サイリスタレギュレータ

サイリスタレギュレータとは

サイリスタレギュレータとは、半導体整流素子のひとつであるサイリスタの性質を用いたレギュレータであり、ある回路制御に入力信号に応じたスイッチの機構を持たせたいときに使用する素子です。

一般的に回路設計の際のリレー部品として組み込まれるサイリスタレギュレータですが、その挙動に似たものとして、ダイオードとトライアックがあります。実装したい処理に応じて、入力信号に対して異なる出力をするこの3種類のモジュールを使い分けることで、様々な入力に対して得たい出力を制御することが可能です。

サイリスタレギュレータの使用用途

サイリスタレギュレータは後述するように、スイッチとしての役割を担っています。一度導通するとその時に生じた電流がなくなるまでは導通し続けるというサイリスタの特長を生かした回路設計によって、温度制御などを精密に行うことが可能です。

例えば、精密空調などの制御では、温度を高周期でモニターし、その温度に応じてヒーターのオンオフを制御する必要があります。そのような制御を一回の接点開閉だけで表現しようとしたときに、サイリスタレギュレータを用いることで簡単に実装することができます。

サイリスタレギュレータの原理

サイリスタレギュレータの内部には、ダイオードにゲート端子と呼ばれる端子が付加されたサイリスタが使用されています。ダイオードの内部構造は、n型半導体とp型半導体が交互に層状に接続されており、アノード側からカソード側へ電圧がかかった場合のみに導通します。この特性を利用して、一方向への電気回路の伝送スイッチとして用いることが可能です。

一方、サイリスタにはダイオードの1つのp型半導体部分にゲート端子が付加されており、回路内にアノード側からカソード側へ正のバイアスがかかった状態でかつゲート電流が流れない限り導通しないという特長を持ちます。一度ゲート電流が流れれば、ダイオードと同じく導通した状態になり、次にアノード側からカソード側へのバイアスが負になるか、ゲート電流が0になるまでは導通し続けます。

電流の導通によるスイッチングの原理のため、非常に応答性が高いです。この性質を活かし、高頻度にゲート電流をオンオフすることで、ヒーターのフィードバック制御を行うことが可能です。

サイリスタレギュレータの種類

サイリスタレギュレータの制御方式には、位相制御方式と分周制御方式の2種類があります。

1. 位相制御方式

位相制御方式は、サイリスタのゲート端子に電流が流れてONになる時間 (位相) を変化させることで負荷への電力供給時間を変える方式です。位相制御方式のデメリットとしては、高い電圧レベルでのスイッチON時にノイズの発生があります。

2. 分周制御方式

分周制御方式は、一定周期内で通電時間 (ON-OFF時間) の比を制御する方式で、ゼロクロス制御とも呼びます。交流電圧が0Vになったところでサイリスタ素子にトリガ電圧を印加して電力調整します。サイリスタ素子がONになる点もOFFになる点も電圧0Vであるためノイズの心配がありません。

サイリスタレギュレータのその他情報

1. 単相サイリスタレギュレータ

交流回路は正負双方向の電流が流れますが、サイリスタは一方向の電流しか流せません。そのため、単相のサイリスタレギュレータの場合は2個のサイリスタを逆向きに並列接続した構成です。

2. サイリスタレギュレータを用いた温度制御

サイリスタレギュレータを用いた制御の1例として、アルミニウムの熱処理炉の温度制御を紹介します。電気炉を使用しており、ヒーターに電気を通すことで加熱しますが、その制御方法で使用しているのがサイリスタレギュレータです。

昔の電気炉ではONとOFFの制御であり、炉内の温度設定が500度だとすると、500度に達した時点でヒーターがOFFになる方式でした。そのため、炉内の温度は495度から505度程度の温度範囲をとり、温度記録計を見てもONとOFFを繰り返すためギザギザした記録になっていました。

それに対して、サイリスタレギュレータでの制御は、500度に近づくにつれてヒーターの出力を弱めることが可能です。50%程の出力となって、500度を超えないように調整されます。温度範囲が499~501度と高い精度での制御が可能です。

参考文献
https://www.chino.co.jp/support/technique/regulator_index/

搬送装置

搬送装置とは

搬送装置 (英: conveyance device) とは、搬送工程や製造工程で部品や製品を移動させる装置です。

搬送装置は重いものでも、安全に低コストで移動させることができます。そのため、大型の工場から半導体製造の小さなワークまで、各所で利用されます。搬送装置を利用することで生産性が向上し、人的ミスを減らすことが可能です。

搬送装置の種類は様々で、製造工程で良く利用されるコンベア式や無人搬送車、昇降装置、ロボットなどがあります。適用するワークに応じて搬送装置の様式を選択します。

搬送装置の使用用途

搬送装置には様々な搬送方式があり、主に製造工程間の搬送に利用されています。鋼鉄材、自動車など重量の重いものはほとんどが搬送装置を利用して製造されています。また、食品業界では製品の清浄性を保つため、工場の生産にはコンベア式の搬送装置が多く採用されており、工程と工程の間を人の手を介すことなく製品を移動させています。

半導体業界においても、加工中の半導体を汚染から防ぐため、清浄度を維持しながら搬送できるコンベア式が採用されるケースが一般的です。

搬送装置の原理

1. コンベア式

コンベア式搬送装置は、複数のローラー、ベルト、吊り下げチェンなどを用いて搬送する装置です。回転するローラーやベルトの搬送装置の上に部品や製品を置いてに搬送します。また、空気でベルトを支えて、振動を無くした空気浮上式のコンベアもあります。

