かさ歯車

かさ歯車とは

かさ歯車

かさ歯車(英語:bevel gear)とは、円錐面上に歯を刻んだ歯車で、それぞれの軸が平行でなく角度がついている歯車を言います。回転軸の方向を変えて動力を伝達する場合に使用されます。

見た目が傘に見えることからかさ歯車と呼ばれています。歯の形により、すぐば(ストレート)かさ歯車、まがりば(スパイラル)かさ歯車、はすば(ヘリカル)かさ歯車、ゼロールかさ歯車、ハイポイドギアなどに分類されます。

かさ歯車に使用される材料は、S45Cなどの機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、SS400などの一般構造用圧延鋼材、及び鋳鉄、ステンレス鋼、非鉄金属、MCナイロン、ジュラコンなどです。

かさ歯車の使用用途

かさ歯車は、回転軸の方向を変えて動力を伝達するのに使用されます。すぐば、まがりば、はすばなどを使うかさ歯車は、両歯車の回転軸が交差します。交差する角度は、90°が一般的ですが、鋭角や鈍角の場合もあります。軸が交差しない歯車は、ハイポイドギアと呼ばれています。

身近な使用例は、手回しのコーヒーミルや手回しのハンドミキサー、ハンドドリルなどです。自動車分野ではディファレンシャルギヤ、また工作機械や印刷機械などでも用いられています。特に差動装置などでは非常に有用です。

ハイポイドギアは、複数の歯が同時にかみ合い、歯の滑りがある点がまがりばかさ歯車と異なっています。このため大トルクに耐え、騒音が小さい特徴があります。自動車や電車の駆動に多く使われます。

かさ歯車の原理

かさ歯車は互いに滑る事無く接する、ピッチ円錐面を持った歯車です。歯車はモジュール・歯数・減速比・材質・表面処理・軸穴形状・軸穴径・精度などで決まります。

すぐばかさ歯車は歯すじがまっすぐな形をしており、製作が比較的簡単です。減速比は1:5程度まで可能となっています。特に歯車の指定がない場合は、動力を伝達するかさ歯車として、一般的に使用されます。

まがりばかさ歯車は歯すじが曲線状になっていることが特徴です。歯に対する当たりの面積が大きいことから強度が高く、静かに回転し、効率も高い利点があります。ゼロールかさ歯車は、軸の交差ねじれが概ね0であるまがりばかさ歯車で、すぐばとまがりばの特徴を合わせ持つ歯車です。

歯車は動力や運動を正確に伝えることが可能ですが、原理上、騒音が発生します。騒音を小さくするためには、バックラッシュを適切にする・歯車の噛み合い率を増加させる・歯形を小型化させる・プラスチック製の歯車を使用する・潤滑を適正にするなどの対策が必要です。

歯の当たりをよくするために歯すじの方向に適当なふくらみを設けることがあります。これをクラウニングと呼びます。

かさ歯車の選び方

かさ歯車の選定時には、歯の強度及び歯面許容荷重を特に考慮します。歯の曲げ強さは、かみ合い伝達時に、歯元の強度から計算された歯の許容円周力を言います。歯のモジュールを大きくすることで大きくなります。

歯面許容荷重は、進行性ピッチングが発生しないように規定された円周力を言います。歯の接触面積で変わります。2つの円周力の内、小さい方の値に歯車のピッチ円半径を乗じて歯車の許容トルクとします。この値が実際に使用する設計トルクよりも大きくなるように選定します。メーカー技術資料に各歯車の特性が記載されています。

また、メーカーによっては、ホームページ上で使用条件を入力することで、条件に合った歯車をリストアップしてくれるものもあります。大まかな条件から仕様を絞り込む時に便利です。

かさ歯車のその他情報

かさ歯車の設計

かさ歯車を設計する際には、平歯車と違ってかみ合う歯車の歯数の組み合わせに制限があり、傘の角度などの寸法も異なるため、減速比や軸角度を仮決定し、歯車諸元を確認することが大切です。

形状と取付姿勢を仮決定した後、強度計算を行い、条件を満足しない場合は、モジュールを大きくして再度寸法計算からやり直します。歯車強度などのかみ合い計算は平歯車と近似することができます。負荷荷重が大きい時や、繰り返し荷重がかかる場合、長時間連続運転する場合などは、安全率を大きくとることで衝撃荷重や疲労に対するマージンを取ることができます。

材質選定では一般的に炭素鋼を使用し、焼き入れにより表面硬度を上げて使用しますが、用途によっては合金鋼などを使用し、焼き入れ硬度を上げているものもあります。焼き入れは一般的に歯面のみを高周波焼き入れし、それ以外の部分は調質します。

歯車の設計では、寸法、強度の計算以外にも、潤滑を考慮する必要があります。潤滑方式、給油方式を決定し、メンテナンスが容易に行えるように設計します。

参考文献
https://www.khkgears.co.jp/khk_products/Bevel.html
https://www.khkgears.co.jp/gear_technology/basic_guide/KHK372.html
https://www.khkgears.co.jp/khk_products/stock_gears_how_to_select.html

PMモーター

PMモーターとは

PMモーター

PMモーターとは、永久磁石を電磁石を回転子に組み込んだモーターです。

PMは「Permanent Magnet」の略であり、日本語訳すると永久磁石です。したがって、永久磁石同期モーターとも呼ばれます。モーターは交流電源のACモーターと直流電源のDCモーターに分類され、PMモーターはACモーターの1種です。さらに、ACモーターは誘導起電力で動くインダクションモーターと磁力による吸引力で動くシンクロナスモーター (同期モーター) に大分されます。なお、PMモーターは、シンクロナスモーターの1種です。

