パワートランジスタ

パワートランジスタとはパワートランジスタ

パワートランジスタとは、動作時の許容電力が1W以上のトランジスタです。

大きな電流を用いて駆動する電気機器に使用されています。パワートランジスタの主な役割は、電流の増幅、スイッチング、交流の整流です。

扱う電流が大きいため、動作時の発熱が大きく、ケースに耐熱の金属が使用されていたり、放熱用のフィンが付随していたりする製品もあります。パワートランジスタの中でもいくつか種類があり、バイポーラパワートランジスタ、MOSFETIGBTなどが代表的です。

パワートランジスタの使用用途

パワートランジスタは、動作に大きな電流が必要な電気機器のスイッチングや電流の増幅といった用途に使用されます。代表的な使用先は、エアコン・冷蔵庫・洗濯機などの家電製品、太陽光発電、電気自動車などです。

使用先によって、許容電流や電圧、動作時の生成熱、サイズなどを考慮することが必要です。高精度に動作する必要がある製品が使用先である場合には、スイッチングの速度なども考慮して、回路を流れる電流のスイッチングや電流の増幅を行います。

パワートランジスタの原理

パワートランジスタの動作原理は、バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTなど、種類によって異なります。

1. バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタとは、N型半導体とP型半導体を3層で接合している構造のトランジスタです。バイポーラトランジスタを構成している半導体からは、それぞれの半導体から端子が出ており、「ベース」「エミッタ」「コレクタ」と言います。

エミッタとコレクタに電圧を印加した状態で、ベースに電流が流れると、エミッタとコレクタ間に大きな電流が流れます。

2. MOSFET

MOSFETとは、バイポーラトランジスタと同じような構造を持つトランジスタです。端子の名前は「ソース」「ドレイン」「ゲート」と言います。

ゲートに電圧を印加すると、ソースとドレイン間に電流が流れます。高速でのスイッチングが可能なため、素早い制御が必要な製品に使用されるトランジスタです。

3. IGBT

IGBTとは、上記2つのトランジスタと同様の構造を持つトランジスタです。端子は、「ゲート」「エミッタ」「コレクタ」と言います。

エミッタとコレクタをバイポーラトランジスタから、ゲートをMOSFETから採用して組み合わせた構造です。上記2つのトランジスタの良い点を併せ持った、適用範囲が広いタイプのトランジスタです。

パワートランジスタの種類

パワートランジスタの種類には大きく分けて、「バイポーラトランジスタ」と「電解効果トランジスタ」があります。なお、単にトランジスタと言えば、一般にバイポーラトランジスタのことです。

1. バイポーラトランジスタ

バイポーラトランジスタは電流制御素子です。半導体の重ね方によってNPN形とPNP形があります。一般的に端子は3本で、出力される電流の経路が2本 (入力と出力) と、出力電流を制御する入力が1本です。

一般的にエミッタ接地回路が使われ、ベース (B) に入力信号、コレクター (C) に+電源、エミッター (E) を接地します。バイポーラトランジスタの直流電流増幅率はβまたはhFEで表され、数十~200程度です。また、βを稼ぐためにダーリントン構造のパワートランジスタも用意されています (こちらはβが数百~数千程度) 。

2. 電界効果トランジスタ

一方の電界効果トランジスタは電圧制御素子です。NチャンネルまたはPチャンネルの構造になっています。

一般的に端子は3本で、出力される電圧の経路が2本 (入力と出力) と、出力電圧を制御する入力が1本です。一般的にソース接地回路が使われ、ゲート (G) に入力信号、ドレイン (D) に+電源、ソース (S) は接地します。

電解効果トランジスタの直流電圧増幅率は、相互コンダクタンス (gm) で表されます。スイッチング特性では、パワートランジスタよりも優れており、スイッチング電源などに多用されるスイッチング素子です。

パワートランジスタのその他情報

NPNトランジスタとPNPトランジスタの確認

出力部・電源部に使われることが多いトランジスタが故障してしまうと、回路の出力が無くなるか、不安定になることがあります。そのため、トランジスタが故障していないかどうかを調べることが大切です。

1. NPNトランジスタ
NPNトランジスタの場合 (2SCまたは2SD) は、以下を確認します。

  • ベース (B) をプラスにして、コレクタ (C) に導通し、逆方向は不通
  • ベース (B) をプラスにして、エミッタ (E) に導通し、逆方向は不通
  • コレクタ (C) -エミッタ (E) はどちらの向きも不通

これら3つすべてが成立すれば、トランジスタは大丈夫です。

2. PNPトランジスタ
PNPトランジスタの場合 (2SAまたは2SB) は逆向きになり、以下を確認します。

  • コレクタ (C) をプラスにして、ベース (B) に導通し、逆方向は不通
  • エミッタ (E) をプラスにして、ベース (B) に導通し、逆方向は不通
  • コレクタ (C) -エミッタ (E) はどちらの向きも不通

これら3つすべてが成立すれば、トランジスタは大丈夫です。尚、この試験はダーリントントランジスタには使えません。

テスターを導通レンジで使用する場合、赤色側がマイナス、黒色側がプラスとなります。テスターリードの試験電圧の極性に注意してください。また、非試験体の電源、入力線、出力線などは必ず外してから検査してください。

参考文献
https://www.rohm.co.jp/electronics-basics/transistors/tr_what2
https://www.rohm.co.jp/products/power-transistors
https://article.murata.com/ja-jp/article/what-is-transistor
www.mech.tohoku-gakuin.ac.jp/rde/contents/course/mechatronicsB/archive/MechatroCS_No08.pdf
https://detail-infomation.com/transistor-type/

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