2. 昇降式

昇降式搬送装置は、垂直方向の荷揚げ・荷下ろしを行います。簡易リフト、エレベーター、昇降機などです。基本的には搬送装置なので、人が乗り込むことはできないものが多いです。装置によっては、設置するために建築基準法や労働安全衛生法等を確認する必要があります。

3. 無人搬送車

無人搬送車は、床面に磁気テープや磁気棒を設置しておき、荷物を積んだ台車が磁気テープ等から発せられる磁気に誘導されて無人でも進むようにした装置です。金型等の重量のある物体も運ぶことができます。無人搬送車はAGVとも呼ばれ、24時間操業の工場や病院、物流センサー等でも導入されています。

搬送装置の種類

製造業における搬送装置は、コンベア、昇降機、無人搬送車など搬送工程の搬送装置と、生産ラインでのワークの搬送・取り出しなど製造工程に組み込まれる搬送装置に大別されます。

1. 搬送工程による分類

搬送工程では、ワークを天井吊り下げコンベア、ローラー・ベルトコンベア、スクリューコンベア、昇降機、無人搬送車などの搬送装置が使われます。吊り下げる方法では、ものによって真空吸着や電磁吸着を使う場合もあります。

また、コンベアなどの走行の駆動は、チェン駆動、空気圧・油圧駆動などです。重量物の移動では、空気圧や電磁力により浮かす方法も使われます。

2. 製造工程による分類

製造工程では、通常のコンベア方式の他、ロボット搬送、アクチュエータなどの搬送装置が使われます。ガントリーローダーやオートローダーは、工作機械へのワークの搬入と加工後のワークの取り出しに使うものです。

プレス加工にも搬送装置が使われます。プレス加工機間に搬送装置を組み込み、ワークを次の工程へ搬送します。半導体などの製造には、厚さが異なるウェーハの搬送用や、非常に薄いウェーハにも対応できる搬送装置があります。

搬送装置のその他情報

1. 搬送装置のメリット

搬送作業の効率化・生産性の向上
搬送装置の導入により、種々の形状・重量などのワークを人手をかけずに、確実に早く正確に搬送できます。作業の効率化、生産性の向上などに大きな効果が得られます。

ワークの搬送などの単純作業に、貴重な人材を使うことから解放して、生産性の高い業務へのシフトが必須です。

品質の向上
搬送するワークや部品は、ピッキングが困難なものや繊細で破損しやすいものなど多岐です。また、半導体製造でのウェーハの搬送など人が運搬するのは不適なものもあります。

搬送装置により、ワークの搬送時に、落下や破損などのリスクが減少でき、また、確実な加工作業がやりやすくなり、品質が向上します。

自動化への1歩
搬送装置は、生産ラインの自動化・省人化を進める場合の第1歩になります。更に、搬送装置を含めた工場設備とIoT (もののインターネット) を活用して、いわゆるスマートファクトリの実現につながります。

2. 搬送装置の事例

小半径旋回台車
小半径旋回台車は、狭隘な工場での搬送などに使用します。最小半径は750mm程度です。

ごみコンテナ移動・格納設備
ごみコンテナ移動・格納設備は、ごみ収集センターなどでコンテナを移動・保管する搬送装置です。

基板搬送コンベア
作業者コンベアでは、コンベア上で基板を一時停止して、作業者が目視確認します。また、冷却コンベアでは、冷却ファンにより、基板を冷却します。

参考文献
https://www.jaroc.com/products/up_and_down/slidelifter/
https://www.sakaiwork.jp/production/transport/003.html

32ビットマイコン

32ビットマイコンとは

32ビットマイコンとは、命令コードの最長ビット幅が32ビットで、扱われるデータのビット幅が4~32ビットのマイクロコントローラです。

マイコンは半導体チップとして製造されており、32ビットマイコン以外に4ビットマイコン、8ビットマイコン、16ビットマイコンがあり、32ビットマイコンはその最上位に位置し、非常に高い処理能力を備えています。

32ビットマイコンの使用用途

様々な家電製品に「マイコン搭載」と記されているように、産業用を含め現代の電気製品には極めて広範囲にマイコンが搭載されています。動作状態を表すLED表示部分は4ビットマイコン、白物家電の制御には8ビットマイコン、リモコン製品には16ビットマイコンなどのように必要性能に応じて用いられています。

最上位の処理性能を持つ32ビットマイコンはテレビやDVDなどの画像処理、通信機器でのデータ通信、自動車のエンジン制御や運転制御、ロボットの画像認識や動作制御など、大量のデータを高速で処理したり、複雑な処理を高速で行うなどの場面で用いられます。

32ビットマイコンの原理

多くの32ビットマイコンでは、複雑で高速な処理が求められるため標準的な周辺回路だけでなく用途に応じた専用の処理回路が搭載されています。

例えば、TVやDVDや画像認識などの画像処理に関する用途では大量の積和演算が必要になります。これをソフトウェアで実行するとステップ数が多くなり非常に時間がかかるため、ハードウェアで高速に処理する専用回路を集積することで高速化します。

