スピンドルモーター

スピンドルモーターとは

スピンドルモーター

スピンドルモーターとは、動力源のモーター部と回転部が一体化したモーターです。

回転軸が1つしか存在しないため、装置構成が簡単になります。スピンドルとは、回転機械の回転軸のことです。

スピンドルユニットなどとも呼ばれ、旋盤などの工作機械に使用される用語です。したがって、スピンドルモーターはスピンドルと一体となったモータを指します。

一般的なモーターとギアおよびベルトからなる回転制御装置は、その部品の多さから制御が煩雑になる傾向があります。さらに、装置が大型化する傾向がありますが、スピンドルモーターを使用すれば省スペースかつ並列に複数回転軸を追加することが容易です。

スピンドルモーターの使用用途

スピンドルモーターは加工機内部に広く使用されます。以下はスピンドルモーターの使用用途一例です。

  • 穴あけ加工機やエンドミル
  • コンピュータ用HDD回転用
  • 丸鋸などの切削工具
  • ドリルや研磨工具
  • 協働ロボットや多関節ロボットのアーム

高トルク型から高速回転が可能な製品まで、幅広いラインナップが存在します。用途に合わせてさまざまなスピンドルモーターの中から、最適な製品を選定することが可能です。

近年では、多関節ロボットなどにもスピンドルモーターが採用されており、ロボットアームの回転軸とスピンドルモーターの軸を合わせて使用します。省スペース性を活かして、HDDの回転駆動用にも使用可能です。

スピンドルモーターの原理

スピンドルモーターの構造は、広く普及しているサーボモーターに酷似している場合が多いです。回転軸と同軸上にスピンドルが設置されます。使用されるモーターの種類には、シンクロナスモーターとインダクションモーターがあります。

1. シンクロナスモーター

シンクロナスモーターは、回転軸に固定された永久磁石からなるローターとその外周に設置された複数個の円環状ステータで構成されます。ステータは電線が鉄心に巻き付けられた構造で、交流電流が流れると電磁石の役割を果たして一時的に自制を持ちます。

交流は電流の位相が時々刻々と変化しているため、電磁石の極性も時間とともに変化します。ローターの永久磁石の極性は固定されているので、ステータとの間の引力と斥力を交互に発生してローターを回転させることが可能です。

2. インダクションモーター

インダクションモーターは、シンクロナスモーターの永久磁石ローターの代わりに導体ローターを使用したモーターです。導体ローターには、かご状の金属部品が使用される場合が多いです。

原理はステータで発生した回転磁界によってロータ導体に電流が発生し、電磁誘導作用が発生して軸が回転します。シンクロナスモーターと違って回転位相に「滑り」と呼ばれる誤差が発生するため、微細な位置合わせには不向きです。ただし、部品点数も少なく安価なため、高出力の製品には広く使用されます。

スピンドルモーターのその他情報

スピンドルモータとサーボモーターの違い

スピンドルは、切削加工や研磨などに使用する産業用回転機器の回転軸を指します。したがって、スピンドルモータの主な目的は切削や研磨などの加工です。超高速回転及び高トルクなモータが使用されることが多いです。

これに対して、サーボモータは位置決め精度を厳しく要求された精密機械において広く使用されます。組立ロボットや自動梱包機器などがその一例です。モーターにはエンコーダなどの駆動機器が使用され、ローターの回転位置や回転数を検出することが可能です。

この検出情報をPLCやドライバと通信することでフィードバック制御を実施し、高速回転を高精度でコントロールすることが可能となります。スピンドルモーターもサーボモーターも、あらゆる種類のモーターを適用可能です。

ただし、スピンドルモーターや大容量サーボモーターにはインダクションモーターが使用される場合が多く、小容量サーボモーターにはシンクロナスモーターが使用される場合が多いです。

参考文献
https://guitarsk.com/pc/archives/1364

COM Express

COM Expressとは

COM Expressとは、PICMGが定めたCOM (英: Computer On Module) の標準規格です。

既存のCOMにPCI ExpressやシリアルATAなどの技術を採用したものを指します。キャリアボードとカードリッジで接続されるCPUやメモリ、バスなどを搭載した基板で、コンピュータとしての機能が十分に発揮できる装置です。

製品にCOM Expressの採用によって、製品開発をスピーディに行うことができるほか、開発の簡素化や開発費用も抑えられます。また、COM Expressの規格に対応したモジュールが将来にわたって市場に投入されるため、製品の将来性の向上にもつながります。

COM Expressの使用用途

COM Expressは、その柔軟性と拡張性により、幅広いアプリケーションと業界で使用されています。以下はその主要な使用事例の一部を示します。

1. 産業用コンピュータ

工場オートメーション、産業制御、ロボット技術などの産業用途では、COM Expressはコンピュータシステムの堅牢性と信頼性を提供します。カスタマイズ可能な機能と拡張性は、これらのアプリケーションが必要とする特定の要件を満たすために不可欠です。

2. 医療機器

診断機器や治療機器など、医療分野での用途で、COM Expressは信頼性と高いパフォーマンスを提供します。高速なデータ処理とリアルタイムの反応性は、患者の診断と治療で極めて重要な要素です。

3. 航空・防衛産業

COM Expressモジュールは、航空機のナビゲーションシステムや軍事用通信装置など、航空と防衛産業で高いパフォーマンスと信頼性が求められるアプリケーションで広く使用されています。堅牢性と長期サポートが必要なこれらの産業で、COM Expressは理想的な解決策を提供します。

4. 通信ネットワーク

COM Expressは、通信インフラストラクチャの要件を満たすために、高速データ転送と高い信頼性を提供します。ネットワークスイッチやルーターなどの機器では、COM Expressが信頼性の高い高性能プラットフォームを提供します。