安価で広く使用されるモーターは、インダクションモーターです。PMモーターは、インダクションモーターと比較して高効率な点が特徴です。ただし、永久磁石などによって部品点数が多くなるため、構造が複雑となり高価です。

化石燃料使用の増加による二酸化炭素排出量増加によって地球温暖化対策の必要性が高まり、省エネルギー化が着目されるようになりました。その結果、電力を消費するモーターにも更なる高効率化が求められています。これらの背景から、幅広い分野でPMモーターの使用が検討されています。

PMモーターの使用用途

PMモーターは、産業用途や小型部品に使用されます。以下は、PMモーターの使用用途一例です。

  • エレベータの上下動用
  • ロボットアームなどの動力用
  • 電気自動車の走行用
  • 合成繊維製造機械の巻取装置用

PMモーターは高効率であり、精密な位置合わせが必要な用途が多いです。そのため、多くの場合はインバータサーボコントローラを電源として、回転数や回転角を制御して使用されます。

エレベータやロボットアームは高い位置決め精度が求められるため、PMモーターが適しています。また、近年は電気自動車が普及しつつあり、高効率なPMモーターも着目されています。

PMモーターの原理

PMモーターは固定子、回転子、ハウジングなどによって構成されます。

1. 固定子

固定子は、ニスなどを塗ったコイルが主要部品です。相が異なるコイルが回転子を囲むように構成され、電流を流すことによって磁界が発生します。発生した磁界は、電源位相の変化に伴って回転するように変化していきます。

2. 回転子

回転子には永久磁石が固定されており、固定子の磁界に引き寄せられます。固定子の磁界は回転するように変化しているため、回転子には回転するように力が加えられます。これがPMモーターの回転原理です。

3. ハウジング

固定子には電流を流す電圧を印可するため、地絡しないようにハウジングで絶縁します。また、固定子には電流によって熱が発生するので、ハウジングのフィンによって冷却されます。

PMモーターの種類

PMモーターは、SPMモーターとIPMモーターに大分されます。

1. SPMモーター

SPMモーターは、永久磁石をローターの表面に設置した製品です。SPMは「Surface Permanent Magnet」の略で、表面磁石型同期モーターとも呼ばれます。

特徴として、有効磁束量が大きくトルクリプルが小さいことが挙げられます。そのため、高性能サーボ用途には活用できますが、磁石の脱落懸念などにより高速な回転には不適です。この課題に対応するために、超磁力分布を改善することで、コギングトルクを低減させます。

2. IPMモーター

IPMモーターは、永久磁石をローター内部に埋め込んだ製品です。IPMは「Interior Permanent Magnet」の略で、埋込磁石型同期モーターとも呼ばれます。

特徴として、高速回転に適応で切ることが挙げられます。磁石の形や配置の自由度が大きいため、設計段階で最高回転数を柔軟にコントロールすることが可能です。最近では、HVやEVのモータに使用されており、冷蔵庫やエアコンにも応用されています。

PMモーターのその他情報

PMモーターの歴史

PMモーターの開発当初は、インダクションモーターと同様に全節巻方式の固定子巻線構造でした。その後、DCモーターにおいてブラシレス方式が開発されました。その巻線方式が集中巻線方式であり、PMモーターでも採用されるようになりました。

その結果、巻線抵抗によるエネルギー損失を抑えることが可能となり、さらなる高効率化及び省エネルギー化を達成しました。また、集中巻線方式のSPMモーターは、逆起電圧によって最高回転速度に限界が生じたため、IPMモータが開発されました。IPMモータにより、最高回転数を柔軟にコントロールすることが可能となりました。

このように、PMモーターは技術革新に伴い、次々と新製品が開発されて高効率化に寄与しています。

参考文献
https://www.e-mechatronics.com/mailmgzn/backnumber/201904/mame.html
https://www.orimvexta.co.jp/support/specialcontents/no5/
https://www.neomag.jp/mailmagazines/topics/letter201008.html

パワートランジスタ

パワートランジスタとはパワートランジスタ

パワートランジスタとは、動作時の許容電力が1W以上のトランジスタです。

大きな電流を用いて駆動する電気機器に使用されています。パワートランジスタの主な役割は、電流の増幅、スイッチング、交流の整流です。

扱う電流が大きいため、動作時の発熱が大きく、ケースに耐熱の金属が使用されていたり、放熱用のフィンが付随していたりする製品もあります。パワートランジスタの中でもいくつか種類があり、バイポーラパワートランジスタ、MOSFETIGBTなどが代表的です。

パワートランジスタの使用用途

パワートランジスタは、動作に大きな電流が必要な電気機器のスイッチングや電流の増幅といった用途に使用されます。代表的な使用先は、エアコン・冷蔵庫・洗濯機などの家電製品、太陽光発電、電気自動車などです。

使用先によって、許容電流や電圧、動作時の生成熱、サイズなどを考慮することが必要です。高精度に動作する必要がある製品が使用先である場合には、スイッチングの速度なども考慮して、回路を流れる電流のスイッチングや電流の増幅を行います。

パワートランジスタの原理

パワートランジスタの動作原理は、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTなど、種類によって異なります。

1. バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタとは、N型半導体とP型半導体を3層で接合している構造のトランジスタです。バイポーラトランジスタを構成している半導体からは、それぞれの半導体から端子が出ており、「ベース」「エミッタ」「コレクタ」と言います。

エミッタとコレクタに電圧を印加した状態で、ベースに電流が流れると、エミッタとコレクタ間に大きな電流が流れます。

2. MOSFET

MOSFETとは、バイポーラトランジスタと同じような構造を持つトランジスタです。端子の名前は「ソース」「ドレイン」「ゲート」と言います。

ゲートに電圧を印加すると、ソースとドレイン間に電流が流れます。高速でのスイッチングが可能なため、素早い制御が必要な製品に使用されるトランジスタです。

3. IGBT

IGBTとは、上記2つのトランジスタと同様の構造を持つトランジスタです。端子は、「ゲート」「エミッタ」「コレクタ」と言います。

エミッタとコレクタをバイポーラトランジスタから、ゲートをMOSFETから採用して組み合わせた構造です。上記2つのトランジスタの良い点を併せ持った、適用範囲が広いタイプのトランジスタです。

パワートランジスタの種類

パワートランジスタの種類には大きく分けて、「バイポーラトランジスタ」と「電解効果トランジスタ」があります。なお、単にトランジスタと言えば、一般にバイポーラトランジスタのことです。

1. バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタは電流制御素子です。半導体の重ね方によってNPN形とPNP形があります。一般的に端子は3本で、出力される電流の経路が2本 (入力と出力) と、出力電流を制御する入力が1本です。

一般的にエミッタ接地回路が使われ、ベース (B) に入力信号、コレクター (C) に+電源、エミッター (E) を接地します。バイポーラトランジスタの直流電流増幅率はβまたはhFEで表され、数十~200程度です。また、βを稼ぐためにダーリントン構造のパワートランジスタも用意されています (こちらはβが数百~数千程度) 。

2. 電界効果トランジスタ

一方の電界効果トランジスタは電圧制御素子です。NチャンネルまたはPチャンネルの構造になっています。

一般的に端子は3本で、出力される電圧の経路が2本 (入力と出力) と、出力電圧を制御する入力が1本です。一般的にソース接地回路が使われ、ゲート (G) に入力信号、ドレイン (D) に+電源、ソース (S) は接地します。

電解効果トランジスタの直流電圧増幅率は、相互コンダクタンス (gm) で表されます。スイッチング特性では、パワートランジスタよりも優れており、スイッチング電源などに多用されるスイッチング素子です。

パワートランジスタのその他情報

NPNトランジスタとPNPトランジスタの確認

出力部・電源部に使われることが多いトランジスタが故障してしまうと、回路の出力が無くなるか、不安定になることがあります。そのため、トランジスタが故障していないかどうかを調べることが大切です。

1. NPNトランジスタ
NPNトランジスタの場合 (2SCまたは2SD) は、以下を確認します。

  • ベース (B) をプラスにして、コレクタ (C) に導通し、逆方向は不通
  • ベース (B) をプラスにして、エミッタ (E) に導通し、逆方向は不通
  • コレクタ (C) -エミッタ (E) はどちらの向きも不通

これら3つすべてが成立すれば、トランジスタは大丈夫です。

2. PNPトランジスタ
PNPトランジスタの場合 (2SAまたは2SB) は逆向きになり、以下を確認します。

  • コレクタ (C) をプラスにして、ベース (B) に導通し、逆方向は不通
  • エミッタ (E) をプラスにして、ベース (B) に導通し、逆方向は不通
  • コレクタ (C) -エミッタ (E) はどちらの向きも不通

これら3つすべてが成立すれば、トランジスタは大丈夫です。尚、この試験はダーリントントランジスタには使えません。

テスターを導通レンジで使用する場合、赤色側がマイナス、黒色側がプラスとなります。テスターリードの試験電圧の極性に注意してください。また、非試験体の電源、入力線、出力線などは必ず外してから検査してください。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/transistors/tr_what2
https://www.rohm.co.jp/products/power-transistors
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-transistor
www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/course/mechatronicsB/archive/MechatroCS_No08.pdf
https://detail-infomation.com/transistor-type/

バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタとは

バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタ (英: Bipolar Transistor) とは、3端子の半導体素子のことです。

接合型トランジスタとも言われ、N型とP型の半導体がP-N-PまたはN-P-Nの接合構造を持ちます。電界効果トランジスタ (英: Field Effect Transistor) が正孔もしくは自由電子のどちらかがキャリアとして動作するユニポーラトランジスタとは異なり、正孔と自由電子両方が動作に関与することからバイポーラトランジスタと呼ばれています。

バイポーラトランジスタの使用用途

バイポーラトランジスタの主な機能は、増幅とスイッチングの2つです。

微小な信号を充分大きなレベルにする増幅回路において、特に高い増幅率を求める場合には、ユニポーラトランジスタよりバイポーラトランジスタを使った方がより有利です。高い周波数での動作もバイポーラトランジスタの方が優れています。

例えば、高い周波数成分を含むスイッチングノイズを抑制する必要がある電源レギュレータ回路において、バイポーラトランジスタを採用した回路とFETによる回路とではノイズ除去比等の特性に顕著な差異が見られます。

IC化することが難しい少量生産品や高周波領域の増幅回路では未だバイポーラトランジスタも使われていますが、電流駆動であることから、電圧駆動のユニポーラトランジスタと比べると消費電力が大きくなります。電池駆動等低消費電流が求められる製品、ポータブル機器等には使いにくい面があります。