また、通信に関わる用途では様々な通信プロトコルが混在するデータを処理するため、シリアル⇔パラレルの変換を行うUARTと呼ばれる専用回路を搭載します。

このように、32ビットマイコンは用途に応じた専用回路を搭載することで複雑な処理を1チップで高速に実行するため、システムLSIとも呼ばれます。

現在では半導体技術の進化により一つの半導体チップ上に10億個のトランジスタを集積することができるようになりました。このため、スマートフォンなどでは複数の専用回路やCPUコアを1チップに集積し、ユーザ開発のアプリケーションも実行できるようになっており、マイコンとプロセッサの境界は曖昧になってきています。

32ビットマイコンのその他情報

1. 32ビットマイコンの特徴

32ビットマイコンには、命令のビット幅は中央処理装置であるCPU (英:Central Processing Unit) のアーキテクチャにより、32ビット固定長のものと4~32ビット可変長のものがあります。可変長の方がプログラムのサイズが小さくなります。

マイコンはコントローラの名前の通り様々な機器の制御に用いられ、汎用的な用途に用いられるサーバーやパソコン等に搭載されるマイクロプロセッサに対して、限定的な用途向けのデバイスです。

さらに、マイクロプロセッサとの違いとしてリアルタイム性の重視が上げられます。機器の制御に用いるためにはその場で処理する必要があり、32ビットマイコンで用いられるOSは通常のWindows OSなどとは異なるリアルタイムOSになります。代表的なリアルタイムOSとして日本のTRONプロジェクトから産まれたuITRONがあります。

32ビットマイコンでは、32ビットCPUをコアとして、種々のタイマ/カウンタ回路、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、入出力ポート回路、LCDドライバ回路、メモリ回路等が同じ一つの半導体チップ上に集積されています。

2. ARMコアについて

32ビットマイコンの核であり、処理性能や使い易さを大きく左右するCPUコアですが、その中で最も代表的なものがARMコアです。

ARMコアはiOSとAndroid双方のほとんどのスマートフォンや情報家電に搭載されているマイコンのコアであり、1990年にイギリスで創業したARM社によって開発されました。固定長の簡潔な命令セットアーキテクチャでありながら可変長命令セットの特徴も持ちつつ、シンプルな回路構造によって半導体の微細化の進展に適用しやすいCPUコアで、低消費電力でありながら高い処理能力を備えていることが特徴です。

バッテリーを必要とするモバイル機器や、常時稼働状態にある産業用機器では低消費電力が必須であり、様々な物がネットワークに接続されるIoT時代の到来により低消費電力と高性能が両立したマイコン需要が一気に加速しました。

ARMコアはアーキテクチャレベルや回路レベルでライセンス供与されたこともあり、モバイルPCやスマートフォンを中心に多くの企業で導入されて急速にシェアを拡大しました。

参考文献
https://www.renesas.com/eu/ja/support/technical-resources/engineer-school/mcu-01-basic-structure-operation.html
http://rtmrw.parallel.jp/led-work/raspberrypi/raspberrypi-1/doc-1.pdf
https://www.cqpub.co.jp/interface/sample/200605/I0605046.pdf
https://time-space.kddi.com/ict-keywords/20190718/2699

エッチング装置

エッチング装置とは

エッチング装置

エッチング装置とは、半導体などの製造工程であるエッチング加工に利用される装置です。

エッチング加工は、加工対象の表面を切削または溶解させて加工する技術を指します。エッチング装置では、半導体ウェハ上に形成した薄膜などにエッチング加工を行い、CPUなどの電子デバイス製造に必要不可欠な装置です。

近年の電子デバイスの高機能化に伴い、エッチングはより微細な加工が求められています。工程も複雑化しており、1つの電子部品を製造するためにエッチング装置を複数台使用されることも多くあります。

エッチング装置の使用用途

エッチング装置は電子デバイスの製造に欠かせない装置です。具体的な使用用途は、以下の通りです。

  • PC用CPUなどの集積回路
  • プリント基板
  • 液晶ディスプレイパネル
  • プラズマディスプレイパネル

これらの製造には、フォトリソグラフィが利用されています。フォトリソグラフィとは、感光性物質を塗布した上から光を当てて物体表面を加工する技術で、エッチングはフォトリソグラフィの一工程です。

エッチング工程では、ウェハ上の酸化膜にレジストがコーティングされている部分は残り、レジストがない部分がはがれ落ちます。凹凸ができ、パターンが形成されています。

エッチング装置の原理

エッチング装置は、ウェットエッチングとドライエッチングの2種類に分類されます。

1. ウェットエッチング

酸もしくはアルカリ薬液を使用して酸化膜を溶かす加工です。一度に多くの枚数の処理が可能で、生産の品質が安定しています。

薬液が比較的安価なので、安価に製造可能です。ただし、エッチングの方向が一方向に進むため、垂直方向の加工ができない方法です。1μm程度の加工が限界となります。

2. ドライエッチング

ドライエッチングは薬液を使用しないエッチング加工です。ドライエッチングの中では、プラズマエッチングが最も広く利用されています。真空下でガスを高電圧でプラズマ化する方法です。

プラズマ化の方法から誘電結合型とマイクロ波型などがあり、いずれも高周波電源を使用します。生成したプラズマで対象物表面を削る方法で、ウェットエッチングよりも高価なのが特徴です。ただし、100nm~1000nmといった微細な溝の加工が可能です。