COM Expressの原理

COM Expressは、基板、CPU、メモリ、バス、USBなどと接続できるインターフェース、カードリッジ挿入部、キャリアボードとの接続部で構成されています。キャリアボードに実装可能で、キャリアボードに新しいモジュールを挿入して、製品の機能を拡張させることができます。

COM Expressで採用されている技術であるPCI Expressは、高速で電気信号のやり取りを行うことができる拡張スロットの規格で、グラフィックカードなどを挿入が可能です。また、同じく採用されている技術であるシリアルATAは、ハードディスクなどとCOM Expressを接続するための規格で、高速でデータのやり取りを行うことができます。

COM Expressの種類

COM Expressはその用途と要件により、様々なフォームファクターとピン配置を提供しています。その中でも特に代表的なものは4つのフォームファクターと3つのピン配置です。

1. フォームファクターによる分類

  • COM Express Mini
    最も小型のモデルであり、極めて小さいフットプリントを必要とするアプリケーション向けに設計されています。これはモバイル機器や小型デバイスで一般的に見られます。
  • COM Express Compact
    COM Express Miniよりも少し大きく、より強力なコンピューティング能力と接続オプションを提供します。コンパクトな設計により、さまざまな用途で使用可能です。
  • COM Express Basic
    最も一般的なフォームファクターであり、幅広いI/Oと高性能コンピューティングオプションを提供します。これらは産業用機器、ネットワーク機器、およびその他の高性能システムで広く利用されています。
  • COM Express Extended
    最も大きなフォームファクターで、最も高性能なコンピューティング能力と最も広範なI/Oオプションを提供します。これは最も要求の厳しいアプリケーションに対応するために設計されています。

2. ピン配置による分類

  • Type 6
    最も一般的なピン配置であり、一般的なI/Oとディスプレイインターフェースを提供します。これは一般的にグラフィックス処理能力が重要なアプリケーションで使用されます。
  • Type 7
    サーバー向けのアプリケーションに最適化されており、ディスプレイインターフェースの代わりに10GbE (10ギガビットイーサネット) と追加のPCI Express (PCIe) レーンを提供します。
  • Type 10
    COM Express Mini専用のピン配置で、小型化と耐久性を最優先します。これはモバイルアプリケーションと低電力アプリケーションで一般的に見られます。

これらの種類があるおかげで、COM Expressは多種多様な要件とアプリケーションに適応し、あらゆる業界のニーズを満たすことができます。これがCOM Expressが業界で幅広く採用されている理由の1つです。

Sic MOSFET

SiC MOSFETとは

SiC MOSFETとは、従来のSi基板ではなく、化合物半導体であるSiC (シリコンカーバイド) 基板を使用したMOSFETのことです。

電界効果トランジスタの1種であるMOSFETの半導体基板の材料としています。MOSFETは、オンとオフのスイッチングや、増幅器などの用途に使用されます。材料として用いる半導体基板に化合物半導体であるSiCを用いることによって、従来のSi MOSFETと比較して電圧を印加した状態での抵抗値を低減することができます。

その結果、ターンオフ時のスイッチング損失やパワー動作時の電力損失を小さく抑えることが可能です。半導体チップの性能向上やトランジスタ動作時に必要となる冷却能力を小さくすることできるため、製品自体の小型化につながります。

SiC MOSFETの使用用途

SiC MOSFETは、パワーエレクトロニクスの分野の電子機器などの、リレーやスイッチング電源、イメージセンサなどの多くの半導体製品で使用されています。SiC MOSFETを採用することによって、スイッチングのオフ時の損失低減から高速のスイッチングが可能となるため、通信機器にも使用されるケースが多いです。

SiC MOSFETを選定する際は、製品アプリケーションの動作状態、すなわち絶対最大定格や電気的特性、パッケージの使用やサイズなどを考慮する必要があります。

SiC MOSFETの原理

SiC MOSFETは、同程度の耐圧を維持しながらも、低いON抵抗やターンオフ時の低損失な動作ができるMOSFETの構造を実現できます。これは、Si基板と比較して約3倍のバンドギャップエネルギーと約10倍の破壊電界強度の物性値を有するSiC基板を材料に用いたトランジスタであるがゆえに、活性層の層厚を薄くできるためです。

SiC MOSFETは、p型半導体とn型半導体が積層された構造をしています。通常は、p型半導体の上にn型半導体が積層しており、n型半導体にはドレインとソースの電極、n型半導体の間には酸化絶縁層とゲートの電極が取り付けられています。また、ボディのシリコンウェーハには化合物半導体であるSiC (シリコンカーバイト) がエピ基板として使用されています。

MOSFETではゲートにプラスの電圧を印加することで、ソースとドレインの間に電流が流れます。この際、シリコンウェーハにSiCを利用しているSiC MOSFETは、Siのみを利用しているMOSFETに比べて、ソースとドレインの間の電圧や電流を大きくしても動作させることが可能です。半導体の不純物の濃度を上げられるため、損失の低減や小型化が可能となっています。

SiC MOSFETのその他情報

1. SiC MOSFETとIGBTとのすみ分け

IGBTは、通常のSi MOSFETでは対応が困難な大パワー領域での使用用途に用いられるトランジスタですが、昨今この領域にSiC MOSFETデバイスが用いられるようになってきています。理由は、SiCのバンドギャップエネルギーが大きいことにより、IGBTと比較して高温動作が可能なためです。また、IGBTの場合の後段のバイポーラトランジスタのスイッチング損失が大きいという課題をクリアできることも理由として挙げられます。

以前はSiCエピ基板が小口径であり、量産性やコスト面で厳しい状況でした。しかし、最近では8インチ対応が可能になっており、量産性や価格も改善されている状況にあります。