一方、スイッチング回路は電流のON/OFF制御を目的としますが、スイッチング速度および小型化の面でユニポーラトランジスタの方が優れているため、この用途での応用は少ないです。

バイポーラトランジスタの原理

半導体はP型とN型に分類することができます。P型半導体は電子が足りない状態である正孔で満たされており、N型半導体は電子が余剰で自由電子で満たされています。

トランジスタはP型とN型半導体を組み合わせたものですが、バイポーラトランジスタの場合、P型N型P型の3つの領域から成るものとN型P型N型の3つの領域から成るものがあります。

前者をPNPトランジスタ、後者をNPNトランジスタと言います。3つの領域は各々、エミッタ、ベース、コレクタであり、各々電極が接続されていてその電極を通して電圧を印加するとともに信号電流が流れます。また、ベースは極めて薄く作られていることが特徴です。

バイポーラトランジスタの動作原理を、N型半導体でP型半導体を挟んだ構造であるNPN型トランジスタを例にして説明します。

エミッタを基準電圧 (0V) に接続しコレクタをVCC (例えば+5V) に接続した状態で、ベースにプラスの電圧を加えてベース電流Ibをエミッタに流すと、β×Ibの電流Icがコレクタからエミッタに流れます。これがトランジスタによる増幅の原理であり、バイポーラトランジスタでは電流増幅が基本です。βは電流増幅率と呼ばれ、通常100~200程度の値になります。PNP型トランジスタでは、印加する電圧の向きや電流の方向が逆ですが、増幅の原理は同じです。

スイッチング動作では、ベース電流Ibに大きな電流を流すことで、コレクタに接続された負荷に十分な電流を流すことができます。また、ベース電流を0Aにすると負荷には電流が流れません。ベース電流Ibを流す/流さないことにより負荷に流れる電流をON/OFFする、スイッチング動作を実現します。

バイポーラトランジスタのその他情報

バイポーラトランジスタの型名

1993年以前は、JIS規格によって半導体部品の型名のつけ方が規定されていました。従って型名からトランジスタの用途がある程度判断することができます。バイポーラトランジスタでは頭から3文字は次の様に規定されていました。

  • 2SA: 高周波用PNP型トランジスタ
  • 2SB: 低周波用PNP型トランジスタ
  • 2SC: 高周波用NPN型トランジスタ
  • 2SD: 低周波用NPN型トランジスタ

実際の型名は、例えば2SA372Y などと上記3文字以降も数字とアルファベットが続きます。数字は11から始まる番号で、2~4桁から成りますが、登録順に振られたもので意味はありません。最後のアルファベットは増幅率のランク分けなどを意味します。

このJIS規格は1993年に廃止されましたが、その後を継いだ社団法人 電子情報技術産業協会の規格「個別半導体デバイスの型名」でも継続して採用されています。

参考文献
https://detail-infomation.com/bipolar-transistor/x
https://jeea.or.jp/course/contents/02106/

GNSSモジュール

GNSSモジュールとは

GNSSモジュールとは、人工衛星からの信号を使って位置情報などのデータを取得するためのモジュールです。

GNSSは「Global Navigation Satellite System」の略で、全球測位衛星システムのことです。位置情報を割り出すシステムとして代表的な米国のGPS、ロシアのGLONASS、EUのGalileo、中国の北斗衛星測位システムBeiDou、日本のQZSSなどを指します。

様々な人工衛星のシステムから送られてくる信号を使用することで、より高精度の位置情報の測定を行うことができます。

GNSSモジュールの使用用途

GNSSモジュールは、車の位置や速度、進行方向の情報の測定や、スマートフォンのマップ機能などのための位置情報の取得に使用されます。また、タブレット端末、スマートウォッチ、ラップトップ、医療用途、スマート農業、高精度ロケーション、スマートトレイン、ロボティクス、自律車両、産業用オートメーション、物流および資産追跡、ドローン、農業用機械、建設重機などの用途もあります。

GNSSモジュールを選定する際は、モジュールの大きさやコスト、アンテナから受信した信号の処理の大きさなどの考慮が必要です。その他にも、スマートフォンやタブレットPCでは、落下に対する衝撃強度、車載用のGNSSモジュールでは、熱や振動強度を確保しなければなりません。

GNSSモジュールの原理

複数の人工衛星から送られる、人工衛星の位置と時間の情報を信号受信部で受信します。受信した時刻と信号が送信された時刻、信号の進行速度から、人工衛星とGNSSの距離を割り出し、それを複数の信号から行うことで、位置情報が判別可能です。

一方、人工衛星から送られてくる信号は微弱で、障害物があれば信号が届かなくなったり、受信環境周辺の影響でノイズが入ったり、正確な位置情報が割り出せなかったりする場合も多いです。そこで、正確な位置情報を割り出すために、高度な信号処理を実装している製品もあります。

GNSSモジュールの構成

GNSSモジュールの構成要素は、受信部、ローノイズアンプ、GNSSレシーバなどです。人工衛星から発信されている微弱な信号を信号受信部で受信し、ローノイズアンプで増幅させます。

その増幅された信号をGNSSレシーバで処理を行い、位置情報を算出します。その位置情報は、GNSSモジュールを接続している機器に送信され、位置情報を使ったアプリケーションに利用されます。