プラズマエッチングの他にはイオン衝突によるイオンエッチングやガスを利用するガスエッチングなどがあります。いずれも真空装置が必要です。

エッチング装置のその他情報

1. エッチング装置の市場とシェア

世界の電子機器市場は拡大し続けており、それを支える半導体産業の重要性はますます高まっています。半導体の世界市場は、リーマンショックなどの不況を経験しながらも拡大傾向です。

近年、記憶媒体を3D構造とすることでさらに微細化する技術の開発が盛んです。そのため、3D化へのコア技術としてエッチング装置はさらに重要性を増しています。

エッチング装置消費の市場規模は2018年で13,893億円です。消費地域別シェアは韓国(28%)、中国(19%)、日本(19%)、台湾(14%)、米国(10%)となっています。また、ベンダ国籍別シェアは2018年は米国(64%)、日本(32%)です。2018年時点では米国と日本の企業で寡占化しています。

参考: 令和元年度安全保障貿易管理対策事業

2. ドライエッチング装置と3次元NAND市場

ドライエッチングは微細加工を行う技術の一つですが、加工する材料に応じて多くの装置が販売されています。ただし、シリコン用やメタル配線用など、主に半導体や金属を対象とする装置が主流です。通常の半導体工場では絶縁膜ドライエッチング装置が高比率です。

2015年以降これまで半導体製造装置の中で最大の市場であった露光装置の規模を超えて、ドライエッチング装置の市場規模が最大となりました。2017年には、ドライエッチング装置の市場規模は107億米ドルでした。

ドライエッチング装置の市場規模が急拡大している理由は、メモリの3次元構造化によるものです。微細化が進むにつれドライエッチング工程の増大し、フラッシュメモリは3次元構造が開発されるようになりました。

3次元NANDフラッシュメモリのセル形成にはさまざまな加工が必要です。特にチャネルホールの深孔加工が難しく、長時間のエッチング処理が必要となります。半導体メモリ工場では時間当たりの処理枚数が重要です。そのため、ドライエッチング装置の設置台数を増やすことで処理能力を確保します。

参考: EE Times Japan

参考文献
https://www.hitachi-hightech.com/jp/products/device/semiconductor/etch.html
https://www.samco.co.jp/company/primer/2011/03/post_5.php
https://eetimes.jp/ee/articles/1809/19/news007_2.html
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/000182.pdf
https://eetimes.jp/ee/articles/1809/19/news007.html

スイッチングパワーサプライ

スイッチングパワーサプライとはスイッチングパワーサプライ

スイッチングパワーサプライとは、直流電源のうちスイッチングレギュレーション方式で直流電源を供給する装置です。

一般的なパワーサプライは、簡単な回路構造により低価格でありながら重量のあるリニア方式と、IC化によってコンパクトなスイッチング方式に大別されます。それぞれの特徴から、リニア方式は簡易的なACアダプタ、スイッチング方式は設備電子部品の電源供給などに使用されます。

スイッチングパワーサプライの使用用途

スイッチングパワーサプライの使用用途は、産業用情報機器の電源供給です。近年では、電子機器の高度化と同時に、ACアダプタも重量があるリニア方式からコンパクトなスイッチング方式に転換されつつあります。

さらに、USB電源の普及と共に、スイッチングパワーサプライは小型電子機器への電源供給に必要不可欠な部品です。工業分野においては、自動化設備の電磁弁やセンサーなどの制御用電子部品を安定して駆動させるため、直流電源を安定供給する部品として広く使用されています。

スイッチングパワーサプライの原理

スイッチングパワーサプライは、AC100Vなどの交流電源を入力に用いて、DC5~30Vなどの直流電源に変換して安定的に供給する機器です。

一般的なスイッチングパワーサプライの回路構成は以下の通りです。

  • 入力整流平滑回路
    入力の交流電源を可能な限り平滑化させます。
  • スイッチング回路
    交流電源を直流電源へのスイッチングが可能です。
  • 出力整流平滑回路
    変換後の歪んだ直流電源を平滑化させます。
  • 制御回路
    出力電圧や出力電力を制御します。

この構成によって、一定電圧の安定した直流電源を得ることが可能です。

スイッチングパワーサプライのその他情報

1. 整流器とパワーサプライの違い

整流器は電流を一方向に流す性質のある素子の総称で、パワーサプライは電源の総称です。整流器は交流電源を直流電源に変換する素子と言えます。ダイオードやスイッチングデバイスで電流を一方向に流します。

整流には「半波整流」と「全波整流」があります。

半波整流
交流回路ではプラスとマイナスの電流が交互に流れますが、このプラスもしくはマイナスのどちらかの電流を除去するのが「半波整流」です。回路構成が簡単で低コストですが、効率が悪く大電流に対応することができません。

全波整流
全波整流は、プラス・マイナス両方の電流を取り込み、一方向の電流に変更する方式です。スイッチングパワーサプライでは主にこの方式が取られます。半波整流に比して効率が良く、脈動も小さく抑えることができます。

全波整流にはダイオードを2個使用する方式や、ダイオード4個を組み合わせたブリッジ回路方式などがあります。これらの整流後の電流は不安定なので、整流器からの出力に平滑のためのコンデンサなどの回路を組み合わせて脈動を除去し、パワーサプライとしての機能を発揮します。