比較的大きな10kWを超える大電力を扱うアプリケーション、例えば電気自動車 (EV) 用途や発電システム用途、住宅用電力用途などに積極的に活用されています。

2. SiCデバイスとGaNデバイスの違い

SiCと並んで注目されているワイドバンドギャップ半導体に、GaN (窒化ガリウム) があります。GaNはSiCと比較してもさらにバンドギャップエネルギーが大きく、絶縁破壊強度も大きなデバイスであり、研究機関を中心に活発な研究がなされています。

GaNは一般にSi基板上にGaNの活性層を形成する構造であるため、SiC MOSFETほどの大出力用途には対応が厳しいです。市場では、1KW相当の電力を扱うアプリケーションで比較的検討がなされています。例をあげると、5G基地局向けの高パワーアンプ用途やPCやUSBを介したバッテリーの充電用途でよく用いられています。

GaNデバイスもSiC MOSFETと同様に高温動作が可能であり、冷却機器や過度な排熱構造を必要としないため、小型のPC電源アダプターとして、昨今広く普及するに至っています。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/sic/sic_what3
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejjournal/125/1/125_1_25/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ieejias/125/3/125_3_229/_pdf

パッシブプローブ

パッシブ・プローブとは

パッシブ・プローブとは、測定ポイントの信号とオシロスコープの入力端子間を電気的に接続するためのものです。

オシロスコープによる波形観測の場合、被測定対象の信号を測定ポイントからオシロスコープまで信号を伝送するための機器と言えます。

オシロスコープのプローブには、信号増幅回路を内蔵したアクティブ・プローブと受動部品のみで構成されているパッシブ・プローブがありますが、本稿では後者に限定して説明します。

パッシブ・プローブの使用用途

パッシブ・プローブは、オシロスコープによる信号波形の観測の際、測定ポイントの信号を検出するために使用するものです。

当てたポイントの電圧をオシロスコープに伝達します。電流波形を直接観測する場合は、カレント・プローブを使う必要があります。

パッシブ・プローブの原理

プローブを使えばオシロスコープで正確な波形観察ができるものではありません。正確な測定には、プローブの扱いに充分注意が必要です。

1. 被測定回路に対するプローブの影響

オシロスコープとパッシブ・プローブを組み合わせて波形観測する場合、「被測定回路にはオシロスコープの入力インピーダンスとプローブのインピーダンスとの合成インピーダンスが接続された」と見做せます。すなわちち、プローブは内蔵抵抗Rpとそれと並列に調整用コンデンサCpを持ち、プローブのケーブル部には浮遊容量Csがあります。

オシロスコープの入力端子は、入力抵抗Ri (1MΩ) と入力容量Ciの並列回路で構成されているため、この合成インピーダンスを考慮することが重要です。

2. Cpの調整方法

周波数に拠らずプローブで一定の減衰率を得るには、下記の式を満足するようにCpを調整する必要があります。

    Cp = (Cs + Ci) × Ri / Rp

調整用コンデンサCpは半固定タイプなので、オシロスコープ本体と組み合わせた上で最適値に設定します。オシロスコープには調整用コンデンサの最適値を設定するために、方形波の出力端子が設けられています。

プローブの先端をここに接続して、オシロスコープの表示部に矩形波が表示されるようCpの値を変化させます。

パッシブ・プローブのその他情報

1. パッシブ・プローブの使い方

パッシブ・プローブはオシロスコープを用いた測定に利用されるもので、内蔵抵抗器Rpによる減衰率1:1、1:10、1:100 の3種類から、被測定回路の特徴を踏まえて選択します。

1:1 プローブ
内蔵抵抗Rpと調整用コンデンサCpを持たないプローブです。信号が直接オシロスコープの入力端子に印加されるので、オシロスコープの入力インピーダンスである1MΩと入力容量Ciが被測定回路に接続されることになります。

被測定回路が高インピーダンスであると、測定回路に影響を及ぼすため注意が必要です。一方、小信号を扱う場合は、オシロスコープの入力感度がそのまま活用できるので、Rpを通す他のタイプより信号レベルの面で有利です。

10:1 プローブ
通常良く利用される一般的なプローブで、内蔵抵抗Rpは9MΩとなっています。入力インピーダンスはオシロスコープと組み合わせて10MΩになり、被測定回路に与える影響が小さく使い易いものです。

100:1 プローブ
内蔵抵抗Rp99MΩと調整用コンデンサCpを持ち、減衰率が1/100になるため、主に信号電圧が100Vを超えるような場合に利用されます。また、入力インピーダンスが100MΩと極めて高いので、被測定回路に与える影響が特に少ないことも特徴です。

グランド・リード線の接続ポイント
パッシブ・プローブの使い方で特に注意すべきものは、グランド・リードの接続とその処理方法です。多チャンネルのオシロスコープにて複数のポイントを同時に観測する場合、各チャンネルのプローブのグランド・リードは共通の1ヶ所 (一点アースが望ましい) に接続することが基本です。

異なるグランドラインに接続すると、グランドループにより微小な信号を測定する際に悪影響を与えます。

グランドリード線の長さ
グランド・リードは、長い方が測定ポイントへの接続の面では有利ですが、高周波信号を観測するとリンギングや信号振幅の大きな変動など、不具合現象が発生します。これは、グランド・リードの誘導性インダクタンス成分とプローブの入力端子容量とが共振して、その共振周波数付近で振幅が極端に大きくなることが原因です。

従って、周波数が10MHz以上の高周波信号を観測する場合は、グランド・リードの代わりにグランド・スプリングなどを使用することも考慮して下さい。

2. プローブの周波数特性

波形観測用の測定器は、オシロスコープ本体とプローブで構成され、両者を組み合わせた測定系の周波数帯域並びに立上り時間によって主要な測定性能が決まります。従って、オシロスコープ本体とそれに組合されるプローブ毎に周波数帯域や立上り時間がスペックとして公表されています。