GNSSモジュールのその他情報

1. GNSSモジュールの主な誤差要因

GNSSモジュールは、人工衛星からのシグナルをキャッチすることで、クオリティの高い位置情報の測定を行うことができますが、衛星軌道、衛星クロック、電離層遅延、対流圏遅延、受信機 (アンテナ) 、マルチパスなどのファクターが原因による誤差が生じることもあります。各ファクターによって生じる誤差の理由は下記の通りです。

衛星軌道ファクター
測位計算は、人工衛星からエフェメリスデータ (衛星の軌道データ) 、アルマナックデータ (衛星の軌道歴) 情報をキャッチすることで行います。エフェメリスデータは2時間に1回、アルマナックデータは6日に1回アップデートされる情報です。そのため、両データがアップデートされていない期間は、直近のデータをもとに位置を推定する必要があるため、誤差が生じます。

衛星クロックファクター
人工衛星からのデータには、衛星クロック情報が含まれています。衛星クロック情報が人工衛星から発信されてから、受信機でキャッチするまでの時間にラグが生じます。

電離層遅延ファクター
電離層は、上空50kmから1,000km上空に存在している、太陽活動の影響により気体の種類や密度にばらつきが生じている領域です。人工衛星からの電波はこの電離層を通過するとき、光の屈折によって伝達速度に遅延が生じます。

対流圏遅延ファクター
対流圏は、地上から上空11kmの間に存在する領域です。人工衛星からの電波が対流圏を通過する際も電離層と同様、光の屈折により伝達速度に遅延が生じます。

受信機 (アンテナ) ファクター
アンテナで人工衛星の情報を受信した後に、ケーブル、回路、電波上の遅延、測位計算演算の速度やメモリーのアクセス速度等様々なファクターが影響し、誤差が生じます。

マルチパスファクター
マルチパスは、電波が反射物に跳ね返ることで、直接入射する電波よりも遅れて入射する電波のことです。人工衛星からの電波の場合、直接入射する電波よりも、マルチパスの電波出力の方が大きくなるケースがあります。この場合、出力の大きいマルチパスのデータを使って、測位計算が行われてしまうことがあります。

2. GNSSモジュールの測位方式

GNSSモジュールの測位方式は、単独測位と相対測位の2つに大別されます。

単独測位
単独測位は、4機以上の複数の衛星からのシグナルを1つの受信機で受信し、測位を行うものです。単独測定では、衛星クロックファクター誤差などが原因で、10~20mの測位精度が限界です。

相対測位
相対測位は、正確な座標が求められている基準点と測定したい点で同時に単独測位を行います。この場合、複数の受信機の情報を利用するため、単独測位よりもハイクオリティな測位が可能です。

参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/reajshinrai/37/5/37_KJ00010077024/_pdf
https://www.adt.co.jp/works/2017/10/24/16
https://www.furuno.com/jp/gnss/technical/tec_what_gps

アナログフロントエンド

アナログフロントエンドとは

アナログフロントエンドとはセンサなどの信号を検出するデバイスとデジタル信号処理のデバイスをつなぐアナログ回路セットです。

Analog Front Endの頭文字から、AFEと呼ぶこともあります。アナログフロントエンドの主な役割はセンサから出力したアナログ信号をデジタル回路とつなぐために調整することであるため、信号調整回路と呼ばれることもあります。

センサなどで検知したアナログ信号は非常に弱く、雑音成分が数多く含まれている場合が多いため、このアナログ信号のノイズ除去や増幅などの調整をする必要があります。

アナログフロントエンドの使用用途

アナログフロントエンドの使用用途は、各種センサモジュールの制御に用いられます。

現在はIoTの時代と呼ばれることがしばしばあり、数あるセンサモジュールの中でもIoTセンサモジュールはIoTの時代に重要な役割を担います。基本的なシステム構成は、物理現象をアナログ値としてセンサを用いて検出し、デジタル信号に変換した後にマイコンでデジタル処理してから無線通信チップでクラウドにアップするという流れです。

この構成の中でセンサや無線通信チップとともに重要な役割を担うものがアナログフロントエンドです。IoTセンサモジュールの性能を高めるためには、センサの特性を極力引き出しながらデジタル処理ができるようにAFEを適切に設計する必要があります。

アナログフロントエンドの原理

アナログフロントエンドの原理は、センサ出力値のアナログ情報とデジタル回路を正確につなげるための各種の回路的な工夫にあります。具体的には、一般のセンサ出力はノイズが多く信号自体が微弱であるためノイズ除去や信号増幅用のフィルタやアンプを用いる必要があります。必要な回路はAFEに集積された後アナログ信号からデジタル値へ変換用のA/Dコンバータと一体化されます。

A/DコンバータはデルタΣ変調を用いたタイプが一般に用いられ、回路規模は扱うデータ量に応じて16bitから32bit程度までが通例です。アンプ回路にはインスツルメンテーションアンプやオペアンプ、トランスインピーダンスアンプなどが挙げられ、広範囲なセンサ信号の調整のため何段階かの切り替え機能や利得調整機能などを有しています。

AFE自体はSPIなどのシリアル通信制御のためのデジタル回路で動作する必要があり、そのためのシリアルインターフェイス用デジタル回路も具備されています。

アナログフロントエンドのその他の情報

半導体チップは高性能な場合が多く、アナログフロントエンドには自由度が高いディスクリート品をはじめ、多くの機能を集積した統合品まであります。複数の機能が集積していると比較的簡便に使用可能です。