2. スイッチングパワーサプライの故障原因

スイッチングパワーサプライの故障原因は「外的要因」と「内的要因」があります。

外的要因による故障

  • 物理的な破壊
  • 雷による突発的な高電圧やノイズの流入
  • 粉塵や水分の侵入による回路短絡故障
  • 薬品や腐食性ガスによる回路各所の破壊

特に落雷による突発的な高電圧の印加は、電源内部の各素子をはじめとした電子部品を破壊します。これらの故障を防止するためには、サージキラーなどの防護回路製品を設置することが効果的です。

内的要因による故障
内的要因は電解コンデンサや冷却ファン、半導体部品などの劣化や故障によるものです。電源の使用可能な年数は使われる環境や時間などによって大きく変わります。

参考文献
https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/powersupply_tg_j_8_3.pdf
https://electric-facilities.jp/
https://www.nipron.co.jp/pdf/qa/2005051214351729629.pdf

マルチプレクサIC

マルチプレクサICとは

マルチプレクサICとは、複数の信号を1つの信号として出力するICです。

MUXや多重器、多重装置、多重化装置、合波器などとも呼ばれています。デジタル回路では、縦と横の比率が大きい矩形や台形のブロック表記で表され、長辺に入力、短辺に出力が記入されます。数個のマルチプレクサICを組み合わせて、入力の個数を増やすことも可能です。

通信分野では、複数の信号のデータをスイッチやフィルタなどを用いて1本の合成波にして、送信する場合に多く使用されます。受信側ではマルチプレクサに対応するデマルチプレクサが必要となり、合成波の信号を複数の信号に分解して、信号の読み込みができるようにします。

マルチプレクサとデマルチプレクサを1つにまとめたものを、マルチプレクサと呼ぶこともあり、ケースに応じて使い分けされている状況です。

マルチプレクサICの使用用途

マルチプレクサICは、移動体無線通信の分野やコンピュータ回路、アナログ回路の信号の合成などに良く使用されます。通信の分野では、人工衛星の信号の発信部やWi-Fiのルーター、遠隔操作ロボット、ドローンの操縦などが用途です。

選定の際は、サイズや対応している信号、電圧やパッケージのオプションなどのさまざまな仕様項目を考慮する必要があります。

マルチプレクサICの原理

マルチプレクサICの原理は、通常はデジタル回路の組み合わせ回路やアナログのスイッチ回路を用いて各々のICの仕様に応じた多数の入力信号から所望の論理に基づく出力信号が形成可能なように設計開発されている点にあります。デジタルの論理設計やアナログの回路設計により、IC内部に必要な回路を構成するCMOS等のトランジスタや抵抗、容量などの配線レイアウトがなされています。

通常のマルチプレクサICは、数本の入力端子、1本の出力端子で構成されており、N本の入力があれば、信号は2のN乗個の信号を1本の出力として処理することが可能です。その仕組みは、信号の入力の数だけスイッチがあり、0と1の信号の組み合わせによって、信号を合成しています。

8入力のマルチプレクサを例に出すと、8本のデータ入力と3本の信号の選択スイッチがあり、3桁の2進数で8本の入力されたデータを表すことが可能です。マルチプレクサICには、コンデンサやコイルの機能を持つICチップを搭載することで、電源オフや過電圧、ショートに対する保護機能を追加している製品もあります。最適な増幅器やフィルタを搭載しており、高周波に対応した、高精度な信号の伝達を行える製品も発売されています。

マルチプレクサICのその他情報

1. マルチプレクサの構成回路 (デジタル)

デジタル回路でマルチプレクサICを構成する場合の構成回路は、「組み合わせ回路」が用いられます。組み合わせ回路の構成要素は、AND回路、NOT回路、OR回路等です。

デジタル回路で多用されるフリップフロップ回路は、データ保持の機能を有し、通常はマルチプレクサ回路用途ではなく、「順序回路」の構成要素といえます。

2. マルチプレクサICの構成事例 (アナログ)

アナログ回路で特に通信用途に多く用いられるマルチプレクサICは、アンテナ周りの送受信の信号切り替え機能をつかさどるアンテナスイッチや周波数バンドの切り替えフィルタ回路などが挙げられます。

昨今の移動体通信用途ではSOI-CMOSスイッチをICの構成要素として活用し、送受信用のデジタル回路ベースのシリアルインターフェイス機能が具備されたものが用いられています。

参考文献
https://www.analog.com/
https://www.tij.co.jp/ja-jp/switches-multiplexers/analog/overview.html

フィルムコンデンサ

フィルムコンデンサとは

フィルムコンデンサ

フィルムコンデンサは、プラスチックフィルムを誘導体として利用するコンデンサのことです。技術ルーツは19世紀後半に発明されたペーパーコンデンサにまで遡ります。ペーパーコンデンサでは油やパラフィン紙をアルミニウム箔にはさみ、ロール状に巻き取ります。

紙に直接金属を蒸着させて巻き取ったタイプは、MP(メタライズドペーパー)コンデンサと呼ばれます。フィルムコンデンサは、これらの技術をベースとして1930年代に開発されました。

フィルムコンデンサは内部電極のつくりによって箔電極型と蒸着電極型(金属化フィルム型)に分けられ、さらに構造の違いによって巻回型と積層型、誘導型と無誘導型に分けられます。

フィルムコンデンサの使用用途

フィルムコンデンサは民生品から産業機器まで多種多様な製品で使用されます。民生品の例としては、冷蔵庫などの家電機器やカーナビ・カーオーディオ・ETCといった車内搭載電子機器です。産業機器の例としては、パワーエレクトロニクス機器などに使用されます。