3. ケーブルの浮揚容量

プローブの周波数特性に大きく影響を及ぼすファクターは、ケーブルの浮遊容量です。周波数が高くなるほど浮遊容量による容量性リアクタンスは小さくなり、その分被測定回路の負荷が大きくなります。

その結果、プローブ自体の周波数帯域幅を狭める、立上り時間が遅くなる等、悪影響を及ぼします。プローブの浮遊容量はケーブルの長さにも依存し、長いほど浮遊容量が大きくなる傾向があるため、プローブ長はなるべく短いものが周波数特性上有利です。

参考文献
https://detail-infomation.com/oscilloscope-calibration/
https://news.mynavi.jp/article/oscilloscope2-2/
http://www.ktek.jp/
https://cc.cqpub.co.jp/system/contents/1246/

DCパワーリレー

DCパワーリレーとは

dcパワーリレー

DCパワーリレーとは、直流電源を使用して接点出力を発信するリレーです。

一般的なリレーは交流電源を使用しますが、直流電源を使用する場合には、ダイオードを接続するなどの特殊な設計が必要です。高電圧や高電流を扱う産業分野で広く使用されます。

DCパワーリレーは、直流電源を使用する多くの分野で必要不可欠な機器です。高信頼性を求める分野では、需要が増加しています。

DCパワーリレーの使用用途

DCパワーリレーは、さまざまな産業機器で使用されます。具体的には、燃料電池のコージェネレーションシステムや太陽光発電施設では、電力制御のために不可欠な機器です。風力発電プラントなどでも、発電機と電力網の系統接続制御などに使用されます。

電気自動車やハイブリットカーにも必須の機器です。現代の電気自動車は高電圧バッテリーを使用するため、DCパワーリレーで電力の制御をします。充電ステーションとバッテリーにおける充電管理に使用される場合もあります。

鉄道も用途の1つです。特に国内では路面電車や通勤電車が直流駆動のため、車両・照明の制御や通信システムなどで活用されます。

DCパワーリレーの原理

DCパワーリレー動作の原動力は、電流がコイルを流れるときに発生する磁気力です。通常のリレーと同様に、コイル、可動切片、接点、ケーシングなどから構成されています。コイルに直流電源を供給することで可動切片を引き付け、付属する接点を開閉します。

また、DCパワーリレーには、サージ吸収ダイオードなどの保護デバイスが組み込まれてるのが特徴です。リレー動作時の逆起電力や回路内のスイッチングノイズなどの高周波信号を吸収し、ダイオード内で発生するジュール熱によって、これらの信号を分散させることでリレーを保護します。

大型DCパワーリレーの場合は、熱伝導率が高い加圧ガスが封入されている容器内に、強い磁場を発生させる永久磁石、2つの端子から伸びている固定接点と、ばねによって動く可動接点によって構成される場合があります。容器にはアークが外に漏れないように防爆性の高い材料で構成され、加圧ガスが漏れない密閉性の高い容器が使用されます。

DCパワーリレーの種類

DCパワーリレーにはさまざまな種類があります。

1. 開閉数による分類

接点などの開閉数で種類が分かれ、1極2投 (SPDT) や2極2投 (DPDT) などの種類があります。極数や投数が多いほど汎用性が高いですが、高価になります。これらが電流の通り道を切り替えることで、電気回路の制御を行います。

2. 出力構造による分類

出力構造では、メカニカルリレーとソリッドステートリレーが存在します。ソリッドステートリレーは、半導体素子を使用して物理接点の代わりにスイッチングを行うリレーです。

メカニカルリレーに比べて動作速度が速い上に寿命も長いため、高速動作が必要な負荷に最適です。MOSFETと呼ばれる半導体素子をDCパワーリレーとして使用することも可能です。

MOSFETはトランジスタを使用してスイッチングを行うリレーで、損失が少なく動作速度が速い点が特徴です。

DCパワーリレーの選び方

DCパワーリレーを選定する際は、容量、動作速度、消費電力などを考慮します。

1. 容量

容量は、リレーが制御できる電流や電圧の上限で、超過するとリレーが損傷する可能性があります。使用する負荷装置などに合わせて、適切に選択することが大切です。

2. 動作速度

電圧には接点部分に印加可能な上限電圧とコイルの定格電圧が存在し、それぞれ状況に応じて選定します。リレーの動作速度も重要な要素です。パワーリレーは物理的に接点の開閉を行うため、動作速度が遅いのが欠点です。高速動作が必要な場合には、他の機器を選択しなければなりません。

3. 消費電力

コイルによる消費電力が大きくなるため、リレー容量を最小限に抑えて消費電力を削減することが重要です。

参考文献
https://www3.panasonic.biz/ac/j/control/relay/vehicle/ev_special/index.jsp
https://www.sonycsl.co.jp/publication/files/672.pdf

プログラムゲインアンプ

プログラムゲインアンプとは

プログラムゲインアンプとは、プログラムによってユーザー側でゲインの大きさを変えることができる増幅器のことです。

オペアンプを用いた増幅器であり、一般には非反転式の構成です。プログラムゲインアンプは、ゲインをプログラミングによって変更できるため、アナログ信号をデジタル信号にまで変更するシグナルチェーンにおいて、変更可能な余地を残せます。

信号の受信強度を高めたい等の顧客やユーザーの希望に対して、後からゲイン変更により柔軟に対応することが可能となるので、フレキシブルな製品の開発につながります。

プログラムゲインアンプの使用用途

プログラムゲインアンプは、主に通信機器や探知機、分析機器などの信号やノイズを受信する部分の装置における、信号の増幅用途に使用されます。具体的には、携帯電話などの基地局やレシーバー、超音波レーダー、ワイヤレス通信、音声分析な度です。そのほか、モーター制御などのアプリケーションにも使用されています。