高い集積度のアナログフロントエンドのチップはアナログフロントエンドを圧力センサ、温度センサなどに集積したものなど高機能なものも市場に多く出てきています。アンプやA/Dコンバータなどを1チップにまとめ、センサ素子の特性によって、AFE部の特性や電流源の特性を調整できる機能なども備えています。この理由は一般にセンサ素子は温度や強度に応じた各種出力ばらつきを有する事例が多いためです。その補正機能もAFEとしては非常に重要な特性になります。

また、光学センサ用アナログフロントエンドでは光学素子と統合し、パッケージとして入手できるものや光学素子を含まないAFE機能のみで接続する光学素子を自由に選択できるものなど多種多様なバリエーションがあります。

参考文献
https://ednjapan.com/edn/articles/1305/20/news010.html
http://sp.chip1stop.com/interview-cypress-chip/
https://literature.rockwellautomation.com/idc/groups/literature/documents/wp/pflex-wp001_-ja-p.pdf
https://ednjapan.com/edn/articles/1305/20/news010.html

高さ測定器

高さ測定器とは

高さ測定器とは、機械加工部品などに対して、ある基準面からの高さ方向の距離を計測するための測定器です。

一般的には、ハイトゲージとも呼ばれています。高さ測定器は測定対象物の高さを測定するだけでなく、ケガキをすることも可能です。定盤の上など、高さ測定器が置かれている水平面上を基点として、この基準点からの高さを測定します。

測定時は、バーニヤと呼ばれる副尺を使用し、精密に高さを測定することができます。また、高さ測定器は、スクライバと呼ばれる測定子を使用します。スクライバは硬い材質で先端が尖っているので、測定物に定盤と平行な線を、正確な高さでケガキが可能です。

高さ測定器の使用用途

高さ測定器は主に、金属加工製品の製造品質確認や製品開発の現場で使われます。例えば、加工した金属製品の高さが図面規格内であるかどうかを確認するために、高さ測定器が用いられます。

高さ測定器を用いれば、定盤などの平面上からの高さを正確に測ることが可能です。バーニヤと呼ばれる副尺を用いて目盛を読み取るため、0.01mm単位で高さを測ることができます。簡単な操作で高さを精密に測定できるのが特徴で、測定室からラインサイドまで幅広い場面で使用可能です。

また、高さ測定器は先端が硬く鋭い材質でできており、高さ方向の線をけがくこともできます。ケガキは先端が動かないように、スライダの止めねじをしっかりと締めて固定して行うことが重要です。

高さ測定器の原理

高さ測定器は、本体ベース、目盛が描かれている本尺、本尺を取り付けた柱、微小な読み取りを行うバーニヤ、高さ測定のため上下動させるスライダ部、測定子にあたるスクライバで構成されています。

高さ測定器は測定対象物とともに、定盤の上に置いて使用する測定器です。測定作業では、まず上からスライダを下ろしていき、スクライバ底面を測定物に接触させます。この高さが測定値になります。数値の読み取りは、本尺目盛とバーニヤ目盛の重なった箇所を読み取りますますが、目盛の読み方はノギスとよく似ており、少し慣れが必要です。

正確に測定を行うには、スクライバに必要以上の測定力をかけず、目盛は正面から読むことが重要です。また、ベース底面とスクライバが平行になっている必要があります。スクライバの固定が不十分であったり、定盤などの平面度が確保されなかったりする場合、安定した測定ができません。

高さ測定器は長年使用していると、経年変化などにより柱が傾いてくることがあります。スクライバを取り付ける箇所にてこ式ダイヤルゲージなどを取り付け、直定規などの側面に当てた状態でスライダ部を上下させて値の変化を見ます。柱が傾いているときは、調整もしくは修理が必要です。

高さ測定器のその他情報

1. 高さ測定器の誤差要因

高さ測定器での測定では、さまざまな原因により測定誤差が発生します。例えば、測定力のかけ過ぎ、測定物と測定器の温度差による熱影響、目盛を読み取る角度による視差の影響などがあります。特に測定器の構造による誤差が避けられないのは重要なポイントです。

測定器の構造から生じる誤差の主な原因は、柱の曲がりとスクライバの傾きから生じるものです。スクライバの傾きは、その測定方法と構造の上から避けることができません。高さ測定器は柱に取り付けたスライダからスクライバが伸びているため、スクライバの取付時に傾きが生じるだけでなく、経年変化により部品に隙間やガタが生じ、それがスクライバを傾かせる原因になります。

また、スクライバや取り付けるための部品の自重によるたわみも、スクライバの傾きの原因になります。これらの構造上の誤差は、新品であっても一定量は生じています。その誤差が測定器の分解能より小さい場合は懸念する必要も少ないですが、経年変化により誤差が大きくなった場合は注意が必要です。

そのため、日常点検だけでなく、校正事業者として認証を受けたとところで校正を行うなど、定期的な管理が欠かせません。

2. 高さ測定器使用上の注意

本尺、ベース底面は使用前と使用後に清掃を行い、キズや錆、油などによる摺動の悪化を防ぐことが必要です。メーカや製品によっては、スクライバの測定面と高さ測定器のベース底面の平行度を規定しているものもあります。使用時の定盤の上や保管場所にゴミや切粉などがあると、ベース底面にキズやカエリが生じ、平行度の悪化原因になります。