フィルムコンデンサは絶縁抵抗が強く、安全性も高いという特徴があります。また、無極性かつ高周波特性に優れ、温度特性も良好です。さらに、静電容量に高精度で対応できる上に長寿命です。

ただし、フィルムコンデンサは積層セラミックチップコンデンサと比較して大型化します。そのため、セラミックコンデンサではカバーできない電圧・容量域や高性能・高精度危機に使用される傾向があります。

フィルムコンデンサの原理

コンデンサとはそもそも、電気を蓄えたり放出したりする電子部品です。対向する導電体間に電圧を加えるとそれらに挟まれた絶縁体または空間に静電誘導作用が起こります。静電誘導作用によって、絶縁体に誘電分極が発生して充電します。

その誘導体にフィルムを使っているのがフィルムコンデンサです。フィルムコンデンサは内部電極のつくりや構造の違いによっていくつかに分けられます。

1. 箔電極型フィルムコンデンサ

内部電極となる金属箔にプラスチックフィルムを重ねて巻き取った巻回型のフィルムコンデンサです。金属箔の材料はアルミニウムやスズ、などを用います。

箔電極型フィルムコンデンサには誘導型と無誘導型があります。誘導型の場合は内部電極にリード線を付けて巻き取りますが、無誘導型は端面にリード線または端子電極を取り付けます。無誘導型は誘導型に比べてインダクタンス成分が小さくできるため、高周波特性に優れます。

2. 蒸着電極型フィルムコンデンサ

プラスチックフィルムに金属を蒸着させて内部電極をつくるタイプのフィルムコンデンサです。金属材料にはアルミニウムや亜鉛を用います。蒸着膜は非常に薄いので、箔電極型フィルムコンデンサより小型化が可能です。

フィルムコンデンサのその他情報

1. フィルムコンデンサの極性

フィルムコンデンサには極性はありません。つまり、フィルムコンデンサは無極性のコンデンサです。固定コンデンサには無極性コンデンサと有極性コンデンサの2種があります。

無極性コンデンサ
端子にプラスとマイナスの区別がないコンデンサが無極性コンデンサです。どちらの端子がプラスであっても問題がありません。端子に加える電圧の極性が規制されません。無極性コンデンサであれば、交流回路でも直接使用することができます。

フィルムコンデンサは無極性コンデンサの主流の1つです。無極性コンデンサは、他にセラミックコンデンサや紙コンデンサ、マイカコンデンサ、空気コンデンサなどがあります。

有極性コンデンサ
2つの端子のどちらをプラス側とするかが決まっているコンデンサが有極性コンデンサです。端子の極性を誤って使用すると、コンデンサが壊れます。

2. フィルムコンデンサとオーディオ

オーディオ機器は、音を自分の好みのものにするために、自作やカスタマイズをすることが可能です。音の質を左右する要因は複数ありますが、使用パーツも音質を左右します。コンデンサは、そのパーツの1つです。

オーディオアンプに使うコンデンサに要求される特性は、次のようなものが挙げられます。

  • 高周波特性が良いこと
  • 高調波歪が少ないこと
  • いわゆる鳴きが少ないこと

フィルムコンデンサは電解コンデンサと比べて、上記の特性について優れています。音質についても、電解コンデンサに対してフィルムコンデンサの方が音の透明感や解像度が勝っています。

参考文献
https://industrial.panasonic.com/jp/ss/technical/b3
http://www.rubycon.co.jp/products/film/technote.html

スプリングピンコネクタ

スプリングピンコネクタとは

スプリングピンコネクタとは、異なる部品間において電気を流すための接点として使われる電気コネクタ部品の1つです。

基本的にピン、チューブ、スプリングで構成されています。ピンとつながっているチューブの中にスプリングが入っているので振動に強く、揺れがあっても接触の障害が起こりにくいことが特徴です。

細かいピッチのコネクタや低抵抗のモジュラーコネクタ、ハウジング付きなど種類が多くあります。極数や接点数、接点高さなども豊富で、耐久性もよく、ワンタッチで着脱できる製品も多いです。

スプリングピンコネクタの使用用途

スプリングピンコネクタは、モバイル機器や輸送機器に利用されています。スプリングピンコネクタはばねによって振動を受けても接触が維持されやすいため、振動を受ける製品には欠かせません。

私たちの日常生活では、ワイヤレスイヤホンの充電ボックス、2in1タブレットPCのタブレット端末とキーボードとの接続、スマートウォッチの充電、電気自動車の充電コネクタなどに使われています。スプリングピンコネクタは、機器の小型化にも貢献します。

例えば、基板同士や基板とバッテリーをつなぐ用途にも適しています。そのほか、クレードル、内部アンテナ接続も用途の1つです。表面実装型やスルーホール型、ソルダーカップ型があり、はんだで基板と接続します。

スプリングピンコネクタの原理

スプリングピンコネクタは、スプリングの力で電気の接点同士の接触を維持し続けます。基本的には3部品で構成され、本体となる中空状のバレル、バレルの内部に格納されるコイルタイプのスプリング、スプリングによって相手部品に押し付けられるプランジャの3部品です。

スプリングとプランジャとの間に、ボールやシェル、インシュレータという部品を入れた4部品構造のタイプもあります。スプリングピンコネクタの構造は、ポゴピン構造とも呼ばれます。