プログラムゲインアンプの仕様を選定する際は、プログラム可能なゲインの範囲や種類、インピーダンスの大きさ、ゲインの精度などを考慮する必要があります。

プログラムゲインアンプの原理

プログラムゲインアンプは、オペアンプの負帰還回路部の抵抗をラダー構成にし、デジタル回路のレジスタ値の制御により、スイッチ動作を介してこの抵抗値を切り替えています。これにより、広範囲なダイナミックレンジを有するゲイン切り替え、アンプ動作を実現させています。

負帰還回路部の抵抗値の他に、オペアンプに印加する内部電圧をプログラムによって変更することで、オペアンプの増幅率自体を可変変更させ、ゲインの大きさを変化させるのも1つの手法です。医療機器や科学実験などで使用される機器のプログラムゲインアンプは、ダイナミックレンジの大きな増幅率が求められ、さらにノイズが少なく、優れた温度安定性が求められます。

そのため、抵抗やコンデンサなどをプログラムゲインアンプに搭載することで、ローパスフィルタを形成し、高周波のノイズを除去できる機構を盛り込んだ製品もあります。また、複数のオペアンプをプログラムで動作可能なスイッチを持つ回路などで接続し、必要に応じてオペアンプをプログラムによって動作させて、効率的に大きな増幅が可能な製品も発売されています。

プログラムゲインアンプのその他情報

1. センサー用途で用いられるプログラムゲインアンプ

センサーを用いたシステム設計においては、さまざまな種類のセンサーの出力範囲と、後段のA-Dコンバータの入力範囲を組み合わせによって合致するように設計しますが、必ずしもシステム上の入出力範囲が合致するとは限りません。そのような場合は、センサーの非常に微弱な低レベル時の出力範囲をカバーし、A-Dコンバータの入力レンジに合致させるべく、センサーとA-Dコンバータの間にプログラムゲインアンプを使用する必要があります。

センサー用途の場合、そのアプリケーション的な役割から当然ノイズレベルには注意が必要です。計装アンプ (インスツルメンテーションアンプ) もよく用いられますが、プログラムゲインアンプは計装アンプの後段にゲイン可変機能を追加させたものと考えることもできます。

2.プログラムゲインアンプ (PGA) と可変ゲインアンプ (VGA) の違い

どちらもゲインを変更調整可能な増幅器という意味では同じです。プログラムゲインアンプ (PGA) の場合には、アナログ的な連続調整ではなく、4x、8x、16xというようにデジタル制御でビット切り替えであるために、離散的な (正確な) 値のゲイン調整の用途に用いられます。

調整用のレジスタのビット数分のゲイン設定にしか調整の解像度がない点に注意が必要です。一方、可変ゲインアンプ (VGA) は、アナログ的な連続的なゲイン制御であるため、比較的応答も早く、AGC (自動利得制御) 動作が必要なアプリケーションに向いています。

参考文献
https://www.tij.co.jp/ja-jp/amplifier-circuit/pga-vga/overview.html
https://www.idt.com/us/ja/products/rf-products/variable-gain-amplifiers-vga
https://www.analog.com/jp/products/amplifiers/variable-gain-amplifiers.html
https://ednjapan.com/edn/articles/1712/25/news022.html

IDカードプリンター

IDカードプリンターとは

IDカードプリンター (英: ID-card printer) とは、社員証や身分証などを印刷する装置です。

IDカードプリンターを導入することによって、外部に委託しないので社員の個人情報の流出の危険性や外注するコストを抑えられます。

また、少ない枚数から発行することも可能です。ICチップや磁気ストライプが埋め込まれているプラスチックのカードに、インクを熱によって気化させて転写します。印刷の方式には、ダイレクト印刷式と再転写印刷式に分類できます。

IDカードプリンターの使用用途

IDカードプリンターは、会社や施設内で利用する社員証や身分証の印刷に使用されます。会社のセキュリティ強化のための通行証や勤怠の管理、コピー機やパソコンなどの電子機器の認証のために有用です。

製品によっては、ICチップに情報を入力するICエンコーダや、磁気ストライプカードに情報を入力する磁気エンコーダが搭載されています。選定の際には、印刷方式や印刷に対応しているカードの種類、印刷速度、印刷の仕上がりなどを考慮する必要があります。

IDカードプリンターの原理

IDカードプリンターが、プラスチックカードに印刷する方式には、ダイレクト印刷式と再転写印刷式があります。

1. ダイレクト印刷式

ダイレクト印刷式は、印刷対象のプラスチックカードに直接、熱によって気化させたインクを転写させる印刷方式です。印刷に必要な工程が少ないため、安価な装置が多く、ランニングコストも少なくなります。

しかし、ICチップ上には印刷できない他、埃や皮脂などの影響を大きく受けます。また、印刷対象のカードによっては、印刷できない可能性があるので、注意が必要です。

カードのエッジ部分への印刷はできません。ただし、ポリ塩化ビニールPVC製のカードに対応しています。

2. 再転写印刷式

再転写印刷式は、一度印刷する画像を再転写フィルムに印刷し、そのフィルムを印刷対象のカードに押し当てて、熱を加えることでフィルムからカードに画像を転写する方式です。

鮮明な印刷を行うことができるうえ、印刷対象のカードの表面に凹凸がある場合や、ICカードの上からでも印刷することができます。また、再転写式は、カードのエッジ部分まで全面に印刷可能です。一方、フィルムなどを使用するため、ランニングコストが高くなります。

直接印字しない方式なので、ポリ塩化ビニールPVC素材のカードだけではなく、他の素材のカードにも印刷できます。具体的には、ポリエチレンテレフタレートPET/PET-G/ポリカーボネートPCなどです。