急激な温度変化が生じる場所に保管することも、望ましくありません。熱影響による膨張と収縮の繰返しにより、精度の悪化だけでなく測定器そのものの変形の原因となります。

窓や壁の近くで断熱性能が不十分な箇所にあれば、気温差による熱影響を受けます。室内で直射日光が当たらない場所である場合も、決して油断はできません。

トータルカウンタ

トータルカウンタとは

トータルカウンタとは、動作の回数や物体の数をカウントして表示する機器です。

カウントした数値を表示する機能のみのカウンタであり、工場機器の生産台数や動作回数を目視確認する用途で使用されます。カウントはリセットボタンなどでリセットするまで保持します。

カウント数に応じた制御出力は持ちません。カウント数を設定して出力したい場合はプリセットカウンタを使用します。

トータルカウンタの使用用途

トータルカウンタは産業用途に広く使用される機器です。以下はトータルカウンタの使用用途一例です。

  • 真空遮断器の動作回数確認
  • 大型脱水装置の運転回数確認
  • プレス機やコンベアの搬送バッチ数確認

基本的にはバッチで運転する産業機器に使用します。真空遮断器などは運転回数によって寿命や整備頻度決める場合があるため、トータルカウンタが付属することが多いです。また、巨大遠心分離機やフィルタプレスなどは運転回数をカウンタでカウントする場合が一般的です。

トータルカウンタの原理

トータルカウンタのカウント方式は2種類あります。

電気回路の接点信号やパルスでカウントする電子カウンタと、カウンタ内に内蔵されている電磁石の磁力によってカウントする電磁カウンタです。用途などに応じて使い分けます。

1. 電子カウンタ

ロータリーエンコーダ光電スイッチなどの検出装置パルス信号を入力するカウンタです。デジタル回路データを保存するため、内部では2進数として処理されます。表示は7セグメント表示が一般的です。

パルス幅などの出力感度や不感時間などの設定が可能な製品も多く販売されています。電磁カウンタに比べて検出速度も高速です。ただし、多くの場合は動作に電源が必要です。バッテリや電池で動作する製品も販売されています。

2. 電磁カウンタ

検出装置が発するパルスの電気信号によって、カウンタに内蔵されている電磁石が動作させるカウンタです。電磁石の力で文字盤を動かしてカウントします。

機械的な動作によってカウントするため、外部電源が不要な製品が一般的です。検出装置からのノイズの影響を受けにくい点が特徴です。ただし、カウンタの応答性については、電子カウンタに比べて遅くなります。

トータルカウンタの選び方

トータルカウンタは入力方式や電源方式などに応じて選定します。

1. 入力方式

入力方式はカウントに使用する入力種類です。一般的には無電圧接点入力が使用されます。

トランジスタ接点を入力できるカウンタも販売されています。その場合、トランジスタの入力電源を選定する必要があります。

2. 電源方式

トータルカウンタ自体に電源が必要な場合は供給する必要があります。電池式であった場合には外部電源を必要としません。ただし、電池式の場合は使用時間に応じて電池が切れてしまう場合もあります。

電源を供給する場合、主な電源仕様はDC24V、AC100V、AC200Vなどです。商用電源をそのまま使用したい場合はAC100VやAC200Vを選定します。制御電源としてDC24Vを有する機器の動作カウンタとして使用する場合はDC24V仕様を選択する場合もあります。

3. 取付方法

トータルカウンタは制御盤盤面に表面取付することが多い製品です。カウンタ裏面には端子台などが取り付けられ、制御盤などの内線と接続されます。

トータルカウンタに合う穴を開口してねじを切り、ねじなどで固定します。制御盤内部保護のために接続表面にはゴムパッキンが付属します。パッキンを介して固定することで気密性が増し、制御盤内への水滴侵入を予防します。メーカーによっては取付枠や取り付け用金具が別途販売されています。

4. リセット方法

トータルカウンタにはリセットボタンが付いており、カウントをリセットしたい場合はリセットボタンを押すことでリセット可能です。無電圧接点を接続してリセット可能な製品も販売されています。接点出力でリセットさせたい場合はリセット接点付きの製品を選定します。

参考文献
https://www3.panasonic.biz/ac/j/service/tech_support/fasys/glossary/component/counter/index.jsp
https://www.fa.omron.co.jp/guide/technicalguide/11/95/index.html

ミニバイス

ミニバイスとはミニバイス

ミニバイスは、「バイス」の中でも小型なものを指します。「バイス」は、作業時に加工物を固定するための道具であり、様々な加工作業で使用されています。ミニバイスは、主に手作業で行う加工の際に使用されており、最近では100円ショップなどでも購入することが可能となっています。バイスそのものの素材としては、金属から樹脂のものまで幅広く存在し、素材によって保持力が異なります。

ミニバイスの使用用途

やすりがけや、切断作業などの加工時に、加工対象物を固定するために使用されます。手で押さえて加工できる作業であれば必要ありませんが、高速回転する機材を使っての加工など、加工するものを手で持った状態での作業ができない場合には、必須の工具です。バイスは、加工物そのものを固定するだけなので、実際の使用時には、ねじやクランプなどで、バイスそのものを加工台に固定する必要があります。ミニバイスは、この中でも小型なものを指し、主に手作業での加工を行う際に使用されることが多いです。