ばねで反発する構造が、ポゴスティックという、ハンドルとステップをつけて、バネの力でジャンプする棒状の遊具に似ているところから名付けられました。プランジャ、バレルは真鍮が多く使われ、スプリングにはSUSやピアノ線が多く使用されています。また、接触面の表面処理は金メッキが主流です。

スプリングピンコネクタのその他情報

1. スプリングピンコネクタの嵌め合わせ方向

スプリングピンコネクタを用いた部品の嵌合は、垂直方向に嵌合させることが望ましいです。垂直方向ではなく水平方向に部品同士をスライドするように接続すると、プランジャはスプリングを押し下げる方向とは90°ずれた方向に、バレルに対して倒れこもうとする力が作用します。

もしスプリングが押し下げれなければ、バレルの縁の損傷につながりかねません。ただし、水平方向の嵌合を考慮した対策を施すことによって、水平方向の嵌合も可能です。

それでも一般的に耐えられる嵌合回数は少なくなり、スライドによってメッキの摩耗も大きくなるため、スライド距離は極力短くする、またはメッキを厚くするなどの対策が必要です。

2. スプリングピンコネクタの仕様

スプリングピンコネクタには、用途に応じて特別な機能を向上させた仕様があります。代表的な仕様として3つ紹介します。

防水対応
製品が濡れる可能性がある場合には、防水仕様のスプリングピンコネクタが選ばれます。防水のためにポッティング、Oリング、ラバーシートなどの防水部品が使われます。

高速伝送対応
電子機器では情報伝達が行われ、機器の性能向上のためにデータの高速伝送が不可欠です。スプリングピンコネクタを用いて大量のデータを高速伝送する際には、コネクタ電磁界解析によって、ピン配列などの仕様が設計されます。

高電流対応
スプリングピンコネクタには、高電流の接続に使われるものもあります。小型のスプリングピンコネクタでも大量の電流が流れるよう、接触面積の確保や発熱を抑えるためにボールやインシュレータなどの部品が組み込まれます。

参考文献
https://www.yokowo.co.jp/project/connector/
https://www.yokowo-connector.jp/products/spring-loaded-connector/jseries/

Dサブコネクタ

DサブコネクタとはDサブコネクタ

Dサブコネクタは、コンピュータと周辺機器とを接続するためのコネクタの規格の一つです。

Dサブコネクタは外部の電磁波の干渉を抑えるためのシールド部分がアルファベットのDの形状をしていることが名称の由来です。ピン (信号線の数) の数やサイズの異なるものが非常にバリエーションに富んでおり、20種類以上のラインナップがあります。これらの種類の名称はピンのサイズと数で表記されます。

Dサブコネクタの使用用途

Dサブコネクタは、非常に古い規格でかつては広く使われていた規格でした。現在ではその役目をUSBに取って代わられたものの、ディスプレイなどの映像出力ではまだまだ現役で使用されています。Dサブコネクタはピン数により使用用途が異なるため、種類別に解説します。

1. Dサブ9ピン

Dサブ9ピンコネクタは、主にRS-232CやRS422などのシリアル通信用に使われています。また、ゲーム機のATARI仕様でも採用され、NECのパソコンなどにより普及したコネクタです。他にも、SCSI-3規格のファイバチャネルでも採用されています。

2. Dサブ15ピン

Dサブ15ピンコネクタは、PC/AT互換機でモニタと接続するケーブルに採用されています。一般的にVGA (英: Video Graphics Array) 端子と呼ばれるものがDサブ15ピンです。15ピン以外のDサブコネクタは端子配列が2列に対して、5本のピンが3列に並んだ配列となっています。

現在ではHDMIやDVI、DisplayPortなどのデジタル接続が主流です。しかし、Dサブコネクタは汎用性が非常に高いため未だに使用されています。

3. Dサブ25ピン

Dサブ25ピンコネクタは、シリアル通信RS-232CのインターフェースやマッキントッシュのSCSI、PC/AT互換機のプリンター端子などに使用されています。RS-232Cの規格では25ピンのコネクタサイズが大きいという理由から、現在では9ピンが採用されることが多くなりました。ただし、機器によっては今でも25ピンが使用されています。

4. Dサブ37ピン

Dサブ37ピンの主な使用用途は、業務用デジタル音声信号伝送規格のAES/EBUやアイシーエムのSCSI機器です。他のDサブコネクタと比較すると、日本国内ではあまり普及していません。また、信号線が多く取れることから、FA機器の装置間での通信にも使用されることがあります。

Dサブコネクタの原理

Dサブコネクタは、コンタクトとハウジングという基本構造に、フード (シェル) とアイレットという部品で構成されています。コンタクトは、端子やターミナルとも呼ばれ、電気を導通させるための金属の部分を指します。ハウジングは、コンタクトが組み込まれる部分で、絶縁体でできています。

1. Dサブコネクタのフード

Dサブコネクタは、コンタクトとハウジングをフード (シェル) と呼ばれるケースに収納し、アイレットと呼ばれる留め具で固定しています。Dサブコネクタはプラグ側とソケット側 (それぞれオス・メス) がありますが、どちらもこれらの構造は共通しています。また、金属製のシェルは電磁派を遮蔽する機能も備えているため、電磁妨害 (EMI) 対策部品としても有用です。