IDカードプリンターの特徴

1. 高品位

再転写技術による縁なし全面印刷で、デザイン性の高いカラー画像が印刷できます。

2. 高解像度

解像度が600~1,200dpi仕様の場合、極小文字も精細度高く表示可能です。小さなQRコードもデザイン性を維持してレイアウトができます。

3. 高機能プリンター

エンコーダーを使用して、非接触ICカードにエンコードしながら、カードに印刷ができます。また、インクジェット方式のプリンターでは、50枚/m以上の高速印刷が可能です。

4. 既存システムとの連携

既存の自社システム、会員管理・学校管理システムなどとの連携ができます。

IDカードプリンターのその他情報

1. IDカードプリンターのメリット

社員証、身分証、学生証、会員証、診察券などを内製すると、メリットが多くあります。まず、社員や学生、会員、患者などの大切な個人情報が外部に漏れないことです。

次に、納期にとらわれず、1枚のカードでも、すぐ印刷可能です。人事異動などに対応できます。診察券は、診察中に発行でき、帰りに手渡しできます。

また、コストも有利です。カードを外作すると、1枚数百円かかりますが、内製で印刷すれば、100円以下に抑えられます。さらに、大量発行が可能のメリットがあります。顔写真入りのカードを1分50枚以上の高速印刷が可能です。

インクジェット方式のプリンタであれば、インクリボンのデータがないので、個人情報の漏洩のリスクが更に小さくなります。高解像度のカラープリントが可能で、顔写真、文字、デザイン模様などを精彩に美しく印刷可能です。

2. 裏面粘着カード方式

裏面粘着カードは、ICカードを繰り返し利用できるIDカードです。個人情報などを印刷してから剥離紙をはがしてICカードに貼ることで、カードができます。裏面粘着カードをはがせば、高価なICカードの再利用が可能です。

参考文献
https://cweb.canon.jp/idprinter/iccard/icprinterselect/retransfer-printer.html
https://cweb.canon.jp/cardprinter/special/solution/cases-employees.html?xadid=00001
http://www.kowasystem.com/card-printer/glossary.php

ハーフピッチコネクタ

ハーフピッチコネクタとは

ハーフピッチコネクタとは、通常のフルピッチのコネクタに比べてピッチの長さが半分のコネクタです。

フルピッチのコネクタのピンの長さが2.54mmに対して、ハーフピッチコネクタは1.27mmになります。フルピッチのコネクタは、アメリカ軍の調達規格であるMIL規格や、ドイツの工業規格であるDIN規格に準ずる製品が主流ですが、ハーフピッチコネクタは製造会社によって、様々な規格の製品が発売されています。

ハーフピッチコネクタの使用用途

ハーフピッチコネクタは、様々な電子機器のインターフェースの役割があります。計測機器や産業用ロボット、半導体・液晶ディスプレイ製造装置、新幹線などの鉄道製品、ATM、発電設備など多くの工業製品で使用されます。

様々な製造会社から独自の規格のハーフピッチコネクタが発売されているので、使用用途に適しているハーフピッチコネクタを選定することが大切です。製品の一部として使用する場合は、ハーフピッチが取り付けられているソケット側とピッチに合った穴がついているプラグ側の2つで発売されている製品を選定すると使いやすくなります。

ハーフピッチコネクタの原理

ハーフピッチコネクタは、ピッチがついているソケット側と穴がついているプラグ側に分かれています。

1. ソケット側

ソケット側は、ピッチがついているソケットコンタクト部と、コンタクトが埋め込まれる本体であるハウジング部、絶縁体で作られているハウジングやソケットコンタクトを保護するためのケースであるソケットシェルで構成されています。

2. プラグ側

プラグ側は、ピッチの穴がついているプラグコンタクト部と、ハウジング部、プラグシェルで構成されています。それぞれの部品は、アイレットと呼ばれる留め具で固定されます。

ハーフピッチコネクタのその他情報

1. ハーフピッチコネクタの接続方法

接続の方式としては、基板と基板をつなぐ方式、機器と機器をつなぐ方式、短絡コネクタやICソケットなどの電子部品をつなぐ方式があります。

基板と基板をつなぐ方式の接続方法は、それぞれの基板にプラグとソケットを取り付けて接続します。水平接続や垂直接続、スタッキング接続といった接続の種類があります。

2. ハーフピッチコネクタの基板

ハーフピッチ基板は通常の基板の部品ピッチ2.54mmの半分の1.27mmになるため、かなり特殊な基板です。そこに実装できるリード部品もハーフピッチに合った部品となります。その中でもコネクタは、そのコネクタのピンピッチがハーフピッチに適合したコネクタを使用することになります。

従来であれば、ハーフピッチであることは2.54mmピッチの標準化から外れて不利でしたが、昨今ではリード付きの部品自体が減って、ほとんどの部品が面実装部品になってきました。そのため、逆に絶縁が確保できる低電圧回路であれば、面積を小さくできるハーフピッチの基板やコネクタや関連のハーフピッチ対応部品の方が優勢になり、自動車や事務機器で、ハーフピッチの基板設計が見直されつつあります。

しかし、ピッチが狭くなることによる弊害はあり、例えばマイグレーションやトラッキングと言った経年劣化に伴う絶縁破壊は起こりやすくなり、信頼性が低下することは避けられません。よって、ハーフピッチを採用するためには、使用環境をしっかりと把握しておくことが重要です。

3. ハーフピッチコネクタ対応半導体

ハーフピッチコネクタ対応半導体は、通常の基板ピッチの半分になるハーフピッチ基板に実装対応した半導体部品のことです。昨今、究極の微細化を追求する半導体テクノロジトレンドでは、特殊な狭いピッチのパターン、即ち千鳥配置のコンタクトやビアを伴う配線の最小ハーフピッチが主流です。

