスカラロボットに送信することで、ロボット自体の性能を上げることができます。スカラロボットでワークに対してネジ締めを行う場合を考えます。ワークは個々に交差を持っており、厳密に言えばそれぞれ微妙に大きさが異なります。

従って、ネジを保持したスカラロボットが教示位置に移動しても、ワーク上のねじ穴とスカラロボット先端のネジ先のポジションが合わない状況が発生しうるのです。このような状況では、多くの場合ネジ締めに失敗します。

ここで、カメラを用いてねじ穴を撮影し、基準位置に対するズレ量を計算します。そしてそのズレ量をスカラロボットに送信し、元々の教示点にオフセットさせることで位置を補正します。

これによって、カメラの撮像範囲内であればどの位置にネジ穴があってもスカラロボットがネジ締め作業をすることが可能になります。このような仕組みは、「画像位置補正」と呼ばれ、工場の自動化に広く利用されています。

参考文献
https://www.pref.mie.lg.jp/common/content/000171768.pdf
http://www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/sendai/mechatro/archive/RMSeminar_No18.pdf
https://www.denso-wave.com/ja/robot/info/detail__917.html