2. Dサブコネクタのネジ

Dサブコネクタはアイレットをネジによって固定します。Dサブコネクタを固定するネジには下記のような種類があるので、プラグ側とソケット側で合わせなければなりません。

3. Dサブコネクタのピン数

Dサブコネクタは、用途によってコンタクトの数 (ピンの数) が異なります。最も有名なのは15ピンのDE-15で、日常で最も目にするものです。他にも産業機械などとの接続でよく使われているRS-232Cでは、9ピンまたは25ピンのDE-9やDB-25が採用されています。ただし、25ピンは大きいという理由からPCではほとんどの場合9ピンが採用されています。

Dサブコネクタでは、一本のコンタクトごとに信号の種類が振り分けられています。例えばVGA出力の際は、一番のコネクタが赤を、二番が緑、三番が青の映像出力というように各コンタクトで役割が決まっています。

参考文献
https://www.omron.co.jp/ecb/product-info/
https://pinouts.ru/Video/VGAVesaDdc_pinout.shtml

電源トランス

電源トランスとは

電源トランス

電源トランスとは、交流電源の電圧変化させるための装置です。

電圧を変化させるため、日本語名称は「変圧器」と呼ばれています。電磁誘導作用を利用して電圧を昇降圧します。

発電所で作られた電力は送電線を伝わって工場や各家庭に分配されますが、作られる電気は何万ボルトという超高電圧です。このまま一般家庭で使うのは危険であるため、電源トランスで降圧して分配されます。日本では、100ボルトまで降圧して一般家庭で使用されます。

電源トランスの使用用途

電源トランスは産業用から一般家庭向けまで多くの場所で使用されます。具体的な使用用途は以下の通りです。

  • 発電所・変電所の電源変換用
  • 工場・商業施設の電源供給用
  • 一般住宅への送電用
  • 電源設備の耐雷用
  • 古いACアダプタの内部

電源トランスは、電気の使用に欠かせない機器であると言えます。

電源トランスの原理

電源トランスの構成はシンプルで、2つのコイル (線をバネ状に巻いたもの) と鉄心です。2つのコイルのうち1次コイルは電力源に接続し、2次コイルは需要機器に接続します。

1次コイルに電気が流れると鉄心内部に磁力が発生し、2次コイルに達します。磁力を受けた2次コイルは、両端に電圧が発生します。この現象が電磁誘導作用です。電源トランスは電磁誘導作用を巧みに利用して電圧を昇降圧します。

そして、1次コイルと2次コイルはボビンと呼ばれる巻枠で完全に分離・絶縁されます。つまり、電源トランスでは1次コイルと2次コイルを電気的には絶縁しながら、電磁誘導作用で電気エネルギーを伝達します。この絶縁作用により、電源側で発生した異常が需要機器側へ伝達するのを防止できます。

電源トランスの種類

電源トランスは、主に「油入変圧器」と「モールド変圧器」の2種類に分類されます。

1. 油入変圧器

巻線や鉄心を絶縁油に浸した変圧器です。変圧器は使用すると発熱しますが、絶縁油を冷媒とできるため密閉可能なのが特徴です。巻線や鉄心を密閉するため、屋外設置も可能となります。

ただし、絶縁油が鉱油の場合、土壌汚染の原因となるため漏洩に十分注意が必要です。近年では環境に配慮して植物油を使用した油入変圧器も販売されています。

2. モールド変圧器

巻線や鉄心をエポキシ樹脂で覆った変圧器です。絶縁油を使用しないためメンテナンス性に優れます。ただし、放熱手段が限られるため屋内設置が基本です。また、油入変圧器よりも高価であるというデメリットもあります。

電源トランスのその他情報

1. 電源トランスの役割

電源トランスは「変圧」と「絶縁」という2つの役割を持っています。

変圧
発電した電力を使用に適した電圧まで昇降圧する役割が変圧です。一般家庭では100ボルトに降圧されて使用されます。産業用途では、200ボルトや400ボルトでの使用が主流です。

送配電用途では送電ロス削減のため、66,000ボルトなどの超高電圧が使用されます。また、電圧降下の対策として変圧される場合もあります。送電距離が長くなると使用場所で低電圧となる電圧降下現象が起こります。この電圧降下現象は、電源トランスで微昇圧することで対策可能です。

絶縁
一般的な電源トランスの場合、入力側電線と出力側電線が繋がっていません。入力側の電気は電磁誘導によって出力側に伝えます。このように、入力と出力が分離しているトランスを「絶縁トランス」と呼び、入力側の異常が出力側に伝わるのを防ぎます。

2. 電源トランスの電圧

電源トランスには、日本国内で良く使用される電圧が存在します。

低電圧の場合
低電圧でよく使用される電圧は100ボルト、200ボルト、400ボルトです。100ボルトは家庭用電源などに使用されます。対して、400ボルトは工場の大型機器などに使用されます。

高電圧の場合
高電圧でよく使用される電圧は3,300ボルト、6,600ボルトです。電力会社の使用電圧は6,600ボルトがほとんどです。

特別高圧の場合
特別高圧は変電所間や巨大工場に使用される超高電圧です。送配電用には主に66,000ボルトや154,000ボルトが使用されます。

参考文献
http://fa-ubon.jp/tech/001_bell52_54-55.html
https://www.kitagawa-denki.co.jp/products/about/whats/
https://www.kamidenshi.co.jp/magazine/1497/
https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/technical_data/td06/x0425.html