ミニバイスの原理

「バイス」も「ミニバイス」も、ねじを回すことで直線運動を行う機構で構成されており、対象物を左右から挟み込むことで固定を行います。ねじの締め付け力によって固定を行うため、柔らかいものを固定する際は、対象物が破損しないように注意する必要があります。一般的に、金属製のバイスと樹脂製のバイスが存在しますが、固定するものも、バイスの素材に合わせて「金属の加工は金属製のバイス」、「樹脂の加工は樹脂製のバイス」という形で使用されることが多いです。また、金属製のバイスの中には、対象物を固定する面に「V溝」が彫られており、棒状の物などを固定しやすくなっているものも存在します。

また、バイスには、基本的に固定用の穴や長穴が開いており、これを利用してねじで加工台への固定を行うことが必要です。ねじでの固定ができない場合には、別なクランプを使用して固定することもあります。これは、バイスそのものを固定しておかなければ、作業中にバイスごと加工対象物が動いてしまうためです。特に、ドリルやリューターなどの高速回転するものなどで加工を行う場合、思わぬ怪我につながる可能性も高いため、注意が必要となります。

参考文献
https://www.kousakukikai.tech/vise/
https://www.monotaro.com/s/pages/cocomite/055/

ミキシングバルブ

ミキシングバルブとは

ミキシングバルブ

ミキシングバルブとは、温水と水を混合させて給湯温度をフレキシブルに制御する温度調整弁です。

従来から、ガス給湯器や電気温水器などに使用されています。昨今ではオール電化住宅の普及により、省エネ性の高い通称エコキュートと呼ばれるCO2自然冷媒ヒートポンプ給湯機などに採用されています。

温水と冷水を接続するだけで、簡単に給湯が可能です。また、温水および冷水の圧力変動に対して追従性がよく、希望の適温でお湯を供給することができます。

ミキシングバルブの使用用途

ミキシングバルブは、さまざまな使用用途で利用されます。

1. シャワーの水栓

日用品として広く使用される用途としてはシャワーの温度調整です。シャワーの水栓にはミキシングバルブが使用され、冷水と温水を適切な比率で混合して快適な温度のシャワー水を供給します。

2. 水回りの水栓

家庭の水回りには広く使用されており、浴槽の水栓も用途の1つです。洗面台の水栓や洗濯機の給水口にも使用されることが多いです。温水と冷水を調整し、使いやすい温度の水に調整します。

3. 暖房システム

暖房システムにもミキシングバルブが使用されることがあります。冷水と温水を混合し、必要な温度範囲に熱水を供給します。床暖房システムやラジエーターなどで使用される場合が多いです。

4. 食品産業・塗装業

食品産業や塗装業においても、広く使用される機器です。食品産業では飲料の原料を正確に混合するために使用されるほか、調味料やソースの製造などでも利用されます。塗装業では異なる色や化合物を正確な割合で混合し、一貫性のある仕上がりにします。

ミキシングバルブの原理

ミキシングバルブは、複数の入口ポートから供給される異なる流体を制御します。冷水と温水のような異なる温度・圧力の流体が入力されることが多いです。

弁体などの内部機構を操作することで、流体の通過量や流量を制御します。ハンドルやレバーの動きによって、弁体が開閉し、流体の通過が制御されます。ミキシングバルブの場合、2つの入力箇所に弁がある場合が一般的です。

ミキシングバルブ内のミキシングチャンバーでは、異なる流体が混合されます。入口から供給された流体をチャンバー内で混合し、一定の比率で混合された流体が出口ポートから出力されます。冷水と温水などの異なる温度の流体を混合することによって所望の温度を得ることが可能です。

また、異なる圧力の流体を入力した場合でも、一定の出力圧力を維持することができます。入力ポートの圧力や流量を調整し、出力ポートで安定した圧力とします。

ミキシングバルブの選び方

ミキシングバルブを選ぶ際は、さまざまな要素を考慮することが必要です。以下はミキシングバルブの選定する際に考慮するべきポイントです。

1. 耐圧性能

耐圧性能はミキシングバルブが耐える最大圧力です。耐圧性能が高い製品は高圧流体に使用可能ですが、高価な上に接続口が大きくなる場合が多いです。使用する場面に見合った製品を選定します。

2. 材質

材質も考慮するべき要素です。一般的には耐食性や耐久性はミキシングバルブの材質に応じて決定されます。金属製の製品がほとんどです。

また、金属の中でも青銅やステンレス、鋳鉄などの種類があります。青銅は銅と錫の合金で、鋳造や加工が比較的容易でコストも低いです。ステンレスは耐食性・耐久性が高い反面コストが高く、鋳鉄は低コストな反面耐食性が低いです。

3. 耐熱温度

耐熱温度はミキシングバルブが耐える温度を指します。一般的には温水の混合を目的とする製品が多いため、90℃程度の耐熱温度の製品が大半です。仕様に合わせて選定します。

耐熱温度の他に、設定可能温度なども存在します。設定可能温度は出力として取り出すことができる温度の範囲です。その幅が広い製品が優れていますが、入力流体の温度に依存する場合が多いです。

4. 接続口径・方法

接続口径や接続方法を選定する必要があります。接続方法はフランジ接続やねじ込み接続が存在します。ねじ込み接続の製品が多いです。

また、接続口径は接続方法に応じて種類が存在します。フランジ接続の場合はミリメートル呼称されることが多く、ねじ込み接続の場合はインチ呼称されることが多いです。

参考文献
https://www.venn.co.jp/products/temperature_regulating.html
https://www.miyawaki-inc.com/hot_water/m