高密度つまり、単位機能当たりで低コストな集積回路が求められています。例えば、MPUロジックにおいて、その物理的なゲート最下部の長さによって、最高性能に不可欠な最先端技術を代表した経緯があります。

従来から大きな技術進歩をメタルのハーフピッチで表していて、DRAMが良い例です。

参考文献
https://www.omron.co.jp/
https://www.kel.jp/product/blog_detail/id=10803
https://www.fa.omron.co.jp/products/family/2919/dimension.html
https://semicon.jeita.or.jp/STRJ/ITRS/2003/01d%20Glossary.pdf

リニアレギュレータIC

リニアレギュレータICとは

リニアレギュレータIC

リニアレギュレータの種類

図1. リニアレギュレータの種類

リニアレギュレータICとは、安定した電圧を出力する電子部品です。

入力された電圧に対して、抵抗や半導体素子の電圧降下を利用し、一定の電圧を出力端子から出力します。入力電圧に対して、出力の電圧が小さいとその電圧差分損失が大きくなるため、小電力で動作する回路やセンサーなどの電源として利用されています。

リニアレギュレータICの中でも、半導体素子を使った能動可変抵抗素子を直列につないだものがシリーズレギュレータ、並列につないだものがシャントレギュレータです。

リニアレギュレータICの使用用途

リニアレギュレータICは、小電力で動作する電子機器や精密機器などの電源部分として使用されています。回路が単純であるため、低価格帯の製品が多い、供給する電源の電圧の安定性に優れている、ノイズが少ない点が特徴です。

リニアレギュレータICの中でも、シリーズレギュレータは、能動可変抵抗素子で電圧降下を行う際に発熱するため、ICの絶対最大使用温度を超えないようにする必要があります。レギュレータICの発熱が大きい場合には、必要に応じて外付けのヒートシンクを付ける等の処置をしなければなりません。

リニアレギュレータICの原理

一般的な3端子レギュレータのつに、リニアレギュレータICがあります。3端子レギュレータは、入力端子、出力端子、グランドの3つの端子があります。3端子レギュレータの構造は基本的に同じです。

入力端子に電源を接続し、且つ入力端子とグランド間に入力コンデンサを接続し、出力端子とグラント間にも出力コンデンサを接続することで、出力端子から一定の電圧が出力されます。

リニアレギュレータICの原理

図2. 3端子レギュレータの原理

リニアレギュレータICの内部は、トランジスタやFETを用いた能動可変抵抗素子と基準電圧源などで構成されている制御回路で構成されています。制御回路では、能動可変抵抗素子を通過した電圧を測定し、フィードバック制御を行い、能動可変抵抗素子の抵抗値を制御することで、出力端子から出力される電圧の大きさを一定に制御します。

能動可変抵抗素子では、ある一定電圧以上の電圧降下が発生するため、安定して電源を出力するためには、ドロップアウト電圧と呼ばれる入力電圧と出力電圧の差の最小値を上回る入力電圧が必要です。通常は1.5V程度ですが、最低入力電圧に注意してICを選定する必要があります。

リニアレギュレータICのその他情報

1. 3端子レギュレータの使用上の注意点

3端子レギュレータの放熱
3端子レギュレータは、不安定な入力電圧をトランジスタやFETなどの能動可変抵抗素子を用いて安定した出力電圧を得るものですが、入出力端子間の電圧差と出力端子から流れる電流 (出力電流) との積がレギュレータ内部の熱となって電力を消費します。従って、入力電圧と出力電圧の差が大きいほど、かつ出力電流が大きいほど発熱量は多くなります。

そのため、3端子レギュレータを使う際は放熱設計が重要な要素です。効率的に放熱するように、適切なヒートシンクを設計して3端子レギュレータに取り付けることが必要です。

3端子レギュレータの基板設計
3端子レギュレータは、出力電圧をフィードバックして常に安定した電圧を出力するよう動作しています。それ故入力端子-GND間と出力端子-GND間に接続するコンデンサは非常に重要ですが、特に、出力端子のコンデンサが適切なものでないと出力電圧が発信する恐れがあります。

一般的には3端子レギュレータのメーカーが推奨するコンデンサを選定することになりますが、その場合もコンデンサをなるべく3端子レギュレータの近傍に配置し、かつ3端子レギュレータとコンデンサ間の基板パターンを短くする様に基板設計を行って下さい。

3端子レギュレータの保護
入力や出力に何らかの異常電圧が加わることが予想される場合は、3端子レギュレータを保護する回路が必要になります。入力側に瞬間的な高電圧が加わる恐れのある場合は、入力にダンピング抵抗やツェナーダイオードを付加してその高電圧をクランプして下さい。

入力電圧が出力電圧より低下する可能性がある場合にも対策が必要です。何らかの理由で入力電圧が大きく低下する場合、一定の出力電圧を維持するためには出力端子に大きな静電容量のコンデンサを接続する必要があります。その背反として電源OFFした時などに、一時的に入力端子電圧よりも出力端子電圧の方が高い電圧になることがあります。

また、複数の電源を組み合わせた回路では、他の電源から廻り込んで出力電圧が入力電圧より高くなる可能性も考えられます。これらへの対策として、出力端子から入力端子方向に電流が流れるように保護ダイオード (入力側をカソード、出力側をアノードに接続) を付けておく方法があります。

2. LDO型レギュレータの特徴

LDO型レギュレータの特徴

図3. LDO型レギュレータの特徴

3端子レギュレータでは、ドロップアウト電圧 (入力電圧に対し出力電圧が低下した分) の大きさにより、「標準型」もしくは「LDO型」に分類されます。

標準型のドロップアウト電圧は3.0V程度になりますが、LDO型はドロップアウト電圧が1.0Vを下回り、標準型より小さいことが特徴です。尚LDOとはLow Drop Outを省略表示したものです。入力電圧を12V、 出力電圧を5Vとした組み合わせが一般的であった頃は、12Vから5Vに変換するのに3端子レギュレータが盛んに採用されました。この場合、ドロップアウト電圧が3V程度の標準型レギュレータでも問題なく使えました。

ところが3.3V系のデジタルICが主流となって入力電圧が5V、出力電圧が 3.3Vの組み合わせになると、基板上で5Vを3.3Vに変換する為にLDO型レギュレータを採用することが必須となりました。バイポーラトランジスタを使った標準型の出力回路は、NPNトランジスタ2個をダーリントン接続した構成になっていますが、LDO型の出力回路ではPNPトランジスタ1個で構成しています。これにより、小さなドロップアウト電圧での動作が可能になりました。

しかしながら、負帰還特性も変化し、LDO型は標準型に対して安定動作範囲が狭くなり発振し易くなっています。それ故にLDO型では、出力端子に接続されるコンデンサの容量やESR (等価直列抵抗) 特性が極めて重要なファクターです。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/dc-dc-converters/dcdc_what4
https://www.zuken.co.jp/club_Z/zz/tech-column/20171025_r002.html
https://pages.rohm.co.jp/Tech_download05.html
https://jp.rs-online.com/web/generalDisplay.html?id=ideas-and-advice/3-terminal-regulators-guide
https://www.cqpub.co.jp/hanbai/books/34/34391/34391_onboard.pdf

検出スイッチ

検出スイッチとは

検出スイッチとは、オンとオフの切り替えに使用されるスイッチです。

赤外線や、マイクロ波、磁気、光、振動、加圧などを検出して動作します。機械的な接点によってスイッチが動作する場合や、内蔵されている検出素子が光などを検出したときに出る電子や抵抗の変化などによって、スイッチの動作を行う場合があります。

検出スイッチの使用用途

検出スイッチは、店舗や住宅、製品、生産工場、実験装置などで利用されます。検出スイッチの選定の際には、サイズや検出精度、ノイズへの対処、耐久性を考慮する必要があります。

検出スイッチの使用例を以下に示します。

  • 自動ドアにおける、人の接近を赤外線によって感知し、動作させるシステム
  • 工場における物体の通過を感知して、警報を鳴らすシステム
  • 入場ゲートにおけるICカードや磁気ストライプカードの検出システム

検出スイッチの原理

検出スイッチの動作原理を説明します。検出スイッチの中でも、接触によって動作するスイッチ、磁気によって動作するスイッチ、光によって動作するスイッチ、温度変化によって動作するスイッチの検出方法を説明します。

1. 接触

接触を感知する場合は、接触による圧力の変化を、ダイヤフラムなどを使用した検出素子の抵抗の変化量を計測し、スイッチを動作させます。その他にも、接触によって機械的接点を動作させる方式もあります。

2. 磁気

リードスイッチやホール素子、磁気抵抗素子といった検出素子を利用して、磁気の変化量を検知し、スイッチの駆動を行います。使用されている検出素子の種類によって、電源が不要なスイッチから、高速の応答が可能なスイッチ、高感度のスイッチなどがあります。

3. 光

フォトダイオードと呼ばれる検出素子を使用して、光を検出してスイッチを動作させます。フォトダイオードは光を電気に変換する検出素子です。

4. 温度

温度によって抵抗が変化する温度抵抗体などを検出素子として利用することで、スイッチを動作させます。ダイヤフラムなどを利用して、温度によって変化した抵抗量を検知します。

検出スイッチの種類

検出スイッチの種類は、まず検出方式の種類として「接触式」「非接触式」があります。

1. 接触式検出スイッチ

接触式検出スイッチは、物理的な力の作用によって接点を切り替える方式です。検出体が直接スイッチに接触して回路を切り替えるため、検出に間違いがないですが、物理的な接触が生じることにより検出スイッチの故障、経年劣化が起きてしまうというデメリットがあります。

2. 非接触式検出スイッチ

非接触式検出スイッチは、直接接触することなく、磁気や光を利用して検出するため、接触式検出スイッチよりも長寿命であることが特徴です。

検出スイッチには、内部回路の種類によって「a接点」「b接点」「c接点」という分類があります。

a接点
a接点は、スイッチオフ状態で回路が繋がっておらず、検出スイッチが反応すると回路がつながるタイプです。

b接点
b接点は、a接点とは逆にスイッチオフ状態で回路が繋がっており、検出スイッチが反応すると回路が切れます。

c接点
c接点は、a接点とb接点の両方の特性を持っています。入力端子1つと出力端子2つで構成されており、それぞれの出力端子に内部回路が配線され、a接点とb接点の機能を持っています。

なお、非接触式検出スイッチは、検出体が大きくなっても故障リスクが低く、耐久性に優れるため、機械の外部での使用や、水回り周辺での使用にも適しています。また、防水性のある検出スイッチを選定することで、検出スイッチ本体だけでなく、ハーネスコネクタからの水侵入による不良信号を防ぐことも可能です。

検出スイッチのその他情報

1. 検出スイッチの防水

検出スイッチは、使用環境に応じて防水性が求められる場合があります。たとえば、水回り周辺での電化製品や、車載機器で水に触れる可能性がある部分、外で使用する機械などが該当します。

2. 電化製品の防水検出

電化製品の駆動などに使用される防水の検出スイッチは、主に接触式で小型の検出スイッチです。

ただし、検出スイッチに防水タイプを選定するだけでは不十分で、ハーネスコネクタの防水性にも注意が必要です。

3. 屋外で使用する場合の防水検出

外で使用する機器では検出体が大きい場合があり、小型の検出スイッチでは故障のリスクが高くなります。そのため状況に応じて、非接触式で防水の検出スイッチを選択します。